JP3595152B2 - 配線基板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも有機樹脂を含む絶縁基板の表面および/または内部に、配線回路層を形成した、半導体素子収納用パッケージなどに適した配線基板とその製造方法に関するものであり、特に、配線回路層とバイアホール導体との接続信頼性の向上に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来より、配線基板、例えば、半導体素子を収納するパッケージに使用される配線基板として、アルミナ等の絶縁層とW,Moなどの高融点金属からなる配線層とを具備したセラミック配線基板が多用されているが、このようなセラミック配線基板は、硬くて脆い性質を有することから、製造工程または搬送工程において、セラミックの欠けや割れ等が発生しやすく、また、焼結前のグリーンシートにメタライズペーストを印刷して、印刷後のシートを積層して焼結する場合、焼結により得られる基板に反り等の変形や寸法のばらつき等が発生しやすいという問題があり、回路基板の超高密度化やフリップチップ等のような基板の平坦度の厳しい要求に対して十分に対応できないという問題があった。
【0003】
そこで、最近では、有機樹脂を含む絶縁層表面に銅箔を接着した後、これをエッチングして微細な回路を形成した基板や、銅などの金属粉末を含むペーストを絶縁層に印刷して配線層を形成した後、これを積層し、あるいは積層後に、所望位置にマイクロドリルやパンチング等によりバイア用の孔明けを行い、そのバイア内壁にメッキ法により金属を付着させて配線層を接続して多層化したプリント配線基板が提案されている。また、絶縁層としては、その強度を高めるために、樹脂に対して、粉末状あるいは繊維状の無機質フィラーを分散させた基板も提案されており、これらの複合材料からなる絶縁層上に多数の半導体素子を搭載したマルチチップモジュール(MCM)等への適用も検討されている。
【0004】
以上のようなプリント配線板の多層化、配線の超微細化、精密化の要求に対応して、バイアホール導体をホール内に金属粉末を含む導体ペーストを充填して形成し、且つ金属箔からなる配線回路層を具備した高密度に多層化された配線基板を作製する試みが行われている。この導体ペーストの充填によってバイアホール導体を形成する方法は、従来のメッキ法によりスルーホール導体を形成するのに対して、バイアホール導体を任意の箇所に設けることができるために、特に高密度配線化に適した方法として注目されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、低抵抗金属を含む導体ペースト中には、絶縁層への印刷性およびホールへの充填性を高めるとともに、金属粒子を互いに結合させるために結合用樹脂を配合させており、しかも金属粒子表面には、高抵抗の酸化膜が生成されやすいことから、金属粒子の接触界面には、樹脂や酸化膜が介在するために、通常の銅箔や銅メッキにより形成された回路またはスルーホール導体よりも抵抗値が高いという問題点があった。
【0006】
それに加えて、絶縁基板が有機樹脂を含有している関係上、銅や銀等の低抵抗金属を焼結できるような温度で処理することができないために、配線とバイアホール導体間の接続信頼性が低く、ヒートサイクルやヒートショック等による熱変形さらには振動により、銅箔からなる配線回路層とバイアホール導体間との導体抵抗が増大するという問題があるのが現状である。
【0007】
また、この樹脂分を加熱分解したり、通電加熱を行うことなど様々な改良も行われているが、これらの加熱処理においても十分な効果が得られておらず、場合によっては、通電加熱によっては通電時に発生する熱によって絶縁層に対して悪影響を及ぼすなどの問題があった。
【0008】
従って、本発明は、銅を主体とする配線回路層と、導体ペーストを充填して形成したバイアホール導体との接続信頼性に優れた配線基板とその製造方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題に対して検討を重ねた結果、銅を含有する金属粉末を含む導体ペーストを充填して形成したバイアホール導体と絶縁層表面に形成された配線回路層間に、銅以外の特定の金属を被着させ、前記配線回路層とバイアホール導体間にパルス電流を印加することで、配線回路層とバイアホール導体との接触部に放電を起こし、電気の導通を妨げていた樹脂や酸化膜を除去すると同時に、配線回路層とバイアホール導体中の銅を含む金属粒子とを銅以外の特定金属を主体とする金属層を介して接続し、金属層と配線回路層との接触部を絶縁層に影響を与えることなく、部分的に強固に接合することができる結果、バイアホール導体と配線回路層との接続信頼性に優れた高信頼性の配線回路層を形成することができることを知見した。
【0010】
即ち、本発明の配線基板は、有機樹脂を含有する絶縁基板と、該絶縁基板表面および/または内部に配設された銅を主体とする金属箔からなる配線回路層と、前記配線回路層間を電気的に接続するために設けられ、少なくとも銅を含有する平均粒径が3〜10μmの金属粉末を充填してなるバイアホール導体を具備する配線基板において、前記バイアホール導体中の銅を含有する金属粉末が、Ag、Al、Au、Cd、Cr、Ni、Pb、Sn、Th、Ti、Tl、ZnおよびZrの群から選ばれる少なくとも1種の金属粉末を主体とする金属層を介して前記配線回路層と電気的に接続してなり、前記金属層中の金属粉末と前記配線回路層が、前記金属層中の主体となる金属と前記配線回路層の金属との合金からなるネック部によって結合してなることを特徴とするものである。
【0011】
また、かかる配線基板の製造方法としては、有機樹脂を含有する絶縁層に形成したバイアホール内に、銅を含有する平均粒径3〜10μmの金属粉末を含む第1の導体ペーストを充填してバイアホール導体を形成する工程と、Ag、Al、Au、Cd、Cr、Ni、Pb、Sn、Th、Ti、Tl、ZnおよびZrの群から選ばれる少なくとも1種の金属を含む第2の導体ペーストを前記バイアホール導体端部に被着する工程と、前記第2の導体ペーストが被着された前記バイアホール導体端部に銅を主体とする配線回路層を形成する工程と、前記配線回路層と前記バイアホール導体間にパルス電流を印加して、前記配線回路層と前記第2の導体ペースト中の金属粒子との接触部分に、前記Ag、Al、Au、Cd、Cr、Ni、Pb、Sn、Th、Ti、Tl、ZnおよびZrの群から選ばれる少なくとも1種の金属と前記配線回路層中の金属との合金からなるネック部を形成する工程と、を具備することを特徴とするものであり、印加するパルス電流の電流密度が1〜2000A/cm、パルス幅が0.01〜1000msec.であることを特徴とする。なお、前記少なくとも銅を含有する金属粉末は、銀を被覆した銅粉末からなることが望ましい。
【0012】
【作用】
本発明の配線基板では、バイアホール導体中の金属粒子と配線回路層とが、溶接によって形成されたネック部を介して接続された構造からなるために、バイアホール導体中の金属粒子と、銅を主体とする配線回路層とを高い電気伝導性をもって強固に接続できる結果、過酷な条件下でも電気抵抗の変化のない安定した配線基板を提供できる。
【0013】
即ち、本発明では、配線回路層とバイアホール導体間に所定の金属層を介してパルス電流を印加することで、電気の導通を妨げていた有機樹脂や酸化膜を除去すると同時に、バイアホール導体中の金属粒子間、および配線回路層とバイアホール導体との接触部に放電を起こし、配線回路層とバイアホール導体を形成している金属粒子との接触部を絶縁層に影響を与えることなく、部分的に溶接できる結果、配線層の抵抗を格段に下げることができ、さらに配線回路層の接続信頼性を向上させることができるというものである。
【0014】
また、上記溶接に際して、Ag、Al、Au、Cd、Cr、Ni、Pb、Sn、Th、Ti、Tl、ZnおよびZrの群から選ばれる少なくとも1種の金属は、いずれも銅と合金を形成して900℃以下の融点の合金となる特性を有するものであり、かかる特性を利用し、配線回路層とバイアホール中の金属粒子との間に前記金属層を介在させてパルス電流を印加すると、バイアホール導体中の銅含有粉末と配線回路層間に直接電流を印加する場合に比較して、低い電流で配線回路層中の銅と上記金属との合金からなるネック部の成長を助長できるために、配線回路層とバイアホール導体との結合力を高めることができる結果、配線回路層とバイアホール導体との抵抗変化のない信頼性の高い配線基板を提供できるのである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面をもとに説明する。
図1は本発明の配線基板の構造を説明するための概略断面図である。図1に示すように、本発明の配線基板1は、有機樹脂を含む複数の絶縁層2a〜2dを積層してなる絶縁基板3の表面および内部に配線回路層4が配設され、さらに、異なる層の配線回路層4を電気的に接続するためのバイアホール導体5とを具備するものである。本発明によれば、バイアホール導体5は、少なくとも銅を含有する金属粉末を充填して形成されたものである。また、銅を主体とする配線回路層4は、少なくとも銅、あるいは銅含有合金からなる金属箔からなることが望ましい。
【0016】
本発明における大きな特徴は、図2の要部拡大図に示すように、バイアホール導体5中の金属粒子6が、Ag、Al、Au、Cd、Cr、Ni、Pb、Sn、Th、Ti、Tl、ZnおよびZrの群から選ばれる少なくとも1種の金属粉末7を主体とする金属層8を介して前記配線回路層4と電気的に接続してなり、その金属層8中の金属粒子7と配線回路層4としての例えば銅箔9とが、ネック部Aによって接合してなるものである。このネック部Aは、金属粒子7と銅箔9との界面におけるいわゆる焼結によって形成されたものであり、その幅Lは、金属粒子7の粒子径の1/5以上、特に2/5以上であることが望ましい。
【0017】
上記のネック部の幅Lが金属粒子径の1/5よりも小さいと、配線回路層4とバイアホール導体5との十分に強固な接続ができずに、ヒートサイクルやヒートショック等により、配線回路層4とバイアホール導体中の金属粒子との接触部分が不安定となる結果、配線回路層4とバイアホール導体間の抵抗が大きくなる場合がある。
【0018】
また、金属層8中の金属粒子7とバイアホール導体中の銅含有金属粒子6も、前記金属粒子7と銅含有金属粒子6中の金属成分を含む合金からなるネック部Bによって接合されている。このようなネック部A、Bの成長によって、銅を主体とする配線回路層4とバイアホール導体5中の金属粒子6とを金属層8を介して機械的に強固に且つ電気的に低抵抗で接続することができる。
【0019】
また、本発明によれば、上記のネック部Aおよびネック部Bは、いずれもAg、Al、Au、Cd、Cr、Ni、Pb、Sn、Th、Ti、Tl、ZnおよびZrの群から選ばれる少なくとも1種の金属と銅との合金からなるものである。
【0020】
上記金属群は、銅との低融点合金を形成することから、後述するパルス電流の印加によって、部分的な焼結が進行して強固なネック部を容易に形成することができるとともに、有機樹脂を含有する絶縁層に対して悪影響を与えることのない条件であってもネックの成長を助長することができる。
【0021】
バイアホール導体5内の金属粒子6は、少なくとも銅を含有する金属粒子であって、例えば、銅粉末、銅粉末表面に他の金属が被覆された被覆銅粉末、銅と他の金属との合金粉末などが使用できるが、銅の酸化防止の上では、銀被覆銅粉末が最も望ましい。また、この金属粒子の平均粒径が3〜10μm、特に3〜7μm、最適には3〜5μmであることが必要であり、平均粒径が3μmよりも小さいか、あるいは10μmを超えると、いずれも導体ペーストの印刷性およびバイアホールへの充填性が悪くなり、バイアホール導体の金属粉末の充填密度が低下することにより、抵抗が高くなってしまう。
【0022】
なお、絶縁層2は、絶縁材料としての電気的特性、耐熱性、および機械的強度を有する熱硬化性樹脂、例えば、アラミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、フッ素樹脂、フェニレンエーテル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂等、単独または組み合わせで含む。
【0023】
また、上記の絶縁層2中には、絶縁基板あるいは配線基板全体の強度を高めるために有機樹脂に対してフィラーを複合化させることもできる。有機樹脂と複合化されるフィラーとしては、SiO、Al、ZrO、TiO、AlN、SiC、BaTiO、SrTiO、ゼオライト、CaTiO、ほう酸アルミニウム等の無機質フィラーが好適に用いられる。また、ガラスやアラミド樹脂からなる不織布、織布などに上記樹脂を含浸させて用いてもよい。なお、有機樹脂とフィラーとは、体積比率で15:85〜50:50の比率で複合化されるのが適当である。これらの中でも、絶縁層の加工性、強度等の点で、エポキシ樹脂、イミド樹脂、フェニレンエーテル樹脂と、シリカまたはアラミド不織布との混合物であることが最も望ましい。
【0024】
本発明の配線基板は、例えば、具体的に以下の方法によって作製される。まず、図3に示すように、非硬化または半硬化の軟質状態の絶縁層10に対して、所定の箇所にバイアホール11を形成する(図3(a))。
【0025】
この絶縁層10は、熱硬化性有機樹脂、または熱硬化性有機樹脂とフィラーなどの組成物を混練機や3本ロールなどの手段によって十分に混合し、これを圧延法、押し出し法、射出法、ドクターブレード法などによってシート状に成形する。そして、所望により熱処理して熱硬化性樹脂を半硬化させる。半硬化には、樹脂が完全硬化するに十分な温度よりもやや低い温度に加熱する。
【0026】
また、バイアホールの形成は、ドリル、パンチング、サンドブラスト、あるいは炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、及びエキシマレーザ等の照射による加工など公知の方法が採用される。
【0027】
次に、上記の絶縁層10のバイアホール11内に、少なくとも銅を含有する平均粒径が3〜10μmの金属粉末を含む導体ペーストを充填してバイアホール導体12を形成する(図3(b))。
【0028】
また、バイアホール内に充填する金属ペーストは、銅粉末、銀粉末、銀被覆銅粉末、銅銀合金などの、平均粒径が3〜10μm、特に3〜7μm、最適には3〜5μmの低抵抗金属粉末と、粉末100重量部に対して樹脂結合剤を2重量部以下、特に0.05〜1重量部の割合で含み、さらには、適当な溶剤等を含む。
【0029】
また、場合によっては、適当な硬化剤を含む場合もある。金属粉末の平均粒径が3μmよりも小さいと、金属粉末同士の接触抵抗が増加してバイアホール導体の抵抗が高くなる傾向にあり、10μmを越えるとバイアホール導体の低抵抗化が難しくなる傾向にある。導体ペースト中の溶剤としては、用いる結合用有機樹脂が溶解可能な溶剤であればよく、例えば、イソプロピルアルコール、テルピネオール、2−オクタノール、ブチルカルビトールアセテート等が用いられる。
【0030】
上記の導体ペースト中の樹脂結合剤としては、前述した種々の絶縁層を構成する有機樹脂の他、セルロースなども使用される。この有機樹脂は、前記金属粉末同士を互いに接触させた状態で結合するとともに、金属粉末を絶縁シートに接着させる作用をなしている。この有機樹脂は、金属ペースト中において、2重量部を越えると金属粒子間に樹脂が介在することになり粉末同士を十分に接触させることが難しくなり、バイアホール導体の抵抗が大きくなるためである。
【0031】
次に、形成したバイアホール導体12の両端に、Ag、Al、Au、Cd、Cr、Ni、Pb、Sn、Th、Ti、Tl、ZnおよびZrの群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する導体ペーストを印刷して金属層13を被着形成する(図3(c))。この金属層13の形成方法としては、ペーストでの印刷、メッキ、金属ボールの埋込み等により形成することができる。
【0032】
この時の金属層13の厚みはバイアホール導体長さの1〜30%が適当である。これは、30%を超えると、Ag等の金属自体の抵抗が銅よりも高いことからバイアホール導体全体の抵抗が高くなる恐れがあるためである。
【0033】
次に、絶縁層10の金属層13を被着形成したバイアホール導体12端部に銅を主体とする配線回路層14を形成する(図3(d))。配線回路層14の形成は、1)絶縁層の表面に銅箔を貼り付けた後、エッチング処理して回路パターンを形成する方法、2)転写フィルム表面に銅箔を貼り付け、銅箔をエッチング処理して回路パターンを形成した後、この銅箔からなる配線回路層を絶縁層表面に転写させる方法等が好適に採用される。
【0034】
その後、圧力を印加して、金属層13及び配線回路層14を絶縁層10表面に埋め込むとともに、配線回路層14とバイアホール導体12間にパルス電流を印加して、配線回路層14とバイアホール導体12との接触部分を溶接する(図3(e))。
【0035】
配線回路層14とバイアホール導体12間にパルス電流を印加すると、配線回路層14とバイアホール導体12間に、前記Ag、Al、Au、Cd、Cr、Ni、Pb、Sn、Th、Ti、Tl、ZnおよびZrの群から選ばれる少なくとも1種の金属を主体とする金属層13が介在していることから、銅を主体とする配線回路層14と金属層13との接触部、および金属層13とバイアホール導体12とが、いわゆる放電焼結して、配線回路層14と金属層13、金属層13とバイアホール導体12中の各金属粒子間の接触部には、図2に示したように、Ag、Al、Au、Cd、Cr、Ni、Pb、Sn、Th、Ti、Tl、ZnおよびZrの群から選ばれる少なくとも1種の金属と銅を含む合金によるネック部が成長し、配線回路層14とバイアホール導体12とを金属層13を介して、強固に且つ導電性を妨げる介在物なしに接続することが可能になり、この結果、通電加熱のみでは達成されなかった低抵抗の配線回路層とバイアホール導体との強固で高信頼性の接続構造を、その周辺の絶縁層に悪影響を及ぼすことなく、形成することができるのである。
【0036】
このパルス電流の印加は、配線回路層14と金属層13、あるいは金属層13とバイアホール導体12中の各金属粒子間のネックの幅が平均で金属粒子粒径の1/5以上、特に2/5以上となるように電流を印加することが必要である。
【0037】
かかる観点から、パルス電流の印加は、印加するパルス電流の最適条件としては、電流密度が1〜2000A/cm、パルス幅が0.01〜1000msec.の条件が良好に用いられ、電流密度が1A/cmより低いと、溶接されずに金属粒子間の界面に存在する酸化膜や樹脂の除去が難しく、また2000A/cmを越えると、部分的に発熱が起こり絶縁基板を傷める場合があるためである。また、望ましくは、このパルス電流の印加は、パルス列におけるパルス間隔が0.01〜1000msec、印加時間が5秒〜5分間、特に10秒〜1分間が望ましい。なお、パルス電流の印加は、配線層が形成された絶縁層に対して、平板電極を10kg/cm以上の圧力で押し当てて行うことが望ましい。
【0038】
また、パルス電流の1パルスの波形は、矩形波であることが望ましい。正弦波等も用いられるが矩形波が最も効果的である。また、パルス電流が、直流パルスであることが望ましい。それは、正弦波よりも矩形波のほうが、粒子間の放電が起こりやすく、表面の清浄効果が高く、パルス電流は交流よりも直流のほうが一旦清浄された粒子表面に汚れ等が付着しにくいためである。
【0039】
さらに、上記パルス電流の印加の後に、配線層に通電により加熱処理を施すことにより、さらに配線層の低抵抗化を図ることができる。通電処理は、電流密度1〜4000A/cmの直流、交流でもよく、通電による加熱温度は100〜350℃の範囲が適当である。この時の温度が100℃よりも低いと、電気抵抗を下げる効果が小さく、350℃を越えると絶縁層や配線回路層を構成する樹脂が分解する場合がある。この通電加熱によって、金属粒子間の接点が発熱し粉末同士の結合力をさらに高めることができる。
【0040】
また、この通電加熱は、前述したパルス電流の印加と同時に行うことができる。具体的には、直流のパルス電流と直流電流とをあわせた波形、つまり直流電流波形の上部が矩形波となった電流を印加すると通電加熱による作用と、パルス電流印加による放電溶接作用とを同時に付加することができる。
【0041】
上記のようにしてパルス電流を印加した後に、絶縁層10中の樹脂が完全に硬化するに十分な温度で熱処理することにより、単一の配線基板を作製することができる。また、配線基板を作製する場合には、上記のようにして、配線回路層およびバイアホール導体を形成した後、パルス電流の印加処理により溶接処理を施した未硬化あるいは半硬化状態の単一配線基板を複数層積層圧着した後、絶縁層中に含まれる熱硬化性樹脂が十分に硬化する温度で加熱して完全硬化させることにより多層配線基板を作製することができる。
【0042】
なお、上記の製造方法においては、配線回路層と絶縁層との密着強度を高める上では、絶縁層の配線回路層の形成箇所および/または転写シート表面の配線回路層表面の表面を0.1μm以上、特に0.3μm〜3μm、最適には0.3〜1.5μmに粗面加工することが望ましい。また、バイアホール導体の両端を配線回路層によって封止する上で、配線回路層は、5〜40μmの厚さの銅を主体とする金属箔からなることが望ましい。
【0043】
【実施例】
平均粒径が約5μmの略球形の酸化珪素70体積%、フェニレンエーテル樹脂30体積%を用いてスラリーを調整し、このスラリーを用いてドクターブレード法によってキャリアシート上に塗布し、これを50℃の温度で60分間乾燥して厚み120μmの絶縁層を完成した。
【0044】
次に、前記絶縁層にNCパンチングにより直径が0.1mmのスルーホールを形成し、そのホール内に平均粒径5.3μm、銀を銅100重量部に対して3重量部含有する銀被覆銅粉末99.8重量部、セルロース0.2重量部、溶剤として2−オクタノール10重量部とを混合して調製した導電性ペーストを充填してバイアホール導体を形成した。さらに、表1、表2に示す平均粒径が3〜5μmの金属粉末を含有するペーストをそのバイアホール導体の両端に25μm(バイアホール導体長さの17%相当)の厚みで印刷した。
【0045】
そして、この絶縁層のバイアホール導体を挟む表裏面に、予め、銅箔からなる配線回路層が形成された転写フィルムをそれぞれ積層して、50kg/cmの圧力で圧着した後、転写フィルムを剥がして配線回路層を転写させた。その後、120℃に加熱してペースト中の有機溶剤を揮散除去した後、さらに200℃で1時間加熱して絶縁層を完全に硬化させて配線基板を得た。
【0046】
得られた配線基板に対して、バイアホール導体の両端の配線回路層間に表1に示す電流密度およびパルス幅で30秒間パルス電流を印加した。なお、パルス間間隔はパルス幅と同じにした。また、一部の基板に対しては、さらに、表1、表2に示す条件で通電加熱を行った。
【0047】
そして、これらの処理後の配線基板における配線回路層の初期抵抗値を測定した。また、85℃、85%相対湿度において1000時間経過後の導通抵抗(テスト1)と、95%相対湿度中、−55〜+125℃の温度範囲において1000サイクル後の導通抵抗(テスト2)を測定し、それぞれの条件における抵抗変化率〔(1000サイクル後の抵抗−初期抵抗)/初期抵抗〕×100(%)を計算し表1、表2に示した。
【0048】
また、配線回路層の銅箔と、バイアホール導体との接触状況を走査型電子顕微鏡写真により観察し、溶接によるネックの成長の有無と、そのネック幅/金属粒子径の平均を求め、表1、表2に示した。さらに、X線マイクロアナライザーによって配線回路層と金属層との界面におけるネック部の金属成分を検査しその結果を表1、表2に示した。
【0049】
【表1】
Figure 0003595152
【0050】
【表2】
Figure 0003595152
【0051】
表1、表2の結果によれば、配線回路層とバイアホール導体との間に、Ag、Al、Au、Cd、Cr、Ni、Pb、Sn、Th、Ti、Tl、ZnおよびZrの群から選ばれる少なくとも1種の金属層を介在させて、パルス電流を印加することにより、配線回路層と金属層との接触部分、即ち、銅箔と金属粒子との接触部にネック幅/金属粒子粒径の比率が1/5以上の互いの金属の合金からなるネック部を形成した試料は、配線回路層−バイアホール導体−配線回路層間の初期抵抗を4×10−5Ω・cm以下まで低下させることができた。
【0052】
しかも、サイクル試験においても抵抗の変化が5%以下の優れた耐久性を示し、長期にわたり接続信頼性の高いことが確認された。また、それらの試料においては、金属層とバイアホール導体中の各金属粒子間もバイアホール導体中の金属粒子の粒径に対して1/5以上のネック部が形成されていることも確認した。
【0053】
これに対して、パルス電流の印加を行わない試料No.7、9、15、17、20、22、24、26、28、32、37、38、40では、いずれも初期抵抗が4×10−5Ω・cmよりも高く、しかも熱サイクル試験における抵抗変化が5%を超えるものであり、配線回路層とバイアホール導体との接続信頼性に欠けるものであった。
【0054】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の配線基板によれば、配線回路層とバイアホール導体中の金属粒子間の接触部をネック部の形成によって強固に接続することができるために、配線回路層の比抵抗を大幅に低減することができるとともに、ヒートサイクルやヒートショック等の熱変形や振動による接続信頼性の低下を抑制することができる。これにより、配線層の微細化と高密度化に十分に対応することができ、超微細化、精密化の要求の応えうることのできる高信頼性の多層配線板を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配線基板の構造を説明するための概略断面図である。
【図2】本発明における配線回路層とバイアホール導体との接触部分の要部拡大断面図である。
【図3】本発明における配線基板の製造工程を説明する工程図である。
【符号の説明】
1 配線基板
2 絶縁層
3 絶縁基板
4 配線回路層
5 バイアホール導体
6 金属粒子
7 金属粒子
8 金属層
9 銅箔
A,B ネック部

Claims (5)

  1. 有機樹脂を含有する絶縁基板と、該絶縁基板表面および/または内部に配設された銅を主体とする金属箔からなる配線回路層と、前記配線回路層間を電気的に接続するために設けられ、少なくとも銅を含有する平均粒径が3〜10μmの金属粉末を充填してなるバイアホール導体を具備する配線基板において、前記バイアホール導体中の銅を含有する金属粉末が、Ag、Al、Au、Cd、Cr、Ni、Pb、Sn、Th、Ti、Tl、ZnおよびZrの群から選ばれる少なくとも1種の金属粉末を主体とする金属層を介して前記配線回路層と電気的に接続してなり、前記金属層中の金属粒子と前記配線回路層が、前記金属層中の主体となる金属と前記配線回路層の金属との合金からなるネック部によって結合してなることを特徴とする配線基板。
  2. 前記少なくとも銅を含有する金属粉末が、銀を被覆した銅粉末からなる請求項1記載の配線基板。
  3. 有機樹脂を含有する絶縁層に形成したバイアホール内に、銅を含有する平均粒径3〜10μmの金属粉末を含む第1の導体ペーストを充填してバイアホール導体を形成する工程と、Ag、Al、Au、Cd、Cr、Ni、Pb、Sn、Th、Ti、Tl、ZnおよびZrの群から選ばれる少なくとも1種の金属を含む第2の導体ペーストを前記バイアホール導体端部に被着する工程と、前記第2の導体ペーストが被着された前記バイアホール導体端部に銅を主体とする配線回路層を形成する工程と、前記配線回路層と前記バイアホール導体間にパルス電流を印加して、前記配線回路層と前記第2の導体ペースト中の金属粒子との接触部分に、前記Ag、Al、Au、Cd、Cr、Ni、Pb、Sn、Th、Ti、Tl、ZnおよびZrの群から選ばれる少なくとも1種の金属と前記配線回路層中の金属との合金からなるネック部を形成する工程と、を具備することを特徴とする配線基板の製造方法。
  4. 印加するパルス電流の電流密度が1〜2000A/cm2、パルス幅が0.01〜1000msec.であることを特徴とする請求項3記載の配線基板の製造方法。
  5. 前記少なくとも銅を含有する金属粉末が、銀を被覆した銅粉末からなる請求項3記載の配線基板の製造方法。
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