JP3601721B2 - 焼付硬化可能なバナジウム含有鋼 - Google Patents

焼付硬化可能なバナジウム含有鋼 Download PDF

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Description

発明の分野
本発明は、WO−A−96/14444で知られる、請求項1の前段部分による圧延鋼製品及びその製造方法に関する。
従来技術
従来技術においては、より高強度シート鋼及びストリップ鋼に対する強い要望が、特に自動車製造業者から益々高まりつつある。これは、新規の自動車設計において凹み耐性と重量軽減の双方を実現するためである。この要望とともに、非常に成形性に優れると同時に焼付硬化性にも優れている鋼に対する要望も増えつつある。周知のように、焼付硬化性とは、通常約350゜F(177℃)における20〜30分間の自動車塗装焼成処理の間に所与の鋼において生じる強度増加のことを云う。塗装焼付または他の適切な処理の間、焼付硬化可能な鋼は、最終製品における所望の凹み耐性を実現するべく強化される。
所与の鋼において、延性と強度とは相反する属性である。鋼が、良好な成形性(例えば、プレス変形性やプレス成形性)を得るためには、所望の形状へ変形されるよう本質的に延性がなくてはならない。しかしながら、この延性と同時に鋼は、自動車に見られるような外装枠に用いられる場合、凹むことに耐える十分な強度もまた保持しなければならない。
従来技術は、この相反性を克服するために、鋼製品を製造するための鋼合金成分と製造に用いられるプロセスの制御を通して様々な解決法を提示している。焼付硬化性は、これらの解決法に貢献する魅力的な属性である。なぜなら、この硬化性は、成形の後に生じるからである。
Hashlmotoらによる米国特許No.5,133,815は、深絞りのための冷間圧延またはホットディップ(hot−dip)による亜鉛めっきシート鋼を開示する。焼付硬化性は、合金させる鋼成分の制御と、シート鋼中の固溶炭素の適正濃度を得る浸炭工程の制御により向上する。
Takechiらによる米国特許第No.4,391,653は、冷間圧延ストリップ鋼の窒素含有率の制御により焼付硬化性が向上する高強度冷間圧延ストリップ鋼を開示する。
Irieらによる米国特許No.4,496,400は、自動車外装シート用に適した冷間圧延シート鋼に関する。この特許は、適量のアルミニウム存在下で鋼中のCとNとを固定させる作用に有効なニオブの混合量と、ニオブの寄与を有効に促進できる焼なまし条件を開示する。この鋼の連続的焼なましは、焼付硬化効果を得るために細かい加熱及び冷却の管理を必要とする。
Satoらによる米国特許第No.4,750,952もまた、焼付硬化性の向上した冷間圧延シート鋼を開示する。この特許では、イオウと窒素の量が限定され、そしてイオウと窒素の量を考慮してチタンの添加が特定範囲に制限される。この特許もまた、「時間/エネルギー消費量の大きい」焼なまし(すなわち、再結晶化温度より上で300秒より長い)を必要とする。
自動車外装枠への適用については、ホットディップ鋼等の被覆鋼が、その耐食性から好適である。しかしながら、ホットディップ被覆に特に適した合金は、一般的に格子間無原子(IF)の組成すなわち格子間原子のない組成を有することがよくある。これらのタイプの合金においては、合金となる成分が、固溶体から全ての炭素を効果的に排除してしまうために焼付硬化性が損なわれる。
上記のように、満足できる成形性と焼付硬化性の双方を兼ね備えたホットディップによる被覆製品の製造を可能とする改善された方法及び合金化学組成の実現に対する要請が高まっている。さらに、チタン及び/またはニオブ等の合金成分を利用した鋼組成による精密な化学的制御の必要性の観点から、精確で極端に少ない合金成分の限定やエネルギー消費の大きい処理を必要としない焼付硬化のために適した合金化学組成の実現に対する要請が大きくなっている。
このような要請に応えて、本発明は、自動車用鋼板等のシート用途に適した、熱間圧延または冷間圧延されかつ焼なましされた優れた低炭素鋼製品を提供する。さらにそれは、従来の合金化学組成よりも制御が容易であり、それほどエネルギー消費が大きくなく、処理上の要請が少ないものである。
発明の概要
従来の技術において良好な焼付硬化性が得られる場合もあるが、従来の鋼製品では、高度の技術分野における用途、特に自動車製造における用途に適するように成形する前の十分な耐時効性がないことがしばしばである。
従って、本発明の目的は、上記のような耐時効性を向上させる一方で優れた焼付硬化性も維持するような圧延鋼製品及びその製造方法を提供することである。
この目的は、本発明により解決される。すなわち圧延鋼製品が、重量%で本質的に0.0005から0.1未満の炭素と、0より多く2.5までのマンガンと、0より多く0.5までのアルミニウムと、0より多く0.5までの窒化物形成元素であるチタンと、0より多く0.04未満の窒素と、0.005から0.6未満のバナジウムと、0より多く1.0までのケイ素と、0より多く0.25までのリンと、残部鉄及び不可避的不純物とからなり、バナジウム対炭素の比が10またはそれより大きいことを特徴とする。従って、このような圧延鋼製品の製造方法は、前記鋼におけるバナジウム対炭素比を10またはそれより大きく維持することにより耐時効性を向上させることを特徴とする。チタンに替 えて、ホウ素またはジルコニウムを窒化物形成元素とす ることができる。
開示内容の有用な展開については、従属項及び以下の本発明の実施例の説明並びに図面に記載されている。図面は、本発明におけるksi(kips/インチ2:1kip=1000ポンド、1ksi=6895kPa)による焼付硬化性と固溶体焼なまし温度との関係を示すグラフである。
好適な実施例の説明
低炭素鋼に有効量のバナジウムを添加することにより、焼付硬化可能な熱間圧延または冷間圧延されかつ焼なましされる製品を製造することができることが見出された。この製品は、特に、被覆状態での自動車用シート鋼に適している。
本発明の合金化学組成は、低い固溶体焼なまし温度において所望する焼付硬化性を得ることができ、また、製品製造工程において「製造者にとってより親切な」ものである。すなわち、合金鋼化学組成において規定量のバナジウムを用いることにより、許容範囲内で鋼を鋳造することが容易になり、そして満足できる製品を製造できる。バナジウムの重量パーセントが、他の従来の合金成分よりも高いレベルまで上げられているので、鋳造時の制御が容易になる。さらに、本発明の合金化学組成によれば、最終的な機械的特性におけるばらつきが少なくなる場合が多い。なぜなら、バナジウム量の通常の変動は、機械的特性を大きく変えないからである。
最も広い実施態様における本発明は、低炭素型のシート鋼またはストリップ鋼等の焼付硬化可能な熱間圧延または冷間圧延されかつ焼なましされた鋼製品である。この圧延鋼製品は、残部鉄及び不可避的不純物とともに、本質的に重量%で、0.0005から0.1までの炭素、0より多く0.04未満の窒素、0より多く0.5未満のチタン、0より多く0.5までのアルミニウム、0より多く2.5までのマンガン、0.005から0.6までのバナジウムからなる。好適には、炭素が0.01重量%まで、窒素が0.008重量%まで、チタンが0.05重量%まで、そしてバナジウムが0.15重量%までである。
これらのタイプの鋼へのマンガンの添加は汎用的であって、マンガンは、強化元素として作用すると同時に、鋼の赤熱ぜい性を防ぐためにイオウと結合する。本発明の熱間圧延または冷間圧延されかつ焼なましされた鋼は、キルド鋼であるので、その中には脱酸効果のためにアルミニウムが含まれる。好適には、アルミニウムは0.08%までに限定される。
窒素は、上記のように上限が0.04%(400ppm)である。好適には、窒素が0.008%未満に限定される。
本発明の低炭素鋼は、焼付硬化性を得るために有限量の炭素を必要とする。一般的に、この炭素の下限は、約0.0005%(5ppm)である。上限は、好適には0.005%である。
これらのタイプの低炭素鋼におけるケイ素とリンは、残留不純物レベルであることがしばしばであるが、この鋼製品の他の特別なエンドユーザは、より高い強度を得るためにさらに添加量を多くする必要がある場合がある。したがって、最終的な用途によって、別途ケイ素を1.0重量%まで、リンを0.25重量%までそれぞれ添加することができる。他の元素もまた固溶強度に寄与することであるが、通常、Mn、P、及びSiがこの目的のために低炭素鋼で用いられる。
チタンは、主として、窒化チタン等の窒素化合物の形成により固溶窒素を除去するために鋼へ添加される。これにより、固溶炭素の量を制御するだけで焼付硬化性の制御が可能となる。好適には、チタンの量を、少なくとも窒素の重量%濃度の3.4倍とすべきである。その他の強力な窒化物形成元素、例えばホウ素、ジルコニウムあるいはアルミニウムやバナジウムでさえ、適量で適切な処理をされれば、チタンの代わりに固溶窒素と結合することができる。
イオウは、通常、低炭素シート鋼へは添加されないが、適用される鋼製造方法及び取鍋処理方法によって残留量が存在する。最終製品におけるイオウは、通常、硫化チタン(TiS)を含む様々な化合物の形で見られる。上記の窒化チタンとの関係を考慮し、また、ある程度のチタンがイオウと反応してTiSを形成することを踏まえると、チタンの好適な量は、3.4N〜(3.4N+1.5S)の間である。ここで、N及びSは、それぞれ窒素及びイオウの重量%濃度である。
熱間圧延または冷間圧延されかつ焼なましされた鋼製品の焼付硬化性を制御するためにバナジウムも添加される。バナジウムは、好適には0.03〜0.12重量%、さらに好適には、0.05〜0.10重量%の範囲である。
以下に示すように、バナジウム添加は、焼付硬化性及び耐時効性を制御できる。このような制御は、従来、認識されていなかった。本発明の所与の合金化学組成において、バナジウムの添加により焼付硬化性の向上が認められた。
本発明の冷間圧延されかつ焼なましされた鋼は、引き続き被覆鋼へ処理され、さらにプレス形成により任意の最終用途のために様々な形状とされることが可能である。特にこれらの被覆製品は、自動車用シート鋼またはプレート鋼としての利用に非常に適しており、その場合被覆製品は、引き続き塗装され焼付されることにより車輌外装枠における焼付硬化性効果と凹み耐性を得る。被覆は、これらの用途に使用される亜鉛等の任意の汎用的な被覆でよい。
本発明の別の態様においては、本発明の鋼の化学組成により、このような材料の冷間圧延及び焼なましにおける従来技術を改良することができる。これらの従来技術のプロセスにおいては、特別な鋼が、インゴット形態へ鋳込まれるか、あるいはスラブへと連続的に鋳込まれるかした後、熱間圧延され、そしてコイル(巻取り)形態へと冷却される。この熱間圧延製品は使用することもできるが、あるいは別の方法では、コイル形態としたものを引き続き酸洗い等により清浄化し、多くのパスで冷間圧延して所望の寸法とする。冷間圧延シート鋼は、その後焼なましされ、バッチ式または連続式のいずれかで再結晶化鋼製品が作られる。
これらのプロセスはさらに、電気亜鉛めっきやホットディップ被覆等の技術により冷間圧延され焼なましされた製品を被覆することを含むことができる。これらの被覆ステップは、焼なましの一部として行える。本発明は、上記の合金鋼の化学組成により、特に連続的焼なまし工程中に使用する固溶体焼なまし温度を下げることができたという点で従来技術のプロセスを向上させた。例えば、Irieらによる米国特許No.4,496,400では、ニオブ含有の焼付硬化可能な薄シート鋼が、最低温度900℃(1,652゜F)で焼なましされている。
これに対して、本発明による合金化学組成では、約1,450゜F(788℃)以上で注目すべき焼付硬化性を実現することができる。この低い焼なまし温度により、焼なまし工程のエネルギーも節約でき、製品ユニットのコストも下げられると同時に、製品の形状及び平坦さの制御も良好となる。
本発明の合金化学組成では、バナジウムの利用により、固溶体焼なまし温度を下げることができる。なぜなら、バナジウムは、チタンやニオブ等の合金成分よりも鋼マトリクス中に溶けやすいからである。この結果、焼付硬化性に必要な量の炭素を固溶形態で得るために、より低い固溶体焼なまし温度を適用することができる。
効果的な焼なまし温度範囲は、約788℃(1,450゜F)の低温から約900℃(1,650゜F)までが可能である。好適には、固溶体焼なまし温度が815℃(1,500゜F)〜843℃(1,550゜F)の範囲内で、適切な再結晶化、焼付硬化性、良好な製品形状/平坦性、及び低エネルギーコストを実現することができる。
これらのタイプの低炭素鋼における鋳造、熱間圧延及び冷却、並びに冷間圧延の処理ステップは冶金技術において周知であるので、それらについての更なる詳細な説明は、本発明の理解には不要であろう。
これらのタイプの低炭素鋼においてバナジウムを使用することによる予期しなかった効果を明らかとするために、以下の実験を行った。ここで、全てのパーセントは、特に示さない限り重量パーセントであることを注記する。実験は説明のために含めたのであり、本発明を限定するものと解すべきではない。
3個の227kg(500ポンド)の実験用ヒートが、実験室条件下でインゴット形態へ鋳造され、引き続き19mm(0.75インチ)の厚さに熱間圧延された。これらのヒートの組成は、通常、残部鉄及び不純物とともに、0.003%の炭素、0.2%のマンガン、0.004〜0.007%の窒素、0.02〜0.04%のアルミニウム、0.02%のチタン、及び、選択された量のバナジウムからなる。
熱間圧延されたインゴットは、1260℃(2,300゜F)へ加熱され、さらに、19mm(0.75インチ)から3.1mm(0.12インチ)へ圧延された。熱間圧延後に冷却する噴射水流出テーブルをシミュレートするために、圧延されたインゴットが汎用的なコイル冷却温度に達するまでポリマー溶液中でクエンチ(急冷)された。この時点で、熱間圧延された試料は、周囲温度まで炉冷却された。
熱間圧延された各試料は、その後酸洗いされ、約75%の冷間収縮を得るために複数のパスにより3.1mm(0.12インチ)から0.76mm(0.03インチ)まで冷間圧延された。
冷間圧延された材料は、その後788℃(1,450゜F)〜900℃(1,650゜F)の温度で30秒間焼なましされた後、空冷され、焼きもどし圧延される(約1%の冷間収縮)。焼もどし圧延された鋼は、2%の引張予歪みに続いて178℃(350゜F)で30分間の標準的な焼付硬化シミュレーションを施される。焼付硬化性の向上は、時効後の降伏応力と、時効前の2%の歪み応力の間の差として表れる。さらにこの材料に対して、歪み時効指数(SAI:strain aging index)試験が実施され、10%の予歪みに続いて101℃(212゜F)で60分間の処理を行うことにより、この処理された鋼の耐常温時効性の初期指標が得られた。
表1は、実験における実際の組成を重量%でまとめて示したものである。
Figure 0003601721
ここで図を参照する。このグラフは、4個の異なる合金化学組成についての焼付硬化性の向上と焼なまし浸漬温度との対比を示している。0.02Tiと示した3つの曲線は、表1に示した3つの化学組成に対応する。0.05Tiと示した曲線は、過度に安定化された低炭素シート鋼を表しており、これはホットディップに適しているが顕著な焼付硬化性は示さない。
図から明らかなように、バナジウムの添加は、低炭素鋼の焼付硬化性の制御に用いることができる。このグラフでは、チタン含有低炭素鋼に所与のバナジウムを添加すると、例えば0.05%のバナジウム添加により、バナジウムを添加しない類似組成のものと比べて約815℃(1,500゜F)〜878℃(1,600゜F)の焼なまし温度での焼付硬化性が向上することがわかる。さらにこのグラフは、バナジウム添加量を約0.10%まで増加したとき、さらに焼付硬化性が向上することを示している。そして最後に、低い焼なまし温度すなわち好適な815℃(1,500゜F)の下から843℃(1,550゜F)までの焼なまし範囲で焼付硬化性の向上が起きることがわかる。焼付硬化性は、約13MPa(2KSI)〜34MPa(5KSI)の範囲まで向上する。これに対して、バナジウムを含まない鋼では、このような低い焼なまし温度での焼付硬化性は約7MPa(1KSI)〜17MPa(2.5KSI)の範囲である。さらに、歪み時効指数の試験結果から、これらの鋼が、成形前の周囲温度において時効に対する十分な耐性を示すことがわかった。
本発明の別の態様においては、上記のバナジウム含有鋼の組成におけるバナジウム対炭素の比を制御することにより、耐時効性において予期しない向上が得られた。特に、このタイプの鋼のバナジウム対炭素の比を約10またはそれより大きくすることにより、上記の時効に対する耐性が得られる。上記の約0.005%から約0.6%未満の間の広範囲のバナジウム量において、バナジウム対炭素比を10またはそれより大きく維持するように選択された場合に、耐時効性が向上することとなる。さらに好適には、バナジウムの下限を0.02%に設定する。バナジウムの上限は、満足できない程度まで焼付硬化性が低下するところで決定される。
表2は、9個の特定組成における降伏点伸び(YPE:yield point elogation)の観点から耐時効性を示している。これら9個の組成物の化学組成もまた以下に示す。
常温時効に対する耐性は、加速された時効試験(212゜F/1時間)の後に観察された降伏点伸び(YPE)の量を測定することにより決定された。時効後に顕著なYPEの形跡が見られない場合、すなわちYPEが約0.2%未満の場合、その鋼は実質的に非時効であるといわれる。我々の試験結果では、約10またはそれより大きい臨界的なV/C比(重量%による)であれば、好適な焼なまし温度である788℃(1,450゜F)〜843℃(1,550゜F)でそしてさらに好適には815℃(1,500゜F)〜843℃(1,550゜F)で鋼が十分に耐時効性を有することが示された。
この表から明らかなように、最小の降伏点伸びは、バナジウム対炭素比が10またはそれより大きい組成物において得られた。このYPE表にしめされた組成物はさらに、本発明による焼付硬化性も有することが明らかであろう。その組成上の制限及び処理条件は上記の通りである。
格子間溶質原子の量は、時効挙動を示唆する重要なパラメータである。一般に、炭素または窒素と化学結合し易い元素は、固溶炭素の量を低下させる、すなわち時効硬化または降伏点伸びの度合いを低減させる傾向がある。本発明では、鋼中で炭素と反応して炭化バナジウムを形成することが知られているバナジウムを用いることにより、固溶炭素の量を制御し、適度の焼付硬化性を付与すると同時に常温時効に対する耐性を保持する。バナジウムが炭素と結合する程度は、バナジウムと炭素の濃度比V/Cにより表されることが判明している。V/C濃度比は、炭化バナジウムの可溶性(すなわち、逆に言えば安定性)を把握するために重要なパラメータであり、従って、V/C濃度比により固溶炭素の量が制御されると考えられる。すなわち、炭化物安定性は、V及びCを各々単独ではなく双方を併せたもので決定される。
本発明の別の態様では、上記の広い範囲に含まれる組成物に対して、シミュレートされたバッチ式すなわちボックス式の焼なまし条件を適用することにより、これらの組成物が焼付硬化性を示すか否かを判断した。
ボックス式焼なましでは、1または複数の積層コイル上にカバーを起き、保護用大気を導入し、規定範囲内の温度となるようにコイル全体を加熱することにより、完全な再結晶化を生じさせる。通常、この範囲は、約654℃(1,200゜F)〜766℃(1,400゜F)でよい。コイル形態における鋼の潜在的な質量が大きいので、通常、加熱及び冷却の速度を比較的遅い約28℃/時(50゜F/時)とし、1サイクルを数日とする。実験室におけるボックス式焼なましをシミュレートするために、鋼試料はステンレス鋼の缶の中に密封され、その中に水素4%及び窒素96%の混合ガスを通し、28℃/時(50゜F/時)の速度で710℃(1,300゜F)まで加熱し、710℃(1,300゜F)で15時間維持し、その後28℃/時(50゜F/時)の速度で周囲温度まで冷却した。
表3及び表4では、シミュレートされたバッチ式焼なまし後、及び製造試験バッチ式焼なまし後に焼付硬化性を示しており、それぞれにおける組成物は上記の広い範囲内に含まれるものである。これらの表から明らかなように、また驚くべきことに、これらの鋼は焼付硬化性を示している。
Figure 0003601721
ボックス式焼なましにおける冷却速度は、炭化物析出に好ましい程度の遅いので、一般的に歪み時効は問題にならないと考えられる。しかしながら、焼付硬化性については、いささか予想しなかった驚くべきことである。バナジウムが炭化物可溶性及び析出挙動をもたらすことで、ここで報告したような結果が得られたと考えられる。
本発明による合金鋼化学組成における焼付硬化性及び耐時効性の向上、固溶体焼なまし温度の低下、シートやストリップの形状及び平坦性の向上、鋳造過程におけるバナジウム添加量を容易に制御できること、さらに、バナジウム含有量の変動が最終的な機械的特性にほとんど影響しないことによって、この鋼は、熱感圧延または冷間圧延されかつ焼なましされた状態であっても、被覆製品の状態であっても、シート鋼及び/またはストリップ鋼製品としての利用に理想的である。
Figure 0003601721
Figure 0003601721
本発明の圧延製品及びその製造方法により、従来の格子間無原子の鋼が改良され、そして「製造者にとって親切な」特性が実現されたので、この鋼は、特にめっき焼なまし等のホットディップ被覆プロセスに適している。
本発明の合金鋼化学組成を用いた、冷間圧延されかつ焼なましされた鋼製品は、任意の汎用的方式でホットディップ被覆することができ、好適には、連続焼なましホットディップ被覆ラインにおいてホットディップ被覆することができる。ホットディップ被覆された後、任意の汎用的方式で被覆鋼製品を自動車外装枠へ成形できる。これらの外装枠は容易に成形され、引き続き塗装され焼付される。そして、塗装された外装枠は良好な凹み耐性を備えている。
以上のように、本発明をその好適例に関して開示したが、これらの好適例は、前述の本発明の目的のそれぞれを満足するものである。そして、焼付硬化性の向上及び製造時エネルギー消費節減のために、合金成分としてバナジウムを利用することにより、低炭素鋼製品及びその製造方法の改良を実現した。
もちろん、当業者であれば、本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく本発明の教示から様々な変更、修正、及び置換が考えられるであろう。従って、本発明は、特許請求の範囲の記載によってのみ限定されるものとする。

Claims (39)

  1. 残部鉄及び不可避的不純物とともに炭素、マンガン、アルミニウム、窒素を有効量含む低炭素鋼を鋳造するステップと、該鋼を熱間圧延するステップとを含む圧延鋼製品の製造方法において、
    a)前記鋼として実質的に、
    0.0005から0.1重量%までの炭素と、
    0より多く0.04重量%未満の窒素と、
    窒化物形成元素として0より多く0.05重量%未満のチタンと、
    0より多く0.5重量%までのアルミニウムと、
    0より多く2.5重量%までのマンガンと、
    0.005から0.6重量%までのバナジウムと、
    残部鉄及び不可避的不純物からなる組成を具備するものを提供し、
    b)前記鋼におけるバナジウムと炭素の比を10又はそれ以上に保持し、
    c)熱間圧延された鋼を冷間圧延し、冷間圧延された鋼を選択された温度範囲でコイル形態でバッチ式に焼き鈍しし、該選択された温度で該コイル形態の鋼を一定時間維持した後、該コイル形態の鋼を周囲温度まで徐冷する
    圧延鋼製品の製造方法。
  2. 前記選択された温度範囲が654℃(1200゜ F)から760℃(1400゜F)までである請求項1の方法。
  3. 前記バナジウムの範囲が0.05から0.15重量%までである請求項1の方法。
  4. 焼付硬化性が前記バナジウムの添加により13MPaから35MPaの範囲へと増加する請求項1の方法。
  5. 前記鋼が残部鉄及び不可避的不純物と共に0.0018から0.0028重量%までの炭素と、0.18から0.22重量%までのマンガンと、0.024から0.040重量%までのアルミニウムと、0.0044から0.0065重量%までの窒素と、0.018から0.022重量%までの窒化物形成元素としてのチタンと、0.049から0.094重量%までのバナジウムからなる請求項1の方法。
  6. 前記鋼が被覆される請求項1の方法。
  7. 前記鋼がホットディッピングにより被覆される請求項6の方法。
  8. 前記鋼が電気亜鉛めっきにより被覆される請求項6の方法。
  9. 前記鋼がシート製品へ成形され、塗装焼付ステップを適用される請求項1の方法。
  10. 前記炭素が0.001から0.01重量%までの範囲であり、前記窒素が0.001から0.005重量%までの範囲であり、前記バナジウムが0.03から0.12重量%までの範囲であり、前記アルミニウムが0.02から0.08重量%までの範囲であり、前記窒化物形成元素としてのチタンが前記窒素量の3.4倍より多く添加される請求項1の方法。
  11. バナジウム含有低炭素シート鋼製品の製造方法において、
    a)焼付硬化性を具備すべく炭素と、バナジウムと、窒化物形成元素を含むバナジウム含有低炭素シート鋼が、
    0.0005から0.1重量%までの炭素と、
    0より多く2.5重量%までのマンガンと、
    0より多く0.5重量%までのアルミニウムと、
    0より多く0.04重量%未満の窒素と、
    0より多く0.05重量%までの窒化物形成元素としてのチタンと、
    0.005から0.6重量%までのバナジウムと、
    残部鉄及び付随的不純物とを含むべく提供し、
    b)耐時効性を向上させるべく前記鋼におけるバナジウムと炭素の比を10又はそれ以上に保持することにより、耐時効性を向上させるステップを有する
    バナジウム含有低炭素シート鋼製品の製造方法。
  12. 前記バナジウムが0.02から0.6重量%までの範囲である請求項11の方法。
  13. 前記バナジウムが0.05から0.20重量%までの範囲である請求項11の方法。
  14. 圧延鋼製品において実質的に、
    0.0005から0.1重量%未満の炭素と、
    0より多く2.5重量%までのマンガンと、
    0より多く0.5重量%までのアルミニウムと、
    0より多く0.05重量%までの窒化物形成元素としてのチタンと、
    0より多く0.04重量%未満の窒素と、
    0.005から0.6重量%未満のバナジウムと、
    残部鉄及び不可避的不純物とからなり、
    バナジウムと炭素の比が10又はそれ以上であるとき前記製品が耐時効性の向上を呈する
    圧延鋼製品。
  15. 前記バナジウムと炭素の比が10から64までである請求項14の圧延鋼製品。
  16. 前記バナジウムが0.02から0.6重量%までの範囲である請求項14の圧延鋼製品。
  17. 前記バナジウムが0.05から0.20重量%までの範囲である請求項16の圧延鋼製品。
  18. 前記炭素が0.0034重量%までであり、前記バナジウムが0.05から0.6重量%未満である請求項14の圧延鋼製品。
  19. 前記炭素が0.0034重量%までであり、前記バナジウムが0.05から0.6重量%未満である請求項11の方法。
  20. バナジウム含有低炭素シート鋼製品の製造方法において、
    a)焼付硬化性を具備すべく、炭素と、バナジウムと、チタン、ホウ素及びジルコニウムからなる群から選択される窒化物形成元素とを含むバナジウム含有低炭素シート鋼が、
    0.0005から0.1重量%未満の炭素と、
    0より多く2.5重量%までのマンガンと、
    0より多く0.5重量%までのアルミニウムと、
    0より多く0.04重量%未満の窒素と、
    0.005から0.6重量%未満のバナジウムと、
    残部鉄及び不可避的不純物とを含むべく提供され、
    b)耐時効性を向上させるべく前記鋼におけるバナジウムと炭素の比を10又はそれ以上に保持し、
    c)前記窒化物形成元素としてチタンが選択されるとき 0より多く0.5重量%未満のチタンを添加して反応を生じさせることによりフリー窒素が前記鋼から除去されそして該反応の完了時には溶液中に有限量の炭素が残留し、かつ3.4N<Tiの関係を満足することによる耐時効性を向上させるステップを有する
    バナジウム含有低炭素シート鋼製品の製造方法。
  21. さらにイオウを含むときチタンの量が、
    3.4N<Ti<(3.4N+1.5S)の関係を満足することによる耐時効性を向上させるステップを有する
    請求項20のバナジウム含有低炭素シート鋼製品の製造方法。
  22. 前記窒化物形成元素がホウ素及びジルコニウムのいずれかから選択される請求項20の方法。
  23. 前記窒化物形成元素がチタンである請求項20の方法。
  24. 圧延鋼製品において実質的に、
    0.0005から0.1重量%未満の炭素と、
    0より多く2.5重量%までのマンガンと、
    0より多く0.5重量%までのアルミニウムと、
    0より多く0.04重量%未満の窒素と、
    0.005から0.6重量%未満のバナジウムと、
    残部鉄及び不可避的不純物とからなり、
    耐時効性を向上させるべく前記鋼におけるバナジウムと炭素の比を10又はそれ以上に保持し、
    チタン、ホウ素及びジルコニウムからなる群から選択される窒化物形成元素と、バナジウムと添加して反応を生じさせることによりフリー窒素が前記鋼から除去されそして該反応の完了時には溶液中に有限の炭素が残留し、
    前記窒化物形成元素としてチタンが選択されるときその量が0より多く0.5重量%未満でありかつ3.4N<Tiの関係を満足する
    圧延鋼製品。
  25. さらにイオウを含むときチタンの量が、
    3.4N<Ti<(3.4N+1.5S)の関係を満足することによる耐時効性を向上させるステップを有する
    請求項24の圧延鋼製品。
  26. 前記窒化物形成元素がホウ素及びジルコニウムのいずれかから選択される請求項24の製品。
  27. 前記窒化物形成元素がチタンである請求項24の製品。
  28. 残部鉄及び付随的不純物と共に炭素、マンガン、アルミニウム、窒素を含む低炭素鋼を鋳造するステップと、該鋼を熱間圧延するステップとを含む圧延鋼製品の製造方法において、
    a)前記鋼として実質的に、
    0.0005から0.1重量%未満の炭素と、
    0より多く0.04重量%未満の窒素と、
    0より多く0.05重量%未満の窒化物形成元素と、
    0より多く0.5重量%までのアルミニウムと、
    0より多く2.5重量%までのマンガンと、
    0.005から0.6重量%未満のバナジウムと、
    残部鉄及び不可避的不純物とからなる組成を具備するものを提供し、
    耐時効性を向上させるべく前記鋼におけるバナジウムと 炭素の比を10又はそれ以上に保持し、
    塗装焼付を適用されるとき前記鋼の焼付硬化性が向上するべく前記バナジウムが寄与し、
    b)熱間圧延された前記鋼を冷間圧延し、そして
    c)コイル形態で冷間圧延された前記鋼を654℃(1200 ゜F)から760℃(1400゜F)の間の温度まで徐々に加熱することにより該冷間圧延された鋼をバッチ式で焼き鈍しし、該温度で該コイル形態の鋼を一定時間維持した後、該コイル形態の鋼を周囲温度まで徐冷する
    圧延鋼製品の製造方法。
  29. 前記窒化物形成元素がチタン、ホウ素及びジルコニウムからなる群から選択される請求項28の方法。
  30. 前記窒化物形成元素としてチタンが選択されるときその量が0より多く0.5重量%未満であり、 かつ3.4N<Tiの関係を満足する請求項29の方法。
  31. さらにイオウを含むときチタンの量が、
    3.4N<Ti<(3.4N+1.5S)の関係を満足することによる耐時効性を向上させるステップを有する
    請求項30の方法。
  32. 前記バナジウムが0.05から0.15重量%の範囲である請求項28の方法。
  33. 前記バナジウムの添加により焼付硬化性が13MPaから35MPaの範囲へと増加する請求項28の方法。
  34. 前記鋼が実質的に、0.0018から0.0028重量%の炭素と、0.18から0.22重量%のマンガンと、0.024から0.040重量%のアルミニウムと、0.0044から0.0065重量%の窒素と、前記窒化物形成元素として0.018から0.022重量%のチタンと、0.049から0.094重量%のバナジウムと、残部鉄及び不可避的不純物とからなる請求項28の方法。
  35. 前記鋼が被覆される請求項28の方法。
  36. 前記鋼がホットディッピングにより被覆される請求項35の方法。
  37. 前記鋼が電気亜鉛めっきにより被覆される請求項35の方法。
  38. 前記鋼がシート製品へ成形され、塗装焼付ステップを適用される請求項28の方法。
  39. 前記炭素が0.0005から0.0028重量%までの範囲であり、前記バナジウムが0.03から0.094重量%までの範囲である請求項28の方法。
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