JP3601316B2 - 乗客コンベア - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗客を乗せて移動する乗客コンベアに係り、特に建築構造体あるいは土木構造体(以下、構造体という)に設置されるエスカレーターや動く歩道など本体枠に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の乗客コンベアとしては、例えば特開平5−213572 号公報に開示されたものが知られている。この乗客コンベアは、L型鋼を組合せたトラスメンバーで本体枠で構成し、その長手方向端部を構造体に載置する構成である。また、例えば実開昭47−21385 号公報に開示された乗客コンベア(エスカレーター)が知られている。この乗客コンベアは、本体枠の両側部と底部を一体の板材で形成し、その内面に防音材あるいは吸音材を装着して低騒音化を図ることを提案している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記公知例の前者は、単に型鋼細工のトラス構造体に関するものであり、その内部の回転構造体が発する騒音や振動を抑制せんとする意図はなかった。また、上記従来例の後者は、防音材等を本体枠の内周面に直接装着する構成であるために、その内部の回転構造体に与えた油分が飛散して防音材等に付着し、防音機能の低下を招く問題があった。さらに、回転異常による機器の接触や侵入した煙草等の火気により、上記油分が防音材等の発煙,燃焼を促進する不具合が内在していた。
【0004】
本発明の目的は、その内部の回転構造体が発する騒音,振動を抑制する一方、火気による悪影響を排除するに好適な本体枠の構成を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、一方の側の乗降口と他方の側の乗降口との間で継ぎ目なし状に連結され、乗客を乗せて移動する複数の踏段と、該踏段とともに移動して乗客の手を支える手摺と、該手摺の移動を案内する欄干と、前記踏段,手摺及び欄干を支持する本体枠とを備え、建築,土木等の構造体に設置される乗客コンベアにおいて、前記本体枠の両側部と底部のうち少なくとも底部は、前記踏段と外装板との間に設けられた上層板および下層板と、この上層板および下層板の側部に設けられた下辺材を有し、密閉された空気室が形成されている。さらに、前記下層板に吸音材や制振材を支持させたのである。
【0006】
即ち、上記本体枠において、特に該本体枠底部の踏段側と乗客コンベア外部側との間に設けた中空部は、それを形成する上層板と下層板とで実質的に密閉された空気室となって回転構造体が乗客コンベアの外部にもたらす騒音や振動を抑制する効果を発揮するものである。また、この中空部は上記吸音材や制振材の収納スペースとして活用される一方、上記上層板は回転構造体に与える油分の受け皿となって油と、それに対する火気の悪影響を遮断し、従来懸念された発煙,発火等の不具合を解消するものである。さらに、前記下層板は、上層板との複合による騒音等の低減効果のほかに吸音材や制振材の支持板の役目を担う効果を発揮するものである。なお、ここでは本体枠の底部を重点に記載したが、この構成は、本体枠の両側部にも応用でき、この場合も上記と同様の効果をもたらすことができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係る乗客コンベアの実施形態を図面に基づき説明する。なお、図1〜図3において同じ構造,作用部分には同じ符号を付けて示す。図1は、本発明に係る乗客コンベアの第1実施形態を示す全体斜視図である。第1実施形態の乗客コンベア1は、エスカレーターに適用されるもので、一方の側の乗降口で下階床F1に連なる下部乗降口2と他方の側の乗降口で上階床F2に連なる上部乗降口3との間で継ぎ目なし状に連結され、乗客を乗せて移動する複数の踏段4(動く歩道の場合は、踏板と称する)と、この踏板4とともに移動して乗客の手を支える手摺5と、この手摺5の走行路を形成してその移動を案内する欄干6 (踏板4の両側に立設される)と、前記踏段4,手摺5及び欄干6等の構造部品を支持する本体枠7とを備え、上階床F2の構造体8と下階床F1の構造体9との間に設置される。
【0008】
さらに、第1実施形態の乗客コンベア1において、本体枠7は、欄干6等の構造部品の長手方向に延設され、踏段4が下部乗降口2から下部曲線路4A,傾斜路4B,上部曲線部4Cを経由して上部乗降口3に至る全長に渡って下部水平部7A,傾斜部7B及び上部水平部7Cを連結した形で下階床F1と上階床F2をつないで設置される。
【0009】
図2は、図1のI−I線を沿う断面図である。本体枠7は、踏段4の両側で欄干6の外側位置に上辺材7Dと下辺材7E、この各々の上辺材7Dと下辺材7Eを縦方向に連結する縦材7Fとで略U字の箱形状をなし、踏段4等の構造部品を支持する。ここで、上辺材7D,下辺材7E及び縦材7Fは、踏段4側と乗客コンベア1の外部側との間に、両側部には符号M,底部には符号Nで示す中空部を形成するためのH型鋼が用いられ、各々が符号Y部分で溶接接合された高強度構造体となっている。
【0010】
そして、本体枠7の底部の踏段4側には回転構造体に適宜与える油分の受け皿となるよう縦材7F相互間の幅いっぱいに平面7aと立上げ部7bを有する上層板7Gが設けられ、油分とそれに対する火気の悪影響を遮断している。
【0011】
さらに、中空部N内には回転構造体が発する騒音を吸収する材質でなる吸音 (あるいは制振)材10が挿入され、かつ、下辺材7Eの底部には下層板7Hがビス11により後付けで固定されて吸音材10を支える支持板の役目を果している。この場合、吸音材10は、踏段4等が発する振動を抑制する性能と制振の複合性能を備えた特殊材料を用いてもよい。
【0012】
一方、本体枠7の両側部の中空部M内には、低騒音化,低振動化の必要性に応じて吸音(あるいは制振)材12が縦材7Fの幅W内に挿入されている。なお、この中空部Mの両側面を閉じるように踏段4側と乗客コンベア1の外部(側面)側に上記上層板7G,下層板7H相当の遮蔽板(図示省略)を設けることも可能である。
【0013】
ここで、上記において本体枠7の底部の中空部Nの構成を詳述した反面、両側部の中空部Mへの施策は必要に応じてと記述した理由は、一般に乗客コンベア1の底部が通路や売店など人間の頭上に位置する設置形態が多く、低騒音及び低振動の必要性が高いためである。従って、本発明は本体枠7の両側部と底部に対して有効であるが、少なくとも底部を対象とすることにより相当な効果を奏すると考えられる。そして、この乗客コンベア1は、最終姿として外装板13で両側面の底面の3表面が化粧被覆されるものである。
【0014】
上記本体枠7の構成は、この第1の実施形態に限定されるものでなく、次に説明する図3に示すような構造でもよい。
【0015】
図3は、第2実施形態を示し、図2相当の部分断面図である。図2に示した本体枠7と同一機能を持つ図3の本体枠14は、下辺材14Aに溝型鋼を用いて中空部Oを形成し、このなかに吸音(あるいは制振)材10を挿入した構成である。この場合、上記中空部Nとこの中空部Oは同一目的で形成されているもので、下辺材7E及び14Aは、中空部NあるいはOを形成できればH型鋼,溝型鋼という形状は問わず、C字鋼やL字鋼でも特別な限定はない。なお、この図3の場合は、図2に比較して縦材7F内の吸音(あるいは制振)材12を省略した状態を示してあるが、これは吸音や制振の必要に応じてその有無を決定すればよいことである。
【0016】
なお、上記第1及び第2の実施形態においては、エスカレーターに適用する場合について説明したが、本発明の乗客コンベアは、これに限らず、動く歩道など他の乗客コンベアにも適用できることはもちろんである。
【0017】
【発明の効果】
本発明の乗客コンベアによれば、その内部の回転構造体が発する騒音,振動を抑制できる一方、火気による悪影響を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る乗客コンベアの第1実施例形態を示す全体斜視図である。
【図2】図1のI−I線に沿う断面図である。
【図3】本発明に係る乗客コンベアの第2実施形態を示す要部断面図である。
【符号の説明】
1…乗客コンベア、2…下部乗降口(一方の側の乗降口)、3…上部乗降口 (他方の側の乗降口)、4…踏段、5…手摺、6…欄干、7,14…本体枠、 7D…上辺材、7E,14A…下辺材、7F…縦材、7G…上層板、7H…下層板、8,9…構造材、10,12…吸音(制振)材、11…ビス、13…外装板、M,N,O…中空部。
Claims (2)
- 一方の側の乗降口と他方の側の乗降口との間で継ぎ目なし状に連結され、乗客を乗せて移動する複数の踏段と、該踏段とともに移動して乗客の手を支える手摺と、該手摺の移動を案内する欄干と、前記踏段,手摺及び欄干を支持する本体枠とを備え、建築,土木等の構造体に設置される乗客コンベアにおいて、前記本体枠の両側部と底部のうち少なくとも底部は、前記踏段と外装板との間に設けられた上層板および下層板と、この上層板および下層板の側部に設けられた下辺材を有し、密閉された空気室が形成されていることを特徴とする乗客コンベア。
- 請求項1において、前記下層板に吸音材や制振材を支持させたことを特徴とする乗客コンベア。
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