JP3588906B2 - ペースト用塩化ビニル共重合体組成物及びそれよりなる発泡体、発泡体の製造方法並びにその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペースト用塩化ビニル共重合体組成物及びそれよりなる発泡体、発泡体の製造方法並びにその用途に関するものであり、更に詳しくは、自動車用アンダーコート材、床材等の分野におけて使用に適した、低温加工においても良好な発泡特性を有するペースト用塩化ビニル共重合体組成物及びそれよりなる発泡体、発泡体の製造方法並びにその用途に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ペースト用塩化ビニル樹脂(以下、ペースト塩ビと略記する)は、一般的に可塑剤、発泡剤、充填剤、その他の配合剤と共に混練することによりペースト塩ビゾルを調整し、ナイフコート成形、スプレー成形、注型成形、スラッシュ成形、回転成形等の種々の成形法により、様々な最終加工成形品に加工される。
【0003】
そして、ペースト塩ビゾルに発泡剤を配合し得られる発泡加工製品としては、壁紙、床材、発泡ボール等がある。しかし、該ペースト塩ビゾルは加工温度が低い成形方法が必要とされる加工用途、例えば自動車の軽量化に伴う自動車用アンダーコート、タイルカーペット等においては低温で十分な発泡体を得ることが困難であった。
【0004】
そのため低温で発泡タイプの成形品を得る手段として、酢酸ビニル単量体、塩化ビニル単量体より得られるペースト用塩化ビニル共重合体(以下、ペースト塩ビ共重合体と略記する)を用い、ガラスバルーン、シリカバルーン、塩化ビニリデンバルーン等の中空充填剤等を添加することにより発泡加工製品を得るに留っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来より低温での成形加工用途においても、発泡加工成形による製品軽量化の要求は強いものの、上記に示したように中空充填剤を使用し、発泡加工製品を得る場合、ペースト塩ビゾルのコストが高くなる。一方、発泡剤添加による発泡成形の場合、ペースト塩ビ共重合体の特性のみの対応では、現在の自動車用アンダーコート、タイルカーペット等の用途分野における加工温度140〜150℃では十分な発泡体を得ることはできないうえに、発泡加工製品の発泡セル荒れによる表面荒れ等が生じ強度上の問題を有していた。
【0006】
そこで、本発明は、自動車用アンダーコート、タイルカーペット等の用途にも対応できる120〜150℃という低温での加工成形においても発泡を可能とするペースト塩ビ共重合体組成物を提供するとともに、従来、困難であった低温での発泡成形方法及び発泡セル構造が緻密なセル構造を有し、表面平滑性に優れた発泡体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、特定のペースト用塩ビ共重合体、特定量の発泡剤、特定の可塑剤よりなるペースト塩ビ共重合体組成物が120〜150℃の低温成形においても緻密な発泡セル構造を有する発泡体となることを見いだし本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、エステル結合を有する化合物単位を2〜20重量%共重合して得られたペースト用塩ビ共重合体100重量部、発泡剤2.0〜15.0重量部及び下記式(1)で示される可塑剤20〜200重量部からなるペースト用塩ビ共重合体組成物及び発泡体、発泡体の製造方法並びにその用途に関するものである。
【0009】
R(COOCnH2n+1)2 (1)
(R;炭素数4〜8の2価の脂肪族基、n;1〜7の整数を示す。)
以下に本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明において用いられるペースト用塩ビ共重合体は、エステル結合を有する化合物単位を2〜20重量%共重合して得られたペースト用塩ビ共重合体であり、塩化ビニル単量体とエステル結合を有するビニル単量体、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル単量体との乳化共重合体、微細懸濁共重合体、播種共重合体である。エステル結合を有する化合物単位の共重合割合が2重量%未満のペースト用塩ビ共重合体を用いた場合、低温でペースト用塩ビ共重合体組成物を発泡成形する際、溶融性が不十分となり、良好な発泡セル構造を有する発泡体が得られない。また、エステル結合を有する化合物単位の共重合割合が20重量%を越えるペースト用塩ビ共重合体を用いた場合、得られるペースト用塩ビ共重合体組成物の粘度安定性が悪化し該組成物がペースト状を示さなくなる。そして、得られるペースト用塩ビ共重合体組成物は、特に低温加工性及び粘度安定性のバランスに優れることからエステル結合を有する化合物単位の共重合割合が5〜10重量%であるペースト用塩ビ共重合体が好ましい。
【0011】
また、本発明で使用されるペースト用塩ビ共重合体としては、ペースト用塩ビ共重合体とペースト用塩ビホモポリマーをブレンドし、最終的にエステル結合を有する化合物単位含有量の加重平均を2〜20重量%とした場合も含まれる。
【0012】
本発明において用いられるペースト用塩ビ共重合体の重合度は、得られるペースト用塩ビ共重合体組成物が低温加工性、粘度安定性に優れ、得られる発泡体の強度が優れることから、重合度500〜2000であることが好ましく、特に700〜1600の重合度が好ましい。
【0013】
本発明において用いられる可塑剤は、式(1)で示される化合物である。Rとしては、炭素数4〜8の2価の脂肪族基であり、例えばテトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等を示す。nは1〜7の整数を示す。該可塑剤としては、例えばアジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アゼライン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等があげられ、特にセバシン酸ジブチルが好ましい。
【0014】
本発明において、nが8以上に該当する例えばアジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル等の一般に使用されている可塑剤成分のみを用いた場合、得られた発泡体の発泡セル構造に荒れが発生するため耐チッピング性低下等が生じ、加工成形品として十分な発泡体は得られない。
【0015】
本発明において用いられる式(1)で示される可塑剤は、ペースト用塩ビ共重合体100重量部に対して、20〜200重量部配合される。そして、本発明においては前記式(1)の可塑剤と他の可塑剤とを併用することも可能であるが、前記式(1)で示される可塑剤をペースト塩ビ共重合体100重量部に対し20〜200重量部配合することが必須である。
【0016】
そして、前記式(1)の可塑剤の使用量がペースト塩ビ共重合体100重量部に対し20重量部未満の場合、得られたペースト用塩ビ共重合体組成物を120〜150℃の低温で発泡成形した時、得られた発泡体は緻密な発泡セル構造が得られず発泡体表面荒れが起こり、耐チッピング性等の強度低下が起こる。一方、前記式(1)の可塑剤の使用量がペースト塩ビ共重合体100重量部に対し200重量部を越える場合、得られるペースト用塩ビ共重合体組成物の粘度が低く、取扱い性が低下する。
【0017】
また、ペースト用塩ビ共重合体組成物を調整する際に、併用することが可能な可塑剤としては、例えばフタル酸ジメチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、ジイソノニルフタレート、フタル酸ジブチル、ジイソデシルフタレート、フタル酸ブチルベンジル、トリオクチルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート、ジオクチルアジペート、エポキシ化大豆油、塩素化パラフィン等の可塑剤が挙げられる。
【0018】
本発明において用いられる発泡剤としては、例えば重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アミド化合物、ホウ水素化ナトリウム等の無機発泡剤;イソシアネート化合物、アゾジカルボンアミド,アゾビスイソブチロニトリル,バリウムアゾジカルボキシレートらのアゾ化合物、p,p´−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジット,p−トルエンスルホニルヒドラジットらのヒドラジン誘導体、セミカルバジド化合物、アジ化合物、ジニトロソペンタメチレンテトラミンらのニトロソ化物、トリアゾール化合物等の有機系発泡剤等が挙げられ、これら各種発泡剤を2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0019】
本発明における発泡剤の配合量は、発泡剤添加量と得られる発泡体の発泡倍率への効果度合いからペースト塩ビ共重合体100重量部に対し、2.0〜15.0重量部であり、3.0〜8.0重量部が特に好ましい。
【0020】
そして、本発明においては発泡体の発泡倍率を大きくするために、重炭酸ナトリウム、アゾ化合物、アジ化合物を成形温度に応じて2種以上組合わせて使用することが好ましい。
【0021】
また、本発明においては、これに必要に応じ亜鉛華(酸化亜鉛)等の分解促進剤を併用することも可能である。
【0022】
さらに、本発明においては、通常配合されている充填剤も適宜使用でき、充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、ケイソウ土、炭酸マグネシウム、酸化チタンなどが挙げられ、該充填剤の配合割合は、ペースト用塩ビ共重合体100重量部に対し、30〜300重量部が好ましく、特に50〜200重量部が好ましい。
【0023】
本発明においては、低温加工性が改善されるため従来用いられているガラスバルーン、シリカバルーン、塩化ビニリデンバルーン等の中空充填剤を適宜配合してもよい。
【0024】
本発明のペースト用塩ビ共重合体組成物は、加熱発泡させることにより容易に発泡体を供することが可能であり、特に従来、発泡体を得ることが困難とされてきた加工温度120〜150℃という低温で発泡体を得ることができ、自動車用アンダーコート等に代表される低温発泡加工分野において有用であると共に、加工時のエネルギー低減化を可能とするものである。
【0025】
本発明のペースト用塩ビ共重合体組成物より得られる発泡体は、発泡セル構造が緻密で、表面平滑性が優れ、耐チッピング性等の強度的な点でも満足しうるものである。
【0026】
本発明のペースト用塩ビ共重合体組成物は、特に自動車用アンダーコート材として優れた特性を有するが、該用途に限らず、従来、発泡成形が困難と考えられてきた各種低温発泡用途に使用することは何ら制限されるものではなく、ペースト加工用途の拡大、並びに省エネルギー効果等が可能となる。
【0027】
本発明のペースト用塩ビ共重合体組成物を発泡成形することにより得られる自動車用アンダーコートは、発泡セル構造が緻密であり、表面平滑性に優れた発泡成形品となり、得られる製品の軽量化が可能となると共に石跳ね等により表面の損傷が少なく、自動車用アンダーコートとして優れた特性を有するものである。
【0028】
【実施例】
実施例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。
【0029】
実施例1
ペースト塩ビ共重合体(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;酢酸ビニル5重量%)100重量部に対して、可塑剤としてセバシン酸ジブチル100重量部、充填剤として炭酸カルシウム100重量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド2重量部及びp,p´−オキシビスベンゼンスルホニルヒドアジド3重量を配合し、該配合物を25℃恒温下でディゾルバー式ミキサー(商品名T.K.HOMODISPER MODEL7C;TOKUSHU KIKA KOGYO(株)製)を用い2500rpm×1.5分間混練を行いペースト用塩ビ共重合体組成物を得た。
【0030】
得られたペースト用塩ビ共重合体組成物をスモールオーブン(マチス社製)でdry厚0.2mmになるようにコーティングし、130℃,20分間、140℃,10分間、140℃,20分間のそれぞれの条件で発泡成形した。
【0031】
得られた発泡体を以下の評価方法に従って評価した。
【0032】
ペースト用塩ビ共重合体組成物の配合、発泡体の評価結果を表1に示す。
【0033】
〜発泡倍率〜
発泡前後の厚みを測定し、その比を発泡倍率とした。
【0034】
〜発泡セル構造〜
発泡体の断面を光学顕微鏡により観察し、発泡セルの大きさ、均一性を評価した(○;緻密/ 均一>△>▲;セル荒れ)。
【0035】
得られたペースト用塩ビ共重合体組成物は、低温での発泡加工が可能であり、得られた発泡体は、発泡倍率が大きく、緻密なセル構造を有し、表面平滑性に優れるものであった。
【0036】
実施例2
可塑剤をフタル酸ジ−2−エチルヘキシル50重量部及びセバシン酸ジブチル50重量部とした以外は、実施例1と同様調整を行いペースト用塩ビ共重合体組成物及び発泡体を得た。
【0037】
ペースト用塩ビ共重合体組成物の配合、発泡体の評価結果を表1に示す。
【0038】
得られたペースト用塩ビ共重合体組成物は、低温での発泡加工が可能であり、得られた発泡体は、発泡倍率が大きく、緻密なセル構造を有し、表面平滑性に優れるものであった。
【0039】
実施例3
ペースト塩ビ共重合体(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;酢酸ビニル8重量%)100重量部に対し、可塑剤をフタル酸ジ−2−エチルヘキシル50重量部及びセバシン酸ジブチル50重量部とした以外は、実施例1と同様調整を行いペースト用塩ビ共重合体組成物及び発泡体を得た。
【0040】
ペースト用塩ビ共重合体組成物の配合、発泡体の評価結果を表1に示す。
【0041】
得られたペースト用塩ビ共重合体組成物は、低温での発泡加工が可能であり、得られた発泡体は、発泡倍率が大きく、緻密なセル構造を有し、表面平滑性に優れるものであった。
【0042】
比較例1
可塑剤をフタル酸ジ−2−エチルヘキシル90重量部及びセバシン酸ジブチル10重量部とした以外は、実施例1と同様調整を行いペースト用塩ビ共重合体組成物及び発泡体を得た。
【0043】
ペースト用塩ビ共重合体組成物の配合、発泡体の評価結果を表2に示す。
【0044】
得られたペースト用塩ビ共重合体組成物は、発泡加工性に劣るものであり、得られた発泡体も発泡体としては劣るものであった。
【0045】
比較例2
可塑剤をフタル酸ジ−2−エチルヘキシル100重量部とした以外は、実施例1と同様調整を行いペースト用塩ビ共重合体組成物及び発泡体を得た。
【0046】
ペースト用塩ビ共重合体組成物の配合、発泡体の評価結果を表2に示す。
【0047】
得られたペースト用塩ビ共重合体組成物は、発泡加工性に劣るものであり、得られた発泡体も発泡体としては劣るものであった。
【0048】
比較例3
可塑剤をアジピン酸ジ−2−エチルヘキシル100重量部とした以外は、実施例1と同様調整を行いペースト用塩ビ共重合体組成物及び発泡体を得た。
【0049】
ペースト用塩ビ共重合体組成物の配合、発泡体の評価結果を表2に示す。
【0050】
得られたペースト用塩ビ共重合体組成物は、発泡加工性に劣るものであり、得られた発泡体も発泡体としては劣るものであった。
【0051】
比較例4
ペースト塩ビ共重合体(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;酢酸ビニル8重量%)100重量部に対し、可塑剤をフタル酸ジ−2−エチルヘキシル100重量部とした以外は、実施例1と同様調整を行いペースト用塩ビ共重合体組成物及び発泡体を得た。
【0052】
ペースト用塩ビ共重合体組成物の配合、発泡体の評価結果を表2に示す。
【0053】
得られたペースト用塩ビ共重合体組成物は、発泡加工性に劣るものであり、得られた発泡体も発泡体としては劣るものであった。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【発明の効果】
本発明のペースト用塩ビ共重合体組成物は、120〜150℃という低温での加工成形条件においても発泡成形が可能であり、得られた発泡体は緻密な発泡セル構造を有し、表面平滑性に優れたものであり、その工業的価値は非常に高いものであり、特に自動車用アンダーコート分野に適したものである。
Claims (5)
- エステル結合を有する化合物単位を2〜20重量%共重合して得られたペースト用塩化ビニル共重合体100重量部、発泡剤2.0〜15.0重量部及び下記式(1)で示される可塑剤20〜200重量部からなるペースト用塩化ビニル共重合体組成物。
R(COOCnH2n+1)2 (1)
(R;炭素数4〜8の2価の脂肪族基、n;1〜7の整数を示す。) - 請求項1に記載のペースト用塩化ビニル共重合体組成物より得られる発泡体。
- 120℃〜150℃の加工温度で発泡成形することを特徴とする請求項2に記載の発泡体の製造方法。
- 請求項1に記載のペースト用塩化ビニル共重合体組成物よりなる自動車用アンダーコート材。
- 請求項2に記載の発泡体よりなる自動車用アンダーコート。
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- 1996-04-11 JP JP8939696A patent/JP3588906B2/ja not_active Expired - Fee Related
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