JP3598703B2 - 光ヘッド装置及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、CD(コンパクトディスク)、CD−ROM等の光ディスク、光磁気ディスク等の光記録媒体に、情報を読み取り及び/又は記録するための光ヘッド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光ディスク及び光磁気ディスク等に光学的情報を書き込んだり、光学的情報を読み取る光ヘッド装置としては、ディスクの記録面から反射された信号光を検出部へ導光(ビームスプリット)する光学部品としてプリズム式ビームスプリッタを用いたものと、回折格子又はホログラム素子を用いたものとが知られていた。
【0003】
従来、光ヘッド装置用の回折格子又はホログラム素子は、ガラスやプラスチック基板上に、矩形の断面を有する矩形格子(レリーフ型の等方性回折格子)をドライエッチング法又は射出成形法によって形成し、これによって光を回折しビームスプリット機能を付与していた。
【0004】
また、光の利用効率が10%程度の等方性回折格子よりも光の利用効率を上げようとした場合、偏光を利用することが考えられる。偏光を利用しようとすると、プリズム式ビームスプリッタにλ/4板を組合せて、往路(光源側から光記録媒体側へ向かう方向)及び復路(光記録媒体側から光源側及び検出部側へ向かう方向)の効率を上げて往復効率を上げる方法があった。
【0005】
しかし、プリズム式偏光ビームスプリッタは高価であり、他の方式が模索されていた。一つの方式としてLiNbO3等の複屈折結晶の平板を用い、表面に異方性回折格子を形成し偏光選択性をもたせる方法が知られている。しかし、複屈折結晶自体が高価であり、民生分野への適用は困難である。また通常プロトン交換法によって格子を形成する場合、プロトン交換液中のプロトンがLiNbO3基板中に拡散しやすいため、細かいピッチの格子を形成するのが困難であるという問題もあった。
【0006】
等方性回折格子は前述のように、往路の利用効率が50%程度で、復路の利用効率が20%程度であるため、往復で10%程度が限界である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前述の問題を解決すべくなされたものであり、高い光の利用効率と高い信頼性を有する光ヘッド装置の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、光源からの光を回折素子を通して光記録媒体に照射することにより、情報を読み取り及び/又は情報を書き込む光ヘッド装置において、前記回折素子は、2枚の透明基板間に挟持された光学異方性を有する高分子液晶からなる光学異方性回折格子を備え、前記高分子液晶の配向方向が周期的に変化していて、周期的に変化している該配向方向が固定されていることを特徴とする光ヘッド装置を提供する。このとき、前記配向方向が周期的に変化していて、周期的に変化している該配向方向が固定されている高分子液晶は、重合性の液晶材料を配向方向が周期的に変化している状態で高分子化させて形成されていることが好ましい。
【0009】
本発明の好ましい態様では、前記2枚の透明基板には各々電極が設けられ、2つの電極の少なくとも一方は周期的に形成されている。このような構成により、周期的に形成された分割電極に相当する部分と、分割電極が形成されていない部分とで、電界印加時の液晶材料の配向状態を異なるようにでき、光学異方性回折格子を電界により容易に形成できる。このとき、前記2枚の透明基板間のギャップが6μm以下とすることが好ましい。
【0010】
本発明の好ましい他の態様では、2つの電極の両方が周期的に形成されてなり、前記2枚の透明基板間において前記2つの電極が非対称である。これは、高分子液晶セルが形成された状態において、2枚の透明基板間の中心に位置し2枚の透明基板に平行な中心面に関して、非対称であるという意味である。このような構成により、2つの電極の各々の分割電極は、その位置及び/又は大きさが異なる状態で対面することになり、上下一対の分割電極でみた場合、高分子液晶の分割電極による配向部を左右非対称となしうる。したがって、±1次回折光のうちいずれかの回折効率が高い光学異方性回折格子を電界により容易に形成できる。
【0011】
これらの場合、その少なくとも一方の周期的に形成された電極の幅が、周期ピッチの30〜45%とされていることが好ましい。
また、2つの電極の両方が周期的に形成され、両方の電極の幅が周期ピッチの30〜45%とされていてもよい。この場合には、上下の電極を同じ幅としてもよい。
【0012】
本発明の好ましい他の態様では、少なくとも一方の透明基板の液晶と接する側の面に配向膜が設けられ、少なくとも一方の配向膜が周期的に配向力の異なる配向膜を含んでいる。このような構成により、周期的に配向力の異なる配向膜の分割配向膜により高分子液晶の配向状態に分布を付与できる。さらには、複数の分割配向膜を1周期とした場合、周期の方向における高分子液晶の配向状態を左右非対称となしうる。したがって、±1次回折光のうちいずれかの回折効率が部分的に高い光学異方性回折格子を容易に形成できる。
【0013】
本発明の好ましい他の態様では、2枚の透明基板の両方の配向膜が周期的に配向力の異なる配向膜を各々含み、前記2枚の透明基板間において周期的に配向力の異なる配向膜が非対称である。これは、高分子液晶セルが形成された状態において、2枚の透明基板間の中心に位置し2枚の透明基板に平行な中心面に関して、非対称であることを意味する。このような構成により、2つの周期的に配向力の異なる配向膜の各々の分割配向膜は、上下一対の分割配向膜でみた場合、高分子液晶の分割配向膜による配向部を左右非対称となしうる。したがって、±1次回折光のうちいずれかの回折効率が高い光学異方性回折格子を配向膜により容易に形成できる。
【0014】
さらに本発明は、光源からの光を回折素子を通して光記録媒体に照射することにより、情報を読み取り及び/又は情報を書き込む光ヘッド装置の製造方法において、2枚の透明基板に各々電極を設け、2つの電極の少なくとも一方は周期的に形成し、2枚の透明基板の少なくとも一方の透明基板の液晶材料に接する側の面に配向膜を設け、2枚の透明基板間に重合性の液晶材料を挟持し、前記電極に周期的な電界を印加して液晶材料を配向させ、その状態で液晶材料を重合させることによって、光学異方性回折格子を有する回折素子を作製することを特徴とする光ヘッド装置の製造方法を提供する。
【0015】
本発明の好ましい態様では、前記周期的に形成された電極の複数の分割電極を1周期として、前記1周期において各々の分割電極に印加する電界が異なるようにし、電界の周期の方向において1周期内の液晶材料の配向状態が左右非対称になるようにし、その後液晶材料を重合させる。このような方法により、電界の周期の方向において、1周期内でブレーズ(鋸)型回折格子等に等価な非対称回折格子を電界により容易に形成できる。したがって、±1次回折光のうちいずれかの回折効率が高い光学異方性回折格子を電界により容易に形成できる。
【0016】
本発明の好ましい他の態様では、2枚の透明基板間に未重合の液晶材料を挟持し、周期的なマスク露光により周期的に液晶材料を重合させる工程Aと、次いで全面露光により液晶材料全体を重合させる工程Bとを実行する際に、前記工程A又は前記工程Bにおいて電圧を印加する。このような方法により以下のようなことがなされる。
【0017】
電極及び配向膜を有する透明基板をラビング処理することによって、水平配向力のある透明基板を得る。2枚の透明基板をラビング方向が一致するように重ね合わせて、その間に光重合性を有する正の誘電異方性を有する液晶性モノマーを挟持する。透明基板上に簾状のマスクを置き、両透明基板間に電圧を印加しながら紫外光を照射し露光(工程A)すると、垂直配向状態で重合した高分子液晶と未重合の液晶性モノマーの周期的な構造が形成される。マスクを取り外しさらに電圧を印加しないで全面露光(工程B)すると、先に未重合であった液晶性モノマーの部分が水平配向状態の高分子液晶となり、全体として周期的な配向状態を有する光学異方性回折格子となしうる。
【0018】
この場合、工程Bにおいて電圧を印加すると、工程Aでは水平配向状態で重合した高分子液晶と未重合の液晶性モノマーの周期的な構造が形成され、工程Bでは未重合であった液晶性モノマーの部分が垂直配向状態の高分子液晶となる。
【0019】
さらに本発明では以下に示すような態様が好ましい。
前記回折素子の2枚の透明基板に施された配向処理の方向を電極の周期的格子と直交するようにすることが好ましい。そうすることにより、電界印加時に電極境界部周辺で生じる過渡領域の屈折率楕円体軸が入射偏光方向と平行又は垂直になり、素子透過光の偏光直線性が維持されやすい。加えて電極の周期的格子と平行に配向させた場合に比べて過渡領域の入射光の偏光軸に対する屈折率異方性が大きくとれる。
【0020】
さらに好ましくは、2枚の透明基板間の配向方向の角度(交差角)を180°にする。本発明ではこの配向方向の角度はほぼ0°又は180°で使用されるが、0°の場合より180°の場合の方が電界の周期的なオンオフに対し、より応答性に優れ、急峻な格子形状が作製できる。さらに、2枚の透明基板間のギャップを6μm以下にすることにより、駆動電圧が低減し電極境界からの電界の漏れに起因する格子形状の矩形からの乖離が低減するため好ましい。
【0021】
また、上記電極幅の異なる電極を用いる場合においては、上下の電極を非対称に配置することにより片側の回折効率を上げうる。特に、狭い方の電極の幅を電極の周期ピッチの30〜45%にすることにより、対称格子の理論限界値40%を超えうる。加えて、2枚の透明基板間のギャップを前述の6μm以下にすることにより、電極境界からの漏れ電界を抑制し電極の非対称性をより強く配向部に反映させられる。さらに配向部を非対称化し、片側効率の他方に対する割合を1.5倍以上にするためには、ギャップ3μm以下にすることが好ましい。
【0022】
また、片側べた電極又は両側とも周期的な電極で上下の電極が対称である場合においても、少なくとも一方の電極の幅を電極の周期ピッチの30〜45%にすることが好ましい。上下の電極間への電圧印加をした際には、電界が電極幅のやや外側まで樽型に広がる。このため、電極の幅を電極の周期ピッチの50%とするよりも45%以下とする方が、回折効率が向上する。また、電極の幅を電極の周期ピッチの30%未満とすると、電界の樽型のふくらみが相対的に大きくなる。このため、液晶がその電界に沿って配列し、格子の屈折率分布が不鮮明になりやすく、かえって回折効率が低下しやすくなる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明では、2枚の透明基板の少なくとも一方の透明基板の高分子液晶に接する側の面に、周期的な電極(透明電極)を設ける。すなわち、一方が周期的な電極で他方がべた電極、又は両方を周期的な電極とする。このような2枚の透明基板で未重合の液晶材料(液晶性モノマー)を挟持し、前記電極に電界を印加した状態で重合させることによって、周期的な配向構造を持った高分子液晶による光学異方性回折格子を形成する。
【0024】
このとき、未重合の液晶材料は、使用する液晶が正の誘電異方性を有する場合には、電界を印加された部分は液晶分子が電界に平行で透明基板に垂直に配向する。電界を印加しない部分は、透明基板に平行で配向膜のラビング方向に平行に配向する。
【0025】
配向膜が垂直配向能を有し、使用する液晶材料が負の誘電異方性を有する場合には、電界を印加しない部分は透明基板に垂直に、電界を印加した部分は透明基板に平行に配向する。
【0026】
配向膜の配向能力の違いを利用して、フォトリソグラフィ法とラビング法の組合せによって、垂直配向領域と水平配向領域の周期的パターンを形成することもできる。さらに電界を交互にかけることによって、電界分布を改善できる。この場合、配向膜は省略できる。
【0027】
上記の方法により、液晶材料の配向に分布を付与した状態のまま、熱、紫外線等により全体を高分子化することにより、配向の分布を固定したまま固化させうる。
【0028】
高分子液晶とは液晶性モノマーから生成したポリマーであって、ここではその屈折率異方性が0.02以上のポリマーをいう。したがって高分子液晶自身が液晶性を示す必要はない。
【0029】
高分子液晶は液晶性モノマーを光又は熱によって重合して製造することが好ましい。特に紫外光又は可視光で重合しうる液晶モノマーは、フォトリソプロセスによってオンサイトで(基板上で直接)高分子液晶を製造でき、好ましい。
【0030】
液晶性モノマーとは室温又は光重合時の温度において液晶性を示すモノマーをいう。液晶性とはネマチック、スメクチック、コレステリックなど公知の液晶相を示すことをいうが、コレステリックのように分子の螺旋のピッチが短い場合は本発明にそぐわず不適である。
【0031】
液晶性モノマーとしては、アクリル酸又はメタクリル酸等のエステル類中から選ぶのが好ましい。エステルを形成するアルコール残基にフェニル基が1個以上、特には2個又は3個、含まれていることが好ましい。さらにエステルを形成するアルコール残基にシクロヘキシル基が1個含まれていてもよい。液晶性モノマーはその液晶として存在できる温度範囲を広げるために、2成分以上混合して用いうる。
【0032】
本発明の光ヘッド装置は、光学的には以下のように機能する。図1の回折素子の配向膜のラビング方向は電極の格子に垂直(図1の左右方向)な方向とした。以下の説明ではP波は図1の紙面に平行な方向に偏光した光を意味する。回折素子の光源側(図1では下方)から入射したS波(図1の紙面に垂直な方向に偏光した光)は、下方から光学異方性回折格子に入射する。
【0033】
このとき光学異方性回折格子は、S波に対しては高分子液晶の垂直配向部と水平配向部が光学的に一様であるため、S波は何の変化も受けない。S波はそのままλ/4板に入射し、円偏光に変化し、非球面レンズ(対物レンズ)を透過し、ほぼ100%の光が光記録媒体の記録面に到達する。
【0034】
光記録媒体から反射し再び非球面レンズを通り戻ってきた光は、再びλ/4板を通過し、偏光方向が90°異なったP波に変化する。P波が光学異方性回折格子に入射すると、P波に対しては高分子液晶の垂直配向部と水平配向部の屈折率が異なるため回折格子として機能する。そのとき、1次回折光として約40%、−1次回折光として約40%の回折効率が得られる。光検出器を一方にのみ配置した場合で40%、両方に配置した場合は計80%の光利用効率が得られる。
【0035】
さらに、2つの透明基板に各々設けられた2つの周期的な電極を、その位置及び/又は大きさを非対称にすることにより、電極部に相当し電界によって特定方向に配向された高分子液晶を左右非対称に形成できる。したがって、±1次回折光のいずれかの回折効率が高い光学異方性回折格子となしうる。
【0036】
【実施例】
[例1]
図1に示すように、厚さ3mm、120mm×120mm角のガラス基板1の1表面に、ITOのべたの透明電極2を形成する。もう1枚の同じガラス基板4を用意し、その表面にフォトリソグラフィ法とドライエッチング法により、ITOの透明電極2を周期的に形成した。周期的透明電極は、電極部分の幅と電極のない部分の幅を約1:1とした。
【0037】
その後、スピンコート法により100nm程度のポリイミド膜3を、2枚のガラス基板1、4の透明電極2を形成した面に成膜した。前記ポリイミド膜3を水平配向のためにラビング処理を行った。この際、電極を形成した基板のラビングの方向は、透明電極2の格子に垂直(周期の方向)とした。2枚のガラス基板を透明電極2が対向し、上下の基板間の配向方向の角度が180°になるように配置し、2枚のガラス基板間のギャップを3μmとした。
【0038】
そのギャップに4’−ω−アクリロイルオキシアルキルオキシ−4−シアノビフェニルと、4−ω−アクリロイルオキシアルキルオキシ安息香酸4’−n−アルキルオキシフェニルエステルとを主成分とする液状の液晶材料(液晶性モノマー)を注入し、2枚のガラス基板間に挟持させた。このとき、液晶性モノマーには光重合開始材としてベンゾインイソプロピルエーテルを1%添加して紫外線硬化性の液晶性モノマー組成物とした。
【0039】
その後電極に5Vを印加し、電極を周期的に形成した分割電極に相当する液晶性モノマー組成物を垂直に配向せしめた(垂直配向部7)。分割電極に相当しない部分は水平配向部8となった。分割電極のピッチ(周期)は4μmで、1つの分割電極の幅は2μmとした。その後波長360nmの紫外線を全体に照射し、上記の配向状態のまま液晶性モノマー組成物全体を重合せしめ固化することによって、全体を固定した。
【0040】
ガラス基板4の上面(液晶と反対側の面)にλ/4板5を透明接着剤により積層接着し、さらにλ/4板5の上面に平坦性のよいガラス基板6を透明接着剤により積層接着した。ガラス基板6は回折素子全体の光入出射面における波面収差を改善するために設けられるが、λ/4板5の平坦性がよい場合は省略もできる。このようにして光学異方性回折格子を有する回折素子を作製した。
【0041】
前記回折素子は、S波(図1においては紙面に垂直な方向に偏光した光)に対しては、電界印加部(垂直配向部7)で屈折率1.52(常光屈折率)、非電界印加部(水平配向部8)で屈折率1.53(常光屈折率)であった。P波(図1においては紙面に垂直方向に偏光した光)に対しては、電界印加部で屈折率1.54(常光屈折率)、非電界印加部で屈折率1.66(異常光屈折率)が得られ、屈折率差として0.12程度が得られた。
【0042】
光源として半導体レーザ(光波長780nm)、前記回折素子、λ/4板、非球面レンズ(対物レンズ)、光ディスク、光検出器としてフォトダイオードを用い、光ヘッド装置を作製した。光波長780mの入射光(S波)に対する光透過率は約80%で、光ディスクからの反射光(円偏光)がλ/4板により変換されたP波に対する回折効率は、±1次回折光ともに約25%が得られた。
【0043】
[例2]
透明電極2の構成を以下のように変えた以外は例1と同様にして回折素子を作製した。
【0044】
図2に示すように、ガラス基板1側の透明電極2を周期的に形成し、1つの分割電極の幅は4μmで、ピッチは8μmとした。ガラス基板4側の透明電極2も周期的に形成し、1つの分割電極の幅は2μmで、ピッチは8μmとした。この際も、配向方向はいずれの基板も格子と直交する方向(周期方向)とし、上下の基板間の配向方向の角度は180°とした。
【0045】
この場合、S波に対しては、電界印加部(垂直配向部7)で屈折率1.52(常光屈折率)、非電界印加部(水平配向部8)で屈折率1.52(常光屈折率)であった。P波に対しては、電界印加部で屈折率1.53(常光屈折率)、非電界印加部で屈折率1.65(異常光屈折率)が得られ、屈折率差として0.12程度が得られた。
【0046】
光源として半導体レーザ(光波長780nm)、前記回折素子、λ/4板、非球面レンズ(対物レンズ)、光ディスク、光検出器としてフォトダイオードを用い、光ヘッド装置を作製した。光波長780nmの入射光(S波)に対する光透過率は約78%で、光ディスクからの反射光(円偏光)がλ/4板により変換されたP波に対する回折効率は、+1次回折光で約28%、−1次回折光で約19%が得られた。
【0047】
[例3]
透明電極2を形成せず、配向膜を以下のように構成した以外は例1と同様にして回折素子を作製した。
【0048】
ガラス基板1、4のそれぞれに、フォトリソグラフィ法とマスクラビング法により、水平配向膜(ポリイミド膜)と垂直配向膜を交互に形成した。垂直配向膜はフッ素系界面活性剤(C8F17SO2NH(CH2)3N+(CH3)3・I−)をコートし形成した。水平配向膜どうしと垂直配向膜どうしが対面するようにして(ガラス基板1、4間で対称になるようにして)、ガラス基板1、4をギャップ5μmで積層接着した。水平配向膜の幅を4μm、垂直配向膜の幅を4μmとして、ピッチ8μmの配向力が周期的に異なる周期的に配向力の異なる配向膜とした。この際、水平配向部の配向方向は、交互に形成されている周期の方向とした。また、上下の基板間の配向方向の角度は180°とした。
【0049】
この場合、S波に対しては、垂直配向部で屈折率1.53(常光屈折率)、水平配向部で屈折率1.53(常光屈折率)であった。P波に対しては、垂直配向部で屈折率1.54(常光屈折率)、水平配向部で屈折率1.65(異常光屈折率)が得られ、屈折率差として0.11程度が得られた。
【0050】
光源として半導体レーザ(光波長780nm)、前記回折素子、λ/4板、非球面レンズ(対物レンズ)、光ディスク、光検出器としてフォトダイオードを用い、光ヘッド装置を作製した。光波長780nmの入射光(S波)に対する光透過率は約70%で、光ディスクからの反射光(円偏光)がλ/4板により変換されたP波に対する回折効率は、+1次回折光で約20%、−1次回折光で約20%が得られた。
【0051】
[例4]
透明電極2の構成を以下のように変えた以外は例1と同様にして回折素子を作製した。
【0052】
ガラス基板1、4に、透明電極2を周期的に形成した。9μmを1周期として、1周期中にほぼ3μm幅の非電極部と約3μm幅の分割電極2つを、端から前記順で設けた。前記非電極部どうしと分割電極どうしが対面するようにして(ガラス基板1、4間で対称になるようにして)、ガラス基板1、4をギャップ5μmで積層接着した。1周期中で中央部の分割電極Dには2Vを印加し、もう一つの分割電極Eには5Vを印加した。
【0053】
このようにして、非電極部の液晶性モノマーは水平配向部となり、分割電極Eに相当する部分は垂直配向部となり、分割電極Dに相当する部分は水平配向と垂直配向のほぼ中間の配向状態となった。したがって、1周期内の配向状態は左右非対称となった。その後波長360nmの紫外線を全体に照射し、上記の配向状態のまま液晶性モノマー組成物全体を重合せしめ固化することによって、全体を固定した。
【0054】
この場合、S波に対しては、垂直配向部で屈折率1.52(常光屈折率)、中間の配向状態の部分で屈折率1.52(常光屈折率)、水平配向部で屈折率1.52(常光屈折率)であった。P波に対しては、垂直配向部で屈折率1.66(常光屈折率)、中間の配向状態の部分で屈折率1.60、水平配向部で屈折率1.54(異常光屈折率)が得られ、屈折率が段階的に変化するようにした。
【0055】
光源として半導体レーザ(光波長780nm)、前記回折素子、λ/4板、非球面レンズ(対物レンズ)、光ディスク、光検出器としてフォトダイオードを用い、光ヘッド装置を作製した。光波長780nmの入射光(S波)に対する光透過率は約80%で、光ディスクからの反射光(円偏光)がλ/4板により変換されたP波に対する回折効率は、+1次回折光で約29%、−1次回折光で約20%が得られた。
【0056】
[例5]
図1に示すように、厚さ1.1mm、120mm×120mm角のガラス基板1、4の1表面に、厚さ1000AのITOの透明電極2を形成する。ガラス基板1、4のITO電極にフォトリソグラフィ法とウエットエッチング法により、ITOの透明電極2を周期的に形成した。この際、周期的透明電極は、電極部分の幅と電極の無い部分の幅を約0.8:1.2とした。
【0057】
その後、スピンコート法により100nm程度のポリイミド膜3を、2枚のガラス基板1、4の透明電極2を形成した面に成膜した。前記ポリイミド膜3を水平配向のためにラビング処理をITO電極格子に対し直交する方向に行った。2枚のガラス基板を透明電極2が対向し、上下の基板間の配向方向の角度が180°となるように配置し、2枚のガラス基板間のギャップを5μmとした。
【0058】
そのギャップに4’−ω−アクリロイルオキシアルキルオキシ−4−シアノビフェニルと、4−ω−アクリロイルオキシアルキルオキシ安息香酸4’−n−アルキルオキシフェニルエステルとを主成分とする液状の液晶材料(液晶性モノマー)を注入し、2枚のガラス基板間に挟持させた。このとき、液晶性モノマーには光重合開始材としてベンゾインイソプロピルエーテルを1%添加して紫外線硬化性の液晶性モノマー組成物とした。
【0059】
その後電極に5V、100Hzの矩形交流電圧を印加し、電極を周期的に形成した分割電極に相当する液晶性モノマー組成物を垂直に配向せしめた(垂直配向部7)。分割電極に相当しない部分は水平配向部8となった。分割電極のピッチ(周期)は20μmで、1つの分割電極の幅は8μmとした。その後波長360nmの紫外線を全体に照射し、上記の配向状態のまま液晶性モノマー組成物全体を重合せしめ固化することによって、全体を固定した。
【0060】
ガラス基板4の上面(液晶と反対側の面)にλ/4板5を透明接着剤により積層接着し、さらにλ/4板5の上面に平坦性のよいガラス基板6を透明接着剤により積層接着した。ガラス基板6は回折素子全体の光入出射面における波面収差を改善するために設けられるが、λ/4板5の平坦性がよい場合は省略もできる。このようにして光学異方性回折格子を有する回折素子を作製した。
【0061】
前記回折素子は、S波(図1においては紙面の垂直方向に偏光した光)に対しては、電界印加部(垂直配向部7)で屈折率1.52(常光屈折率)、非電界印加部(水平配向部8)で屈折率1.53(常光屈折率)であった。P波(図1においては紙面に平行に偏光した光)に対しては、電界印加部で屈折率1.54(常光屈折率)、非電界印加部で屈折率1.66(異常光屈折率)が得られ、屈折率差として0.12程度が得られた。
【0062】
光源として半導体レーザ(光波長780nm)、前記回折素子、λ/4板、非球面レンズ(対物レンズ)、光ディスク、光検出器としてフォトダイオードを用い、光ヘッド装置を作製した。光波長780nmの入射光(S波)に対する光透過率は約84%で、光ディスクからの反射光(円偏光)がλ/4板により変換されたP波に対する回折効率は、±1次回折光ともに約32%が得られた。
【0063】
[例6]
透明電極2の構成を以下のように変えた以外は例5と同様にして回折素子を作製した。
【0064】
図2に示すように、ガラス基板1側の透明電極2を周期的に形成し、1つの分割電極の幅は8μmで、ピッチは16μmとした。ガラス基板4側の透明電極2も周期的に形成し、1つの分割電極の幅は6μmで、ピッチは16μmとした。また2枚の基板間のギャップは3μmとした。紫外光照射時には7V、100Hzの矩形交流電圧を印加した。
【0065】
この場合、S波に対しては、電界印加部(垂直配向部7)で屈折率1.52(常光屈折率)、非電界印加部(水平配向部8)で屈折率1.52(常光屈折率)であった。P波に対しては、電界印加部で屈折率1.53(常光屈折率)、非電界印加部で屈折率1.65(異常光屈折率)が得られ、屈折率差として0.12程度が得られた。
【0066】
光源として半導体レーザ(光波長780nm)、前記回折素子、λ/4板、非球面レンズ(対物レンズ)、光ディスク、光検出器としてフォトダイオードを用い、光ヘッド装置を作製した。光波長780mの入射光(S波)に対する光透過率は約89%で、光ディスクからの反射光(円偏光)がλ/4板により変換されたP波に対する回折効率は、+1次回折光で約40%、−1次回折光で約26%が得られた。
【0067】
【発明の効果】
本発明により、電極を周期的に形成したり、配向膜の配向方向を周期的に変化させることにより、小さいピッチ(周期)の光学異方性回折格子が容易に得られる。また、分割電極又は分割配向膜を2枚の透明基板間で非対称にすることにより、非対称な光学異方性回折格子を容易に形成できるので、±1次回折光のうちいずれかの回折効率が高い回折素子を容易に作製できる。また電極のみによって液晶性モノマーを電界により配向させうるので、配向膜を省略することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示し、光ヘッド装置用の回折素子の側断面図。
【図2】本発明の実施例を示し、光ヘッド装置用の回折素子の部分側断面図。
【符号の説明】
1:ガラス基板
2:透明電極
3:ポリイミド膜
4:ガラス基板
5:λ/4板
6:ガラス基板
7:垂直配向部
8:水平配向部
Claims (12)
- 光源からの光を回折素子を通して光記録媒体に照射することにより、情報を読み取り及び/又は情報を書き込む光ヘッド装置において、前記回折素子は、2枚の透明基板間に挟持された光学異方性を有する高分子液晶からなる光学異方性回折格子を備え、前記高分子液晶の配向方向が周期的に変化していて、周期的に変化している該配向方向が固定されていることを特徴とする光ヘッド装置。
- 前記配向方向が周期的に変化していて、周期的に変化している該配向方向が固定されている高分子液晶が、重合性の液晶材料を配向方向が周期的に変化している状態で高分子化させて形成されていることを特徴とする請求項1記載の光ヘッド装置。
- 前記2枚の透明基板には各々電極が設けられ、2つの電極の少なくとも一方は周期的に形成されている請求項1または2記載の光ヘッド装置。
- 前記2枚の透明基板間のギャップが6μm以下である請求項3に記載の光ヘッド装置。
- 2つの電極の両方が周期的に形成されてなり、前記2枚の透明基板間において前記2つの電極が非対称である請求項3又は4記載の光ヘッド装置。
- 少なくとも一方の周期的に形成されている電極の幅が、周期ピッチの30〜45%とされている請求項3、4又は5のいずれか記載の光ヘッド装置。
- 少なくとも一方の透明基板の高分子液晶と接する側の面に配向膜が設けられ、少なくとも一方の配向膜が周期的に配向力の異なる配向膜を含んでいる請求項1又は2記載の光ヘッド装置。
- 2枚の透明基板の両方の配向膜が周期的に配向力の異なる配向膜を各々含み、前記2枚の透明基板間において周期的に配向力の異なる配向膜が非対称である請求項7記載の光ヘッド装置。
- 光源からの光を回折素子を通して光記録媒体に照射することにより、情報を読み取り及び/又は情報を書き込む光ヘッド装置の製造方法において、2枚の透明基板に各々電極を設け、2つの電極の少なくとも一方は周期的に形成し、2枚の透明基板の少なくとも一方の透明基板の液晶材料に接する側の面に配向膜を設け、2枚の透明基板間に重合性の液晶材料を挟持し、前記電極に周期的な電界を印加して液晶材料を配向させ、その状態で液晶材料を重合させることによって、光学異方性回折格子を有する回折素子を作製することを特徴とする光ヘッド装置の製造方法。
- 前記周期的に形成された電極の複数の分割電極を1周期として、前記1周期において各々の分割電極に印加する電界が異なるようにし、電界の周期の方向において1周期内の液晶材料の配向状態が左右非対称になるようにし、その後液晶材料を重合させる請求項9記載の光ヘッド装置の製造方法。
- 光源からの光を回折素子を通して光記録媒体に照射することにより、情報を読み取り及び/又は情報を書き込む光ヘッド装置の製造方法において、2枚の透明基板に各々電極を設け、2枚の透明基板の少なくとも一方の透明基板の液晶材料に接する側の面に配向膜を設け、2枚の透明基板間に重合性の液晶材料を挟持し、周期的なマスク露光により周期的に液晶材料を重合させる工程Aと、次いで全面露光により液晶材料全体を重合させる工程Bとを実行する際に、前記工程A又は前記工程Bにおいて電圧を印加する光ヘッドの製造方法。
- 前記2枚の透明基板に各々設けられた2つの電極の少なくとも一方は周期的に形成された電極である請求項11記載の光ヘッドの製造方法。
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