JP3596083B2 - フタロシアニン誘導体及び該誘導体を用いた光学記録媒体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、新規なフタロシアニン誘導体及び該誘導体を光吸収物質として記録層中に含有する光学記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
レーザー、特に半導体レーザーを用いる光学記録媒体は、高密度の情報記録保存及びその再生を可能とするため、近年、特に開発が望まれている技術である。かかる光学記録媒体の一例としては光ディスクを挙げることができる。
一般に光ディスクは、円形の基体上に設けられた薄い記録層に、1μm程度に収束したレーザー光を照射し、高密度の情報記録を行なうものである。
【0003】
最近、光ディスクの中でも注目を集めているものに書き込み型コンパクトディスク(CD Write Once ディスク)がある。このディスクはコンパクトディスクと同じ形状のディスクである。
ユーザーは、記録装置を使用して音楽や情報を1回だけ記録することが可能であり、記録した音楽や情報の再製は既存のCDプレーヤーやCD ROMドライブを用いて行なうことが可能である。
【0004】
このディスクは、通常、案内溝を有するプラスチック基板上に色素を主成分とする記録層、金属反射膜、保護膜を順次積層することにより構成される。
情報の記録はレーザー光(通常は波長780nm)の照射により、その箇所における記録層、基板の分解、蒸発、融解などの熱的な変化により生成し、そして記録された情報の再生は、レーザー光により、変化が起きている部分と起きていない部分との反射率の差を読み取ることにより行なう。
【0005】
したがって、光記録媒体としては、記録に使用するレーザー光に対する記録感度が高いこと、再生に使用するレーザー光に対する反射率が記録部では低く、未記録部では高いことが重要である。コンパクトディスクプレーヤーで再生をおこなうためには、再生に使用するレーザー光(通常780nm)に対する未記部の反射率は65%以上、記録部の反射率は45%以下とすることが必要である。
【0006】
このようなCD Write Once ディスクの記録層に使用する色素としては、従来シアニン系色素を用いたものが提案されてきたが、シアニン系色素を使用したものは日光やその他の光に弱いという欠点を有していた。その他、有機色素を用いた光学記録媒体としては、スクアリリウム系色素、ナフトキノン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素等を用いたものが提案されている。
【0007】
上記のような色素のうちフタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素は一般に耐候性が優れているため好ましいが、ベンゼン環、ナフタレン環に置換基を有していないものは、溶媒に対する溶解度が極めて低いため、塗布により記録層を形成することができないという問題点を有している。
一方、特願平6−081742号において、本発明者らはフタロシアニン系色素において、ベンゼン環にテトラヒドロフルフリルオキシ基等を導入することを提案した。しかしながら、これらのフタロシアニン誘導体はCD Write
Once ディスクの記録層用色素として用いたときには必ずしも記録感度が高くないという問題点を有している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のような従来の課題を解決し得る新規なフタロシアニン誘導体および該誘導体を使用した光学記録媒体の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意検討を進めた結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、一般式〔I〕で示されるフタロシアニン誘導体
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、Xは−O(CH2 CH2 O)nCH2 Y(ここでYは置換基を有していてよいジオキソラン環を示し、nは0から3の整数である。)を表し、Aはハロゲン原子又は酸素原子が結合していてもよい金属原子を表す)、並びに、基板上に記録層を有し、該記録層が光吸収物質として前示一般式〔I〕で示されるフタロシアニン誘導体を含有することを特徴とする光学記録体を要旨とするものである。
【0012】
本発明のフタロシアニン誘導体は、いずれも600〜800nm付近の近赤外領域に吸収を有し、耐光性、耐熱性が良好で、後述するように光学記録媒体の光吸収物質として非常に有用である。なかでも下記一般式〔II〕においてD,Eのいずれか1つが−O(CH2 CH2 O)nCH2 Y基を表し、他の1つは水素原子を表し、Yがジ2,2−メチル−1,3−ジオキソラン環を表し、nは0であり、AはCu原子を表す場合のフタロシアニン誘導体が望ましい。
【0013】
また本発明の光学記録媒体は、光吸収物質として本発明のフタロシアニン誘導体を使用することによって、前記したような従来の光学記録媒体の有する課題を解決してその機能を発展させたものである。
本発明の光学記録媒体に光吸収物質として用いる前示一般式〔I〕で示されるフタロシアニン誘導体は、下記一般式〔III 〕(式中Xは−O(CH2 CH2 O)nCH2 Y(ここでYは置換基を有していてもよいジオキソラン環を示し、nは0から3の整数である。)で示されるフタロニトリル誘導体と、金属もしくは金属化合物をキノリンまたはクロロナフタレン溶媒中で1〜5時間程度、200〜250℃に加熱するか、またはDBU(1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセン)のような塩基性の触媒とともにn−ペンタノール、n−ヘキサノールのような高沸点のアルコールと1時間から20時間程度70〜120℃に加熱することによっても、合成することができる。
【0014】
使用する金属、金属化合物としては、IB族、IIA族、IIB族、III A族、IVA族、VB族、VIB族、VIII族の各種のものを挙げることができるが、合成のしやすさ、得られた化合物の性能からみて銅、マグネシウム、亜鉛、チタン、アルミニウム、インジウム、錫、鉛、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、パラジウム及びこれらの酸化物、ハロゲン化物、酢酸塩が好ましく、マグネシウム、亜鉛、銅のハロゲン化物が特に好ましい。
【0015】
また、前示一般式〔I〕で示されるフタロシアニン誘導体は、下記一般式〔IV〕(式中Xは−O(CH2 CH2 O)nCH2 Y(ここで、Yは置換基を有していてもよいジオキソラン環を示し、nは0から3の整数である)で示されるフタル酸誘導体と、金属もしくは金属化合物とを、尿素の存在下、キノリンまたはクロロナフタレン溶媒中で、1〜5時間程度、200〜250℃に加熱することにより合成することができる。使用する金属、金属化合物としては、IB族、IIA族、IIB族、III A族、IVA族、VB族、VIB族、VIII族の各種のものを挙げることができるが、マグネシウム、亜鉛、バナジウム、ニッケル、コバルト及び銅の酸化物もしくはハロゲン化物、酢酸塩が特に好ましい。さらにニッケル、コバルト、及び銅のハロゲン化物を用いる場合は、触媒として少量のモリブデン酸アンモニウムを加えると収率が増大するので好ましい。
【0016】
【化3】
【0017】
本発明の光学記録媒体は、基本的には基板と記録層とから構成されているが、さらに必要に応じて基板上に下引き層を、また記録層上に反射層及び保護層を設けることができる。
本発明における基板としては、使用するレーザー光に対して透明又は不透明のいずれであってもよい。基板の材質としては、ガラス、プラスチック、紙、板状もしくは箔状の金属等の、一般にこの種の記録体用の支持体が使用できるが、種々の点からみてプラスチックが好ましい。プラスチックとしては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ニトロセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリサルホン等が挙げられる。
【0018】
本発明の光学記録媒体における情報記録層である光吸収物質を含有する記録層の厚さは、100Å〜5μm、好ましくは500Å〜3μmである。
本発明において、かかる記録層を基板面上に成膜する方法としては塗布による方法が好ましい。塗布による成膜方法としては、光吸収物質として用いられる前示一般式〔I〕で示される本発明のフタロシアニン誘導体を、溶媒又は溶媒とバインダーの混合物中に溶解または分散させたものを、スピンコートする方法、スプレー塗布する方法が挙げられ、かかる場合のバインダーとしては、ポリイミド、ポリアミド、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、セルロール等が挙げることができる。
【0019】
その際、樹脂に対する光吸収物質の比率は10重量%以上が望ましい。また、かかる場合の溶媒としては、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルアルコール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロベンゼン等各種のものを用いることができる。なお、基板として、射出成型により製造されたポリカーボネート基板やメタアクリル樹脂基板を用いる場合には、上記の溶媒としては、エチルセロソルブ、エチルアルコール、オクタフルオロペンタノール等が好ましい。
【0020】
本発明の光学記録媒体の記録層は基板の両面に設けてもよいし、片面だけに設けてもよい。
上記のようにして得られた光学記録媒体への記録は、基板の両面または片面に設けられた記録層に1μm程度に収束したレーザー光、好ましくは半導体レーザーの光を照射することにより行う。レーザー光の照射された部分には、レーザーエネルギーの吸収による、分解、蒸発、溶融等の記録層の熱的変形が起こる。
【0021】
記録された情報の再生はレーザー光により、熱的変形が起きている部分と起きていない部分の反射率の差を読み取る事により行なう。
光源としては、He−Neレーザー、アルゴンレーザー、半導体レーザー等の各種のレーザーを用いることができるが、価格、大きさの点で、半導体レーザーが特に好ましい。
【0022】
半導体レーザーとしては、現在使用されている中心波長830nmのレーザー、中心波長780nmのレーザー、また、それより短波長のレーザーも使用することができる。
また、本発明のフタロシアニン誘導体は、プラスチックや紙など各種の素材の着色や各種の繊維の染色、光学フィルターの着色など光学記録媒体以外の用途にも使用することができる。
【0023】
【実施例】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。なお、「%」は特に断らない限り「重量%」である。
実施例1
【0024】
▲1▼2,2−ジメチル−4−[(2,3−ジシアノフェノキシ)メチル]−1,3−ジオキソランの合成
モレキュラーシーブにより予め脱水したテトラヒドロフラン100ml中に、水酸化ナトリウム2.8gを分散させ、攪拌しながら5〜10℃で2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール9.24gを30分で滴下した。5〜10℃で1時間攪拌したのち、5〜10℃で3−ニトロフタロニトリル8.65gをテトラヒドロフラン100mlに溶解させた溶液を1時間かけて滴下した。このものを5〜10℃でさらに5時間攪拌したのち一晩放置し、氷水500g中に加えた。生成した沈殿を濾別し、水洗、乾燥し、淡黄色の結晶8.8gを得た。このものを酢酸エチル100mlに溶解させシリカゲルカラム(充填剤:ワコーゲルC−200、和光純薬製、展開溶剤:酢酸エチル)によりクロマト精製して、下記構造式〔V〕で示される2,2−ジメチル−4−[(2,3−ジシアノフェノキシ)メチル]−1,3−ジオキソランの精製物5.1gを得た。構造はNMRスペクトル(図1に示す。)により確認した。
【0025】
▲2▼フタロシアニン誘導体の合成
上記のようにして得られた2,2−ジメチル−4−[(2,3−ジシアノフェノキシ)メチル]−1,3−ジオキソラン2.58gを無水塩化銅0.37g、モリブデン酸アンモニウム0.2gとともにα−クロロナフタレン10ml中に加え、180℃から200℃で4時間攪拌した。放冷後、n−ヘキサン30mlを加え、得られた結晶を濾別することにより緑色の物質1.5gを得た。このものをクロロホルム30mlに溶解させシリカゲルカラム(充填剤:ワコーゲルC−200、和光純薬製、展開溶剤:クロロホルム、メチルアルコール混合系)によりクロマト精製して、緑色の化合物0.72gを得た。得られた物質(結晶)は異性体を含むと考えられるが、その代表的な構造は下記式〔VI〕で示される。この物質のクロロホルム溶液中でのλmaxは698nm、分子吸光係数は19.5×104 であった。
【0026】
【化4】
【0027】
実施例2
2,2−ジメチル−4−[(2,3−ジシアノフェノキシ)メチル]−1,3−ジオキソラン2.58g、無水塩化マグネシウム0.29g、DBU(1,8−ジアザビシクロ〔4.3.0〕−7−ウンデセン)1.52gをn−アミルアルコール10ml中に加え窒素気流化、90℃から100℃で3.5時間攪拌した。n−アミルアルコールを減圧下で留去し緑色物0.45gを得た。このものをクロロホルム20mlに溶解させシリカゲルカラム(充填剤:ワコーゲルC−200、和光純薬製、展開溶剤:クロロホルム−メタノール混合系)によりクロマト精製して、緑色の化合物0.14gを得た。得られた物質(結晶)は異性体を含むと考えられるが、その代表的な構造は下記式〔VII 〕で示される。この物質のクロロホルム溶液中でのλmaxは701nm、分子吸光係数は23.2×104 であった。
【0028】
【化5】
【0029】
実施例3〜8
実施例1に準じて、実施例3では2,2−ジメチル−4−[(2,3−ジシアノフェノキシ)メチル]−1,3−ジオキソランと塩化コバルトとを、実施例4では2,2−ジメチル−4−[(2,3−ジシアノフェノキシ)メチル]−1,3−ジオキソランと塩化ニッケルを、実施例5では2,2−ジメチル−4−[(2,3−ジシアノフェノキシ)メチル]−1,3−ジオキソランと塩化ルテニウム(RuCl3 )とをそれぞれ反応させることにより本発明のフタロシアニン誘導体の合成を行なった。
【0030】
また実施例2に準じて、実施例6では2,2−ジメチル−4−[(2,3−ジシアノフェノキシ)メチル]−1,3−ジオキソランと塩化第一鉄とを、実施例7では2,2−ジメチル−4−[(2,3−ジシアノフェノキシ)メチル]−1,3−ジオキソランと塩化パラジウムを、実施例8では2,2−ジメチル−4−[(2,3−ジシアノフェノキシ)メチル]−1,3−ジオキソランと塩化亜鉛とをそれぞれ反応させることにより本発明のフタロシアニン誘導体の合成を行なった。
その結果、得られた各物質(結晶)はいずれも異性体を含むと考えられるが、その代表的な構造としては実施例3〜8の物質をそれぞれ下記一般式〔VIII〕で示すことができる。
【0031】
【化6】
【0032】
また、かかる実施例3〜8で得られた各物質の構造(一般式(VIII)中の置換基AおよびR)、クロロホルム溶液中でのλmax、分子吸光係数の測定結果を前記実施例1、2の測定結果とともに下記表−1にまとめて示す。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例9〜11
一般式〔IX〕(式中のAおよびRは下記表−2に示す)で示される本発明の3種類のフタロシアニン誘導体を実施例1に準じて合成した。得られた各物質のクロロホルム溶液中でのλmax、分子吸光係数を下記表−2に示す。
【0035】
【化7】
【0036】
【表2】
【0037】
実施例12
実施例1に基づいて合成された構造式〔VI〕で示される本発明のフタロシアニン誘導体の1.7%オクタフルオロペンタノール溶液を調整し、スピンコーティング法(回転数500rpm)により、直径120mm、板厚1.2mmのポリカーボネート基板上に塗布した。この色素薄膜の上に金を蒸着して反射層を形成し、その上に紫外線硬化樹脂による保護層を設けて光学記録媒体を作成した。得られた光学記録媒体の未記録部の775nmでの反射率は74%であった。
【0038】
作成した光学記録媒体を線速度1.2m/sで回転させながら、中心波長775nmの半導体レーザー光を出力9.3mWで照射し、EFM信号を記録した。次に、この記録部を中心波長780nmの半導体レーザーを有するCDプレーヤーで再生したところ、良好な再生信号を得た。
また、耐光性(キセノンフェードメーター加速テスト;60時間)及び保存安定性(70℃、85%RH;100時間)試験を行なった結果、初期と比べて感度及び再生信号の劣化はみられず、光学記録媒体として極めて優れたものであった。
【0039】
比較例
特願平6−081742号実施例1に従って下記構造式〔X〕に示される化合物を合成した。
【0040】
【化8】
【0041】
▲1▼3−テトラヒドロフルフリルオキシフタル酸無水物の合成
3−ヒドロキシフタル酸(融点200〜204℃)100gをメチルアルコール21中に分散させ、97%硫酸5mlを加え、還流下24時間攪拌した。放冷後、氷水51中に加え、析出した結晶を濾別、水洗、乾燥して、3−ヒドロキシフタル酸ジメチルの結晶85gを得た。構造はマススペクトルにより確認した。
【0042】
3−ヒドロキシフタル酸ジメチル15g、予めパラトルエンスルホニルクロライドとテトラヒドロフルフリルアルコールとから常法に従って合成したパラトルエンスルホン酸テトラヒドロフルフリルエステル25.8g及び炭酸カリウム7.5gをクロロベンゼン200ml中に加え、還流下10時間攪拌した。次いで、放冷後、析出した結晶を濾別し、濾液から減圧留去によりクロロベンゼンを除去し、淡かっ色のタール状物質13gを得た。
【0043】
このタール状物質を5%水酸化ナトリウム水溶液500ml中に分散させ、還流下8時間攪拌した。放冷後、氷冷しながら濃塩酸を滴下し、pH3とした後、析出物を濾別、乾燥して淡黄色結晶9.5gを得た。この結晶を氷酢酸から再結晶して、3−テトラヒドロフルフリルオキシフタル酸無水物を得た。構造はマススペクトルにより確認した。
【0044】
▲2▼フタロシアニン誘導体の合成
上記のようにして得られた3−テトラヒドロフルフリルオキシフタル酸無水物6.2gと尿素12.5gを乳鉢で粉砕、混合した後、150℃〜180℃で30分間攪拌しながら反応させた。次いで約100℃まで冷却後、三塩化バナジウム2.0g及びキノリン10mlを加えて加熱し、200℃〜220℃で2時間攪拌した。さらに、室温まで放冷後、メチルアルコール200mlを加え還流下1時間攪拌した。
【0045】
このものを熱濾過して得られた結晶を、1%水酸化ナトリウム水溶液200mlとエチルアルコール200mlの混合液中に加え、還流下2時間攪拌した。このものを熱濾過し、エチルアルコールで洗浄、乾燥し、濃緑色の結晶5.3gを得た。この結晶をクロロホルム30mlに分散させ、不溶解物を濾別した後、減圧下濾液からクロロホルムを留去した。得られた緑色の物質にメチルアルコールを加え得られた結晶を濾過することにより、緑色物質0.93gを得た。
【0046】
得られた物質(結晶)は異性体を含むと考えられるが、その代表的な構造は上記一般式〔X〕で示される。この物質のクロロホルム溶液中でのλmaxは700nmであり、分子吸光係数は13.8×104 であった。
得られた化合物を用いて実施例12とほぼ同様の条件で光学記録媒体を作製した。得られた光学記録媒体の未記録部の775nmでの反射率は71%であった。
【0047】
作成した光学記録体を線速度1.2m/sで回転させながら、中心波長775nmの半導体レーザー光を出力10.0mWで照射し、EFM信号を記録した。次に、この記録部を中心波長780nmの半導体レーザーを有するCDプレーヤーで再生したところ、良好な再生信号を得た。
次にこの光学記録媒体を線速度1.2m/sで回転させながら、中心波長775nmの半導体レーザー光を出力9.3mWで照射し、EFM信号の記録を試みた。この記録部を中心波長780nmの半導体レーザーを有するCDプレーヤーで再生したところ、得られた再生信号はノイズの多いものであった。
【0048】
【発明の効果】
本発明のフタロシアニン誘導体は600〜800nm付近の可視〜近赤外領域に強い吸収を有し、耐光性、耐熱性が良好で、しかも加熱による吸収波長の変化が生起しにくく、かつ光学記録媒体のプラスチック基板への塗布も容易である、という工業的価値ある顕著な効果を奏するものである。
また、本発明の光学記録媒体は、記録層の光吸収物質としてかかるフタロシアニン誘導体を含有しているので、耐光性、耐熱性に優れ、記録再生特性も良好であるという顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で製造した2,2−ジメチル−4−[(2,3−ジシアノフェノキシ)メチル]−1,3−ジオキソランのNMRスペクトルを示す図である。
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