JP3590808B2 - 荷電粒子線転写装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、荷電粒子線を用いてマスクのパターンを試料上に転写する荷電粒子線転写装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
荷電粒子線転写装置では、光学系の収差のために光軸から離れた位置のマスクパターンを転写する場合、荷電粒子線は投影レンズである電磁レンズの軸から離れた部分を通過するため転写像に歪が生じ易い。そこで、この光学系の収差による像の歪を低減するために
(a)MOL(Moving Objective Lens)方式,VAL(Variable Axis Lens)方式,PREVAIL(Projection Exposure with Vriable Axis Immersion Lenses)方式、
(b)SMD(Symmetric Magnetic Doublet)方式、
等による荷電粒子線転写装置が提案されている。
【0003】
(a)の各方式では、電磁レンズの軸から離れた部分に入射する荷電粒子線の場合でも、偏向器を用いて電磁レンズの軸を等価的に荷電粒子線方向に移動し、実質的に荷電粒子線が電磁レンズの軸を通過するように調整している。そのため、マスクの各副視野を通過して電磁レンズに入射する荷電粒子線は、常に電磁レンズの光軸近傍を通過するためレンズ収差の影響を低減することができる。
【0004】
一方、SMD方式の荷電粒子線転写装置について図6を参照して説明する。図6は荷電粒子線転写装置の投影レンズ部分の概略構成図であり、荷電粒子線転写装置の縮小率を1/M,(1≦M<20)としたときに、マスク1および試料10間の距離をM:1に分割する光軸上の点をクロスオーバと定義している。投影レンズ3は、クロスオーバCOを挟んで配設された一対の電磁レンズ30,31で構成されている。さらに、この電磁レンズ30,31は以下のような対称磁気ダブレット条件を満たしている。
【0005】
すなわち、電磁レンズ30に関して、その主面30aとマスク1およびクロスオーバCOとの距離をそれぞれLM1,LC1、磁極301および302のボーア半径をそれぞれR1,R2、クロスオーバCOと磁極301のクロスオーバ側の面301aおよび磁極302のマスク側の面302aとの距離をそれぞれA1,A2とし、電磁レンズ31に関して、その主面31aと試料10およびクロスオーバCOとの距離をそれぞれLW2,LC2、磁極311,312のボーア半径をそれぞれr1,r2、クロスオーバCOと磁極311のクロスオーバ側の面311aおよび磁極312のマスク側の面312aとの距離をそれぞれa1,a2としたときに、
【数4】
LM1=LC1,LW2=LC2 …(1)
R1/r1=R2/r2=M …(2)
A1/a1=A2/a2=M …(3)
の関係が成り立つとともに、電磁レンズ30および31はAT(アンペア・ターン)数が等しく、それぞれが形成する磁場の向きが互いに逆向きになっている。このように電磁レンズ30,31を構成することによって電磁レンズ30,31の磁気回路の対称性が向上し、投影レンズ3のレンズ収差が減少する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、(a)の方式では、偏向器を用いて電磁レンズの軸を等価的に荷電粒子線の中心となるようにしているため偏向収差が発生する。この偏向収差(特に歪収差)を小さくするのは原理的に困難であるとともに、この偏向収差のために主視野および副視野を大きくすることができないという問題点があった。一方、(b)の方式では、レンズ収差のうち非点収差および像面湾曲収差が補正されずに残るため、開口を大きくすることができない。そのため、回折の問題や、空間電荷効果によるビームのぼけが生じることにより大きなビーム電流で転写が行えず、高スループットが得られないという欠点があった。
【0007】
本発明の目的は、収差が小さい荷電粒子線転写装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明の実施の形態を示す図1,図3および図4に対応付けて説明する。
図1に対応付けて説明すると、請求項1の発明は、マスク1上の主視野を複数の副視野に分割し、荷電粒子線を投影レンズ2で試料10上に結像して副視野1aaのそれぞれに含まれるパターンを順次転写することにより、マスク1のパターンを試料10上に転写する荷電粒子線転写装置に適用され、投影レンズ2の前段に設けられて、副視野1aaを通過した荷電粒子線が投影レンズ2の光軸RX上を進行するように偏向する第1の偏向手段11,12と、投影レンズ2を通過した荷電粒子線を第1の偏向手段11,12の偏向方向に対して逆方向に偏向し、マスク1上における副視野1aaの位置に対応する試料10上の位置に導く第2の偏向手段13,14とを備えて上述の目的を達成する。
請求項2の発明による荷電粒子線転写装置では、第1の偏向手段11,12は、副視野1aaからの荷電粒子線を光軸RX方向に所定の角度βだけ偏向する第1の偏向器11と、第1の偏向器11からの荷電粒子線を第1の偏向器11とは逆方向に所定の角度βだけ偏向して荷電粒子線が光軸RX上を通るようにする第2の偏向器12とを具備し、第2の偏向手段13,14は、投影レンズ2からの荷電粒子線を第1の偏向器11と同一方向に同一角度βだけ偏向する第3の偏向器13と、第3の偏向器13からの荷電粒子線を第1の偏向器11とは逆方向に所定の角度βだけ偏向する第4の偏向器14とを具備する。
請求項3の発明による荷電粒子線転写装置は、荷電粒子線転写装置の縮小率が1/Mで、マスク1と試料10との距離をM:1に内分する光軸RX上の点をクロスオーバCOとしたときに、クロスオーバCOと第1〜第4の偏向器11〜14との距離LC11,LC12,LC13およびLC14との間に、
【数5】
LC11/LC14=LC12/LC13=M
が成立する。
図4に対応付けて説明すると、請求項4の発明による荷電粒子線転写装置では、投影レンズ8はマスク側電磁レンズ80および試料側電磁レンズ81の一対の電磁レンズで構成され、各電磁レンズ80,81の形成する磁場の向きが互いに逆向きである。
請求項5の発明による荷電粒子線転写装置は、荷電粒子線転写装置の縮小率を1/Mとしたときに、第1の偏向器11の内径D1,外径D2,光軸方向長さL1と第4の偏向器の対応する内径d1,外径d2,光軸方向長さL14との比ががそれぞれM:1である。
請求項6の発明による荷電粒子線転写装置は、 荷電粒子線転写装置の縮小率が1/Mで、マスク1と試料10との距離をM:1に内分する光軸RX上の点をクロスオーバCOとしたときに、クロスオーバCOとマスク側電磁レンズ80の主面80aとの距離LC1およびクロスオーバCOと試料側電磁レンズ81の主面81aとの距離LC2は、
【数6】
LC1/LC2=M
を満足する。
請求項7の発明による荷電粒子線転写装置は、第1の電磁レンズ80の焦点距離と第2の電磁レンズ81の焦点距離がM:1である。
請求項8の発明による荷電粒子線転写装置は、第1の電磁レンズ80のアンペア・ターン数と第2の電磁レンズ81のアンペア・ターン数がほぼ等しい。
請求項9の発明による荷電粒子線転写装置は、投影レンズ9はマスク側電磁レンズ90および試料側電磁レンズ91の一対の電磁レンズで構成され、マスク側電磁レンズ90に関して、その主面90aとマスク1およびクロスオーバCOとの距離をLM1およびLC1,マスク側電磁レンズ90のマスク側磁極901およびクロスオーバ側磁極902のボーア半径をR1およびR2,クロスオーバCOとマスク側磁極901のクロスオーバ側の面901aおよび試料側磁極902のマスク側の面902aとの距離をA1およびA2とし、試料側電磁レンズ91に関して、その主面91aと試料10およびクロスオーバCOとの距離をLW2およびLC2,試料側電磁レンズ91の試料側磁極911およびクロスオーバ側磁極912のボーア半径をr1およびr2,クロスオーバCOと試料側磁極911のクロスオーバ側の面911aおよびクロスオーバ側磁極912のマスク側の面912aとの距離をa1およびa2としたときに、
【数7】
LM1=LC1,LW2=LC2
R1/r1=R2/r2=M
A1/a1=A2/a2=M
の関係が成立するとともに、マスク側電磁レンズ90と試料側電磁レンズ91のAT(アンペア・ターン)数が等しく、それぞれが形成する磁場の向きが互いに逆向きである。
図1に対応付けて説明すると、請求項10の発明による荷電粒子線転写装置では、第1の偏向器11の内径D1をマスク1の最大視野直径の2倍以上とし、第4の偏向器14の内径d1を前記最大視野直径に対応する試料10上の転写像の最大直径の2倍以上とした。
図1および図3に対応付けて説明すると、請求項11の発明による荷電粒子線転写装置では、第1および第4の偏向器11,14を8極子型静電偏向器とした。
【0009】
請求項1の発明による荷電粒子線転写装置では、マスク1の副視野1aaを通過した荷電粒子線は、第1の偏向手段11,12によって光軸RX上を進行するように偏向された後に投影レンズ2に入射する。また、投影レンズ2を通過した荷電粒子線は、第2の偏向手段13,14によって第1の偏向手段11,12の偏向方向に対して逆方向に偏向され、マスク1上における副視野1aaの位置に対応する試料10上の位置に導かれる。
請求項2の発明による荷電粒子線転写装置では、マスク1の副視野1aaを通過した荷電粒子線は、第1の偏向器11により光軸RX方向へ偏向された後に第2の偏向器12によって光軸RX上を進行するように偏向され、投影レンズ2に入射する。第1および第4の偏向器11,14によって生じる偏向収差は互いに打ち消し合う。同様に、第2および第3の偏向器12,13によって生じる偏向収差は互いに打ち消し合う。
請求項10の発明による荷電粒子線転写装置では、荷電粒子線は第1および第4の偏向器11,14の偏向中心11a,14aの軸からほぼ1/2半径までの領域をそれぞれ通過する。
請求項11の発明による荷電粒子線転写装置では、光軸から離れた荷電粒子線であっても第1および第4の偏向器11,14の形成する電磁場が一様となっている部分を通過するため、第1および第4の偏向器11,14の電磁場の一様性に関する転写像の歪を低減することができる。
【0010】
なお、本発明の構成を説明する上記課題を解決するための手段の項では、本発明を分かり易くするために発明の実施の形態の図を用いたが、これにより本発明が発明の実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図5を参照して本発明の実施の形態を説明する。
−第1の実施の形態−
図1は本発明に係る荷電粒子線転写装置の第1の実施の形態を説明する図であり、電子ビームを用いて縮小転写を行う電子線縮小転写装置の概略構成を示す。なお、図6と同一部分には同一の符号を付し、本実施の形態においても縮小率を1/M,(1≦M<20)としたときに、マスク1および試料10間の距離をM:1に分割する光軸上の点をクロスオーバと定義する。
【0012】
図1に戻って、4は電子ビームの発生源である電子銃、5は電子銃4から放出された電子ビームを平行ビームにするコンデンサレンズ、6はコンデンサレンズ5によって平行ビームにされた電子ビームを正方形に整形するアパーチャである。7は整形された電子ビームをマスク1の副視野1aaに導く副視野選択偏向器であり、一対の偏向器71,72で構成される。2は投影レンズを構成する電磁レンズであり、11,12,13および14は電子ビームの軌道を偏向させるための偏向器である。
【0013】
電磁レンズ2は、その主面2aの位置がクロスオーバCOの位置と一致するように配置される。また、本実施の形態では、クロスオーバCOと偏向器11の偏向中心11a,偏向器12の偏向中心12a,偏向器13の偏向中心および偏向器14の偏向中心との距離をそれぞれLC11,LC12,LC13およびLC14としたときに、次式(4)が成立するように構成されている。
【数8】
LC11/LC14=LC12/LC13=M …(4)
【0014】
正方形アパーチャ6で整形された電子ビームは、副視野選択偏向器71によってビーム方向に対して図示反時計回りに角度+αだけ偏向された後に副視野選択偏向器72によって角度−αだけ偏向され、光軸RXと平行なビームとされて光軸RXから距離δ1だけ離れた副視野1aaに垂直に照射される。なお、マスク1において、副視野1aaは図示左右方向に一列に複数形成されている。電子ビームは同一平面内(図では紙面上)を通り、その平面内でビームが反時計回りに曲る場合にはその角度をプラスとし、時計回りの場合にはマイナスとする。
【0015】
マスク1上の副視野1aaを透過してパターン化された電子ビームは偏向器11によって角度−βだけ偏向され、偏向器12の偏向中心12aで光軸RXと交わる。この電子ビームは偏向器12によって角度+βだけ偏向されて光軸RX上を通るビームとなり、光軸RXに沿って進行して電磁レンズ2に入射する。電磁レンズ2に入射した電子ビームは、クロスオーバCOを通過した後に偏向器13によって角度−βおよび偏向器14によって角度+βだけそれぞれ偏向されて光軸RXと平行なビームとなり、試料10に垂直に入射する。
【0016】
ところで、式(4)から
【数9】
LC11−LC12=M・(LC14−LC13) …(5)
であることが分るが、これは偏向器11入射時の電子ビームの光軸RXからの距離δ1と偏向器14で光軸RXと平行とされた電子ビームの光軸RXからの距離δ2との間にδ1=M・δ2が成り立っていることを示している。すなわち、副視野1aaのマスクパターンは、図1の左右方向において試料10上の縮小率1/Mに対応する位置に転写される。また、電子ビームが光軸から遠く離れた副視野を通った場合には、光軸付近の副視野を通った場合に比べて光路長が長くなるため合焦条件からズレが生じるが、電磁レンズ2の励磁電流を調整して全ての副視野で合焦条件を満足させるようにすることができる。
【0017】
上述したように、本実施の形態では、主視野内のどの副視野のマスクパターンを転写した場合でも、電子ビームが偏向器11,12によって電磁レンズ2の軸上を通るように偏向されるので、試料10に転写される像へのレンズ収差の影響を低減することができる。また、偏向器11の偏向角と偏向器14の偏向角、および偏向器12の偏向角と偏向器13の偏向角とはそれぞれ大きさが等しく方向が逆になっている。そのため、偏向器11の偏向収差と偏向器14の偏向収差、および偏向器12の偏向収差と偏向器13の偏向収差はそれぞれ互いに打ち消しあい、転写像への偏向収差の影響を小さく抑えることができる。
【0018】
図1に示した荷電粒子線転写装置の偏向器11および14として、図3に示す8極子型静電偏向器を用いることができる。図3は8極子型静電偏向器20の主面に沿った断面を示す図である。8極子型静電偏向器については特開平7−65766号公報に開示されており、図のように一対の平行電極21a,21b間に三対の電極部220,221,222で構成される補正電極22が配置され、平行電極21a,21bの両端部における等電位面の広がりを補正している。平行電極21a,21bおよび電極部220〜222は、金属製の円筒23の内周面に絶縁体24を介してそれぞれ固定されている。電極部220〜222の形状は光軸RXと同軸の円筒形状の一部を構成するように形成されており、電極部220〜222への印加電圧は互いに独立に調整可能とされている。
【0019】
印加電圧についての詳細は特開平7−65766号公報に開示されており、ここでは結果のみを記す。電子ビームを図のx軸方向に偏向するには、平行電極21aに+A(V)および平行電極21bに−A(V)の電圧を印加し、電極部221に0(V),電極部220に(A・D/d)・sinθ(V),電極部222に−(A・D/d)・sinθ(V)の電圧をそれぞれ印加する。ここで、θは電極部220,222の内周面の中心位置P1と光軸RXとを結ぶ線Lが平行電極21a,21bと平行な方向に対してなす角度、dは平行電極21a,21bの間隔、Dは電極部220〜222の内径である。
【0020】
このような電圧をそれぞれ印加することによって、電極部221の近傍での等電位面が平行電極21a,21bと平行な方向に補正され、平行電極21a,21bの中央部と同様に高精度の偏向が可能となる。そのため、光軸RXから離れた電子ビームであっても電位面が平行な部分を通過するので、試料10上に結像された像の歪収差を小さくすることができる。
【0021】
また、偏向器11の内径をマスク1の最大視野半径の4倍以上とし、偏向器14の内径をマスク1の最大視野半径に対応する試料10上の転写像の最大半径の4倍以上としてもよい。これは、偏向器11によって形成される電場は偏向器11の中心から1/2半径(内径に関して)程度までは一様なので、偏向器11の内径を上述したような寸法とすることにより、マスクの周辺付近の副視野を透過した電子ビームであっても偏向器11の電磁場(静電偏向器であれば電場、電磁偏向器であれば磁場)が一様な所を通過させることできる。偏向器14についても同様であって、偏向器11の周辺付近を通過した電子ビームは偏向器14の周辺付近を通過するが、上述したように設定することによって、電子ビームを偏向器14の電磁場が一様な所を通過させることができる。その結果、偏向器11,14の電場の一様性に関係する像の歪収差を小さくすることができる。
【0022】
−第2の実施の形態−
図4は本発明に係る荷電粒子線転写装置の第2の実施の形態を説明する図であり、投影レンズが2段の電磁レンズによって構成されている。図4は投影レンズに関係する部分の概略構成図であって、図1,6に示す荷電粒子線転写装置と同一の部分には同一の符号を付した。本実施の形態では、投影レンズ8は二つの電磁レンズ80,81によって構成されており、偏向器12が電磁レンズ80のマスク側磁極801の内側に、偏向器13が電磁レンズ81の試料側磁極811の内側にそれぞれ内挿されるように設けられている。
【0023】
転写装置の縮小率を1/Mとしたとき、電磁レンズ80に関して、クロスオーバCOと電磁レンズ80の主面80aとの距離をLC1、クロスオーバCOと磁極801のクロスオーバ側の面801aおよび磁極802のマスク側の面802aとの距離をそれぞれA1,A2とし、電磁レンズ81に関して、クロスオーバCOと電磁レンズ81の主面81aとの距離をLC2、クロスオーバCOと磁極811のクロスオーバ側の面811aおよび磁極812の試料側の面812aとの距離をそれぞれa1,a2とすると、前述した式(3)および次式(6)が成り立っている。すなわち、
【数10】
A1/a1=A2/a2=M …(3)
LC1/LC2=M …(6)
が成立する。加えて、電磁レンズ80および81の焦点距離の比を4:1とし、これらの電磁レンズ80,81が形成する磁場の向きが互いに逆向きになるように電磁レンズ80,81の電流が設定されている。また、偏向器11〜14は前述した式(4)を満たすとともに、偏向器11の内径D1,外径D2,軸方向寸法L11と偏向器14の内径d1,外径d2,軸方向寸法L14との間に次式(7)が成立している。
【数11】
LC11/LC14=LC12/LC13=M …(4)
D1/d1=D2/d2=L11/L14=M …(7)
【0024】
マスク1上の副視野1aaには、第1の実施の形態と同様に光軸RXに平行な電子ビームが照射される。副視野1aaを透過してパターン化された電子ビームは偏向器11によって角度−βだけ偏向され、偏向器12の偏向中心12aにおいて光軸RXと交わる。この電子ビームは偏向器12によって角度+βだけ偏向され、光軸RXに沿って電磁レンズ80を通過する。電子ビームは電磁レンズ80,クロスオーバCOおよび電磁レンズ81を通過した後、偏向器13によって角度−βだけ偏向される。さらに、電子ビームは偏向器14によって角度+βだけ偏向されて試料10に垂直に照射される。なお、電子ビームが光軸から離れた副視野を通った場合には、光軸付近の副視野を通った場合に比べて光路長が長くなるので、電磁レンズ80,81の焦点距離が長くなるように励磁電流を減少させて調整する。
【0025】
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に偏向器11,12によって電子ビームが電磁レンズ80,81の軸を通過するように偏向されるので、試料10に転写される像へのレンズ収差の影響を低減することができる。また、偏向器11の偏向角と偏向器14の偏向角、および偏向器12の偏向角と偏向器13の偏向角とはそれぞれ大きさが等しく方向が逆になっている。そのため、偏向器11の偏向収差と偏向器14の偏向収差、および偏向器12の偏向収差と偏向器13の偏向収差はそれぞれ互いに打ち消しあい、転写像への偏向収差の影響を小さく抑えることができる。
【0026】
また、1段の電磁レンズで投影レンズを構成している図1の装置と比較すると、2段レンズのほうが1段レンズに比べ電磁レンズの収差が小さくなるという利点がある。なお、2段レンズの場合は、1段レンズに比べて各偏向器11〜14の偏向角が大きくなるが、上述したように偏向角を設定することにより偏向収差の影響を抑えることが可能である。
【0027】
−第3の実施の形態−
図5は本発明に係る荷電粒子線転写装置の第3の実施の形態を説明する図であり、投影レンズ9を構成する電磁レンズ90,91が対称磁気ダブレット条件を満たしている。すなわち、電磁レンズ90に関して、その主面90aとマスク1およびクロスオーバCOとの距離をそれぞれLM1,LC1、磁極901および902のボーア半径をそれぞれR1,R2、クロスオーバCOと磁極901のクロスオーバ側の面901aおよび磁極902のマスク側の面902aとの距離をそれぞれA1,A2とし、電磁レンズ91に関して、その主面91aと試料10およびクロスオーバCOとの距離をそれぞれLW2,LC2、磁極911,912のボーア半径をそれぞれr1,r2、クロスオーバCOと磁極911のクロスオーバ側の面911aおよび磁極912のマスク側の面912aとの距離をそれぞれa1,a2としたときに、前述した式(1)〜(3)
【数12】
LM1=LC1,LW2=LC2 …(1)
R1/r1=R2/r2=M …(2)
A1/a1=A2/a2=M …(3)
を満たすとともに、各電磁レンズ90,91のAT(アンペアターン)数が等しく磁場の向きが逆になるように各コイルの電流が設定されている。その他の偏向器11〜14については図4の装置と同様の構成であり、同一の式(4)が成立している。
【0028】
このように対称磁気ダブレット条件を満たす電磁レンズ90,91で投影レンズ9を構成することによって、電磁レンズ90,91の磁気回路の対称性が向上してレンズ収差が減少する。そのため、図4の装置に比べて転写像の歪曲収差が減少する。
【0029】
以上説明した発明の実施の形態と特許請求の範囲との対応において、偏向器11および12はそれぞれ第1の偏向器および第2の偏向器に対応し、それら一対の偏向器11,12によって第1の偏向手段が構成される。また、偏向器13および14はそれぞれ第3の偏向器および第4の偏向器に対応し、それら一対の偏向器13,14によって第2の偏向手段が構成される。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、マスク上のどの副視野を通過した荷電粒子線であっても、第1の偏向手段によって光軸上を進行するように偏向された後に投影レンズに入射するため、転写像へのレンズ収差の影響を低減することができる。また、第1および第2の偏向手段によって生じる偏向収差は互いに打ち消し合うため、荷電粒子線を偏向することによって発生する偏向収差の転写像への影響を抑えることができる。
請求項4の発明では、投影レンズを一対の電磁レンズによって構成しているため、電磁レンズが一段の投影レンズを用いる装置に比べてレンズ収差を小さくすることができる。
さらに、請求項9の発明では、投影レンズを構成する一対の電磁レンズが対称磁気ダブレット条件を満足しているため、磁気回路の対称性が向上してレンズ収差をより小さくすることができる。
請求項10および11の発明では、光軸から離れた荷電粒子線であっても第1および第4の偏向器の形成する電磁場が一様となっている部分を通過するため、第1および第4の偏向器の電磁場の一様性に関する転写像の歪収差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による荷電粒子線転写装置の第1の実施の形態を説明する図。
【図2】マスク1の主視野1aおよび副視野1aaを説明する図。
【図3】8極型静電偏向器の断面図。
【図4】本発明による荷電粒子線転写装置の第2の実施の形態を説明する図。
【図5】本発明による荷電粒子線転写装置の第3の実施の形態を説明する図。
【図6】従来の対称磁気ダブレット方式の荷電粒子線転写装置を説明する図。
【符号の説明】
1 マスク
1a 主視野
1aa 副視野
2,80,81,90,91 電磁レンズ
3 電子銃
4 コンデンサレンズ
5 アパーチャ
7 副視野選択偏向器
8,9 投影レンズ
11,12,13,14,71,72 偏向器
10 試料
20 8極型静電偏向器
CO クロスオーバ
RX 光軸
Claims (11)
- マスク上の主視野を複数の副視野に分割し、荷電粒子線を投影レンズで試料上に結像して前記副視野のそれぞれに含まれるパターンを順次転写することにより、前記マスクのパターンを試料上に転写する荷電粒子線転写装置において、
前記投影レンズの前段に設けられて、前記副視野を通過した荷電粒子線が前記投影レンズの光軸上を進行するように偏向する第1の偏向手段と、
前記投影レンズを通過した荷電粒子線を前記第1の偏向手段の偏向方向に対して逆方向に偏向し、前記マスク上における前記副視野の位置に対応する前記試料上の位置に導く第2の偏向手段とを備えることを特徴とする荷電粒子線転写装置。 - 請求項1に記載の荷電粒子線転写装置において、
前記第1の偏向手段は、前記副視野からの荷電粒子線を光軸方向に所定の角度だけ偏向する第1の偏向器と、第1の偏向器からの荷電粒子線を第1の偏向器とは逆方向に前記所定の角度だけ偏向して荷電粒子線が光軸上を通るようにする第2の偏向器とを具備し、
前記第2の偏向手段は、前記投影レンズからの荷電粒子線を前記第1の偏向器と同一方向に同一角度だけ偏向する第3の偏向器と、第3の偏向器からの荷電粒子線を第1の偏向器とは逆方向に前記所定の角度だけ偏向する第4の偏向器とを具備することを特徴とする荷電粒子線転写装置。 - 請求項2または3に記載の荷電粒子線転写装置において、
前記投影レンズはマスク側電磁レンズおよび試料側電磁レンズの一対の電磁レンズで構成され、各電磁レンズの形成する磁場の向きが互いに逆向きであることを特徴とする荷電粒子線転写装置。 - 請求項4に記載の荷電粒子線転写装置において、
荷電粒子線転写装置の縮小率を1/Mとしたときに、前記第1の偏向器の内径,外径,光軸方向長さと前記第4の偏向器の対応する内径,外径,光軸方向長さとの比ががそれぞれM:1であることを特徴とする荷電粒子線転写装置。 - 請求項4〜6のいずれかに記載の荷電粒子線転写装置において、
前記第1の電磁レンズの焦点距離と前記第2の電磁レンズの焦点距離がM:1であることを特徴とする荷電粒子線転写装置。 - 請求項4〜7のいずれかに記載の荷電粒子線転写装置において、
前記第1の電磁レンズのアンペア・ターン数と前記第2の電磁レンズのアンペア・ターン数がほぼ等しいことを特徴とする荷電粒子線転写装置。 - 請求項3に記載の荷電粒子線転写装置において、
前記投影レンズはマスク側電磁レンズおよび試料側電磁レンズの一対の電磁レンズで構成され、
マスク側電磁レンズに関して、その主面と前記マスクおよび前記クロスオーバとの距離をLM1およびLC1,前記マスク側電磁レンズのマスク側磁極およびクロスオーバ側磁極のボーア半径をR1およびR2,前記クロスオーバと前記マスク側磁極のクロスオーバ側の面および前記試料側磁極のマスク側の面との距離をA1およびA2とし、試料側電磁レンズに関して、その主面と試料およびクロスオーバとの距離をLW2およびLC2,前記試料側電磁レンズの試料側磁極およびクロスオーバ側磁極のボーア半径をr1およびr2,前記クロスオーバと前記試料側磁極のクロスオーバ側の面および前記クロスオーバ側磁極のマスク側の面との距離をa1およびa2としたときに、
- 請求項2〜9のいずれかに記載の荷電粒子線転写装置において、
前記第1の偏向器の内径を前記マスクの最大視野直径の2倍以上とし、前記第4の偏向器の内径を前記最大視野直径に対応する前記試料上の転写像の最大直径の2倍以上としたことを特徴とする荷電粒子線転写装置。 - 請求項2〜10いずれかに記載の荷電粒子線転写装置において、
前記第1および第4の偏向器を8極子型静電偏向器としたことを特徴とする荷電粒子線転写装置。
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