JP3574738B2 - 配線基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも有機樹脂を含む絶縁基板の表面および内部に配線回路層と金属粉末を充填して形成したバイアホール導体を具備する、半導体素子収納用パッケージなどに適した配線基板に関するものであり、特に、配線回路層とバイアホール導体との接続信頼性の向上に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来より、多層配線基板、例えば、半導体素子を収納するパッケージに使用される多層配線基板として、アルミナ等の絶縁層とW、Moなどの高融点金属からなる配線層とを具備したセラミック多層配線基板が多用されているが、このようなセラミック配線基板は硬くて脆い性質を有することから、製造工程または搬送工程においてセラミックの欠けや割れ等が発生しやすく、また、焼結前のグリーンシートにメタライズペーストを印刷後にシートを積層して焼結する場合、焼結により得られる基板に反り等の変形や寸法のばらつき等が発生しやすいという問題があり、回路基板の超高密度化やフリップチップ等のような基板の平坦度の厳しい要求に対して十分に対応できないという問題があった。
【0003】
そこで、最近では、有機樹脂を含む絶縁層表面に銅箔を接着した後、これをエッチングして微細な回路を形成した基板や、銅などの金属粉末を含むペーストを絶縁層に印刷して配線層を形成した後、これを積層しあるいは積層後に、所望位置にマイクロドリルやパンチング等によりバイア用の孔明けを行い、そのバイア内壁にメッキ法により金属を付着させて配線層を接続して多層化したプリント配線基板が提案されている。また、絶縁層としては、その強度を高めるために、樹脂に対して、粉末状あるいは繊維状の無機質フィラーを分散させた基板も提案されており、これらの複合材料からなる絶縁層上に多数の半導体素子を搭載したマルチチップモジュール(MCM)等への適用も検討されている。
【0004】
このようなプリント配線板の多層化、配線の超微細化、精密化の要求に対応して、有機樹脂を含む絶縁層の表面に銅などの低抵抗金属を含む導体ペーストで回路パターンを印刷して配線回路層を形成したり、バイアホール導体をホール内に金属粉末を含む導体ペーストを充填して形成した高密度に多層化された配線基板を作製する試みが行われている。
【0005】
この導体ペーストの充填によってバイアホール導体を形成する方法は、従来のメッキ法によりスルーホール導体を形成するのに対して、バイアホール導体を任意の箇所に設けることができるために、特に高密度配線化に適した方法として注目されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、低抵抗金属を含む導体ペースト中には、絶縁層への印刷性およびホールへの充填性を高めるとともに、金属粉末を互いに結合させるために結合用樹脂を配合させており、しかも金属粉末表面には、高抵抗の酸化膜が生成されやすいことから、金属粉末の接触界面には、樹脂や酸化膜が介在するために、通常の銅箔や銅メッキにより形成された回路またはスルーホール導体よりも抵抗値が高いという問題点があった。
【0007】
それに加えて、絶縁基板が有機樹脂を含有している関係上、銅や銀等の低抵抗金属を焼結できるような温度で処理することができないために、配線とバイアホール導体間の接続信頼性が低く、ヒートサイクルやヒートショック等による熱変形さらには振動により、配線回路層とバイアホール導体間との導体抵抗が増大するという問題があるのが現状である。また、この樹脂分を加熱分解したり、通電加熱を行うことなど様々な改良も行われているが、これらの加熱処理においても十分な効果が得られておらず、場合によっては、通電加熱によっては通電時に発生する熱によって絶縁層に対して悪影響を及ぼすなどの問題があった。
【0008】
従って、本発明は、配線回路層と導体ペーストを充填して形成したバイアホール導体との接続信頼性に優れた配線基板を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の課題に対して検討を重ねた結果、配線基板における配線回路層と、金属粉末を充填して形成したバイアホール導体中の金属粉末とを、少なくともインジウム(In)あるいは錫(Sn)を含有する低融点金属によって結合することにより、配線回路層とバイアホール導体間の接続抵抗を低下させることができるとともに、過酷な環境下において接続信頼性を向上できることを知見した。
【0010】
即ち、本発明の配線基板は、少なくとも有機樹脂を含有する絶縁基板と、該絶縁基板表面および内部に被着形成された金属箔からなる配線回路層と、前記配線回路層間を電気的に接続するために設けられ、少なくとも金属粉末を充填してなるバイアホール導体を具備する配線基板において、前記配線回路層と前記バイアホール導体との接続部の前記金属粉末間に、少なくともインジウム(In)あるいは錫(Sn)を含有する低融点金属層を前記バイアホール導体長さの1〜30%の厚みで形成したことを特徴とするものであり、さらに、前記バイアホール導体が、銅粉末、銀粉末、銀−銅合金粉末、銀被覆銅粉末のうちのいずれか1種からなる平均粒径が3〜10μmの金属粉末を充填してなることを特徴とするものである。
【0011】
【作用】
従来の配線回路層と金属粉末の充填によって形成されたバイアホール導体との接続は、バイアホール導体中の金属粉末と配線回路層との点接触によるものであり、両者間の接触抵抗が大きく、しかも外部からの応力等によって、その接続状態が変化しやすいために、抵抗が変化するなどの問題がある。
【0012】
これに対して、本発明によれば、配線回路層とバイアホール導体中の金属粉末を低融点金属により結合することにより、配線回路層とバイアホール導体中の金属粉末とが低融点金属の介在による3次元的な面接触によって接続されるために、両者間の接触抵抗を大幅に低減できるとともに、配線回路層とバイアホール導体とが強固に接合されているために、熱変形や振動によっても両者間の接続状態が変化することがないために、配線基板における回路としての信頼性を大幅に高めることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の配線基板を図面をもとに説明する。
図1は、本発明の配線基板の一実施態様として多層配線基板を説明するための概略断面図である。図1に示すように、本発明の多層配線基板1は、有機樹脂を含む複数の絶縁層2a〜2dを積層してなる絶縁基板3の表面および内部に配線回路層4が形成され、さらに、異なる層の配線回路層4を電気的に接続するためのバイアホール導体5とを具備するものであり、バイアホール導体5は、少なくとも金属粉末を充填して形成されたものからなる。本発明における大きな特徴は、バイアホール導体5中の金属粉末と配線回路層4との接続部に少なくともインジウム(In)あるいは錫(Sn)を含有する低融点金属層を形成したことを特徴とする。
【0014】
そこで、図2にバイアホール導体5と配線回路層4との接続部の拡大図を示した。図2に示すように、例えば、配線回路層4が金属箔6からなる場合、金属箔6とバイアホール導体5中の金属粉末7との接続は、金属粉末7と金属箔6との点接触によるものであるが、本発明によれば、金属粉末7間の空隙部に低融点金属8が充填された低融点金属層9を形成することにより、金属粉末7と金属箔6との接続が、前記点接触のみならず、低融点金属8を介した3次元的な面接触により接合されている。
【0015】
このような接合によって、金属箔からなる配線回路層4とバイアホール導体5とを強固に且つ低い接触抵抗で接続することができる。特に、本発明によれば、金属箔からなる配線回路層4とバイアホール導体5間との初期抵抗を後述する実施例から明らかなように、8×10−5Ω−cm以下まで低減することができる。
【0016】
配線回路層4とバイアホール導体5との間に低融点金属層9が存在しないと、配線回路層4とバイアホール導体5との強固な接続ができずに、ヒートサイクルやヒートショック等により、配線回路層4とバイアホール導体5中の金属粉末との接触部分が不安定となる結果、配線回路層4とバイアホール導体5間の抵抗が大きくなるという問題が発生する。
【0017】
また、本発明によれば、前記低融点金属層9は、バイアホール導体の前記配線回路層との結合端部からバイアホール導体長さの1〜30%の深さまで存在することが重要である。これは、低融点金属層9がバイアホール導体の全体に存在する場合、低融点金属を加熱により溶融処理した際に、溶融した低融点金属による表面張力の発生によってバイアホール内の金属粉末を含む導体が収縮してしまい、その結果、バイアホール導体5と配線回路層4の接続部に空隙が発生してしまうためである。なお、前記低融点金属層9の厚みは、バイアホール導体の断面における平均厚みであり、バイアホール導体長さとは、バイアホール導体5を両側から挟持する配線回路層4間の距離である。
【0018】
従って、本発明によれば、低融点金属層9の厚みがバイアホール導体長さの1%より小さいと、低融点金属層9の形成による作用効果が十分に発揮されず、30%よりも厚いと前述したようにバイアホール導体の収縮によってバイアホール導体5と配線回路層4の接続不良が生じるためである。
【0019】
本発明において、配線回路層4は、銅、アルミニウム、銅を含む合金などからなる金属箔が金属粉末を充填して形成されたバイアホール導体5を封止する上で望ましいが、その他、配線回路層4をメッキ膜で形成してもその膜の緻密性から金属箔と同様な作用を有する。
【0020】
バイアホール導体5中に充填される金属粉末としては、銅粉末、銀粉末、銀被覆銅粉末、銅銀合金のうちのいずれかからなる平均粒径が3〜10μm、特に3〜7μm、最適には3〜5μmの低抵抗の金属粉末が望ましい。
【0021】
本発明における絶縁基板3を形成する絶縁層2は、絶縁材料としての電気的特性、耐熱性、および機械的強度を有する熱硬化性樹脂、例えば、アラミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、フッ素樹脂、フェニレンエーテル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂等が、単独または組み合わせで含む。
【0022】
また、上記の絶縁層2中には、絶縁基板あるいは配線基板全体の強度を高めるために、有機樹脂に対してフィラーを複合化させることもできる。有機樹脂と複合化されるフィラーとしては、SiO2 、Al2 O3 、ZrO2 、TiO2 、AlN、SiC、BaTiO3 、SrTiO3 、ゼオライト、CaTiO3 、ほう酸アルミニウム等の無機質フィラーが好適に用いられる。また、ガラスやアラミド樹脂からなる不織布、織布などに上記樹脂を含浸させて用いてもよい。なお、有機樹脂とフィラーとは、体積比率で15:85〜50:50の比率で複合化されるのが適当である。これらの中でも、絶縁層の加工性、強度等の点で、エポキシ樹脂、イミド樹脂、フェニレンエーテル樹脂と、シリカまたはアラミド不織布との混合物であることが最も望ましい。
【0023】
図1に示した本発明の多層配線基板は、例えば、具体的に以下の方法によって作製される。まず、図3に示すように、非硬化または半硬化の軟質状態の絶縁層10に対して、所定の箇所にバイアホール11を形成した後(図3(a))、そのホール11内に金属粉末を含む導体ペーストを充填してバイアホール導体12を形成する(図3(b))。
【0024】
この絶縁層10は、前述したような熱硬化性有機樹脂、または熱硬化性有機樹脂とフィラーなどの組成物を混練機や3本ロールなどの手段によって十分に混合し、これを圧延法、押し出し法、射出法、ドクターブレード法などによってシート状に成形する。また、所望により熱処理して熱硬化性樹脂を半硬化させる。半硬化には、樹脂が完全硬化するのに十分な温度よりもやや低い温度に加熱すればよい。
【0025】
また、バイアホール11の形成は、ドリル、パンチング、サンドブラスト、あるいは炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、及びエキシマレーザ等の照射による加工など公知の方法が採用される。
【0026】
また、バイアホール11内に充填する金属ペーストは、銅粉末、銀粉末、銀被覆銅粉末、銅銀合金のうちのいずれかの平均粒径が3〜10μm、特に3〜7μm、最適には3〜5μmの低抵抗の金属粉末と、粉末100重量部に対して樹脂結合剤を2重量部以下、特に0.05〜1重量部の割合で含み、さらには適当な溶剤等を含む。また、場合によっては、適当な硬化剤を含む場合もある。
【0027】
前記金属粉末の平均粒径が3μmよりも小さいと、金属粉末同士の接触抵抗が増加してバイアホール導体の抵抗が高くなる傾向にあり、10μmを越えるとバイアホール導体の低抵抗化が難しくなる傾向にある。
【0028】
導体ペースト中の樹脂結合剤としては、前述した種々の絶縁層を構成する有機樹脂の他、セルロースなども使用される。この有機樹脂は、ホール内への充填性を高めるとともに、前記金属粉末同士および金属粉末と絶縁層とを結合する作用をなしている。この有機樹脂は、金属ペースト中において、2重量部を越えると金属粉末間に樹脂が介在することになり粉末同士を十分に接触させることが難しくなり、バイアホール導体の抵抗が大きくなるためである。なお、場合によっては、熱処理によって樹脂結合剤を分解除去することも可能である。
【0029】
導体ペースト中の溶剤としては、用いる結合用有機樹脂が溶解可能な溶剤であればよく、例えば、イソプロピルアルコール、テルピネオール、2−オクタノール、ブチルカルビトールアセテート等が用いられる。
【0030】
次に、図3(c)に示すように、形成したバイアホール導体12の両端に、インジウム(In)あるいは錫(Sn)を含む低融点金属を塗布して低融点金属層13を形成する。この低融点金属層13の形成方法としては、直接バイアホール導体12上に、低融点金属を含むペーストを印刷塗布するか、低融点金属のメッキ膜を形成するか、あるいは低融点金属からなるボールをバイアホール導体12の端部に埋込むことにより形成することができる。
【0031】
この時、低融点金属層13の厚みは、その後の工程によって低融点金属をバイアホール導体内に含浸させた時の厚みが、バイアホール導体12長さの1〜30%となるような厚みに制御される。
【0032】
次に、図3(d)に示すように、絶縁層10の少なくともバイアホール導体12形成部を含む表面に、配線回路層14を形成する。配線回路層14の形成は、1)絶縁層10の表面に金属箔を貼り付けた後、エッチング処理して回路パターンを形成する方法、2)絶縁層10表面にレジストを形成して、メッキにより形成する方法、3)転写フィルム表面に金属箔を貼り付け、金属箔をエッチング処理して回路パターンを形成した後、この金属箔からなる配線回路層14を絶縁層10表面に転写させる方法、4)導体ペーストをスクリーン印刷等の方法で印刷する方法等が挙げられる。
【0033】
なお、配線回路層14と絶縁層10との密着強度を高める上では、絶縁層10の配線回路層14の形成箇所および/または転写フィルム表面の配線回路層14表面を0.1μm以上、特に0.3μm〜3μm、最適には0.3〜1.5μmに粗面加工することが望ましい。また、バイアホール導体12の両端を封止する上では、配線回路層14は、厚みが5〜40μmの金属箔からなることが望ましい。
【0034】
また、配線回路層14を前記3)の転写法によって形成する場合には、転写前の金属箔からなる配線回路層のバイアホール導体12との接続箇所に、低融点金属を含むペーストを印刷塗布したり、低融点金属のメッキ膜を形成し、その後、配線回路層14をバイアホール導体12上に転写させることにより、低融点金属層13と配線回路層14とを同時に形成することもできる。
【0035】
また、所望により、配線回路層14とバイアホール導体12間に圧力を印加して、図3(e)に示すように、配線回路層14、低融点金属層13を絶縁層10内に埋め込み処理を行うこともできる。
【0036】
その後、絶縁層中に含まれる熱硬化性樹脂が十分に硬化する温度で加熱して完全硬化させることにより単層の配線基板を作製することができる。
【0037】
また、多層化する場合には、図3(a)〜(d)あるいは(a)〜(e)と同様な方法によって、バイアホール導体、低融点金属層および配線回路層を形成した絶縁層を複数作製し、それらを位置合わせして積層圧着した後、絶縁層中に含まれる熱硬化性樹脂が十分に硬化する温度で加熱して完全硬化させることにより図1の多層配線基板を作製することができる。
【0038】
本発明によれば、上記における完全硬化処理時の加熱処理によって、配線回路層14とバイアホール導体12中の金属粉末間に配設した低融点金属層13が溶融し、結果として、図2に示すように、バイアホール導体5中の金属粉末7間の間隙中に侵入して、配線回路層と金属粉末とを結合することができる。
【0039】
なお、低融点金属の融点は、上記の製造方法を考慮して、絶縁層中の熱硬化性樹脂の硬化温度以下の温度で溶融可能であることが望ましく、より具体的には融点が150〜300℃の範囲が適当である。
【0040】
また、低融点金属層の溶融処理は、熱硬化性樹脂の完全硬化処理の他、前記図3(c)の低融点金属層13を形成した後、あるいは図3(d)の低融点金属層13の表面に配線回路層14を形成して単層の配線基板を作製し、積層する前に熱処理を施してもよい。
【0041】
かかる観点から、本発明において用いられる低融点金属は、少なくともインジウム(In)あるいは錫(Sn)を含有するものであるが、具体的には、インジウム単体、錫単体の他に、鉛、金、銀、銅、ビスマスから選ばれる少なくとも1種の金属と複合化することができ、例えば、Pb−Sn、Ag−Cu−Sn、Ag−Bi−Cu−Sn、Ag−Cu−In−Sn等が好適である。
【0042】
上記のように、本発明においては、配線回路層とバイアホール導体との接続構造において、所定厚みの低融点金属層を形成して、バイアホール導体中の金属粉末と配線回路層とを低融点金属によって結合することにより、その周辺の絶縁層に悪影響を及ぼすことなく、配線回路層とバイアホール導体との接続抵抗の低減とともに、強固で高信頼性の高い接続構造を形成することができるのである。
【0043】
【実施例】
実施例1
平均粒径が約5μmの略球形の酸化珪素70体積%、フェニレンエーテル樹脂30体積%を用いてスラリーを調製し、このスラリーを用いてドクターブレード法によってキャリアシート上に塗布し、これを50℃の温度で60分間乾燥して厚み120μmの絶縁層を完成した。
【0044】
次に、前記絶縁層に、NCパンチングにより直径が0.1mmのスルーホールを形成し、そのホール内に平均粒径5.8μmの銅粉末、平均粒径6.1μmの銀20重量%−銅80重量%の銀銅合金粉末、平均粒径が5.3μmの銀を3重量%の割合で銅粉末表面に被覆した銀被覆銅粉末のいずれかの粉末99.8重量部と、セルロース0.2重量部、溶剤として2−オクタノール10重量部とを混合して調製した導電性ペーストを充填してバイアホール導体を形成した。
【0045】
一方、表1に示す各種低融点金属組成物99.8重量部、セルロース0.2重量部、溶剤として2−オクタノール10重量部とを混合して調製した低融点金属を含有するペーストを調製した。
【0046】
【表1】
【0047】
そして、この低融点金属含有ペーストをバイアホール導体の両端に25μmの厚みで印刷塗布した。そして、この絶縁層のバイアホール導体を挟む表面および裏面に、予め、銅箔からなる配線回路層が形成された転写フィルムをそれぞれ積層して、50kg/cm2 の圧力で圧着した後、転写フィルムを剥がして、配線回路層を転写させた。
【0048】
その後、その積層物を120℃に加熱してペースト中の有機溶剤を揮散除去した後、さらに200℃で1時間加熱して低融点金属を溶融させるとともに、絶縁層を完全に硬化させて、単層の配線基板を作製した。得られた配線基板の低融点金属層の厚みは、バイアホール導体長さの20%にあたるものであった。
【0049】
そして、これらの処理後の配線基板における配線回路層の初期抵抗値を測定した。また、85℃、85%相対湿度において1000時間経過後の導通抵抗(テスト1)と、95%相対湿度中、−55〜+125℃の温度範囲において1000サイクル後の導通抵抗(テスト2)を測定し、それぞれの条件における(テスト後抵抗値/初期抵抗値)×100(%)で表される抵抗変化率を計算し表2に示した。
【0050】
【表2】
【0051】
表2の結果によれば、配線回路層とバイアホール導体との間にInおよびSnの群から選ばれる少なくとも1種の低融点金属を被着させた本発明試料は、配線回路層−バイアホール導体−配線回路層間の初期抵抗を10×10−5Ω−cm以下まで低下させることができ、しかも、サイクル試験において抵抗の変化が5%以下の優れた耐久性を示し長期にわたり接続信頼性の高いことが確認された。
【0052】
実施例2
実施例1の表2中の試料No.11、35の組み合わせにおいて、バイアホール導体と低融点金属層の厚みとの関係を表3に示すように種々変更し、実施例1と同様に評価を行った。
【0053】
【表3】
【0054】
その結果、低融点金属層の厚みがバイアホール導体長さの1%よりも小さい試料No.42、48では、低抵抗化およひ耐久性の効果が十分でなく、また、30%を越えた試料No.47、52では、逆に抵抗が増大した。この試料No.47、52について断面を観察した結果、バイアホール中の導体が収縮しており、バイアホール導体と配線回路層との界面に空隙が発生していることを確認した。
【0055】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の配線基板によれば、配線回路層とバイアホール導体中の金属粉末間を低融点金属で接合することにより、配線回路層とバイアホール導体との接続抵抗を大幅に低減することができるとともに、ヒートサイクルやヒートショック等の熱変形や振動による接続信頼性の低下を抑制することができる。これにより、配線層の微細化と高密度化に十分に対応することができ、超微細化、精密化の要求の応えうることのできる高信頼性の多層配線板を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配線基板の一実施態様として多層配線基板を説明するための概略断面図である。
【図2】図1の多層配線基板における配線回路層とバイアホール導体との接触部の拡大断面図である。
【図3】本発明における多層配線基板の製造工程を説明する工程図である。
【符号の説明】
1 多層配線基板
2a〜2d 絶縁層
3 絶縁基板
4 配線回路層
5 バイアホール導体
6 金属箔
7 金属粉末
8 低融点金属
9 低融点金属層
Claims (2)
- 少なくとも有機樹脂を含有する絶縁基板と、該絶縁基板表面および内部に被着形成された金属箔からなる配線回路層と、前記配線回路層間を電気的に接続するために設けられ、少なくとも金属粉末を充填してなるバイアホール導体を具備する配線基板において、前記配線回路層と前記バイアホール導体との接続部の前記金属粉末間に、少なくともインジウム(In)あるいは錫(Sn)を含有する低融点金属層を前記バイアホール導体長さの1〜30%の厚みで形成したことを特徴とする配線基板。
- 前記バイアホール導体が、銅粉末、銀粉末、銀−銅合金粉末、銀被覆銅粉末のうちのいずれか1種からなる平均粒径が3〜10μmの金属粉末を充填してなることを特徴とする請求項1記載の配線基板。
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