JP3722232B2 - 活性エネルギー線硬化型樹脂組成物 - Google Patents

活性エネルギー線硬化型樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、酸素が存在している雰囲気でも、硬化性が高く、かつ表面硬度が高い硬化塗膜を与える活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
紫外線や電子線等の活性エネルギー線により、硬化する活性エネルギー線硬化型樹脂は、硬化が速いという特徴があるため、塗料、インキ、接着剤、コーティング剤等の用途に広く利用されている。特に、硬化後、直ちに硬化物を重ねたり、巻きとる等の後工程があるプロセスには、特に硬化が速い特徴を生かすことができ、活性エネルギー線硬化型樹脂の利用が進んでいる。
【0003】
しかしながら、活性エネルギー線硬化型樹脂は、空気中において硬化させると、表面層の硬化が遅く、後工程において、表面が汚れたり、傷がつく欠点がある。また、スプレー塗装、グラビヤ印刷等により作ることができる2〜3μm以下の薄い状態をとる活性エネルギー線硬化型樹脂は、空気中では、硬化しない欠点がある。これらの欠点を克服するために、これまでに多くの提案がなされている。例えば、▲1▼窒素ガス等のイナートガスを吹き込むことにより、硬化する際の雰囲気を、空気からイナートガスに置換することが知られており、また、▲2▼活性エネルギー線硬化型樹脂に、ジフェニルイソデシルホスファイト、サイクリックネオペンタテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト等の亜リン酸エステル化合物を添加し、光もしくは電子線等の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物として用いることが、特開昭63-72740号公報、特開昭64-79213号公報等に提案されており、これらの亜リン酸エステル化合物を1〜3重量%程度の範囲で含有させた実施例が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記▲1▼のイナートガスを用い硬化する方法は、イナートガスが高価である欠点があり、紫外線硬化においては一般には用いられていない。電子線硬化においては、イナートガスにより硬化雰囲気の酸素濃度を200ppm以下に保ち、硬化をさせている。しかしながら、高速で被照射物を送り込み硬化させる際には、被照射物が空気を付着しているので、硬化雰囲気の酸素濃度を200ppm以下に保つことができず、特に表面の硬化が不十分になる欠点がある。上記▲2▼の亜リン酸エステル化合物を活性エネルギー線硬化型樹脂中に添加する方法は、平易な方法であるが、硬化性をあげるためには大量に添加する必要があり、大量に添加すると、その未反応成分により塗膜の表面硬度が低下する欠点がある。
【0005】
本発明の課題は、酸素が存在している雰囲気でも、硬化性が高く、かつ表面硬度が高い硬化塗膜を与える活性エネルギー線硬化樹脂組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、この様な状況に鑑みて鋭意研究した結果、ラジカル重合性を有する化合物を主成分とする活性エネルギー線硬化型樹脂に、ラジカル重合性不飽和結合を有する亜リン酸エステル化合物を25重量%以上含有させると、酸素が存在している雰囲気でも硬化性が高く、かつ表面硬度が高い硬化塗膜を得ることができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、ラジカル重合性を有する化合物(A)を主成分とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、ラジカル重合性不飽和結合を有する亜リン酸エステル化合物(B)を25重量%以上含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供するものである。
【0008】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としては、ラジカル重合性を有する化合物(A)、例えばラジカル重合性を有するプレポリマー(A1 )やラジカル重合性を有するモノマー(A2 )等を主成分とし、更に必要に応じて非反応性樹脂、添加剤、充填剤、その他の成分、例えば紫外線硬化させる場合には光重合開始剤等を添加したものであって、かつ該ラジカル重合性を有する化合物(A)の一部乃至全部としてラジカル重合性不飽和結合を有する亜リン酸エステル化合物(B)を25重量%以上含有するもの等が挙げられる。
【0009】
上記ラジカル重合性を有するプレポリマー(A1 )としては、例えば分子量500以上の、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、フォスファゼン(メタ)アクリレート、アクリル共重合体へ(メタ)アクリロイル基を導入したもの等の(メタ)アクリル化合物;ポリブタジエンや不飽和ポリエステル化合物等の主鎖および側鎖に不飽和結合を有する化合物;アリル基、ビニル基、ビニルエーテル基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基等のラジカル重合性2重結合を有する化合物;チオール化合物、アミノ化合物等のラジカル付加反応を起こす化合物、ラジカル重合性不飽和結合を有する亜リン酸エステルプレポリマーなどが挙げられる。これらは、それぞれの要求物性を満足するように、適宜選択して用いればよく、通常分子量が500〜30000程度のものを単独または混合して用いる。
【0010】
また、ラジカル重合性を有するモノマー(A2 )としては、分子量500未満のもので、塊状もしくは液状のラジカル重合もしくはラジカル付加反応が可能な化合物が挙げられ、例えば(メタ)アクリル化合物、不飽和ポリエステル化合物、ビニル化合物、ビニルエーテル化合物、マレイミド化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、チオール化合物、アミノ化合物、ラジカル重合性不飽和結合を有する亜リン酸エステルモノマーなどが挙げられる。なかでも反応性が高いため、(メタ)アクリル化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、ビニルエーテル化合物が好ましい。
【0011】
これらラジカル重合性を有するモノマー(A2 )の具体例としては、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジオキシジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、トリプロピレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0012】
これらラジカル重合性を有するプレポリマー(A1 )とラジカル重合性を有するモノマー(A2 )の配合割合は、特に限定されないが、ラジカル重合性を有するプレポリマー(A1 )とラジカル重合性を有するモノマー(A2 )の合計100重量%中において、ラジカル重合性を有するモノマー(A2 )含有率は、通常50重量%以下、好ましくは5〜30重量%である。なお、(メタ)アクリル酸低級アルキルエステル等の揮発性の単量体を用いる場合には、硬化の際に蒸発して生ずる悪臭、毒性等の問題を防止するため、上記の配合割合よりも更に少量、例えば3〜15重量%となる割合で用いることが好ましい。
【0013】
本発明で用いるラジカル重合性不飽和結合を有する亜リン酸エステル化合物(B)は、前記したようにラジカル重合性を有する化合物(A)の一部乃至全部として使用するものであり、通常上記ラジカル重合性を有するプレポリマー(A1 )やラジカル重合性を有するモノマー(A2 )等と同様に使用する。但し、本発明の効果を達成するには、亜リン酸エステル化合物(B)を活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中に25重量%以上含有させることが必要であり、なかでも粘度や物性の調整が容易で実用性の高い樹脂組成物が得られる点で30〜70重量%含有させたものが好ましい。尚、亜リン酸エステル化合物(B)の含有率が25重量%未満では、酸素存在下での硬化性が十分でなく、表面硬度も低くなる。
【0014】
上記亜リン酸エステル化合物(B)としては、ラジカルにより重合反応を起こす不飽和結合を有する亜リン酸エステル化合物であればいずれもよく、例えばアクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、ビニルエーテル基、アリル基、ビニル基、マレイミド基のようなラジカル重合性不飽和基を分子内に有する亜リン酸エステルのモノマーやプレポリマーなどが挙げられる。
【0015】
以下に本発明で用いる亜リン酸エステル化合物(B)の代表例を一般式(1)〜(6)で示す。
【0016】
【化1】
Figure 0003722232
【0017】
〔上記一般式(1)中、nは1〜3の整数、Rはラジカル重合性不飽和結合を有する基、R1 はアルキル基、アリール基またはアラルキル基である。R1 は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えばハロゲン、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシリオキシ基、アルカノイル基、シアノ基、水酸基、アミノ基などが挙げられる。〕
【0018】
【化2】
Figure 0003722232
【0019】
〔上記一般式(2)中、nは1〜2の整数、mは0〜2の整数、Rはラジカル重合性不飽和結合を有する基、R1 はアルキル基、アリール基またはアラルキル基である。R1 は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えばハロゲン、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシリオキシ基、アルカノイル基、シアノ基、水酸基、アミノ基などが挙げられる。R2 はアルキレン基、アリーレン基、アラールキレン基、又はこれらの基からなる群から選ばれる1種以上の基を炭素−炭素結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合およびイミド結合からなる群から選ばれる1種以上の結合で結合したものである。R2 は更に置換基を有していてもよく、置換基としては、例えばハロゲン、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシリオキシ基、アルカノイル基、シアノ基、水酸基、アミノ基などが挙げられる。〕
【0020】
【化3】
Figure 0003722232
【0021】
〔上記一般式(3)中、Rはラジカル重合性不飽和結合を有する基、R3 はアルキレン基、アリーレン基、アラールキレン基、又はこれらの基からなる群から選ばれる1種以上の基を炭素−炭素結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合およびイミド結合からなる群から選ばれる1種以上の結合で結合したものである。R3 は更に置換基を有していてもよく、置換基としては、例えばハロゲン、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシリオキシ基、アルカノイル基、シアノ基、水酸基、アミノ基などが挙げられる。〕
【0022】
【化4】
Figure 0003722232
【0023】
〔上記一般式(4)中、mは0〜1の整数、Rはラジカル重合性不飽和結合を有する基、R1 はアルキル基、アリール基またはアラルキル基である。R1 は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えばハロゲン、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシリオキシ基、アルカノイル基、シアノ基、水酸基、アミノ基などが挙げられる。R4 は脂肪族炭化水素基、芳香族基、環状脂肪族基、又はこれらの基からなる群から選ばれる1種以上の基を炭素−炭素結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合およびイミド結合からなる群から選ばれる1種以上の結合で結合したものである。R4 は更に置換基を有していてもよく、置換基としては、例えばハロゲン、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシリオキシ基、アルカノイル基、シアノ基、水酸基、アミノ基などが挙げられる。〕
【0024】
【化5】
Figure 0003722232
【0025】
〔上記一般式(5)中、nは1〜2の整数、mは3〜6の整数、Rはラジカル重合性不飽和結合を有する基、R1 、R2 はアルキル基、アリール基またはアラルキル基である。R1 、R2 は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えばハロゲン、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシリオキシ基、アルカノイル基、シアノ基、水酸基、アミノ基などが挙げられる。R5 は脂肪族炭化水素基、芳香族基、環状脂肪族基、又はこれらの基からなる群から選ばれる1種以上の基を炭素−炭素結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合およびイミド結合からなる群から選ばれる1種以上の結合で結合したものである。R5 は更に置換基を有していてもよく、置換基としては、例えばハロゲン、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシリオキシ基、アルカノイル基、シアノ基、水酸基、アミノ基などが挙げられる。〕
【0026】
【化6】
Figure 0003722232
【0027】
〔上記一般式(6)中、nは0〜2の整数、mは0〜2の整数、Rはラジカル重合性不飽和結合を有する基、R6 はラジカル重合性不飽和結合を有する2価の基、R1 はアルキル基、アリール基またはアラルキル基である。R1 は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えばハロゲン、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシリオキシ基、アルカノイル基、シアノ基、水酸基、アミノ基などが挙げられる。〕
上記一般式(1)〜(6)の中のR、すなわちラジカル重合性不飽和結合を有する基を亜リン酸エステル中に導入する方法としては、特に限定はなく、例えば三塩化リンなどの塩化リン化合物と水酸基含有ラジカル重合性不飽和化合物とを脱塩酸反応させる方法や、芳香族亜リン酸エステル化合物と水酸基含有ラジカル重合性不飽和化合物とをエステル交換反応させる方法などが挙げられる。
【0028】
上記水酸基含有ラジカル重合性不飽和化合物としては、水酸基を有するアクリロイル化合物、水酸基を有するメタクリロイル化合物、水酸基を有するアリル化合物、水酸基を有するビニルエーテル化合物、水酸基を有するビニル化合物、水酸基を有するアクリルアミド化合物、水酸基を有するマレイミド化合物などが挙げられ、具体例として、水酸基を有するアクリロイル化合物および水酸基を有するメタクリロイル化合物では、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2ヒドロキシプロピルアクリレート、3−クロロ−2ヒドロキシプロピルメタクリレート、フェノキシヒドロキシプロピルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルアクリレート、エチレンオキサイド変性フタール酸アクリレート、3−アクリロイルオキシグリセリンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレートなどが、水酸基を有するアリル化合物では、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、2−プロペン1−オール、4−ヒドロキブチルアリルエーテルなどが、水酸基を有するビニルエーテル化合物では、エチレングリコールモノビニルエーテル、ブタンジオールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ヘキサンジオールモノビニルエーテルなどが、水酸基を有するビニル化合物では、両末端アルコール性ポリイソプレンTL−20〔(株)クラレ製〕、両末端アルコール性ポリブタジエンR−15HT、R−45HT〔出光石油化学(株)製〕などや、リノール酸、リノレン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの不飽和基含有多価カルボン酸と1,6−ヘキサンジオールなどの多価アルコールとのエステル化反応等により得られる両末端または片末端アルコール基含有不飽和ポリエステル、シンナミルアルコールなどが、また水酸基を有するアクリルアミド化合物では、N−メチロールアクリルアミドなどが挙げられる。
【0029】
上記一般式(6)の中のR6、すなわちラジカル重合性不飽和結合を有する2価の基を亜リン酸エステル中に導入する方法としては、特に限定に限定はなく、例えば、上記Rと同様に、三塩化リンなどの塩化リン化合物と水酸基を2個含有するラジカル重合性不飽和化合物とを脱塩酸反応させる方法や、芳香族亜リン酸エステル化合物と水酸基を2個含有するラジカル重合性不飽和化合物とをエステル交換反応させるなどの方法が挙げられる。
【0030】
上記水酸基を2個含有するラジカル重合性不飽和化合物としては、水酸基を2個有するアクリロイル、メタクリロイル化合物、水酸基を2個有するアリル化合物、水酸基を2個有するビニルエーテル化合物、水酸基を2個有するビニル化合物などが挙げられ、具体例として、水酸基を2個有するアクリロイル、メタクリロイル化合物では、トリメチロールプロパンモノアクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、アクリロキシエチル−ジヒドロキシエチルイソシアヌレート、エピクロルヒドリン変性1,6ヘキサンジオールジアクリレートR−167〔日本化薬(株)製〕、エピクロルヒドリン変性ジエチレングリコールジメタクリレートDM−851〔長瀬産業(株)製〕などが、水酸基を2個有するアリル化合物では、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテルなどが、また水酸基を2個有するビニル化合物では、両末端アルコール性ポリイソプレンTL−20〔(株)クラレ製〕、両末端アルコール性ポリブタジエンR−15HT、R−45HT〔出光石油化学(株)〕などや、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの不飽和基含有多価カルボン酸と1,6−ヘキサンジオールなどの多価アルコールとのエステル化反応等により得られる両末端アルコール基含有不飽和ポリエステルなどが挙げられる。
【0031】
上記本発明で用いる亜リン酸エステル化合物(B)の具体例としては、(アクリロキシエチル)ジデシルホスファイト、ジ(アクリロキシエチル)モノデシルホスファイト、(アクリロキシエチル)ジ−2−エチルヘキシルフスファイト、テトラ(アクリロキシエチル)ジプロピレングリコールジホスファイト、(2−プロペン)ジデシルホスファイト、ジ(2−プロペン)ペンタエリスリトールジホスファイト、(3−フェニル−2−プロペン)ジデシルホスファイト、ジ(3−フェニル−2−プロペン)ペンタエリスリトールジホスファイト、(4−エテニロキシブチル)シデシルホスファイト、ジ(4−エテニロキシブチル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0032】
また、上記亜リン酸エステル化合物(B)のなかでも表面硬度が高く、劣化しにくい点でラジカル重合性不飽和結合を1分子当たり平均1.5〜10個有する亜リン酸エステル(B1 )が好ましく、その具体例としては、下記構造(7)〜(10)
【0033】
【化7】
Figure 0003722232
【0034】
で示される化合物が挙げられる。
本発明で用いる亜リン酸エステル化合物(B)としては、上記したようにラジカル重合性不飽和結合を有する亜リン酸エステル化合物であれば、いずれも使用できるが、ラジカル重合性不飽和結合と共に、>P−O−芳香環ユニットおよび/又は光重合開始能を持つ基を有する亜リン酸エステル化合物(B2 )を用いると、硬化性が向上し、表面硬度の高いものが得られるので、特に好ましい。尚、この亜リン酸エステル化合物(B2 )のなかでもラジカル重合性不飽和結合を1分子当たり平均1.5〜10個有するものが更に好ましいことは無論である。
【0035】
以下に、上記亜リン酸エステル化合物(B2 )について説明する。
まず、上記亜リン酸エステル化合物(B2 )としては、ラジカル重合性不飽和結合と共に>P−O−芳香環ユニットを有する亜リン酸エステル化合物(B21)があり、例えば(アクリロキシエチル)ジフェニルホスファイト、ジ(アクリロイル)フェニルホスファイト、ジフェニル(ペンタエリスリトールトリアクリロイル)ホスファイト、ジ(アクリロキシエチル)ジ(フェニル)ジプロピレングリコールジホスファイト、(2−プロペン)ジフェニルホスファイト、(4−エテニロキシブチル)シフェニルホスファイト、や下記構造(11)〜(13)
【0036】
【化8】
Figure 0003722232
【0037】
などが挙げられる。
また、上記亜リン酸エステル化合物(B2 )としては、ラジカル重合性不飽和結合を有すると共に光重合開始能を持つ基を有する亜リン酸エステル化合物(B22)もある。これに含有される光重合開始能をもつ基としては、ラジカルが関与する反応を開始する活性種を生成する基であれば、どのような生成反応様式をとるものでもよく、例えば紫外線、可視光線、赤外線等の光により、ラジカル重合、ラジカル付加反応等の反応を開始する活性種を生成する基が挙げられ、活性種の生成反応様式としては、光により分子内で結合が開裂して活性種を生成する基や、分子間で水素引き抜き反応をおこして活性種を生成する基等が挙げられる。
【0038】
上記光重合開始能を持つ基としては、光により分子内で結合が開裂して活性種を生成する基として、例えばベンゾインエーテル基、ベンジルケタール基、α−ヒドロキシアセトフェノン基、クロロアセトフェノン基、α−アミノアセトフェノン基、アシルホスフィンオキサイド基、α−ジカルボニル基、α−アシルオキシム基などが挙げられ、分子間で水素引き抜き反応をおこして活性種を生成する基として、例えばベンゾフェノン基、チオキサントン基、ビイミダゾール基、アクリドン基、アンスラキノン基、フェナンスレンキノン基、カンファーキノン基などが挙げられる
上記光重合開始能を持つ基を有する亜リン酸エステル化合物(B22)としては、例えば下記構造式(14)〜(18)
【0039】
【化9】
Figure 0003722232
【0040】
【化10】
Figure 0003722232
【0041】
で示される化合物などが挙げられる。
更に、ラジカル重合性不飽和結合と共に、>P−O−芳香環ユニットと光重合開始能を持つ基とを有する亜リン酸エステル化合物(B23)も好ましい亜リン酸エステル化合物であり、例えば下記構造式(19)〜(23)
【0042】
【化11】
Figure 0003722232
【0043】
【化12】
Figure 0003722232
【0044】
で示される化合物などが挙げられる。
また、ラジカル重合性不飽和結合と共に、ウレタン結合および/又は尿素結合を有する亜リン酸エステル化合物(B3 )を用いると、大気中での硬化性が著しく高く、表面硬度の高いものが得られるので、特に好ましい。尚、この亜リン酸エステル化合物(B2 )のなかでもラジカル重合性不飽和結合を1分子当たり平均1.5〜10個有するものが更に好ましいことも無論である。
【0045】
以下に、上記亜リン酸エステル化合物(B3 )について説明する。
まず、上記亜リン酸エステル化合物(B3 )としては、ラジカル重合性不飽和結合と共に、ウレタン結合および/又は尿素結合を有する亜リン酸エステル化合物として、下記構造(24)〜(27)
【0046】
【化13】
Figure 0003722232
【0047】
【化14】
Figure 0003722232
【0048】
で示される化合物などが挙げられる。
更に、ラジカル重合性不飽和結合と共に、ウレタン結合および/又は尿素結合と、>P−O−芳香環ユニットおよび/又は光重合開始能を持つ基とを有する亜リン酸エステル化合物(B31)も好ましい亜リン酸エステル化合物であり、例えば下記構造式(28)〜(33)
【0049】
【化15】
Figure 0003722232
【0050】
【化16】
Figure 0003722232
【0051】
【化17】
Figure 0003722232
【0052】
で示される化合物などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物の硬化手段として紫外線を用いる場合には、光重合開始剤を該樹脂組成物中に添加することが通常必要である。光重合開始剤の添加量は、ラジカル重合性を有する化合物100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは1〜5重量部である。ただし、亜リン酸エステル化合物(B)として、亜リン酸エステル化合物(B21)や(B23 )のような光重合開始能をもつ基を有する亜リン酸エステル化合物を用いる場合には、光重合開始剤の添加中止や添加量の減量を行うこともできる。
【0053】
光重合開始剤としては、光により分子内で結合が開裂して活性種を生成するものと分子間で水素引き抜き反応をおこして活性種を生成するものの2種に大別できる。前者の例としては、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロハキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系;ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステルなどが挙げられ、一方後者の例としては、ベンゾフェノン、ο−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系;ミヒラーケトン、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノンなどが挙げられる。
【0054】
本発明の樹脂組成物の紫外線照射の場合、上記の光重合開始剤の添加だけでも硬化するが、硬化性をより向上させるために、光増感剤を併用することが好ましい。かかる光増感剤としては、例えばトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル等のアミン類が挙げられる。光増感剤の配合量は、ラジカル重合性を有する化合物(A)100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部である。
【0055】
本発明の樹脂組成物には、上記以外に非反応性のオリゴマーや樹脂、顔料、染料、無機充填剤、有機充填剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、カップリング等の密着向上剤等を添加しても良い。更に塗料やコーチング剤等の用途では、必要に応じて有機溶剤を加えて粘度を調整することもできるが、この場合活性エネルギー線による硬化の前か後で有機溶剤を除去することが好ましい。
【0056】
上記非反応性のオリゴマーや樹脂としては、ラジカル反応性の低いあるいはない液状もしくは固体状のオリゴマーや樹脂を示し、例えば(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エポキシ樹脂、液状ポリブタジエン、液状ポリブタジエン誘導体、液状クロロプレン、液状ポリペンタジエン、ジシクロペンタジエン誘導体、飽和ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマー、液状ポリアミド、ポリイソシアネートオリゴマー、キシレン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコン系オリゴマー、ポリサルファイド系オリゴマーなどが挙げられる。これら非反応性のオリゴマーや樹脂は、ハロゲン、エポキシ基、アミノ基、水酸基、チオール基、アミド基などの官能基を有していてもよい。
【0057】
顔料、染料としては、溶解性に優れるため、油解性染料が適しているが、どのような染料でもかまわない。
無機充填剤、有機充填剤は、一般的に強度、クッション性、滑り性等の機械的特性の向上のために用いる。
【0058】
無機充填剤としては、二酸化珪素、酸化珪素、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、タルク、カオリンクレー、焼成クレー、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、ガラス、雲母、硫酸バリウム、アルミナホワイト、ゼオライト、シリカバルーン、ガラスバルーンなどがある。無機充填剤に、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤およびジルコネート系カップリング剤等を添加、反応させる等の方法により、ハロゲン基、エポキシ基、アミノ基、水酸基、チオール基及びアミド基等の官能基を持たせてもかまわない。
【0059】
有機充填剤としては、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン・メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリオレフィン樹脂、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリスチレン、架橋ポリスチレン、ポリジビニルベンゼン、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、アクリル共重合体、架橋アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、塩化ビニリデン樹脂、フッ素樹脂、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン6/66、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等がある。有機充填剤は、ハロゲン基、エポキシ基、アミノ基、水酸基、チオール基、アミド基などの官能基を有していてもかまわない。
【0060】
カップリング剤としては、例えばγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルシラザンなどのアミノ基を有するシランカップリング剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するシランカップリング剤、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基を有するシランカップリング剤、γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどのハロゲン基を有するシランカップリング剤等のシラン系カップリング剤;テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルジアクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート等のチタネート系カップリング剤;アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤;アセチルアセトン・ジルコニウム錯体等のジルコニウム系カップリング剤などが挙げられる。
【0061】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得るには、上記した各成分を混合すればよく、混合の順序や方法は特に限定されない。
このようにして得た本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、例えば塗装、印刷等のような各種の方法で賦形した後、活性エネルギー線の照射により硬化させる。
【0062】
ここで用いる活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線、マイクロ波、高周波等をいうが、ラジカル性活性種を生成させうるならば、いかなるエネルギー種でもかまわない。可視光線、赤外線、レーザー光線でもよい。活性エネルギー線を発生するものとしては、例えば超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀ーキセノンランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザーなどが挙げられ、ラジカル性活性種を発生させる化合物の吸収波長を考慮して、選択すればよい。
【0063】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、酸素が存在している雰囲気でも、硬化性が高く、かつ表面硬度が高い硬化塗膜を得ることができるため、アルミニウム、鉄、銅等の金属、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のプラスチック、ガラス等のセラミックス、木材、紙、印刷紙、繊維等の各種材料のコーティング材や表面処理剤、バインダー、プラスチック材料、成形材料、積層板等の表面を硬くすることを要求する用途に応用可能である。接着剤、粘着剤、バインダー等の表面を硬くすることを要求しない用途においても、硬化性が向上するメリットがあり、適用しても差し支えない。硬化雰囲気をイナートガスで置換している場合においても、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いても差し支えない。
【0064】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって限定されるものではない。なお、例中、特に断りのない限り、部は全て重量%を表すものとする。
【0065】
また、実施例および比較例中において紫外線硬化性、電子線硬化性および表面硬度の評価と測定は、次の方法で行った。
(1)紫外線硬化性:ガラス板上に、各樹脂組成物を硬化後の膜厚が10μmになるように塗布した後、大気中で120W/cm高圧水銀ランプ(アイ・グラフィックス株式会社製)を用いて、ランプ高さ15cm、コンベアー速度30m/分の条件で紫外線を照射し、表面がタックフリーにするために必要な照射回数により、評価した。
【0066】
(2)電子線硬化性:ガラス板上に、各樹脂組成物を硬化後の膜厚が10μmになるように塗布した後、電子線照射装置CB175(米国ESI社製)を用いて、加速電圧170KV、照射雰囲気の酸素濃度150ppmまたは500ppmの条件で電子線を照射し、表面をタックフリーにするために必要な照射線量を求め、評価した。
【0067】
(3)表面硬度 :上記の紫外線硬化性または電子線硬化性の評価と同じ方法で、塗膜を作成し、JIS K−5400に基づいて、表面性測定機(新東科学株式会社製TYPE:14D)を用いて、鉛筆硬度を測定した。
【0068】
参考例1〔亜リン酸エステル化合物(B)の製造〕
攪拌装置、温度計、還流冷却器を備えた4口フラスコに、ジエチルエーテル100ml、2−ヒドロキシエチルアクリレート11.6g(0.1モル)およびトリエチルアミン10.1g(0.1モル)を入れて溶解し、氷水で冷却した後、これにジデシルクロロホスファイト38.8g(0.102モル)を滴下し、滴下終了後、攪拌しながら40℃に保持して3時間反応させた。次いで、これを室温に冷却した後、濾過によりトリエチルアミン塩酸塩を除去し、得られた濾液から、減圧下でベンゼンを留去して、アクリロイル基を1個有する亜リン酸エステル化合物〔(エチルアクリロイル)ジデシル−ホスファイト〕を無色の液体として得た。以下、これを亜リン酸エステル化合物(B−1)と略記する。
【0069】
参考例2(同上)
攪拌装置、温度計、還流冷却器を備えた4口フラスコに、ジエチルエーテル100ml、2−ヒドロキシエチルアクリレート34.8g(0.3モル)およびトリエチルアミン30.3g(0.3モル)を入れて溶解し、氷水で冷却した後、これに三塩化リン14.2g(0.102モル)を滴下し、滴下終了後、攪拌しながら40℃に保持して3時間反応させた。次いで、これを室温に冷却した後、濾過によりトリエチルアミン塩酸塩を除去し、得られた濾液から、減圧下でベンゼンを留去して、アクリロイル基を有する亜リン酸エステル化合物〔トリ(アクリロキシエチル)−ホスファイト〕を無色の液体として得た。以下、これを亜リン酸エステル化合物(B−2)と略記する。
【0070】
参考例3(同上)
ナスフラスコに、トリフェニルホスファイト62.0g(0.2モル)、ペンタエリスリトール13.6(0.1モル)およびジフェニルホスファイト0.1gを入れ、攪拌しながら110〜120℃に保持して30分間反応させた後、フラスコ内を10〜15mmHgの減圧下に保ち、フェノールを留去しながら反応させた。留去したフェノール量は35.6gであった。次いで、2−ヒドロキシエチルアクリレート24.4g(0.21モル)を入れ、フラスコ内を10mmHgの減圧下に保ち、さらにフェノールを留去しながら反応させた。反応終了時の条件は140℃、10mmHg、留去したフェノール量は18gであり、フラスコ内にアクリロイル基を2個有する亜リン酸エステル化合物〔前記構造式(8)で示される化合物〕を無色の液体として得た。以下、これを亜リン酸エステル化合物(B−3)と略記する。
【0071】
参考例4(同上)
攪拌装置、温度計、還流冷却器を備えた4口フラスコに、ジエチルエーテル100ml、ペンタエリスリトールトリアクリレート59.6g(0.2モル)およびトリエチルアミン20.2g(0.2モル)を入れて溶解し、氷水で冷却した後、これにデシルジクロロホスファイト26.4g(0.102モル)を滴下し、滴下終了後、攪拌しながら40℃に保持して3時間反応させた。次いで、これを室温に冷却した後、濾過によりトリエチルアミン塩酸塩を除去し、得られた濾液から、減圧下でベンゼンを留去して、アクリロイル基を1分子中に6個有する亜リン酸エステル化合物〔前記構造式(9)で示される化合物〕を淡黄色の液体として得た。以下、これを亜リン酸エステル化合物(B−4)と略記する。
【0072】
参考例5(同上)
ナスフラスコに、トリフェニルホスファイト62.0g(0.2モル)、4,4′−イソプロピリデンビフェノール22.8g(0.1モル)およびジフェニルホスファイト0.1gを入れ、攪拌しながら110〜120℃に30分間保持した後、フラスコ内を10〜15mmHgの減圧下に保ち、フェノールを留去しながら反応させた。留去したフェノール量は17.9gであった。次いで、2−ヒドロキシエチルアクリレート47.6g(0.41モル)を入れ、フラスコ内を10mmHgの減圧下し、さらにフェノールを留去しながら反応させた。反応終了時の条件は140℃、10mmHg、留去したフェノール量は35.7gであり、フラスコ内にアクリロイル基を4個および>P−O芳香環ユニット(ビスフェノール骨格)を有する亜リン酸エステル化合物〔前記構造式(11)で示される化合物〕を淡黄色の液体として得た。以下、これを亜リン酸エステル化合物(B−5)と略記する。
【0073】
参考例6(同上)
ナスフラスコに、トリフェニルホスファイト62.0g(0.2モル)、4,4′−イソプロピリデンビフェノール22.8g(0.1モル)およびジフェニルホスファイト0.1gを入れ、攪拌しながら110〜120℃に保持して30分間反応させた後、フラスコ内を10〜15mmHgの減圧下に保ち、フェノールを留去しながら反応させた。留去したフェノール量は17.9gであった。次いで、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンを22.4g(0.1モル)を入れ、フラスコ内を10mgHgの減圧下に保ち、フェノールを留去しながら反応させた。留去したフェノール量は9.3gであった。その後、2−ヒドロキシエチルアクリレート36.0g(0.31モル)を入れ、さらにフェノールを留去しながら反応させた。反応終了時の条件は140℃、10mmHg、留去したフェノール量は27.8gであり、フラスコ内にアクリロイル基を3個、光重合開始能を有する基および>P−O芳香環ユニット(ビスフェノール骨格)を有する亜リン酸エステル化合物〔前記構造式(19)で示される化合物〕を淡黄色の液体として得た。以下、これを亜リン酸エステル化合物(B−6)と略記する。
【0074】
参考例7(同上)
攪拌装置、温度計、還流冷却器を備えた4口フラスコに、ジエチルエーテル100ml、2−ヒドロキシエチルアクリレート23.2g(0.2モル)およびトリエチルアミン20.2g(0.2モル)を入れて溶解し、氷水で冷却した後、これにフェニルジクロロホスファイト19.9g(0.102モル)を滴下し、滴下終了後、攪拌しながら40℃に保持して3時間反応させた。次いで、これを室温に冷却した後、濾過によりトリエチルアミン塩酸塩を除去し、得られた濾液から、減圧下でベンゼンを留去して、アクリロイル基を1分子中に2個および>P−O芳香環ユニットを有する亜リン酸エステル化合物〔ジ(アクリロキシエチル)フェニルホスファイト〕を淡黄色の液体として得た。以下、これを亜リン酸エステル化合物(B−7)と略記する。
【0075】
参考例8(同上)
攪拌装置、温度計、還流冷却器を備えた4口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(大日本インキ化学工業株式会社製DN−901S)80g、ヂブチルチンジラウレート0.1g、2,6−tert−ブチルp−クレゾール0.2gおよびp−メトキシフェノール0.05gを入れて溶解した後、2−ヒドロキシエチルアクリレート33.9g(0.29モル)を攪拌しながら30分間かけて滴下し、更にフラスコを80℃に保持して3時間反応させて、イソシアネート基を1モル有するアクリルオリゴマー中間体(I)を得た。
【0076】
次いで、4つ口フラスコに、上記アクリルオリゴマー中間体(I)28gおよびジブチルチンジラウレート0.02gを入れ、フラスコを80℃にした後、p−(ヒドロキシベンジル)ジフェニルホスファイト8.2g(0.028モル)を入れて、80℃で4時間攪拌下に反応させて反応を終了させた後、メチルエチルケトンを入れ、固形分濃度80%のアクリロイル基を2個およびウレタン結合を有する亜リン酸エステル化合物〔前記構造式(28)で示される化合物〕を得た。以下、これを亜リン酸エステル化合物(B−8)と略記する。尚、反応終了は赤外分光法によるイソシアネート基の吸収帯の有無により確認した。
【0077】
参考例9(同上)
攪拌装置、温度計、還流冷却器を備えた4口フラスコに、参考例8で得たイソシアネート基を1モル有するアクリルオリゴマー中間体(I)28gおよびジブチルチンジラウレート0.05gを入れ、フラスコを80℃にした後、p−(アミノフェニル)ジフェニルホスファイト8.2g(0.028モル)を入れて、80℃にて4時間攪拌下に反応させて反応を終了させた後、メチルエチルケトンを入れ、固形分濃度80%のアクリロイル基を2個および尿素結合を有する亜リン酸エステル化合物〔前記構造式(29)で示される化合物〕を得た。以下、これを亜リン酸エステル化合物(B−9)と略記する。尚、反応終了は赤外分光法によるイソシアネート基の吸収帯の有無により確認した。
【0078】
実施例1
カヤラッドR684(日本化薬株式会社製トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)50部に、参考例1で合成した亜リン酸エステル化合物(B−1)50部とイルガキュアー184(スイス国チバガイギー社製光重合開始剤)2部加え、攪拌混合して活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで紫外線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第1表(その1)に示す。
【0079】
実施例2〜6
亜リン酸エステル化合物(B−1)の代わりに参考例2〜8で合成した亜リン酸エステル化合物(B−2)〜(B−6)を用いた以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで紫外線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第1表(その1)に示す。
【0080】
実施例7
亜リン酸エステル化合物(B−1)の代わりに参考例6で合成した亜リン酸エステル化合物(B−6)を用い、イルガキュアー184を無添加にした以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで紫外線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第1表(その1)に示す。
【0081】
実施例8
亜リン酸エステル化合物(B−1)の代わりに参考例7で合成した亜リン酸エステル化合物(B−7)を用いた以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで紫外線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第1表(その1)に示す。
【0082】
実施例9
イルガキュアー184 2部の代わりにベンゾフェノン1部およびN−メチルジエタノールアミン1部を添加した以外は実施例2と同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで紫外線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第1表(その1)に示す。
【0083】
比較例1
カヤラッドR684 50部と亜リン酸エステル化合物(B−1)50部の代わりにカヤラッドR684 100部を用いた以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで紫外線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第1表(その2)に示す。
【0084】
比較例2
カヤラッドR684 50部と亜リン酸エステル化合物(B−1)50部の代わりにカヤラッドR684 100部を用い、更にジフェニルイソデシホスファイト3部添加した以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで紫外線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第1表(その2)に示す。
【0085】
比較例3
カヤラッドR684 50部と亜リン酸エステル化合物(B−1)50部の代わりにカヤラッドR684 100部を用い、更にジフェニルイソデシホスファイト10部添加した以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで紫外線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第1表(その2)に示す。
【0086】
比較例4
カヤラッドR684 50部と亜リン酸エステル化合物(B−1)50部の代わりにカヤラッドR684 100部を用い、更にサイクリックネオペンタテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト3部添加した以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで紫外線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第1表(その2)に示す。
【0087】
比較例5
カヤラッドR684 50部と亜リン酸エステル化合物(B−1)50部の代わりにカヤラッドR684 100部を用い、更にサイクリックネオペンタテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト10部添加した以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで紫外線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第1表(その2)に示す。
【0088】
比較例6
カヤラッドR684 50部と亜リン酸エステル化合物(B−1)50部の代わりに、カヤラッドR684 97部と亜リン酸エステル化合物(B−1)3部を用いた以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで紫外線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第1表(その2)に示す。
【0089】
比較例7
カヤラッドR684 50部と亜リン酸エステル化合物(B−1)50部の代わりに、カヤラッドR684 90部と亜リン酸エステル化合物(B−1)10部を用いた以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで紫外線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第1表(その2)に示す。
【0090】
【表1】
Figure 0003722232
【0091】
【表2】
Figure 0003722232
【0092】
実施例10
TMP3A(大阪有機株式会社製のトリメチロールプロパントリアクリレート)50部に、参考例8で合成した亜リン酸エステル化合物(B−8)50部とイルガキュアー184 2部を加え、攪拌混合して活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで紫外線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第2表に示す。
【0093】
実施例11
TMP3A 50部と亜リン酸エステル化合物(B−8)50部の代わりにTMP3A 68部と亜リン酸エステル化合物(B−8)32部を用いた以外は実施例10と同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで紫外線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第2表に示す。
【0094】
実施例12
TMP3A 50部と亜リン酸エステル化合物(B−8)50部の代わりに亜リン酸エステル化合物(B−8)100部を用いた以外は実施例10と同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで紫外線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第2表に示す。
【0095】
実施例13
亜リン酸エステル化合物(B−8)の代わりに亜リン酸エステル化合物(B−9)を用いた以外は実施例10と同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで紫外線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第2表に示す。
【0096】
比較例8
TMP3A 50部と亜リン酸エステル化合物(B−8)50部の代わりにTMP3A 100部を用いた以外は実施例10と同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで紫外線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第2表に示す。
【0097】
比較例9
TMP3A 50部と亜リン酸エステル化合物(B−8)50部の代わりにTMP3A 100部を用い、更にジフェニルイソデシホスファイト3部添加した以外は実施例10と同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで紫外線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第2表に示す。
【0098】
比較例10
TMP3A 50部と亜リン酸エステル化合物(B−8)50部の代わりにTMP3A 100部を用い、更にジフェニルイソデシホスファイト10部添加した以外は実施例10と同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで紫外線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第2表に示す。
【0099】
比較例11
TMP3A 50部と亜リン酸エステル化合物(B−8)50部の代わりにTMP3A 90部と亜リン酸エステル化合物(B−8)10部を用いた以外は実施例10と同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで紫外線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第2表に示す。
【0100】
【表3】
Figure 0003722232
【0101】
実施例14
カヤラッドR684 50部に、参考例2で合成した亜リン酸エステル化合物(B−2)50部を加え、攪拌混合して活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで照射雰囲気の酸素濃度500ppmの条件で電子線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第3表に示す。
【0102】
比較例11
カヤラッドR684 50部と亜リン酸エステル化合物(B−1)50部の代わりにカヤラッドR684 100部を用い、更にジフェニルイソデシホスファイト3部添加した以外は実施例14と同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得、次いで照射雰囲気の酸素濃度500ppmの条件で電子線硬化性と表面硬度の評価をした。評価結果を第3表に示す。
【0103】
【表4】
Figure 0003722232
【0104】
【発明の効果】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、酸素が存在している雰囲気でも硬化性が高く、かつ表面硬度が高い硬化塗膜を得ることができる。

Claims (6)

  1. ラジカル重合性を有する化合物(A)を主成分とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、ラジカル重合性不飽和結合を1分子当たり平均1.5〜10個有する亜リン酸エステル化合物(B1)を25重量%以上含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
  2. 亜リン酸エステル化合物(B1)が、ラジカル重合性不飽和結合と共に、>P−O−芳香環ユニットおよび/又は光重合開始能を持つ基とを有する亜リン酸エステル化合物(B4 )である請求項1に記載の組成物。
  3. 亜リン酸エステル化合物(B1)が、ラジカル重合性不飽和結合と共に、ウレタン結合および/又は尿素結合を有する亜リン酸エステル化合物(B5 )である請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 亜リン酸エステル化合物(B1)の含有率が、30〜70重量%である請求項1〜3のいずれか1つに記載の組成物。
  5. 更に光重合開始剤(C)を含有する請求項4記載の組成物。
  6. 更に光増感剤(D)とを含有する請求項5記載の組成物。
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