JP3602303B2 - 眼鏡レンズ研削加工装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、眼鏡枠に合うように被加工レンズを研削加工する眼鏡レンズ研削加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
眼鏡枠に眼鏡レンズを嵌合させるため、眼鏡枠の枠溝で眼鏡レンズを支持するためのヤゲンをレンズ周縁部に形成するように加工するレンズ研削加工装置が知られている。この種の装置では、一般に、レンズ周縁部に形成するヤゲンの大きさに対応したV溝(ヤゲン溝)を持つ円筒のヤゲン砥石を用いてヤゲン加工を行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このようなヤゲン砥石による装置では、ヤゲン加工時の加工点におけるヤゲンカーブの傾斜角と砥石のヤゲン溝の方向に応じて、ヤゲン砥石と被加工レンズの3次元的な干渉によりヤゲンの大きさが小さくなる(ヤゲンの幅が狭くなり、またヤゲンの高さも低くなる)という問題があった。この問題に関しては、円錐のヤゲン砥石を用いる方法が考えられるが、この方法はフラットに近いヤゲン形成の場合に逆に問題が発生して不利である。
【0004】
また、一種類の大きさのヤゲン溝では、フレーム材質の違い等による枠溝の大きさに応じてヤゲンの大きさ変化させることができないという問題があった。この対応の一つとして、複数種類のヤゲン溝の大きさ持つヤゲン砥石を準備するという方法で対処できるが、ヤゲンの大きさはヤゲン溝の種類により決定さるため自由度が少なく、さらに砥石構成が余分に必要となるという欠点がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、ヤゲン加工時におけるヤゲンの大きさの変化を抑えてレンズ枠入れ時のフィット感が良い加工が行える眼鏡レンズ研削加工装置を提供することを技術課題とする。
【0006】
また、眼鏡枠に応じた大きさのヤゲン形成や、加工者が自由にヤゲンの大きさを調整できる眼鏡レンズ研削加工装置を提供することを技術課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は次のような構成を有することを技術課題とする。
【0008】
(1) 眼鏡枠に合うように被加工レンズを研削加工する眼鏡レンズ研削加工装置において、被加工レンズに形成するヤゲン頂点の位置を決定するヤゲン位置決定手段と、第1のヤゲン加工斜面と第2のヤゲン加工斜面を持ちヤゲンの前面と後面を個別に加工するヤゲン加工砥石と、被加工レンズを保持して回転するレンズ回転軸と、前記第1及び第2のヤゲン加工斜面と被加工レンズとの加工点を求め加工点に対応させて前記ヤゲン頂点が前記第1及び第2のヤゲン加工斜面にそれぞれ接するようにヤゲンの前面加工用及び後面加工用のヤゲン加工データを求めるヤゲン演算手段と、該ヤゲン演算手段によるヤゲン加工データに基づいてヤゲン加工を制御するヤゲン加工制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
(2) (1)のヤゲン演算手段は、前記ヤゲン頂点の位置情報に基づいて前記レンズ回転軸と砥石回転軸との軸間距離方向の加工位置データを求める第1演算手段と、該加工位置デ−タを基準にしてヤゲン加工後に予定されるヤゲン頂点が前記第1及び第2のヤゲン加工用斜面にそれぞれ接するように砥石回転軸方向の加工位置データを求める第2演算手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
(3) (1)の眼鏡レンズ研削加工装置は、さらにヤゲンの高さ又は幅を設定する設定手段を持ち、前記ヤゲン演算手段は該設定手段により設定されたヤゲンの高さ又は幅に基づいてヤゲン加工データを得ることを特徴とする。
【0011】
(4) (3)の設定手段は、操作者が任意にヤゲンの高さ又は幅を入力する手段、眼鏡枠の材質を指定することによりヤゲンの高さ又は幅を決定する手段、眼鏡枠の形状を測定する眼鏡枠測定装置による枠溝の深さ又は枠溝の幅の測定結果を入力する手段、のうち少なくとも1つを備えることを特徴とする。
【0012】
(5) (1)の眼鏡レンズ研削加工装置において、被加工レンズの動径角に対応させてヤゲンの高さ又は幅を変えて設定する可変設定手段を持ち、前記ヤゲン演算手段は該可変設定手段により設定されたヤゲンの高さ又は幅に基づいて動径角に対応させてヤゲンの大きさを変化させるヤゲン加工データを得ることを特徴とする。
【0013】
(6) (1)の眼鏡レンズ研削加工装置は、さらに仕上げ加工後のレンズのコバ角部を斜めに加工する加工位置を決定するコバ角部加工位置決定手段と、該決定された加工位置情報に基づいて前記ヤゲン加工砥石により被加工レンズのコバ角部の加工を制御するコバ角部加工制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
(7) 眼鏡枠に合うように被加工レンズを研削加工する眼鏡レンズ研削加工装置において、被加工レンズに形成するヤゲン頂点の位置を決定するヤゲン位置決定手段と、第1のヤゲン加工斜面と第2のヤゲン加工斜面を持ちヤゲンの前面と後面を個別に加工するヤゲン加工砥石と、ヤゲンの高さ又は幅を設定する設定手段と、該設定されたヤゲンの高さ又は幅の情報と前記ヤゲン頂点の位置情報に基づいてヤゲンの前面加工用及び後面加工用のヤゲン加工データを求めるヤゲン演算手段と、該ヤゲン演算手段によるヤゲン加工データに基づいて前記ヤゲン加工砥石によるヤゲン加工を制御するヤゲン加工制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
(8) (7)の設定手段は、操作者が任意にヤゲンの高さ又は幅を入力する手段、眼鏡枠の材質を指定することによりヤゲンの高さ又は幅を決定する手段、眼鏡枠の形状を測定する眼鏡枠測定装置による枠溝の深さ又は枠溝の幅の測定結果を入力する手段、のうち少なくとも1つを備えることを特徴とする眼鏡レンズ研削加工装置。
【0016】
【実施例】
以下本発明の一実施例を図面に基いて詳細に説明する。図1は本発明に係るレンズ研削加工装置の全体構成を示す斜視図である。1はベースで本装置を構成する各部がその上に配置されている。2は装置上部に内蔵される眼鏡枠形状測定部であり、眼鏡枠形状(または型板)の形状デ−タを得ることができる。眼鏡枠形状測定部2は、例えば、特開平4−105864号公報に記載のものが使用できる。その前方には測定結果や演算結果等を文字またはグラフィックにて表示する表示部3と、データを入力したり装置に指示を行う多数のスイッチを持つ入力部4が並んでいる。装置前部には被加工レンズの形状(コバ厚)を測定するレンズ形状測定部5がある。
【0017】
6はレンズ研削部で、ガラスレンズ用の粗砥石60a、プラスティック用の粗砥石60b、ヤゲン加工及び平加工用の仕上げ砥石60cとから成る砥石群60が、ベース1に固定されたスピンドルユニット61の回転軸61aに同軸で回転可能に取付けられている。仕上げ砥石60cは、図4に示すように、被加工レンズのコバ厚より幅の広がったヤゲン溝600を持ち、被加工レンズに形成するヤゲンの前面は溝斜面600Fを使用し、ヤゲンの後面は溝斜面600Rを使用してヤゲンの前面と後面を個別に加工できるようになっている。また、溝斜面600Fと溝斜面600Rとが砥石軸に直交する平面と成す角度ψ(これをヤゲン角という)をそれぞれ55゜にしてあり、この溝斜面600F、600Rで面取加工を行え得るようにしている。また、各砥石の外径は、標準的なものと同じ程度(直径100mm 前後)として、砥石寿命が十分なようにしている。
【0018】
図1において、65は砥石回転用のACモータであり、回転軸61aに取り付けられたプーリ63、ベルト64、プーリ66を介してその回転が砥石群60に伝達される。7はキャリッジ部で、700はキャリッジである。
【0019】
図1〜図3に基いてキャリッジ部7の構造を説明する。図2はキャリッジの断面図、図3はキャリッジの駆動機構を示す矢視A図である。ベース1に固定されたシャフト701にはキャリッジシャフト702が回転摺動自在に軸支されており、さらにそれにキャリッジ700が回動自在に軸支されている。キャリッジ700にはシャフト701と平行にレンズ回転軸704a、704bが同軸かつ回転可能に軸支されている。レンズ回転軸704bはラック705に回転自在に軸支され、ラック705はモータ706の回転軸に固定されたピニオン707により軸方向に移動することができる。これによりレンズ回転軸704bは軸方向に移動されて開閉動作を行い、レンズLE(以下、被加工レンズともいう)を回転軸704a、704bで挟持しうる。
【0020】
キャリッジ700の左端には駆動板716が固定されており、駆動板716には回転軸717がシャフト701と平行かつ回転自在に取付けられている。また駆動板716にはブロック722によりパルスモータ721が固定されており、パルスモータ721の回転は、回転軸717の右端に取り付けられたギヤ720、回転軸717の左端に取り付けられたプーリ718、タイミングベルト719、プーリ703aを介してシャフト702に伝達される。さらに、シャフト702の回転は、タイミングベルト709a、709b等を介してレンズ回転軸704a、704bに伝達され、これによりレンズ回転軸704a、704bは同期して回転する。
【0021】
中間板710にはラック713が固定さており、ラック713とキャリッジ移動用モータ714の回転軸に取付けられピニオン715とが噛み合い、モータ714の回転によりキャリッジ700がシャフト701の軸方向に移動する。
【0022】
キャリッジ700はパルスモータ728により回旋する。パルスモータ728はブロック722に固定されており、パルスモータ728の回転軸729に固定されたピニオン730が丸ラック725と噛み合っている。丸ラック725は、回転軸717と中間板710に固定されたシャフト723との軸間を結ぶ最短の線分に平行に位置するとともに、シャフト723に回転自在に固定された補正ブロツク724とブロック722との間である程度の自由度をもって摺動可能に保持されている。丸ラック725にはストッパ726が固定されており、補正ブロック724の当接位置より下方にしか摺動できないようになっている。これにより、パルスモータ728の回転に応じて回転軸717とシャフト723の軸間距離r´を制御することができ、このr´と直線的相関関係をもつレンズ回転軸704a,704bと砥石の回転軸61aとの軸間距離rを制御することができる。
【0023】
中間板710にはセンサ727が設けられ、ストッパ726と補正ブロック724との当接状態を確認し、レンズLEの研削状態を知ることができる。また、駆動板716にはバネ731のフックが掛かっており、他方のフックにはワイヤ732が掛かっている。中間板710に固定されたモータ733の回転軸にはドラムが付いており、ワイヤ732を巻き上げることにより、レンズLEの加工圧を変えることができる。
【0024】
なお、このキャリッジ部の構成は、本出願人による特開平5−212661号等のものと基本的に同様であるので、詳細はこれを参照されたい。
【0025】
図5は装置の電気制御系ブロック図の要部を示す図である。主演算制御回路100は例えばマイクロプロセッサで構成され、その制御は主プログラムメモリ101に記憶されているシーケンスプログラムで制御される。主演算制御回路100はシリアル通信ポート102を介して、ICカード、検眼システム装置等とデータの交換を行うことが可能である。また、眼鏡枠形状測定部2内の演算制御回路200とデータ交換・通信を行う。眼鏡枠形状データはデータメモリ103に記憶される。
【0026】
主演算制御回路100には表示部3、入力部4、レンズ形状測定部5が接続されている。主演算制御回路100で演算処理されたレンズの加工情報等はデータメモリ103に記憶される。キャリッジ移動モータ714、パルスモータ728、721はパルスモータドライバ110、パルス発生器111を介して主演算制御回路100に接続されている。パルス発生器11は主演算制御回路100からの指令を受けて、それぞれのパルスモータへ何Hzの周期で何パルス出力するかにより各モータの動作をコントロールする。
【0027】
以上のような構成を持つ装置において、その動作を説明する。まず、眼鏡枠形状測定部2を使用して眼鏡枠の形状を測定し、測定したデータは次データスイッチ417を押すことにより主演算制御回路100側に転送されてデータメモリ103に記憶される。表示部3の画面上には、枠形状データに基づいて玉型形状が表示され、加工条件を入力できる状態になる。加工者は、入力部4のスイッチにより装用者のPD値、FPD値、光学中心の高さ等のレイアウトデータ、加工するレンズの材質、フレームの材質、加工モード等の加工条件を入力する。加工条件の入力ができたら、所定の処理(吸着カップの軸打ち)が施された被加工レンズを、レンズ回転軸704a,704bによりチャッキングし、スタート・ストップスイッチ411を押して装置を作動する。
【0028】
主演算回路100はスタート信号によりレンズ形状測定部5を作動させ、枠形状データ及びレイアウトデータに対応するレンズのコバ位置を測定する。その後、所定のプログラムに従いコバ位置情報に基づいてレンズに施すヤゲン頂点軌跡を求めるヤゲン計算を行う。なお、レンズ形状測定部5の構成とその測定動作、ヤゲン計算等については特開平5−212661号等を参照されたい。
【0029】
ヤゲン頂点軌跡が得られると、続いてこのデータに基づき、溝斜面600Fにより被加工レンズに形成するヤゲンの前面を加工するための前面ヤゲン加工データ、溝斜面600Rによりヤゲンの後面を加工するための後面ヤゲン加工データを得る。この2つのヤゲン加工データを求める方法を、図6に基づいて説明する。
【0030】
まず、設定されたヤゲン高さhを持つヤゲン底を確保する加工点を求める。すなわち、ヤゲン計算により得られたヤゲン頂点軌跡(rδ,rθ,z)(n=1,2,3,……,N)の2次元の動径情報(rδ,rθ)から、砥石径Rよりヤゲン高さh分小さい径で加工するときのレンズ回転中心と砥石回転中心の軸間距離Lを、
【0031】
【数1】
Figure 0003602303
により求める。そして、動径情報(rδ,rθ)を微小な任意の角度だけレンズ回転中心を中心に回転させ、数1と同一の計算を行う。このときの回転角をξ(i=1,2,3,……,N)とし、全周にわたって算出する。それぞれのξでのLV の最大値をLV として、加工点の2次元の加工軌跡(LV ,ξ)を得る。これをヤゲン加工における軸間距離方向の加工基準軌跡とする。
【0032】
次に、この加工基準軌跡に対応させて、溝斜面600Fが被加工レンズに施すヤゲンの頂点軌跡に接するように、そのレンズ軸方向の加工位置を求める。ここで、便宜上、相対的にレンズ回転軸を原点とする直交座標系として考えると、ヤゲン頂点軌跡(rδ,rθ,z)は、
【0033】
【数2】
Figure 0003602303
とするヤゲン頂点軌跡(x,y,z)に置き換えられる。このとき、この直交座標系と原点を同じにする溝斜面600Fの砥石面は、次式で表される。
【0034】
【数3】
Figure 0003602303
なお、数3における(X,Y,Z)を溝斜面600Fの砥石面を構成する仮想の円錐頂点座標となり、溝斜面600F側のZは、
【0035】
【数4】
Figure 0003602303
となる。また、前述の加工基準軌跡のξをrθとする直交座標に変換すると、
【0036】
【数5】
Figure 0003602303
となる。これとヤゲン頂点軌跡(x,y,z)を数2に代入してZの最大値Zmax を求める。そして、ヤゲン頂点軌跡(x,y,z)を微小な任意の角度ξ(i=1,2,3,……,N)だけレンズ回転中心を中心に回転させながら全周にわたって同一の計算を行い、それぞれξでのZの最大値Zmax を得ることにより、溝斜面600Fが被加工レンズに施すヤゲン頂点軌跡に接するレンズ軸方向の加工位置が求まる。これと前述の加工基準軌跡とにより、(LV ,Zmax ,ξ)(i=1,2,3,……,N)が前面ヤゲン加工データとなる。
【0037】
後面ヤゲン加工データの算出にあたっては、数4の式を、
【0038】
【数6】
Figure 0003602303
に置き換えることにより同様な方法でその加工データを得る。
【0039】
以上のようにして前面ヤゲン加工データ、後面ヤゲン加工データが得られたら、加工シーケンスに従ってキャリッジ部7の動作を制御して加工を実行する。装置は被加工レンズの材質の指定に応じた粗砥石上にチャッキングした被加工レンズがくるようにキャリッジ700を移動し、粗加工用の加工情報に基づいて各モータを駆動制御して被加工レンズを加工する。次に、粗砥石から被加工レンズを離脱させた後、これを溝斜面600Fの上に位置させ、前面ヤゲン加工データに基づき各モータの駆動による軸方向の移動、軸間距離方向の移動を制御しながら前面側のヤゲン加工を行う。続いて、前面側のヤゲン加工が終了した被加工レンズを今度は溝斜面600Rの上に位置させ、後面ヤゲン加工データに基づき各モータを制御しながら後面側のヤゲン加工を完了する(前面側と後面側のヤゲン加工の順番は逆でも良い)。これにより、砥石の径が比較的大きなものでも、ヤゲン頂点の軌跡を確保しつつヤゲン幅の変化も抑えたヤゲン形成を行うことができる。なお、このようなヤゲン加工では、ヤゲン頂点が鋭角になり過ぎることがあるので、この場合には加工されたヤゲン頂点部分を仕上げ砥石60cが持つフラットな部分で落とす加工を行うようにしても良い。これは、とくにガラスレンズの加工において、カケ防止のために効果的である。
【0040】
なお、上記で説明したヤゲン高さhは、予め所定の値をデータメモリ103に記憶させておく他、加工者が入力部4のスイッチにより所望の値を入力しても良い。また、ヤゲン幅dを指定することにより決定しても良い。ヤゲン幅dを指定した場合は、ヤゲン角ψとの関係から、
h=d/(2tan ψ)
として計算することができる。メタルフレームにレンズを嵌合するときには小さいヤゲン幅(例えば、2.2mm )に設定し、セルフレームにレンズを嵌合するときには大きいヤゲン幅(例えば、2.5mm )に設定して加工すると、フレームへのフィット感が良くなる。加工者が任意にヤゲン幅dを指定するときは、表示部3にヤゲン幅の入力画面を表示させ、入力部4のスイッチ操作で所望の値を入力する。あるいは、加工条件の入力におけるフレームの材質の指定により、ヤゲン幅が自動的に選択されるようにしても良い。
【0041】
さらには、眼鏡枠形状測定部2により実際の眼鏡枠の溝の大きさ(溝の深さ又は溝の幅)を測定し、その測定結果に基づいてヤゲン幅又はヤゲンの高さを設定することもできる。眼鏡枠の溝の大きさは、例えば、図7のように眼鏡枠の保持部分で測定子24を上下動機構により上下させ、径方向の変化又は眼鏡枠の高さ方向の変化から測定する。
【0042】
またさらに、一つの眼鏡枠においてもセルフレーム部分とメタルフレーム部分のように異なる溝の大きさを持つ場合には、その異なる枠溝の大きさに対応させてヤゲンの大きさを変更することもできる。すなわち、動径角に対応させてヤゲンの高さ(又は幅)が変化する範囲を入力する。この入力された部分的に異なるヤゲンの高さのデータに基づき、上記で説明したヤゲン底を確保するための2次元の加工基準軌跡を求め、その後は同様な計算を行うことにより、動径角に対応させて部分的に変化したヤゲンを形成するための前面及び後面のヤゲン加工データを得ることができる。これにより、異なる大きさの枠溝を持つ眼鏡枠においても、フィット感の良いヤゲンを容易に加工することができる。
【0043】
以上説明した本発明の装置は、前述のような構成を持つので、溝斜面600F及び600Rの部分により仕上げ加工後のレンズのコバ角部の加工(面取加工又はレンズを薄く見せる薄肉加工)も行うことできる。後面側の面取加工を例にとって説明する。まず、装置は予め指定又は入力された面取量の指示と(面取量の指示は、ヤゲン底からコバ位置までのヤゲン肩の幅を、ある比率に基づいて全周に亘って分割する方法やオフセット量による指示ができる)、レンズ形状測定部5により得られるコバ位置情報に基づき、図8に示すように、ヤゲン肩における加工点PR を動径角に対応させて面取軌跡を求める。そして、砥石径Rより所定の高さ分小さい径(あるいは面取量の指示に応じて変化させても良い)の溝斜面600Rのところを加工点PR に合わせて加工するものとして、ヤゲン加工のときと同様な方法により、動径角に対応させた軸間距離(レンズ回転中心と砥石回転中心の距離)の変化の軌跡を求める。この軌跡を基準にして加工点PR が溝斜面600Rに接するように、動径角に対応した軸方向の変化の軌跡を求めることによりレンズ後面の面取加工データを得る。この面取加工データの求め方は、基本的に本出願人による特願平9−41478号と基本的に同様の方法を使用できるので、その詳細はこれを参照されたい。
【0044】
また、被加工レンズの前面側の面取加工も溝斜面600Fを使用し、同様な方法により加工データを得て加工することができる。
【0045】
以上の実施例における溝斜面600F及び600Rの配置は、砥石回転軸の同軸方向に離れて配置しても良い。また、図9に示すように、ヤゲン前面加工用の斜面を持つヤゲン砥石610Lとヤゲン後面加工用の斜面を持つ砥石610Rを、それぞれ異なる砥石回転軸620L、620Rに配置したタイプの装置で行うこともできる。このタイプの装置の構成は、例えば、本出願人による特願平8−97444号に記載されており、被加工レンズの保持軸621に対する砥石回転軸620R、620Lの相対移動を個別に制御することにより、ヤゲン前面側と後面側を個別に加工できる。さらに、両方の加工を平行して行えば加工時間を短縮することができる。
【0046】
このように本発明は種々の変容が可能であり、本発明と技術思想を同じにするものは本発明に含まれる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、比較的簡単な構成でヤゲン加工におけるヤゲンの大きさの変化を抑えることができ、レンズ枠入れ時のフィット感が良い加工を行うことができる。
【0048】
また、眼鏡枠の材質やその溝形状に応じたヤゲン形成、加工者が所望する大きさのヤゲン形成を容易に行うことができる。
【0049】
またさらに、砥石構成を複雑にすることなく、コバ角部の加工(面取加工や部分的な薄肉加工)に対応することができる。
【0050】
また、従来の装置の構成に大幅な変更を加えることなく、これらを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るレンズ研削加工装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】キャリッジの断面図を示す図である。
【図3】キャリッジの駆動機構を示す図1の矢視A図である。
【図4】仕上げ砥石が持つヤゲンの溝斜面を説明する図である。
【図5】装置の電気制御系ブロック図の要部を示す図である。
【図6】ヤゲン加工データを求める方法を説明する図である。
【図7】眼鏡枠の溝の大きさの測定を示す図である。
【図8】面取加工の方法を説明する図である。
【図9】ヤゲン前面加工用の斜面を持つヤゲン砥石とヤゲン後面加工用の斜面を持つ砥石を、それぞれ異なる軸に配置するタイプの例を示す図である。
【符号の説明】
4 入力部
7 キャリッジ部
60c 仕上げ砥石
61a 回転軸
100 主演算制御回路
600F 溝斜面
600R 溝斜面
704a,704b レンズ回転軸

Claims (8)

  1. 眼鏡枠に合うように被加工レンズを研削加工する眼鏡レンズ研削加工装置において、被加工レンズに形成するヤゲン頂点の位置を決定するヤゲン位置決定手段と、第1のヤゲン加工斜面と第2のヤゲン加工斜面を持ちヤゲンの前面と後面を個別に加工するヤゲン加工砥石と、被加工レンズを保持して回転するレンズ回転軸と、前記第1及び第2のヤゲン加工斜面と被加工レンズとの加工点を求め加工点に対応させて前記ヤゲン頂点が前記第1及び第2のヤゲン加工斜面にそれぞれ接するようにヤゲンの前面加工用及び後面加工用のヤゲン加工データを求めるヤゲン演算手段と、該ヤゲン演算手段によるヤゲン加工データに基づいてヤゲン加工を制御するヤゲン加工制御手段と、を備えることを特徴とする眼鏡レンズ研削加工装置。
  2. 請求項1のヤゲン演算手段は、前記ヤゲン頂点の位置情報に基づいて前記レンズ回転軸と砥石回転軸との軸間距離方向の加工位置データを求める第1演算手段と、該加工位置デ−タを基準にしてヤゲン加工後に予定されるヤゲン頂点が前記第1及び第2のヤゲン加工用斜面にそれぞれ接するように砥石回転軸方向の加工位置データを求める第2演算手段と、を有することを特徴とする眼鏡レンズ研削加工装置。
  3. 請求項1の眼鏡レンズ研削加工装置は、さらにヤゲンの高さ又は幅を設定する設定手段を持ち、前記ヤゲン演算手段は該設定手段により設定されたヤゲンの高さ又は幅に基づいてヤゲン加工データを得ることを特徴とする眼鏡レンズ研削加工装置。
  4. 請求項3の設定手段は、操作者が任意にヤゲンの高さ又は幅を入力する手段、眼鏡枠の材質を指定することによりヤゲンの高さ又は幅を決定する手段、眼鏡枠の形状を測定する眼鏡枠測定装置による枠溝の深さ又は枠溝の幅の測定結果を入力する手段、のうち少なくとも1つを備えることを特徴とする眼鏡レンズ研削加工装置。
  5. 請求項1の眼鏡レンズ研削加工装置において、被加工レンズの動径角に対応させてヤゲンの高さ又は幅を変えて設定する可変設定手段を持ち、前記ヤゲン演算手段は該可変設定手段により設定されたヤゲンの高さ又は幅に基づいて動径角に対応させてヤゲンの大きさを変化させるヤゲン加工データを得ることを特徴とする眼鏡レンズ研削加工装置。
  6. 請求項1の眼鏡レンズ研削加工装置は、さらに仕上げ加工後のレンズのコバ角部を斜めに加工する加工位置を決定するコバ角部加工位置決定手段と、該決定された加工位置情報に基づいて前記ヤゲン加工砥石により被加工レンズのコバ角部の加工を制御するコバ角部加工制御手段と、を備えることを特徴とする眼鏡レンズ研削加工装置。
  7. 眼鏡枠に合うように被加工レンズを研削加工する眼鏡レンズ研削加工装置において、被加工レンズに形成するヤゲン頂点の位置を決定するヤゲン位置決定手段と、第1のヤゲン加工斜面と第2のヤゲン加工斜面を持ちヤゲンの前面と後面を個別に加工するヤゲン加工砥石と、ヤゲンの高さ又は幅を設定する設定手段と、該設定されたヤゲンの高さ又は幅の情報と前記ヤゲン頂点の位置情報に基づいてヤゲンの前面加工用及び後面加工用のヤゲン加工データを求めるヤゲン演算手段と、該ヤゲン演算手段によるヤゲン加工データに基づいて前記ヤゲン加工砥石によるヤゲン加工を制御するヤゲン加工制御手段と、を備えることを特徴とする眼鏡レンズ研削加工装置。
  8. 請求項7の設定手段は、操作者が任意にヤゲンの高さ又は幅を入力する手段、眼鏡枠の材質を指定することによりヤゲンの高さ又は幅を決定する手段、眼鏡枠の形状を測定する眼鏡枠測定装置による枠溝の深さ又は枠溝の幅の測定結果を入力する手段、のうち少なくとも1つを備えることを特徴とする眼鏡レンズ研削加工装置。
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