JP3597556B2 - 液晶組成物および液晶素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、液晶組成物、およびこの液晶組成物を用いた液晶素子に関するものである。
【0002】
【発明の技術的背景】
現在、広汎に使用されている液晶化合物を用いた表示デバイスは、通常はTN(ツイストネマチック)モードによって駆動されている。
【0003】
しかしながら、この方式を採用した場合、表示されている画像を変えるためには、素子中における液晶化合物の分子の位置を変える必要があるために、駆動時間が長くなり、液晶化合物の分子位置を変えるために必要とする電圧、すなわち消費電力も大きくなるという問題点がある。
【0004】
強誘電性液晶化合物あるいは反強誘電性液晶化合物を用いたスイッチング素子は、TNモードあるいはSTNモードを利用したスイッチング素子とは異なり、液晶化合物の分子の配向方向を変えるだけでスイッチング素子として機能させることができるため、スイッチング時間が非常に短縮される。さらに、強誘電性液晶化合物あるいは反強誘電性液晶化合物のもつ自発分極(Ps)と電界強度(E)とにより与えられるPs×Eの値が液晶化合物の分子の配向方向を変えるための実効エネルギー強度であるので、スイッチング時間が高速になる。強誘電性液晶化合物は、印加電界の方向によって二つの安定状態、すなわち双安定性を、また反強誘電性液晶化合物は三安定を持つので、スイッチングのしきい値特性も非常に良好であり、動画用の表示デバイスなどとして用いるのに特に適している。
【0005】
【従来技術における問題点】
このような強誘電性液晶化合物あるいは反強誘電性液晶化合物を光スイッチング素子などに使用する場合、強誘電性液晶化合物あるいは反強誘電性液晶化合物には、たとえば動作温度範囲が常温付近あるいはそれ以下にあること、動作温度幅が広いこと、スイッチング速度が大きい(速い)ことおよびスイッチングしきい値電圧が適正な範囲内にあることなど多くの特性が要求される。殊にこれらのうちでも、動作温度範囲は強誘電性液晶化合物あるいは反強誘電性液晶化合物を実用化する際に特に重要な特性である。
【0006】
しかしながら、これまで知られている強誘電性液晶化合物あるいは反強誘電性液晶化合物では、たとえば、R.B.Meyer,et.al.,の論文[ジャーナル・デ・フイジーク(J.de Phys.)36巻L−69頁、1975年]、Y.Suzuki,et al.,の論文[リキッドクリスタルズ(liquid Crystals)6巻 167頁、1989年]に記載されているように、一般に動作温度が狭く、また動作温度範囲が広い強誘電性液晶化合物であっても動作温度範囲が室温を含まない高温度域であるなど、強誘電性液晶化合物として実用上満足できるものは得られていない。
【0007】
また、現在までに製造されている強誘電性液晶化合物または反強誘電性液晶化合物の多くは、室温におけるスイッチング時間が充分高速ではないため、室温におけるスイッチング速度の速い液晶組成物が求められている。
【0008】
【発明の目的】
本発明は、液晶組成物、およびこの液晶組成物を用いた液晶素子を提供することを目的としている。さらに詳しくは、本発明は、スイッチング速度が速い液晶素子を形成することができる液晶組成物およびこの用途を提供することを目的としている。
【0009】
【発明の概要】
本発明の液晶組成物は、次式(I)で表される含フッ素カルボン酸エステル化合物と、次式(II)で表される含フッ素カルボン酸エステル化合物とからなることを特徴としている;
【0010】
【化3】
Figure 0003597556
【0011】
(式中、R1 は、炭素原子数6〜16のアルキル基、炭素原子数6〜16のフッ素化アルキル基であり、これらの基を構成する−CH2−基、−CHF−基、または−CF2−基の一部は−O−基で置換されていてもよく、また前記アルキル基またはフッ素化アルキル基は光学活性を有していてもよく、
2 は、炭素原子数1〜12のアルキル基であり、
Xは、−O−基または単結合であり、
mは、2または3である)。
【0012】
【化4】
Figure 0003597556
【0013】
(式中、R3 は、炭素原子数6〜14のアルキル基、炭素原子数6〜14のフッ素化アルキル基であり、これらの基を構成する−CH2−基、−CHF−基、または−CF2−基の一部は−O−基で置換されていてもよく、また前記アルキル基またはフッ素化アルキル基は光学活性を有していてもよく、
4 は、炭素原子数1〜12のアルキル基であり、
Yは、−O−基または単結合であり、
nは、2または3である)。
【0015】
本発明の液晶素子は、互いに対向する二枚の基板と該基板によって構成される間隙とからなるセル、および該セルの間隙に充填された液晶材料より構成される液晶素子であって、
該液晶材料が前記液晶組成物を含有することを特徴としている。
【0016】
本発明により優れた液晶特性を有する液晶組成物、特にスイッチング速度が速い液晶組成物が提供される。本発明の液晶組成物を液晶材料として用いることにより、スイッチング速度が高速で、動作温度範囲が広く、消費電力がきわめて少なく、しかも安定したコントラストが得られるなどの優れた特性を有する各種デバイスを得ることができる。
【0017】
【発明の具体的説明】
以下、本発明の液晶組成物および液晶素子について具体的に説明する。
まず、本発明の液晶組成物について説明する。
【0018】
本発明の液晶組成物は、下記式(I)で表される含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)と、下記式(II)で表される含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)とから形成されている。
【0019】
本発明の液晶組成物を形成する含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)は、下記式(I)で表される化合物である。
【0020】
【化5】
Figure 0003597556
【0021】
式中、Rは、炭素原子数6〜16のアルキル基、炭素原子数6〜16のフッ素化アルキル基である。
ここでアルキル基またはフッ素化アルキル基は、直鎖状または分枝状のいずれの形態であってもよいが、Rが直鎖状のアルキル基またはフッ素化アルキル基である分子は、棒状構造を取り易く、優れた液晶性を示す。
【0022】
このような直鎖状のアルキル基の具体的な例としては、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基などを挙げることができる。
【0023】
また、直鎖状のフッ素化アルキル基の具体例としては、上記アルキル基の水素原子がフッ素原子で置換された基などが挙げられる。
なお、これらのアルキル基またはフッ素化アルキル基は光学活性を有していてもよい。
【0024】
さらに、本発明では、Rの一部を形成する−CH−基、−CHF−基、または−CF−基であって、Xと直接結合していない基のうち、互いに隣接しない−CH−基、−CHF−基、または−CF−基の一部が−O−基で置換されていてもよい。たとえば、アルキル基において上記のような−CH−基が−O−基で置換された基の具体的例としては、ヘキシルオキシメチル基、メトキシペンチル基、メトキシオクチル基、エトキシペンチル基およびノニルオキシメチル基を挙げることができる。
【0025】
は、炭素原子数1〜12のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基およびドデシル基を挙げることができる。これらの基は、直鎖状であっても分岐鎖を有していてもよい。
【0026】
Xは、−O−基または単結合である。
mは、1〜12の整数であり、好ましくは2または3である。
上記式(I)で表される化合物において、mが、2または3である化合物を液晶材料として使用すると、mが4以上である化合物を使用した場合に比べて、チルト角が大きくなり、同時に応答速度が向上する。
【0027】
このような含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)の具体的な例としては、たとえば次表1−(1)〜表1−(5)に示す化合物を挙げることができる。
【0028】
【表1】
Figure 0003597556
【0029】
【表2】
Figure 0003597556
【0030】
【表3】
Figure 0003597556
【0031】
【表4】
Figure 0003597556
【0032】
【表5】
Figure 0003597556
【0033】
上記のような含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)は、公知の合成技術を組み合わせて製造することができる。
たとえば、含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)のうち、mが3である含フッ素カルボン酸エステル化合物は、以下に示す合成経路に従って合成することができる。
【0034】
【化6】
Figure 0003597556
【0035】
すなわち、たとえば、2−フルオロ−4−ヒドロキシ安息香酸(i)を、酸化ジ−n−ブチルスズなどの触媒存在下、ベンジルブロマイドと反応させて、安息香酸 ベンジルエステル誘導体(ii)を得る。
【0036】
次に、この安息香酸 ベンジルエステル誘導体(ii)と、4’−アルキル−4−ビフェニルカルボン酸または4’−アルコキシ−4−ビフェニルカルボン酸とをN,N−ジメチル−4−アミノピリジンなどの有機塩基を触媒として用い、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどの脱水縮合剤の存在下、塩化メチレン、クロロホルムなどの溶媒中で反応させ、さらにパラジウム炭素などの水素化触媒の存在下に水素と反応させることにより安息香酸誘導体(iv)を得る。
【0037】
一方、これとは別にトリフルオロメチル基を含むケトン(v)を還元剤で還元して含フッ素アルコール(vi)を得る。ここで用いられる還元剤としては、カルボニル基をヒドロキシ基に変換できる試剤であれば特に限定されることはなく、たとえば水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウムなどが挙げられる。また、反応溶媒は、還元剤として水素化アルミニウムリチウムを用いる場合には、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどを用いることが好ましい。反応温度は、特に制限されないが、室温付近で反応させることが好ましい。さらに、含フッ素アルコール(vi)を常法によりエステル化しエステル化合物(vii)を得る。エステル化剤としては、カルボン酸塩化物が好ましく、塩化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ブチリルなどが挙げられる。次いで、エステル化合物(vii)を加水分解酵素を用いて不斉加水分解を行い光学活性アルコール(viii)を得る。加水分解酵素としては、たとえば、リパーゼP、リパーゼMY、リパーゼOF、セルラーゼなどが挙げられる。加水分解酵素の使用量は、原料のエステル化合物(vii)1ミリモル当たり、500〜5000unitである。反応は、通常水中、またはメタノール、エタノールなどの水溶性溶媒と水との混合溶媒中で実施される。原料のエステル化合物(vii)は、これらの溶媒に対して、通常1〜40重量%、好ましくは3〜30重量%の割合で用いられる。反応混合物のpHは、6〜8の範囲にあることが好ましく、反応温度は10〜40℃程度である。
【0038】
次に、安息香酸誘導体(iv)と光学活性アルコール(viii)とを、脱水縮合剤と触媒との存在下、塩化メチレン、クロロホルムなどの溶媒中で反応させることにより、容易に含フッ素カルボン酸エステル化合物(Ia)を得ることができる。ここで、脱水縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどが用いられ、触媒としては、N,N−ジメチル−4−アミノピリジンなどの有機塩基が用いられる。
【0039】
また、含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)のうち、mが3である含フッ素カルボン酸エステル化合物は、以下に示す合成経路に従って合成することもできる。
【0040】
【化7】
Figure 0003597556
【0041】
すなわち、たとえば2−フルオロ−4−ヒドロキシ安息香酸(i)と、臭化ベンジルとを水酸化カリウムの存在下に反応させることにより、4−ベンジルオキシ−2−フルオロ安息香酸(ix)を得る。
【0042】
次に、これとは別に合成した光学活性アルコール(viii)と、上記4−ベンジルオキシ−2−フルオロ安息香酸(ix)とを、脱水剤と触媒との存在下に、塩化メチレン、クロロホルムなどの溶媒中で反応させ、さらにバラジウム炭素などの水素化触媒の存在下に水素と反応させることにより2−フルオロ−4−ヒドロキシ安息香酸エステル(xi)を得る。
【0043】
さらに、前記2−フルオロ−4−ヒドロキシ安息香酸エステル(xi)を、4’−アルキル−4−ビフェニルカルボン酸または4’−アルコキシ−4−ビフェニルカルボン酸とを、N,N−ジメチル−4−アミノピリジンなどの有機塩基を触媒として用い、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどの脱水縮合剤の存在下、塩化メチレン、クロロホルムなどの溶媒中で反応させることにより、容易に含フッ素カルボン酸エステル化合物(Ib)を得ることができる。
【0044】
以上、上記式(I)においてmが3である含フッ素カルボン酸エステル化合物の合成方法について説明したが、式(I)においてmが1,2または4〜12の整数である含フッ素カルボン酸エステル化合物も、メチレン基の数が1,2または4〜12の整数である光学活性アルコールを使用すれば上記と同様にして合成することができる。
【0045】
なお、上記方法は、含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)の製造方法の一例であり、含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)は、この製造方法によって限定されるものではない。
【0046】
含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)のうち、次式で表される4−(4’−オクチルオキシ−4−ビフェニルカルボニルオキシ)−2−フルオロ−安息香酸 (R)−1−トリフルオロメチル−4−エトキシブチルエステル〔例示化合物(54)〕のH−NMRのチャートを図1に示す。
【0047】
【化8】
Figure 0003597556
【0048】
なお、上記式中において1〜13の番号は、水素原子を示し、この番号は図1におけるピークに付した番号と対応している。
このような含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)は、本発明の液晶組成物中に2種以上含有されていてもよい。
【0049】
本発明の液晶組成物を形成する含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)は、下記式(II)で表される化合物である。
【0050】
【化9】
Figure 0003597556
【0051】
式中、Rは、炭素原子数6〜14のアルキル基、炭素原子数6〜14のフッ素化アルキル基である。
ここでアルキル基またはフッ素化アルキル基は、直鎖状または分枝状のいずれの形態であってもよいが、Rが直鎖状のアルキル基またはフッ素化アルキル基である分子は、棒状構造を取り易く、優れた液晶性を示す。
【0052】
このような直鎖状のアルキル基の具体的な例としては、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基などを挙げることができる。
【0053】
また、直鎖状のフッ素化アルキル基の具体例としては、上記アルキル基の水素原子がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
なお、これらのアルキル基またはフッ素化アルキル基は光学活性を有していてもよい。
【0054】
さらに、本発明では、Rの一部を形成する−CH−基、−CHF−基、または−CF−基であって、Yと直接結合していない基のうち、互いに隣接しない−CH−基、−CHF−基、または−CF−基の一部が−O−基で置換されていてもよい。たとえば、アルキル基において上記のような−CH−基が−O−基で置換された基の具体的例としては、ヘキシルオキシメチル基、メトキシペンチル基、メトキシオクチル基、エトキシペンチル基およびノニルオキシメチル基を挙げることができる。
【0055】
は、炭素原子数1〜12のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基およびドデシル基を挙げることができる。これらの基は、直鎖状であっても分岐鎖を有していてもよい。
【0056】
Yは、−O−基または単結合である。
nは、1〜12の整数であり、好ましくは2または3である。
上記式(II)で表される化合物において、nが、2または3である化合物を液晶材料として使用すると、nが4以上である化合物を使用した場合に比べて、チルト角が大きくなり、同時に応答速度が向上する。
【0057】
含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)の具体的な例としては、たとえば次表2−(1)〜表2−(5)に示す化合物を挙げることができる。
【0058】
【表6】
Figure 0003597556
【0059】
【表7】
Figure 0003597556
【0060】
【表8】
Figure 0003597556
【0061】
【表9】
Figure 0003597556
【0062】
【表10】
Figure 0003597556
【0063】
上記のような含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)は、公知の合成技術を組み合わせて製造することができる。
すなわち、たとえば、含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)のうち、nが3である含フッ素カルボン酸エステル化合物は、前記[化6]および[化7]において示した製造方法において、2−フルオロ−4−ヒドロキシ安息香酸(i)の替わりに3−フルオロ−4−ヒドロキシ安息香酸を用い、RをRに替えた4’−アルキル−4−ビフェニルカルボン酸または4’−アルコキシ−4−ビフェニルカルボン酸を用い、RをRに替えた光学活性アルコールを用いることにより製造することができる。
【0064】
また、式(II)においてnが1,2または4〜12である含フッ素カルボン酸エステル化合物も、メチレン基の数が1,2または4〜12である光学活性アルコールを使用すれば上記と同様にして合成することができる。
【0065】
なお、上記方法は、含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)の製造方法の一例であり、含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)は、この製造方法によって限定されるものではない。
【0066】
本発明の含フッ素カルボン酸エステル化合物のうち、次式で表される4−(4’−デシル−4−ビフェニルカルボニルオキシ)−3−フルオロ−安息香酸 (R)−1−トリフルオロメチル−4−エトキシブチルエステル〔例示化合物(188)〕のH−NMRのチャートを図2に示す。
【0067】
【化10】
Figure 0003597556
【0068】
なお、上記式中において1〜13の番号は、水素原子を示し、この番号は図2におけるピークに付した番号と対応している。
このような含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)は、本発明の液晶組成物中に2種以上含有されていてもよい。
【0069】
本発明の液晶組成物は上記含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)および上記含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)を含有している。この液晶組成物中には、含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)および含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)が重量比〔(I):(II)〕で1:99〜99:1、好ましくは25:75〜75:25の割合で含有されていることが望ましい。
【0070】
本発明では、含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)が前記式(I)においてmが2または3である含フッ素カルボン酸エステル化合物であり、含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)が前記式(II)においてnが1〜12である含フッ素カルボン酸エステル化合物であるか、あるいは含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)が前記式(I)においてmが1〜12である含フッ素カルボン酸エステル化合物であり、含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)が前記式(II)においてnが2または3である含フッ素カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)が前記式(I)においてmが2または3である含フッ素カルボン酸エステル化合物であり、含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)が前記式(II)においてnが2または3である含フッ素カルボン酸エステル化合物であることがより好ましい。
【0071】
本発明の液晶組成物において、含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)と含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)との組み合せとして具体的には、下記のような組み合わせが挙げられる。
【0072】
すなわち、含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)が、次式(Ic)で表される化合物である場合、下記表3−(1)〜表3−(5)に示す含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)と組み合わせることが好ましい。
【0073】
【化11】
Figure 0003597556
【0074】
【表11】
Figure 0003597556
【0075】
【表12】
Figure 0003597556
【0076】
【表13】
Figure 0003597556
【0077】
【表14】
Figure 0003597556
【0078】
【表15】
Figure 0003597556
【0079】
上記表3−(1)〜表3−(5)に示す化合物のうち、nが2または3である含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)が好ましい。
また、含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)が、次式(Id)で表される化合物である場合、上記表3−(1)〜表3−(5)に示す含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)と組み合わせることが好ましい。
【0080】
【化12】
Figure 0003597556
【0081】
上記表3−(1)〜表3−(5)に示す化合物のうち、nが2または3である含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)が好ましい。
さらに、含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)が、次式(Ie)で表される化合物である場合、上記表3−(1)〜表3−(5)に示す含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)と組み合わせることが好ましい。
【0082】
【化13】
Figure 0003597556
【0083】
上記表3−(1)〜表3−(5)に示す化合物のうち、nが2または3である含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)が好ましい。
本発明の液晶組成物は、本発明の目的の範囲内で他の液晶化合物が含有されていてもよく、このような液晶化合物の例としては、
(+)−4’−(2”−メチルブチルオキシ)フェニル−6−オクチルオキシナフタレン−2−カルボン酸エステル、
4’−デシルオキシフェニル−6−((+)−2”−メチルブチルオキシ)ナフタレン−2−カルボン酸エステル、
【0084】
【化14】
Figure 0003597556
【0085】
のような液晶化合物の他、
【0086】
【化15】
Figure 0003597556
【0087】
あるいは
【0088】
【化16】
Figure 0003597556
【0089】
のような環状構造を有するとともに光学活性を有する化合物を挙げることができる。
【0090】
さらに、
【0091】
【化17】
Figure 0003597556
【0092】
のようなシッフ塩基系液晶化合物、
【0093】
【化18】
Figure 0003597556
【0094】
のような安息香酸エステル系液晶化合物、
【0095】
【化19】
Figure 0003597556
【0096】
のようなシクロヘキシルカルボン酸エステル系液晶化合物、
【0097】
【化20】
Figure 0003597556
【0098】
のようなビフェニル系液晶化合物、
【0099】
【化21】
Figure 0003597556
【0100】
のようなターフェニル系液晶化合物、
【0101】
【化22】
Figure 0003597556
【0102】
のようなシクロヘキシル系液晶化合物、
および
【0103】
【化23】
Figure 0003597556
【0104】
のようなピリミジン系液晶化合物を挙げることができる。
特に本発明の液晶組成物と共に使用できる液晶化合物のうちで好ましい例としては、
【0105】
【化24】
Figure 0003597556
【0106】
あるいは
【0107】
【化25】
Figure 0003597556
【0108】
が挙げられる。
本発明の液晶組成物中には、さらに、たとえば電導性賦与剤および寿命向上剤など、通常の液晶組成物に配合される添加剤が配合されていてもよい。
【0109】
本発明の液晶組成物は、上記のような含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)および(II)、ならびに所望により他の液晶材料および添加剤を混合することにより常法により製造することができる。
【0110】
本発明の液晶組成物は、スイッチング速度が速い。このような液晶組成物が充填されている液晶素子、たとえば光スイッチング素子は、使用可能な温度範囲が広く、安定したコントラストが得られる。
【0111】
上述した液晶組成物(液晶物質)は、電圧を印加することにより、光スイッチング現象を起こすので、この現象を利用して応答性の良い表示装置を作成することができる。本発明において、このような現象を利用した素子あるいは素子の駆動方法に関しては、たとえば特開昭56−107216号 公報および同59−118744号公報を参照することができる。
【0112】
このような表示装置で使用される液晶物質としては、スメクチックC相、F相、G相、H相、I相、J相およびK相のいずれかの相を示す化合物を使用することができるが、スメクチックC相以外では、このような液晶物質を用いた表示素子の応答速度が一般に遅くなる(低くなる)ため、従来から、実用上は、応答速度の高いスメクチックC相で駆動させることが有効であるとされていた。しかしながら、本発明においてはスメクチックC相だけでなく、スメクチックA相で使用することもできる。
【0113】
本発明の液晶素子は、液晶物質が充填されたセルと偏光板とからなる。すなわち、本発明の液晶素子は、たとえば、図3に示すように、液晶物質を充填する間隙14を形成するように配置された二枚の透明基板11a,11bと、この二枚の透明基板11a,11bの液晶物質12に対面する面に形成された透明電極15a,15bとからなるセル13と、このセル13の間隙14に充填された液晶物質12およびこのセル13の両外側に一枚ずつ配置された偏光板(図示なし)から形成されている。
【0114】
本発明において、透明基板としては、たとえば、ガラス板および透明高分子化合物板などを用いることができる。透明基板の厚さは、たとえばガラス基板の場合には通常は0.01〜1.0mmの範囲内にある。
【0115】
また、本発明においては、透明基板として、可撓性透明基板を用いることもできる。この場合、透明基板の少なくとも一方の基板として可撓性透明基板を用いることができ、さらに両者とも可撓性基板であってもよい。このような可撓性透明基板としては、高分子フィルムなどを用いることができる。 このような透明基板の表面には透明電極が設けられている。透明電極は、たとえば酸化インジウムあるいは酸化スズなどで透明基板表面をコーティングすることにより形成される。透明電極は、公知の方法により形成することができる。透明電極の厚さは通常は100〜2000Åの範囲内にある。
【0116】
このような透明電極が設けられた透明基板には、さらに透明電極上に配向層あるいは強誘電体層が設けられていてもよい。配向層としては、たとえば有機シランカップリング剤あるいはカルボン酸多核錯体などを化学吸着させることにより形成される有機薄膜および無機薄膜を挙げることができる。有機薄膜の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール(ポバール)およびポリイミドのような高分子薄膜を挙げることができる。このような有機薄膜は、塗布、接着、蒸着、あるいは、基板上での重合(たとえばプラズマ重合)などの方法で形成することができる。また、無機薄膜の例としては、酸化珪素、酸化ゲルマニウムおよびアルミナなどの酸化物薄膜、窒化珪素のような窒化物薄膜並びに他の半導体薄膜を挙げることができる。
【0117】
さらに、上記のような薄膜に配向性を賦与する方法には、膜成形時に薄膜自体に異方性あるいは形状特異性を賦与する方法、薄膜作成後に外部から配向性を賦与する方法がある。具体的には、透明電極上にポリイミド樹脂などの高分子物質を塗布して薄膜を形成した後、この薄膜を一定方向にラビングする方法、高分子フィルムを延伸して配向性を賦与する方法、酸化物を斜方蒸着する方法などを挙げることができる。
【0118】
上記のような透明基板を二枚、それぞれの透明電極が対面し、かつこの透明基板により液晶物質を充填する間隙が形成されるように配置する。上記のようにして形成される間隙の幅は、通常は1〜10μm、好ましくは1〜5μmである。このような間隙は、たとえば、スペーサを挟持するように二枚の基板を配置することにより形成することができる。このようなスペーサとしては、たとえば、感光性ポリイミド前駆体をパターニングして得られるポリイミド系高分子物質などを用いることができる。スペーサを用いることにより、このスペーサと液晶物質との界面効果によってモノドメインが形成される。
【0119】
また、図4(a)およびこのA−A断面図である図(b)に示すように、たとえば、配向膜として作用する同心円形状のスペーサ26を用いて配向膜とスペーサとを一体化することもできる。図4(a)および(b)において、透明基板は27で、透明電極は25で、液晶物質は23で示されている。
【0120】
また、図5(a)およびこのA−A断面図である(b)に示すように、たとえば、配向膜として作用するクシ状のスペーサ36を用いて配向膜とスペーサとを一体化することもできる。図5(a)および(b)において、透明基板は37で、透明電極は35で、液晶物質は33で示されている。
【0121】
また、図6に示すように、上記のようなスペーサの他に、液晶物質43中にファイバー46を配合して、このファイバーにより、透明電極45が付設された透明基板47が一定の間隙を形成するように保持することもできる。
【0122】
さらに、上記ファイバーの替わりに、あるいは上記ファイバーと共に粒状物を配合することもできる。
このような粒状物としては、メラミン樹脂、尿素樹脂あるいはベンゾグアナミン樹脂などからなる粒子径が1〜10μmの粒状物を挙げることができる。
【0123】
上記のようにして間隙を形成して配置された二枚の透明基板は、通常は周辺をシール材でシールすることにより貼り合わされる。シール材としては、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂などを用いることができる。このエポキシ樹脂などの樹脂は、アクリル系材料、シリコン系ゴムなどで変性されていてもよい。
【0124】
上記のような構成を有する液晶セルの間隙には、上述したような液晶組成物を含む液晶物質が充填されている。
液晶セルの間隙に充填されたこのような液晶物質は、たとえばスペーサエッジを利用した温度勾配法あるいは配向膜を用いた表面処理法などの一軸配向制御方法を利用して配向させることができる。また、本発明においては、たとえば、液晶物質を加熱しながら、直流バイアス電圧を用いて電界を印加することにより、液晶物質の初期配向を行うこともできる。
【0125】
このようにして液晶物質が充填され、初期配向された液晶セルは、二枚の偏光板の間に配置される。さらに図7に示すように、上記のようにして調製された二枚の透明基板57、透明電極55および液晶物質53からなるセル58を、この二枚の偏光板56の間に二個以上配置することもできる。
【0126】
本発明の液晶素子において、それぞれの偏光板の偏光面のなす角度(回転角)が70〜110度になるように配置することができる。そして、この二枚の偏光板の偏光方向が直交するように、すなわち上記角度が90度になるように偏光板を配置することが好ましい。
【0127】
このような偏光板としては、たとえばポリビニルアルコール樹脂フィルム、ポリビニルブチラール樹脂フィルムなどの樹脂フィルムを、ヨウ素などの存在下で延伸することによりフィルム中にヨウ素を吸収させて偏光性を賦与した偏光フィルムを用いることができる。このような偏光フィルムは、他の樹脂などで表面を被覆して多層構造にすることもできる。
【0128】
本発明において、上記のような液晶セルは、上記のように配置された2枚の偏光板の間に、透過する光量が最も少ない状態(すなわち、最暗状態)から±10度の範囲内の角度(回転角度)を形成するように、好ましくは最暗状態になるように二枚の偏光板の間に配置することができる。また、上記のように配置された2枚の偏光板の間に、透過する光量が最も多い状態(すなわち、最明状態)から±10度の範囲内の角度(回転角度)を形成するように、好ましくは最明状態になるように二枚の偏光板の間に配置することができる。
【0129】
本発明の液晶素子は、たとえば図3に示すように、上記のような液晶物質15をセル13の間隙14に充填して、この液晶物質15を初期配向させることにより製造することができる。
【0130】
液晶物質15は、通常、溶融状態になるまで加熱され、この状態で内部が減圧にされているセルの間隙14に充填(注入)される。このように液晶物質を充填した後、セル13に設けられている液晶物質の注入口は密封される。
【0131】
次いで、このように注入口が密封されたセル13をセル内に充填された液晶物質15が等方相を示す温度以上の温度に加熱し、その後、この液晶物質15が液晶を示す温度にまで冷却する。
【0132】
そして、本発明においては、この冷却の際の降温速度を2℃/分以下にすることが好ましい。特に降温速度を0.1〜2.0℃/分の範囲内にすることが好ましく、さらに0.1〜0.5℃/分の範囲内にすることが特に好ましい。このような冷却速度でセル13を冷却することにより、液晶物質15の初期配合状態が改善され、配向欠陥の少ないモノドメインからなる液晶相を有する液晶素子を容易に形成することができる。ここで初期配向性とは、液晶素子に電圧の印加などを行って液晶物質の配向ベクトルを変える前の液晶物質の配列状態をいう。
【0133】
このようにして形成される本発明の液晶素子は、従来の液晶素子と比較して、コントラストなどの特性が著しく優れ、たとえば表面安定化強誘電性液晶素子、ヘリカル変調素子、過度散乱型素子、ゲストホスト型素子、垂直配向液晶素子などとして好適に使用することができる。
【0134】
たとえば、本発明の液晶素子に、電界を印加することによりこの液晶素子を駆動させる場合には、周波数が通常は1Hz〜100KHz、好ましくは10Hz〜10KHz、電界が通常は0.01〜60Vp−p /μm(厚さ1μm当たりの電圧)、好ましくは0.05〜30Vp−p /μmに制御された電界をかけることにより駆動させることができる。
【0135】
そして、前記液晶組成物を使用した本発明の液晶素子は、電界を印加して駆動する際に印加する電界の波形(駆動波)の幅を変えることにより、この液晶素子を透過する光量が2種類のヒステリシス曲線を描くようになる。このうち一方は、いわゆる双安定型を利用する駆動方法であり、もう一方は、いわゆる三安定型を利用する駆動方法である。
【0136】
上記のような光学活性を有する液晶材料が充填された液晶セルを、偏光面が直交するように配置された二枚の偏光板の間に、電界を印加しない状態で最暗状態になるように配置した本発明の液晶素子に、たとえば周波数50Hz〜100KHz、好ましくは70Hz〜10KHzの矩形波(あるいはパルス波)、三角波、正弦波およびこれらを組み合わせた波形の内のいずれかの波形の電界を印加することによりこの液晶素子を駆動させることができる。たとえば、矩形波(あるいはパルスまたは両者の組み合わせ波)を印加する場合には、電界の幅を10ミリ秒以下、好ましくは0.01〜10ミリ秒の範囲内にすることにより、液晶素子の駆動速度を高くすることができ、この領域では本発明の液晶素子を双安定型液晶素子として使用することができる。また、この電界の幅を10ミリ秒より大きくすることにより、好ましくは33〜1000ミリ秒の範囲内にすることにより、それほど高速で駆動することが必要でない領域で、本発明の液晶素子を三安定型液晶素子として使用することができる。ここで、電界の幅とは、たとえば矩形波では、所定の電圧に維持される電界の長さ(すなわち時間)を意味する。
【0137】
本発明の液晶素子を用いて各種の液晶表示装置および電気光学表示装置を製造することができる。また、本発明の液晶素子の内、スメクチック相を呈する液晶物質が充填された液晶素子は、熱書き込み型液晶表示素子、レーザー書き込み型液晶表示素子などの記憶型液晶表示装置のような液晶表示装置あるいは電気光学表示装置を製造することができる。さらに、強誘電性を示し、かつ鎖状部に光学活性炭素を有する液晶材料を用いることにより、上記のような用途の他、光シャッターあるいは液晶プリンターなどの光スイッチング素子、圧電素子および焦電素子のような液晶表示装置(あるいは電気光学表示装置)を製造することができる。
【0138】
すなわち、本発明で使用される液晶物質は、三安定または双安定性を示すため、双安定状態を達成するように電界を反転することにより、本発明の液晶素子に光スイッチング機能あるいは表示機能をもたせることができる。
【0139】
また、上記の液晶物質が双安定を示す場合、この液晶物質は自発分極を有するから、本発明の液晶素子は一度電圧を印加すると電界消去後もメモリー効果を有する。そして、このメモリーを維持するために液晶素子に電界を印加し続ける必要がなく、本発明の液晶素子を用いた表示装置では消費電力の低減を図ることができる。また、三安定を示す場合もメモリー性を維持することができる。しかもこの表示装置は、安定したコントラストを有しているので非常に鮮明である。
【0140】
さらに、前記液晶組成物を用いた本発明のスイッチング素子では、分子の配向方向を変えるだけでスイッチング操作が可能になり、この場合、電界強度の一次項がこのスイッチング素子の駆動に作用するため、スイッチング素子では低電圧駆動が可能になる。
【0141】
そして、このスイッチング素子を用いることにより、数十μ秒以下の高速応答性を実現することができるので、素子の操作時間は大幅に短縮される。従って、本発明の液晶素子を用いることにより走査線の多い大画面のディスプレイ(液晶表示装置)を容易に製造することができる。しかも、このディスプレイは、室温あるいはそれ以下の温度で駆動させることができるので、駆動温度をコントロールするための補助手段を用いることなくこのディスプレイを駆動させることができる。
【0142】
さらに、本発明の液晶組成物は、一般には双安定性を示さないとされているスメクチックA相においても、電界が印加されると誘起的に分子が傾くので、この性質を利用して光スイッチングを行うことできる。すなわち、従来強誘電性液晶化合物を用いる場合には実用的な応答速度を達成できないため、通常は使用されていなかったスメクチックA相においても、本発明者が既に特開昭64−3634号公報および特開平2−918号公報で提案した駆動法および装置を利用することにより、本発明の液晶素子を用いた表示装置を駆動させることが可能である。さらに、本発明の液晶組成物は、スメクチックC相よりもさらに高い秩序を有するスメクチックF相などにおいても、二つ以上の安定状態を示すので、これらの相における複数の安定状態を利用して上記と同様にして光スイッチングを行うことができる。
【0143】
本発明の液晶素子を用いた表示装置は、種々の方法で駆動させることができるが、この駆動方法の具体的な例としては以下に記載する方法を挙げることができる。
【0144】
第1の方法は、本発明の液晶素子を二枚の偏光板の間に介在させ、この液晶素子に外部電圧を印加し、液晶物質の配向ベクトルを変えることにより、二枚の偏光板と液晶物質の複屈折とを利用して表示を行う方法である。
【0145】
第2の方法は、二色性色素が配合された液晶物質を用いて色素の二色性を利用する方法である。この方法は液晶化合物の配向方向を変えることにより色素による光の吸収波長を変えて表示を行う方法である。この場合に使用される色素は、通常は二色性色素であり、このような二色性色素の例としては、アゾ色素、ナフトキノン色素、シアニン系色素およびアントラキノン系色素などを挙げることができる。
【0146】
本発明の液晶素子を用いて製造される表示デバイスは、スタチィック駆動、単純マトリックス駆動および複合マトリックス駆動などの電気アドレス表示方式、光アドレス表示方式、熱アドレス表示方式並びに光ビーム表示方式により駆動させることができる。
【0147】
また、本発明の表示装置を電界駆動する際には各絵素を駆動させるための素子として、非線形素子あるいは能動素子を用いることができる。より具体的には、2端子素子の非線形素子としては、たとえば図8(a)に示すように一方の透明基板上にバリスタ、MIM(Metal Insulator Metal)、ダイオードなどを配置して、これらの非線形性を利用した素子を挙げることができる。また、3端子素子の能動素子としては、たとえば図8(b)に示すように、TFT(薄膜トランジスタ)、Si−MOS(Si−metal oxide semi conductor field−effect transistor)およびSOS(Sillicon on Sapphire)などが絵素に配置された素子を挙げることができる。
【0148】
【発明の効果】
本発明の液晶組成物は、スイッチング速度が高速である。このような液晶組成物を用いることにより、スイッチング速度が高速で、動作温度範囲が広く、消費電力がきわめて少なく、しかも安定したコントラストが得られるなどの優れた特性を有する各種デバイスを得ることができる。
【0149】
本発明の液晶素子を用いて製造した液晶ディスプレイでは、操作時間を大幅に短縮することができる。このようなディスプレイでは、消費電力の低減を図ることができると共に、高いコントラスト、安定したコントラストが得られる。また、低電圧駆動も可能である。
【0150】
【実施例】
次に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なおR、Sは光学活性体のR体、S体を表す。
【0151】
参考例1
次式で表される含フッ素カルボン酸エステル化合物(a)〔化合物番号(102)〕と、含フッ素カルボン酸エステル化合物(b)〔化合物番号(224)〕とを30:70の重量比で混合して液晶組成物を調製した。
【0152】
【化26】
Figure 0003597556
【0153】
この液晶組成物は、25℃において3安定状態を示した。この液晶組成物の25℃、±15V/2μm印加時のスイッチング時間とチルト角を測定した。結果を表4に示す。
【0154】
なお、スイッチング時間は下記の方法で測定した値である。
スイッチング時間の測定
反強誘電状態から強誘電状態へのスイッチング(Swiching from the AF−state to the F−state)に要する時間をスイッチング時間とした。図9に示すパルス波を試験セルに印加し、その時の透過係数をモニターする。得られたチャートから下式によりスイッチング時間を求めることができる。なお、上記のスイッチング時間を求めた際の条件は、電圧15V/2μm、パルス幅10m秒、パルス間隔90m秒である。
【0155】
スイッチング時間=tr90−tr0
また、チルト角は下記の方法で測定した値である。
チルト角の測定
DC電圧を試験セルに印加し、プラス電圧、マイナス電圧印加時のそれぞれの最暗位置の角度を求め、それぞれθ1、θ2とする。この時チルト角θは下式により求められる。
【0156】
【数1】
Figure 0003597556
【0157】
なお、上記のチルト角を求めた際の条件は電圧±30V/2μmである。
【0158】
参考例2
前記含フッ素カルボン酸エステル化合物(a)の25℃、±15V/2μm印加時のスイッチング時間とチルト角を測定した。結果を表4に示す。
【0159】
参考例3
前記含フッ素カルボン酸エステル化合物(b)は、25℃の過冷却状態において強誘電相に特有な双安定状態が認められた。この時のチルト角を表4に示す。
【0160】
参考例4〜6
化合物(a)と(b)を表4に示す重量比で混合して液晶組成物を調製した。これらの液晶組成物は、25℃において反強誘電相に特有な3安定状態を示した。これらの液晶組成物の25℃、±15V/2μm印加時のスイッチング時間とチルト角を測定した。結果を表4に示す。
【0161】
実施例1〜2
次式で表される含フッ素カルボン酸エステル化合物(c)〔化合物番号(54)〕と、含フッ素カルボン酸エステル化合物(d)〔化合物番号(176)〕とを20:80および40:60の重量比で混合して液晶組成物を調製した。
【0162】
【化27】
Figure 0003597556
【0163】
この組成物は25℃において強誘電相に特有な双安定状態を示した。この時のチルト角を測定した。結果を表4に示す。
【0164】
参考例7
前記含フッ素カルボン酸エステル化合物(c)は25℃において結晶であるため、スイッチング時間ならびにチルト角は測定できなかった。
【0165】
参考例8
前記含フッ素カルボン酸エステル化合物(d)は25℃の過冷却状態において強誘電相に特有な双安定状態が認められた。この時のチルト角を測定した。結果を表4に示す。
【0166】
実施例3〜5
化合物(c)と(d)を表4に示す重量比で混合して液晶組成物を調製した。これらの液晶組成物は25℃において反強誘電相に特有な3安定状態を示した。これらの液晶組成物の25℃,±15V/2μm印加時のスイッチング時間とチルト角を測定した。結果を表4に示す。
【0167】
参考例9
化合物(a)と(d)を70:30の重量比で混合して液晶組成物を調製した。この液晶組成物は25℃において反強誘電相に特有な3安定状態を示した。
【0168】
この液晶組成物の25℃,±15V/2μm印加時のスイッチング時間とチルト角を測定した。結果を表4に示す。
【0169】
【表1】
Figure 0003597556
【0170】
表4から、上記式(I)で表される含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)と、上記式(II)で表される含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)とからなる本発明の液晶組成物は、上記式(I)で表される含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)、上記式(II)で表される含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)に比べてスイッチング時間がほぼ1/10であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】4−(4’−オクチルオキシ−4−ビフェニルカルボニルオキシ)−2−フルオロ−安息香酸 (R)−1−トリフルオロメチル−4−エトキシブチルエステル(例示化合物54)のH−NMRスペクトルのチャートである。
【図2】4−(4’−デシル−4−ビフェニルカルボニルオキシ)−3−フルオロ−安息香酸 (R)−1−トリフルオロメチル−4−エトキシブチルエステル(例示化合物188)のH−NMRスペクトルのチャートである。
【図3】本発明の液晶素子の断面形状を模式的に示す図である。
【図4】同心円形状のスペーサーを有する液晶素子およびそのA−A断面図である。
【図5】クシ型スペーサを有する液晶素子およびそのA−A断面図である。
【図6】スペーサとしてファイバーを用いた本発明の液晶素子の断面構造を示す図である。
【図7】二枚の偏光板のセルを配置した本発明の液晶素子の断面構造を示す図である。
【図8】非線形素子および3端子素子の例を示す図である。
【図9】本発明においてスイッチング速度を測定する方法の説明図である。
【符号の説明】
11a,11b,27a,27b,37,47,57 … 透明基板
12,23,33,43,53 … 液晶物質
13,58 … セル
14 … 間隙
15a,15b,25a,25b,35,45,55 … 透明電極
26 … 同心円形状のスペーサ
36 … クシ型スペーサ
46 … ファイバー
56 … 偏光板

Claims (2)

  1. 次式(I)で表される含フッ素カルボン酸エステル化合物(I)と、次式(II)で表される含フッ素カルボン酸エステル化合物(II)とを含有することを特徴とする液晶組成物;
    Figure 0003597556
    (式中、R1 は、炭素原子数6〜16のアルキル基、炭素原子数6〜16のフッ素化アルキル基であり、これらの基を構成する−CH2−基、−CHF−基、または−CF2−基の一部は−O−基で置換されていてもよく、また前記アルキル基またはフッ素化アルキル基は光学活性を有していてもよく、
    2 は、炭素原子数1〜12のアルキル基であり、
    Xは、−O−基または単結合であり、
    mは、2または3である)。
    Figure 0003597556
    (式中、R3 は、炭素原子数6〜14のアルキル基、炭素原子数6〜14のフッ素化アルキル基であり、これらの基を構成する−CH2−基、−CHF−基、または−CF2−基の一部は−O−基で置換されていてもよく、また前記アルキル基またはフッ素化アルキル基は光学活性を有していてもよく、
    4 は、炭素原子数1〜12のアルキル基であり、
    Yは、−O−基または単結合であり、
    nは、2または3である)。
  2. 互いに対向する二枚の基板と、該基板によって構成される間隙とからなるセル、および該セルの間隙に充填された液晶材料より構成される液晶素子であって、
    該液晶材料が請求項1に記載の液晶組成物を含有することを特徴とする液晶素子。
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