JP3589783B2 - 蓄熱補正方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、サーマルプリンタに用いられ、発熱素子の蓄熱による画質低下を防止するための蓄熱補正方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
サーマルプリンタには、サーマルヘッドで感熱記録紙を加熱して直接に発色させる感熱記録方式と、記録紙に重ねたインクリボンの背後をサーマルヘッドで加熱してインクリボンのインクを記録紙に転写する熱転写記録方式とがある。このサーマルヘッドは、セラミック製の基板上に多数の発熱素子がライン状に形成されている。
【0003】
サーマルプリンタでは、入力画像データに応じてサーマルヘッドを駆動しただけでは、蓄熱の影響によってプリントされた画像に濃度ムラが発生したり、画像の輪郭がボヤけたりして、原画に忠実な画像を再現することができない。
【0004】
各発熱素子から発生した熱エネルギーの多くは記録のために使われるが、記録に供しないものは、放熱されたり、発熱素子のグレーズ層に蓄えられたり、あるいはグレーズ層に蓄えられた熱エネルギーは、このグレーズ層を支持するセラミック基板に伝達されてこれに蓄えられたりする。更には、セラミック基板を支持しているアルミ板に伝達されて蓄えられたり、アルミ板に取り付けられた放熱板に蓄えられたり、この放熱板から放熱されたりする。また、サーマルヘッドの各部材(以下、蓄熱層という)に蓄えられた熱エネルギーの一部は、発熱素子に向かって戻り、次のラインの記録に影響するものもある。
【0005】
このようにして、サーマルヘッドの各蓄熱層に蓄熱された熱エネルギーの一部が画素の記録に影響するため、この画素の発色濃度が所期の値よりも高くなる。したがって、原画上で濃度が高い状態から低い状態に急に変化している場合でも、ハードコピー上では、濃度変化がなだらかになるため、画像の輪郭をシャープに記録することができなくなる。また、この発熱素子の蓄熱によって、記録の開始では濃度が全体的に低く、記録が進むにつれて、全体的に濃度が高くなるシェーディングと呼ばれる現象が発生する。すなわち、記録が進むことにより、発熱素子の蓄熱が大ききなるため、このシェーディングが発生する。
【0006】
このような発熱素子の蓄熱による画質の劣化を防止するために、従来では、補正すべき注目画素の周辺にある画素を用い、例えば3×3又は7×7の画素の発熱データにフイルタリング演算を行って、注目画素の発熱データを補正している。このフイルタリング演算は、周知の輪郭強調処理と同じ手法であり、注目画素の周辺にある各画素に、その位置に応じた係数を乗算してから加算し、この加算値を補正データとして注目画素の発熱データに加算している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述したフイルタリング演算は、数ライン前からの発熱データを考慮して発熱データを補正するものであるが、上述のようなグレーズ層の蓄熱やセラミックの基板等の蓄熱層の蓄熱状態,これらの各蓄熱層の相互間の熱伝導,放熱までを考慮しておらず、正確な蓄熱の補正することができなかった。
【0008】
本発明は、サーマルヘッドの蓄熱層の蓄熱状態までを考慮して正確な蓄熱補正を可能とした蓄熱補正方法及び装置を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の蓄熱補正方法では、第Mラインのプリントに際して、プリントしようとする第Mラインの各発熱データから第Mラインの各第1蓄熱補正データを対応するデータ同士で減算して各発熱データを補正するとともに、この第Mラインの各発熱データと第1蓄熱層の蓄熱状態を示す各第1蓄熱データと第2蓄熱層の蓄熱状態を示す各第2蓄熱データとのそれぞれに所定の係数を乗算してから対応するデータ同士で加算することにより新たな第1蓄熱データを求めて記憶し、この記憶した第1蓄熱データに所定の係数を乗算したものを第M+1ラインの第1蓄熱補正データとし、また第J(Jは2〜N)蓄熱層の蓄熱状態を示す第J蓄熱データとその上層の第(J−1)蓄熱層の蓄熱状態を示す第(J−1)蓄熱データと下層の第(J+1)蓄熱層の蓄熱状態を示す第(J+1)蓄熱データとのそれぞれに所定の係数を乗算してから対応するデータ同士で加算することにより新たな第J蓄熱データを各第2〜第N蓄熱層についてそれぞれ求め記憶し、この記憶した第J蓄熱データを第(M+1)ラインのプリントに際しての第J蓄熱データとするようにしたものである。
【0010】
請求項2記載の蓄熱補正方法では、第Mラインのプリントに際して、プリントしようとする第Mラインの各発熱データから第Mラインの各第1〜第N蓄熱補正データを対応するデータ同士で減算して各発熱データを補正するとともに、この第Mラインの各発熱データと第1蓄熱層の蓄熱状態を示す各第1蓄熱データとのそれぞれに所定の係数を乗算してから対応するデータ同士で加算することにより新たな第1蓄熱データを求めて記憶し、この記憶した第1蓄熱データに所定の係数を乗算したものを第M+1ラインの第1蓄熱補正データとし、また第J(Jは2〜N)蓄熱層の蓄熱状態を示す第J蓄熱データとその上層の第(J−1)蓄熱層の蓄熱状態を示す第(J−1)蓄熱データとのそれぞれに所定の係数を乗算してから対応するデータ同士で加算することにより新たな第J蓄熱データを各第2〜第N蓄熱層についてそれぞれ求めて記憶し、この記憶した第J蓄熱データに所定の係数を乗算したものを第(M+1)ラインのプリントに際しての第J蓄熱補正データとするものである。
【0011】
請求項3記載の蓄熱補正方法では、各加算の結果のそれぞれにフィルタリング演算を行い、この各演算結果を第1〜第N蓄熱データとするものであり、請求項4記載の蓄熱補正方法では、第Mラインの各発熱データに基づいて新たな第1蓄熱データを求める際に各発熱データのそれぞれに所定の係数を乗算して得られる各データにフィルタリング演算を行い第1蓄熱層の補正データを求め、これらの各補正データを第M+1ラインのプリントの際して第Mラインの各発熱データから対応するデータ同士で減算するものである。
【0012】
請求項5記載の蓄熱補正方法では、第Mラインのプリントに際して、第Mラインの各発熱データに対する減算を行うとともに、減算された各発熱データに所定の係数を乗算して、第Mラインのプリントの際の各発熱素子の蓄熱を補正するものであり、請求項6記載の蓄熱補正方法では、第Mラインの各発熱データを用いて新たな第1蓄熱データを求める際には、前記第Mラインのプリントの際の各発熱素子の蓄熱が補正された各発熱データを用いるものである。
【0013】
請求項7記載の蓄熱補正装置では、プリントしようとする第Mラインの各発熱データから第Mラインの各第1蓄熱補正データとを対応するデータ同士で減算して各発熱データを補正する補正手段と、前記第1〜第N蓄熱層に対応して設けられた第1〜第N演算回路とを備え、前記第1演算回路は、前記第1蓄熱層の蓄熱状態を示す各第1蓄熱データを記憶する第1レジスタと、第Mラインの各発熱データに係数K1を乗算する第1乗算手段と、第Mラインのプリントに際して前記第1レジスタから読み出された各第1蓄熱データに係数K2を乗算する第2乗算手段と、この乗算された各データに係数「1−K3」を乗算する第3乗算手段と、前記第1乗算手段からの各データと第3乗算手段からの各データ及び第2演算回路からの第Mラインの各第2蓄熱補正データを対応するデータ同士で加算し、この加算結果を前記第1レジスタに書き込む加算手段と、第(M+1)ラインのプリントに際して前記第1レジスタから読み出した各第1蓄熱データに係数「1−K2」を乗算して第(M+1)ラインの第1蓄熱補正データとする第4乗算手段とからなり、前記第J(Jは2〜N)演算回路のそれぞれは、前記第J蓄熱層の蓄熱状態を示す各第J蓄熱データを記憶する第Jレジスタと、第(J−1)演算回路の第2乗算回路からの各データに係数「K(2・J−1)」を乗算する第1乗算手段と、第Mラインのプリントに際して前記第Jレジスタから読み出した各第J蓄熱データに係数「K(2・J)」を乗算する第2乗算手段と、この乗算された各データに係数「1−K(2・J+1)」を乗算する第3乗算手段と、この第J演算回路の第1乗算手段からの各データと第3乗算手段からの各データ及び第(J+1)演算回路からの第Mラインの各第(J+1)蓄熱補正データを対応するデータ同士で加算し、この加算結果を前記第J演算回路の第Jレジスタに書き込む加算手段と、第(M+1)ラインのプリントに際して前記第Jレジスタから読み出した各第J蓄熱データに係数「1−K(2・J)」を乗算して第(M+1)ラインの第J蓄熱補正データとする第4乗算手段とからなるものである。
【0014】
請求項8記載の蓄熱補正装置では、プリントしようとする第Mラインの各発熱データから第Mラインの各第1〜第N蓄熱補正データを対応するデータ同士で減算して各発熱データを補正する補正手段と、前記第1〜第N蓄熱層にそれぞれ対応して設けられた第1〜第N演算回路とを備え、前記第1演算回路は、第1蓄熱層の蓄熱状態を示す各第1蓄熱データを記憶する第1レジスタと、第Mラインの各発熱データに係数K1を乗算する第1乗算手段と、第Mラインのプリントに際して前記第1レジスタから読み出した各第1蓄熱データに係数「K2」を乗算する第2乗算手段と、この乗算された各データに係数「1−K3」を乗算する第3乗算手段と、前記第1乗算手段からの各データと第3乗算手段からの各データとを対応するデータ同士で加算して、この加算結果を前記第1レジスタに書き込む加算手段と、第(M+1)ラインのプリントに際して前記第1レジスタから読み出した各第1蓄熱データに係数「1−K2」を乗算して第(M+1)ラインの第1蓄熱補正データとする第4の乗算手段とからなり、前記第J(Jは2〜N)演算回路のぞれぞれは、第J蓄熱層の蓄熱状態を示す各第J蓄熱データを記憶する第Jレジスタと、第(J−1)演算回路の第2乗算回路からの各データに係数「K(2・J−1)」を乗算する第1乗算手段と、前記第Jレジスタからの各第J蓄熱データに係数「K(2・J)」を乗算する第2乗算手段と、この乗算された各データに係数「1−K(2・J+1)」を乗算する第3乗算手段と、この第J演算回路の第1乗算手段からの各データと第3乗算手段からの各データとを対応するデータ同士で加算し、この加算結果の各データを前記第J演算回路の第Jレジスタに書き込む加算手段と、第(M+1)ラインのプリントに際して前記第Jレジスタから読み出した各第J蓄熱データに係数「1−K(2・J)」を乗算して第(M+1)ラインの第J蓄熱補正データとする第4乗算手段とからなるものである。
【0015】
請求項9記載の蓄熱補正装置では、各加算手段からの加算結果に対してフィルタリング演算を行い、この演算結果を各蓄熱データとして対応する前記第1〜第Nのレジスタに書き込むフィルタを前記第1〜第Nの演算回路毎に設けたものである。請求項10記載の蓄熱補正装置では、第Mラインのプリントに際して、前記第1演算回路の第1の乗算手段からの各データにフィルタリング演算を行い第1蓄熱層の1ライン分の各補正データを求めるフィルタと、このフィルタからの各補正データが書き込まれ、第(M+1)ラインのプリントに際してこれらの各補正データを読み出して前記補正手段に送るレジスタとを設け、前記補正手段で第(M+1)ラインの各発熱データから各補正データを対応するデータ同士で減算するようにしたものである。
【0016】
請求項11記載の蓄熱補正装置では、前記補正手段は、第Mラインのプリントに際して、第Mラインの各発熱データに対する減算を行った後に、減算された各発熱データに係数「1/(1−K1)」を乗算して第Mラインのプリントの際の各発熱素子の蓄熱を補正する乗算手段を備えたものであり、請求項12記載の蓄熱補正装置では、第1演算回路の第1乗算手段は、前記補正手段の乗算手段で係数「1/(1−K1)」を乗算して補正した各発熱データに係数「K1」を乗算するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
図2において、1ライン分の各発熱データは、ラインメモリ10に書き込まれる。感熱記録方式では、各発熱素子で各ドットを記録する場合に、発熱素子を発色直前の状態まで加熱するバイアス加熱をしてから、その直後に階調加熱をする。バイアス加熱では、バイアスデータによって各発熱素子が一様に加熱される。バイアスデータは、各発熱素子とも共通な値が用いられるが、各発熱素子に抵抗値等のバラツキがある場合には、この抵抗値等のバラツキを考慮して各バイアスデータが決められる。階調加熱では、各画像データに応じて各発熱素子が駆動される。したがって、感熱記録方式では、発熱データには、バイアスデータと画像データの両方がある。なお、熱転写記録では、階調加熱だけが行われるため、発熱データは画像データである。
【0018】
ラインメモリ10に記憶された1ライン分の発熱データは、蓄熱補正部11に送られて蓄熱補正が行われる。感熱記録方式では、画像データとバイアスデータの両方に対して蓄熱補正をしてもよいし、あるいはその一方に対してのみ蓄熱補正をしてもよい。蓄熱補正された発熱データは、ヘッド駆動回路12に送られる。このヘッド駆動回路12は、感熱記録紙14に圧接しているサーマルヘッド13を駆動する。この感熱記録紙14は、図2において紙面と垂直な方向に移動する。
【0019】
サーマルヘッド13は、多数の発熱素子13aがライン状に形成されている。図3に示すように、サーマルヘッド13は、アルミ板15の上にセラミック基板16,グレーズ層17を積層したその上に発熱抵抗膜からなる発熱素子13aと、電極19とを形成し、さらにこれらを保護膜20で覆った構造になっている。また、アルミ板15には、放熱性を良好にするために、放熱板21が取り付けられている。これらのグレーズ層17,セラミック基板16,アルミ板15,放熱板21は、発熱素子13aが発熱することにより、発熱素子13aの熱の一部が伝わって蓄熱される蓄熱層となり、その蓄熱の一部が画素の記録に影響する。
【0020】
サーマルヘッド13の各発熱素子13aは、発熱データに応じた電力を供給することにより、この発熱データに応じた熱エネルギーを発生する。この発熱素子13aの駆動には、発熱データによってON時間を決定する方法と、発熱データによって発熱回数を決定する方法とがある。
【0021】
図1は、本発明の蓄熱補正部11の一例を示すものである。蓄熱補正部11は、補正回路22と、各発熱素子13aに対する蓄熱補正データを求めるために、サーマルヘッド13のグレーズ層17,セラミック基板16,アルミ板15、放熱板21に対応させて4段に設けられた第1演算回路23a〜第4演算回路23dとから構成されている。
【0022】
第1演算回路23aは、グレーズ層17に蓄められた蓄熱による各発熱素子13aの影響を考慮したプリントの蓄熱補正データ(以下の説明では、便宜上第1蓄熱補正データという)を算出する。第1演算回路23a内のレジスタ30aには、第M回のプリント開始時点では、第M−1回のプリント終了時点までの各発熱素子の発熱によってグレーズ層17の各発熱素子13aに対応する部分毎の蓄熱状態を示す第1蓄熱データが1ライン分書き込まれている。このレジスタ30aに記憶された1ライン分の第1蓄熱データは順番に読み出され、乗算器31aと乗算器32aとに送られる。一方の乗算器31aは、順番に入力された各第1蓄熱データに係数「1─K2」を乗算し、グレーズ層17の蓄熱のうちの各発熱素子13aに伝わってプリントに影響する熱量を示す第1蓄熱補正データとし、これを補正回路22の減算器22aに送る。
【0023】
減算器22aには、今回プリントされる1ライン分の発熱データが順番に入力されており、発熱データから第1蓄熱補正データが対応するデータ同士で減算され、この減算処理が施された各発熱データは、感熱記録紙14に与えられずグレーズ層17に蓄えられる蓄熱分を補うために、乗算器22bでそれぞれ係数「1/(1─K1)」が乗算される。このようにして、補正回路20で蓄熱補正された1ライン分の発熱データは、ヘッド駆動部12に送られるとともに、乗算器33aで係数「K1」が乗算されて、グレーズ層17に蓄えられる蓄熱を示すデータに変換された後に、加算器34aに送られる。
【0024】
他方の乗算器32aは、順番に入力された各第1蓄熱データに係数「K2」を乗算して、グレーズ層17の蓄熱のうちの発熱素子13aに伝わらない熱量を示すデータに変換する。この変換されたデータは、乗算器35aと第2演算回路23bとに送られる。乗算器35aは、乗算器32aからの各データに係数「1−K3」をさらに乗算することにより、グレーズ層17に蓄えられた熱量のうちで、グレーズ層17に残る熱量を示すデータに変換して、このデータを加算器34aに送る。
【0025】
加算器34aでは、蓄熱補正がされた発熱データに係数「K1」を乗算したデータと、係数「K2」,「1−K3」が乗算された第1蓄熱データと、後述する第2演算回路23bからのセラミック基板16からグレーズ層17に伝わる熱量を示す第2蓄熱補正データとが、それぞれ対応するデータ同士で加算される。この加算されたデータは、フィルタ36aに送られる。このフィルタ36aは、後述するフィルタリング演算を行って各発熱素子13aに対応するグレーズ層17の各部分の蓄熱に、隣接するグレーズ層17の部分の蓄熱を考慮して補正したデータをレジスタ30aに送る。これにより、次回のプリントに対するグレーズ層17の蓄熱状態を示す1ライン分の第1蓄熱データがレジスタ30aに書き込まれる。
【0026】
次回(第M+1回目)のプリントでは、今回(第M回目)のプリント終了時点で得られた第1蓄熱データがレジスタ30aから読み出されて乗算器31a,32aに送られ、乗算器31aに入力された各第1蓄熱データは、係数「1−K2」が乗算され、第1蓄熱補正データとして減算器20aに送られる。また、乗算器32aに入力された各第1蓄熱データは、係数「K2」が乗算された後に、乗算器35aと第2演算回路23bとに送られる。以下、同様にして、レジスタ30aの第1蓄熱データがプリント毎に書き換えられる。
【0027】
フィルタ36aの構成を示す図4において、第M回目のプリント時に加算器34aから出力されたデータ(以下、加算データという)は、シフトレジスタ37に送られる。このシフトレジスタ37は、カスケード接続された4個のラッチ回路38〜41からなり、クロックで加算データを1個ずつシフトさせる。ラッチ回路38の入力端子(加算器34aの出力端子)と出力端子から取り出した2個の加算データは、乗算器42,43にそれぞれ送られる。また、ラッチ回路41の入力端子(ラッチ回路40の出力端子)と出力端子から取り出した加算データは、乗算器45,46にそれぞれ送られる。さらに、ラッチ回路39の出力端子から取り出された加算データは、乗算器44に送られる。
【0028】
各乗算器42,46は、入力された加算データに係数「A2」を乗算し、乗算器44は、入力された加算データに係数「A0」を乗算し、各乗算器43,45は、入力された加算データに係数「A1」を乗算する。各乗算器42〜46は、で各係数が乗算された各加算データは、加算器47に送られて加算され、この加算結果がレジスタ30aに送られる。
【0029】
今回プリントされる1ライン分の発熱データは、ラインメモリ10の端から順番に読み出される。そして、補正回路22で蓄熱補正されてから乗算器34で係数「K1」が乗算されてから、係数「K2」,「1−K3」を乗じた第1蓄熱データと、第2蓄熱補正データが加算器35で加算され、加算データとしてフィルタ36aに送られる。この端から1番目の発熱データに対応する第1番目の加算データは、クロックによってラッチ回路38にラッチされる。次に端から2番目の発熱データに対応する第2番目の加算データがシフトレジスタ37に入力される。この状態でクロックが入力されると、ラッチ回路39に第1番目の加算データがラッチされ、ラッチ回路38に第2番目の加算データがラッチされる。
【0030】
2個の加算データがシフトレジスタ37にラッチされ、そして第3番目の加算データがシフトレジスタ37に入力されている状態でフィルタリング処理が開始される。第1番の加算データは、乗算器44で係数「A0」が乗算されてから加算器47に送られ、第2番目の加算データは、乗算器43で係数「A1」が乗算されてから加算器47に送られる。また、第3番目の加算データは、乗算器42で係数「A3」が乗算されてから加算器47に送られる。そして、この加算器47で3個の加算データを加算する。
【0031】
このように、第1番目の加算データをそのまま第1蓄熱データとして用いずに、第1番目の加算データと片側にある2個の発熱素子の加算データと係数倍して加算するから注目する第1番目の加算データに対応する発熱素子13aのグレーズ層17の部分の蓄熱の他に、その周囲にグレーズ層17の蓄熱を考慮した第1番目の第1蓄熱データが作成される。なお、各乗算器42〜46で乗算される係数「A0」,「A1」の総和(A0+2・A1+2・A2)が値「1」となるようにされている。
【0032】
第4番目の加算データがシフトレジスタ37に入力されているときには、第1番目の加算データがラッチ回路40にラッチされ、第2番目の加算データは、ラッチ回路39にラッチされ、第3番目の加算データは、ラッチ回路38にラッチされた状態となる。そして、第2番目の加算データには係数「A0」が、第1番目と第3番目の各加算データには係数「A1」が乗算され、第4番目の加算データには係数「A2」が乗算されて、これらが加算される。したがって、第2番目の加算データは、片側に位置する第1番目の加算データと、別の片側に位置する第2番目と第3番目の加算データとに応じて補正される。
【0033】
第5番目の加算データがシフトレジスタ37に入力されている時には、第1番目の加算データがラッチ回路41にラッチされ、第2番目の加算データがラッチ回路40にラッチされる。更に、第3番目の加算データがラッチ回路39にラッチされ、第4番目の加算データがラッチ回路38にラッチされる。
【0034】
ラッチ回路39にラッチされた第3番目の加算データは、係数「A0」が乗算されてから加算器47に送られる。そして、第1番目と第5番目の加算データには係数「A2」が乗算されてから加算器47に送られ、第2番目と第4番目の加算データには係数「A1」が乗算されてから加算器47に送られる。したがって、第3番目の加算データは、左右にそれぞれ位置する2個の加算データによって補正される。
【0035】
同様に、第4番目以降の加算データも左右2個の加算データを用いてフイルタリング演算が行われる。なお、最後の加算データがラッチ回路39でラッチした状態でフイルタリング演算をすると、1ライン分のフイルタリング演算が終了し、このフィルタリング処理で得られた1ライン分の今回(第M回目)のプリントまでの第1蓄熱データがレジスタ30aに記憶された状態となる。なお、実際には、1ライン分の発熱データの両端のそれぞれに、「0」の2個のダミーデータが付加されるとともに、フィルタリング処理は最初の発熱データが読み出された時から開始されるようにされている。そして、このこのダミーデータにより、左右にそれぞれ位置する加算データが2個に満たない場合にでも正しくフィルタリング処理が行われるようになっている。もちろん、ダミーデータは、プリント時には無視される。
【0036】
図1に示すように、第2段目〜第4段目の第2〜第4演算回路23b〜23dについては、第1演算回路23aと同様な構成となっており、第2演算回路23bは、レジスタ30b,乗算器31b〜33b,35b、加算器34b、フィルタ36bから構成されている。また、第3演算回路23cは、レジスタ30c,乗算器31c〜33c,35c、加算器34c、フィルタ36cから、第4演算回路23dは、レジスタ30d,乗算器31d〜33d,35d、加算器34d、フィルタ36dから構成されている。
【0037】
第2演算回路23bのレジスタ30bには、第M回目のプリント開始時点では、第M−2回目のプリント終了時点までの各発熱素子13aの発熱によってセラミック基板16に蓄えられた各発熱素子13aに対応する部分毎の蓄熱状態を示す各第2蓄熱データが書き込まれている。この第2演算回路23bは、第M回目のプリント時に、この第2蓄熱データを基にして、セラミック基板16からグレーズ層17に伝わる熱量を示す第2蓄熱補正データを求めて、これを第1演算回路23aに送る。また、第2蓄熱データを基にして、セラミック基板16からアルミ板15に伝わる熱量を示すデータを求めて、これを第3演算回路23cに送る。さらに、レジスタ30bの内容は、第1演算回路23aと同様にして、第M回のプリント時に第M−1回目のプリント終了時点までの各発熱素子13aの発熱によってセラミック基板16に蓄えられた各発熱素子13a毎の蓄熱状態を示す1ライン分の第2蓄熱データに書き換えられる。
【0038】
第3演算回路23cのレジスタ30cには、第M回目のプリント開始時点では、第M−3回目のプリント終了時点までの各発熱素子13aの発熱によってアルミ板15に蓄えられた各発熱素子13aに対応する部分毎の蓄熱状態を示す各第3蓄熱データが書き込まれている。この第3演算回路23cは、第M回目のプリント時に、この第3蓄熱データを基にして、アルミ板15からセラミック基板16に伝わる熱量を示す第3蓄熱補正データを求めて、これを第2演算回路23bに送る。また、第3蓄熱データを基にして、アルミ板15から放熱板21に伝わる熱量を示すデータを求めて、これを第4演算回路23cに送る。さらに、レジスタ30cの内容は、第M回のプリント時に第M−2回目のプリント終了時点までの各発熱素子13aの発熱によってアルミ板15に蓄えられた各発熱素子13a毎の蓄熱状態を示す1ライン分の第3蓄熱データに書き換えられる。
【0039】
第4演算回路23dのレジスタ30dには、第M回目のプリント開始時点では、第M−4回目のプリント終了時点までの各発熱素子13aの発熱によって放熱板21に蓄えられた各発熱素子13aに対応する部分毎の蓄熱状態を示す各第4蓄熱データが書き込まれている。この第4演算回路23dは、第M回目のプリント時に、この第4蓄熱データを基にして、放熱板21からアルミ基板15に伝わる熱量を示す第4蓄熱補正データを求めて、これを第3演算回路23cに送る。さらに、レジスタ30dの内容は、第M回のプリント時に、第M−3回目のプリント終了時点までの各発熱素子13aの発熱によって放熱板21に蓄えられた各発熱素子13a毎の蓄熱状態を示す1ライン分の第4蓄熱データに書き換えられる。
【0040】
なお、第2演算回路23bの各乗算器31b〜33b,35bには、それそれ係数「1−K4」,「K4」,「K3」,「1−K5」が設定されている。また第3演算回路23cの各乗算器31c〜33c,35cには、それそれ係数「1−K6」,「K6」,「K5」,「1−K7」が設定され、第4演算回路23dの各乗算器31d〜33d,35dには、それそれ係数「1−K8」,「K8」,「K7」,「1−K9」が設定されている。
【0041】
係数「K1」,「1/(1−K1)」の値K1は、サーマルヘッド13の形状,感熱記録紙14の材質,発熱素子13aからグレーズ層17への熱の伝わりやすさ等に応じて決められている。係数「K2」,「1−K2」の値K2は、グレーズ層17の材質等に応じて決められ、係数「K3」,「1−K3」の値K3は、グレーズ層17からセラミック基板16への熱の伝わりやすさ等に応じて決められている。以下同様に、各乗算器の係数中の値K4〜K9は、それぞれ対応するセラミック基板16,アルミ板15,放熱板21の材質やそれぞれ間での熱の伝わりやすさ等から決められている。例えば、係数K1は、発熱素子13aからの熱がグレーズ層17に蓄熱されやすいほど「1」に近い数値となる。また、グレーズ層17からの熱が発熱素子13aに伝わりにくくグレーズ層17に残る熱量またはセラミック基板16に伝わる熱量が多いほど、係数「1−K2」が「0」に近い数値となり、係数K2が「1」に近い数値になる。さらに、グレーズ層17からの熱がセラミック基板16に伝わりやすくグレーズ層17に残る熱量が少ないほど、係数「K3」が「1」に近い数値となり、係数「1−K3」が「0」に近い数値になる。
【0042】
また、値K1〜K9は、感熱記録紙14としてカラー感熱記録紙を用いてカラー画像を記録する場合には、記録する色によって発色させるための熱エネルギーが異なるため、記録する色毎にその値も異なる。例えば、イエローを記録する場合には、1−K1=0.85(K1=0.15),1−K2=0.09(K2=0.91),1−K3=0.37(K3=0.67),1−K4=0.02(K4=0.98)となる。また、マゼンタを記録する場合には、1−K1=0.81(K1=0.19),1−K2=0.09(K2=0.91),1−K3=0.41(K3=0.59),1−K4=0.015(K4=0.985)となり、シアンを記録する場合には、1−K1=0.73(K1=0.27),1−K2=0.13(K2=0.87),1−K3=0.49(K3=0.51),1−K4=0.0168(K4=0.9832)となる。
【0043】
次に上記構成の作用について説明する。例えば第M回目のプリントで第Mラインのプリントを行う時点では、第1演算回路23aのレジスタ30aには、第M−1回目のプリントを終了した時点までの各発熱素子13aの発熱にともなうグレーズ層17の蓄熱状態を示す第1蓄熱データが記憶された状態にある。また、第2演算回路23bのレジスタ30bには、第M−2回目のプリントを終了した時点までの各発熱素子13aの発熱にともなうセラミック基板16の蓄熱状態を示す第2蓄熱データが記憶された状態にある。さらに、第3演算回路23cのレジスタ30cには、第M−3回目のプリントを終了した時点までの各発熱素子13aの発熱にともなうアルミ板15の蓄熱状態を示す第3蓄熱データが記憶され、第4演算回路23dのレジスタ30dには、第M−4回目のプリントを終了した時点までの各発熱素子13aの発熱にともなう放熱板21の蓄熱状態を示す第4蓄熱データが記憶された状態にある。
【0044】
今回プリントしようとする第Mラインの各発熱データがラインメモリ10から読み出されて補正回路22に送られる。また、各第1蓄熱データが第1演算回路23aのレジスタ30aから読み出され、乗算器31aで係数「1−K2」が乗算され、グレーズ層17から各発熱素子13aに伝わる熱量を示す各第1蓄熱補正データに変換される。そして、減算器22aで第Mラインの各発熱データは、各第1蓄熱データとそれぞれ対応するデータ同士で減算され、この減算された各発熱データは、各発熱データに基づいて各発熱素子13aが発熱した際に、その発熱による熱のほどんどは感熱記録紙14に与えられるが、一部がグレーズ層17に蓄えられて蓄熱されるので、この蓄熱分を補うために乗算器22bでそれぞれ係数「1/(1─K1)」が乗算される。このようにして、蓄熱補正された第Mラインの各発熱データは、ヘッド駆動部12に送られ、これらの発熱データに基づいて各発熱素子13aが駆動されて発熱する。
【0045】
また、補正回路22で蓄熱補正された第Mラインの各発熱データは、第M+1ラインのプリントする際の第1蓄熱補正データの基になる第1蓄熱データを作成するために、乗算器33aで係数「K1」を乗算されて、この第Mラインのプリントで各発熱素子13aが発熱した際のグレーズ層17に蓄えられる熱量を示すデータとして第1演算回路23aの加算器34aに送られる。
【0046】
一方、レジスタ30aから読み出されて乗算器32aに送られた各第1蓄熱データは、この乗算器32aで係数「K2」が乗算されて、第M−1回までのプリントによってグレーズ層17に蓄えられた蓄熱のうちの発熱素子13aに伝わらない熱量を示すデータに変換されて、乗算器35aと第2演算回路23aの乗算器33aとに送られる。そして、この乗算器35aで、乗算器32aからの各データに、さらに係数「1−K3」を乗算することにより、第1蓄熱データをグレーズ層17に残る熱量を示すデータに変換して、加算器34aに送る。また、乗算器32aからの各データは、第2演算回路23bの乗算器33bで係数「K3」を乗算されることにより、グレーズ層17からセラミック基板16に伝わる熱量を示すデータに変換される。
【0047】
第2演算回路23bでは、この第Mラインのプリント時に、第1蓄熱データの読み出しと同期して、レジスタ30bから第M−2回までの各発熱素子13aの発熱によるセラミック基板16の蓄熱状態を示す第2蓄熱データが順番に読み出される。各第2蓄熱データは、第1演算回路23aで第(M+1)ラインのプリント時に用いる第1蓄熱データを作成するために乗算器31bに送られて、係数「1−K4」が乗算される。これにより、第2蓄熱データは、セラミック基板16からグレーズ層17に伝わる熱量を示す第2蓄熱補正データとして、第1演算回路23aの加算器34aに送られる。また、各第2蓄熱データは、乗算器32bで係数「K4」を乗じることにより、セラミック基板16からグレーズ層17に伝わらない熱量を示すデータに変換されて、乗算器35bと3段目の第3演算回路23cとに送られる。
【0048】
同様にして、第3演算回路23cは、第M回目のプリント開始時にレジスタ30cに記憶されている第3蓄熱データに係数「1−K6」を乗算することにより、アルミ板15からセラミック基板16に伝わる熱量を示す第3蓄熱補正データを作成し、これを第2演算回路23bに送る。また、第4演算回路23dは、第M回目のプリント開始時にレジスタ30dに記憶されている第4蓄熱データに係数「1−K8」を乗算することにより、放熱板21からアルミ板15に伝わる熱量を示す第4蓄熱補正データを作成し、これを第3演算回路23bに送る。
【0049】
これにより、第1演算回路23aの加算器34aには、乗算器33aからの第Mラインのプリントによるグレーズ層17に蓄熱される熱量を示す1ライン分のデータと、第M−1回目までのプリントによるグレーズ層17の蓄熱のうちの第M回のプリント時にグレーズ層17に残る熱量を示す1ライン分のデータと、第2演算回路23bからの第M−2回までのプリントによるセラミック基板16の蓄熱のうちの第M回のプリント時にグレーズ層17に伝わる熱量を示す1ライン分の第2蓄熱補正データとが入力される。これらの1ライン分の各データは、加算器34aでそれぞれ対応するデータ同士が加算され、この加算によって得られた加算データがフィルタ36aに送られる。
【0050】
そして、この加算データは、フイルタ36aで、上述のようにしてフィルタリング演算が行われ、グレーズ層17の各部分毎に隣接する部分の蓄熱を考慮して補正した第1蓄熱データをレジスタ30aに送る。これにより、レジスタ30aの内容は、第M回のプリントが終了した時点で、第M回目までのプリントに対するグレーズ層17の蓄熱状態を示す1ライン分の第1蓄熱データに書き換えられる。
【0051】
また、第2演算回路23bの加算器34bには、第M−1回目までのプリントによってグレーズ層17に蓄熱された熱量のうちセラミック基板16に伝わる熱量を示す1ライン分のデータと、第M−2回目までのプリントによるセラミック基板16の蓄熱のうちの第M回のプリント時にセラミック基板16に残る熱量を示す1ライン分のデータと、第3演算回路23bからの第M−2回までのプリントによるアルミ板15の蓄熱のうちの第M回のプリント時にセラミック基板16に伝わる熱量を示す1ライン分の第3蓄熱補正データとが入力される。
【0052】
これらの1ライン分の各データは、加算器34bでそれぞれ対応するデータ同士が加算され、この加算によって得られた加算データがフィルタ36bに送られる。そして、この加算データは、フイルタ36bで、セラミック基板16の部分毎に隣接する部分の蓄熱を考慮して補正した第2蓄熱データをレジスタ30bに送る。これにより、レジスタ30bの内容は、第M回のプリントが終了した時点で、第M−1回目までのプリントによるセラミック基板16の蓄熱状態を示す1ライン分の第2蓄熱データに書き換えられる。
【0053】
同様にして、第3演算回路23cのレジスタ30cの内容は、第M回目のプリント終了した時点で、アルミ板15に残った熱量、セラミック基板16及び放熱板21から伝わった熱量、隣接する部分のアルミ基板15の蓄熱を考慮したアルミ板15の蓄熱状態を示す第M−2回目までのプリントによる第3蓄熱データに書き換えられる。また、第4演算回路23dのレジスタ30dの内容は、第M回目のプリント終了した時点で、放熱板21に残った熱量、アルミ板15及から伝わった熱量、隣接する部分の放熱板21の蓄熱を考慮した放熱板21の蓄熱状態を示す第M−2回目までのプリントによる第4蓄熱データに書き換えられる。
【0054】
次回の第M+1回目のプリント時には、上記のようにして得られた第1蓄熱データを基にして、1ライン分の第1蓄熱補正データを作成し、これを補正回路22に送って、発熱データを補正する。また、第1〜第4蓄熱データも上記同様な手順で新たなものが作成されて各レジスタ30a〜30bに書きこまれる。
【0055】
上記のようにして、過去の各発熱素子13aの発熱に基づいて発熱素子13a及び、その下層に配されたグレーズ層17,セラミック基板16,アルミ板15,放熱板21の蓄熱状態と、これらの間の相互の熱の移動を考慮して、蓄熱補正データ(第1蓄熱補正データ)を作成しているから、各発熱素子13aの蓄熱状態を正確に予測することが可能となり、良好な蓄熱補正を行うことができる。また、グレーズ層17,セラミック基板16,アルミ板15,放熱板21の各蓄熱状態を求める際に、各演算回路23a〜23dのフィルタ36a〜36dでフィルタリング演算を行うので、注目の発熱素子13aに対応するグレーズ層17,セラミック基板16,アルミ板15,放熱板21の部分の蓄熱の他に、これらの周囲の発熱素子13aに対応する部分の蓄熱状態を考慮することができる。
【0056】
なお、上記蓄熱補正部11の構成は、これに限らず以下に説明するような構成としても、上記実施形態と同様な効果を得ることができる。なお、以下に説明する以外の部分については、上記実施形態と同様であり、同じものには同一符号を付してある。
【0057】
図5に示す蓄熱補正部11の回路は、グレーズ層17,セラミック基板16,アルミ板15,放熱板21の部分の蓄熱の一部が直接に各発熱素子13aに影響するもものとして、各演算回路50a〜50d内の加算器51a〜51dによる演算処理を簡単にしたものである。この回路では、各演算回路50a〜50dで作成された第1〜第4蓄熱補正データは、直接に補正回路22の減算器52に入力され、これらが発熱データの対応するデータから減算処理される。
【0058】
図6に示す蓄熱補正部11の回路は、各演算回路60a〜60dで、フィルタリング演算を行わずにフィルタ部61のフィルタ62で各発熱素子13aに対応するグレーズ層17の部分の蓄熱に対してフィルタリング演算を行うようにしたものである。この例では、各演算回路60a〜60dによってグレーズ層17,セラミック基板16,アルミ板15,放熱板21の各蓄熱状態を示す第1〜第4蓄熱データを作成するとともに、グレーズ層17については、フィルタ62によって、グレーズ層17の蓄熱状態に対するフィルタリング演算を行い、グレーズ層17の各発熱素子13aに対応する部分毎に、それぞれ周囲の部分の蓄熱状態を考慮して補正する1ライン分の補正データをレジスタ63に書き込む。そして、この補正データは、次回のプリントで各演算回路60a〜60dからの第1〜第4蓄熱補正データとともに、減算器65に送られる。これにより、各発熱データは、第1〜第4蓄熱補正データで補正されるとともに、グレーズ層17の隣接する部分の蓄熱状態の影響が補正される。なお、第3,第4演算回路60c,60dの構成は、第2演算回路50bと同様である。
【0059】
上記各実施形態では、補正回路23で補正済の発熱データを第1演算回路に送るようにしているが、図7示すように、補正前の発熱データを第1演算回路60aに送るようにしてもよい。また、この図7に示されるように補正回路22中の乗算器を省略することも可能である。
【0060】
上記各実施形態は感熱記録であるが、本発明はインクフイルムを使用した熱転写記録にも同様に適用することができ、ラインプリンタの他に、サーマルヘッドが移動するシリアルプリンタにも利用することができる。また、上記各実施形態では、4個の蓄熱層に対応させて4段の演算回路を設けているが、蓄熱層の個数に応じて演算回路を増減してもよい。さらに、本発明は、CPUで蓄熱補正演算を行うことができる。
【0061】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、プリントしようとする第Mラインの各発熱データから第Mラインの各第1蓄積補正データを対応するデータ同士で減算して各発熱データを補正するとともに、この第Mラインの各発熱データと第1蓄熱層の蓄熱状態を示す各第1蓄熱データと第2蓄熱層の蓄熱状態を示す各第2蓄熱データとのそれぞれに所定の係数を乗算して対応するデータ同士で加算することにより、第Mラインのプリント後の第1蓄熱層の蓄熱状態を示す新たな第1蓄熱データを求め、そして、この新たな第1蓄熱データに所定の係数を乗算したものを第M+1ラインの第1蓄熱補正データとする。また第Mラインのプリントに際して、第2〜第N蓄熱層について第J(Jは2〜N)蓄熱層の第J蓄熱データとその上層の第(J−1)蓄熱層の第(J−1)蓄熱データと下層の第(J+1)蓄熱層の第(J+1)蓄熱データとのそれぞれに所定の係数を乗算してから対応するデータ同士で加算することにより新たな第J蓄熱層の第J蓄熱データを求め、この新たな第J蓄熱データに所定の係数を乗算したものを第M+1ラインのプリントに際しての第J蓄熱補正データとするようにしたから、各蓄熱層の蓄熱状態までを考慮した蓄熱補正を行うことができ、良好な画像を記録することができる。
【0062】
また、第1の蓄熱補正データとともに、第2〜第Nの蓄熱補正データも発熱データから減算するようにしても各蓄熱層の蓄熱状態を考慮した蓄熱補正を行うことができる。さらに、各蓄熱層のそれぞれの蓄熱データ、あるいは第1蓄熱層の第1蓄熱データを作成する際に、フィルタリング演算をするから蓄熱層の各部分の蓄熱を考慮して正確に蓄熱補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施した蓄熱補正回路の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の蓄熱補正を実施する感熱プリンタの概略図である。
【図3】サーマルヘッドの構造を示す断面図である。
【図4】フィルタの一例を示すブロック図である。
【図5】各蓄熱層に対応した蓄熱補正データを発熱データから減算する例の蓄熱補正部を示すブロック図である。
【図6】フィルタを1個にした例の蓄熱補正部を示すブロック図である。
【図7】蓄熱補正前の発熱データから第1蓄熱データを求める例の蓄熱補正部を示すブロック図である。
【符号の説明】
11 蓄熱補正部
13 サーマルヘッド
13a 発熱素子
15 アルミ板
16 セラミック基板
17 グレーズ層
21 放熱板
22a,42,55 減算器
22b,31a〜31d,32a〜32d 乗算器
30a〜30d レジスタ
33a〜33d,35a〜35d 乗算器
34a〜34d 加算器
36a〜36d フィルタ
Claims (12)
- 各発熱データに応じた各発熱素子の発熱にともなって蓄熱される第1〜第N蓄熱層が各発熱素子の下層に順番に積層されたサーマルヘッドの前記各発熱素子の蓄熱補正を行う蓄熱補正方法において、
第Mラインのプリントに際して、プリントしようとする第Mラインの各発熱データから第Mラインの各第1蓄熱補正データを対応するデータ同士で減算して各発熱データを補正するとともに、この第Mラインの各発熱データと第1蓄熱層の蓄熱状態を示す各第1蓄熱データと第2蓄熱層の蓄熱状態を示す各第2蓄熱データとのそれぞれに所定の係数を乗算してから対応するデータ同士で加算することにより新たな第1蓄熱データを求めて記憶し、この記憶した第1蓄熱データに所定の係数を乗算したものを第M+1ラインの第1蓄熱補正データとし、また第J(Jは2〜N)蓄熱層の蓄熱状態を示す第J蓄熱データとその上層の第(J−1)蓄熱層の蓄熱状態を示す第(J−1)蓄熱データと下層の第(J+1)蓄熱層の蓄熱状態を示す第(J+1)蓄熱データとのそれぞれに所定の係数を乗算してから対応するデータ同士で加算することにより新たな第J蓄熱データを各第2〜第N蓄熱層についてそれぞれ求め記憶し、この記憶した第J蓄熱データを第(M+1)ラインのプリントに際しての第J蓄熱データとすることを特徴とする蓄熱補正方法。 - 各発熱データに応じた各発熱素子の発熱にともなって蓄熱される第1〜第N蓄熱層が各発熱素子の下層に順番に積層されたサーマルヘッドの前記各発熱素子の蓄熱補正を行う蓄熱補正方法において、
第Mラインのプリントに際して、プリントしようとする第Mラインの各発熱データから第Mラインの各第1〜第N蓄熱補正データを対応するデータ同士で減算して各発熱データを補正するとともに、この第Mラインの各発熱データと第1蓄熱層の蓄熱状態を示す各第1蓄熱データとのそれぞれに所定の係数を乗算してから対応するデータ同士で加算することにより新たな第1蓄熱データを求めて記憶し、この記憶した第1蓄熱データに所定の係数を乗算したものを第M+1ラインの第1蓄熱補正データとし、また第J(Jは2〜N)蓄熱層の蓄熱状態を示す第J蓄熱データとその上層の第(J−1)蓄熱層の蓄熱状態を示す第(J−1)蓄熱データとのそれぞれに所定の係数を乗算してから対応するデータ同士で加算することにより新たな第J蓄熱データを各第2〜第N蓄熱層についてそれぞれ求めて記憶し、この記憶した第J蓄熱データに所定の係数を乗算したものを第(M+1)ラインのプリントに際しての第J蓄熱補正データとすることを特徴とする蓄熱補正方法。 - 前記各加算の結果のそれぞれにフィルタリング演算を行い、この各演算結果を第1〜第N蓄熱データとすることを特徴とする請求項1または2記載の蓄熱補正方法。
- 前記第Mラインの各発熱データに基づいて新たな第1蓄熱データを求める際に各発熱データのそれぞれに所定の係数を乗算して得られる各データにフィルタリング演算を行い第1蓄熱層の補正データを求め、これらの各補正データを第M+1ラインのプリントの際して第Mラインの各発熱データから対応するデータ同士で減算することを特徴とする請求項1または2記載の蓄熱補正方法。
- 前記第Mラインのプリントに際して、第Mラインの各発熱データに対する減算を行うとともに、減算された各発熱データに所定の係数を乗算して第Mラインのプリントの際の各発熱素子の蓄熱を補正することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の蓄熱補正方法。
- 前記第Mラインの各発熱データを用いて新たな第1蓄熱データを求める際には、前記第Mラインのプリントの際の各発熱素子の蓄熱が補正された各発熱データを用いることを特徴とする請求項5記載の蓄熱補正方法。
- 各発熱データに応じた各発熱素子の発熱にともなって蓄熱される第1〜第N蓄熱層が各発熱素子の下層に順番に積層されたサーマルヘッドの前記各発熱素子の蓄熱補正を行う蓄熱補正装置において、
プリントしようとする第Mラインの各発熱データから第Mラインの各第1蓄熱補正データとを対応するデータ同士で減算して各発熱データを補正する補正手段と、前記第1〜第N蓄熱層に対応して設けられた第1〜第N演算回路とを備え、 前記第1演算回路は、前記第1蓄熱層の蓄熱状態を示す各第1蓄熱データを記憶する第1レジスタと、第Mラインの各発熱データに係数K1を乗算する第1乗算手段と、第Mラインのプリントに際して前記第1レジスタから読み出された各第1蓄熱データに係数K2を乗算する第2乗算手段と、この乗算された各データに係数「1−K3」を乗算する第3乗算手段と、前記第1乗算手段からの各データと第3乗算手段からの各データ及び第2演算回路からの第Mラインの各第2蓄熱補正データを対応するデータ同士で加算し、この加算結果を前記第1レジスタに書き込む加算手段と、第(M+1)ラインのプリントに際して前記第1レジスタから読み出した各第1蓄熱データに係数「1−K2」を乗算して第(M+1)ラインの第1蓄熱補正データとする第4乗算手段とからなり、
前記第J(Jは2〜N)演算回路のそれぞれは、前記第J蓄熱層の蓄熱状態を示す各第J蓄熱データを記憶する第Jレジスタと、第(J−1)演算回路の第2乗算回路からの各データに係数「K(2・J−1)」を乗算する第1乗算手段と、第Mラインのプリントに際して前記第Jレジスタから読み出した各第J蓄熱データに係数「K(2・J)」を乗算する第2乗算手段と、この乗算された各データに係数「1−K(2・J+1)」を乗算する第3乗算手段と、この第J演算回路の第1乗算手段からの各データと第3乗算手段からの各データ及び第(J+1)演算回路からの第Mラインの各第(J+1)蓄熱補正データを対応するデータ同士で加算し、この加算結果を前記第J演算回路の第Jレジスタに書き込む加算手段と、第(M+1)ラインのプリントに際して前記第Jレジスタから読み出した各第J蓄熱データに係数「1−K(2・J)」を乗算して第(M+1)ラインの第J蓄熱補正データとする第4乗算手段とからなることを特徴とする蓄熱補正装置。 - 各発熱データに応じた各発熱素子の発熱にともなって蓄熱される第1〜第N蓄熱層が各発熱素子の下層に順番に積層されたサーマルヘッドの前記各発熱素子の蓄熱補正を行う蓄熱補正装置において、
プリントしようとする第Mラインの各発熱データから第Mラインの各第1〜第N蓄熱補正データを対応するデータ同士で減算して各発熱データを補正する補正手段と、前記第1〜第N蓄熱層にそれぞれ対応して設けられた第1〜第N演算回路とを備え、
前記第1演算回路は、第1蓄熱層の蓄熱状態を示す各第1蓄熱データを記憶する第1レジスタと、第Mラインの各発熱データに係数K1を乗算する第1乗算手段と、第Mラインのプリントに際して前記第1レジスタから読み出した各第1蓄熱データに係数「K2」を乗算する第2乗算手段と、この乗算された各データに係数「1−K3」を乗算する第3乗算手段と、前記第1乗算手段からの各データと第3乗算手段からの各データとを対応するデータ同士で加算して、この加算結果を前記第1レジスタに書き込む加算手段と、第(M+1)ラインのプリントに際して前記第1レジスタから読み出した各第1蓄熱データに係数「1−K2」を乗算して第(M+1)ラインの第1蓄熱補正データとする第4の乗算手段とからなり、
前記第J(Jは2〜N)演算回路のぞれぞれは、第J蓄熱層の蓄熱状態を示す各第J蓄熱データを記憶する第Jレジスタと、第(J−1)演算回路の第2乗算回路からの各データに係数「K(2・J−1)」を乗算する第1乗算手段と、前記第Jレジスタからの各第J蓄熱データに係数「K(2・J)」を乗算する第2乗算手段と、この乗算された各データに係数「1−K(2・J+1)」を乗算する第3乗算手段と、この第J演算回路の第1乗算手段からの各データと第3乗算手段からの各データとを対応するデータ同士で加算し、この加算結果の各データを前記第J演算回路の第Jレジスタに書き込む加算手段と、第(M+1)ラインのプリントに際して前記第Jレジスタから読み出した各第J蓄熱データに係数「1−K(2・J)」を乗算して第(M+1)ラインの第J蓄熱補正データとする第4乗算手段とからなることを特徴とする蓄熱補正装置。 - 前記各加算手段からの加算結果に対してフィルタリング演算を行い、この演算結果を各蓄熱データとして対応する前記第1〜第Nのレジスタに書き込むフィルタを前記第1〜第Nの演算回路毎に設けたことを特徴とする請求項7又は8記載の蓄熱補正装置。
- 第Mラインのプリントに際して、前記第1演算回路の第1の乗算手段からの各データにフィルタリング演算を行い第1蓄熱層の1ライン分の各補正データを求めるフィルタと、このフィルタからの各補正データが書き込まれ、第(M+1)ラインのプリントに際してこれらの各補正データを読み出して前記補正手段に送るレジスタとを設け、前記補正手段で第(M+1)ラインの各発熱データから各補正データを対応するデータ同士で減算することを特徴とする請求項7または8記載の蓄熱補正装置。
- 前記補正手段は、第Mラインのプリントに際して、第Mラインの各発熱データに対する減算を行った後に、減算された各発熱データに係数「1/(1−K1)」を乗算して第Mラインのプリントの際の各発熱素子の蓄熱を補正する乗算手段を備えていることを特徴とする請求項7ないし10のいずれか1項に記載の蓄熱補正装置。
- 前記第1演算回路の第1乗算手段は、前記補正手段の乗算手段で係数「1/(1−K1)」を乗算して補正した各発熱データに係数「K1」を乗算することを特徴とする請求項11記載の蓄熱補正装置。
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