JP3500670B2 - Mk8383物質、その製造法および農園芸用殺菌剤 - Google Patents

Mk8383物質、その製造法および農園芸用殺菌剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規MK8383物質または
その塩、その製造法およびMK8383物質またはその塩を有
効成分とする農園芸用殺菌剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】従
来、微生物が生産する種々の抗生物質が知られており、
医薬品、化粧料、動物薬、農薬等の分野で実用化されて
いる。これら公知の化合物よりも有用な活性を有する新
規物質の出現が常に要望されている。また、農園芸分野
では病害防除に各種殺菌剤が使用されているが、耐性菌
が出現するなどで既存薬剤の使用が制限され、防除上重
要な問題も生じている。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、フォマ属
Phoma)に属する1菌株の培養物中に、キュウリ灰色
かび病菌をはじめとする広範囲の植物病原糸状菌に対し
て抗菌作用を有し、しかも耐性菌にも有効である物質が
生産されていることを見いだした。そこで同菌株の生産
する有効物質MK8383物質を単離し、その物理化学的性質
を明かにし、さらに各種植物病害に対する防除効果を確
認することにより本発明を完成させた。
【0004】即ち本発明の要旨は、下記(I)式で表さ
れるMK8383物質またはその塩、その製造法およびMK8383
物質またはその塩を有効成分とする農園芸用殺菌剤に存
するものである。
【0005】
【化2】
【0006】以下、本発明について詳細に説明する。本
発明のMK8383物質は、例えばフォマ属に属するMK8383物
質生産菌を培養し、その培養物から採取することにより
得ることができる。かかる生産菌としては、フォマ属に
属し、MK8383物質を生産する能力を有するものであれ
ば、特に制限はされない。具体的には、本発明者らが植
物の落葉より分離したフォマ エスピー(Phoma sp.)T
2526(以下、「本菌株」または「T2526号菌」と略すこ
とがある)を挙げることができる。なお本菌株は、工業
技術院生命工学工業技術研究所に生命研菌寄第1393
8号(FERM P-13938)として寄託されており、その菌
学的性状は以下の通りである。
【0007】(1)形態学的性状 コロニーの生育は、ポテト・デキストロース寒天培地
(PDA)上、27℃、7日間の培養で旺盛、コロニー形
状は線毛状を呈し、はじめ白色、後に中心部付近から分
生子殻の形成に伴い黄褐色に変色する。基底菌糸は分枝
し、多数の隔壁が挿入される、巾は12.3μmに至る、淡
黄褐色を呈する。厚膜胞子は形成されない。気生菌糸は
豊富に形成される。分生子殻は、初め寒天中に埋没して
生ずるが、後に寒天表面上に露出する、単生するか集合
して生じる、球形〜亜球形あるいは扁球形、頂部に1個
あるいは3〜4個の孔口を持つ、暗褐色を呈する、直径
62〜200 μm。分生子殻の殻壁は多細胞、外層は比較的
厚膜、暗褐色、内層は薄膜、ほぼ無色の分生子柄を支え
る細胞から成る。分生子柄は特に発達しないが、殻壁最
内層細胞が分生子形成細胞(フィアライド)になる。フ
ィアライドはとっくり形〜つり鐘状、あるいは円錐形、
単一に形成される。分生子はフィアロ型、1細胞、円筒
形、3.0〜4.0×1.5〜2.0μm(縦/横の比は2:1)、
無色、平滑、内部に1〜2個の油滴を含有する。
【0008】(2)各種培地上における培養上の性状 麦芽寒天培地(MA)上、27℃、7日間の培養 コロニーの生育は旺盛、コロニー形状は綿毛状を呈す
る、はじめ白色、後に明るい茶灰色となる。基底菌糸は
分枝し、多数の隔壁が挿入される、巾は16μmに達す
る、淡褐色を呈する。厚膜胞子は形成されず。気生菌糸
は豊富に形成される。分生子殻は豊富に形成される。分
生子殻、分生子等のアナモルフの性状はPDA上での形
態と同一である。
【0009】 三浦培地(LCA)上、27℃、7日間
の培養 コロニーの生育は中程度、コロニーは薄く広がり、初め
無色〜白色、後に分生子殻の形成に伴い中心部より黄褐
色となる。基底菌糸は分枝し、多数の隔壁を生じる、巾
12.3μmに達する、淡褐色を呈する。厚膜胞子は形成さ
れず。気生菌糸の発達は貧弱。分生子殻は豊富に形成さ
れる。分生子殻、分生子等のアナモルフの性状はPDA
上での形態と同一である。
【0010】
【表1】(3)生理学的性状 生育温度(PDA上、7日間培養):20〜35℃ 至適温度:27〜30℃ 生育pH(LCA液体培地中、27℃、7日間培養):3
〜8 至適pH:4〜5
【0011】(4)分類学的考察 本菌株は、1)分生子殻を持つ、分生子殻は子座におおわ
れることはない、2)殻壁は平滑、剛毛を有せず、3)分生
子は分生子殻の最内層細胞に形成される分生子形成細胞
(フィアライド)から生じる、4)分生子形成細胞はとっ
くり状〜つり鐘状、あるいは円錐形、5)分生子は1細
胞、無色の特徴を有する。これらの特徴に基づいて、B.
S.Sutton(1980)のモノグラフ"The Coelomycetes"によ
って高次分類群の検索を行ったところ、本菌はSphaerop
sidales (分生子殻菌類)のPhialopycnidiineae(内生
出芽型分生子殻菌亜目)に属すことがわかった。Phialo
pycnidiineae亜目には、54属が含まれており、この中で
本菌株に類似した属として、Phoma属、Macrophomina
あるいはMelanophoma属が挙げられるが、本菌株の分生
子殻の殻壁構造、分生子形成細胞、分生子の形態的特徴
から、本菌株はMacrophomina属やMelanophoma属から明
瞭に区別され、Phoma属の特徴に一致した。従って本菌
株は、Phoma属と同定した。
【0012】種の同定のために、B.S.Sutton(1980)"T
he Coelomycetes"の379〜380ページに示されているPhom
a属の代表種(27種)の検索表に従って、本菌株の種レ
ベルの検索を試みたが、合致する種はなかった。Phoma
属菌は、主に草や木本植物の葉、茎、枝幹に寄生し、茎
枯れ、枝枯れ、あるいは胴枯れ病を起こす植物病原菌と
して知られており、今までに2000種以上の種が記録され
ている。これらの種は、特に宿主関係によって機械的に
同定されてきた場合が多い。B.S.Sutton(1980)によれ
ば、植物宿主関係に加えて、テレオモルフとの関連、コ
ロニー形状、色素産生能、厚膜胞子、分生子殻の形状、
分生子形成細胞、分生子の性状等によって、種の再整理
と統合が必要なグループであることを指摘している。Ph
oma属菌の分類学的状況を勘案して、本発明においては
本菌株をPhoma sp. として扱い、種の同定は将来の分類
学的研究を待つことにする。
【0013】本菌株は、他のかびに見られるようにその
性状が変化し易い。例えば、本菌株の、またはこの株に
由来する突然変異株(自然発生または誘発性)、形質接
合体または遺伝子組換え体であっても、MK8383物質を生
産するものは全て本発明に使用できる。本発明のMK8383
物質は、本菌株等のMK8383物質生産菌を通常の微生物が
利用し得る栄養物を含有する培地で培養する。栄養源と
しては、従来菌類の培養に利用されている公知のものが
使用できる。例えば、炭素源としては米、グルコース、
水飴、デキストリン、でんぷん、糖蜜、動・植物油等を
使用し得る。また窒素源としては、大豆粉、小麦胚芽、
コーン・スティープ・リカー、綿実粕、肉エキス、ペプ
トン、酵母エキス、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウ
ム、尿素等を使用し得る。その他必要に応じ、ナトリウ
ム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、コバルト、
塩素、リン酸、硫酸およびその他のイオンを生成するこ
とができる無機塩類を添加することは有効である。ま
た、菌の発育を助け、MK8383物質の生産を促進するよう
な有機物および/または無機物を適当に添加することが
できる。
【0014】培養法としては、好気的条件での培養法、
特に固体培養法や深部培養法が適している。培養に適当
な温度は15〜35℃であるが、多くの場合20〜30℃付近で
培養する。MK8383物質の生産は培地や培養条件により異
なるが、固体培養、振とう培養、タンク培養のいずれに
おいても通常2〜14日間でその蓄積が最高に達する。培
養中のMK8383物質の蓄積量が最高になったときに培養を
停止し、培養液から目的とする物質を単離・精製する。
【0015】本発明によって得られるMK8383物質の培養
物からの採取に当たっては、その性状を利用した通常の
分離手段、例えば、溶剤抽出法、イオン交換樹脂法、吸
着または分配カラムクロマト法、ゲルろ過法、透析法、
沈澱法等を単独でまたは適宜組み合わせて抽出精製する
ことができる。例えば、MK8383物質は、培養菌体中から
はアセトン−水、メタノール−水または酢酸エチル等で
抽出される。また、培養液中に蓄積されたMK8383物質
は、水と混ざらない有機溶剤、例えば、ブタノール、酢
酸エチル等で抽出すればMK8383物質は有機溶剤層に抽出
される。MK8383物質を更に精製するには、シリカゲル
(ワコーゲル C-300、和光純薬工業社製等)、アルミナ
等の吸着剤やセファデックス LH-20(ファルマシア社
製)等を用いるカラムクロマトグラフィー、高速液体ク
ロマトグラフィー(HPLC)、遠心分離等を行うとよい。
【0016】以上のような方法により、あるいはこれら
を適宜組み合わせることにより、高純度のMK8383物質が
得られる。かくして得られる本発明によるMK8383物質の
理化学的および生物学的性状は、次の通りである。
【0017】
【表2】(1) 色および形状:無色粉末 (2) 分子式:C21303 (3) 比旋光度 [α]D +25.7゜(c = 1.0, CHCl3) (4) マススペクトル (FD-MS): m/z 330 (M)+ (5) 紫外部吸収スペクトルλmax MeOHnm:205, 262 (6) 赤外部吸収スペクトルνmax KBr cm-1:1680,
1640 (7) 1H NMRスペクトル:重メタノール中、400
MHz:7.21 (1H, dd, J =10.9, 15.2Hz), 6.37 (1H, dd,
J = 10.6, 14.1Hz), 6.16 (1H, dd, J= 10.9, 14.9H
z), 5.77 (1H, d, J = 15.1Hz), 5.72 (1H, brs), 5.47
(1H, m), 3.68 (1H, m), 2.9 (1H, brs), 2.8 (1H, br
s), 1.6 - 1.8 (13H, m), 1.5 (1H, m), 1.4 (1H, m),
1.1 (1H, m), 1.06 (3H, d, J =6.3Hz) (8) 13C NMRスペクトル:重メタノール中、100
MHz:170.8, 148.3,146.8, 136.4, 136.3, 129.5, 12
3.9, 123.5, 120.8, 73.2, 44.8,43.1, 39.0, 34.0, 3
1.0, 30.1, 22.5, 22.3, 19.6, 13.5 (9) 溶解性:クロロホルム、アセトン、酢酸エチ
ル、メタノールに可溶で、水に不溶である。 (10)塩基性、酸性、中性の区別:酸性物質
【0018】本発明によるMK8383物質の立体構造は、当
該物質のマススペクトル、UVスペクトル(図1)、I
Rスペクトラム(図2)、NMRスペクトラム(図3、
図4)及び、当該物質のアセテートのX線結晶構造解析
により確認した。その結果、MK8383物質の立体平面構造
は、下記(I’)式で表されるものと推定された。
【0019】
【化3】
【0020】かかるMK8383物質と類似する化合物として
は、下記(II)式で表されるラピキュリン(rapiculin
e)(J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 537, 1991)が知
られている。しかしMK8383物質とは化学構造が異なり、
また同物質はRamichloridium apiculatum の培養抽出物
Bacillus subtilis に対して抗菌作用を有することか
ら単離・精製されその構造が決定された物質であるが、
ラピキュリンそのものにはB.subtilisに対する抗菌作用
は認められない、とある。従って本願のMK8383物質とラ
ピキュリンとは、明確に区別される。
【0021】
【化4】
【0022】また本発明のMK8383物質は、酸性物質であ
ることから、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、
マグネシウム塩、カルシウム塩等の金属塩、またはアン
モニウム塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニ
ウム塩、トリメチルアンモニウム塩、ジシクロヘキシル
アンモニウム塩等のアンモニウム塩を形成することがで
きる。
【0023】本発明によるMK8383物質は、Alternaria a
lternata(ナシ黒斑病菌)、Botrytis cinerea(灰色か
び病菌)、Cochliobolus miyabeanus(イネごま葉枯病
菌)、Colletotrichum atramentarium(ジャガイモ炭そ
病菌)、Fusarium oxysporumf.sp.cucumerinum(キュウ
リつる割病菌)、Fusarium oxysporum f.sp.lycopersic
i(トマト萎ちょう病菌)、Gibberella fujikuroi(イ
ネばか苗病菌)、Glomerella cingulata(ブドウ晩腐病
菌)、Phytophthora infestans(ジャガイモ疫病菌)、
Pyricularia oryzae(イネいもち病菌)、Rhizoctonia
solani(イネ紋枯病菌)、Sclerotinia minor(トマト
小粒菌核病菌)、Verticillium albo-atrum(ジャガイ
モ半身萎ちょう病菌)などを含む広範囲の植物病原糸状
菌に対し強い抗菌作用を有している。
【0024】本発明のMK8383物質は、上述の如く植物病
原糸状菌に対して広範囲の抗菌スペクトラムを有してお
り、糸状菌による広範囲な植物病害に有効である。これ
らの中でも特に、灰色かび病、イネいもち病、イネ紋枯
病、イネばか苗病、キュウリつる割病、トマト萎ちょう
病、ブドウ晩腐病、ジャガイモ半身萎ちょう病等に対し
て有効であり、本発明のMK8383物質はこれらの病害に対
して有用な防除剤として用いることができる。
【0025】本発明による農園芸用殺菌剤は、顕著な植
物病害防除効果を有しており、新規なMK8383物質を有効
成分として含有するものである。本発明による農園芸用
殺菌剤は、有効成分が前述のMK8383物質であるこに留意
すべきことを除けば、農園芸用薬剤、特に殺菌剤として
採用しうる任意の形態ないし使用態様をとることができ
る。
【0026】具体的には、たとえば本発明のMK8383物質
をそのまま、または液体担体、固体担体、気体担体、そ
の他の適当な担体を用いて希釈し、必要に応じて展着剤
などの補助剤を加えて使用するか、あるいは農薬製造に
一般的に使用されている方法によって各種の液体、固体
または気体担体と混合し、必要ならば湿展剤、展着剤、
分散剤、乳化剤、固着剤、滑沢剤などの補助剤を加えて
水和剤、液剤、乳剤、粉剤、粒剤、微粒剤、エアゾール
など種々の製剤形態にして使用することができる。
【0027】これらの製剤を製造するに当たって、液体
担体としては、本発明のMK8383物質に対して溶剤となる
ものまたは補助剤によって分散もしくは溶解させ得るも
のが用いられる。たとえば水、芳香族炭化水素類、脂肪
族炭化水素類、塩素化炭化水素類、アルコール類、エー
テル類、エステル類、ケトン類、ジメチルホルムアミ
ド、ジメチルスルホキシドなどの極性溶媒類などがあげ
られる。固体担体としては、粘土、カオリン、タルク、
硅藻土、ベントナイト、炭酸カルシュウム、シリカ、バ
ーミキュライト、ホワイトカーボンなどの鉱物質粉末
類、砂礫類、木粉その他の有機質粉末および微粒末、尿
素、硫安などが用いられる。気体担体としては、空気、
炭酸ガス、フレオンガス、窒素ガスなどが用いられる。
【0028】薬剤の分散、乳化、展着性の向上、植物へ
の付着、吸収、移行の向上のために使用することができ
る補助剤の例としては、非イオン、陽イオン、陰イオ
ン、両性の各界面活性剤、リグニンスルホン酸あるいは
その塩、ガム類、脂肪酸塩類、メチルセルロースなどの
糊料があげられる。本発明の農園芸用殺菌剤の製造に当
たっては、上述の担体、補助剤などをそれぞれの目的に
応じてそれぞれ単独であるいは適当に組み合わせて用い
ることができる。本発明のMK8383物質を製剤化する場合
の有効成分濃度は、乳剤では通常1〜50重量%、水和剤
では通常1〜50%、粉剤では通常0.1 〜30重量%、粒剤
では通常0.1〜15重量%、油剤では通常0.1〜10重量%、
エアゾールでは通常0.1 〜10重量%にするのが望まし
い。
【0029】本発明の農園芸用殺菌剤は、目的に応じて
植物の茎葉に散布して用いることができるほか、水面や
水中あるいは土壌表面や土壌中に施用して用いることも
できる。また、種子や果実に直接施用して用いることも
できる。その場合に、両立性の農園芸用薬剤ないし肥料
を混用することができる。そのような農園芸用薬剤には
たとえば殺菌剤、殺虫剤、除草剤、植物生育調節剤など
がある。
【0030】本発明の農園芸用殺菌剤の施用量は、対象
病害の種類および発病程度、対象作物の種類および対象
部位、施用態様、その他によって変化するが、植物の茎
葉に施用する場合の例をあげれば、10アール当たり乳剤
ならばたとえば50〜200 リットル、水和剤ならばたとえ
ば50〜200 リットル、粉剤ならばたとえば2〜6kg程度
の施用量が望ましい。また、土壌に粒剤を施用する場合
の例をあげれば、10アール当たりたとえば2〜6kg程度
の施用量が望ましい。
【0031】
【実施例】以下に本発明の実施例を示すが、MK8383物質
の性状が本発明によって明らかにされたので、それらの
性状にもとづきMK8383物質およびMK8383物質を有効成分
として含有する農園芸用殺菌剤の製造法を種々考案する
ことができる。従って本発明は実施例に限定されるもの
ではなく、実施例の修飾手段は勿論、本発明によって明
らかにされたMK8383物質の性状にもとづいて公知の手段
を施してMK8383物質を生産、濃縮、抽出、精製する方法
およびMK8383物質を有効成分として含有する農園芸用殺
菌剤に関するすべてを包括する。
【0032】実施例1 <MK8383物質の製造例〉 水飴 2.0%、大豆粉 1.0%、大豆油 0.15%、サングレ
イン 0.25%、綿実粕0.5%、FeSO4・7H2O 0.0005%、N
iCl2・6H2O 0.00005%、CoCl2・6H2O 0.00005%およびCaC
O3 0.1%を含有する培地(pH 6.0)を40mlずつ 200
ml三角フラスコ2本に分注し、 121℃において20分間
オートクレーブ滅菌した。これにMK8383物質生産菌であ
るフォマ エスピー(Phoma sp.)T2526を1白金耳ずつ
植菌し、27℃で3日間、 210回転にて振とう培養した。
【0033】別に米 60gと水道水 20mlを 500ml
三角フラスコ10本に分注し、 121℃、20分間オートクレ
ーブ滅菌した。この主発酵培地に前記の種培養液を4m
lずつ接種し、27℃において14日間静置培養した。得ら
れた培養物を遠心分離して、培養菌体を得た。この菌体
に50%アセトン水(1L)を加え、1時間撹拌後菌体を
濾別して菌体抽出液 800mlを得た。この菌体抽出液
を、pHを2に調製後遠心分離し1.83gの沈澱を得た。こ
の沈澱物のメタノール可溶部をシリカゲルカラム(Wa
kogel C-200:150g)の上部に載せ、クロロホルム
/メタノール(98:2)を展開溶媒とするシリカゲルクロ
マトグラフィーおよび酢酸エチル/ヘキサン(80:20)を
展開溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィー行い、無
色粉末状の(I’)式で表されるMK8383物質を502 mg
得た。なおこれより以下、MK8383物質とは(I’)式で
表される化合物のことを指す。
【0034】実施例2 <植物病原糸状菌に対する抗
菌試験〉 MK8383物質を1、10あるいは 100ppm含むジャガイモ
煎汁寒天培地上に、あらかじめ別に培養した表−1に示
す植物病原糸状菌の菌糸片を置いた。低温性の菌は21℃
で、それ以外の菌は28℃で培養した。5日間培養した
後、生じた菌糸コロニー直径を測定し、MK8383物質を含
まない無処理区と比較して生育阻害程度を求めた。
【0035】試験の結果を表−1に示した。
【0036】
【表3】 表−1 植物病原糸状菌に対する抗菌作用 ─────────────────────────────────── 生育阻害1) 供試菌 ───────────────── 1ppm 10ppm 100ppm ─────────────────────────────────── Alternaria alternata ++ ++ +++ (ナシ黒斑病菌) Botrytis cinerea(DS-BS)2) +++ +++ +++ (灰色かび病菌) Botrytis cinerea(DS-BR-1)2) +++ +++ +++ (灰色かび病菌) Botrytis cinerea(DS-BRー2)2) +++ +++ +++ (灰色かび病菌) Botrytis cinerea(DS-BR-3)2) ++ +++ +++ (灰色かび病菌) Botrytis cinerea(DR-BR)2) ++ +++ +++ (灰色かび病菌) Cochliobolus miyabeanus − + +++ (イネごま葉枯病菌) Colletotrichum atramentarium ++ ++ +++ (ジャガイモ炭そ病菌) Fusarium oxysporum f.sp.cucumerinum ++ ++ +++ (キュウリつる割病菌) Fusarium oxysporum f.sp.lycopersici ++ ++ +++ (トマト萎ちょう病菌) ───────────────────────────────────
【0037】
【表4】 表−1のつづき 植物病原糸状菌に対する抗菌作用 ─────────────────────────────────── 生育阻害1) 供試菌 ───────────────── 1ppm 10ppm 100ppm ─────────────────────────────────── Gibberella fujikuroi ++ +++ +++ (イネばか苗病菌) Glomerella cingulata +++ +++ +++ (ブドウ晩腐病菌) Phytophthora infestans + ++ ++ (ジャガイモ疫病菌) Pyricularia oryzae +++ +++ +++ (イネいもち病菌) Rhizoctonia solani + ++ ++ (イネ紋枯病菌) Sclerotinia minor ++ ++ +++ (トマト小粒菌核病菌) Verticillium albo-atrum ++ +++ +++ (ジャガイモ半身萎ちょう病菌) ───────────────────────────────────
【0038】
【表5】1)−;生育阻害なし +;〜50%生育阻害 ++;50〜90%生育阻害 +++;90〜100%生育阻害 2)DS;ジカルボキシイミド系薬剤感受性 DR;ジカルボキシイミド系薬剤耐性 BS;ベンツイミダゾール系薬剤感受性 BR;ベンツイミダゾール系薬剤耐性
【0039】実施例3 <製剤の調製〉 1.乳剤の調製 MK8383物質20重量部、シクロヘキサノン20重量部、キシ
レン45重量部、ポリオキシエチルアルキルフェニルエー
テル12重量部、アルキルベンゼンスルホン酸カルシウム
塩3重量部を均一に混合し、溶解して乳剤を得た。 2.水和剤の調製 MK8383物質10重量部、クレー20重量部、硅藻土65重量
部、リグニンスルホン酸3重量部、ポリオキシエチレン
アルキルアリルエーテル2重量部を均一に粉砕、混合し
て水和剤を得た。
【0040】3.粉剤の調製 MK8383物質3重量部、ステアリン酸カルシュウム1重量
部、無水硅酸粉末1重量部、クレー48重量部、タルク47
重量部を均一に粉砕、混合して粉剤を得た。 4.粒剤の調製 MK8383物質5重量部、クレー92重量部、カルボキシメチ
ルセルロース3重量部を混合し、適当量の水を加えて練
合成型ののち乾燥させ粒剤を得た。
【0041】実施例4 <効力試験〉 1.キュウリ灰色かび病防除試験(1) 前記実施例3に準じて調製した乳剤を水で所定濃度に希
釈して散布液とし、キュウリ子葉に散布処理した。風乾
後、灰色かび病菌(ジカルボキシイミド系薬剤感受性−
ベンツイミダゾール系薬剤耐性)の分生胞子懸濁液を滴
下し接種した。21℃の湿室に3日間保った後、発病程度
を観察した。防除効果の評価は、無処理区の発病程度と
比較して5段階(0;発病なし、4;無処理区と同等、
その中間として1〜3)の指数を与えて行い、指数をも
とに防除価を算出した。
【0042】ベンツイミダゾール系薬剤耐性(ジカルボ
キシイミド系薬剤感受性)灰色かび病菌を接種源に用い
た場合の防除試験の結果を表−2に示した。
【0043】
【表6】 表−2 キュウリ灰色かび病防除試験1) ───────────────────────── 供試薬剤 濃度(ppm) 防除価(%) ───────────────────────── 20 86 MK8383物質 30 93 40 97 50 100 ───────────────────────── 50 50 ロブラール水和剤 100 86 (対照薬) 200 94 ───────────────────────── 50 0 ベンレート水和剤 100 0 (対照薬) 200 0 ───────────────────────── 無処理 0 0 ─────────────────────────
【0044】1)Botrytis cinerea(DS-BR-1)(ジカル
ボキシイミド系薬剤感受性−ベンツイミダゾール系薬剤
耐性)を接種菌として供試 2.キュウリ灰色かび病防除試験(2) 前記実施例3に準じて調製した乳剤を水で所定濃度に希
釈して散布液とし、キュウリ子葉に散布処理した。風乾
後、灰色かび病菌(ジカルボキシイミド系薬剤耐性−ベ
ンツイミダゾール系薬剤耐性)の分生胞子懸濁液を滴下
し接種した。21℃の湿室に3日間保った後、発病程度を
観察した。防除効果の評価は、無処理区の発病程度と比
較して5段階(0;発病なし、4;無処理区と同等、そ
の中間として1〜3)の指数を与えて行い、指数をもと
に防除価を算出した。
【0045】ジカルボキシイミド系薬剤耐性灰色かび病
菌を接種源に用いた場合の防除試験の結果を表−3に示
した。
【0046】
【表7】 表−3 キュウリ灰色かび病防除試験1) ───────────────────────── 供試薬剤 濃度(ppm) 防除価(%) ───────────────────────── 10 83 MK8383物質 20 89 40 89 50 95 ───────────────────────── 50 0 ロブラール水和剤 100 0 (対照薬) 200 0 ───────────────────────── 無処理 0 0 ───────────────────────── 1)Botrytis cinerea(DR-BR)(ジカルボキシイミド系
薬剤耐性−ベンツイミダゾール系薬剤耐性)を接種菌と
して供試
【0047】3.イネいもち病防除試験 前記実施例3に準じて調製した乳剤を水で所定濃度に希
釈して散布とし、直径6cmのプラスチックポットに栽
培した5葉期のイネ(品種;十石)苗に散布処理した。
風乾後、イネいもち病菌分生胞子懸濁液を噴霧して接種
し、一昼夜湿室に保った。その後25℃の温室に移し発病
させた。接種6日後に葉身に生じた病斑数を計測し、病
斑数をもとに防除価を算出した。
【0048】試験の結果を表−4に示した。
【0049】
【表8】 表−4 イネいもち病防除試験 ───────────────────────── 供試薬剤 濃度(ppm) 防除価(%) ───────────────────────── 100 39 MK8383物質 200 62 500 66 ───────────────────────── 無処理 0 0 ─────────────────────────
【0050】
【発明の効果】本発明のMK8383物質は、農園芸用殺菌剤
としての用途が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】MK8383物質のメタノール溶液中でのUVスペク
トラムを表す図面である。
【図2】MK8383物質のKBr法によるIRスペクトラムを
表す図面である。
【図3】MK8383物質の重メタノール溶液中での400 MHz
1H NMRスペクトルを表す図面である。
【図4】MK8383物質の重メタノール溶液中での100 MHz
13C NMRスペクトルを表す図面である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C12R 1:645) (72)発明者 岩田 道顕 神奈川県横浜市港北区師岡町760番地 明治製菓株式会社薬品総合研究所内 (72)発明者 指田 玲子 神奈川県横浜市緑区鴨志田町1000番地 三菱化成株式会社総合研究所内 (72)発明者 千葉 紀子 神奈川県横浜市緑区鴨志田町1000番地 三菱化成株式会社総合研究所内 (72)発明者 三川 隆 神奈川県横浜市緑区鴨志田町1000番地 三菱化成株式会社総合研究所内 (56)参考文献 国際公開99/11596(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記(I)式 【化1】 で表されるMK8383物質またはその塩。
  2. 【請求項2】 フォマ属に属するMK8383物質生産菌を培
    養し、その培養物からMK8383物質を採取することを特徴
    とする、請求項1記載のMK8383物質の製造法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のMK8383物質またはその塩
    を有効成分とする農園芸用殺菌剤。
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