JP3603965B2 - 耐熱性絶縁組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、優れた機械的強度と可とう性を備えるとともに、200℃を超える雰囲気下での連続使用にも耐え、特に耐熱電線、高ワット密度のコード状ヒータなどの絶縁被覆材料として好適に用いられる耐熱性絶縁組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からフッ素系重合体は、耐熱性、耐薬品性などに優れた性能を有することから、絶縁材料としても幅広く使用されており、またその優れた特性を更に向上させる試みも数多くなされてきている。
【0003】
例えば、ETFEに放射線架橋を施すことにより、耐熱性を高める試みが従来からなされている。またこれに更に、ランタノイド金属酸化物、遷移金属酸化物などを添加して押出工程の安定性を高める工夫が、特開昭61−293245号公報、特開昭63−286456号公報、特開昭63−286457号公報などに紹介されている。
【0004】
フッ素ゴムの耐熱性向上には、フッ素ゴムメーカー各社の技術資料においてパッキン用カーボン配合をされたもので亜鉛華が耐熱性の向上に効果があるとされるが、耐熱性としては200℃程度であるため、絶縁物として使用できるものではない。
【0005】
一方、フッ素ゴムとフッ素樹脂を混合する例が、特開昭58−204416号公報、特開昭63−165449号公報、特開昭63−313411号公報、特開平2−86017号公報、特開平4ー63849号公報などに示されているが、これらはフッ素樹脂の可とう性を改良したり、フッ素ゴムの機械的強度を改善することを目的としている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の検討の範囲では、200℃を超える耐熱性と、優れた機械的強度及び可とう性を、同時に得ることは困難であった。つまり、ETFEに放射線架橋を施した場合は、機械的強度を得ることはできても、その耐熱性は高々200℃であり、可とう性にも乏しい。また、フッ素ゴムとフッ素樹脂を混合した場合は、機械的強度と可とう性を得ることはできても、耐熱性としては高々200℃であり、使用したフッ素樹脂の耐熱温度以上にはならない。
【0007】
現在、200℃を超える耐熱性が要求される用途には、テトラフロロエチレン・パーフロロアルコキシエーテル共重合体(以下、PFAと略す)やポリテトラフロロエチレン(以下、PTFEと略す)が使用されてえるが、これらは極めて高価であるとともに、可とう性、接着性及び粘着固定性が劣るという欠点を抱えている。
【0008】
本発明者らは、前記事情に鑑み種々検討した結果、特定のETFEと特定のフッ素ゴムを特定の比率で混合し、更に幾つかの添加物を加え、架橋することにより、優れた機械的強度と可とう性を備えるとともに、200℃を超える優れた耐熱性を有する組成物が得られることを見い出し本発明に至った。
【0009】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、フッ化ビニリデン系フッ素ゴムと、融点が250℃以下のETFEと、亜鉛華と、ケイ酸マグネシウムと、を必須成分としてなる耐熱性絶縁組成物であって、前記耐熱性絶縁組成物の樹脂分合計量100重量部に対して、フッ化ビニリデン系フッ素ゴム40以上90重量部以下、ETFE10以上60重量部以下を含有するとともに、前記樹脂分合計量100重量部に対して、亜鉛華1以上50重量部以下、ケイ酸マグネシウム1以上50重量部以下が添加され、かつ、それらは架橋されていることを特徴とするものである。
【0010】
その際、架橋促進剤として、ポリ不飽和イミド化合物を更に添加することも考えられる。
以上
【0011】
フッ化ビニリデン系フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン6フッ化プロピレン2元共重合体、フッ化ビニリデンテトラフロロエチレン6フッ化プロピレン3元共重合体などが挙げられる。これらは、各社から市販されているので、それを用いれば良い。含有量は、樹脂分合計100重量部に対して、40以上90重量部以下とする。40重量部未満では耐熱性が不十分となり、また90重量部を超えると機械的強度が不十分となってしまう。好ましくは、更に高い耐熱性と機械的強度のバランスをとるため、50以上85重量部以下とする。
【0012】
融点が250℃以下のETFEとは、エチレンとテトラフロロエチレンの他、第三成分が共重合されたものである。各社からこれらの種類と共重合比率を変えたものが市販されているので、それらを用いれば良い。融点が250℃を超えるETFEは耐熱性が十分でないため、好ましくない。ETFEの含有量は、樹脂分合計100重量部に対して、10以上60重量部以下とする。10重量部未満では機械的強度が十分でなく、また60重量部を超えると耐熱性が不十分となる。尚、本発明で言う「融点」とは、示差走査熱量計(DSC)により測定した、吸熱量が最も大きくなる温度である。
【0013】
亜鉛華は、樹脂分合計100重量部に対して、1以上50重量部以下添加する。1重量部未満では補強効果や耐熱性向上の効果が得られず、また50重量部を超えると機械的強度を落としてしまう。好ましくは、機械的強度と耐熱性の最も優れたバランスを得るために、5以上20重量部以下とする。
【0014】
ケイ酸マグネシウムは、耐熱性と機械的強度を更に高めるために用いる。添加量は、樹脂分合計100重量部に対して1以上50重量部以下とする。1重量部未満では補強効果や耐熱性向上の効果が得られず、50重量部を超えると、機械的強度を落としてしまう。好ましくは、機械的強度と耐熱性の最も優れたバランスを得るために、5以上30重量部以下とする。
【0015】
本発明では、上記の4成分を必須材料として、公知の方法で混合するが、その際に上記以外の他のフッ素樹脂、充填剤、顔料などを混合しても良い。また、得られた組成物は、所望の形状に公知の方法で成形してから架橋し、本発明の耐熱性絶縁組成物を得る。架橋方法は特に限定されないが、電子線やガンマ線などによる放射線架橋が好ましい。放射線架橋を促進させる方法として、多アリル化合物などの架橋促進剤を混合することは公知であるが、これを用いても良い。架橋促進剤としては、フェニレンビスマレイミドなどに代表されるポリ不飽和イミド化合物が、架橋物の物性のバランスが良く、しかも耐熱性に優れるため特に好ましい。
【0016】
【作用】
上記構成による本発明の耐熱性絶縁組成物が特に耐熱性に優れる理由は不明であるが、フッ化ビニリデン系フッ素ゴムとETFEとは劣化傾向が異なることが見い出された。この異なる性質が、特定の混合比率において打ち消し合い、特定の添加成分と相互作用して高度なバランスを得たためと考えられる。
【0017】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明の内容を更に詳しく説明する。尚、本実施例においては、融点が250℃以下のETFEとして、融点220℃のETFE[ダイキン工業(株)製、商品名:ネオフロンETFE、品番:EP−610]を用いた。また、フッ化ビニリデン系フッ素ゴムとしては、3元共重合体型のフッ素ゴム[ダイキン工業(株)製、商品名:ダイエル、品番:G912]を用いた。
【0018】
<実施例1>
表1に示した配合材料を、ヘンシェルミキサーで十分に混合した後、シリンダー温度260℃の40mm2軸混練押出機で1時間当り25kgの吐出量で混練し、組成物を得た。次に、得られた組成物を、ヘッド温度270℃の電線被覆用押出機で、0.18mm×20本の錫メッキ軟銅撚線上に0.35mmの肉厚で押出被覆し、その後、800kVの電子線照射装置で、6Mradの電子線を照射して架橋電線とした。
【0019】
このようにして得られた電線を試料として、耐熱性及び可とう性を評価した。耐熱性は、280℃168時間老化させた後の引張強度と、引張伸度で評価した。可とう性は、絶縁体の100%モジュラス値で評価した。その結果を表1に併せて示す。尚、表1中の各配合材料の使用量は重量部単位である。
【0020】
【表1】
Figure 0003603965
【0021】
<実施例2乃至及び比較例1乃至
各実施例、比較例とも表1に示した配合材料を用いた他は、実施例1と同様に架橋電線を製造した。各々の試料の評価結果を表1に示した。
【0022】
実施例1と比較例1及び比較例2との比較から、本発明の耐熱性絶縁組成物は原料となるETFE、フッ素ゴムよりも優れた耐熱性を示していることが判る。通常、架橋ETFEは200℃耐熱とされていることから、本発明の耐熱性絶縁組成物は、それよりも明らかに高い耐熱性を有しており、明らかに200℃を超える耐熱性が得られたことが判る。またPFAの電線の100%モジュラス値が25MPa、PTFEの電線の100%モジュラス値が21MPaであることと比較すると、本発明の耐熱性絶縁組成物を用いた電線は満足すべき引張強度を有しながら、可とう性にも優れていることが判る。
【0023】
実施例1と、ETFEの配合比率が本発明の範囲外である比較例3または比較例4とを比較してみると、比較例3においては、ETFEの比率が少ないために、機械的強度が不足していることが判る。また比較例4は、ETFEの比率が多いために、耐熱性の低下が見られる。
【0024】
実施例1と、亜鉛華を配合していない比較例5を比べると、比較例5は耐熱性に劣ることが判る。
【0025】
また、ケイ酸マグネシウムを配合した実施例1と、配合していない比較例6とを比較すると、配合した実施例1の方が、機械的強度が向上し、若干の耐熱性向上も見られることが判る。
【0026】
実施例1と、架橋促進剤を使用していない実施例、架橋促進剤として、トリアリルシアヌレートを使用した実施例とを比較すると、架橋促進剤は使用した方が良く、また実施例1で使用した架橋促進剤の方が、組成物の機械的強度のバランスが良く、結果として良好な耐熱性を付与することがわかる。
以上
【0027】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によると、優れた機械的強度と可とう性を備えるとともに、200℃を超える耐熱性を有した組成物を得ることができた。これにより、従来、PFAやPTFEを用いて絶縁する必要であった用途のある部分を代用することができるようになった。そのため、従来、PFAやPTFEの、高価であること、接着性、粘着固定性が無いこと、更に可とう性が無いことなどの欠点によって複雑な構成にせざるを得なかった機器が、安価に製造できるようになり、産業上極めて有益である。

Claims (2)

  1. フッ化ビニリデン系フッ素ゴムと、融点が250℃以下のエチレンーテトラフロロエチレン共重合体(以下、ETFEと略す)と、亜鉛華と、ケイ酸マグネシウムと、を必須成分としてなる耐熱性絶縁組成物であって、前記耐熱性絶縁組成物の樹脂分合計量100重量部に対して、フッ化ビニリデン系フッ素ゴム40以上90重量部以下、ETFE10以上60重量部以下を含有するとともに、前記樹脂分合計量100重量部に対して、亜鉛華1以上50重量部以下、ケイ酸マグネシウム1以上50重量部以下が添加され、かつ、それらは架橋されていることを特徴とする耐熱性絶縁組成物。
  2. 架橋促進剤として、ポリ不飽和イミド化合物を更に添加したことを特徴とする請求項1記載の耐熱性絶縁組成物
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