JPH101407A - イネ科作物の病害の防除剤及び防除方法 - Google Patents

イネ科作物の病害の防除剤及び防除方法

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JPH101407A
JPH101407A JP8151192A JP15119296A JPH101407A JP H101407 A JPH101407 A JP H101407A JP 8151192 A JP8151192 A JP 8151192A JP 15119296 A JP15119296 A JP 15119296A JP H101407 A JPH101407 A JP H101407A
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JP
Japan
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ketomium
strain
rice
disease
controlling
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JP8151192A
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Yoko Fukuhara
陽子 福原
Masao Yamada
昌雄 山田
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Japan Tobacco Inc
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Japan Tobacco Inc
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 ケトミウム属に属し、イネ科作物の病害
に対して防除能を有する微生物の菌体、又は代謝生産物
を有効成分として含有するイネ科作物の病害の防除剤、
及び当該防除剤を、イネ科作物に散布することを特徴と
するイネ科作物の病害の防除方法。 【効果】 イネ科作物の病害の新規な防除剤及び防除方
法を提供する。この防除剤及び防除方法は、環境汚染の
心配がなく、有用植物に悪影響を及ぼすこともない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微生物を利用した
イネ科作物の病害、特にイネいもち病、イネ紋枯病及び
イネ白葉枯病に対する防除剤、及び防除方法に関する。
【0002】
【従来の技術】稲作において、イネいもち病は最も多発
し減収を引き起こす病害であり、その防除のために通
常、毎年3、4回の殺菌剤の散布が行われる。しかしな
がら、近年化学農薬による環境汚染の問題から、化学農
薬に頼らない作物病害の防除剤とその利用法の開発が望
まれている。
【0003】そこで、微生物を用いた作物病害の防除法
が考えられたが、その手段は大きく2つに分けることが
できる。一つはあるイネの品種に対して非親和性を示す
イネいもち病菌あるいはイネに対して弱い病原力を示す
イネ分離菌を接種することによって、イネの病害抵抗性
を誘導し、いもち病を防除する方法である。このような
方法としては、例えば、東北農業試験場研究報告第75号
27−39頁(1987年)、日本植物病理学会報第56巻第2号
273−275頁(1990年)、北日本病害虫研究会報第30号53
−55頁(1979年)等に記載された方法がある。また、本
発明者も、雑草の病原菌を用いて、いもち病を防除する
方法を発明しており、この発明について先に出願を行っ
ている(PCT公開番号W095/17820)。
【0004】他のひとつは、イネいもち病菌に対して拮
抗作用を示す微生物を用いて防除する方法である。この
ような方法としては、例えば、抗いもち病性抗生物質を
生産する細菌を接種する日本植物病理学会報第58巻第3
号380−385頁(1992年)記載の方法、特開平2−350
76号公報記載の方法、特開平5−65209号公報記
載の方法などがある。また、Proceeding of Internatio
nal Symposium on Rice Blast Disease (1994) 521‐52
7頁記載の方法も本発明と同種の1菌株を拮抗微生物と
して用いている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
非親和性のいもち病菌を利用する方法には以下のような
問題がある。即ち、非親和性という性質は、病原菌のレ
ースと作物の品種間の相対的な性質であるため、あるレ
ースはある品種に対して非親和性を示しても他の品種に
対しては親和性を示す場合がある。このため、イネいも
ち病菌自体をイネ耕作地に散布する方法は、親和性を示
す品種にいもち病を発生させるおそれがある。とりわ
け、様々な異なる品種が栽培されている地域では、親和
性のイネ品種があれば、いもち病が発生する可能性が高
くなる。さらに、非親和性が親和性に変異することがあ
るため、散布する非親和性を示す菌の中に親和性を示す
菌が混入する危険がある。また上記のイネから分離した
弱病原菌を利用する方法も同様の危険がある。
【0006】上記のいもち病菌に対して拮抗作用を示す
微生物を利用する方法は、一般に防除効果が低い場合が
多い。例えば、上記日本植物病理学会報第58巻第3号
記載の方法では、いもち病に対する防除効果は50%前後
にすぎない。また上記 Proceeding of International S
ymposium on Rice Blast Disease (1994) 521‐527頁記
載の方法では、いもち病の病斑形成を完全に抑制するに
は、ケトミウム・グロボサム菌の最も活性の高い菌株を
用いても、いもち病菌胞子の30倍以上の拮抗菌の胞子
を必要とし、さらに本発明の菌株とは異なり、イネ紋枯
病及びイネ白葉枯病に対する防除効果は見出されていな
い。さらにこれらの方法で用いる微生物は、有用植物の
病原菌である場合が多く、他の有用作物に害を及ぼす危
険性がある。例えば、特開平2−35076号公報記載
の方法ではグラジオラス軟腐細菌病菌を用いており、特
開平5−65209号公報記載の方法ではイネ馬鹿苗病
菌を用いている。
【0007】以上のような理由から、微生物を用いた作
物病害の防除方法は、社会的な要請が高いにもかかわら
ずほとんど利用されていないのが現状である。これを解
決する方法として、自然環境に常在する微生物の中で植
物に病原性を示さず作物病原菌にのみ強い拮抗力を有す
る微生物を利用することが考えられる。本発明は、この
ような考察に基づいて、有用植物の生育に影響を与える
ことなく、イネ科作物の病害を防除する手段を提供する
ことを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、自然環境に
常在する微生物で有用植物の生育に影響を与えない微生
物について研究を重ねた結果、ケトミウム属の中にイネ
科作物の病害に対し高い防除効果を示すものがあること
を見いだし、本発明を完成した。即ち、本発明は、ケト
ミウム属に属し、イネ科作物の病害に対して強い拮抗力
を有し、高い病害防除効果を有する微生物の菌体及び/
又は代謝生産物(培養ろ液)を有効成分として含有する
ことを特徴とするイネ科作物の病害の防除剤である。
【0009】また、本発明は、上記記載のイネ科作物の
病害の防除剤を、イネ科作物に散布することを特徴とす
るイネ科作物の病害の防除方法である。更に、本発明
は、イネ科作物の病害に対して防除能を有するケトミウ
ム・ブラジリエンスJT−866株、ケトミウム・コク
リオイデスJT−867株、ケトミウム・スピラーレJ
T−868株、又は、ケトミウム・グロボサムJT−8
69株である。
【0010】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に
用いる微生物は、ケトミウム(Chaetomium)属に属し、
イネ科作物の病害に対して防除能を有する微生物であれ
ば、どのようなものでもよい。ケトミウム属における好
ましい種としては、ケトミウム・ブラジリエンス(Chae
tomiumbrasiliense)、ケトミウム・コクリオイデス(C
haetomium cochlioides)、ケトミウム・スピラーレ(C
haetomium spirale)、ケトミウム・グロボサム(Chaet
omium globosum )に属する微生物を挙げることができ
る。ケトミウム・ブラジリエンスに属する好ましい菌株
としては、JT−866株を挙げることができる。ケト
ミウム・コクリオイデスに属する好ましい菌株として
は、JT−867株を挙げることができる。ケトミウム
・スピラーレに属する好ましい菌株としては、JT−8
68株を挙げることができる。ケトミウム・グロボサム
に属する好ましい菌株としては、JT−869株等を挙
げることができる。
【0011】これらの菌株は、工業技術院生命工学工業
技術研究所にそれぞれ以下に示すような番号で寄託され
ている。ケトミウム・ブラジリエンスJT−866株の
寄託番号はFERM BP-5509(原寄託日平成8年4月22
日)、ケトミウム・コクリオイデスJT−867株の寄
託番号はFERM BP-5510(原寄託日平成8年4月22日)、
ケトミウム・スピラーレJT−868株は、FERM BP-55
11(原寄託日平成8年4月22日)、ケトミウム・グロボ
サムJT−869株はFERM BP-5512(原寄託日平成8年
4月22日)である。
【0012】これらのケトミウム属菌は自然環境に常在
し、特に野外の植物体の表面に、それらの植物に全く病
原性を示すことなく存在している。本発明の菌株もこれ
らの植物を摂食した草食動物の糞より分離されたもので
あり、その菌学的性質は以下の通りである。いずれの菌
株も好気性菌であり、オートミール蔗糖寒天培地上で
は、無色の子嚢に8個の子嚢胞子の入った褐色ないしは
暗褐色の子嚢殻を形成する。子嚢胞子は単胞の楕円ない
しはレモン型、色は褐色ないしはオリーブ色で、大きさ
は7.5〜10.5×6〜9μm内外である。そして、JT−
866株及びJT−869株の子嚢殻の頂毛は褐色、表
面は粗雑で波型、湾曲していて、JT−866株では子
嚢胞子はだ円形で子嚢中に単列に並んでいる。JT−8
67株の子嚢殻の頂毛は、暗黄緑色で湾曲、波型または
ゆるくらせん状に捲いている。また、JT−868株の
子嚢殻の頂毛は、淡褐色、表面は粗雑で5〜15回らせ
ん状に捲いている。
【0013】上記結果を大谷吉雄著「日本菌類誌」第3
巻第3号4〜28頁(1995年)、S. UDAGAWA著「Jo
urnal of General and Applied Microbiology 」第6
巻、第4号 223〜251頁(1960年)及び渡辺恒雄著
「土壌糸状菌」112〜122頁(1993年)に記載
されている菌の菌学的性質と比較検討した結果、子嚢殻
の頂毛の形状、子嚢の中の子嚢胞子の配列及び子嚢胞子
の形態等が前記文献に記載されているものと同一である
ことから、JT−866株はケトミウム・ブラジリエン
スに属するものと、JT−867株はケトミウム・コク
リオイデスに属するものと、JT−868株はケトミウ
ム・スピラーレに属するものと、JT−869株はケト
ミウム・グロボサムに属するものと、それぞれ同定し
た。
【0014】JT−866株、JT−867株、JT−
868株及びJT−869株の培養には、特別な方法を
用いる必要はなく、ケトミウム属に属する公知の菌株と
同様の方法を用いることができる。培地としては、資化
可能な炭素源、窒素源、無機物及び必要な生育促進物質
を適当に含有する培地であれば、合成培地、天然培地の
いずれも用いることができる。具体的な培地を例示する
とオートミール蔗糖寒天培地、オートミール寒天培地、
セルロース寒天培地、ジャガイモ蔗糖寒天培地、V−8
ジュース寒天培地、ツアペック−ドックス寒天培地等を
挙げることができるが、セルロースをこれらの培地に加
えるとより多くの子嚢殻が形成される。培養に際して
は、温度を15〜33℃、好ましくは23〜25℃、pHを3〜
10、好ましくは5〜7に維持することが望ましい。以上
のような条件下で2〜3週間程度培養を行うと培地表面
に十分な量の子嚢胞子が形成されてくる。
【0015】本発明のイネ科作物の病害の防除剤は、微
生物の菌体及び/又は代謝生産物(培養ろ液)を使用す
る。微生物の菌体としては、子嚢胞子が好ましい。子嚢
胞子は、菌叢上に滅菌水を注ぎ、筆で培地表面を掻きと
ることにより回収することができる。この方法により直
径9cmのシャーレ1枚あたり1×108 〜109 個の子嚢
胞子を得ることができる。本発明の病害防除剤は、微生
物の菌体あるいは代謝生産物をそのまま直接使用しても
よいが、一般には農薬に使用可能な固体担体または液体
担体と混合して、液剤、水和剤、粉剤、粒剤、乳剤、油
剤、カプセル剤等の製剤形態に調製して使用される。使
用する微生物の量は、防除剤の製剤形態等により異なる
が、子嚢胞子を用いて、液剤とする場合であれば103
107 個/ml、好ましくは104 〜106 個/mlとするの
が適当である。すなわち、Proceeding of Internationa
l Symposium on Rice Blast Disease (1994) 521-527
頁記載のケトミウム属菌による報告では、いもち病菌胞
子の30倍以上の子嚢胞子を散布して防除効果を挙げてい
るが、本発明ではいもち病菌胞子量と同等ないしは1/10
量の子嚢胞子で高い効果を挙げることができる。
【0016】本発明のイネ科作物の病害の防除方法は、
上記の防除剤をイネ科作物に散布することにより行う。
散布量は、防除剤の製剤形態等により異なるが、子嚢胞
子を用いた液剤を使用する場合には、圃場10アール当た
り微生物の子嚢胞子が107〜1012個、好ましくは108〜10
11個になるように散布するのが望ましい。散布の時期
は、特に制限はなく、既に発病しているイネ科作物に散
布してもよく、発病する前のイネ科作物に予防的に散布
してもよい。また、防除の対象とするイネ科作物の葉令
についても特に制限はない。本発明の防除対象となる病
害としては、イネいもち病、イネ紋枯病、イネ白葉枯病
を挙げることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
【0018】
【実施例】
〔実施例1〕 JT−866株、JT−867株、JT
−868株、JT−869株の選抜 日本全国からウサギ、ヒツジ、ヤギ、シカ等の草食動物
の糞を採取し、これらから微生物を分離した後、以下に
示す方法によりイネいもち病に対する防除効果を調べ
た。
【0019】上記微生物をPDA培地にて培養し、シャ
ーレ(φ9cm)1枚分の胞子を回収して、イネいもち病
菌106個と混合し、イネ(品種コシヒカリ)に接種し
た。約1ヵ月後、いもち病によるイネの枯死率を達観評
価し、最も効果の高かった菌株(JT−866株、JT
−867株、JT−868株、JT−869株)を選抜
した。
【0020】
【表1】
【0021】〔実施例2〕 イネいもち病の防除効果 10000分の1アールのポットにイネ(品種コシヒカリ)
の種子を蒔き、約3週間温室で生育させた後、1%硫安
水溶液を肥料として与えた。さらに約1週間、温室でイ
ネを静置し、4、5葉期のイネを防除効果試験に用い
た。
【0022】JT−866株、JT−867株、JT−
868株及びJT−869株をオートミール蔗糖寒天培
地上で、25℃、14日間培養し、子嚢胞子を形成させた。
この子嚢胞子を0.02%Tween20水溶液中で懸濁した
後 105あるいは106子嚢胞子/mlの懸濁液を調製し、
コシヒカリに対して親和性を示すイネいもち病菌 (Pyri
cularia oryzae race 007)の分生子懸濁液(106 分生子
/ml、0.02%Tween20水溶液)と混合して処理液
とした。この混合処理液を直ちに噴霧器を用いて、イネ
に1ポット当たり6ml噴霧処理した後、25℃、100%
湿度に保った接種箱の中に22時間置いた。各処理区につ
いて3ポットを試験に供した。処理1週間後、1葉当た
りの平均病斑数を調査し、下記に示した計算式により防
除価を算出した。
【0023】
【表2】
【0024】表2に示したように、いずれの菌株もいも
ち病菌胞子量と同等ないしは1/10量の子嚢胞子の散布に
よって高いいもち病防除効果を有することが認められ
た。
【0025】〔実施例3〕 イネいもち病の防除効果の
持続性 10000分の1アールのポットにイネ(品種コシヒカリ)
の種子を蒔き、約3週間温室で生育させた後、1%硫安
水溶液を肥料として与えた。さらに約1週間、温室でイ
ネを静置し、4、5葉期のイネを防除効果試験に用い
た。JT−869株をオートミール蔗糖寒天培地上で2
週間培養し、子嚢胞子を形成させた。この子嚢胞子を0.
02%Tween20水溶液中で懸濁した後、105子嚢胞子
/mlの懸濁液を調製し、処理液とした。この子嚢胞子
懸濁液を噴霧器を用いて、イネに1ポット当たり6ml
噴霧処理した後、25℃、100%湿度に保った接種箱の中
に22時間置いた。
【0026】温室に3あるいは7日間静置した後、コシ
ヒカリに対して親和性を示すイネいもち病菌 (Pyricula
ria oryzae race 007)の分生子懸濁液(106 分生子/m
l、0.02%Tween20水溶液)を1ポット当たり6m
l噴霧処理した。またこれとは別にJT−869株の子
嚢胞子懸濁液 105子嚢胞子/ml(0.02%Tween2
0水溶液)の懸濁液と上記イネいもち病菌の分生子懸濁
液(106 分生子/ml)の両者を混合した処理液を調製
し、直ちにイネに1ポット当たり6ml噴霧処理した。
これらの処理液噴霧後、25℃、100%湿度に保った接種
箱の中に22時間置いた。各処理区について3ポット試験
に供した。イネいもち病菌の処理1週間後、1葉当たり
の平均病斑数を調査し、下記に示した計算式により防除
価を算出した。
【0027】
【表3】
【0028】表3に示したように、いずれの試験区にお
いても、JT−869株の処理後の期間にかかわらず、
イネいもち病に対する高い防除効果が認められた。
【0029】〔実施例4〕 培養液酢酸エチル抽出画分
のイネいもち病菌発芽抑制効果 JT−866株、JT−867株、JT−868株、J
T−869株をジャガイモ蔗糖液体培地で約4週間静置
培養した後の培養ろ液200mlを酢酸エチルを加えて
振とうし、酢酸エチル可溶画分を減圧乾燥後、残さをメ
タノール1mlに溶解させ試料溶液とした。イネいもち
病菌の分生胞子懸濁液(104 分生子/ml)1mlに10
μlあるいは 50μlの試料溶液を加え、スライドガラス
上に滴下して湿室下25℃に静置し、16時間後の胞子の
発芽率を計測した。
【0030】
【表4】
【0031】表4に示したように、培養液酢酸エチル抽
出画分を加えた試験区では、いずれも高い発芽抑制効果
が認められた。なお、ケトミウム属菌の培養液の酢酸エ
チル抽出画分の抗いもち病効果の報告は過去にはない。
【0032】〔実施例5〕 培養液酢酸エチル抽出画分
のイネ紋枯病菌抑制効果 JT−866株、JT−867株、JT−868株及び
JT−869株をジャガイモ蔗糖液体培地で約4週間静
置培養した後の培養ろ液200mlを酢酸エチルを加えて振
とうし、酢酸エチル可溶画分を減圧乾燥後、残さをメタ
ノール1mlに溶解させ試料溶液とした。PDA培地上に
イネ紋枯病菌(Rhizoctonia solani AG-1)の菌叢(直
径7mm)と前述の培養液酢酸エチル抽出画分50μlを各
々染み込ませたペーパーディスク(ADVANTEC・TOYO社
製、直径6mm)を3cm離して置き、30℃・2日間培養し
た。増殖進展したイネ紋枯病の菌叢のゆがみの程度を、
コントロールのメタノールと比較した。
【0033】
【表5】
【0034】表5に示したように、培養液酢酸エチル抽
出画分を加えた試験区では、いずれも菌叢生育抑制効果
が認められた。
【0035】〔実施例6〕 培養液酢酸エチル抽出画分
のイネ白葉枯病菌抑制効果 JT−866株、JT−867株、JT−868株及び
JT−869株をジャガイモ蔗糖液体培地で約4週間静
置培養した後の培養ろ液200mlを酢酸エチルを加えて振
とうし、酢酸エチル可溶画分を減圧乾燥後、残さをメタ
ノール1mlに溶解させ試料溶液とした。イースト・エキ
ストラクト&ニュートリエント液体培地で28℃、16時間
培養した、イネ白葉枯病菌(Xanthomonas campestris p
v. oryzae)106 個を寒天に混ぜ、ニュートリエント寒
天培地上に流し重層した。重層した寒天上に前述の培養
液酢酸エチル抽出画分50μlを各々染み込ませたペーパ
ーディスク(ADVANTEC・TOYO社製、直径6mm)を置き、2
8℃・3日間培養した。イネ白枯病菌の生育阻止円の直
径を測定した。
【0036】
【表6】
【0037】表6に示したように、培養液酢酸エチル抽
出画分を加えた試験区では、いずれも生育抑制効果が認
められた。
【0038】〔使用例〕 製剤例1 (液剤) JT−868株の子嚢胞子(2×109 個)、Twee
n20(4g)を滅菌水20Lに加えて混合し、液剤を調製
した。この液剤をいもち病の発生が予察される1アール
の水田に散布した。
【0039】製剤例2 (水和剤) マルトース9%、クレイ1%、水90%混合液1ml当
たり子嚢胞子(JT−867株)107 個を懸濁した。
これを風乾した後、乾燥物を混合粉砕し、水和剤を調製
した。
【0040】製剤例3 (水和剤) ラクトース9%、ゼオライト1%、水90%混合液を1
ml当たり子嚢胞子(JT−866株)107 個を懸濁
した。これを風乾した後、乾燥物を混合粉砕し、水和剤
を調製した。
【0041】製剤例4 (水和剤) 珪藻土15%、カオリン77%、ポリオキシエチレンア
ルキルフェニルエーテル8%混合液1g当たり子嚢胞子
(JT−867株)107 個を懸濁した。これを風乾し
た後、乾燥物を混合粉砕し、水和剤を調製した。
【0042】製剤例5 (粉剤) ヒドロキシプロピルーβーシクロデキストリン14%、
ホワイトカーボン12%、クレー74%の混合物1g当
たり子嚢胞子(JT−869株)107 個を混合した。
これを乾燥後、均一に粉砕することにより、粉剤を調製
した。
【0043】製剤例6 (粒剤) βーシクロデキストリン15%、デンプン2%、ベント
ナイト18%、炭酸カルシウム36%、水29%の混合
物1g当たり子嚢胞子(JT−866株)107 個を加
えて練った後、造粒機で造粒し、乾燥する事によって、
粒剤を調製した。
【0044】製剤例7 (乳剤) ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸アン
モニウム18%、ポリオキシエチレンノニルフェニルエ
ーテル6%、リン酸トリエチル29%、リン酸トリブチ
ル47%の混合物1g当たり子嚢胞子(JT−867
株)107 個を加えて均一に懸濁し、乳剤を調製した。
【0045】製剤例8 (油剤) スピンドルオイル95%、ひまし油4%、シリコーンオ
イル1%の混合液1ml中に子嚢胞子(JT−869
株)107 個を懸濁し、油剤を調製した。
【0046】製剤例9 (ドライフロアブル剤) アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム12%、ポリエ
チレングリコールエーテル88%の組成物1ml中に子
嚢胞子(JT−868株)107 個を懸濁し、ドライフ
ロアブル剤を調製した。
【0047】製剤例10 (カプセル剤) アルギン酸ナトリウム0.7%、カオリン5%、グリセ
リン15%、水79.3%混合液1ml中に子嚢胞子
(JT−866株)107 個を懸濁し0.2モル酢酸カ
ルシウム溶液中に滴下してカプセル状生成物を得た。
【0048】
【本発明の効果】本発明は、イネ科作物の病害の新規な
病害防除剤及び防除方法を提供する。本発明の防除剤及
び防除方法は、自然界に存在する菌を用いるため環境汚
染の心配がなく、また、従来の微生物防除剤のように有
用植物に悪影響を及ぼすこともない。さらに、既知のケ
トミウム属菌株に比べて、30〜100倍のいもち病抑
制効果を示し、また、イネ科作物病害に対して広い抗菌
スペクトルを有している。従って、本発明は、産業上極
めて有用である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ケトミウム属に属し、イネ科作物の病害
    に対して防除能を有する微生物の菌体及び/又は代謝生
    産物を有効成分として含有することを特徴とするイネ科
    作物の病害の防除剤。
  2. 【請求項2】 ケトミウム属に属し、イネ科作物の病害
    に対して防除能を有する微生物が、ケトミウム・ブラジ
    リエンス、ケトミウム・コクリオイデス、ケトミウム・
    スピラーレ、又はケトミウム・グロボサムに属する微生
    物であることを特徴とする請求項1記載のイネ科作物の
    病害の防除剤。
  3. 【請求項3】 ケトミウム属に属し、イネ科作物の病害
    に対して防除能を有する微生物が、ケトミウム・ブラジ
    リエンスJT−866株、ケトミウム・コクリオイデス
    JT−867株、ケトミウム・スピラーレJT−868
    株、ケトミウム・グロボサムJT−869株よりなる群
    の中から選ばれた少なくとも一菌株であることを特徴と
    する請求項1記載のイネ科作物の病害の防除剤。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の
    イネ科作物の病害の防除剤を、イネ科作物に散布するこ
    とを特徴とするイネ科作物の病害の防除方法。
  5. 【請求項5】 イネ科作物の病害に対して防除能を有す
    るケトミウム・ブラジリエンスJT−866株、ケトミ
    ウム・コクリオイデスJT−867株、ケトミウム・ス
    ピラーレJT−868株、又は、ケトミウム・グロボサ
    ムJT−869株。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR100459066B1 (ko) * 2001-12-18 2004-12-03 한국화학연구원 케토미움 글로보숨 f0142 및 이에 의해 생산된 케토비리딘 a 및 b를 이용한 식물병의 생물학적 방제 방법
CN113862162A (zh) * 2021-11-11 2021-12-31 河南省农业科学院植物保护研究所 一种球毛壳菌及其在制备防治小麦纹枯病药剂中的应用

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