JP3596080B2 - 光ファイバ型回折格子作製用光ファイバ母材の製造方法 - Google Patents

光ファイバ型回折格子作製用光ファイバ母材の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、光ファイバ型回折格子の作製に好適な光ファイバ製作用の光ファイバ母材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光学素子の一種である回折格子には種々の態様のものがあるが、光通信システム等に利用する場合には、通信用光ファイバとの接続が容易で、挿入損失の低い光ファイバ型回折格子が好適である。
【0003】
従来の光ファイバ型回折格子の作製方法としては、特許出願公表昭62−500052に記載のものが知られている。これは、酸化ゲルマニウムを添加して高屈折率のコアを形成した石英系ファイバに強力な紫外光を照射することより、コアに屈折率変化部を光軸に沿って等間隔に配列して、回折格子を形成する方法である。そして、紫外光を照射する光ファイバの製作は、酸化ゲルマニウムが添加された高屈折率のコアと成るべき部分と、酸化ゲルマニウムが添加されず、コアとなるべき部分よりも低屈折率のクラッドとなるべき部分とを備える光ファイバ母材を加熱線引することによりなされる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の製造方法では、得られる回折格子の反射率は必ずしも十分でない。すなわち、回折格子が作り込まれた光導波路では、その反射率が重要な特性であるが、この反射率は以下の式(1)のように、回折格子長(コア内において、屈折率が周期的に変化している領域の長さ)と光誘起屈折率変化に依存する。
【0005】
R=tanh2(L・π・ΔnUV/λ) …(1)
ここで、Rは反射率、Lはコア内に作り込まれた回折格子長、ΔnUVは紫外光に対する屈折率変化(光誘起屈折率変化)、λは反射波長である。
【0006】
紫外光照射による屈折率変化はガラス中のゲルマニウム関連のガラス欠陥に起因することが知られているが、従来のように通信用光ファイバを用いたのではクラッド部においてはGe関連のガラス欠陥がないため、屈折率変化はしないので、この部分における紫外光による屈折率変化ΔnUVは実質的にない。したがって、導波路全体として十分な反射率が得られない。
【0007】
さらに、紫外光が照射されると、その部位のコア(回折格子が作り込まれた部位)の屈折率は高くなるため、この部位のモードフィールド径は他の紫外光が照射されていないコアのモードフィールド径より小さくなる。このモードフィールド径の変化がコア内に生じると、モードミスマッチによりコア内を伝搬している光がクラッド側へ放射され、伝送損失が増加するという。
【0008】
本発明は、上記を鑑みてなされたものであり、高い反射率を有する光ファイバ型回折格子の作製に好適な光ファイバ製作用の光ファイバ母材の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の光ファイバ型回折格子作製用光ファイバ母材の製造方法は、(a)酸化ゲルマニウムが添加された石英ガラスから成り、第1の径を有する第1の柱状ガラス部材を用意する第1の工程と、(b)酸化ゲルマニウムおよびフッ素が添加された石英ガラスから成り、内径が第1の径と略同一であり、外径が第2の径である第1の筒状ガラス部材を用意し、第1の柱状ガラス部材を第1の筒状ガラス部材の中空部に挿入する第2の工程と、(c)第1の柱状ガラス部材が挿入された第1の筒状ガラス部材を加熱して一体化して第2の柱状ガラス部材とする第3の工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
ここで、第2の径は、前記第1の径の6倍以内とすることができる。
【0011】
また、第3の工程に引き続いて、(d)内径が第2の径と略同一である第2の筒状ガラス部材を用意し、第2の柱状ガラス部材を第2の筒状ガラス部材の中空部に挿入する第4の工程と、(e)第2の柱状ガラス部材が挿入された第2の筒状ガラス部材を加熱して一体化して第3の柱状ガラス部材とする第5の工程とを更に備えることが可能である。
【0012】
ここで、第2の筒状部材は、実質的に不純物が添加されていない石英ガラスとすることができる。
【0013】
【作用】
本発明の光ファイバ型回折格子作製用光ファイバ母材の製造方法では、まず、酸化ゲルマニウムが添加された石英ガラスから成り、第1の径を有する第1の柱状ガラス部材を用意する(第1の工程)。この第1の柱状ガラス部材が、加熱線引されて光ファイバのコアとなった場合に、紫外光が照射されると屈折率が効率的に変化するコアとなるべき部分である。
【0014】
次に、酸化ゲルマニウムおよびフッ素が添加された石英ガラスから成り、内径が第1の径と略同一であり、外径が第2の径である第1の筒状ガラス部材を用意し、第1の柱状ガラス部材を第1の筒状ガラス部材の中空部に挿入する(第2の工程)。この第1の柱状ガラス部材が、加熱線引されて光ファイバの内層クラッドとなった場合に、紫外光が照射されると屈折率が効率的に変化する、クラッド(少なくとも、最内層クラッド)となるべき部分である。
【0015】
次いで、第1の柱状ガラス部材が挿入された第1の筒状ガラス部材を加熱して一体化して第2の柱状ガラス部材とする(第3の工程)。
【0016】
上記の工程を備えた本発明の光ファイバ型回折格子作製用光ファイバ母材の製造方法によれば、光ファイバ化後に紫外光を照射した場合に、コアに加えてクラッド(少なくとも、最内層クラッド)で屈折率変化が効率的に発生するので、反射率の高い光ファイバ型回折格子の出発材として好適な光ファイバ母材を得ることができる。
【0017】
本発明者らの知見によれば、高い反射率を得るには、コア径の小さなシングルモードファイバであってもコア径に対して6倍の外径の領域に回折格子を形成すればよい。
【0018】
また、第3の工程に引き続いて、内径が第2の径と略同一である第2の筒状ガラス部材を用意し、第2の柱状ガラス部材を第2の筒状ガラス部材の中空部に挿入し(第4の工程)、第2の柱状ガラス部材が挿入された第2の筒状ガラス部材を加熱して一体化して第3の柱状ガラス部材とする(第5の工程)とを更に備えることが可能である。
【0019】
本発明者らの知見によれば、クラッド全体を紫外光の照射による屈折率変化が発生する酸化ゲルマニウムの添加状態にすると光導波路の強度が低減する。したがって、外層クラッドとなるべき第2の筒状ガラス部材は、ゲルマニウムが添加されていない材料、例えば実質的な純石英からなることが好適である。
【0020】
以上のようにして得られた、光ファイバ母材を加熱線引して光ファイバを製作し、この光ファイバに紫外光を照射すると、コアと内層クラッドとで効率的な屈折率変化が発生する。
【0021】
すなわち、酸化ゲルマニウムがドープされたコアと内層クラッドを備えるガラス光ファイバに紫外光を照射すると、コアと内層クラッドに紫外光が入射し、紫外光が入射した部分の屈折率が変化(上昇)する。
【0022】
紫外光の入射によりガラスの屈折率が変化するメカニズムは、完全には解明されてはいない。しかしながら、屈折率変化の重要な要因として、ガラス中のゲルマニウムに関連した酸素欠損型の欠陥が考えられており、Si−GeまたはGe−Geなどの中性酸素モノ空孔が想定されている。
【0023】
屈折率変化のメカニズムとして提案されているクラマース・クローニッヒ機構によれば、屈折率変化は以下のように説明される。すなわち、上記の欠陥は波長240〜250nmの紫外光を吸収し、この吸収によりSi−GeまたはGe−Ge結合が切れて、新たな欠陥が生じる。この新たな欠陥は、波長210nmおよび280nm付近を中心に吸収帯を形成する。その結果、クラマース・クローニッヒの関係に従いガラスの屈折率が変化する。
【0024】
【実施例】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0025】
図1は、本実施例の光ファイバ型回折格子作製用光ファイバ母材の製造工程図である。図1に示すように、本実施例では、まず、周知のVAD法により、酸化ゲルマニウムが6wt%添加された、外径=3mmのコアロッド101を用意する(図1(a)参照)。このコアロッド101の純石英ガラスに対する比屈折率差は0.353%である。
【0026】
次に、周知のVAD法により、酸化ゲルマニウムが5wt%、フッ素が0.85%添加された、内径=3mm、外径=15mmの内層クラッドパイプ102を用意し、内層クラッドパイプ102の中空部にコアロッド101を挿入する(図1(b)参照)。この内層クラッドパイプ102の屈折率は、純石英ガラスの屈折率と略同一である。引き続き、コアロッド101が挿入された内層クラッドパイプ102を加熱し、一体化してガラスロッド103とする(図1(c)参照)。
【0027】
次いで、添加物を添加していない石英ガラスから成る、内径=15mm、外径=45mmの外層クラッドパイプ104を用意し、ガラスロッド103を挿入する(図1(d)参照)。引き続き、ガラスロッド103が挿入された外層クラッドパイプ104を加熱し、一体化して光ファイバ母材100とする(図1(e)参照)。
【0028】
こうして得られた光ファイバ母材を電気炉で2000℃程度に加熱して溶融状態にした後、線引きする。これにより、光ファイバが得られる。この光ファイバでは、(コア径):(内層クラッド外径):(外層クラッド外径)が、光ファイバ母材における(コアとなるべき部分の径):(内層クラッドとなるべき部分の外径):(外層クラッドとなるべき部分の外径)と略一致するので、コア径≒8μm、内層クラッド外径≒40μm、外層クラッド外径≒125μmとなる。
【0029】
図2は、光ファイバ型回折格子の作製方法の一例の説明図である。図2に示す方法では、ホログラフィック干渉法により紫外光を干渉させて光ファイバに照射する。この方法では、干渉手段20は、ビームスプリッタ21aと反射鏡21b、21cとから構成される。また、紫外光光源10には、アルゴンレーザ光源11を用いた。
【0030】
アルゴンレーザ光源11は、244nmのコヒーレントな紫外光を連続発振する。この紫外光は、ビームスプリッタ21aにより透過光と反射光の2光束に分岐される。分岐された各光束は、それぞれ反射鏡21b及び21cによって反射され、コア41の軸方向に対し互いに補角の関係にある74゜(図2におけるα)、106゜(図2における180゜−α)の角度をもって光ファイバ40に照射される。
【0031】
分岐された各光束は干渉領域30にて干渉し、所定間隔の干渉縞を形成しつつ、光ファイバ40に照射される。そして、照射された紫外光は、外層クラッド45を透過し、内層クラッド42およびコア41に入射して、入射した部分の屈折率を変化させる。
【0032】
図2に示すように、光ファイバ40の径方向に対する紫外光の入射角度θ(=90°−α)と紫外光の波長λとを用いると、干渉縞の間隔Λは、
Λ=λ/(2sinθ) …(2)
のように表される。したがって、コア41及び内層クラッド42の紫外光が入射した領域には、屈折率の変化した部分が干渉縞の間隔Λを周期として光ファイバ40の光軸方向に沿って配列されるので、ピッチΛの回折格子43,44が、それぞれコア41、内層クラッド42に形成されることになる。こうして、コア41及び内層クラッド42に回折格子を有する光導波路としての光ファイバが得られた。
【0033】
コア41の屈折率nと回折格子43のピッチΛを用いると、周知なブラッグの回折条件により、この回折格子の反射波長λは、
Figure 0003596080
のように表される。なお、本実施例では、この反射波長λを1300nmに設定した。
【0034】
なお、紫外光の照射中は、LED光源からの光を光ファイバ40の一端から入射させ、他端に接続されたスペクトルアナライザでこの光の透過スペクトルを測定して、回折格子43、44の形成をリアルタイムでモニターした。ここで、スペクトルアナライザは、回折格子43、44を透過した光について波長と透過率との関係を測定する。
【0035】
紫外光の照射が開始されると回折格子43、44の形成が進むので、透過スペクトルにおいて透過光の強度が反射波長を中心に減少する。透過スペクトルに変化がなくなれば、回折格子43、44の形成が飽和したと考えられるので、この時点で紫外光の照射を停止する。なお、本実施例では、飽和時間は約40〜50分であった。
【0036】
反射率は、100%から透過率を差し引いて求まるので、回折格子43、44の形成が飽和した時点の透過スペクトルから、波長と反射率との関係を示した反射スペクトルを求めることができる。その結果、本実施例で作製された光ファイバ型回折格子の反射率は90%以上であり、良好な結果を得た。
【0037】
なお、ホログラフィック干渉法を用いて紫外光を光ファイバ40に照射したが、代わりに位相格子法を用いることもできる。
【0038】
【発明の効果】
以上、詳細に説明した通り、本発明の製造方法で製造された光ファイバ型回折格子作製用光ファイバ母材はクラッドの内層部となるべき部分にもGeOが添加されているので、この光ファイバ化後に紫外光を照射すると、コア及び内層クラッドの双方に回折格子が形成されるので、この回折格子が形成された領域ではコアを伝搬する導波光のみならず、導波光のうちクラッド側へ放射される光も反射され、モードフィールド全域にわたって導波光が反射されるとともに光導波路の強度が維持される。したがって、高い反射率を有する光ファイバ型回折格子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の光ファイバ型回折格子作製用光ファイバ母材の製造工程図である。
【図2】光ファイバへの紫外光の照射による回折格子の形成の説明図である。
【符号の説明】
10…紫外光光源、20…干渉手段、21a…ビームスプリッタ、21b,21c…反射鏡、30…干渉領域、40…光ファイバ型回折格子、41…コア、42…内層クラッド、43,44…回折格子、45…外層クラッド、100…天然石英管、100…光ファイバ母材、101…コアロッド、102…内層クラッドパイプ、103…ガラスロッド,104…外層クラッドパイプ。
代理人弁理士 長谷川 芳樹

Claims (4)

  1. 酸化ゲルマニウムが添加された石英ガラスから成り、第1の径を有する第1の柱状ガラス部材を用意する第1の工程と、
    酸化ゲルマニウムおよびフッ素が添加された石英ガラスから成り、内径が前記第1の径と略同一であり、外径が第2の径である第1の筒状ガラス部材を用意し、前記第1の柱状ガラス部材を前記第1の筒状ガラス部材の中空部に挿入する第2の工程と、
    前記第1の柱状ガラス部材が挿入された前記第1の筒状ガラス部材を加熱して一体化して第2の柱状ガラス部材とする第3の工程と、
    を備えることを特徴とする光ファイバ型回折格子作製用光ファイバ母材の製造方法。
  2. 前記第2の径は、前記第1の径の6倍以内であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ型回折格子作製用光ファイバ母材の製造方法。
  3. 前記第3の工程に引き続いて、
    内径が前記第2の径と略同一である第2の筒状ガラス部材を用意し、前記第2の柱状ガラス部材を前記第2の筒状ガラス部材の中空部に挿入する第4の工程と、
    前記第2の柱状ガラス部材が挿入された前記第2の筒状ガラス部材を加熱して一体化して第3の柱状ガラス部材とする第5の工程と、
    を更に備えることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ型回折格子作製用光ファイバ母材の製造方法。
  4. 前記第2の筒状部材は、実質的に不純物が添加されていない石英ガラスからなることを特徴とする請求項3記載の光ファイバ型回折格子作製用光ファイバ母材の製造方法。
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