JP3591765B2 - 自動車のドア構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のドアの内部構造に関し、特に、窓ガラスの昇降をガイドするサッシの部分の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のドアの内部には、通常、車体側の係合部材と係合するロック機構と、このロック機構のロックを解除する操作を行うドアの内外に設けられているインサイドハンドルおよびアウトサイドハンドルの操作をロック機構に伝達する伝達機構が設けられていることはよく知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、自動車が側面衝突を受けた場合、ドアアウタパネルが変形してドア内部に設けられている伝達機構を押してしまうことがある。そして、この時にドアアウタパネルが伝達機構をロック解除操作を伝達する方向に押してしまうと、ロック機構のロックが解除されてしまうおそれがある。
そこで、従来は、このような不具合が生じないように、側面衝突時のドアアウタパネルの変形箇所が、伝達機構をロック解除方向に押すことのないように、伝達機構の配置や構成などを考慮して決定していた。したがって、設計上の制約が大きく設計自由度が低いという問題があった。
あるいは、上述のようなドアアウタパネルの変形箇所と伝達機構との干渉をクリアできない場合には、側面衝突時にドアの変形を防止するためのサイドプロテクタと呼ばれる補強材と同様の補強材をドアの全長に亘って追加することもあったが、この場合、コストアップを招くという問題があった。
【0004】
本発明は、上述の従来の問題点に着目してなされたもので、簡単な構成によりドアアウタパネルが伝達機構と干渉するまで変形するのを防止することを可能とし、これにより、伝達機構の配置や構成に対する制限を緩和して、安価に設計自由度の向上を図ることを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述の目的達成のため、本発明は、ドアアウタパネルとドアインナパネルとの間に形成されたドアの空間部に設けられ、車体側の係合部材と係合してドアをロックするロック機構と、ドアの内外に設けられて、ロックを解除するドアハンドルと、ドアの内部の前後に上下方向に延在して設けられ、窓ガラスの昇降をガイドするチャンネル形状のサッシと、このサッシおよび窓ガラスをよけて配設されて前記ドアハンドルのロック解除操作をロック機構に伝達する伝達機構と、を備えたドアロック装置において、前記伝達機構には、サッシの近傍位置に、ドアハンドルの操作により回動するクランク部材が設けられ、側面衝突によりドアアウタパネルが車内側へ変形した際に、ドアアウタパネルが伝達機構のクランク部材の所望の部位に当接するまで変形するのを防止するプロテクタを伝達機構のクランク部材の近傍位置におけるサッシに対し直接取り付け固定した。
したがって、側面衝突時にドアアウタパネルが車内側に変形した際に、伝達機構の所望の部位ではドアアウタパネルがプロテクタにあたり、その入力がプロテクタからサッシを介してドア全体で支持されるため、衝突時の入力がそれ以外のドアアウタパネル部分に分散入力されることで、伝達機構のクランク部材変形したドアアウタパネルが当たるのが防止され、これによりドアアウタパネルに押されて伝達機構が作動するのを防止することができる。
【0006】
また、請求項2に記載のように、前記プロテクタは、ドアアウタパネルが車内側に変形したときにクランク部材をロック解除操作時の回動方向に押圧させる部位に、ドアアウタパネルとクランク部材との間に空間が形成されるように設けてもよい。
したがって、側面衝突によりドアアウタパネルが車内側に変形した際には、サッシに設けたプロテクタは、ドアアウタパネルがクランク部材に当たってクランク部材がロック解除操作方向に回動するのを防止する。また、請求項3に記載の発明のように、前記プロテクタは、1枚の板をプレス成形して形成し、ドアアウタパネルを向いて平面部が形成するのが好ましい。このようにプロテクタをプレス成形により形成するため、製造が容易であり低コストで製造できる。また、側面衝突時には、ドアアウタパネルがプロテクタの平面部に当たるため、プロテクタがドアアウタパネルを突き破り難く、ドアアウタパネルの車内側への変形を確実に防止する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図4は実施の形態を適用したドアDを示す側面図であって、この実施の形態は、前後に設けられている2枚のドアのうちの後側のドアDに適用されている。このドアDは、図示を省略したガイドレールに前後スライド自在に支持されているもので、このドアDの後端部には、車体の図示を省略したリヤピラーに設けられているストライカなどの係合部材と係合する例えばラッチなどを備えたロック機構1が設けられ、ドアDの前端部の外側に、このロック機構1のロックを解除するアウトサイドハンドル2が設けられている。
【0008】
このアウトサイドハンドル2は、手で把持可能ないわゆるグリップタイプのものであり、後端部を中心に車外方向に水平に回動可能に支持されている。このアウトサイドハンドル2と前記ロック機構1とは、アウトサイドハンドル2の操作をロック機構1に伝達してロック機構1のロックを解除する伝達機構3により連結されている。なお、前記伝達機構3は、クランク部材やロッドあるいはワイヤなどを組み合わせて構成されているもので、本実施の形態のようなドアDに設けられた伝達機構3を備えた構造としては、例えば実開平2−43372号公報に記載のものなどにより公知であるので詳細については説明を省略する。
【0009】
前記伝達機構3において、アウトサイドハンドル2の操作力を入力する構成として図1に示すクランク部材31が設けられている。このクランク部材31は、3つのアーム31a,31b,31cを有して軸31dを中心に回動可能に設けられ、上端のアーム31aがアウトサイドハンドル2の内側に設けられているレバー2aの先端の係合片2bに所定の間隔を有して配置され、アウトサイドハンドル2を外に引くと、係合片2bがアーム31aに係合してクランク部材31が軸31dを中心に、図において時計回り方向に回動するよう構成されている。そして、このようにクランク部材31が回動すると、図中左側のアーム31cが、伝達アーム32aを持ち上げるように構成されている。
ちなみに、この伝達アーム32aは、図2に示すクランク部材32に形成されている。このクランク部材32は、その回動軸(図示省略)が前記軸31dと直角の車幅方向(図中左右方向)に設けられ、このように伝達アーム32aが持ち上げられると、回動して車両前後方向のストロークを生じさせ、この動きによりロッドやワイヤなどの伝達部材33を矢印方向にストロークさせてロック機構1に伝達するように構成されている。なお、ドアDの前端面に突出して設けられている34はチャイルドロックレバーであって、図外のインサイドハンドルの操作力がクランク部材32に伝達されないようにして、インサイドハンドルによるロック解除操作を阻止するレバーが設けられている。
【0010】
前記クランク部材31は、図2に示すように、ドアDのドアアウタパネル41とドアインナパネル42との間に形成された空間43の前端部に設けられている。
すなわち、ドアDの空間43の内部は、窓ガラス5が昇降するように構成されているもので、図において51は、上部と下部とがドアインナパネル42に固定されて窓ガラス5の前端部の昇降をガイドするサッシである。ちなみに、このサッシ51と同様のサッシが空間43の後部に設けられていて、窓ガラス5は、このサッシ51および図外のサッシにより前後端縁を挟まれて車幅方向の変位を規制されている。
そこで、上述した伝達機構3は、この窓ガラス5が昇降する空間を避けて図示のような配置となっているものである。
【0011】
また、前記サッシ51には、図1に示すように、クランク部材31の下端のアーム31bの近傍位置に、プロテクタブラケット6が設けられている。
このプロテクタブラケット6は、1枚のパネルをプレス成形して形成したものであり、図3の斜視図に示すように、外周が折曲されてフランジ61が形成されているとともに、中央部に長手方向にエンボス62が形成されている。そして、基端部がサッシ51に2つのねじで固定され、先端部が図2に示すようにドアアウタパネル41に向けて延在されている。なお、前記フランジ61によりプロテクタブラケット6のドアアウタパネル41に対向している先端部には、当たり平面63(平面部)が形成されている。
【0012】
また、図1および図2に示すように、プロクタブラケット6との間にクランク部材31を挟むようにして、ドアDの前端部の内側には、不正解錠防止用のロックブラケット7が設けられており、このロックブラケット7のドアアウタパネル41側の先端部が略直角に折り曲げられて当たり平面71が形成されている。また、図1において8は側面衝突によるドアDの変形を防止するサイドプロテクタである。
【0013】
上述のように構成した実施の形態のドア構造は、ドアDに対して側面衝突を受けた時に、ドアアウタパネル41が車室R側に変形するが、この時、伝達機構3のクランク部材31が設けられている部位にあっては、ドアアウタパネル41がプロテクタブラケット6に衝突した時点で、その入力がプロテクタブラケット6を介してチャンネル状の強度を有したサッシ51により受け止められ、ドアアウタパネル41がクランク部材31に衝突するまで車室R側に変形するのが防止され、ドアアウタパネル41とクランク部材31との間に空間を確保することができる。ちなみに、図2において2点鎖線Aが側面衝突時のドアアウタパネル41の変形を示している。
したがって、仮にドアアウタパネル41が変形してクランク部材31のアーム31bに衝突してアーム31bを押した場合には、クランク部材31はロック機構1に向けてロック解除操作を行ったのと同じ動き(図1における時計回り方向)をすることになるが、本実施の形態では、既存のサッシ51に、1枚の板材から形成した小さなプロテクタブラケット6を設定しただけで、これを防止することができる。
さらに、本実施の形態では、図2に示すようにドアアウタパネル41の変形をロックブラケット7の当たり平面71でも防止しており、上述のようなドアアウタパネル41のクランク部材31への変形をいっそう防止することができる。
【0014】
以上のように、本実施の形態では、安価な構成により側面衝突時のロック解除を防止して、伝達機構3の配置や構成の設計自由度を向上させることができるという効果が得られる。
また、上述の効果を既存のサッシ51に小さなプレス成形品であるプロテクタブラケット6を設けることで得るようにしているため、安価な手段により上記効果を得ることができる。
さらに、プロテクタブラケット6の先端面およびロックブラケット7の先端面に当たり平面63,71を設け、側面衝突時にドアアウタパネル41が変形した際にドアアウタパネル41に対して面で当たるようにしているため、ドアアウタパネル41が変形した際に、これらブラケット6,7がドアアウタパネル41を突き破ることがなく、上記変形防止を確実に行うことができるという効果が得られる。
【0015】
以上、本発明の実施の形態を図面により説明したが、本発明の構成はこの実施の形態の構成に限定されるものではない。
例えば、プロテクタブラケット6の形状は、実施の形態で示したものに限られるものではなく、また、そのサッシ51への取り付け方法は、溶接・ボルト止めなど他の手段により行ってもよい。また、プロテクタブラケット6の取付位置も、伝達機構3の構成に応じて適宜変更してよいものである。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1ないし3記載の自動車のドア構造にあっては、側面衝突によりドアアウタパネルが車内側へ変形した際に、ドアアウタパネルが伝達機構のクランク部材の所望の部位に当接するまで変形するのを防止するプロテクタを伝達機構のクランク部材の近傍位置におけるサッシに対し直接取り付け固定したため、側面衝突時にドアアウタパネルが車内側に変形した際に、伝達機構の所望の部位ではドアアウタパネルがプロテクタに当たり、その入力がプロテクタからサッシを介してドア全体で支持されるため、衝突時の入力がそれ以外のドアアウタパネル部分に分散入力されることで、伝達機構のクランク部材変形したドアアウタパネルが当たるのが防止され、これによりドアアウタパネルに押されて伝達機構が作動するのを防止することができるものであり、既存のサッシを利用した極めて安価な手段によりドアアウタパネルが伝達機構と干渉するまで変形するのを防止することを可能とし、これにより、伝達機構の配置や構成に対する制限を緩和して、安価に設計自由度の向上を図ることができるという効果を奏する。
【0017】
また、請求項3に記載の発明では、プロテクタをプレス成形により形成したため、製造が容易であり低コストで製造できるという効果を奏するとともに、側面衝突時には、ドアアウタパネルがプロテクタの平面部に当たるため、プロテクタがドアアウタパネルを突き破り難く、ドアアウタパネルの車内側への変形を確実に防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態の自動車のドア構造の要部の(図4のS1−S1線による)断面図である。
【図2】実施の形態の自動車のドア構造の要部の(図4のS2−S2線による)断面図である。
【図3】実施の形態の要部の斜視図である。
【図4】実施の形態を適用した自動車の側面図である。
【符号の説明】
1 ロック機構
2 アウトサイドハンドル(ドアハンドル)
2a レバー
2b 係合片
3 伝達機構
31 クランク部材
31a アーム
31b アーム
31c アーム
31d 軸
32 クランク部材
32a 伝達アーム
33 伝達部材
34 チャイルドロックレバー
41 ドアアウタパネル
42 ドアインナパネル
43 空間
5 窓ガラス
51 サッシ
6 プロテクタブラケット
61 フランジ
62 エンボス
63 当たり平面
7 ロックブラケット
71 当たり平面
8 サイドプロテクタ

Claims (3)

  1. ドアアウタパネルとドアインナパネルとの間に形成されたドアの空間部に設けられ、車体側の係合部材と係合してドアをロックするロック機構と、
    ドアの内外に設けられて、ロックを解除するドアハンドルと、
    ドアの内部の前後に上下方向に延在して設けられ、窓ガラスの昇降をガイドするチャンネル形状のサッシと、
    このサッシおよび窓ガラスをよけて配設されて前記ドアハンドルのロック解除操作をロック機構に伝達する伝達機構と、
    を備えたドアロック装置において、
    前記伝達機構には、サッシの近傍位置に、ドアハンドルの操作により回動するクランク部材が設けられ、
    面衝突によりドアアウタパネルが車内側へ変形した際に、ドアアウタパネルが伝達機構のクランク部材の所望の部位に当接するまで変形するのを防止するプロテクタを伝達機構のクランク部材の近傍位置におけるサッシに対し直接取り付け固定したことを特徴とする自動車のドア構造。
  2. 記プロテクタは、ドアアウタパネルが車内側に変形したときにクランク部材をロック解除操作時の回動方向に押圧させる部位に、ドアアウタパネルとクランク部材との間に空間が形成されるように設けたことを特徴とする請求項1記載の自動車のドア構造。
  3. 前記プロテクタは、1枚の板をプレス成形して形成し、ドアアウタパネルを向いて平面部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の自動車のドア構造。
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