JP3601191B2 - 継手構造体と該構造体を用いたパネル支持構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物、構築物における継手構造体と該構造体を用いたパネル支持構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
強化ガラスや倍強度ガラスなどのパネル材を用いて建築物の壁面を構成する試みが近年多くなされている。パネル材の4隅を孔加工し、ボルト状部品などのパネル支持部材をこれらの孔に各々固定し、これらパネル支持部材をH型継手構造体又はX型継手構造体で支持する方法は、壁面の美観を向上させる方法であり、特にパネル材として板ガラスを用いる場合は、その透明性をも最大限に生かすためにより有効な方法である。
【0003】
図7、8に示すように、従来のH型継手構造体7を用いたパネル支持構造においては、略面一に配置された複数枚の板ガラス1a、1b及び不図示の板ガラス1c、1dの突き合わせ部となる隅部には取付孔2が明けられていて、それらの孔にパネル支持部材3a、3b及び不図示のパネル支持部材3c、3dが取り付けられていて、これらパネル支持部材はH型継手構造体7に取り付けられている。H型継手構造体7は、躯体6に固設されたベース部材39にジョイント33を用いて連結されている。
【0004】
縦部材32、32が横部材31の両端に略H字状に、しかも縦部材32と横部材31とはピン34によって回動可能に連結されている。横部材31の中央には支杆部材36がピン35によって回動可能に連結されている。以上述べたように、H型継手構造体7は部品点数がきわめて多かった。
【0005】
かかるH型継手構造体7を用いたパネル支持構造は、ピン34、34、35を用いてジョイントされているため、図6に示すように地震による層間変位を受けた場合に、横部材及び縦部材がともに自由に回動でき、層間変位追従性が良く、地震が生じても板ガラスに無理な力が加わらないので、地震のスウェイ成分及びロッキング成分に対してパネル材が充分に耐えることができ、該パネル支持構造は耐震性を有している。
【0006】
パネル支持部材を取り付けるために縦部材の両端に設けられた円孔37はさほど大きくなくパネル支持構造の意匠性を悪くすることはないが、横部材31と縦部材32とがピン34、34を用いて、そして横部材31と支杆部材36とがピン35を用いて、それぞれジョイントされていて、横部材31と縦部材32が自由に回動するため、躯体6にベース部材39を介して取り付けられたH型継手構造体7に、板ガラス1bを取り付けたパネル支持部材3bを取り付ける作業はきわめて施工性が悪く、直接躯体に固定することは実際上困難であった。
【0007】
図9、10に示すように、従来のX型継手構造体8においては、連結部46を中心として4本の支腕部41a、41b、41c、41dが放射状に延設され、これら支腕部の先端には三角孔47を有する部材保持部42が設けられている。X型継手構造体8は躯体6に固設されたベース部材49に取り付けられている。
【0008】
略面一に配置された複数枚の板ガラスに前述同様にパネル支持部材が取り付けられていて、これらパネル支持部材はX型継手構造体8に取り付けられている。パネル支持部材3aの雄ネジ部が三角孔47に遊びをもった状態で軸通されて、パネル支持部材はX型継手構造体8に取り付けられていて、パネル支持部材3aの雄ネジ部がこの三角孔47の内部を移動可能なので、地震の際の層間変位に追従性を有する。このように、壁面をなす板ガラスに無理な力が加わらないようになっているので、X型継手構造体8を用いたパネル支持構造は耐震性を有する。
【0009】
X型継手構造体8に板ガラスを取り付ける方法は、その作業の施工性はよいが、部材保持部42が大きいために外部から見えてしまい意匠性が悪い。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、H型継手構造体の有する施工性が良くないという課題、及び、X型継手構造体の有する意匠性が良くないという課題を解決すべくなされたものであり、施工性・耐震性及び意匠性に優れたパネル支持構造と、該構造に用いられる継手構造体の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、左右一対の縦部材が横部材の両端に略H字状になるように連結され、かつ縦部材の両端にパネル支持部材を取り付け可能に構成されてなる継手構造体において、縦部材が横部材に対して縦部材の長寸方向に移動可能かつ横部材に対して回動可能に連結されてなるとともに、支杆部が横部材の中央部に固設されかつ横部材が躯体に対して動かないように固定されてなることを特徴とする継手構造体を提供する。
【0012】
本発明は、複数枚のパネル材を略面一に配置してなるパネル支持構造であって、4枚のパネル材の突き合わせ部となる隅部に取り付け孔を各々設け、これら取り付け孔にパネル支持部材を各々取り付け、これらパネル支持部材を前記継手構造体に取り付けてなるパネル支持構造をも提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
パネル材としては強化ガラスや倍強度ガラスなどの板ガラス又は透明な樹脂製の板材などを、継手構造体としては鉄又はステンレス鋼などの金属材料を好適に使用できる。パネル材とパネル材との間には、シーリング材が施される。
【0014】
縦部材の中央部には縦長孔が明けられ、横部材の両端部には円形又は長円形の挿通孔(それぞれ円孔、長円孔ともいう)が明けられていて、かつ、ピンの軸部が縦長孔と挿通孔とに軸通されて横部材と縦部材とが連結されていてもよい。縦部材の縦長孔は、縦部材の長寸方向に長い長円形の長孔となっているものである。横部材の長円形の挿通孔(長円孔)は、横部材の長寸方向又は短寸方向のいずれかの方向に長い長円形の長孔となっているものである。さらに、ピンの軸部が縦長孔と挿通孔とに軸通され軸部の両端が軸止めにより止められていてもよい。
【0015】
縦部材の両端に孔が明けられていて、これらの孔にパネル支持部材の雄ネジ部(棒状部分なども含めて雄ネジ部と呼ぶことにする)を軸通することにより縦部材の両端にパネル支持部材を取り付け可能に構成されていてもよい。
【0016】
さらに、縦部材の上端には円孔が明けられ、縦部材の下端には半円孔が明けられていて、該半円孔は該孔の下側に平板部を有するように平面形状が略半円状の孔となっていてもよい。
【0017】
【実施例】
図1〜4により本発明の1実施例を説明する。板ガラス1a、1b、1c、1dの4隅には、外表面側に拡径斜面部を有するように、断面形状が杯状の取付孔2が穿設されていて、これら取付孔2にパネル支持部材3a、3b、3c、3dが装着されていて、さらに継手構造体4により躯体6に固設されたベース部材5に取り付けられている。
【0018】
継手構造体4は、横部材11の両端に左右一対の縦部材12、12がピン14、14により略H字状の平面形状をなすように連結されて構成されている。横部材11の中央部には支杆部16が一体的に固設されている。支杆部16は筒状になっていて、その内側に雌ネジ27が切ってあり、躯体6に固設されたベース部材5に継手構造体4がネジ止めされている。また、横部材11は躯体6に対して動かないように固定されている。
【0019】
横部材11の両端には、縦部材12を挟むようにして取り付けうるように取付溝25、25が設けてあり、これらの溝の溝壁には挿通孔である円孔26、26が貫通するようにして明けてある。
【0020】
縦部材12、12の中央部には縦長孔13、13が明けられている。縦部材12、12は、横部材11の取付溝25に挟まれていて、前述のピン14の軸部21を円孔26と縦長孔13とに軸通し、軸部21の両端を軸止め22、22により止めてある。このため、縦部材12は横部材11に対して(すなわち、躯体6に対して)回動可能で、かつ、縦長孔13の余裕の分である所定量だけ縦部材の長寸方向(一般には、板ガラスの主表面を鉛直方向になるように配しているので、長寸方向は鉛直方向である。)に移動可能になっている。
【0021】
継手構造体4をなす縦部材12、12の上端部には円孔17、17が設けられていて、板ガラス1a、1cに装着してなるパネル支持部材3a、3cの雄ネジ部10a及び不図示の雄ネジ部10cのそれぞれを円孔17、17のそれぞれに挿通して、板ガラス1a、1cを縦部材12に取り付けてある。
【0022】
継手構造体4をなす縦部材12の下端部には半円孔18、18が設けられていて、板ガラス1b、1dに装着してなるパネル支持部材3b、3dの雄ネジ部10b及び不図示の雄ネジ部10dのそれぞれを半円孔18、18のそれぞれに挿通して、板ガラス1c、1dを縦部材12に取り付けてある。
【0023】
半円孔18はその下側に平板部19を有し、板ガラス1b及びパネル支持部材3bの荷重は半円孔18の平板部19により支えられている。平板部19とパネル支持部材3bの雄ネジ部10bとの間にはスペーサを入れやすく、しかも入れたスペーサの位置が安定しやすいので、躯体6に対する板ガラス1bの位置を調整しやすい。板ガラス1d及びパネル支持部材3dについても同様である。
【0024】
このように複数枚の板ガラスが略面一に配置されて建築物の壁面が構成されている。板ガラス1aと板ガラス1bとのなす境界部分にはシーリング材9が施工されている。
【0025】
本発明はこのように構成されているので、図5に示すように地震による層間変位を受けた場合に、縦部材すなわち板ガラスが躯体6に対して回動可能で、かつ、縦長孔13の余裕の分だけ縦部材の長寸方向に移動可能である。このため、シーリング材及び板ガラスに無理な力がさほど生じないので耐震性に優れる。
【0026】
また、従来のH型継手構造体と異なって、本発明の継手構造体は横部材が動かないので、縦部材にパネル支持部材ごと強化ガラスなどのパネル材を取り付けるときの施工性がよい。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、施工性・耐震性及び意匠性に優れたパネル支持構造と、該構造に用いられる継手構造体を提供できる。
【0028】
詳細を述べると、地震が生じても層間変位に対する追従性が良く、板ガラスに無理な力が加わらない。地震のスウェイ成分及びロッキング成分に対して板ガラスが破損することなく充分に耐えることができ、該パネル支持構造は耐震性を有する。目地部のシーリング材の変形量も小さいのでシーリング材が切れる心配も少ない。
【0029】
X型継手構造体はパネル支持部材を保持する部材保持部が大きく意匠性が悪いが、本発明の継手構造体はパネル支持部材を保持する部分が小さいために意匠性がよい。
【0030】
地震による層間変位を吸収するための縦長孔13は、図3からわかるように、横部材11に隠れているので意匠性がよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】図2のパネル支持構造の要部側面図。
【図2】本発明のパネル支持構造の1実施例の要部正面図。
【図3】図2のパネル支持構造に用いた継手構造体の正面図。
【図4】図3の継手構造体の分解斜視図。
【図5】図2のパネル支持構造が層間変位を受けた場合の変化を示す説明図。
【図6】図7のパネル支持構造が層間変位を受けた場合の変化を示す説明図。
【図7】従来のH型継手構造体を用いたパネル支持構造の要部側面図。
【図8】図7のパネル支持構造に用いたH型継手構造体の正面図。
【図9】従来のX型継手構造体を用いたパネル支持構造の要部側面図。
【図10】図9のパネル支持構造に用いたX型継手構造体の正面図。
【符号の説明】
1a、1b、1c、1d:板ガラス
2:取付孔
3a、3b:パネル支持部材
4:継手構造体
5:ベース部材
6:躯体
11:横部材
12:縦部材
13:縦長孔
14:ピン
16:支杆部
17:円孔
18:半円孔
19:平板部
21:軸部
22:軸止め
25:取付溝
26:円孔(挿通孔)
Claims (5)
- 左右一対の縦部材が横部材の両端に略H字状になるように連結され、かつ縦部材の両端にパネル支持部材を取り付け可能に構成されてなる継手構造体において、縦部材が横部材に対して縦部材の長寸方向に移動可能かつ横部材に対して回動可能に連結されてなるとともに、支杆部が横部材の中央部に固設されかつ横部材が躯体に対して動かないように固定されてなることを特徴とする継手構造体。
- 縦部材の中央部には縦長孔が明けられ、横部材の両端部には円形又は長円形の挿通孔が明けられていて、かつ、ピンの軸部が縦長孔と挿通孔とに軸通されて横部材と縦部材とが連結されてなる請求項1に記載の継手構造体。
- 縦部材の両端に孔が明けられていて、パネル支持部材の雄ネジ部がこれらの孔にそれぞれ軸通されることにより縦部材の両端にパネル支持部材を取り付け可能に構成されてなる請求項1又は2に記載の継手構造体。
- 縦部材の両端に明けられた孔は、縦部材の上端側が円孔で、縦部材の下端側が半円孔であり、該半円孔は該孔の下側に平板部を有するように平面形状が略半円状の孔である請求項3に記載の継手構造体。
- 複数枚のパネル材を略面一に配置してなるパネル支持構造であって、4枚のパネル材の突き合わせ部となる隅部に取付孔を各々設け、これら取付孔にパネル支持部材を各々取り付け、これらパネル支持部材を請求項1、2、3又は4に記載の継手構造体に取り付けてなるパネル支持構造。
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JP16780196A JP3601191B2 (ja) | 1996-06-27 | 1996-06-27 | 継手構造体と該構造体を用いたパネル支持構造 |
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CN103104057A (zh) * | 2011-11-11 | 2013-05-15 | 沈阳远大铝业工程有限公司 | 全玻自平衡玻璃幕墙 |
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1996
- 1996-06-27 JP JP16780196A patent/JP3601191B2/ja not_active Expired - Fee Related
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