JP3585854B2 - 射出成形方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、その構造上または経済上の理由等から、高い精度で製造されない部品の少なくとも一部の表面に部分的に樹脂を被覆成形する射出成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂の内部に他の部材を内装する射出成形方法として、インサート成形が知られている。かかるインサート成形は、一般に、内挿部品を金型に固定することにより、内挿部品と金型との間に形成されたキャビティ内に樹脂を注入することにより行われる。この場合に、樹脂を注入すべきキャビティ以外の部分において、内挿部品と金型との隙間に樹脂が流れ込んだ場合には、成形される製品にバリが発生するなどの不都合があるため、樹脂の流れ込みを確実に防止するために、内挿部品と金型との隙間をきわめて小さく設定しておく必要がある。
【0003】
特に、通常の射出成形では、ポリスチレンのような射出成型用の標準のプラスチックを溶融状態として、1×10Pa程度のきわめて高い圧力でキャビティ内に射出するので、内挿部品と金型との間の隙間は、0.01mm以下に抑えることが必要であり、内挿部品を高い寸法精度で形成したり、内挿部品と金型との間をねじの締結等により密封したりする方法が採用されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えば、携帯電話機、PHS等の携帯用電子機器に用いられるバッテリーは、バッテリーセルをラミネートタイプのケースで包んだり、アルミニウム材を深絞り加工して形成されたケース内にバッテリーセルを収容して、その収容口を溶接により閉塞したりする構造のものが多く、外面に隙間密封用のねじを設けることができず、また、高い寸法精度で製造することは困難であるか、または製造コストが高くなるという不都合がある。
【0005】
ラミネートタイプのバッテリーの場合は、外部から受ける圧力によって容易に変形するため金型との間に隙間が形成され易い。また、アルミニウム材を深絞り加工してなるタイプのバッテリーの場合は、その寸法精度が、片側寸法精度で、0mm〜−0.04mm程度となり、したがって、このような寸法精度の低い内挿部品を、寸法精度の高い金型のキャビティ内部に配置した場合には、最大で0.08mm程度の隙間が内挿部品と金型との間に形成されてしまうことになる。したがって、このような寸法精度の低い内挿部品を用いて通常のインサート成形を行うことは困難であった。
【0006】
また、上述したようなバッテリーに対して1×10Paものきわめて高い樹脂圧力を適用した場合には、バッテリーが変形し、金型との隙間が更に大きくなるという不都合がある。この場合には、新たに形成された隙間に樹脂が流れ込んで硬化後にバリとなる部分が形成されるという不都合がある。
さらに、バッテリーのような内挿部品に対し高温の溶融樹脂を接触させる場合には、ケース内部のバッテリーセルが損傷する等の問題もある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、寸法精度の低い低精度部品を内挿部品として、その外面を部分的に樹脂で被覆成形する場合に、バリのない成形品を成形可能な射出成形方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は、金型内に内挿部品を配置し、該内挿部品と金型との間に形成されたキャビティに樹脂を充填することにより、前記内挿部品の少なくとも一部の表面に部分的に樹脂を被覆成形する射出成形方法であって、前記内挿部品として前記キャビティ以外の部分に0.02mm〜0.08mmの範囲の隙間を形成する内挿部品を用い、溶融時の粘度が、1000mPa・s〜3000mPa・sの範囲である熱可塑性樹脂を0.3MPa〜0.6MPaの射出圧力で射出する射出成形方法を提案している。
【0009】
この発明に係る射出成形方法によれば、内挿部品が変形容易であるため、または、内挿部品の寸法精度が低いために、金型と内挿部品との間には、キャビティ以外の部分において0.08mm程度の隙間が形成される場合において、射出圧力を0.3MPa〜0.6MPaときわめて低い圧力としているので、この程度の隙間内には樹脂が入り込むことが防止され、成形品にバリが形成されることが防止される。
【0010】
この場合において、単に射出圧力を下げただけでは、キャビティの角部や隅部まで樹脂が到達せず、成形不良を起こすことが考えられるが、本発明では、溶融時の粘度が1000mPa・s〜3000mPa・sの範囲である熱可塑性樹脂を用いているので、上記圧力範囲の射出圧力であっても、成形不良の発生を防止することが可能となる。
したがって、本発明によれば、低精度の内挿部品をキャビティ内に配置して、その少なくとも一部の表面に部分的に被覆成形を行う際に、バリの発生防止と成形不良の発生防止を両立して行うことができることになる。
【0011】
また、本発明は、上記成形方法において、内挿部品が、バッテリーセルをラミネートタイプのケースに収容してなるバッテリーである射出成形方法、および、内挿部品が、アルミニウム材を深絞り加工してなるケース内にバッテリーセルを収容してなるバッテリーである射出成形方法を提案している。
【0012】
この発明に係る射出成形方法によれば、ラミネートタイプのケースまたはアルミニウム材を深絞り加工したケースを有するバッテリーを、内挿部品として金型内に配置して、その表面の少なくとも一部に樹脂を被覆成形することができる。これらの構造を有するバッテリーは、高い寸法精度で製造することが困難であるとともに、高圧を受けると変形する性質を有するので、0.3MPa〜0.6MPaというきわめて低い圧力で樹脂を射出することによって、変形を防止しながら成形を行うことが可能となる。したがって、例えば、バッテリーとともに回路基板を樹脂内に鋳ぐるんだ成形品を製造する場合などに効果的である。
【0013】
さらに、この発明は、上述した射出成形方法において、熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂である射出成形方法を提案している。
この発明に係る射出成形方法によれば、ポリアミド樹脂は、溶融状態で1400〜2400mPa・s程度の粘度を有し、かつ、200℃前後でその粘度に到達する。したがって、上述した作用を比較的低い温度で達成することができる。そのため、バッテリーのように耐熱温度が低い部品を内挿部品として使用する場合には、該バッテリーを熱によって損傷することなく成形を行うことができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に係る射出成形方法の一実施形態について図1〜図5を参照して説明する。
この実施形態に係る射出成形方法は、図1に示されるように、上下に分割される上型1aと下型1bとからなる金型1に、それぞれ形成された凹部2a,2b内に、ラミネートタイプのケースを有するバッテリー3およびコネクタ4等を搭載した回路基板5を内挿部品として配置し、回路基板5を樹脂で被覆するとともに、バッテリー3の表裏面3a,3bを露出させて、その周囲のみを樹脂で被覆することにより、図2に示されるバッテリーモジュール6を製造するために使用される。
【0015】
この場合に、回路基板5およびその搭載物は高い精度で製造することができるものの、ラミネートタイプのケースを有するバッテリー3は、外部から受ける圧力によって変形し易く、高精度に製造することはできない。したがって、型締め状態で、バッテリー3の表裏面3a,3bを金型1に密着させることはできるものの、樹脂圧が加わると、その厚さ方向に0.08mm程度の隙間9が形成される。
【0016】
したがって、この隙間9を解消すべく、金型1の内部寸法よりバッテリー3の厚さ寸法を大きく設定したのでは、型締めによってバッテリー3が厚さ方向に圧迫されて損傷する場合が生ずるので、金型1の寸法はバッテリー3の最大寸法に合わせて設定されるのが一般的である。すなわち、図4に示されるように、金型1に形成された凹部2a,2b内に、バッテリー3を配置すると、金型1とバッテリー3との間には、ゲート7から注入される樹脂が導かれるキャビティ8以外の場所に、隙間9が形成される。
【0017】
本実施形態に係る射出成形方法では、このように構成された金型1に対して、例えば、ポリアミド系樹脂を使用して射出成形を行う。該ポリアミド系樹脂は、190℃〜210℃の範囲に加熱する。ポリアミド系樹脂は、190℃〜210℃程度に加熱されると、溶融して1400〜2400mPa・s程度の粘度の溶融樹脂となる。
また、本実施形態に係る射出成形方法では、前記ポリアミド系樹脂を、例えば、0.3MPa〜0.4MPaの空気圧を加えてキャビティ8内に射出する。
【0018】
ポリアミド系樹脂の加熱は、例えば、図3に示されるように、内部にヒータ10を備えた加熱容器11内にポリアミド系樹脂Pを投入しておき、ヒータ10を作動させることにより行う。
また、加熱容器11に設けたノズル12からの射出時に、溶融樹脂Pの温度が低下することを防止して、常に一定した温度の溶融樹脂Pをキャビティ8内に注入するために、ノズル12先端に別個のヒータ13を設けることが好ましい。
【0019】
また、溶融樹脂Pの加圧は、例えば、前記加熱容器11を密封し、該加熱容器11内に形成された樹脂液面14上部の空間15に空気圧源16を接続して該空間15の空気圧を0.3MPa〜0.4MPaに設定することにより行われる。金型1の型締めは、例えば、空気圧源17に接続されたシリンダ18によって行う。シリンダ18により発生する型締め圧力は、樹脂Pの射出圧力に対抗して金型1を型締め状態に保持するために、射出圧力よりも高く設定されていることは言うまでもない。
【0020】
そして、このように溶融したポリアミド系樹脂Pを金型1とバッテリー3および回路基板5との間に形成されたキャビティ8内に所定時間にわたって射出した後に、所定時間にわたって冷却することにより、金型1内において樹脂Pを硬化させて、バッテリーモジュール6が成形されることになる。
【0021】
このようにして行われる本実施形態に係る射出成形方法によれば、0.3MPa〜0.4MPaというきわめて低い射出圧力によってキャビティ8内に樹脂Pを注入するので、金型1とバッテリー3との間に、キャビティ8に連通する、幅0.08mm程度の隙間9が生じていても、その隙間9に溶融樹脂Pが入り込むことがなく、したがって、バッテリー3の表面の所定のキャビティ8部分のみに樹脂Pが被覆成形され、バリなどの形成が防止されるという効果がある。
【0022】
さらに、ポリアミド系樹脂Pを用いているので、比較的低温である190℃〜210℃で、溶融樹脂Pの粘度を1000mPa・s〜3000mPa・sとすることができ、キャビティ8内における樹脂の十分な流動性を確保して、樹脂Pがキャビティ8の隅部まで到達しない等の成形不良が発生することを防止することができる。また、この効果を、190℃〜210℃という比較的低い樹脂P温度で達成することができるので、キャビティ8内に配されるバッテリー3を高温に晒す必要がなく、バッテリー3の健全性を保持することができるという効果もある。
【0023】
さらに、射出圧力を低く抑えることにより、バッテリー3自体の変形を防止して、金型1とバッテリー3との間の隙間9が拡大することを防止することができる。したがって、拡大した隙間に樹脂Pが入り込むことによるバリの形成等の問題の発生を防止することができる。
【0024】
なお、上記実施形態においては、金型1とバッテリー3との間のキャビティ8以外の部分に最大で0.08mm程度の隙間9が形成される場合について説明したが、バッテリー3と金型1との隙間9をこれよりも小さくすることができる場合には、それに応じて、樹脂温度および射出圧力を設定することができる。
例えば、隙間9の最大幅寸法が0.05mm程度の場合には、樹脂温度を210℃〜220℃程度に上昇させ、射出圧力も0.4MPa〜0.5MPa程度に設定することができる。また、隙間9の最大寸法を0.025mm程度に抑えることができる場合には、樹脂温度を220℃〜230℃程度、射出圧力を0.5MPa〜0.6MPa程度に設定することも可能である。
【0025】
温度を上昇させることにより溶融樹脂Pの粘度を小さくして流動性を高め、圧力を高くすることによって、キャビティ8内への樹脂Pの充填速度を高めて、製造効率を向上することができる。一方、230℃程度の温度および0.6MPa程度の圧力では、バッテリー3に悪影響が及ぶことはない。
【0026】
さらに、上記実施形態においては、ポリアミド系樹脂を採用したが、これに代えて、溶融状態でポリアミド系樹脂と同等の粘度を有するようになる他の樹脂を使用してもよい。
【0027】
また、上記実施形態においては、高い寸法精度で製造することが困難な、ラミネートタイプのケースにバッテリーセルを収容したバッテリー3を内挿部品として例示したが、図5に示されるように、アルミニウム材を深絞り加工してなる缶内にバッテリーセルを収容してなるバッテリー19の一部の表面を被覆成形して図6に示されるようなバッテリーモジュール20を製造する場合についても同様に適用することができる。
【0028】
すなわち、アルミニウム缶タイプのバッテリー19は、その厚さ方向の寸法精度が0.08mm程度の範囲でばらつく低精度部品であるため、金型1の寸法は、バッテリー19の最大寸法に合わせて設定される。したがって、金型1とバッテリー19との間には、0.08mm以下の隙間が形成されることになる。この場合に本実施形態に係る射出成形方法を適用することにより、その程度の隙間9内への樹脂Pの流入を防止し、かつ、キャビティ8内における樹脂Pの確実な充填を同時に達成することができる。
【0029】
さらに、内挿部品としてバッテリー3を例に挙げて説明したが、これに代えて、金型1との間に0.01mmより大きな隙間9が形成されてしまう他の任意の低精度部品を内挿部品とする場合についても、この発明を利用することができる。この場合には、上述したバッテリー3のように耐熱性が問題とならない場合には、樹脂温度を高く設定することができるので、高温で粘度が1000mPa・s〜3000mPa・sの溶融状態となる他の任意の熱可塑性樹脂を使用することにしても良い。
【0030】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明は以下の効果を奏する。
本発明に係る射出成形方法によれば、金型と内挿部品との間のキャビティ以外の部分に0.08mm程度の隙間が形成されても、その隙間に樹脂が入り込むことなく、かつ、キャビティ内全体に樹脂が確実に行き渡るように射出成形を行うことができる。したがって、成形品にバリが形成されることを防止するとともに、成形不良の発生を確実に防止することができるという効果がある。
【0031】
また、内挿部品をバッテリーとした場合に、該バッテリーが高圧状態に晒されることを防止して、バッテリーの健全性を保持することができる。特に、バッテリーがラミネートパックまたは、アルミニウム材を深絞り加工してなるケースを有する場合に、該ケースが圧力によって変形して金型との隙間が拡大することを防止し、拡大した隙間に溶融樹脂が入り込むことによるバリの発生等を防止することができるという効果もある。
【0032】
また、熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂とすることにより、低粘度の溶融状態を比較的低い温度で達成することができる。したがって、バッテリーが高温に晒されることを防止して、バッテリーの健全性を保持することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る射出成形方法を説明するための金型および金型に挿入される内挿部品を示す斜視図である。
【図2】図1の射出成形方法により成形されたバッテリーモジュールを示す斜視図である。
【図3】本発明の射出成形方法を実施するための射出成形装置を示す模式図である。
【図4】図1の金型と内挿部品との間に形成される隙間を説明する縦断面図である。
【図5】この発明に係る射出成形方法を適用する内挿部品の他の例を示す斜視図である。
【図6】図5の内挿部品に被覆成形して構成された他のバッテリーモジュールを示す斜視図である。
【符号の説明】
P 樹脂
1 金型
3 バッテリー(内挿部品)
8 キャビティ
9 隙間

Claims (4)

  1. 金型内に内挿部品を配置し、該内挿部品と金型との間に形成されたキャビティに樹脂を充填することにより、前記内挿部品の少なくとも一部の表面に部分的に樹脂を被覆成形する射出成形方法であって、
    前記内挿部品として前記キャビティ以外の部分に0.02mm〜0.08mmの範囲の隙間を形成する内挿部品を用い、
    溶融時の粘度が、1000mPa・s〜3000mPa・sの範囲である熱可塑性樹脂を0.3MPa〜0.6MPaの射出圧力で射出する射出成形方法。
  2. 前記内挿部品が、バッテリーセルをラミネートタイプのケースに収容してなるバッテリーである請求項1記載の射出成形方法。
  3. 前記内挿部品が、アルミニウム材を深絞り加工してなるケース内にバッテリーセルを収容してなるバッテリーである請求項1記載の射出成形方法。
  4. 前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂である請求項1から請求項3のいずれかに記載の射出成形方法。
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