JP3594845B2 - 増肉プレス加工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は金属等の可塑性材料からなるワークの任意の部位を増肉する増肉プレス加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の増肉プレス加工方法としては、例えば特開昭 61−140327号公報に開示するものがある。この方法では、まず、図6(A)に示すような一定肉厚で板状に形成された板部から、図6(B)に示すような肉厚方向に湾曲し肉厚方向に一定長で突出する端部とをもつワークwを形成し、このワークwを、共に図示しないダイス及び押さえパンチで肉厚方向に加圧して端部を増肉する。この際、ダイス及び押さえパンチとして、ワークw上面と当接可能なパンチ支持面と、加圧中にワークw下面と当接可能なダイス支持面と、の間でワークwを挟持し、ダイス内周面には加圧前にワークw端部外側面との間に間隙を確保し、外方に突出する傾斜面を有する据え込パンチでワークw端部を加圧して、ワークの端部外側面が増肉されるようにされている。
【0003】
又、特開平6−218442号公報にも従来の増肉プレス加工方法が開示されている。この方法では、まず一定肉厚で板状に形成された平板状ワークを端部にテーパ面を成形する第1工程と、該テーパ面を内側にして深絞りをして肉厚方向に一定長で突出する端部を成形する第2工程と、該端部の外径より大径部のダイスと、端部の内径と同径で隅角の曲率半径が端部の隅角の曲率半径より小さい押さえパンチでとでワークを挟圧しながら、端部の上面を平坦な加圧面をもつ据え込パンチで加圧する第3工程と、からなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開昭 61−140327号公報記載の方法では、対象品を円筒容器に限定し、対象品の端面のみを増肉している。又、この方法では、端部の頂面が外方下がりのテーパ面となるため、後加工でこのテーパ面を削除して平坦面にしなければならず、手間がかかりコストも高くなる。また特開平6−218442号公報記載の方法では、対象品を円筒容器に限定し、対象品の端面のみを増肉している。この方法においては平板状ワーク端部にテーパ面を成形する工程が必要であり、金型の構成部品が多く、設備コストも高くなる。
本発明の課題は、上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、捲れ込みや亀裂を生じることなく、後加工でテーパ面を削除して平坦面とする必要がなく、平板状ワーク端部にテーパ面を成形する工程を必要とせず、金型の構成部品を単純化して、端面に限定せずに任意の部位を増肉加工することのできる増肉プレス加工方法を提供することにある。
本発明の別の課題は、対象品を円筒容器の増肉加工に限定せず任意の板状部材の増肉加工ができる増肉プレス加工方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、一定肉厚で板状に形成された平板状ワークを深絞りをして肉厚方向に一定長で突出する端部を成形する前工程と、加工後の該ワーク上方端部の外側部と同形の上方内側部を有しかつ深絞りされたワーク底外側内方部と当接可能な内方内側底面を有するダイスであって前記ワーク上方部外側部とワーク底内方外側部との間の成形後の中間部形状に合致する中間部内側形状を有するダイスと、加工後の該ワーク上方端部の外側部と同形の上方外側部を有しかつ深絞りされたワーク底内側内方部と当接可能な内方外側底面を有するパンチであって前記ワーク端部の上方部内側部とワーク底内方内側部との間の成形後の中間部形状に合致する中間部外側形状を有するパンチとで、前記ワークを挟圧して該ワーク上方端部の厚さ方向を規制しながら、前記ワーク上方端部の上面を平坦な加圧面をもつ据え込パンチで下方に加圧し、成形後のワークの中間部形状に合致するワークの中間部を増肉する本工程と、からなり、前記ダイスの中間部内側形状及び/又は押さえパンチの中間部外側形状は斜面又は曲面を有しかつワークとの間に間隙を有することを特徴とする増肉プレス加工方法を提供することにより上記課題を解決した。
【0006】
【作用】
本発明の方法では、前工程で深絞りをして肉厚方向に一定長で突出する端部を成形したワークを、押さえパンチ及びダイスで当初ワーク端部上方部を挟持して該ワーク上方端部の厚さ方向を規制しながら下方に加圧し、さらに押さえパンチ及びダイスでワーク底部内方を挟持した状態でさらに下方に加圧する。このときワークはワーク端部上方部とワーク底部内方との間の任意の部位において、押さえパンチ及びダイスとの間に間隙を確保している。そして、据え込パンチで下方に加圧中、ワークを外側へ成形しつつ据え込むことによってワークの拘束力を増して、ワーク端部上方部とワーク底内方との間の成形後の中間部形状に合致するようワーク中間部であるワーク端部外側中間・下方部及びそれに連なるワーク底部中間・外方部を増肉させる。その時、ダイスの中間部内側形状及び/又は押さえパンチの中間部外側形状は斜面又は曲面を有することによって捲れ込みや亀裂のない一定肉厚部から滑らかに増肉することができる。又、この方法では、金型の構成部品が少なく、設備コストが低い。従って、この方法によれば、捲れ込みや亀裂を生じることなく、かつ金型構造を単純化し、また端面に限定せずに任意の部位を増肉させることができる。
【0007】
さらに、前記ダイスの内方内側底面又は押さえパンチの内方外側底面内方に内側端面規制面を有し、対象品を円筒容器の増肉加工に限定せず任意の板状部材の増肉加工をすることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明を具体化した実施形態を図面を参照しつつ説明する。
「前工程」実施形態の増肉プレス加工方法では、まず、図6(A)に示すように、一定肉厚tで板状に形成されたワークwを使用し、図1及び図2に示すように、上ダイス 11A、パンチ12及び下ダイス 11Bを有する予備成形用金型を使用する。上ダイス 11A及び下ダイス 11Bは一体ものであってもよい。この予備成形用金型では、上ダイス 11A及び下ダイス 11BにキャビティC1が形成されており、キャビティC1にパンチ12が押し込まれることにより、ワークwは、図6(B)に示すように、一定肉厚tで板状に形成された板部W1と、一定肉厚tで板部W1から肉厚方向に湾曲し、肉厚方向に一定長lで突出する端部W2とをもつように成形される。
【0009】
「本工程」図3及び図4及び図5に示すように、上ダイス1A及び下ダイス1B、押さえパンチ2 及び据え込みパンチ3 を有する増肉用金型を用意する。上ダイス1A及び下ダイス1Bは一体ものであってもよい。上ダイス1Aは、成形後のワークw端部W2上方部Wa外側、ワーク端部中間・下方部Wb外側と合致する形状のダイス上方内側部 1Aa、内側中間・下方内側部 1Abを有する。下ダイス1Bは成形後のワーク底部外方・中間部Wc及びワーク底部内方部Wd外側と合致する上面 1Bc 、1Bd を有する。同様に、押さえパンチ2 は成形後のワーク形状に合致する中間・下方外側部2b及びそれに連なる底部外方・中間部2c、底部内方部2d及び内側端面規制面2fを有する。据え込みパンチ3 はワーク端部上面Weと当接可能な底面3eを有する。内側端面規制面は下ダイス1B側に設けてもよい。
【0010】
そして、前工程で成形した、一定肉厚tで板部W1から肉厚方向に湾曲し、肉厚方向に一定長lで突出する端部W2とをもつワークwを上ダイス1A及び下ダイス1Bに収納し、押さえパンチ、上ダイス1A及び下ダイス1Bで当初ワーク端部W2上方部Waを挟持しワーク上方端部W2の厚さ方向を規制しながら下方に加圧し、さらに押さえパンチ及び下ダイス1Bでワーク底部内方Wdを挟持しワーク底部内方部Wdの厚さ方向を規制した状態でさらに肉厚方向に加圧する。このときワークwはワーク端部上方部Waとワーク底部内方部Wdとの間の任意の部位において、押さえパンチ、上ダイス1A及び下ダイス1Bとの間に間隙を確保している。そして、据え込パンチ3 で下方に加圧中、ワークwを外側へ成形しつつ据え込むことによってワークの拘束力を増して、ワーク端部上方部Waとワーク底内方部Wdとの間の成形後の中間部形状に合致するようワーク端部中間・下方部Wb及びワーク底部外方・中間部Wcを増肉させ、図6(C)に示す成形品とする。その時、押さえパンチ及びダイスに角度又は曲面 1Ab、2b をつけた形状にすることによって捲れ込みや亀裂のない一定肉厚部から滑らかに増肉することができる。
したがって、この方法によれば、捲れ込みや亀裂を生じることなく、かつ金型構造を単純化し、対象品を円筒容器に限定せず、また端面に限定せずに任意の部位を増肉させることができる。
【0011】
【発明の効果】
本発明によると、捲れ込みや亀裂を生じることなく、後加工でテーパ面を削除して平坦面とする必要がなく、平板状ワーク端部にテーパ面を成形する工程を必要とせず、金型の構成部品を単純化して、端面に限定せずに任意の部位を増肉加工することのできる増肉プレス加工方法を提供するものとなった。さらに、ダイスの内方内側底面又は押さえパンチの内方外側底面内方に内側端面規制面を設けることによって、対象品を円筒容器の増肉加工に限定せず任意の板状部材の増肉加工ができる増肉プレス加工方法を提供するものとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】は実施形態の前工程前における予備成形用金型等の一部断面図で、ワークは加工前の状態で示す。
【図2】は図1の予備成形用金型でワークを深絞り加工した状態で示す。
【図3】実施形態の本工程前の増肉用金型等の一部断面図である。
【図4】実施形態の本工程中の増肉用金型等の一部断面図である。
【図5】実施形態の本工程後の増肉用金型等の一部断面図である。
【図6】実施形態のワークの各断面図で、(A)は前工程前のワークの断面図、(B)は前工程後及び本工程前のワークの断面図、(C)は本工程後のワークの断面図である。
【符号の説明】
1A・・上ダイス(ダイス) 1B・・下ダイス(ダイス)
1Aa ・・ダイス上方内側部 1Ab ・・ダイス内側中間・下方内側部
2 ・・押さえパンチ 2a・・押さえパンチ底部内方部
2b・・押さえパンチ中間・下方外側部 2b・・押さえパンチ中間・下方外側部
2d・・押さえパンチ底部内方部 2f・・押さえパンチ内側端面規制面
3 ・・据え込みパンチ 3e・・据え込みパンチ底面
w・・ワーク W2・・ワーク端部
Wa・・ワーク端部上方部 Wb・・ワーク端部中間・下方部
Wc・・ワーク底部外方・中間部 Wd・・ワーク底部内方部
We・・ワーク端部上面
Claims (2)
- 一定肉厚で板状に形成された平板状ワークを深絞りをして肉厚方向に一定長で突出する端部を成形する前工程と、加工後の該ワーク上方端部の外側部と同形の上方内側部を有しかつ深絞りされたワーク底外側内方部と当接可能な内方内側底面を有するダイスであって前記ワーク上方部外側部とワーク底内方外側部との間の成形後の中間部形状に合致する中間部内側形状を有するダイスと、加工後の該ワーク上方端部の外側部と同形の上方外側部を有しかつ深絞りされたワーク底内側内方部と当接可能な内方外側底面を有するパンチであって前記ワーク端部の上方部内側部とワーク底内方内側部との間の成形後の中間部形状に合致する中間部外側形状を有するパンチとで、前記ワークを挟圧して該ワーク上方端部の厚さ方向を規制しながら、前記ワーク上方端部の上面を平坦な加圧面をもつ据え込パンチで下方に加圧し、成形後のワークの中間部形状に合致するワークの中間部を増肉する本工程と、からなり、前記ダイスの中間部内側形状及び/又は押さえパンチの中間部外側形状は斜面又は曲面を有しかつワークとの間に間隙を有することを特徴とする増肉プレス加工方法。
- 前記ダイスの内方内側底面又は押さえパンチの内方外側底面内方に内側端面規制面を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の増肉プレス加工方法。
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