JP3605153B2 - L−フラクトースの製造方法 - Google Patents
L−フラクトースの製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3605153B2 JP3605153B2 JP26440394A JP26440394A JP3605153B2 JP 3605153 B2 JP3605153 B2 JP 3605153B2 JP 26440394 A JP26440394 A JP 26440394A JP 26440394 A JP26440394 A JP 26440394A JP 3605153 B2 JP3605153 B2 JP 3605153B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- fructose
- sorbitol
- producing
- bacteria
- klebsiella
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
Description
【産業上の利用分野】
本発明は、L−フラクトースの製造方法に関するものであり、更に詳細には、クレブジエラ属に属し、L−ソルビトールからL−フラクトース産生能を有する細菌を用いて、L−ソルビトールからL−フラクトースを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
L−フラクトースは、ケトヘキソースに分類される単糖類で、自然界には殆ど存在しない希少糖質である。その製造方法としては、原理的には、有機化学的手法によりL−グルコースまたはL−マンノースをカセイソーダ、ピリジンなどのアルカリ性薬剤の共存下で異性化させ、L−フラクトースを製造することが可能である。しかし、実際には、原料となるL−グルコースまたはL−マンノースを入手することが困難であり、L−フラクトースを十分量製造する適当な方法は現在まで報告されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、生化学工業が急速に発達し、糖質化学の分野においても、新たな糖質の開発が望まれている。L−フラクトースは、大量製造方法が確立されていない。従って、未だ、食品工業、医薬品工業、化学工業などの工業原料として使用されるに至っていない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、L−フラクトースを生化学的手段により大量、安価に製造することを目的に鋭意研究した。
【0005】
その結果、クレブジエラ属に属し、L−ソルビトールからL−フラクトース産生能を有する細菌が、水溶液中のL−ソルビトールを、容易にL−フラクトースに変換することを見い出し、これを採取することにより、L−フラクトースが高収率で製造されることを確認して、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明において、L−ソルビトールからL−フラクトースを製造するのに使用される細菌はクレブジエラ属に属し、L−ソルビトールからL−フラクトース産生能を有する細菌である。
【0007】
本発明でいう、クレブジエラ属に属し、L−ソルビトール から L−フラクトース産生能を有する細菌は、L−ソルビトールを含有する水溶液に接触し、L−ソルビトールからL−フラクトースを産生し得る微生物であればよく、例えば、クレブジエラ プランティコーラ IFO 3317、または、この変異株などの細菌が好適であり、通常、これら細菌を栄養培地で培養し、望ましくは、振盪、通気攪拌などの好気的条件下で培養し、培養中に、または得られた細菌(生菌体)を用いて、水溶液中のL−ソルビトールをL−フラクトースに変換させて、生成するL−フラクトースを採取すればよい。
【0008】
培養方法としては、クレブジエラ属に属する細菌が必要とする栄養源、例えば、炭素源、窒素源、無機塩などを含有する栄養培地、望ましくは、微酸性乃至微アルカリ性の液体培地に、L−ソルビトールからL−フラクトース産生能を有する細菌を植菌し、温度約20乃至35℃で、1乃至10日間好気的条件下で培養すればよい。とりわけ、炭素源として、例えば、キシリトール、D−タリトール、L−アラビトール、およびグリセロールなどの1種または2種以上の炭素源とともに他の各種栄養源を含有する液体培地で好気的に培養するのが望ましい。
【0009】
前述のような培養方法によって得られた細菌(生菌体)を、L−ソルビトールを含有する水溶液と接触、望ましくは、振盪、通気攪拌、酸素の圧入などの好気的条件下で接触させ、その糖質を、L−フラクトースに変換させることができる。この変換に際して、反応液中にエチルアルコール、グリセロール、D−マンニトール等を共存させると、L−ソルビトールからL−フラクトースへの変換速度が速くなり好都合である。
【0010】
この変換に用いられる細菌は、培養液中のそれを利用することも、また、培養液から分離された生菌体を利用することも随意である。必要ならば、例えば、生菌体を半透膜製のホローファイバーに封入し固定化した細菌、又は、寒天、ゼラチン、アルギン酸塩などで包括し、ビーズ状、シート状などの各種形状に固定化した細菌などとして、該固定化細菌をL−ソルビトールからL−フラクトースへの変換反応に、連続して利用することも、また、繰返し利用することも有利に実施できる。
【0011】
以上述べた各種の方法により生成、蓄積したL−フラクトースを含有する水溶液は、適当な分離方法、例えば、遠心分離、濾過などの方法によって細菌など不溶物と分離され、採取される。
【0012】
得られたL−フラクトース水溶液は、必要により、例えば、硫安塩析、水酸化亜鉛吸着などによる除蛋白、活性炭吸着による脱色、H型、OH型イオン交換樹脂による脱塩などの方法で精製し、濃縮してシラップ状のL−フラクトース製品を採取することができる。更にイオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィー、例えば、ダウケミカル社製造の商品名『ダウエックス50WX4』、『ダウエックスWGR』、東京有機化学工業株式会社製造の商品名『アンバーライトXT−1008』、『アンバーライトIRA47』、三菱化成工業株式会社製造の商品名『ダイヤイオンSK106』、『ダイヤイオンWA11』などを用いるカラムクロマトグラフィーで分画、精製、濃縮することにより結晶化することができ、99%以上の高純度の結晶標品も容易に得ることができる。
【0013】
このようにして製造されるL−フラクトースは、通常、原料のL−ソルビトールに対し約70w/w%以上の高収率で得られ、大量、安価に供給する工業的製造方法として好適である。
【0014】
従って、L−フラクトースは、試薬用途のみならず、食品工業、医薬品工業、化学工業などの工業用途にその原料、中間体などとして有利に利用できる。
【0015】
以下、本発明の実施例を述べる。
【0016】
【実施例1】
硫酸アンモニウム0.2w/v%、リン酸一カリウム0.24w/v%、リン酸二カリウム0.56w/v%、硫酸マグネシウム・7水塩0.01w/v%、酵母エキス0.5w/v%、キシリトール2w/v%及び脱イオン水からなる培養液100mlずつを500ml容振盪フラスコ20本にとり、120℃20分間オートクレーブした後、放冷し、これにクレブジエラ プランティコーラ IFO 3317を1白金耳ずつ植菌し、30℃で2日間振盪培養した。
【0017】
培養後、遠心分離により集菌し、得られた生菌体約2gをL−ソルビトール2w/v%を含有する0.05Mリン酸緩衝液(pH7.0)100mlに加え混合し、これを500ml容振盪フラスコにとり、30℃で2日間振盪し、L−ソルビトールをL−フラクトースに変換させた。次いで遠心分離して細菌を除去した。
【0018】
得られた上清に25w/v%硫酸亜鉛を1/10容加えpH7.6に調整し、遠心分離して上清を採取した。この上清を、常法に従って、活性炭を用いて脱色し、次いで、『ダイヤイオンSK1B』(H型、三菱化成工業株式会社製造の商品名)および『ダイヤイオンWA30』(OH型、三菱化成工業株式会社製造の商品名)を用いて脱塩し、減圧濃縮して濃度約60%の透明なシラップを得た。
【0019】
『ダウエックス50WX4』(カルシウム型カチオン交換樹脂、ダウケミカル社製造の商品名)を用いるカラムクロマトグラフィーによりL−フラクトース高含有画分を採取し、これを精製、濃縮し、L−フラクトースを結晶化させ分蜜して結晶L−フラクトース製品を採取した。
【0020】
結晶L−フラクトースのL−ソルビトールに対する収率は、固形物当り約70%であった。本品の理化学的性質は、市販されている標準のL−フラクトースのそれとよく一致した。
【0021】
本製品は、試薬用途のみならず、食品工業、医薬品、化学工業などの原料、中間体などとしても有利に利用できる。
【0022】
【実施例2】
実施例1の培養液のうち、酵母エキスをコーン・スティープ・リカーに置換え、及びキシリトールをグリセロールに置換えた以外は、実施例1と同組成の培養液15lを30l容ジャーファーメンターにとり、120℃、20分間滅菌した後、30℃に冷却し、これに同組成の培養液30℃で1日間振盪培養したクレブジェラ プランティコーラ IFO 3317の種培養液を1v/v%植菌し、30℃で2日間通気撹拌培養し、次いで遠心分離して、菌体を採取した。このようにして得た生菌体約2gをL−ソルビトール2w/v%を含有する0.05Mリン酸塩緩衝液(pH7.0)100lに加えて混合し、以後、実施例1と同様に、L−フラクトースに変換せしめ、次いで、常法に従って、活性炭で脱色、イオン交換樹脂で脱塩して精製し、濃縮して、L−ソルビトールとL−フラクトースとを約1:24の割合で含有する濃度約70%の透明なシラップを原料に対して固形物当たり約90%の収率で得た。
【0023】
本製品は、食品工業、医薬品工業、化学工業などの原料、中間体などとして有利に利用できる。
【0024】
【発明の効果】
上記したことから明らかなように、本発明は、従来得ることの極めて困難であったL−フラクトースを、生化学的方法により容易に製造する方法を確立するものである。特に、クレブジエラ属に属する微生物を用いて、L−ソルビトールを原料としてL−フラクトースを生産できることを見出だしたことは、L−フラクトースの製造方法にとって、極めて有利である。すなわち、原料となるL−ソルビトールはD−タガトースのエピマー化によって得られるD−ソルボースを還元することによって容易に入手できる糖アルコールであるためL−フラクトースの大量生産が可能となった。
【0025】
従って、本発明の方法は、L−フラクトースの工業的製造方法として好適であり、大量、安価な供給を容易にし、希少糖質としての試薬用途のみならず、従来予想すらできなかった食品工業、医薬品工業、化学工業など広範な工業用途への利用の道を拓くものである。
Claims (3)
- クレブジエラ属に属し、L−ソルビトールからL−フラクトース産生能を有する細菌を、L−ソルビトールを含有する水溶液に接触させてL−フラクトースを生成せしめ、これを採取することを特徴とするL−フラクトースの製造方法。
- クレブジエラ属に属する細菌が、クレブジエラ プランティコーラ IFO 3317であることを特徴とする請求項1記載のL−フラクトースの製造方法。
- クレブジエラ属に属する細菌を、その培養中に、L−ソルビトールと接触させてL−フラクトースを生成せしめることを特徴とする請求項1又は2記載のL−フラクトースの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26440394A JP3605153B2 (ja) | 1994-10-05 | 1994-10-05 | L−フラクトースの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26440394A JP3605153B2 (ja) | 1994-10-05 | 1994-10-05 | L−フラクトースの製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08103285A JPH08103285A (ja) | 1996-04-23 |
JP3605153B2 true JP3605153B2 (ja) | 2004-12-22 |
Family
ID=17402683
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP26440394A Expired - Fee Related JP3605153B2 (ja) | 1994-10-05 | 1994-10-05 | L−フラクトースの製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3605153B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5341413B2 (ja) * | 2008-07-11 | 2013-11-13 | 株式会社希少糖生産技術研究所 | 微生物反応及び酵素反応によってアザイド糖を製造する方法 |
-
1994
- 1994-10-05 JP JP26440394A patent/JP3605153B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH08103285A (ja) | 1996-04-23 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US5441644A (en) | Method of isolation and purification of trehalose | |
JP3711296B2 (ja) | L−プシコースの製造方法 | |
JP3194160B2 (ja) | L−タガトースの製造方法 | |
JP3890744B2 (ja) | グルコースを出発原料としたl−リボースの製造方法 | |
JP2876417B2 (ja) | D―ソルボースの製造方法 | |
JP3605153B2 (ja) | L−フラクトースの製造方法 | |
JP2876416B2 (ja) | D―プシコースの製造方法 | |
JPH08154696A (ja) | L−ケトヘキソースの製造方法 | |
US3793146A (en) | Process for the production of citric acid | |
JP3252295B2 (ja) | L−ガラクトースの製造方法 | |
JP3082104B2 (ja) | L−キシルロースの製造方法 | |
JP3609210B2 (ja) | ラフィノース液の精製方法 | |
JP3623000B2 (ja) | L−プシコースの製造方法 | |
JP3840538B2 (ja) | D‐タガトースの製造方法 | |
JPH0419835B2 (ja) | ||
JP4011496B2 (ja) | L−グルコースの製造方法 | |
JPH05137590A (ja) | 微生物によるラクトシルフラクトシドの精製法 | |
JPH06269289A (ja) | トレハロースの水晶析による単離精製法 | |
SU1446161A1 (ru) | Способ получени L-лактата кали | |
JPH11332591A (ja) | L−リボースの精製方法 | |
JPS6147194A (ja) | N−カルバモイル−d−バリンまたはd−バリンの製造法 | |
JPH10210994A (ja) | リビトールの製造方法 | |
JPH0547197B2 (ja) | ||
JPS6269996A (ja) | カルニチン・アルキルエステルの製造法 | |
JPS615793A (ja) | D−アスパラギン酸の製法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20040601 |
|
A521 | Written amendment |
Effective date: 20040708 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Effective date: 20040921 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20041001 |
|
R150 | Certificate of patent (=grant) or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Year of fee payment: 7 Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111008 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Year of fee payment: 8 Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121008 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121008 Year of fee payment: 8 |
|
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Year of fee payment: 8 Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121008 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121008 Year of fee payment: 8 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Year of fee payment: 9 Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131008 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |