本発明は一方の躯体と他方の躯体間に設けられた自動式階段(エスカレーター)を含む階段の踊り場と躯体との間の目地部を塞ぐ階段用目地装置に関する。
従来、一方の躯体と他方の躯体間に設けられたエスカレーターや階段は、その一端部(下階部分)の踊り場が一方の躯体に固定され、他端部(上階部分)の踊り場が他方の躯体に固定されている。
ところで、「踊り場」とは、本願発明においては自動式階段や階段の端部に設けられた平坦部をいう。
このような階段やエスカレーターにおいて、地震によって躯体が揺れ動いた場合に、その揺れ動きを吸収できるものとしては、「一方の躯体と、該一方の躯体に下端部側が取り付けられた階段と、該階段の上端部側の踊り場に目地部を介して設けられた他方の躯体と、該他方の躯体に設けられた目地プレート支持部と、前記階段の上端部側に一端部が取り付けられ、他端部が前記目地プレート支持部に支持され、前記目地部を塞ぐ目地プレートと、前記他方の躯体に一端部が固定され、他端部が前記目地プレートに支持され、かつ、前記目地プレート支持部を覆うカバープレートと、前記階段の前後方向の側部に設けられ、前記目地部をカバーするカバー装置とで構成され、前記カバー装置は、前記階段の上端部側の前後方向の両側部にそれぞれ設けられた一方の袖壁と、該一方の袖壁に対向するように他方の躯体にそれぞれ設けられた他方の袖壁と、前記一方の袖壁に一端部がスライド可能に挿入されると共に、前記他方の袖壁に他端部がスライド可能に挿入され、ヒンジ部を有するカバー部材と、該カバー部材を内側へ付勢する付勢手段とで構成され、前記カバー部材は、前記ヒンジ部を支点にして屈曲しており、地震によって一方と他方の躯体が揺れ動いた場合、前記階段は前記一方の躯体と同調して揺れ動く階段用目地装置。」が知られている(特許文献1)。
しかし、このような階段用目地装置では、中空上の袖壁等を用い、この袖壁内にカバー部材を挿入しなければならないので、構造が複雑になり、その結果、コスト高になるという欠点があった。
また、ヒンジ部の位置を維持する維持手段等を用いると、その機構が外部から目視することができるため、美観が損なわれるという欠点があった。
本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、コストを抑え、かつ、美観を向上させることができると共に、地震によって躯体同士が異なる方向に揺れ動いた場合であっても、破損等せずに地震による揺れ動きを吸収でき、かつ、容易に設置可能な階段用目地装置を提供することを目的としている。
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の階段用目地装置は、一方の躯体と、前記一方の躯体に下端部側が取り付けられた階段と、前記階段の上端部側の踊り場に目地部を介して設けられた他方の躯体と、前記踊り場に設けられた第1の目地プレート支持部と、前記第1の目地プレート支持部に対向するように前記他方の躯体に設けられた第2の目地プレート支持部と、前記第1の目地プレート支持部にその一端部が前後方向にスライド移動可能に取り付けられると共に、前記第2の目地プレート支持部に他端部が支持され、かつ、前記目地部を塞ぐ目地プレートと、前記階段の前後方向の両側部側にそれぞれ設けられた一対となる一方のカバー装置取付部と、この一方のカバー装置取付部とは反対側に位置するように前記他方の躯体側に設けたられ一対となる他方のカバー装置取付部と、前記一方のカバー装置取付部に一端部側がそれぞれ取り付けられていると共に、前記他方のカバー装置取付部に他端部側がそれぞれ取り付けられた一対のカバー装置とで構成され、前記カバー装置は前記目地部が開口しないように塞ぐことができることを特徴とする。
請求項2に記載の階段用目地装置の前記カバー装置は、前記階段の上端部側の前後方向の両側部にそれぞれ設けられた一方の側部壁に設けられた前記一方のカバー装置取付部に一端部が回動可能に取り付けられ、かつ、前記他方のカバー装置取付部に他端部が回動可能に取り付けられたヒンジ部を有するカバー部材と、前記カバー部材の他端部に接続され、前記一方の側部壁に対向するように前記他方の躯体にそれぞれ設けられた他方の側部壁と略当接するようにスライド移動する端部カバー部材とで構成され、前記カバー部材は、前記ヒンジ部を支点にして屈曲していることを特徴とする。
請求項3に記載の階段用目地装置の前記カバー部材の下部には、滑動部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の階段用目地装置。
請求項4に記載の階段用目地装置の前記階段は、自動式階段であることを特徴とする。
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては、階段の踊り場と他方の躯体との間に目地部を形成すると共に、この目地部を目地プレートで覆っているので、一方の躯体と他方の躯体が地震によって異なる揺れ動きをした場合であっても、躯体や階段が損傷することなく地震による揺れ動きを吸収することができる。
(2)階段は一方の躯体と同調して揺れ動くように設けられているので、階段の一端部側は、通常と同様の施工で設置することができる。したがって、比較的容易に設置することができる。
(3)目地プレートの前後方向の端部にそれぞれ設けられた他方のカバー装置取付部にカバー装置の他端部を取り付けるため、低コストで施工でき、しかも、部品点数が少ないため、美観を向上させることができる。
(4)請求項2乃至請求項4に記載の各発明についても、前記(1)〜(3)と同様な効果が得られる。
図1乃至図8は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図9乃至図11は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
第1の実施形態の階段用目地装置の平面図。
図1の2−2線に沿う断面図。
目地部及び第1、第2の目地プレート支持部の説明図。
目地プレートの説明図。
カバー装置の説明図。
地震で目地部が狭くなった動作説明図。
地震で目地部が広くなった動作説明図。
地震で左右の躯体が異なる前後方向に揺れ動いた場合の動作説明図。
第2の実施形態の階段用目地装置の平面図。
図9の10−10線に沿う断面図。
カバー装置の説明図。
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
図1乃至図8に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は目地部2を介して設けられた一方の躯体3と他方の躯体4間に設置され、一方の躯体3に設けられた階段5の他端部と他方の躯体4の間の目地部2を塞ぐ階段用目地装置である。
なお、左右方向とは図1における左右方向(符号の向きを基準)であり、前後方向とは図1における上下方向(符号の向きを基準)をいい、上下方向とは図2における上下方向をいう。
また、本発明において躯体とは、建物、道路、スラブ、エレベーターシャフト等の目地プレートを設置可能な建造物をいい、出入口とはドアや扉の設けられた出入口だけではなく、人や車両等が通行できる通路も含むものである。
さて、この階段用目地装置1は、一方の躯体3に下端部側が取り付けられた階段5と、階段の上端部側の踊り場6に目地部2を介して設けられた他方の躯体4と、踊り場6に設けられた第1の目地プレート支持部7と、第1の目地プレート支持部に対向するように他方の躯体4に設けられた第2の目地プレート支持部8と、第1の目地プレート支持部7にその一端部が前後方向にスライド移動可能に取り付けられると共に、第2の目地プレート支持部8に他端部が支持され、かつ、目地部2を塞ぐ目地プレート9と、階段の前後方向の両側部側(図1を基準にする)にそれぞれ設けられた一対となる一方のカバー装置取付部10と、この一方のカバー装置取付部とは反対側(一方のカバー装置取付部に対して前後方向で対向する箇所)に位置するように他方の躯体側に設けたられ一対となる他方のカバー装置取付部11と、一方のカバー装置取付部10に一端部側がそれぞれ取り付けられていると共に、他方のカバー装置取付部11に他端部側がそれぞれ取り付けられた一対のカバー装置12とで構成され、カバー装置12は目地部2が開口しないように塞ぐことができる。
図1及び図2を参照にして付言すると、この階段用目地装置1は、一方の躯体3と、該一方の躯体3に下端部側が取り付けられた階段5と、前記階段の上端部側の踊り場6に目地部2を介して設けられた他方の躯体4と、前記踊り場6の端部に設けられた第1の目地プレート支持部7と、前記第1の目地プレート支持部7に対向するように目地部2を介して前記他方の躯体4に設けられた第2の目地プレート支持部8と、第1の目地プレート支持部7に一端部が前後方向にスライド移動可能に取り付けられ、第2の目地プレート支持部8に他端部が支持され、前記目地部を塞ぐ目地プレート9と、前記階段5の前後方向の側部付近にそれぞれ設けられた一方のカバー装置取付部10と、前記一方のカバー装置取付部10と前後方向に所定間隔を隔てて前記目地プレートの前後方向の端部にそれぞれ設けられた他方のカバー装置取付部11と、前記一方のカバー装置取付部10に一端部側がそれぞれ取り付けられ、前記他方のカバー装置取付部11に他端部側がそれぞれ取り付けられた一対のカバー装置12とで構成されている。
ここで、「目地部2を塞ぐ」とは、目地部2の上を歩行者等の通行が通行できるように、前記目地部の少なくとも一部を塞ぐという意味で、本実施形態においては、階段5としてエスカレーター5が用いられており、このエスカレーター5の他端部と連続するように平面視方形状の目地プレート9が設けられ、目地部2の歩行者等の通行ができるように目地部2の一部を塞いでいる。
階段5は、本願発明では、エスカレーターと通常の階段の両方を含むものであり、本実施形態では、エスカレーター5を例にして説明する。なお、エスカレーター5自体は、一般的なエスカレーター5と同様の構成であるので、その説明を割愛する。
例えば図2に示すように、エスカレーター5の一端部(低い方:下端部側)は、一方の躯体3の床面に取り付けられており、エスカレーター5の他端部(高い方:上端部側)は、支持部材13を介して一方の躯体3の床面に支持されている。そのため、エスカレーター5は一方の躯体3と一体的に設けられており、地震時には一方の躯体3と同調して揺れ動く。
このエスカレーター5の他端部側の踊り場6は、他方の躯体4とは連続しておらず、他方の躯体4との間に前後方向及び左右方向の目地部2を有している。
この目地部2は、例えば図3に示すように、エスカレーター5の他端部の左右方向及び前後方向、すなわち平面視において略コ字状に形成され、地震の際に左右方向及び前後方向の揺れ動きを吸収できる所定の長さとなっている。
この目地部2のうち左右方向の目地部2aは目地プレート9によって塞がれている。この目地プレート9は、本実施形態においては、エスカレーター5の他端部側の踊り場6に連続するように、その一端部が前記踊り場6に設けられたレール状の第1の目地プレート支持部7に目地プレート支持具14を介して前後方向にスライド移動可能に取り付けられている。なお、この目地プレート支持具14は、角パイプ、H鋼、角柱等のバー状部材で、その底面は第1の目地プレート支持部7に固定されたローラー等の滑動部材15を介して第1の目地プレート支持部7に支持されている。目地プレート支持具14の長さは、本実施形態においては、目地部2の前後方向の長さと略同一に形成されている。
なお、目地プレート9は、複数枚の板状部材を目地プレート支持具14等で連結して用いてもよい。
エスカレーター5の他端部側の踊り場6と対向する他方の躯体4の部位には、第2の目地プレート支持部8が形成されており、この第2の目地プレート支持部8の上面に前記目地プレート9の他端部が支持される。
この第2の目地プレート支持部8は、本実施形態においては、他方の躯体4の床面上に形成された凹所状の部位で、この凹所内を目地プレート9の他端部が移動可能に支持する。この第2の目地プレート支持部8の目地部2と逆側の端部には段差を解消するための傾斜面16が形成されている。
本実施形態においては、図4に示すように、目地プレート9は矩形状で板状の部材で、その一端部が目地プレート支持具14に取り付けられて支持され、目地プレート9の他端部が第2の目地プレート支持部8に支持されている。なお、本実施形態においては、複数個の目地プレート9を用いて左右方向の目地部2aを塞いでおり、複数個の目地プレート9は目地プレート支持具14により連結されている。
また、前後方向の端部に位置する目地プレート9には、その一端部側の前後方向の端部に他方のカバー装置取付部11が設けられている。この他方のカバー装置取付部11は、他方の躯体4の床面上に突出するように形成されており、底面が他方の躯体4の床面上に支持される。本実施形態においては、バー状の他方のカバー装置取付部11を用いており、このバー状の他方のカバー装置取付部11に形成された貫通孔11aにカバー部材19の他端部側である端部カバー部材21が挿入されて取り付けられる。
なお、本実施形態においては、端部カバー部材21が嵌合状態で他方のカバー装置取付部11に取り付けられているが、スライド移動可能に取り付けてもよい。その場合、通常状態に復帰できるように復帰機構を備えることが望ましい。
また、他方のカバー装置取付部11をヒンジの軸部のように形成し、カバー部材19の他端部と端部カバー部材21の連結部分を枢支状態で回動可能に取り付けてもよい。
この目地プレート9は、目地部2(地震による揺れ動き幅)の2倍以上、本実施形態においては、約2倍に形成されており、他端部には傾斜面16が形成されている。
ところで、目地プレート9の底面や第2の目地プレート支持部8に、目地プレート9がスムーズにスライド移動できるようにベアリングや滑り材等の滑動部材15を設けてもよい。
第2の目地プレート支持部8の長さは、少なくとも地震による揺れ動き幅の2倍以上で、かつ、地震時に目地プレート9が衝突しない寸法に形成されており、前後方向の寸法は、目地部2の前後方向の寸法と略同寸法に形成されている。
なお、第2の目地プレート支持部8の上部に、カバープレート等を設け、凹所状の第2の目地プレート支持部8を塞いでもよい。
前後方向の目地部2bは、本実施形態においては、一対のカバー装置12を用いて目地部2bが開口しないように塞いでいる。なお、「目地部2が開口しないように塞ぐ」とは、目地部2の上部がプレート等で直接塞がれている場合や、平面視では目地部2が視認できるものの、壁等により目地部2に人等が侵入できないように塞いでいる状態を含むものである。
このカバー装置12は、前後方向に伸縮可能で、本実施形態においては、図1、図5等に示すように、前記階段の上端部側の前後方向の両側部にそれぞれ設けられた一方の側部壁17に設けられた前記一方のカバー装置取付部10に一端部が回動可能に取り付けられ、ヒンジ部18を有するカバー部材19と、前記カバー部材19の他端部に回転可能に接続され、前記一方の側部壁17に目地部2を介して対向するように前記他方の躯体4にそれぞれ設けられた他方の側部壁20と略当接するようにスライド移動する端部カバー部材21とで構成されており、端部カバー部材21が他方のカバー装置取付部11に取り付けられている。
すなわち、カバー装置12の一端部側(カバー部材19の一端部)が一方のカバー装置取付部10に取り付けられ、他端部側(端部カバー部材21)他方のカバー装置取付部11に取り付けられている。
一方の側部壁17及び他方の側部壁20は、本実施形態においては、手摺状に形成されており、一方の側部壁17は、エスカレーター5の手摺5aに前後方向に略当接するように設けられている。この一方の側部壁17は他方の躯体4側の端部(左右方向の目地部2a側の端部)が踊り場6の目地部側端部と略面一となるように形成されており、この他方の躯体4側の端部付近に一方のカバー装置取付部10が設けられている。この一方のカバー装置取付部10は、ヒンジジョイントのように形成されており、この一方のカバー装置取付部10にカバー部材19の一端部が回転可能に枢支される。
なお、側部壁17、20は壁面状、手摺状に形成されているものであればどのような形状のものを用いてもよい。また、一方の側部壁17については、エスカレーター5の手摺5aを一方の側部壁17として用いてもよい。エスカレーター5の手摺5aを一方の側部壁17とする場合には、一方のカバー装置取付部10を踊り場6の目地部側端部と略面一となるように形成する。
他方の側部壁20は平面視において、左右方向に延在し、手摺や袖壁等と一体又は接続されて設けられており、前後方向の目地部2aを塞いでいる。
前記カバー部材19は、その他端部に端部カバー部材21が前後方向に回動可能に接続されている。他方の側部壁20には端部カバー部材21が他方の側部壁20に略当接する状態で左右方向にスライド移動可能となるようにガイド部22が形成されている。本実施形態においては、他方の側部壁20が左右方向に延在するパイプ状の手摺となっており、この手摺の内部(パイプの内周面)がガイド部22となる。端部カバー部材21は、このガイド部22に挿入可能な形状に形成されている。
ところで、「略当接する」とは、ピッタリと当接する状態、わずかな隙間を隔てて接近している状態、重なり合っている状態を含むもので、本実施形態では、他方の側部壁20と端部カバー部材21は一部重なり合った状態で略当接している。
他方の側部壁20と端部カバー部材21の可動幅は、地震による揺れ動きを吸収でき、かつ、目地部2が広がったときに端部カバー部材21がガイド部22から脱落しない程度に形成される。
なお、一方の側部壁17も同様の構成とし、カバー部材19の一端部にも端部カバー部材21を設けてもよい。
カバー部材19は、前後方向の略中央部付近にヒンジ部18を有しており、通常状態(図1の状態)において、平面視略逆く字状、すなわち前記ヒンジ部18を支点にして外側へ凸となるように屈曲しており、前後方向に伸縮可能となっている。
また、カバー部材19の下部(底面)は、本実施形態においては、目地プレート9と接触しない(宙に浮いている)状態となっているが、ローラーやベアリング等の滑動部材15を介して目地プレート9と接触していてもよい。
地震で左右の躯体3、4が左右方向に揺れ動き、左右方向の目地部2aが狭くなると、図6に示すように、エスカレーター5は一方の躯体3に同調して揺れ動き、目地プレート9が第2の目地プレート支持部8上を左右方向にスライド移動すると共に、カバー装置12のカバー部材19は目地プレート9と同調して左右方向にスライド移動し、端部カバー部材21がガイド部22にガイドされて左右方向にスライド移動し、揺れ動きを吸収する。
地震で左右の躯体3、4が左右方向に揺れ動き、左右方向の目地部2aが広くなると、図7に示すように、エスカレーター5は一方の躯体3に同調して揺れ動き、目地プレート9が第2の目地プレート支持部8上を左右方向にスライド移動すると共に、カバー装置12のカバー部材19は目地プレート9と同調して左右方向にスライド移動し、端部カバー部材21がガイド部22にガイドされて左右方向にスライド移動し、揺れ動きを吸収する。
なお、カバー装置12はこのような形態に限定されるものではなく、一方及び他方のカバー装置取付部10、11に両端部付近が取り付けられた伸縮可能なカバー等を設けるものであってもよいし、地震の揺れ動きに追従可能な壁パネル、手すり等を設けたものであってもよい。
付言すると、他方の側部壁20が目地部2の他方の躯体側端部(平面視において目地部2の右側端部)まで設けられている場合等は、端部カバー部材21を設ける必要がなく、一方及び他方のカバー装置取付部10、11に両端部付近が取り付けられた伸縮可能なカバー等であってもよい。このような場合、地震時にはカバー装置12が一方の躯体3や目地プレート9と同調して揺れ動き、破損等することなく地震による揺れ動きを吸収することができる。
地震で左右の躯体3、4が前後方向に揺れ動き、前後方向の目地部2bが狭くなると、図8に示すように、カバー装置12のカバー部材19がヒンジ部18を支点に変形し、その揺れ動きを吸収する。また、目地プレート9は、他方の躯体4と同調して揺れ動き、目地プレート9の一端部が一方の躯体3と相対的に前後方向にスライド移動(目地プレート支持具14が第1の目地プレート支持部7上を前後方向にスライド移動)し、地震による揺れ動きを吸収する。地震による揺れ動きが終了し、躯体3、4が通常状態に復帰すると、カバー装置12のカバー部材19も通常状態に復帰する。
なお、図示しないがこのヒンジ部18にねじりコイルばね等の付勢具を設けることにより、カバー部材19の復帰を補助することもできる。
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図9乃至図11に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
図10乃至図12に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、袖壁状の一方と他方の側部壁17A、20Aとし、この袖壁状の他方の端部壁の内部に出没する板状の端部カバー部材21A及び板状のカバー部材19Aを備えるカバー装置12Aにした点で、このようなカバー装置12A等を用いた階段用目地装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様の作用効果を得ることができる。
なお、本発明の実施形態においては、自動式階段(エスカレーター)を想定して説明したが、本発明はこれに限られず、通常の階段に用いてもよい。
目地プレートについては、実施形態では平面視略方形状の板状のものについて説明したが、その他公知の目地プレート、例えば浅皿状の目地プレート本体にモルタル等の充填部材を充填した目地プレート等を用いてもよく、必ずしもカバープレートを用いなくてもよい。
本発明は階段用目地装置を製造する産業で利用される。
1、1A:階段用目地装置、 2:目地部、
3:一方の躯体、 4:他方の躯体、
5:階段、 6:踊り場、
7:第1の目地プレート支持部、 8:第2の目地プレート支持部、
9:目地プレート、 10:一方のカバー装置取付部、
11:他方のカバー装置取付部、 12、12A:カバー装置、
13:支持部材、 14:目地プレート支持具、
15:滑動部材、 16:傾斜面、
17、17A:一方の側部壁、 18:ヒンジ部、
19、19A:カバー部材、 20、20A:他方の側部壁、
21、21A:端部カバー部材、 22:ガイド部。
本発明は一方の躯体と他方の躯体間に設けられた自動式階段(エスカレーター)を含む階段の踊り場と躯体との間の目地部を塞ぐ階段用目地装置に関する。
従来、一方の躯体と他方の躯体間に設けられたエスカレーターや階段は、その一端部(下階部分)の踊り場が一方の躯体に固定され、他端部(上階部分)の踊り場が他方の躯体に固定されている。
ところで、「踊り場」とは、本願発明においては自動式階段や階段の端部に設けられた平坦部をいう。
このような階段やエスカレーターにおいて、地震によって躯体が揺れ動いた場合に、その揺れ動きを吸収できるものとしては、「一方の躯体と、該一方の躯体に下端部側が取り付けられた階段と、該階段の上端部側の踊り場に目地部を介して設けられた他方の躯体と、該他方の躯体に設けられた目地プレート支持部と、前記階段の上端部側に一端部が取り付けられ、他端部が前記目地プレート支持部に支持され、前記目地部を塞ぐ目地プレートと、前記他方の躯体に一端部が固定され、他端部が前記目地プレートに支持され、かつ、前記目地プレート支持部を覆うカバープレートと、前記階段の前後方向の側部に設けられ、前記目地部をカバーするカバー装置とで構成され、前記カバー装置は、前記階段の上端部側の前後方向の両側部にそれぞれ設けられた一方の袖壁と、該一方の袖壁に対向するように他方の躯体にそれぞれ設けられた他方の袖壁と、前記一方の袖壁に一端部がスライド可能に挿入されると共に、前記他方の袖壁に他端部がスライド可能に挿入され、ヒンジ部を有するカバー部材と、該カバー部材を内側へ付勢する付勢手段とで構成され、前記カバー部材は、前記ヒンジ部を支点にして屈曲しており、地震によって一方と他方の躯体が揺れ動いた場合、前記階段は前記一方の躯体と同調して揺れ動く階段用目地装置。」が知られている(特許文献1)。
しかし、このような階段用目地装置では、中空上の袖壁等を用い、この袖壁内にカバー部材を挿入しなければならないので、構造が複雑になり、その結果、コスト高になるという欠点があった。
また、ヒンジ部の位置を維持する維持手段等を用いると、その機構が外部から目視することができるため、美観が損なわれるという欠点があった。
本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、コストを抑え、かつ、美観を向上させることができると共に、地震によって躯体同士が異なる方向に揺れ動いた場合であっても、破損等せずに地震による揺れ動きを吸収でき、かつ、容易に設置可能な階段用目地装置を提供することを目的としている。
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の階段用目地装置は、一方の躯体と、前記一方の躯体に下端部側が取り付けられた階段と、前記階段の上端部側の踊り場に目地部を介して設けられた他方の躯体と、前記踊り場に設けられた第1の目地プレート支持部と、前記第1の目地プレート支持部に対向するように前記他方の躯体に設けられた第2の目地プレート支持部と、前記第1の目地プレート支持部にその一端部が前後方向にスライド移動可能に取り付けられると共に、前記第2の目地プレート支持部に他端部が支持され、かつ、前記目地部を塞ぐ目地プレートと、前記階段の前後方向の両側部側にそれぞれ設けられた一対となる一方のカバー装置取付部と、この一方のカバー装置取付部とは反対側に位置するように前記目地プレートの一端部側の前記他方の躯体側の端部に設けられた一対となる他方のカバー装置取付部と、前記一方のカバー装置取付部に一端部側がそれぞれ取り付けられていると共に、前記他方のカバー装置取付部に他端部側がそれぞれ取り付けられた一対のカバー装置とで構成され、
前記カバー装置は、前記一方のカバー装置取付部に、その一端部が回動可能に取り付けられ、かつ、前記他方のカバー装置取付部に他端部が回動可能に取り付けられたヒンジ部を有するカバー部材と、前記カバー部材の他端部に接続された状態で前記他方の躯体に設けられた端部カバー部材とで構成され、前記カバー部材は、前記ヒンジ部を支点にして屈曲し、前記目地部が開口しないように塞ぐことができることを特徴とする。
請求項2に記載の階段用目地装置の前記カバー部材の下部には、滑動部材が設けられていることを特徴とする。
請求項3に記載の階段用目地装置の前記階段は、自動式階段であることを特徴とする。
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては、階段の踊り場と他方の躯体との間に目地部を形成すると共に、この目地部を目地プレートで覆っているので、一方の躯体と他方の躯体が地震によって異なる揺れ動きをした場合であっても、躯体や階段が損傷することなく地震による揺れ動きを吸収することができる。
(2)階段は一方の躯体と同調して揺れ動くように設けられているので、階段の一端部側は、通常と同様の施工で設置することができる。したがって、比較的容易に設置することができる。
(3)目地プレートの前後方向の端部にそれぞれ設けられた他方のカバー装置取付部にカバー装置の他端部を取り付けるため、低コストで施工でき、しかも、部品点数が少ないため、美観を向上させることができる。
(4)請求項2及び請求項3に記載の各発明についても、前記(1)〜(3)と同様な効果が得られる。
図1乃至図8は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図9乃至図11は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
第1の実施形態の階段用目地装置の平面図。
図1の2−2線に沿う断面図。
目地部及び第1、第2の目地プレート支持部の説明図。
目地プレートの説明図。
カバー装置の説明図。
地震で目地部が狭くなった動作説明図。
地震で目地部が広くなった動作説明図。
地震で左右の躯体が異なる前後方向に揺れ動いた場合の動作説明図。
第2の実施形態の階段用目地装置の平面図。
図9の10−10線に沿う断面図。
カバー装置の説明図。
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
図1乃至図8に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は目地部2を介して設けられた一方の躯体3と他方の躯体4間に設置され、一方の躯体3に設けられた階段5の他端部と他方の躯体4の間の目地部2を塞ぐ階段用目地装置である。
なお、左右方向とは図1における左右方向(符号の向きを基準)であり、前後方向とは図1における上下方向(符号の向きを基準)をいい、上下方向とは図2における上下方向をいう。
また、本発明において躯体とは、建物、道路、スラブ、エレベーターシャフト等の目地プレートを設置可能な建造物をいい、出入口とはドアや扉の設けられた出入口だけではなく、人や車両等が通行できる通路も含むものである。
さて、この階段用目地装置1は、一方の躯体3に下端部側が取り付けられた階段5と、階段の上端部側の踊り場6に目地部2を介して設けられた他方の躯体4と、踊り場6に設けられた第1の目地プレート支持部7と、第1の目地プレート支持部に対向するように他方の躯体4に設けられた第2の目地プレート支持部8と、第1の目地プレート支持部7にその一端部が前後方向にスライド移動可能に取り付けられると共に、第2の目地プレート支持部8に他端部が支持され、かつ、目地部2を塞ぐ目地プレート9と、階段の前後方向の両側部側(図1を基準にする)にそれぞれ設けられた一対となる一方のカバー装置取付部10と、この一方のカバー装置取付部とは反対側(一方のカバー装置取付部に対して前後方向で対向する箇所)に位置するように他方の躯体側に設けたられ一対となる他方のカバー装置取付部11と、一方のカバー装置取付部10に一端部側がそれぞれ取り付けられていると共に、他方のカバー装置取付部11に他端部側がそれぞれ取り付けられた一対のカバー装置12とで構成され、カバー装置12は目地部2が開口しないように塞ぐことができる。
図1及び図2を参照にして付言すると、この階段用目地装置1は、一方の躯体3と、該一方の躯体3に下端部側が取り付けられた階段5と、前記階段の上端部側の踊り場6に目地部2を介して設けられた他方の躯体4と、前記踊り場6の端部に設けられた第1の目地プレート支持部7と、前記第1の目地プレート支持部7に対向するように目地部2を介して前記他方の躯体4に設けられた第2の目地プレート支持部8と、第1の目地プレート支持部7に一端部が前後方向にスライド移動可能に取り付けられ、第2の目地プレート支持部8に他端部が支持され、前記目地部を塞ぐ目地プレート9と、前記階段5の前後方向の側部付近にそれぞれ設けられた一方のカバー装置取付部10と、前記一方のカバー装置取付部10と前後方向に所定間隔を隔てて前記目地プレートの前後方向の端部にそれぞれ設けられた他方のカバー装置取付部11と、前記一方のカバー装置取付部10に一端部側がそれぞれ取り付けられ、前記他方のカバー装置取付部11に他端部側がそれぞれ取り付けられた一対のカバー装置12とで構成されている。
ここで、「目地部2を塞ぐ」とは、目地部2の上を歩行者等の通行が通行できるように、前記目地部の少なくとも一部を塞ぐという意味で、本実施形態においては、階段5としてエスカレーター5が用いられており、このエスカレーター5の他端部と連続するように平面視方形状の目地プレート9が設けられ、目地部2の歩行者等の通行ができるように目地部2の一部を塞いでいる。
階段5は、本願発明では、エスカレーターと通常の階段の両方を含むものであり、本実施形態では、エスカレーター5を例にして説明する。なお、エスカレーター5自体は、一般的なエスカレーター5と同様の構成であるので、その説明を割愛する。
例えば図2に示すように、エスカレーター5の一端部(低い方:下端部側)は、一方の躯体3の床面に取り付けられており、エスカレーター5の他端部(高い方:上端部側)は、支持部材13を介して一方の躯体3の床面に支持されている。そのため、エスカレーター5は一方の躯体3と一体的に設けられており、地震時には一方の躯体3と同調して揺れ動く。
このエスカレーター5の他端部側の踊り場6は、他方の躯体4とは連続しておらず、他方の躯体4との間に前後方向及び左右方向の目地部2を有している。
この目地部2は、例えば図3に示すように、エスカレーター5の他端部の左右方向及び前後方向、すなわち平面視において略コ字状に形成され、地震の際に左右方向及び前後方向の揺れ動きを吸収できる所定の長さとなっている。
この目地部2のうち左右方向の目地部2aは目地プレート9によって塞がれている。この目地プレート9は、本実施形態においては、エスカレーター5の他端部側の踊り場6に連続するように、その一端部が前記踊り場6に設けられたレール状の第1の目地プレート支持部7に目地プレート支持具14を介して前後方向にスライド移動可能に取り付けられている。なお、この目地プレート支持具14は、角パイプ、H鋼、角柱等のバー状部材で、その底面は第1の目地プレート支持部7に固定されたローラー等の滑動部材15を介して第1の目地プレート支持部7に支持されている。目地プレート支持具14の長さは、本実施形態においては、目地部2の前後方向の長さと略同一に形成されている。
なお、目地プレート9は、複数枚の板状部材を目地プレート支持具14等で連結して用いてもよい。
エスカレーター5の他端部側の踊り場6と対向する他方の躯体4の部位には、第2の目地プレート支持部8が形成されており、この第2の目地プレート支持部8の上面に前記目地プレート9の他端部が支持される。
この第2の目地プレート支持部8は、本実施形態においては、他方の躯体4の床面上に形成された凹所状の部位で、この凹所内を目地プレート9の他端部が移動可能に支持する。この第2の目地プレート支持部8の目地部2と逆側の端部には段差を解消するための傾斜面16が形成されている。
本実施形態においては、図4に示すように、目地プレート9は矩形状で板状の部材で、その一端部が目地プレート支持具14に取り付けられて支持され、目地プレート9の他端部が第2の目地プレート支持部8に支持されている。なお、本実施形態においては、複数個の目地プレート9を用いて左右方向の目地部2aを塞いでおり、複数個の目地プレート9は目地プレート支持具14により連結されている。
また、前後方向の端部に位置する目地プレート9には、その一端部側の前後方向の端部に他方のカバー装置取付部11が設けられている。この他方のカバー装置取付部11は、他方の躯体4の床面上に突出するように形成されており、底面が他方の躯体4の床面上に支持される。本実施形態においては、バー状の他方のカバー装置取付部11を用いており、このバー状の他方のカバー装置取付部11に形成された貫通孔11aにカバー部材19の他端部側である端部カバー部材21が挿入されて取り付けられる。
なお、本実施形態においては、端部カバー部材21が嵌合状態で他方のカバー装置取付部11に取り付けられているが、スライド移動可能に取り付けてもよい。その場合、通常状態に復帰できるように復帰機構を備えることが望ましい。
また、他方のカバー装置取付部11をヒンジの軸部のように形成し、カバー部材19の他端部と端部カバー部材21の連結部分を枢支状態で回動可能に取り付けてもよい。
この目地プレート9は、目地部2(地震による揺れ動き幅)の2倍以上、本実施形態においては、約2倍に形成されており、他端部には傾斜面16が形成されている。
ところで、目地プレート9の底面や第2の目地プレート支持部8に、目地プレート9がスムーズにスライド移動できるようにベアリングや滑り材等の滑動部材15を設けてもよい。
第2の目地プレート支持部8の長さは、少なくとも地震による揺れ動き幅の2倍以上で、かつ、地震時に目地プレート9が衝突しない寸法に形成されており、前後方向の寸法は、目地部2の前後方向の寸法と略同寸法に形成されている。
なお、第2の目地プレート支持部8の上部に、カバープレート等を設け、凹所状の第2の目地プレート支持部8を塞いでもよい。
前後方向の目地部2bは、本実施形態においては、一対のカバー装置12を用いて目地部2bが開口しないように塞いでいる。なお、「目地部2が開口しないように塞ぐ」とは、目地部2の上部がプレート等で直接塞がれている場合や、平面視では目地部2が視認できるものの、壁等により目地部2に人等が侵入できないように塞いでいる状態を含むものである。
このカバー装置12は、前後方向に伸縮可能で、本実施形態においては、図1、図5等に示すように、前記階段の上端部側の前後方向の両側部にそれぞれ設けられた一方の側部壁17に設けられた前記一方のカバー装置取付部10に一端部が回動可能に取り付けられ、ヒンジ部18を有するカバー部材19と、前記カバー部材19の他端部に回転可能に接続され、前記一方の側部壁17に目地部2を介して対向するように前記他方の躯体4にそれぞれ設けられた他方の側部壁20と略当接するようにスライド移動する端部カバー部材21とで構成されており、端部カバー部材21が他方のカバー装置取付部11に取り付けられている。
すなわち、カバー装置12の一端部側(カバー部材19の一端部)が一方のカバー装置取付部10に取り付けられ、他端部側(端部カバー部材21)他方のカバー装置取付部11に取り付けられている。
一方の側部壁17及び他方の側部壁20は、本実施形態においては、手摺状に形成されており、一方の側部壁17は、エスカレーター5の手摺5aに前後方向に略当接するように設けられている。この一方の側部壁17は他方の躯体4側の端部(左右方向の目地部2a側の端部)が踊り場6の目地部側端部と略面一となるように形成されており、この他方の躯体4側の端部付近に一方のカバー装置取付部10が設けられている。この一方のカバー装置取付部10は、ヒンジジョイントのように形成されており、この一方のカバー装置取付部10にカバー部材19の一端部が回転可能に枢支される。
なお、側部壁17、20は壁面状、手摺状に形成されているものであればどのような形状のものを用いてもよい。また、一方の側部壁17については、エスカレーター5の手摺5aを一方の側部壁17として用いてもよい。エスカレーター5の手摺5aを一方の側部壁17とする場合には、一方のカバー装置取付部10を踊り場6の目地部側端部と略面一となるように形成する。
他方の側部壁20は平面視において、左右方向に延在し、手摺や袖壁等と一体又は接続されて設けられており、前後方向の目地部2aを塞いでいる。
前記カバー部材19は、その他端部に端部カバー部材21が前後方向に回動可能に接続されている。他方の側部壁20には端部カバー部材21が他方の側部壁20に略当接する状態で左右方向にスライド移動可能となるようにガイド部22が形成されている。本実施形態においては、他方の側部壁20が左右方向に延在するパイプ状の手摺となっており、この手摺の内部(パイプの内周面)がガイド部22となる。端部カバー部材21は、このガイド部22に挿入可能な形状に形成されている。
ところで、「略当接する」とは、ピッタリと当接する状態、わずかな隙間を隔てて接近している状態、重なり合っている状態を含むもので、本実施形態では、他方の側部壁20と端部カバー部材21は一部重なり合った状態で略当接している。
他方の側部壁20と端部カバー部材21の可動幅は、地震による揺れ動きを吸収でき、かつ、目地部2が広がったときに端部カバー部材21がガイド部22から脱落しない程度に形成される。
なお、一方の側部壁17も同様の構成とし、カバー部材19の一端部にも端部カバー部材21を設けてもよい。
カバー部材19は、前後方向の略中央部付近にヒンジ部18を有しており、通常状態(図1の状態)において、平面視略逆く字状、すなわち前記ヒンジ部18を支点にして外側へ凸となるように屈曲しており、前後方向に伸縮可能となっている。
また、カバー部材19の下部(底面)は、本実施形態においては、目地プレート9と接触しない(宙に浮いている)状態となっているが、ローラーやベアリング等の滑動部材15を介して目地プレート9と接触していてもよい。
地震で左右の躯体3、4が左右方向に揺れ動き、左右方向の目地部2aが狭くなると、図6に示すように、エスカレーター5は一方の躯体3に同調して揺れ動き、目地プレート9が第2の目地プレート支持部8上を左右方向にスライド移動すると共に、カバー装置12のカバー部材19は目地プレート9と同調して左右方向にスライド移動し、端部カバー部材21がガイド部22にガイドされて左右方向にスライド移動し、揺れ動きを吸収する。
地震で左右の躯体3、4が左右方向に揺れ動き、左右方向の目地部2aが広くなると、図7に示すように、エスカレーター5は一方の躯体3に同調して揺れ動き、目地プレート9が第2の目地プレート支持部8上を左右方向にスライド移動すると共に、カバー装置12のカバー部材19は目地プレート9と同調して左右方向にスライド移動し、端部カバー部材21がガイド部22にガイドされて左右方向にスライド移動し、揺れ動きを吸収する。
なお、カバー装置12はこのような形態に限定されるものではなく、一方及び他方のカバー装置取付部10、11に両端部付近が取り付けられた伸縮可能なカバー等を設けるものであってもよいし、地震の揺れ動きに追従可能な壁パネル、手すり等を設けたものであってもよい。
付言すると、他方の側部壁20が目地部2の他方の躯体側端部(平面視において目地部2の右側端部)まで設けられている場合等は、端部カバー部材21を設ける必要がなく、一方及び他方のカバー装置取付部10、11に両端部付近が取り付けられた伸縮可能なカバー等であってもよい。このような場合、地震時にはカバー装置12が一方の躯体3や目地プレート9と同調して揺れ動き、破損等することなく地震による揺れ動きを吸収することができる。
地震で左右の躯体3、4が前後方向に揺れ動き、前後方向の目地部2bが狭くなると、図8に示すように、カバー装置12のカバー部材19がヒンジ部18を支点に変形し、その揺れ動きを吸収する。また、目地プレート9は、他方の躯体4と同調して揺れ動き、目地プレート9の一端部が一方の躯体3と相対的に前後方向にスライド移動(目地プレート支持具14が第1の目地プレート支持部7上を前後方向にスライド移動)し、地震による揺れ動きを吸収する。地震による揺れ動きが終了し、躯体3、4が通常状態に復帰すると、カバー装置12のカバー部材19も通常状態に復帰する。
なお、図示しないがこのヒンジ部18にねじりコイルばね等の付勢具を設けることにより、カバー部材19の復帰を補助することもできる。
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図9乃至図11に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
図10乃至図12に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、袖壁状の一方と他方の側部壁17A、20Aとし、この袖壁状の他方の端部壁の内部に出没する板状の端部カバー部材21A及び板状のカバー部材19Aを備えるカバー装置12Aにした点で、このようなカバー装置12A等を用いた階段用目地装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様の作用効果を得ることができる。
なお、本発明の実施形態においては、自動式階段(エスカレーター)を想定して説明したが、本発明はこれに限られず、通常の階段に用いてもよい。
目地プレートについては、実施形態では平面視略方形状の板状のものについて説明したが、その他公知の目地プレート、例えば浅皿状の目地プレート本体にモルタル等の充填部材を充填した目地プレート等を用いてもよく、必ずしもカバープレートを用いなくてもよい。
本発明は階段用目地装置を製造する産業で利用される。
1、1A:階段用目地装置、 2:目地部、
3:一方の躯体、 4:他方の躯体、
5:階段、 6:踊り場、
7:第1の目地プレート支持部、 8:第2の目地プレート支持部、
9:目地プレート、 10:一方のカバー装置取付部、
11:他方のカバー装置取付部、 12、12A:カバー装置、
13:支持部材、 14:目地プレート支持具、
15:滑動部材、 16:傾斜面、
17、17A:一方の側部壁、 18:ヒンジ部、
19、19A:カバー部材、 20、20A:他方の側部壁、
21、21A:端部カバー部材、 22:ガイド部。