JPH06321710A - 農園芸用殺菌剤及びその製造方法 - Google Patents

農園芸用殺菌剤及びその製造方法

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JPH06321710A
JPH06321710A JP5110320A JP11032093A JPH06321710A JP H06321710 A JPH06321710 A JP H06321710A JP 5110320 A JP5110320 A JP 5110320A JP 11032093 A JP11032093 A JP 11032093A JP H06321710 A JPH06321710 A JP H06321710A
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Japan
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mba176
culture
agricultural
active ingredient
strain
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JP5110320A
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English (en)
Inventor
Kinchiyuu Shiyou
金忠 肖
Shigenori Kumazawa
茂則 熊沢
Nobuji Yoshikawa
展司 吉川
Takafumi Tomita
啓文 富田
Chizuko Kimura
千寿子 木村
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Mitsubishi Kasei Corp
Original Assignee
Mitsubishi Kasei Corp
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  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 植物病原菌感染抑制作用を有する生理活性物
質を有効成分とする農園芸用殺菌剤、及びその有効成分
の製造方法を提供する。 【構成】 フェオスフェリア属に属する微生物を培養し
て、下記[I]式で表される生理活性物質を培養物中に
生成蓄積せしめ、これを菌体から採取する。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、農園芸用殺菌剤及びそ
の製造方法に関し、詳しくは、フェナレノン誘導体であ
るMBA176−19Bを有効成分として含有する農業
用殺菌剤及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、微生物が産生する生理活性物
質として数多くの抗生物質が発見され、医薬品、動物用
薬品、農薬などの分野で実用化されている。抗生物質
は、そのスクリーニング技術の進歩に伴い、抗菌力、抗
菌スペクトルの拡大等を目指して盛んに研究開発が進め
られているものの、一方ではその多用から耐性菌が出現
する等の問題も生じている。よって現在では、新しい作
用を有する新規な薬剤の提供が切に望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、植物病原菌
による感染を抑制する作用を有する生理活性物質を有効
成分とする農園芸用殺菌剤、及びその有効成分の製造方
法を提供することを課題とする。
【0004】
【問題点を解決するための手段】本発明者らは、上記の
問題点に鑑み、新しい抗生物質を提供するべく深索する
を重ねてきた結果、フェオスフェリア属に属するある菌
株の培養物中に、植物病原菌による感染を抑制する活性
を有する物質が生産されていることを初めて見い出し、
その有効成分であるMBA176−19Bを単離、精製
して、本発明を完成するに至った。
【0005】すなわち本発明は、下記[I]式で表され
るMBA176−19Bを有効成分として含有する農園
殺菌剤、及びMBA176−19Bを産生するフェオス
フェリア属に属する微生物を培養して、MBA176−
19Bを培養物中に生成蓄積せしめ、その培養物から採
取することを特徴とするMBA176−19Bの製造方
法である。
【0006】
【化2】
【0007】尚、本明細書において、「培養物」とは、
菌体及び/又は培養上清をいうものとする。以下、本発
明を詳細に説明する。
【0008】<1>本発明の農園芸殺菌剤 本発明の農園芸殺菌剤は、有効成分として上記[I]式
で表されるMBA176−19Bを配合したものであ
る。この化合物は、本発明者がフェオスフェリア属に属
するある菌株の培養物中から、植物病原菌による感染を
抑制する活性を有する物質として単離、精製したとこ
ろ、Ayerら[カナディアン ジャーナルオブ ケミ
ストリ(Can.J.Chem)、64巻、1585ペ
ージ(1986)]が報告した植物病原菌グレメニーラ
・アビーチナ(Gremmeniella abiet
ine)の代謝物の一種と同一化合物であることが判明
し、MBA176−19Bと命名した。
【0009】本発明の農園芸殺菌剤には、いかなる方法
で得られるMBA176−19Bを用いてもよく、例え
ば上記Ayerらの方法に従ってグレメニーラ・アビー
チナの培養物から得たものを使用してもよい。また、本
発明者がMBA176−19Bを生産することを見い出
したフェオスフェリア属(Phaeosphaeri
a)に属する微生物を培養し、その培養物中から単離、
精製したものも望ましく使用することができる。また、
化学合成によりMBA176−19Bを製造してもよ
い。
【0010】MBA176−19Bは、後述の表1に示
したように、灰色カビ病菌等の植物病原菌による植物へ
の感染を特異的に阻止する作用を有する。灰色カビ病菌
は、ぶどう、キュウリ、エンドウ、イチゴなど幅広い植
物種に病気を引き起こし、現存する殺菌剤に対して耐性
菌が出現しやすいなどのことから、農業生産上問題にな
っている。このような植物病原菌該菌に対して有効な感
染抑制活性を有するMBA176−19Bは、これまで
の既存殺菌剤とは構造的に全く異なることから新しい作
用機種が期待され、本菌による植物病気の治療又は予防
のための農薬品として有効に使用し得る。
【0011】本発明の農園芸殺菌剤を農薬として使用す
る場合、MBA176−19Bあるいはフェオスフェリ
ア属菌やグレメニーラ・アビーチナ等からの粗精製物を
単独使用してもよいが、有効成分の分散を良好にするた
めに、担体や助剤を添加して、例えば、乳剤、水和剤、
粉剤、粒剤等の形態で使用するのが好ましい。
【0012】担体としては、水、メタノール、エタノー
ル、エチレングリコール、アセトン、メチルエーテル、
エチルエーテル、ガソリン、ケロシン、灯油、ベンゼ
ン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ジクロル
エタン、四塩化炭素、ジメチルホルムアミド等の液体担
体、あるいはカオリン、クレー、タルク、ベントナイ
ト、珪藻土等の固体担体等が挙げられる。
【0013】また、展着剤、分散剤、乳化剤、浸透剤等
の助剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアリルエ
ーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノアルキレー
ト等の非イオン系界面活性剤、アルキルベンゼンスルホ
ン酸塩、リグニンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸塩
等のアニオン系界面活性剤、アルキルジメチルベンジル
アンモニウムクロライド、アルキルピリジニウムクロラ
イド等のカチオン系界面活性剤などが使用される。
【0014】本発明の殺菌剤を植物に直接施用する場
合、有効成分として通常100〜500ppm程度が使
用される。なお、本剤の薬効を阻害しない他の殺菌剤、
殺虫剤、除草剤、肥料等を併用することができる。
【0015】 <2>本発明のMBA176−19Bの製造方法 MBA176−19Bは、MBA176−19Bを産生
するフェオスフェリア属に属する微生物を培養して、M
BA176−19Bを培養物中に生成蓄積せしめ、その
培養物から採取することを特徴とする。
【0016】上記微生物としては、フェオスフェリア属
に属し、MBA176−19Bを生産する能力を有する
ものであれば特に制限はされない。具体的には、フェオ
スフェリア・ロゼリィアナ(Phaeosphaeri
a rousseliana)などが挙げられ、より好
ましくは本発明者が能登半島にて採取した植物枯れ茎よ
り分離したフェオスフェリア・ロゼリィアナL2144
株が挙げられる。以下に、上記微生物の培養、MBA1
76−19Bの単離、精製について詳しく説明する。
【0017】(1)培養 本発明においては、フェオスフェリア属に属する微生物
を、通常の微生物が利用し得る栄養物を含有する培地で
培養する。栄養源としてはグルコース、水飴、デキスト
リン、シュクロース、澱粉、糖蜜、動・植物油などを使
用できる。また、窒素源として、大豆粉、小麦胚芽、コ
ーンスティープ・リカー、綿実粕、肉エキス、ペプト
ン、酵母エキス、硫酸アンモニウム、硝酸ソーダ、尿素
などを使用できる。その他、必要に応じて、ナトリウ
ム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、コバルト、
塩素、燐酸、硫酸及びそのほかのイオンを生成すること
のできる無機塩類を添加することは有効である。また菌
の生育を助け、MBA176−19Bの生産を促進する
ような有機物及び/又は無機物を適当に添加することが
できる。
【0018】培養法としては、好気的条件下での培養
法、特に深部培養法が最も適している。培養に適当な温
度は10〜30℃であるが、多くの場合20〜27℃付
近で培養する。MBA176−19Bの生産は、培地や
培養条件により異なるが、振盪培養、タンク培養とも通
常3〜10日の間でその蓄積が最高に達する。培養物中
のMBA176−19Bの蓄積が最高になった時に培養
を停止し、培養物から目的物質を単離、精製する。
【0019】 (2)MBA176−19Bの単離、精製 本発明のMBA176−19Bは、菌体及び培養上清の
いずれからも得られる。また、MBA176−19Bを
培養物から単離、精製するには、不純物との溶解度差を
利用する手段、溶媒分配の差を利用する溶媒抽出手段、
吸着親和力の差を利用する手段、分子量の差を利用する
手段のいずれも、それぞれ単独、またはそれらを適宜組
み合わせて、或いは反復して使用される。
【0020】すなわち、培養物中に存在する植物病原菌
感染抑制活性を有する区分を酢酸エチル等で抽出し、減
圧下で濃縮し、濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラ
フィー、LH−20カラムクロマトグラフィー、高速液
体クロマトグラフィーなどを組み合わせて精製すると、
高純度のMBA176−19Bが得られる。例えば、移
動相をアセトニトリル−水(70:30)とし、逆相カ
ラム(マイクロボンダスフェアーODS、直径2cm、
長さ15cm、Waters社製)を用い、移動相流速
10ml/分で高速液体クロマトグラフィーを行うと、
MBA176−19Bは9.5分前後で溶出される。
【0021】 <3>フェオスフェリア・ロゼリィアナL2144株 次に、MBA176−19Bを産生するフェオスフェリ
ア属に属する微生物として、本発明者が単離した新規菌
株L2144株(以下、「本菌株」又は「L2144」
と略記することがある)の微生物学的性質について説明
する。
【0022】(1)形態学的特徴 本菌株は、イネ科植物体上に生じ、宿主植物上に散生す
る子嚢果を有する。この子嚢果は、始めは植物表皮下に
埋没して生じ、後に表皮を破り露出する。子嚢果は、直
径150〜180μmの亜球形であり、褐色の綿毛状菌
糸に被われていて、頚部を欠いている。子嚢果の隔壁
は、2〜3層の薄い層からなり、その細胞は多角形で、
比較的柔軟である。
【0023】子嚢は多数生じ、54.7〜65.6μm
×9.3〜11μmの円筒形であり、基部に向かって埋
まり、短柄を有する。また子嚢は、頂端は丸く、二重壁
構造を有し、厚膜で、8胞子性である。
【0024】偽側糸は豊富に生じ、糸状で隔壁を有す
る。子嚢胞子は、子嚢内に2列状に配列し、20.3〜
23μm×4.7μmの細長い楕円形であり、黄褐色を
呈する。また、子嚢胞子は5隔壁を有し、上から2番目
の細胞がやや膨大し、狭窄した細胞を欠く。
【0025】(2)各種培地上における性状 (イ)ジャガイモ・ブドウ糖寒天培地(PDA)上で2
7℃、10日〜3週間培養したときの性状 コロニーはビロード状で、始めは黄褐色を呈し、後にオ
リーブ褐色となる。コロニーの裏面は、暗褐色からオリ
ーブ褐色を呈する。気生菌糸は豊富に生じ、淡褐色を呈
し、巾3〜4.8μmであり、隔壁を有し、分枝する。
基底菌糸は、放射状に伸長し、かつ分枝し、巾6.0〜
13μmであり、隔壁を有する。PDA上3週間の培養
では、子嚢果(テレオモルフ)及びアナモルフの形成は
観察されなかった。
【0026】(ロ)麦芽寒天培地(MA)上で27℃、
10日〜3週間培養したときの性状 コロニーは、ビロード状〜綿毛状であり、始めは淡褐
色、後に暗褐色〜オリーブ褐色を呈する。コロニーの裏
面は、黒褐色を呈する。気生菌糸は豊富に生じ、淡褐色
〜オリーブ褐色を呈し、巾4〜5.2μmであり、隔壁
を有し、分枝する。基底菌糸は、放射状に伸長し、かつ
分枝し、巾6.0〜14.4μmであり、隔壁を有す
る。MA上3週間の培養では子嚢果(テレオモルフ)及
びアナモルフの形成は観察されなかった。
【0027】(3)生理的性状 (イ)最適生育範囲 最適pH : 5〜7(LCA液体培地「三浦宏一郎
他、日菌報 11、116〜118、1970参照」中、10日間培
養) 最適温度 : 27℃(PDA寒天培地上、10日間培
養) (ロ)生育の範囲 pH : 3〜9(LCA液体培地中、10日間培養) 温度 : 10〜30℃(PDA寒天培地上、10日間
培養)
【0028】(4)分類学的考察 (イ)綱、目及び科レベルでの同定 本菌株(L2144)は、イネ科植物体上に生じ、亜球
形の子嚢果を単生し、永続性の偽側糸(pseudoparaphys
is)を有する。子嚢は、二重壁構造を形成し、子嚢胞子
は隔壁を有し、多室細胞からなる特徴を有する。
【0029】これらの特徴から、本菌株は、L. Holm, S
ymb, Bot, Upsal., 14(3):1-188(1957); E .S. Luttrel
l, Loculoascomycetes, in THE FUNGI, vol 4A(ed. G.
C.Ainsworth等), 135-219(1973); J. A. von Arx &
E, Muller, Stud. Mycol., 9:1-159(1975)によって分類
されている小房子嚢菌綱、Pleosporales
目、Pleosporaceae科に属する。
【0030】(ロ)属レベルの同定 本菌株(L2144)は、1)イネ科植物体上に生じ、
2)子嚢果は亜球形であり、3)子嚢果外壁は豊富な褐
色糸状菌糸に被われ、4)隔壁は、2〜3層の多角状細
胞からなり、柔軟な特徴を生する。これらの性状につい
て、L. Holm, Symb, Bot, Upsal., 14(3):1-188(1957);
E .S. Luttrell, Loculoascomycetes,in THE FUNGI, v
ol 4A(ed. G. C. Ainsworth等), 135-219(1973); J.
A. vonArx & E, Muller, Stud. Mycol., 9:1-159(1975)
の分類系によって、Pleosporaceae科の属
を検索したところ、本菌株(L2144)は、Phae
osphaeria属に属することが判明した。
【0031】(ハ)種レベルの同定 G. A. Hedjaroude, Sydowia 22:57-107(1968); A. Lleu
chtmann, Sydowia 37:75-194(1985)のPhaeosph
aeria属のモノグラフによれば、本属には21種が
記載されている。これらの種は、各々子嚢果の諸性質、
すなわち子嚢果の形、大きさ、頚部の有無、隔壁構造及
び胞子の形、大きさ、隔壁数、膨大細胞の位置、ゼラチ
ン鞘の有無、胞子の色調などによって区別されている。
【0032】本菌株(L2144)は、1)子嚢果に頚
部を欠き、2)子嚢胞子は、20.3〜23μm×4.
7μmの細長い楕円形であり、3)子嚢胞子は5隔壁を
有し、第2細胞がやや膨大し、4)胞子は黄褐色、平滑
の特徴を有する。これらの性状について上述の文献によ
って種の検索をしたところ、本菌株(L2144)は、
Phaeosphaeria rousseliana
に関する記載によく合致した。従って本菌株は、P.r
ousselianaであると同定し、P.rouss
eliana L2144と命名した。
【0033】尚、本菌株は、通商産業省生命工学工業技
術研究所にFERM P−13556として寄託されて
いる。
【0034】
【実施例】以下に試験例及び実施例を挙げて、更に具体
的に本発明を説明する。 <1>MBA176−19Bの製造 (1)培養 マルトエキス3.5%、コーンスターチ3%、コーンス
ティープ・リカー1.5%、ファーマメデイア1.5
%、サングレイン0.5%、CaCO3 0.2%を含有
する培地(pH6.0)を40mlずつ200ml三角
フラスコ20本を分注し、121℃において20分間高
圧滅菌した。これにMBA176−19B生産菌として
フェオスフェリア・ロゼリィアナL2144株を1白金
耳ずつ植菌し、27℃において4日間、210回転にて
振盪培養した。
【0035】別に、上記に同一組成の主醗酵培地を調製
し、その80mlずつを500ml三角フラスコ100
本に分注し、121℃において20分間高圧滅菌した。
この主醗酵培地に前記種培養液を4mlずつ接種し、2
7℃において4日間、210回転にて振盪培養する。得
られた培養物を遠心分離して、培養上清及び培養菌体を
得た。
【0036】(2)MBA176−19Bの精製 上記で得られた菌体をまずメタノール4lで抽出し、メ
タノールをろ過して除去した。次いで、乾燥した菌体を
酢酸エチル3lで撹拌しながら2回抽出した後、ろ過し
て菌体を除いた。得られた抽出液6lを減圧下で濃縮
し、27gの油状物を得た。この油状物質をクロロホル
ムに溶解し、石油エーテル/クロロホルム/酢酸を5:
10:1の割合で混合した混合液で充填したシリカゲル
100(Merck製)1lのカラムに乗せ、上記の同
混液にて展開するクロマトグラフィーを行い、活性のあ
ったフラクションを集め、溶媒を減圧留去し、活性画分
10gを得た。
【0037】さらにこの活性画分を、クロロホルム/メ
タノール1:1の割合で混合した混合液にて展開するク
ロマトグラフィーを行い、活性のあったフラクションを
集め、溶媒を減圧留去し、活性画分6.2gを得た。
【0038】最後に、活性画分をアセトニトリル液に溶
解し、移動相アセトニトリル−水(70:30)、逆相
カラム(マイクロボンダスフェアーODS、直径2c
m、長さ15cm、Waters社製)を用いた高速液
体クロマトグラフィーを行った。移動相流速10ml/
分にて注入後9.5分前後にて流出するフラクションを
集め、溶媒を減圧留去し、MBA176−19Bの粉末
2.2gを得た。MBA176−19Bはクロロホルム
/メタノールの溶液から結晶し、黄緑色の結晶を得た。
【0039】精製したMBA176−19Bは下記の理
化学物質より構造解析をした結果、上記構造式[I]に
示す化学構造を有することが判明し、Ayerらが19
86年に報告した植物病原菌グレメニーラ・アビーチナ
(Gremmeniellaabietina)の代謝
物の一種と同一なものであることが判った[カナディア
ン ジャーナル オブ ケミストリ(Can.J.Ch
em.)64巻、1585ページ(1986)]。
【0040】1)外観:黄緑色結晶
【0041】2)融点 115〜120℃分解
【0042】3)分子量: 358 [FAB-MS,m/z341(M+H-H2O)+, 364(M+Na-H2O)+]
【0043】4)分子式 C19187
【0044】5)元素分析値: 炭素 63.46% 水素 5.35%
【0045】6)紫外部吸収スペクトル:アセトニトリ
ル溶液中で測定したスペクトルを図1に示す λmax nm(ε) 220(23,000), 261(35,400), 335(15,70
0)
【0046】7)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム
錠剤中で測定したスペクトルを図2に示した
【0047】8)水素核磁気共鳴スペクトル:重クロロ
ホルム溶液中、主なピークは下記の通り。 {1.29,1.34}(s,3H), 1.46(d,3H), {1.51,1.53}(s,3H),
2.76(s,3H),4.60(m,1H), {6.70,6.75}(s,1H), {12.78,1
3.07}(s,1H),{13.28,13.89}(s,1H)
【0048】9)溶解性:クロロホルム、酢酸エチル、
アセトニトリルに可溶 ヘキサン、メタノール、水に不溶
【0049】10)呈色反応:硫酸、モリブデン酸、塩
化第二鉄試薬に陽性 ニンヒドリン試薬に陰性
【0050】尚、MBA176−19Bは、完全無水状
態下では脱水して下記[II]式に示す化学構造を持つこ
とが推定される。さらに、MBA176−19Bは酸性
アセトン溶液中において、下記[III]式に示す化学構
造を持つ物質に変換することがある。
【0051】
【化3】
【0052】一方、上記培養上清6lの酢酸エチル抽出
物から、上記菌体からと同様な精製方法で、MBA17
6−19B0.3gを得た。
【0053】
【試験例】次に、上記実施例で得られたMBA176−
19Bの灰色カビ病菌((Botritis cine
rea))に対する感染抑制活性を試験した。
【0054】小型ポットに植えた1葉期のキュウリ幼苗
(品種、四葉)に、MBA176−19Bの所定濃度水
溶液(4%アセトン含有)10mlを散布し、風乾燥、
ジャガイモ煎汁培地上で形成させた灰色カビ病菌の胞子
懸濁液を接種し、5日後に葉身上に形成された病斑の面
積率を調査した。防除効果は、MBA176−19B散
布無処理区のポットに同様に灰色カビ病菌を接種後、病
班の面積率を調査し、下記式により算出した。結果を表
1に示す。
【0055】
【数1】防除効果(%)={(無処理区の病斑面積率−
処理区の病斑面積率)/(無処理区の病斑面積率)}×
100
【0056】
【表1】 この結果から明らかなように、本発明の農園芸用殺菌剤
の有効成分であるMBA176−19Bは、灰色カビ病
菌に対して感染抑制作用を有する。
【0057】
【発明の効果】本発明の殺菌剤の有効成分となるMBA
176−19Bは、植物病原菌、特に灰色カビ病菌に対
して良好な感染抑制活性を有しており、殺菌剤としての
有用性が期待される。このMBA176−19Bは、本
発明の製造方法により得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 MBA176−19Bのアセトニトリル溶液
中12.5μg/mlの紫外部吸収スペクトルを示す図
である。
【図2】 MBA176−19Bの臭化カリウム錠剤中
での赤外部吸収スペクトルを示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 富田 啓文 神奈川県横浜市緑区鴨志田町1000番地三菱 化成株式会社総合研究所内 (72)発明者 木村 千寿子 神奈川県横浜市緑区鴨志田町1000番地三菱 化成株式会社総合研究所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記[I]式で表されるMBA176−
    19Bを有効成分として含有する農園芸用殺菌剤。 【化1】
  2. 【請求項2】 請求項1記載のMBA176−19Bを
    産生するフェオスフェリア属に属する微生物を培養し
    て、MBA176−19Bを培養物中に生成蓄積せし
    め、その培養物から採取することを特徴とするMBA1
    76−19Bの製造方法。
JP5110320A 1993-05-12 1993-05-12 農園芸用殺菌剤及びその製造方法 Pending JPH06321710A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0742215A1 (de) * 1995-05-05 1996-11-13 Hoechst Aktiengesellschaft Cillianon, Antibiotikum aus Penicillin spe., und chemische Derivate davon, Verfahren zur Herstellung und Verwendung derselben
WO2019119082A1 (pt) * 2017-12-20 2019-06-27 Universidade Estadual De Campinas - Unicamp Processo de obtenção do fungo phaeosphaeria sp. e seu caldo fermentado e seus usos

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EP0742215A1 (de) * 1995-05-05 1996-11-13 Hoechst Aktiengesellschaft Cillianon, Antibiotikum aus Penicillin spe., und chemische Derivate davon, Verfahren zur Herstellung und Verwendung derselben
WO2019119082A1 (pt) * 2017-12-20 2019-06-27 Universidade Estadual De Campinas - Unicamp Processo de obtenção do fungo phaeosphaeria sp. e seu caldo fermentado e seus usos

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