JP3599318B2 - 発泡性合成樹脂粒子、及びその製造方法 - Google Patents

発泡性合成樹脂粒子、及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、合成樹脂粒子、発泡性合成樹脂粒子、及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スチレン系樹脂からなる発泡性樹脂粒子は、発泡成形体を作るのに広く使用されている。発泡性樹脂粒子から発泡成形体を作るには、まず発泡性粒子を加熱し発泡させて予備発泡粒子を作り、次いで予備発泡粒子を閉鎖できるが密閉し得ない成形用金型に入れて粒子を加熱し、金型内で予備発泡粒子をさらに発泡させるとともに互いに融着させて発泡成形体とする方法が採用されている。従って、発泡性樹脂粒子は、予備発泡粒子を作る予備発泡工程と、金型内で予備発泡粒子同士を融着させる発泡成形工程とにおいて、目的に適ったように操作して良好な発泡成形体を作ることが必要とされる。
【0003】
発泡性樹脂粒子から作られた発泡成形体は、上述のように発泡した樹脂粒子の融着によって作られるが、発泡体粒子間の隙間が十分に埋まり難く、成形体表面には埋まりきらなかった隙間が残っている。この隙間は、横断面が丸みを持ったV字状の溝として存在し、ジグザグ状に不規則に延びて交差し網状を呈する。しかも、この溝は溝幅も溝の深さも無視できない大きさとなっているため、発泡成形体の表面を平滑でない状態にし、また外観を悪くする。
【0004】
最近は発泡成形体の表面に印刷が施されるようになった。印刷すると粒子間の隙間だけが印刷されないで残るため、印刷傷又は印刷ムラを生じ、従って印刷効果を著しく減殺することとなる。そこで、隙間をできるだけ目立たないようにすることが、とくに強く要望されるに至った。
【0005】
隙間をできるだけ目立たないようにする試みは古くから行われて来た。例えば発泡性樹脂粒子に可塑剤を加えて粒子を発泡し易くしたり、発泡性樹脂粒子により多くの発泡剤を含ませて、予備発泡粒子の膨張力を向上させようとすることが試みられた。しかしそれらの試みは何れも一長一短があって、満足なものとはならなかった。
【0006】
すなわち、可塑剤を加えるという試みによれば、予備発泡粒子が加熱されたとき発泡し易くなるので、隙間の溝幅と溝の深さとを小さくし、溝を目立たないようにすることはできる。ところが、樹脂の軟化点が降下するので、予備発泡工程で発泡した粒子が、互いに合着して団塊となり、従って確実に個々の粒子を生成しない。このため発泡成形工程において予備発泡粒子を金型内へ機械的に供給することが困難となり、時には金型内への予備発泡粒子の充填不足を生じて発泡成形工程を円滑に進行させることができなくなる、という欠点を生じた。
【0007】
また、発泡性樹脂粒子により多くの発泡剤を含ませるという試みによれば、前述の可塑剤を加える試みと同様に、予備発泡粒子の膨張力を増大させることができるので、隙間に生じる溝の幅と深さとを小さくすることはできる。ところが発泡成形体中に大量の発泡剤が残存することとなるので、得られた発泡成形体が金型から取り出したあともなお大きな発泡力を保持することとなり、従って金型内で発泡成形体を充分に冷却する必要が生じ、このため発泡成形工程により多くの時間がかかり、発泡成形工程を能率よく行えないという欠点を生じた。それとともに、金型内での冷却を充分にしても、得られた発泡成形体は発泡した粒子の中央部が盛り上がって、凹凸が顕著になるという欠点をも生じた。
【0008】
また、特開昭63−69843号公報、特開昭63−69844号公報、特開平1−289841号公報、特開平1−299843号公報及び特開平2−77438号公報は、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面を、非イオン性界面活性剤や表皮部を浸食する有機化合物で被覆した後、加熱して樹脂の表面近くに存在する発泡剤を逸散させ、表面が平滑で美麗なスチレン系樹脂発泡体を作る方法を開示している。しかし、この方法は、一旦樹脂粒子に含ませた発泡剤を逸散させるので、経済的に不利であるばかりでなく、樹脂粒子の被覆と発泡剤の逸散という工程を余分に必要とするので、方法が煩瑣であり、また発泡剤の逸散によって得られた樹脂粒子は可使寿命が短い、という欠点を持っている。
【0009】
また、特開平9−111035号公報は、水性媒体中でスチレンを懸濁重合させる途中で、水性媒体に電解質を添加して重合を進め、発泡剤を含浸させて発泡性粒子とした後、発泡剤を逸散させる方法を開示している。この公報の方法によれば、低い温度での処理で優れた外観の発泡成形体が得られると記載している。しかし、この方法ではやはり一旦含浸させた発泡剤をあとで逸散させる工程が必要とされているので、不経済であり、また工程が複雑である、という欠点を持っている。
【0010】
そのほか珪素樹脂を使用する試みも知られている。特公昭63−54744号公報は、珪素樹脂としてポリジメチルシロキサンを用い、これを発泡性合成樹脂粒子に含浸させて、ポリジメチルシロキサンが粒子表面に最も多く存在させるようにすることを提案している。この方法は粒子状を保持するに至った合成樹脂粒子に珪素樹脂を含浸させなければならない、としているから含浸に多くの時間がかかり、従って、経済的有利に実施できないという欠点を持っている。その含浸時間は、例えば10℃で12時間にも及んでいる。
【0011】
また、特開平8−104772号公報及び特開平8−109279号公報は、スチレン系単量体の重合転化率が70〜100重量%になった時点で、シリコーンオイル及びラジカル反応性シリコーンを添加し、その後にスチレン系単量体を添加して重合を行い、その過程で発泡剤を含浸させて発泡性粒子とすることを提案している。ここでは、珪素樹脂と単量体とを、この順序で別々に添加することが必要とされ、実施例では珪素樹脂の添加後30分を経て単量体を添加している。このために、得られた発泡性粒子は粒子の大きさが不揃いとなるだけでなく、粒子ごとに珪素樹脂の含有量が異なることとなるため、この発泡性粒子を用いたのでは、全体を一様に発泡させることが困難となる。従って、これらの提案では一様に発泡した良質の成形体を得ることができない、ということになる。
【0012】
このように、これまで提案されて来た方法では、予備発泡工程と発泡成形工程とを支障なく能率よく行い得るとともに、発泡成形体に発生する隙間を目立たなくして、良質の発泡成形体を得ることは、できなかった。従って、これを解決することが必要とされた。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上述の必要に応じて生まれたものである。すなわち、この発明は、予備発泡工程と発泡成形工程とを支障なく能率よく行うことができるだけでなく、最終的に得られる発泡成形体の隙間を目立たないようにすることができる発泡性合成樹脂粒子を提供しようとするものである。
【0014】
【課題解決のための手段】
この発明者は、シード重合法もしくは懸濁重合法によって得られたポリスチレン粒子の水性懸濁液に、スチレン単量体とシリコーンオイルとの混合物を加えて、シリコーンオイル含有のスチレン単量体をポリスチレン粒子の表面上で重合させることを試みた。さらに、こうして得られたポリスチレン粒子に発泡剤を含ませて発泡性粒子とし、これを予備発泡させたのちに発泡成形して、発泡成形体とした。すると、この発泡性粒子は予備発泡も発泡成形も何等支障なく行える上に、得られた発泡成形体は表面が平滑で粒子間の隙間の目立たなくなっていることを見出した。
【0015】
上記の試みをさらに詳しく言えば、次のとおりである。すなわち、この発明者は、大きさの揃ったポリスチレンの粒子を水性媒質中に分散させて水性懸濁液とし、もしくはこれに重合開始剤とスチレン単量体を加え、上記粒子を核としてスチレン単量体を重合させてスチレン粒子の水性懸濁液とした。この水性懸濁液にスチレン単量体とシリコーンオイルとの混合物を加えて、重合開始剤の存在下にシリコーンオイル含有のスチレン単量体をポリスチレン粒子の表面上で重合させてポリスチレン粒子を作ったのである。その後、このポリスチレン粒子に発泡剤を含ませて発泡性粒子としたのである。
【0016】
こうして得られた発泡性粒子の表面を顕微鏡で拡大して観察すると、その表面は従来の発泡性粒子と全く異なることを見出した。すなわち、従来の発泡性粒子は表面が平滑であるのに、上述のようにして得られた発泡性粒子はゴルフボールのように、表面に直径が0.1〜10μm程度の小さな窪みを多数持っていて、特異な外観を呈していることを見出した。
【0017】
さらにこのような窪みが生成される原因を探究した結果、この窪みは、シリコーンオイルを含んだスチレン単量体をスチレン系重合体粒子の表面で重合させることによって、生じるものであることを見出した。すなわち、ポリスチレン粒子の懸濁液にシリコーンオイルとスチレン単量体とを別々に加えてスチレン単量体を重合させたのでは、粒子表面に直径が0.1〜10μm程度の小さな窪みが生成されないことを確かめた。
【0018】
このような表面に多数の小さな窪みを持った発泡性粒子が、なぜ隙間の目立たない発泡成形体を与えるのかの理由はよく判らない。しかし、表面に多数の窪みを持った樹脂粒子に発泡剤を含ませて発泡性粒子とすると、これを成形して得られた発泡成形体は隙間の目立たないものとなることは事実である。この事実を、公知方法では発泡性粒子の表皮部を侵蝕したり、表面の発泡剤を逸散させたりして、隙間を目立たなくして来た試みと関連させて考えると、発泡性粒子の表面に多数の窪みが存在することは、隙間を目立たなくすることの有力な手段である、と考えられる。この発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
【0019】
発泡性樹脂粒子は大きさが0.1mmないし10mmに限られる。従って、この発明で目的とされる粒子は大きさが0.1mmないし10mmのものである。また、発泡性樹脂としては、一般にスチレンのほか、メチルメタクリレート等のビニル系重合体が使用できる。だから、この発明で用いることのできる樹脂は一応ビニル系単量体の重合したものである。
【0020】
この発明は、一面では発泡剤を含める以前の合成樹脂粒子であって、ゴルフボールのように表面に複数個の小さな窪みを持った粒子を提供するものであり、またこの粒子に公知の方法で発泡剤を含ませて得られる発泡性合成樹脂粒子を提供するものである。
【0021】
すなわち、この発明は、大きさが0.1〜10mmの合成樹脂粒子であって、粒子表面に直径が0.1〜10μmの小さな窪みを複数持っていることを特徴とする、ビニル系合成樹脂粒子を提供するものである。また、この発明は上述の合成樹脂粒子に発泡剤を含ませて得られる発泡性合成樹脂粒子を提供するものである。
【0022】
また、この発明は、他面では、上記合成樹脂粒子の製造方法を提供するものである。その製造方法は、大きさが10mmより小さいビニル系樹脂粒子の水性懸濁液に、ビニル系単量体とシリコーンオイルとを同時に加えて、上記樹脂粒子の表面上で、シリコーンオイル含有のビニル系単量体を重合開始剤の存在下に重合させて、大きさが0.1〜10mmの合成樹脂粒子であって、粒子表面に直径が0.1〜10μmの小さな窪みを複数持った合成樹脂粒子とすることを特徴とするものである。
【0023】
この発明を理解するためには、さきに製造方法を説明した方がよいと考えるので、まず製造方法を説明する。
【0024】
【製造方法の発明の説明】
この発明に係る製造方法は、ビニル系樹脂粒子の水性懸濁液を出発物質とする。ここでビニル系樹脂とはビニル基を持った単量体の重合によって得られた樹脂である。ビニル基を持った単量体は、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体を含んでいる。スチレン系単量体はスチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレンを含んでいる。また、アクリル系単量体は、アクリロニトリル、アクリル酸、アクリル酸エステルを含んでおり、メタクリル系単量体はメタクリル酸、メタクリル酸エステルを含んでいる。ビニル系樹脂粒子は、これらビニル系単量体の単独重合体でもよいが、また2種以上の単量体の共重合体であってもよい。
【0025】
これらビニル系樹脂粒子のうちで好ましいのは、スチレン系樹脂粒子である。すなわち、好ましいのは、スチレンの単独重合体及び、スチレンとアクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、1、3−ブタジエン又はジビニルベンゼンとの共重合体である。共重合体では、スチレンが全体の70重量%以上を占めているものが好ましい。
【0026】
上述のビニル系樹脂粒子は、その粒子の大きさが均一であるものを使用することが好ましい。発泡性粒子として使用されるものは、その粒子の大きさが、最大で10mmであることを考えると、この発明方法で原料として用いるビニル系樹脂粒子の大きさは、10mmより小さいことが必要である。好ましいのは0.3〜1.2mmの範囲である。また、好ましいのは、平均粒子の大きさが±30%の範囲内で揃っているものである。
【0027】
ビニル系樹脂粒子の水性懸濁液は、ビニル系単量体を水性媒体中で懸濁重合させて得られた懸濁液であってもよい。しかし、好ましいのは、シード重合させて得られた懸濁液である。すなわち、大きさが10mmより小さくて揃っているビニル系樹脂粒子を水性媒質中に分散させ、この分散液にビニル系単量体とその単量体に可溶な重合開始剤とを加え、ビニル系樹脂粒子を核として粒子にビニル系単量体を重合させ、重合率が100%となる前の、ビニル系樹脂粒子の水性懸濁液である。
【0028】
この発明方法では、上述の水性懸濁液にビニル系単量体とシリコーンオイルとを同時に加える。このように、ビニル系単量体とシリコーンオイルとを同時に水性懸濁液に加えることは、これまで行われなかった。さきに述べた特公昭63−54740号公報では、樹脂粒子にシリコーンオイルを単独で、又は発泡剤とともに加えることを教えるだけであり、また特開平8−104772号公報では、まずシリコーンオイルを加え、それから30分後に単量体を加えることとしている。このように、単量体とシリコーンオイルとを別々に加えることとしたのは、ビニル系樹脂との相溶性に劣るシリコーンオイルをビニル系樹脂粒子に含有させるには、シリコーンオイルを添加した後に単量体を用いるのが有効だ、と考えたからであろう。しかし、これによって樹脂粒子の表面はシリコーンオイルが介在しない新たに生成したビニル系樹脂で覆われることになる。この点で、この発明方法は従来法と大きく異なっている。
【0029】
この発明方法において、懸濁液に加えるビニル系単量体は、スチレン、α−スチレン、パラメチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系単量体のほか、前述の種々のビニル系単量体を用いることができる。その中では、アルキレングリコールジメタクリレートのような多官能性の単量体や、アクリル酸又はメタクリル酸と1〜8個の炭素原子を持ったアルコールとのエステル、ジメチルフマレート等のような特殊なものを用いることができる。ビニル系単量体は懸濁液中に分散されているビニル系樹脂粒子100重量部に対し、0.5〜20重量部とし、好ましくは、1〜10重量部とする。
【0030】
この発明方法で用いることのできるシリコーンオイルは、広汎にわたる。一般にシリコーンオイルとは、シロキサン結合SiOを繰り返し主鎖中に含み、側鎖に有機基を持った重合体であって、常温で液状を呈するものを指している。この発明では、この定義に該当するものを殆ど使用することができる。使用できるシリコーンオイルを例示すれば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジエンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキルポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、弗素変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、メタクリロアルキル変性シリコーンオイル、アクリロキシアルキル変性シリコーンオイル等である。これらの中ではジメチルシリコーンオイルを用いることが好ましい。
【0031】
シリコーンオイルとしては、その粘度に注意する必要がある。粘度としては25℃における粘度が200〜30,000センチストークス(cSt)の範囲内にあるものを用いることが好ましい。その理由は、200cSt未満のものはシリコーンオイルが樹脂粒子の内部へ浸透し過ぎて、粒子表面にとどまる割合が少なくなるからであり、また逆に30,000cStを越えたものは、シリコーンオイルがビニル系単量体と混合し難くなるからである。上記範囲の中では500〜5,000cStのものを用いるのが、さらに好ましい。
【0032】
この発明方法では、シリコーンオイルをビニル系単量体に対して0.1〜50重量%の割合で用いることが好ましい。その理由は、0.1重量%未満では、シリコーンオイルによる改良の効果が顕著に現れないからであり、逆に50重量%を越えると、シリコーンオイルがビニル系単量体中に溶解若しくは分散し難くなり、従って樹脂粒子表面上でシリコーンオイルを一様に含んだ状態でビニル系単量体を重合させることが困難となるからである。
【0033】
この発明方法では、樹脂粒子の水性懸濁液にビニル系単量体とシリコーンオイルとを同時に加える。好ましいのはシリコーンオイルとビニル系単量体とを予め混合しておいて、この混合物を加える方法である。シリコーンオイルがビニル系単量体に溶解する場合には、混合物は溶液となるので、そのまま添加できることとなるが、シリコーンオイルがビニル系単量体に溶解しない場合には、シリコーンオイルをビニル系単量体中に分散させて分散物の形として懸濁液に添加する。
【0034】
さらに好ましいのは、シリコーンオイルとビニル系単量体との混合物を界面活性剤又は懸濁安定剤が含まれている水溶液中に分散させて、混合物を予め分散物の形として、とくに乳濁液として樹脂粒子の水性懸濁液中に加える方法である。懸濁液に加えるには、上記混合物を一度に加えてもよいが、連続して徐々に加えてもよく、また断続的に滴下してもよい。
【0035】
この発明方法では、ビニル系単量体を重合させるために重合開始剤を用いる。重合開始剤としては、スチレン等を懸濁重合させるのに用いられている公知のラジカル発生型重合開始剤を用いる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート等の有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物を用いる。これらの重合開始剤は、得られる樹脂の分子量を調整し、単量体の残留量を減らすために、2種以上のものを混合して用いることが好ましい。とくに10時間の半減期を得るための分解温度が50〜80℃の範囲にあるものと、分解温度が80〜120℃の範囲内にあるものとを混合して用いるのが好ましい。
【0036】
重合開始剤の使用量は、ビニル系単量体に対して0.01〜3.0重量%の範囲内とする。この重合開始剤は、ビニル系単量体と予め混合して樹脂粒子の水性懸濁液に加えることが好ましい。
【0037】
この発明方法では、樹脂粒子の水性懸濁液にビニル系単量体とシリコーンオイルとを同時に加え、またそこに重合開始剤を存在させて、これを加熱して単量体を重合させる。加熱温度は60〜140℃が一般的である。とくに、ビニル系樹脂粒子の水性懸濁液がシード重合によって得られる懸濁液である場合には、重合開始時の温度をA℃、ビニル系単量体の添加が終了した時点の温度をB℃としたとき、B≧A+15となるようにするのが好ましい。これによって成形体、とくに発泡成形体とするに適したものとすることができる。ここで得られる樹脂粒子の重量平均分子量は20万〜40万、好ましくは25万〜30万である。
【0038】
こうして樹脂粒子の表面上でシリコーンオイル含有の単量体を重合させることにより大きさが0.1〜10mmの合成樹脂粒子であって、粒子表面に直径が0.1〜10μmの小さな窪みを多数持った樹脂粒子を得ることができる。
【0039】
【樹脂粒子の説明】
上述の製造方法によって得られた樹脂粒子は、表面に直径が0.1〜10μmの小さな窪みを多数持ったものとなる。この樹脂粒子の外観は、表面に多数の窪みを持ち、丁度多数のディンプルを持ったゴルフボールのようである。このような窪みは肉眼ではこれを見ることができないが、粒子表面を顕微鏡とくに電子顕微鏡で拡大して見ると明瞭に見ることができる。このことを明らかにするために電子顕微鏡写真を図1及び図2として提出する。これらの図において小さな円形の粒のように見えるのが、窪みである。その大きさは写真中右下に10μmの長さを線分として示しているので、これと対比すると甚だ小さなものであることが判り、また窪みが無数に生成されていることが明らかである。
【0040】
このような小さな窪みを複数持った合成樹脂粒子はこれまで知られていない。すなわち、従来の懸濁重合により得られた合成樹脂粒子の表面は平滑で殆ど窪みが認められない。これまで得られた合成樹脂粒子の表面を電子顕微鏡で見ると、図3に示すように、粒々は全く認められず、従って小さな窪みは全く生成されていない。
【0041】
【発明の効果】
この発明によれば、大きさが0.1〜10mmの合成樹脂粒子であって、粒子表面に直径が0.1〜10μmの小さな窪みを複数持った合成樹脂粒子が得られる。この合成樹脂粒子は、そのままでは格別の効果を示さない。しかし、この合成樹脂粒子はこれに公知の方法により発泡剤を含ませて容易に発泡性粒子とすることができる。従ってこの合成樹脂粒子は、発泡性粒子を作るための中間体として大きな価値を持っている。
【0042】
上記のような小さな窪みを持った合成樹脂粒子は、これを製造する過程で又はこれを製造したのちに、これにブタン等の揮発性発泡剤を圧入することにより容易に発泡性粒子とすることができ、発泡性粒子とすると、顕著な差異をもたらす。すなわち、この発泡性粒子を予備発泡させ、得られた予備発泡粒子を閉鎖できるが密閉できない金型に入れてさらに発泡させて成形体にすると、成形体は粒子の隙間に生じる溝が浅く目立たないものとなり、表面が平滑なものになる。この点で、この発泡性粒子はこれまで得られなかった効果をもたらすこととなる。この平滑面は発泡成形体の表面に印刷を施したとき、印刷されないで残る溝が少なくて美麗に印刷をすることができて、発泡成形体の商品価値を高めることとなる。
【0043】
このように、表面に小さな窪みを複数個持った樹脂粒子は、単量体とシリコーンオイルとを同時に樹脂粒子の水性懸濁液に加えて樹脂粒子の表面上でシリコーンオイル含有の単量体を重合させることにより始めて実現できたものである。このような小さな窪みを持った合成樹脂粒子は、これまで知られておらず、従って新規である。その上にこれに発泡剤を含ませて発泡性粒子とし、これを発泡させて成形体にすると、予備発泡の工程も、発泡成形の工程も何れも何の困難もなく実施でき、しかも得られた発泡成形体は、上述のように、粒子の隙間が目立たない良質のものとなる。この点でこの発明の効果は大きい。
【0044】
なお、この発明に係る製造方法では、その製造過程で公知の発泡助剤や添加剤を加えて、発泡性粒子としたあとで行われる発泡を容易にすることができる。発泡助剤とは、例えばシクロヘキサン、トルエン等であり、添加剤とは充填剤、難燃剤、着色剤等である。
【0045】
【発明実施の態様】
次に実施例と比較例とを挙げて、この発明の詳細を説明し、併せてその効果のすぐれている所以を明らかにする。
【0046】
【実施例1】
100リットルの反応器に純水32kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ4.4g、ピロリン酸マグネシウム100gを入れ、粒子径が0.5〜0.71mmで重量平均分子量が28万のポリスチレン核粒子(スチレンをピロリン酸マグネシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダを使用した水性媒体中で、通常の懸濁重合を行って得たもの)10kg(25重量部)を加えて攪拌し懸濁させた。
【0047】
次いで、予め用意しておいた乳濁液を70℃に保持した反応器に添加した。この乳濁液は、純水6kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.0g、ピロリン酸マグネシウム10gの分散液に、重合開始剤のベンゾイルパーオキサイド120g、t−ブチルパーオキシベンゾエート15gを溶解したスチレン5kgを加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化させたものである。その後、ポリスチレン核粒子中にスチレンと重合開始剤とがよく吸収されるように60分保持し、保持した直後からスチレン25kgを150分かけて連続的に滴下した。(滴下が終了した時点において、反応器中に添加されたスチレンは30kg即ち75重量部であり、ポリスチレン核粒子と添加されたスチレンの合計量は100重量部になる。)ここで、反応器の温度としては、上記70℃で60分保持した後、0.4℃/分の割合で90℃まで昇温し、その後は90℃を保持した。
【0048】
次に、スチレンの滴下が終了してから20分後に、前もって作成しておいた乳濁液を90℃に保持した反応器に添加した。この乳濁液は、純水2kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5gの分散液に、ジメチルシリコーンオイル(25℃における粘度が1000cSt)44gをスチレン1.2kg(3重量部)に溶解(ジメチルシリコーンオイルの配合割合は、スチレン1.2kgに対して3.7重量%になる。)してから加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化したものである。
【0049】
この乳濁液を添加してから30分後に、反応器を120℃に昇温して30分間保持した後、シクロヘキサン800gとd−リモネン180gを純水2kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5g、ピロリン酸マグネシウム10gに加え、ホモミキサーで攪拌して懸濁液として反応器に加え、ブタン3.3kgを圧入した。2時間保持した後、常温まで冷却して取り出し、粒子径が0.71〜1.00mmの発泡性ポリスチレン粒子を得た。
【0050】
ここで得られた発泡性ポリスチレン粒子を脱水乾燥した後、その粒子表面を走査型電子顕微鏡で観察し、写真を撮った。この写真より、直径0.5〜1.0μmの小さな窪みが100μmあたり50個存在したものであった。
【0051】
次に、表面処理剤としてジンクステアレート43g、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド22gを粒子表面に被覆処理し、予備発泡機で水蒸気を用いて加熱発泡し、カサ倍数60倍の予備発泡粒子を得た。また予備発泡粒子を目開き10mmの篩にかけ、篩に残留した合着粒子の予備発泡粒子に対する割合を測定した。予備発泡粒子を大気中で20時間養生乾燥させた後、内寸300×400×100mmの型窩を有する金型を備えた発泡ビーズ自動成形機(積水工機製作所製、エース3型)を用いて、0.06MPa・ゲージ圧のスチームで20秒間加熱成形を行い、加熱成形後の冷却時間(水冷10秒を含む)を測定し、さらには、得られた発泡成形体について外観の表面状態及び内部融着率を評価した。その結果を表1に示す。
【0052】
なお、発泡成形体の表面状態は、粒子間の隙間の度合いにより、次のように評価した。5:隙間がないかまたは非常に少なく優秀である。4:やや隙間があるものの良好である。3:隙間がある(現行普通市販品程度)。2:隙間が多いが使用可能である。1:隙間が多く実用域外で不良である。発泡成形体の内部融着率は、発泡成形品を破断したときに、発泡粒子が破断した面の割合を%で示したものである。
【0053】
【実施例2】
実施例1において、ジメチルシリコーンオイルの使用量を132g(スチレン1.2kgに対して11.0重量%)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた発泡性ポリスチレン粒子の表面には、直径0.5〜1.0μmのディンプルが100μmあたり90個存在していた。発泡及び成形評価した結果を表1に示す。
【0054】
【実施例3】
実施例1において、ジメチルシリコーンオイルの代わりにメチルフェニルシリコーンオイル(25℃における粘度が500cSt)を使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた発泡性ポリスチレン粒子の表面には、直径0.5〜1.0μmの小さな窪みが100μmあたり40個存在していた。発泡及び成形評価した結果を表1に示す。
【0055】
【実施例4】
100リットルの反応器に、純水32kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ4.4g、ピロリン酸マグネシウム100gを入れ、粒子径が0.5〜0.71mmで重量平均分子量が280000のポリスチレン核粒子(スチレンを、ピロリン酸マグネシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダを使用した水性媒体中で、通常の懸濁重合を行って得たもの)10kg(25重量部)を加えて攪拌し懸濁させた。
【0056】
次いで、予め用意しておいた乳濁液を70℃に保持した反応器に添加した。この乳濁液は、純水6kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.0g、ピロリン酸マグネシウム10gの分散液に、重合開始剤のベンゾイルパーオキサイド120g、t−ブチルパーオキシベンゾエート15gを溶解したスチレン5kgを加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化させたものである。その後、ポリスチレン核粒子中にスチレンと重合開始剤とがよく吸収されるように60分保持し、保持した直後からスチレン25kgを130分かけて連続的に滴下した。(滴下が終了した時点において、反応器中に添加されたスチレンは30kg即ち75重量部であり、ポリスチレン核粒子と添加されたスチレンの合計量は100重量部になる。)ここで、反応器の温度としては、上記70℃で60分保持した後、0.4℃/分の割合で90℃まで昇温し、その後は90℃を保持した。
【0057】
次に、スチレンの滴下が終了した直後から、前もって作成しておいた溶解物を90℃に保持した反応器に20分かけて滴下した。この溶解物はジメチルシリコーンオイル(25℃における粘度が5000cSt)44gをスチレン4.0kg(10重量部)に溶解(ジメチルシリコーンオイルの配合割合は、スチレン4.0kgに対して1.1重量%になる。)したものである。
【0058】
滴下を終了してから30分後に、反応器を120℃に昇温して30分間保持した後、シクロヘキサン800gとd−リモネン180gを純水2kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.0g、ピロリン酸マグネシウム10gに加え、ホモミキサーで攪拌して懸濁液として反応器に加え、ブタン3.3kgを圧入した。2時間保持した後、常温まで冷却して取り出し、粒子径が0.71〜1.00mmの発泡性ポリスチレン粒子を得た。
【0059】
ここで得られた発泡性スチレン粒子を脱水乾燥した後、その粒子表面を走査型電子顕微鏡で観察し、写真を撮った。この写真より、直径0.3〜0.8μmの小さな窪みが100μmあたり50個存在したものであった。この発泡性スチレン粒子を実施例1と同様の操作を行い、発泡及び成形評価した結果を表1に示す。
【0060】
【実施例5】
100リットルの反応器に、純水40kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ2.2g、ピロリン酸マグネシウム60gを入れ水性媒体とした。次にベンゾイルパーオキサイド110g、t−ブチルパーオキシベンゾエート30g及びポリエチレンワックス(分子量1000)22gを溶解したスチレン40kgを攪拌しながら加えて懸濁させ、90℃に昇温して重合を開始した。比重法で測定した重合転化率が95重量%まで重合が進行した時点で、前もって作成しておいた乳濁液を90℃に保持した反応器に添加した。この乳濁液は、純水2kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5gの分散液に、ジメチルシリコーンオイル(25℃における粘度が1000cSt)65gをスチレン4kgに溶解(ジメチルシリコーンオイルの配合割合は、スチレン4kgに対して1.6重量%になる。)してから加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化したものである。
【0061】
この乳濁液を添加してから30分後に、シクロヘキサン800gとd−リモネン180gを純水2kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5g、ピロリン酸マグネシウム10gに加え、ホモミキサーで攪拌して懸濁液として反応器に添加した。その後さらにブタン3.3kgを圧入し、反応器を120℃に昇温して2時間保持した後、常温まで冷却して取り出し、発泡性ポリスチレン粒子を得た。
【0062】
ここで得られた発泡性ポリスチレン粒子を脱水乾燥した後、その粒子表面を走査型電子顕微鏡で観察し、写真を撮った。この写真より、直径0.5〜1.0μmの小さな窪みが100μmあたり20個存在したものであった。
【0063】
次に、表面処理剤としてジンクステアレート43g、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド22gを粒子表面に被覆処理した後、篩い分けて粒子径が0.71〜1.00mmの粒子を分取した。この発泡性スチレン粒子を実施例1と同様の操作を行い、発泡及び成形評価した結果を表1に示す。
【0064】
【比較例1】
実施例1において、ジメチルシリコーンオイルを使用しなかった以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた発泡性ポリスチレン粒子の表面には、ディンプルが観察されなかった。この発泡性スチレン粒子を実施例1と同様な操作を行い、発泡及び成形評価した結果を表2に示す。
【0065】
【比較例2】
100リットルの反応器に、純水32kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ4.4g、ピロリン酸マグネシウム100gを入れ、粒子径が0.5〜0.71mmで重量平均分子量が280000のポリスチレン核粒子(スチレンを、ピロリン酸マグネシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダを使用した水性媒体中で、通常の懸濁重合を行って得たもの)10kg(25重量部)を加えて攪拌し懸濁させた。
【0066】
次いで、予め用意しておいた乳濁液を70℃に保持した反応器に添加した。この乳濁液は、純水6kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.0g、ピロリン酸マグネシウム10gの分散液に、重合開始剤のベンゾイルパーオキサイド120g、t−ブチルパーオキシベンゾエート15gを溶解したスチレン5kgを加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化させたものである。その後、ポリスチレン核粒子中にスチレンと重合開始剤とがよく吸収されるように60分保持し、保持した直後からスチレン25kgを130分かけて連続的に滴下した。(滴下が終了した時点において、反応器中に添加されたスチレンは30kg即ち75重量部であり、ポリスチレン核粒子と添加されたスチレンの合計量は100重量部になる。)ここで、反応器の温度としては、上記70℃で60分保持した後、0.4℃/分の割合で90℃まで昇温し、その後は90℃を保持した。
【0067】
次に、スチレンの滴下が終了した直後に、ジメチルシリコーンオイル(25℃における粘度が5000cSt)44gを添加し、その後30分経過してから、スチレン4.0kg(10重量部)を25分かけて連続的に滴下した。
【0068】
滴下を終了してから30分後に、反応器を120℃に昇温して30分間保持した後、シクロヘキサン800gとd−リモネン180gを純水2kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.0g、ピロリン酸マグネシウム10gに加え、ホモミキサーで攪拌して懸濁液として反応器に加え、ブタン3.3kgを圧入した。2時間保持した後、常温まで冷却して取り出し、粒子径が0.71〜1.00mmの発泡性ポリスチレン粒子を得た。得られた発泡性ポリスチレン粒子の表面には、小さな窪みは観察されなかった。この発泡性スチレン粒子を実施例1と同様の操作を行い、発泡及び成形評価した結果を表2に示す。
【0069】
【比較例3】
100リットルの反応器に、純水40kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ2.2g、ピロリン酸マグネシウム60gを入れ水性媒体とした。次にベンゾイルパーオキサイド110g、t−ブチルパーオキシベンゾエート30g及びポリエチレンワックス(分子量1000)22gを溶解したスチレン44kgを攪拌しながら加えて懸濁させ、90℃に昇温して重合を開始した。比重法で測定した重合転化率が95重量%まで重合が進行した時点で、ジメチルシリコーンオイル(25℃における粘度が100cSt)44g、シクロヘキサン800g及びd−リモネン180gを純水2kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ2.0g、ピロリン酸マグネシウム10gに加え、ホモミキサーで攪拌して懸濁液としたものを添加した。添加30分後に、ブタン3.3kgを圧入し、反応器を110℃に昇温して6時間保持した後、常温まで冷却して取り出し、発泡性ポリスチレン粒子を得た。この粒子表面に、小さな窪みは観察されなかった。次に、表面処理剤としてジンクステアレート46g、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド23gを粒子表面に被覆処理した後、篩い分けて粒子径が0.71〜1.00mmの粒子を分取した。この発泡性スチレン粒子を実施例1と同様の操作を行い、発泡及び成形評価した結果を表2に示す。
【0070】
【比較例4】
比較例3において、ジメチルシリコーンオイルを使用しなかった以外は比較例3と同様の操作を行った。得られた発泡性ポリスチレン粒子の表面には、小さな窪みは観察されなかった。この発泡性スチレン粒子を実施例1と同様な操作を行い、発泡及び成形評価した結果を表2に示す。
【0071】
【比較例5】
100リットルの反応器に、純水42kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ2.2g、ピロリン酸マグネシウム60gを入れ水性媒体とした。次にベンゾイルパーオキサイド110g、t−ブチルパーオキシベンゾエート30g及びポリエチレンワックス(分子量1000)22gを溶解したスチレン40kgを攪拌しながら加えて懸濁させ、90℃に昇温して重合を開始した。比重法で測定した重合転化率が95重量%まで重合が進行した時点で、ジメチルシリコーンオイル(25℃における粘度が1000cSt)65gを添加した。添加してから30分後に、スチレン4kgを20分かけて滴下した。
【0072】
滴下が終了して30分後に、シクロヘキサン800gとd−リモネン180gを純水2kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5g、ピロリン酸マグネシウム10gに加え、ホモミキサーで攪拌して懸濁液として反応器に添加した。その後さらにブタン3.3kgを圧入し、反応器を120℃に昇温して2時間保持した後、常温まで冷却して取り出し、発泡性ポリスチレン粒子を得た。この粒子表面に、小さな窪みは観察されなかった。次に、表面処理剤としてジンクステアレート46g、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド23gを粒子表面に被覆処理した後、篩い分けて粒子径が0.71〜1.00mmの粒子を分取した。この発泡性スチレン粒子を実施例1と同様の操作を行い、発泡及び成形評価した結果を表2に示す。
【0073】
【表1】
Figure 0003599318
【0074】
【表2】
Figure 0003599318
【0075】
このように、この発明の発泡性スチレン系樹脂粒子によれば、予備発泡時の粒子の団塊化が著しく減少され、成形金型内への充填を円滑に行うことができ、また、加熱成形後の冷却時間が短縮され、生産性を著しく向上できる。得られる発泡成形体は、粒子間の融着性及び表面の平滑性に極めて優れている。従って、本発明の樹脂粒子は、表面に印刷を施して魚類や農作物等を入れる容器に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の表面を拡大した走査型電子顕微鏡写真(500倍)である。
【図2】図1と同様に、本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の表面を拡大した走査型電子顕微鏡写真(2000倍)である。
【図3】比較品の発泡性スチレン系樹脂粒子の表面を拡大した走査型電子顕微鏡写真(500倍)である。
【図4】本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子に、予備発泡時の発泡粒子同士の合着を減少させる目的で微粉状の薬剤で表面塗布処理したものの表面を拡大した走査型電子顕微鏡写真(500倍)である。

Claims (9)

  1. 大きさが0.1〜10mmの合成樹脂粒子であって、粒子表面に直径が0.1〜10μmの小さな窪みを複数持ち、発泡剤を含有していることを特徴とする、ビニル系発泡性合成樹脂粒子。
  2. 大きさが10mmより小さいビニル系樹脂粒子の水性懸濁液に、ビニル系単量体とシリコーンオイルとを同時に加えて、上記樹脂粒子の表面上で、シリコーンオイル含有のビニル系単量体を重合開始剤の存在下に重合させて、大きさが0.1〜10mmの合成樹脂粒子とし、その重合過程又は重合終了後に合成樹脂粒子に発泡剤を含ませて、粒子表面に直径が0.1〜10μmの小さな窪みを複数個持った発泡性合成樹脂粒子とすることを特徴とする、発泡性合成樹脂粒子の製造方法。
  3. シリコーンオイルをビニル系単量体に対して0.1〜50重量%の割合で用いることを特徴とする、請求項2に記載の発泡性合成樹脂粒子の製造方法。
  4. ビニル系単量体をビニル系樹脂粒子100重量部に対し、0.5〜20重量部の割合で用いることを特徴とする、請求項2又は3に記載の発泡性合成樹脂粒子の製造方法。
  5. ビニル系単量体とシリコーンオイルとを予め混合し、この混合物を界面活性剤及び/又は懸濁安定剤が含まれている水溶液中に分散させて乳濁液として、水性懸濁液に加えることを特徴とする、請求項2−4の何れか1つの項に記載の発泡性合成樹脂粒子の製造方法。
  6. シリコーンオイルとして25℃における粘度が200〜30,000センチストークスのものを用いることを特徴とする、請求項2−5の何れか1つの項に記載の発泡性合成樹脂粒子の製造方法。
  7. ビニル系樹脂粒子の水性懸濁液が、大きさの揃ったビニル系樹脂粒子を水性媒体中に分散させ、これにビニル系単量体と重合開始剤とを加えてビニル系樹脂粒子にビニル系単量体を重合させた状態のものであることを特徴とする、請求項2−6の何れか1つの項に記載の発泡性合成樹脂粒子の製造方法。
  8. ビニル系樹脂粒子の水性懸濁液が、ビニル系単量体を水性媒体中で懸濁重合させた状態のものであることを特徴とする、請求項2−6の何れか1つの項に記載の発泡性合成樹脂粒子の製造方法。
  9. 請求項2において、ビニル系樹脂及びビニル系単量体としてそれぞれスチレン系樹脂及びスチレン系単量体を用い、ビニル系樹脂粒子の水性懸濁液として、0.5〜0.71mmの大きさのスチレン系樹脂粒子10〜70重量部が分散されている水性分散液に30〜90重量部のスチレン系単量体(1)と重合開始剤とを加え、スチレン系樹脂粒子の表面でスチレン系単量体(1)を重合させて得られたスチレン系樹脂粒子100重量部を含む水性懸濁液を用い、この水性懸濁液に0.5〜20重量部のスチレン系単量体(2)と、スチレン系単量体(2)に対して0.1〜50重量%のシリコーンオイルとを加えて重合させることを特徴とする、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
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