JP3587932B2 - 繊維強化複合材料の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は繊維強化複合材料の製造方法に関する。更に詳しくは、重合性不飽和化合物、重合開始剤であるビイミダゾール化合物と、1,3−ジカルボニル化合物あるいは複素環を有するメルカプト化合物等の水素供与性化合物との組み合わせからなる重合性組成物を繊維強化材に含浸させ、加熱することにより重合性組成物を硬化させて繊維複合材料を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ラジカル重合開始剤は、熱によって分解しラジカルを発生する熱重合開始剤、すなわち有機ジアゾ化合物、有機過酸化物、有機過酸及びそのエステル等、あるいは紫外線等の光照射によって分子が開裂してラジカルを発生し、重合を開始する光重合開始剤、すなわちアセトフェノン類、チオキサントン類、ベンゾフェノン類などが知られている。
【0003】
熱重合開始剤は、熱によって分解するという特徴故に、化合物自体の熱安定性が悪く低温保存が必要である。また製造、保存時における安全性にも問題があり、爆発などの危険性が常に存在する。
【0004】
一方、光重合開始剤には、一般には紫外光重合開始剤が知られており、熱重合開始剤のような上記問題点が無く、また、地球環境問題、省エネルギー、労務コストの上昇に対応する省力化等の観点から、光重合の特徴である常温でも重合可能であること、速乾性、無溶剤化の可能性等が注目され、開発が行われている。
【0005】
近年では、塗膜の硬化、乾燥や印刷、樹脂凸刷、プリント基板作成用、レジストまたはフォトマスク、白黒またはカラーの転写発色用シートもしくは発色シート作成などの多方面の用途にわたり使用されている。
【0006】
しかしながら、紫外光による硬化は、200〜400nmの紫外光を照射することによって重合性不飽和化合物が重合、硬化するものであり、染料、顔料、繊維強化材、充填材などの隠ぺい率が高い添加物を含有した組成物やFRP、成形体などの厚みの大きい材料では紫外光の透過性が低く、硬化が不十分に終わるため使用が困難である。また、電子線による硬化は紫外光の有する透過性の問題点は解決されるものの、巨額の設備投資、安全設備が必要であるという本質的な問題点がある。
【0007】
一方、紫外光よりも長波長で透過性に優れ、かつ安価な装置で光照射可能な近赤外光を用いて光重合反応を行う検討がなされているが、近赤外光吸収性材料の安価な入手が困難であること等の理由で、一般に広く用いられるには至っていないのが現状である。
【0008】
さて、重合性不飽和化合物に繊維強化材を添加し、重合、硬化することによって製造される複合材料は、成形性、経済性、強度をはじめとする諸物性の長所から、近年広く用いられている。特に、炭素繊維強化複合材料は鉄と比較して二倍以上の強度があり、重量は1/5と軽量であることから構造材料、建築材料などの補強をはじめとして各種用途分野において注目されている。
【0009】
しかし、これら複合材料の製造は、一般に上記熱重合開始剤を用いた熱硬化反応を用いて行われており、重合性組成物の安定性、重合開始剤の爆発の危険性等の点で問題がある。これらの問題点を回避するために、重合開始剤の添加量を低減したり、分解温度の高い熱重合開始剤を用いたりせざるを得ない。そのために、熱重合反応に必要な条件として、高温長時間を要することが多かった。
【0010】
このような熱重合開始剤の問題点を改良する方法として、電子線、紫外線等の放射線硬化を利用する方法が提案されている。しかし、先にも述べたように紫外線は光の透過性が低いことから、強化材料などの各種添加剤を加えた組成物やFRP等の、厚みの大きい材料を硬化させることは事実上困難である。特に、光透過性の低い炭素繊維複合材料等の製造に応用する場合は、材料の表面のみを紫外線硬化によって耐薬品性などを向上させる提案が知られている程度であった(例えば特開昭58−96543)。また、電子線を応用する方法(例えば特開昭61−152433)は設備の経済性などを勘案すると実際的でなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の熱硬化反応による製造方法における熱重合開始剤の低温保存の必要性、爆発などの危険性を回避し、また光照射による硬化では困難であった、繊維強化材を配合した組成物を、効率よく重合を生起せしめ、硬化させることが出来る繊維強化複合材料の製造方法を提供することを目的する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、この課題を解決するために、従来光重合開始剤として知られており、室温保存時には重合性組成物中で安定な化合物であるビイミダゾール化合物と水素供与性化合物とを組み合わせた重合開始反応について鋭意検討した。その結果、驚くべきことにビイミダゾール化合物と水素供与性化合物とを組み合わせた重合開始剤が、加熱によるのみで重合反応を生起し、繊維強化複合材料を製造できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明によれば、重合性不飽和化合物と一般式(1)で表わされるヘキサアリールビイミダゾール化合物
一般式(1);
【化2】
(式中、L1 、L2 およびL3 はそれぞれ独立にアリール基あるいは置換アリール基を示す)
及び水素供与性化合物、繊維強化材を組み合わせて組成物となし、これを加熱することで繊維強化複合材料を製造することが出来る。
【0014】
ビイミダゾール化合物と各種化合物との組み合わせを光重合開始剤として用いることは、従来から知られている。例えば、3級アミン、ロイコ染料との組み合わせ(特公昭45−37377)、連鎖移動剤及び可視光吸収性化合物と組み合わせて可視光により重合させる方法(特開昭47−2528、57−21401、59ー56403等)、2−多環アリールビイミダゾール化合物と水素供与体とを組み合わせて紫外光で重合させる方法(特開昭57−161742、58−45210等)等が開示されている。
【0015】
しかし、従来は、塗料、インク、画像形成材料等の薄膜の硬化を目的とするものであり、厚みの大きい材料、あるいは繊維強化材または充填材などを添加した組成物等に適用した例は全く知られていなかった。また、該重合開始剤は光重合開始剤として用いられているに過ぎなかった。
【0016】
本発明者らは、繊維強化材または充填材などの各種添加材を含有した組成物で、かつ厚みの大きい材料の重合硬化反応に、ビイミダゾール化合物と水素供与体の組み合わせを適用する方法について検討を重ねた結果、驚くべきことに熱エネルギーを付与することにより上記の目的が達成されることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、重合性不飽和化合物、ビイミダゾール化合物、水素供与性化合物、繊維強化材、更には必要に応じて各種充填材を混合して組成物となし、各種方法により加熱することにより、重合硬化反応が生起し、複合材料の製造が可能であることを見い出した。ビイミダゾール化合物と水素供与性化合物との組み合わせは、前述したように光重合開始剤として知られてきたが、本発明によると、熱エネルギーにより水素供与化合物からのビイミダゾール化合物への水素移動が起こり、熱重合開始剤として機能したものと推定している。該重合開始剤が熱重合開始剤として作用するような知見は全くない。しかも、従来の他の熱重合開始剤に比較して、その化学的安定性は非常に高いという特徴がある。
【0018】
本発明で言うビイミダゾール化合物とは、一般式(1)の構造を有する化合物であり、具体的にはビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、ビス(2−o−クロロフェニル−4,5−ジフェニル)イミダゾール、ビス(2−o,p−ジクロロフェニル−4,5−ジフェニル)イミダゾール、ビス(2−o−ブロモフェニル−4,5−ジフェニル)イミダゾール等が挙げられる。
【0019】
また、本発明で言う水素供与性化合物とは、ビイミダゾール化合物に水素を供与してラジカルとなり重合開始剤として機能する化合物であり、3級アミン化合物、メルカプト化合物、活性メチレン基を有する化合物等が挙げられるが、特に1,3−ジカルボニル化合物、または複素環を有するメルカプト化合物が好ましい。更に好ましくは、ジメドン、1,3−ジオキソシクロヘキサン等の1,3−ジケトン化合物、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾオキサゾール、メルカプトベンゾイミダゾールである。
【0020】
本発明に用いる組成物に含まれる重合開始剤であるヘキサアリールビイミダゾール化合物及び水素供与性化合物の量は、重合性化合物の種類、量、繊維強化材の種類、量、厚み等によって最適値が異なるが、一般には重合性化合物の0.01〜10重量%添加される。少なすぎると重合硬化反応が充分に進行しないおそれがあり、多すぎると経済的に不利な上、製造した複合材料の物性低下などが起こる。またビイミダゾール化合物と水素供与化合物の比率は任意であるが、一般には1/10〜10/1(重量比)の範囲である。
【0021】
重合性不飽和化合物としては、特開平4−362935、特開平6−75374明細書に記載されたもの等を挙げることができるが、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸と各種アルコールとのエステル化物、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド等の(メタ)アクリル化合物類、スチレン、ビニルトルエン、クロルスチレンなどのビニルベンゼン類、ビニルイソブチルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類等のビニル化合物、アリルアルコール、酢酸アリル、フタル酸ジアリル類等のアリル基を含有するモノマー等が挙げられる。さらに該モノマーとして、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマー、含リン重合性不飽和モノマー、ブチルイソシアネート、フェニルイソシアネートなどのイソシアネート化合物と上記水酸基含有モノマーとの付加物;リン酸と上記水酸基含有モノマーとの付加物;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、ビニルピリジン類などの含窒素不飽和モノマーなども使用できる。さらに該モノマーとして、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの重合性不飽和基を複数個有する化合物も含まれる。
【0022】
また多価アルコールとエチレンオキシドとの付加物にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応せしめた生成物;前記の多価アルコールとプロピレンオキシドとの付加物にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応せしめた生成物;前記の多価アルコールとε−カプロラクトンとの付加物にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応せしめた生成物等のオリゴマー類も包含され、また重合性不飽和ポリマーの具体例としては、ポリエステル(メタ)アクリル酸を縮合させた樹脂、エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂、エチレン性不飽和基含有エポキシ樹脂、エチレン性不飽和基含有含リンエポキシ樹脂、エチレン性不飽和基含有アクリル樹脂、エチレン性不飽和基含有シリコン樹脂、エチレン性不飽和基含有メラミン樹脂などがあげられる。
【0023】
本発明で用いる組成物中に含まれる繊維強化材とは、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ビニロン繊維をはじめとする公知の繊維材料であればよいが、複合材料の強度等の物性、熱伝導による重合硬化反応の有効性等を考慮すると、炭素繊維が特に好ましい。
【0024】
炭素繊維は、各種製造方法で製造された任意の炭素繊維が使用でき、例えばピッチ系、PAN(ポリアクリロニトリル)系、気相成長法系などの炭素繊維が使用できる。より好ましくは引張強度2GPa以上、弾性率100GPa以上の、高強度高弾性率の炭素繊維である。炭素繊維は一般に直径10μ前後のフィラメントを2000〜20000本程度、合糸して形成される。
【0025】
重合性不飽和化合物と繊維強化材との比率は任意であるが、一般には1/10〜10/1(重量比)である。比率が小さすぎると繊維間の付着性、表面形状などが悪化する。比率が大きすぎると繊維同士の接触面積が小さくなり強度等の諸物性が低下する上、硬化時の熱伝導が低下して重合硬化反応の遅延等の問題が生じる事もある。
【0026】
本発明で用いる組成物中には、必要に応じて各種充填材を添加することも出来る。有機系充填材としては、例えば各種重合物を微細に粉砕したものや、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等のマイクロバルーンが挙げられる。マイクロバルーンには、組成物の硬化収縮を抑制する機能が期待される。
【0027】
また、無機系充填材としては、シリカ、シリカーアルミナ、アルミナ、水酸化アルミニウム、石英、ガラス、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、雲母、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化チタン、リン酸カルシウム等の粉末及びそれら粉末の表面を多官能(メタ)アクリレート系モノマーまたはシランカップリング剤で被覆処理したもの等が挙げられる。
【0028】
さらに、無機/有機複合充填材としては、上記無機充填材をエチレン性不飽和化合物に混合し、重合硬化させた後に微細に粉砕したもの等が挙げられる。これらの充填材は、同種あるいは異種の充填材を二種以上別途に添加、或いは混合した後に添加しても何等差し支えない。
【0029】
充填材は任意の量を添加することが出来るが、一般には重合性不飽和化合物に対して0〜500重量%、好ましくは0〜300重量%添加される。少なすぎると隠ぺい性、強度、応力緩和等の効果が低くなり、多すぎると粘度が上がりすぎて作業性、操作性が悪くなったり、気泡が抜け難くなったり、あるいは光の透過性が悪く、重合硬化反応に悪影響を及ぼしたりする等の問題点が出てくるおそれがある。
【0030】
本発明の製造方法における加熱方法は、硬化される複合材料の形状、組成、硬化に必要な温度、時間等を勘案して適宜選択することができる。具体的には、従来行われている任意の方法、すなわち加熱炉内での加熱、熱風による加熱、ヒーターなどを用いた放射線による加熱などが挙げられる。硬化性組成物を含浸させた繊維強化材の温度が、硬化に必要な温度に達しさえすれば、加熱の方法は限定されない。
【0031】
硬化性組成物は、室温保存時には安定である必要があることから、硬化に際しては、より高温、すなわち一般には70℃〜250℃程度に加熱される。高温に加熱する方が反応速度は早くなるが、硬化時の内部応力、ひずみの問題、あるいはエネルギー効率などの観点からは低温の方が好ましい。それらを勘案すると、100℃〜150℃での硬化が望ましい。
【0032】
加熱時間は加熱温度により異なるが、一般には1分〜60分の範囲である。本発明の製造方法を連続生産に適用する場合は、短時間である方が好ましく、比較的高温で短時間で硬化させる(例えば200℃/1分)。また、耐熱性等に問題のある素材を含む材料を加熱する必要がある場合は、比較的時間をかけて低温で硬化反応を行わしめることも可能である(例えば70℃/2時間)。
【0033】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明する。
【0034】
(実施例1)
不飽和ポリエステル樹脂リゴラックG−200GMA(昭和高分子社製)100g、ビス(2−o−クロロフェニル−4,5−ジフェニル)イミダゾール(以下、HABIと略す)2g、メルカプトベンゾチアゾール2gを混合し、硬化性組成物を作製した。10cm×6cmに切断した炭素繊維シート(東邦レーヨン社製)を20枚積層し、室温で上記組成物を充分に含浸させた。その後、加圧して積層物の硬化性組成物と炭素繊維との重量比が1:1になるように調製した。なおこの時の硬化前の積層物の厚みは4.0mmであった。この積層物を120℃の乾燥機に入れ、10分後に取り出し、強度測定を実施した。表面、裏面共、バーコール硬度(硬質)48であり、十分に硬化していた。
【0035】
(比較例1)
HABIを添加しない以外は実施例1と全く同様に繊維強化複合材料の製造試験を実施した。120℃で10分間硬化反応を行ったが、バーコール硬度は軟質硬度計で15であり、しかも表面タックがある上、繊維間が剥離するという、硬化不十分な状態であった。
【0036】
(実施例2)
実施例1の硬化性組成物を、実施例1と同様にして、ガラス繊維を#30サーフェイスマット/#450チョップドストランドマット3ply/#30サーフェイスマットの構成で厚さ3mmに積層したものに含浸させた。実施例1と同様、120℃の乾燥機中で硬化反応を行った。硬化物の硬度測定を行ったところ、表面、裏面共、バーコール硬度(硬質用)46であり、充分に硬化していた。
【0037】
(実施例3)
実施例1と同様に、炭素繊維に硬化性組成物を含浸させた。赤外線ラジエーター(ヘレウス社製、商品名TWIN TUBE)を10分間照射した。炭素繊維の内部温度は150℃に達していた。硬化物の硬度測定によると、表面、裏面共、バーコール硬度(硬質用)49であり、充分に硬化していた。
【0038】
(比較例2)
実施例3と同様に、炭素繊維に硬化性組成物を含浸させた。波長領域200〜400nmの範囲に分光分布を有する高圧水銀ランプによって紫外光を10分間照射した。表面のみが光反応によって硬化したものの、内面及び裏面は温度上昇が見られず、硬化反応が進行しなかった。
【0039】
(実施例4)
実施例1の不飽和ポリエステル樹脂リゴラックG−200GMAに変えて、エポキシアクリレート樹脂リポキシSP−1509(昭和高分子社製)をスチレンで30%希釈した重合性組成物を用いる以外は実施例1と全く同様に、繊維強化複合材料の製造試験を実施した。強度測定によると、表面、裏面共、バーコール硬度(硬質用)40であり、充分に硬化していた。
【0040】
(実施例5)
実施例1のメルカプトベンゾチアゾールに変えて、ジメドン(5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサジオン)2gを用いる以外は実施例1と全く同様に、繊維強化複合材料の製造試験を実施した。強度測定によると、表面、裏面共、バーコール硬度(硬質用)49であり、充分に硬化していた。
【0041】
(比較例3)
HABIを添加しない以外は実施例1と全く同様に繊維強化複合材料の製造試験を実施した。120℃で10分間硬化反応を行ったが、バーコール硬度は軟質硬度計で10であり、しかも表面タックがある上、繊維間が剥離するという、硬化不十分な状態であった。
【0042】
(実施例6:組成物の保存安定試験)
実施例1の硬化性組成物を40℃の恒温機中で保存試験を行った。
3週間後に組成物の形状及び硬化試験を行ったが、保存試験前の結果と同じであった。
【0043】
(比較例4)
不飽和ポリエステル樹脂リゴラックG−200GMA(昭和高分子社製)100gに、熱重合開始剤であるラウロイルパーオキサイドを4g添加し、実施例6と同様、保存安定試験を行った。40℃、1週間後、ゲル化しており、充分な保存安定性が得られなかった。
【0044】
(比較例5)
比較例4のラウロイルパーオキサイドの代わりに、3,3’−4,4’−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン 4gを添加する以外は、比較例4と同様、保存安定試験を行った。40℃、1週間後、ゲル化しており、充分な保存安定性が得られなかった。
【0045】
【発明の効果】
本発明により、爆発などの危険性の無い重合開始剤及び保存安定性の高い硬化性組成物を用いた、繊維強化複合材料の製造方法が提供された。
【発明の属する技術分野】
本発明は繊維強化複合材料の製造方法に関する。更に詳しくは、重合性不飽和化合物、重合開始剤であるビイミダゾール化合物と、1,3−ジカルボニル化合物あるいは複素環を有するメルカプト化合物等の水素供与性化合物との組み合わせからなる重合性組成物を繊維強化材に含浸させ、加熱することにより重合性組成物を硬化させて繊維複合材料を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ラジカル重合開始剤は、熱によって分解しラジカルを発生する熱重合開始剤、すなわち有機ジアゾ化合物、有機過酸化物、有機過酸及びそのエステル等、あるいは紫外線等の光照射によって分子が開裂してラジカルを発生し、重合を開始する光重合開始剤、すなわちアセトフェノン類、チオキサントン類、ベンゾフェノン類などが知られている。
【0003】
熱重合開始剤は、熱によって分解するという特徴故に、化合物自体の熱安定性が悪く低温保存が必要である。また製造、保存時における安全性にも問題があり、爆発などの危険性が常に存在する。
【0004】
一方、光重合開始剤には、一般には紫外光重合開始剤が知られており、熱重合開始剤のような上記問題点が無く、また、地球環境問題、省エネルギー、労務コストの上昇に対応する省力化等の観点から、光重合の特徴である常温でも重合可能であること、速乾性、無溶剤化の可能性等が注目され、開発が行われている。
【0005】
近年では、塗膜の硬化、乾燥や印刷、樹脂凸刷、プリント基板作成用、レジストまたはフォトマスク、白黒またはカラーの転写発色用シートもしくは発色シート作成などの多方面の用途にわたり使用されている。
【0006】
しかしながら、紫外光による硬化は、200〜400nmの紫外光を照射することによって重合性不飽和化合物が重合、硬化するものであり、染料、顔料、繊維強化材、充填材などの隠ぺい率が高い添加物を含有した組成物やFRP、成形体などの厚みの大きい材料では紫外光の透過性が低く、硬化が不十分に終わるため使用が困難である。また、電子線による硬化は紫外光の有する透過性の問題点は解決されるものの、巨額の設備投資、安全設備が必要であるという本質的な問題点がある。
【0007】
一方、紫外光よりも長波長で透過性に優れ、かつ安価な装置で光照射可能な近赤外光を用いて光重合反応を行う検討がなされているが、近赤外光吸収性材料の安価な入手が困難であること等の理由で、一般に広く用いられるには至っていないのが現状である。
【0008】
さて、重合性不飽和化合物に繊維強化材を添加し、重合、硬化することによって製造される複合材料は、成形性、経済性、強度をはじめとする諸物性の長所から、近年広く用いられている。特に、炭素繊維強化複合材料は鉄と比較して二倍以上の強度があり、重量は1/5と軽量であることから構造材料、建築材料などの補強をはじめとして各種用途分野において注目されている。
【0009】
しかし、これら複合材料の製造は、一般に上記熱重合開始剤を用いた熱硬化反応を用いて行われており、重合性組成物の安定性、重合開始剤の爆発の危険性等の点で問題がある。これらの問題点を回避するために、重合開始剤の添加量を低減したり、分解温度の高い熱重合開始剤を用いたりせざるを得ない。そのために、熱重合反応に必要な条件として、高温長時間を要することが多かった。
【0010】
このような熱重合開始剤の問題点を改良する方法として、電子線、紫外線等の放射線硬化を利用する方法が提案されている。しかし、先にも述べたように紫外線は光の透過性が低いことから、強化材料などの各種添加剤を加えた組成物やFRP等の、厚みの大きい材料を硬化させることは事実上困難である。特に、光透過性の低い炭素繊維複合材料等の製造に応用する場合は、材料の表面のみを紫外線硬化によって耐薬品性などを向上させる提案が知られている程度であった(例えば特開昭58−96543)。また、電子線を応用する方法(例えば特開昭61−152433)は設備の経済性などを勘案すると実際的でなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の熱硬化反応による製造方法における熱重合開始剤の低温保存の必要性、爆発などの危険性を回避し、また光照射による硬化では困難であった、繊維強化材を配合した組成物を、効率よく重合を生起せしめ、硬化させることが出来る繊維強化複合材料の製造方法を提供することを目的する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、この課題を解決するために、従来光重合開始剤として知られており、室温保存時には重合性組成物中で安定な化合物であるビイミダゾール化合物と水素供与性化合物とを組み合わせた重合開始反応について鋭意検討した。その結果、驚くべきことにビイミダゾール化合物と水素供与性化合物とを組み合わせた重合開始剤が、加熱によるのみで重合反応を生起し、繊維強化複合材料を製造できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明によれば、重合性不飽和化合物と一般式(1)で表わされるヘキサアリールビイミダゾール化合物
一般式(1);
【化2】
(式中、L1 、L2 およびL3 はそれぞれ独立にアリール基あるいは置換アリール基を示す)
及び水素供与性化合物、繊維強化材を組み合わせて組成物となし、これを加熱することで繊維強化複合材料を製造することが出来る。
【0014】
ビイミダゾール化合物と各種化合物との組み合わせを光重合開始剤として用いることは、従来から知られている。例えば、3級アミン、ロイコ染料との組み合わせ(特公昭45−37377)、連鎖移動剤及び可視光吸収性化合物と組み合わせて可視光により重合させる方法(特開昭47−2528、57−21401、59ー56403等)、2−多環アリールビイミダゾール化合物と水素供与体とを組み合わせて紫外光で重合させる方法(特開昭57−161742、58−45210等)等が開示されている。
【0015】
しかし、従来は、塗料、インク、画像形成材料等の薄膜の硬化を目的とするものであり、厚みの大きい材料、あるいは繊維強化材または充填材などを添加した組成物等に適用した例は全く知られていなかった。また、該重合開始剤は光重合開始剤として用いられているに過ぎなかった。
【0016】
本発明者らは、繊維強化材または充填材などの各種添加材を含有した組成物で、かつ厚みの大きい材料の重合硬化反応に、ビイミダゾール化合物と水素供与体の組み合わせを適用する方法について検討を重ねた結果、驚くべきことに熱エネルギーを付与することにより上記の目的が達成されることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、重合性不飽和化合物、ビイミダゾール化合物、水素供与性化合物、繊維強化材、更には必要に応じて各種充填材を混合して組成物となし、各種方法により加熱することにより、重合硬化反応が生起し、複合材料の製造が可能であることを見い出した。ビイミダゾール化合物と水素供与性化合物との組み合わせは、前述したように光重合開始剤として知られてきたが、本発明によると、熱エネルギーにより水素供与化合物からのビイミダゾール化合物への水素移動が起こり、熱重合開始剤として機能したものと推定している。該重合開始剤が熱重合開始剤として作用するような知見は全くない。しかも、従来の他の熱重合開始剤に比較して、その化学的安定性は非常に高いという特徴がある。
【0018】
本発明で言うビイミダゾール化合物とは、一般式(1)の構造を有する化合物であり、具体的にはビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、ビス(2−o−クロロフェニル−4,5−ジフェニル)イミダゾール、ビス(2−o,p−ジクロロフェニル−4,5−ジフェニル)イミダゾール、ビス(2−o−ブロモフェニル−4,5−ジフェニル)イミダゾール等が挙げられる。
【0019】
また、本発明で言う水素供与性化合物とは、ビイミダゾール化合物に水素を供与してラジカルとなり重合開始剤として機能する化合物であり、3級アミン化合物、メルカプト化合物、活性メチレン基を有する化合物等が挙げられるが、特に1,3−ジカルボニル化合物、または複素環を有するメルカプト化合物が好ましい。更に好ましくは、ジメドン、1,3−ジオキソシクロヘキサン等の1,3−ジケトン化合物、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾオキサゾール、メルカプトベンゾイミダゾールである。
【0020】
本発明に用いる組成物に含まれる重合開始剤であるヘキサアリールビイミダゾール化合物及び水素供与性化合物の量は、重合性化合物の種類、量、繊維強化材の種類、量、厚み等によって最適値が異なるが、一般には重合性化合物の0.01〜10重量%添加される。少なすぎると重合硬化反応が充分に進行しないおそれがあり、多すぎると経済的に不利な上、製造した複合材料の物性低下などが起こる。またビイミダゾール化合物と水素供与化合物の比率は任意であるが、一般には1/10〜10/1(重量比)の範囲である。
【0021】
重合性不飽和化合物としては、特開平4−362935、特開平6−75374明細書に記載されたもの等を挙げることができるが、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸と各種アルコールとのエステル化物、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド等の(メタ)アクリル化合物類、スチレン、ビニルトルエン、クロルスチレンなどのビニルベンゼン類、ビニルイソブチルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類等のビニル化合物、アリルアルコール、酢酸アリル、フタル酸ジアリル類等のアリル基を含有するモノマー等が挙げられる。さらに該モノマーとして、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマー、含リン重合性不飽和モノマー、ブチルイソシアネート、フェニルイソシアネートなどのイソシアネート化合物と上記水酸基含有モノマーとの付加物;リン酸と上記水酸基含有モノマーとの付加物;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、ビニルピリジン類などの含窒素不飽和モノマーなども使用できる。さらに該モノマーとして、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの重合性不飽和基を複数個有する化合物も含まれる。
【0022】
また多価アルコールとエチレンオキシドとの付加物にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応せしめた生成物;前記の多価アルコールとプロピレンオキシドとの付加物にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応せしめた生成物;前記の多価アルコールとε−カプロラクトンとの付加物にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応せしめた生成物等のオリゴマー類も包含され、また重合性不飽和ポリマーの具体例としては、ポリエステル(メタ)アクリル酸を縮合させた樹脂、エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂、エチレン性不飽和基含有エポキシ樹脂、エチレン性不飽和基含有含リンエポキシ樹脂、エチレン性不飽和基含有アクリル樹脂、エチレン性不飽和基含有シリコン樹脂、エチレン性不飽和基含有メラミン樹脂などがあげられる。
【0023】
本発明で用いる組成物中に含まれる繊維強化材とは、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ビニロン繊維をはじめとする公知の繊維材料であればよいが、複合材料の強度等の物性、熱伝導による重合硬化反応の有効性等を考慮すると、炭素繊維が特に好ましい。
【0024】
炭素繊維は、各種製造方法で製造された任意の炭素繊維が使用でき、例えばピッチ系、PAN(ポリアクリロニトリル)系、気相成長法系などの炭素繊維が使用できる。より好ましくは引張強度2GPa以上、弾性率100GPa以上の、高強度高弾性率の炭素繊維である。炭素繊維は一般に直径10μ前後のフィラメントを2000〜20000本程度、合糸して形成される。
【0025】
重合性不飽和化合物と繊維強化材との比率は任意であるが、一般には1/10〜10/1(重量比)である。比率が小さすぎると繊維間の付着性、表面形状などが悪化する。比率が大きすぎると繊維同士の接触面積が小さくなり強度等の諸物性が低下する上、硬化時の熱伝導が低下して重合硬化反応の遅延等の問題が生じる事もある。
【0026】
本発明で用いる組成物中には、必要に応じて各種充填材を添加することも出来る。有機系充填材としては、例えば各種重合物を微細に粉砕したものや、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等のマイクロバルーンが挙げられる。マイクロバルーンには、組成物の硬化収縮を抑制する機能が期待される。
【0027】
また、無機系充填材としては、シリカ、シリカーアルミナ、アルミナ、水酸化アルミニウム、石英、ガラス、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、雲母、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化チタン、リン酸カルシウム等の粉末及びそれら粉末の表面を多官能(メタ)アクリレート系モノマーまたはシランカップリング剤で被覆処理したもの等が挙げられる。
【0028】
さらに、無機/有機複合充填材としては、上記無機充填材をエチレン性不飽和化合物に混合し、重合硬化させた後に微細に粉砕したもの等が挙げられる。これらの充填材は、同種あるいは異種の充填材を二種以上別途に添加、或いは混合した後に添加しても何等差し支えない。
【0029】
充填材は任意の量を添加することが出来るが、一般には重合性不飽和化合物に対して0〜500重量%、好ましくは0〜300重量%添加される。少なすぎると隠ぺい性、強度、応力緩和等の効果が低くなり、多すぎると粘度が上がりすぎて作業性、操作性が悪くなったり、気泡が抜け難くなったり、あるいは光の透過性が悪く、重合硬化反応に悪影響を及ぼしたりする等の問題点が出てくるおそれがある。
【0030】
本発明の製造方法における加熱方法は、硬化される複合材料の形状、組成、硬化に必要な温度、時間等を勘案して適宜選択することができる。具体的には、従来行われている任意の方法、すなわち加熱炉内での加熱、熱風による加熱、ヒーターなどを用いた放射線による加熱などが挙げられる。硬化性組成物を含浸させた繊維強化材の温度が、硬化に必要な温度に達しさえすれば、加熱の方法は限定されない。
【0031】
硬化性組成物は、室温保存時には安定である必要があることから、硬化に際しては、より高温、すなわち一般には70℃〜250℃程度に加熱される。高温に加熱する方が反応速度は早くなるが、硬化時の内部応力、ひずみの問題、あるいはエネルギー効率などの観点からは低温の方が好ましい。それらを勘案すると、100℃〜150℃での硬化が望ましい。
【0032】
加熱時間は加熱温度により異なるが、一般には1分〜60分の範囲である。本発明の製造方法を連続生産に適用する場合は、短時間である方が好ましく、比較的高温で短時間で硬化させる(例えば200℃/1分)。また、耐熱性等に問題のある素材を含む材料を加熱する必要がある場合は、比較的時間をかけて低温で硬化反応を行わしめることも可能である(例えば70℃/2時間)。
【0033】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明する。
【0034】
(実施例1)
不飽和ポリエステル樹脂リゴラックG−200GMA(昭和高分子社製)100g、ビス(2−o−クロロフェニル−4,5−ジフェニル)イミダゾール(以下、HABIと略す)2g、メルカプトベンゾチアゾール2gを混合し、硬化性組成物を作製した。10cm×6cmに切断した炭素繊維シート(東邦レーヨン社製)を20枚積層し、室温で上記組成物を充分に含浸させた。その後、加圧して積層物の硬化性組成物と炭素繊維との重量比が1:1になるように調製した。なおこの時の硬化前の積層物の厚みは4.0mmであった。この積層物を120℃の乾燥機に入れ、10分後に取り出し、強度測定を実施した。表面、裏面共、バーコール硬度(硬質)48であり、十分に硬化していた。
【0035】
(比較例1)
HABIを添加しない以外は実施例1と全く同様に繊維強化複合材料の製造試験を実施した。120℃で10分間硬化反応を行ったが、バーコール硬度は軟質硬度計で15であり、しかも表面タックがある上、繊維間が剥離するという、硬化不十分な状態であった。
【0036】
(実施例2)
実施例1の硬化性組成物を、実施例1と同様にして、ガラス繊維を#30サーフェイスマット/#450チョップドストランドマット3ply/#30サーフェイスマットの構成で厚さ3mmに積層したものに含浸させた。実施例1と同様、120℃の乾燥機中で硬化反応を行った。硬化物の硬度測定を行ったところ、表面、裏面共、バーコール硬度(硬質用)46であり、充分に硬化していた。
【0037】
(実施例3)
実施例1と同様に、炭素繊維に硬化性組成物を含浸させた。赤外線ラジエーター(ヘレウス社製、商品名TWIN TUBE)を10分間照射した。炭素繊維の内部温度は150℃に達していた。硬化物の硬度測定によると、表面、裏面共、バーコール硬度(硬質用)49であり、充分に硬化していた。
【0038】
(比較例2)
実施例3と同様に、炭素繊維に硬化性組成物を含浸させた。波長領域200〜400nmの範囲に分光分布を有する高圧水銀ランプによって紫外光を10分間照射した。表面のみが光反応によって硬化したものの、内面及び裏面は温度上昇が見られず、硬化反応が進行しなかった。
【0039】
(実施例4)
実施例1の不飽和ポリエステル樹脂リゴラックG−200GMAに変えて、エポキシアクリレート樹脂リポキシSP−1509(昭和高分子社製)をスチレンで30%希釈した重合性組成物を用いる以外は実施例1と全く同様に、繊維強化複合材料の製造試験を実施した。強度測定によると、表面、裏面共、バーコール硬度(硬質用)40であり、充分に硬化していた。
【0040】
(実施例5)
実施例1のメルカプトベンゾチアゾールに変えて、ジメドン(5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサジオン)2gを用いる以外は実施例1と全く同様に、繊維強化複合材料の製造試験を実施した。強度測定によると、表面、裏面共、バーコール硬度(硬質用)49であり、充分に硬化していた。
【0041】
(比較例3)
HABIを添加しない以外は実施例1と全く同様に繊維強化複合材料の製造試験を実施した。120℃で10分間硬化反応を行ったが、バーコール硬度は軟質硬度計で10であり、しかも表面タックがある上、繊維間が剥離するという、硬化不十分な状態であった。
【0042】
(実施例6:組成物の保存安定試験)
実施例1の硬化性組成物を40℃の恒温機中で保存試験を行った。
3週間後に組成物の形状及び硬化試験を行ったが、保存試験前の結果と同じであった。
【0043】
(比較例4)
不飽和ポリエステル樹脂リゴラックG−200GMA(昭和高分子社製)100gに、熱重合開始剤であるラウロイルパーオキサイドを4g添加し、実施例6と同様、保存安定試験を行った。40℃、1週間後、ゲル化しており、充分な保存安定性が得られなかった。
【0044】
(比較例5)
比較例4のラウロイルパーオキサイドの代わりに、3,3’−4,4’−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン 4gを添加する以外は、比較例4と同様、保存安定試験を行った。40℃、1週間後、ゲル化しており、充分な保存安定性が得られなかった。
【0045】
【発明の効果】
本発明により、爆発などの危険性の無い重合開始剤及び保存安定性の高い硬化性組成物を用いた、繊維強化複合材料の製造方法が提供された。
Claims (5)
- 繊維強化材が炭素繊維である、請求項1記載の繊維強化複合材料の製造方法。
- 水素供与性化合物が、1,3−ジカルボニル化合物、または複素環を有するメルカプト化合物である、請求項1または2記載の繊維強化複合材料の製造方法。
- 1,3−ジカルボニル化合物が、1,3−ジケトン化合物である、請求項3記載の繊維強化複合材料の製造方法。
- 複素環を有するメルカプト化合物が、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、メルカプトベンゾオキサゾールから選ばれる少なくとも一種である、請求項3記載の繊維強化複合材料の製造方法。
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