JP3585209B2 - 焙炒野菜類 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な焙炒香味を有する、野菜類及び/又はキノコ類の加工処理物、またその製造方法に関する。また本発明は該加工処理物を加熱処理して得られ、機能性飲食品の素材として有用な加熱処理物及び該加熱処理物を含有する食品又は飲料に関する。
【0002】
【従来の技術】
野菜類やキノコ類は、生食される以外は、ゆで物、和え物、煮物、炒め物、揚げ物等として利用されている。しかし、生の野菜類やキノコ類は、かさ高い、長期保存できない等の点で不利である。
そこで野菜類やキノコ類を乾燥して、このかさ高さの減少、保存性の向上が図られている。すなわちこの目的の達成のため、生の野菜の良さを生かした処理や乾燥法が採られる。例えば前処理として野菜類やキノコ類中に含まれる酵素をブランチングやイオウ処理して不活性化する。乾燥工程では、野菜の色や香味変化を防ぐために乾燥温度や時間は過度の条件をとらないよう配慮される。乾燥方法は、古来よりの天日干し、熱風乾燥が行われ、近年になり品質を重視した真空乾燥が行われている。
一方、乾燥による野菜類やキノコ類の加工品も知られている。例えばかんぴょう、切り干し大根、干しシイタケ等があるが、乾燥は主に温和な天日干しで、性状と香味は生の場合と異なった性状と香味の製品として使用されている。
特公平4−57313号公報にはアスパラガスを原料とした粉末茶並びに抽出茶液が記載されているが、その製造工程における焙煎温度は90〜120℃で、この温度以上では褐変や焦げを生ずることが記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
野菜類やキノコ類を原料として、褐変や褐変臭が少なく、かつ焙炒香味成分の豊富な焙炒野菜類や焙炒キノコ類は得られていないのが現状である。このような新規な焙炒野菜類や焙炒キノコ類はそれ自体が新規で多様化する嗜好に対応する食品であり、更に健康増進用の飲食品の新素材としても期待される。
ここで言う焙炒香味とは強い乾燥熱風による香ばしい味成分並びにクッキング香の成分をいう。
本発明の目的は褐変や褐変臭の少ない、焙炒香味に優れ、嗜好の多様化に適応できる野菜類やキノコ類、また健康増進用飲食品の素材としても優れた野菜類やキノコ類、またその製造方法を提供することにある。またこれらの野菜類やキノコ類由来の加工処理物を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明を概説すれば、本発明の第1の発明は野菜類及び/又はキノコ類、あるいはその前処理物を、200〜300℃の乾燥熱風で焙炒する工程を含有する処理で得られる焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類に関する。
本発明の第2の発明は野菜類及び/又はキノコ類、あるいはその前処理物を、200〜300℃の乾燥熱風で焙炒処理する工程を含有することを特徴とする焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類の製造方法に関する。
本発明の第3の発明は本発明の第1の発明の焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類を湿式加圧下の加熱で処理することにより得られる加熱処理物に関する。
本発明の第4の発明は本発明の第3の発明の加熱処理物を含有、添加及び/又は希釈してなる食品又は飲料に関する。
【0005】
本発明者らは鋭意検討の結果、野菜類及び/又はキノコ類、あるいはその前処理物、例えば脱水処理物を乾燥熱風で焙炒することにより、これらの野菜類及び/又はキノコ類が焙炒香味の豊富な新素材となることを見出し本発明を完成した。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
本明細書でいう野菜類とは、一般に食されているものであればよく特に限定はないが、葉菜、茎菜、根菜、果菜、花菜、イモ類であり、例えばタマネギ、アスパラガス、ウリ、カブ、カボチャ、キャベツ、ゴボウ、シソ、大根、トマト、ナス、ニンジン、ニンニク、白菜、ピーマン、フキ、ショウガ、モヤシ、ワサビ、ホウレン草、ネギ、ニラ、パセリ、甘藷、馬鈴薯、タロイモ等が挙げられる。
【0007】
本明細書でいうキノコ類とは、特に限定はないが、一般に食されているものであればよく、例えば、シイタケ、マツタケ、ブナシメジ、ハタケシメジ、ホンシメジ、エノキタケ、ナメコ、イワタケ、キクラゲ、キヌガサタケ、クリタケ、クロカワ、コウタケ、ショウロ、タマゴタケ、チチタケ、ナラタケ、ハエトリシメジ、ハツタケ、ヒラタケ、ホウキタケ、マイタケ、マツオウジ、マッシュルームが挙げられる。
これらの野菜類及び/又はキノコ類は1つ以上組合せて用いることができる。
【0008】
野菜類及び/又はキノコ類の前処理物としては特に限定は無く、その例としては使用する野菜類及び/又はキノコ類の脱水物が例示される。脱水された野菜類及び/又はキノコ類を得るための脱水工程としては、野菜類及び/又はキノコ類の水分含量が低減される方法であれば特に限定はないが、自然乾燥して脱水、人工乾燥して脱水(熱風による脱水、加圧下脱水、減圧下脱水、常圧下脱水、真空脱水)、有機溶剤による脱水等、通常行われる方法が用いられる。
例えば野菜類及び/又はキノコ類を空気の温度条件30〜120℃未満で数分から数日間、乾燥すれば良い。この脱水工程においての加熱温度は一定温度でも良く、連続的に温度を変化させても良く、また段階的に温度を変化させても良い。
更に詳しくは、香味成分の増強のためには30〜90℃以下、好ましくは50〜60℃で5〜35時間の処理を行い、次いで酵素失活、タンパク質変性、結晶水の除去等を行うために90〜120℃未満、好ましくは100〜110℃で1〜5時間の処理を行う。
【0009】
本発明で焙炒処理を行う野菜類及び/又はキノコ類は水分含量が0w/w%超〜40w/w%(湿潤物に対する水分)、好ましくは1w/w%〜15w/w%の野菜類及び/又はキノコ類が良く、必要に応じこれらの水分含量に調整した前処理物を使用することができる。
このような脱水工程を経ると、焙炒香味の先駆体成分の増強、一方褐変成分の前駆体成分(アミノ酸、糖類)生成の防止と脱水によりアミノカルボニル反応の抑制ができる。
したがって焙炒工程を経ても褐変及び褐変臭が少なく、且つ焙炒香味の多い野菜類及び/又はキノコ類の処理物が得られる。
【0010】
焙炒処理の方法としては特開平2−79965号公報に記載の乾燥熱風を使用する方法があり、焙炒処理の条件は、使用する野菜類及び/又はキノコ類、あるいはその前処理物の性状により設定すれば良い。例えば脱水処理した野菜類及び/又はキノコ類を乾燥熱風120℃超〜400℃、好ましくは200〜300℃で数秒〜数十分、好ましくは5秒〜5分間、乾燥熱風に接触されたことでの褐変や褐変臭がなく、かつ焙炒香味の豊富な焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類が得られる。
焙炒後の水分含量は0w/w%超〜10w/w%、保存の上からは0w/w%超〜7w/w%、更に好ましくは0w/w%超〜5w/w%である。また必要に応じ水分調整を行っても良い。
【0011】
本発明の焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類の形状は、加工時の原料の形状により異なるが、食品としての目的に応じ、スライス状にしても良く、また粉末状にしても良く、任意の形状とすることができる。
【0012】
熱風乾燥による焙炒処理を行う野菜類及び/又はキノコ類、あるいはその前処理物の形状は特に限定は無く、効率よく本発明の焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類が得られる形状であれば良く、そのままの形状、細断物、ペースト化物、粉末化物等、目的に応じた形状とすれば良い。また必要に応じては浸漬、煮沸、凍結、蒸煮、pH調整等の処理を行った野菜類及び/又はキノコ類を脱水処理し、焙炒処理を行っても良い。これらの焙炒処理前の形状及び脱水処理前の処理は適宜組合せて行うことができる。
【0013】
本発明の焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類を湿式加圧下で加熱処理することにより、加熱処理物中にアポトーシス誘発作用、制がん作用を有する下記式(化1)で表される4,5−ジヒドロキシ−2−シクロペンテン−1−オン(以下、シクロペンテノンと称す)が生成する。したがって本発明の焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類はアポトーシス誘発作用、制がん作用等を有する機能性食品又は飲料の素材としても極めて有用である。
【0014】
【化1】
Figure 0003585209
【0015】
焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類の湿式加圧下での加熱処理は、特にその方法に限定はなく、通常の加圧条件下で湿式加熱すればよく、例えば、加圧蒸煮や加圧蒸しが挙げられる。加圧の条件は、ゲージ圧0〜14kg/cm (100〜200℃)、操作上からは、ゲージ圧0.2〜4kg/cm (105〜150℃)が好ましい。湿式加圧下での加熱時間は、0.1〜20時間、好ましくは0.5〜10時間であり、用いる原料の素材や加圧条件の組合せにより適宜選択でき、これらの湿式加圧下での加熱処理により、本発明の加熱処理物を得ることができる。
【0016】
焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類の湿式加圧下での固液比は、それぞれの固形(含水物として)1〜80w/v%、好ましくは操作上2〜75w/v%である。
【0017】
本発明の加熱処理物とは、処理物そのまま、加熱処理物を溶液と混合した後に固液分離した液及び残渣、部分精製したものが含まれる。部分精製は、活性炭処理、滓下げ、限外ろ過等通常の食品業界での処理方法であればよい。また、処理物そのまま、固液分離した液及び残渣、部分精製したものを、希釈、濃縮、粉末化したものも本発明の加熱処理物に含まれる。
【0018】
本発明においては有機酸類を添加し、酸性下で加熱処理をすることが好ましい。使用する有機酸としては、可食可能な有機酸であればよく、例えば、揮発性酸の酢酸、プロピオン酸、不揮発性酸の乳酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、グルコン酸、アスコルビン酸(ビタミンC)、ソルビン酸、イタコン酸、コウジ酸、酒石酸、シュウ酸、フィチン酸等が挙げられるが、不揮発性酸が操作上及び香味の点から好ましい。
また、これらの塩を用いてもよい。これら有機酸及び有機酸の塩は単独又は併用して用いてもよい。
【0019】
使用する有機酸は湿熱加圧前に添加しておけばよく、原料の素材にあらかじめ添加しておいてもよい。添加量は、湿潤素材の重量当り0.001〜20w/v%、仕上りの香味の上からは0.01〜10w/v%が好ましい。pHの面からは、添加後pH2〜7、好ましくはpH3〜6が仕上りの味覚の上で良好な結果が得られる。
【0020】
本発明の食品又は飲料は、従来より製造されている原材料を用いることができる。
例えば、原材料として、果糖ぶどう糖液糖、上白糖、グラニュー糖、果糖、ぶどう糖、オリゴ糖、水飴等の糖質、及び/又はアスパルテーム、ステビア、フコース、ミラクリン、ラカンカ等の甘味料、及び/又はタンパク質分解物、アミノ酸液、酵母エキス、グルタミン酸、呈味性核酸、アルギニン、アスパラギン、乳精ミネラル等の調味料、及び/又は赤キャベツ、アナトー、カロチノイド、フラボノイド、アントシアニン等の着色剤、及び/又はグリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤、及び/又はビタミンA、カロチン、ビタミンB 、ビタミンB 、ビタミンB 、ビタミンB12、ビタミンD、ビタミンE、葉酸等のビタミン強化剤、及び/又はシリコーン等の製造用剤、及び/又は食塩、塩化カリウム、マグネシウムの塩、鉄の塩等のミネラル剤、及び/又はジェランガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、ペクチン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、コンニャクマンナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、キチン、グルコサミン等の増粘材及び/又は食物繊維等の食品素材や食品添加物等の飲食可能な物質の使用が可能である。
【0021】
本明細書でいう食品又は飲料とは、当該加熱処理物を含有した食品又は飲料であればよく、例えば製菓・製パン類、穀粉・麺類、農産・林産加工食品、畜産加工品、乳・乳製品、油脂・油脂加工品、酒類、飲料、調味料及び食品素材等が挙げられる。特に、飲料、アルコール含有飲料、スープ類、調味料等に用いると新しい味覚の付与された飲食品となる。添加量は、0超〜100%未満で適宜選択できる。
【0022】
本発明の食品又は飲料の製造法は、特に限定はないが、調理、加工及び一般に用いられている食品又は飲料の製造法による製造を挙げることができ、製造された食品又は飲料に、焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類を湿式加圧下の加熱で処理することにより得られる本発明の加熱処理物が含有されていれば良い。
すなわち、調理・加工前、調理・加工時、更には調理・加工後に本発明の加熱処理物を添加してもよいし、調理及び加工品やその材料を、本発明の加熱処理物へ添加し、本発明の加熱処理物を希釈してもよい。
また本発明の加熱処理物はそのまま用いても良いし、濃縮して用いても良い。
【0023】
本発明の加熱処理物はがん細胞増殖抑制作用、抗菌作用を有し、本発明の加熱処理物を含有する食品又は飲料は制がん性、抗菌性の生理機能を有する食品又は飲料として有用である。
【0024】
以上、本発明により従来にない食味を有した野菜類及び/又はキノコ類の加工処理物、すなわち焙炒野菜類、焙炒キノコ類が提供される。この焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類は十分に加熱処理が行われており、そのまま食品として食することができる。またこの焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類は保存性も良く、また食物繊維等の食品中の有効成分が濃縮されている点においても極めて優れている。
本発明の焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類は、従来の野菜類及び/又はキノコ類に準じた方法で調理・加工品としても良く、新規な風味を有する調理・加工品を得ることができる。
更に本発明の焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類を湿式で加熱処理することにより、制がん作用、アポトーシス誘発作用等の生理機能を有するシクロペンテノンを含有する加熱処理物が得られ、この加熱処理物を使用することにより製造される食品又は飲料は制がん用、アポトーシス誘発用の機能性食品又は飲料として有用である。
【0025】
なおシクロペンテノンはウロン酸及び/又はウロン酸誘導体を含有する糖化合物含有物、例えば果物果皮、果物搾汁かす、例えばリンゴ搾汁かす、ミカン搾汁かす、野菜搾汁かす、ビートかす、穀物かす、例えば清酒粕、ビールかす、焼酎かす、ウイスキーかす、豆類かす、例えばおから、デンプンかす、例えば甘藷デンプンかす、馬鈴薯デンプンかす、海藻かす等の農水産・食品加工処理物をそのまま、あるいは乾燥、粉砕し、原料として用い、該原料を加熱処理することにより製造できる。
【0026】
ウロン酸及び/又はウロン酸誘導体を含有する農水産・食品加工処理物、例えば甘藷デンプンかす、馬鈴薯デンプンかす等のデンプンかすの加熱処理方法としては、シクロペンテノンが生成する条件であれば特に限定は無いが、デンプンかす、例えば甘藷デンプンかす、馬鈴薯デンプンかすを例えば60〜350℃で数秒〜数日、好ましくは80〜150℃で数分〜数日加熱処理すれば、シクロペンテノンを有する加熱処理物を得ることができる。
加熱処理時のpHは特に限定はないが、酸性下で行うのが好ましく、その原料に応じ加熱処理時のpHを調整すればよい。
【0027】
加熱処理時の原料の濃度はその加熱処理によりシクロペンテノンを生成しうる範囲内であれば特に限定は無く、操作性、収率等の点を考慮し設定すれば良い。本発明における加熱処理は湿式加熱でも、乾式加熱でも良いがシクロペンテノンの生成効率の点からは湿式加熱が好ましい。湿式加熱としては、水蒸気加熱、水蒸気加圧加熱、加圧式加熱等任意の湿式加熱方法を用いることができる。
【0028】
ウロン酸及び/又はウロン酸誘導体を含有する農水産・食品加工処理物、例えば甘藷デンプンかす、馬鈴薯デンプンかす等のデンプンかすの加熱処理物中のシクロペンテノンの精製、単離手段としては、化学的方法、物理的方法等の公知の精製手段を用いれば良く、ゲルろ過法、分子量分画膜による分画法、溶媒抽出法、分留法、イオン交換樹脂等を用いた各種クロマトグラフィー法等の従来公知の精製方法を組合せ、加熱処理物中に生成されたシクロペンテノンを精製、単離することができる。
シクロペンテノンはウロン酸及び/又はウロン酸誘導体を含有する農水産・食品加工処理物、例えば甘藷デンプンかす、馬鈴薯デンプンかす等のデンプンかす等を原料として簡便に、安価に製造することができる。
【0029】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお実施例において%はw/w%を意味する。
【0030】
実施例1
市販のキャベツを8mm角に細断し、その1000g(水分93%)を通常の乾燥機で50℃で12時間乾燥、脱水した。脱水を更に高めるため、通常の乾燥機で110℃で2時間乾燥し、前処理物である脱水キャベツを得た。この方法により得た脱水キャベツ(水分7%)は焙炒香味はなく、変色もなく通常の乾燥野菜に近い性状であった。
得られた脱水キャベツ10gずつを用いて、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃で30秒間乾燥熱風で焙炒処理し(熱風発生機TSK−60:竹綱製作所製)、焙炒キャベツ(水分2%)を得た。得られた焙炒キャベツを用いて香り、味、色について官能検査を行った。パネラーは10名で1良→3悪の3点法で行った。
評価平均点を基に、1〜1.4を◎極めて良し、1.5〜2.0を○良、2.1〜2.4を△やや良、2.5〜3.0を×不良として表示した。
その結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
Figure 0003585209
【0032】
表1より、焙炒キャベツは香ばしい焙炒香と野菜の香りが複合した新規な香りとなり、クッキング香が豊かと評価された。また焙炒キャベツは旨味が増し、濃厚感と奥行きある味で味に幅が感じられ、新規な味となった。対照の脱水キャベツは単にキャベツの乾燥品の香りと味であった。
また焙炒温度を変化させることによって、焙炒香味の程度を調整することもでき、褐変や褐変臭の少ない焙炒野菜が得られる。
次に250℃、30秒焙炒した焙炒キャベツ及び対照の脱水キャベツを用いて、生キャベツ当り同量を用いる配合で、通常の焼きめしを調理して食して比較した。その結果、焙炒キャベツを用いた焼きめしは、キャベツ風味以外にも香ばしい香味が油分と良くなじみ、隠し味としての効果を有することが指摘された。
【0033】
実施例2
市販の人参、又はタマネギを8mm角に細断し、各々の1000g(水分93%)を通常の乾燥機で50℃で12時間乾燥、脱水した。これらの乾燥物の脱水を更に高めるため、通常の乾燥機で110℃で2時間乾燥し、前処理物である脱水人参、脱水タマネギを得た。この方法により得た脱水人参、脱水タマネギ(それぞれ水分7%)は焙炒香味はなく、変色もなく通常の乾燥野菜に近い性状であった。
本発明の前処理物として、得られた脱水人参、脱水タマネギ又は市販の切り干しダイコンを30gずつ用いて、250℃で30秒間乾燥熱風で焙炒処理して焙炒人参、焙炒タマネギ又は焙炒ダイコン(それぞれ水分2%)を得た。得られた焙炒人参、焙炒タマネギ又は焙炒ダイコンを用いて香り、味、色について官能検査を行った。パネラーは10名で1良→3悪の3点法で行った。
評価平均点を基に、1〜1.4を◎極めて良し、1.5〜2.0を○良、2.1〜2.4を△やや良、2.5〜3.0を×不良として表示した。
脱水人参、脱水タマネギ又は脱水ダイコン(対照)との比較結果を表2に示す。
【0034】
【表2】
Figure 0003585209
【0035】
表2より、焙炒人参、焙炒タマネギ又は焙炒ダイコンは香ばしい焙炒香と野菜の香りが複合した新規な香りとなり、クッキング香が豊かと評価された。また焙炒人参、焙炒タマネギ、焙炒ダイコンは旨味が増し、濃厚感と奥行きある味で味に幅が感じられ、新規な味となった。対照の脱水人参、脱水タマネギ又は脱水ダイコン単にこれらの野菜の乾燥品の香りと味であった。
実施例1と同様にして人参、タマネギにおいて焙炒品と脱水品のそれぞれを通常の焼きめし調理を行って食して比較すると、焙炒品はクッキング香が豊かで、味も油分と良くなじみ、隠し味としての効果を有することが認められた。
【0036】
実施例3
細断したブナシメジ、細断したシイタケ、ほぐしたエノキタケを50℃で12時間乾燥、脱水し、脱水を更に高めるため、110℃で2時間更に乾燥した。この方法により得た脱水キノコを用いて、250℃で30秒間乾燥熱風で焙炒処理して焙炒キノコを得た。
焙炒キノコは脱水キノコに比べ、焙炒香が良好で、キノコ香味と焙炒味が付加され新規な香味の品質であった。焙炒エノキタケをすき焼きの具として用い、一方対照として脱水エノキタケを用いて比較すると、焙炒エノキタケはすき焼きのタレと良くなじみ、焙炒香味と醤油味のバランスが良くよれていた。
【0037】
実施例4
(1)細断したキャベツを50℃で12時間乾燥、脱水し、脱水を更に高めるため、110℃で2時間更に乾燥した。この方法により得た脱水キャベツを用いて、150℃、200℃、250℃で30秒間乾燥熱風で焙炒処理して焙炒キャベツを得た。脱水キャベツ、焙炒キャベツを水に懸濁し、2%懸濁物を調製し、それぞれの懸濁物を希硫酸でpH2又はクエン酸でpH3に調整した後、121℃で4時間の湿式加圧下での加熱処理を行い、加熱処理物を得た。加熱処理物を冷却した後、ろ紙ろ過によりろ液を調製し、ろ液中のシクロペンテノン生成量を、HPLCにより、後記参考例1−(2)記載のシクロペンテノンのα型結晶を標準物質とした積分値の検量線から算出した。
HPLCの条件を示す。
カラム:カプセル(CAPCELL)C18 300 S−5μm(京都クロマト社製)
溶出液:精製水
流速:1ml/min
検出:吸光度215nm
その結果を表3に示す。下記表3に示すように脱水キャベツ、焙炒キャベツの加熱処理物中にシクロペンテノンが生成した。
【0038】
【表3】
Figure 0003585209
【0039】
(2)細断したキャベツを50℃で12時間乾燥、脱水し、脱水キャベツを調製した。この脱水キャベツを150℃、200℃、250℃で30秒間乾燥熱風で焙炒処理して焙炒キャベツを得た。各焙炒キャベツを水に懸濁し、2%懸濁物を調製し、クエン酸でpH3に調整後、121℃で4時間の湿式加圧下での加熱処理を行い、加熱処理物を得た。加熱処理物を冷却した後、ろ紙ろ過によりろ液を調製し、ろ液中のシクロペンテノン生成量を、実施例4−(1)記載の方法で測定した。
その結果を表4に示す。下記表4に示すように焙炒キャベツの加熱処理物中にシクロペンテノンが生成した。
【0040】
【表4】
Figure 0003585209
【0041】
(3)細断したキャベツを50℃で12時間乾燥、脱水し、脱水を更に高めるため、110℃で2時間更に乾燥した。この方法により得た脱水キャベツを用いて、200℃、250℃、300℃、350℃で30秒間乾燥熱風で焙炒処理して焙炒キャベツを得た。焙炒キャベツを水に懸濁し、2%懸濁物を調製し、クエン酸でpH3に調整後、121℃で4時間の湿式加圧下での加熱処理を行い、加熱処理物を得た。加熱処理物を冷却した後、ろ紙ろ過によりろ液を調製し、ろ液中のシクロペンテノン生成量を実施例4−(1)記載の方法で測定した。
その結果を表5に示す。下記表5に示すように、250℃の焙炒キャベツの加熱処理物中にシクロペンテノンが最も多く生成していた。
【0042】
【表5】
Figure 0003585209
【0043】
(4)細断したキャベツを50℃で12時間乾燥、脱水し、脱水を更に高めるため、110℃で2時間更に乾燥した。この方法により得た脱水キャベツを用いて、250℃で15、30、60、120、240、480秒間乾燥熱風で焙炒処理して焙炒キャベツを得た。焙炒キャベツを水に懸濁し、2%懸濁物を調製し、希硫酸でpH2に調整後、121℃で4時間の湿式加圧下での加熱処理を行い、加熱処理物を得た。加熱処理物を冷却した後、ろ紙ろ過によりろ液を調製し、ろ液中のシクロペンテノン生成量を実施例4−(1)記載の方法で測定した。
その結果を表6に示す。表6に示すように焙炒時間30秒で最も多くシクロペンテノンの生成していた。
【0044】
【表6】
Figure 0003585209
【0045】
(5)細断したキャベツを50℃で12時間乾燥、脱水し、脱水を更に高めるため、110℃で2時間更に乾燥した。この方法により得た脱水キャベツを用いて、250℃で30秒間乾燥熱風で焙炒処理して焙炒キャベツを得た。焙炒キャベツを水に懸濁し、2%懸濁物を調製し、希硫酸でpH1、2、3、4に調整後、121℃で4時間の湿式加圧下での加熱処理を行い、加熱処理物を得た。加熱処理物を冷却した後、ろ紙ろ過によりろ液を調製し、ろ液中のシクロペンテノン生成量を実施例4−(1)記載の方法で測定した。
その結果を表7に示す。表7に示すように初発pH1での加熱処理物中にシクロペンテノンが最も多く生成していた。
【0046】
【表7】
Figure 0003585209
【0047】
(6)細断した生キャベツ、細断した人参、細断したタマネギを50℃で12時間乾燥、脱水し、脱水を更に高めるため、110℃で2時間更に乾燥し、脱水キャベツ、脱水人参、脱水タマネギを得た。この方法により得た脱水処理物及び市販の切り干しダイコンを用いて、250℃で30秒間乾燥熱風で焙炒処理して焙炒処理物を得た。焙炒処理物を水に懸濁し、2%懸濁物を調製し、希硫酸でpH2に調整後、121℃で4時間の湿式加圧下での加熱処理を行い、加熱処理物を得た。加熱処理物を冷却した後、ろ紙ろ過によりろ液を調製し、ろ液中のシクロペンテノン生成量を実施例4−(1)記載の方法で測定した。
その結果を表8に示す。表8に示すように各焙炒処理物の加熱処理物中にシクロペンテノンの生成が確認された。
【0048】
【表8】
Figure 0003585209
【0049】
(7)実施例3−(6)記載の焙炒処理物を水に懸濁し、2%懸濁物を調製し、希硫酸でpH3.8に調整後、115℃で2時間の湿式加圧下での加熱処理を行い、加熱処理物を得た。加熱処理物を冷却した後、ろ紙ろ過によりろ液を調製し、ろ液中のシクロペンテノン生成量を実施例4−(1)記載の方法で測定した。
その結果を表9に示す。表9に示すように各焙炒処理物の加熱処理物中にシクロペンテノンの生成が確認された。
【0050】
【表9】
Figure 0003585209
【0051】
参考例1
(1)グルクロノラクトン(ナカライテスク社製)500gを38リットルの水に溶解し、生蒸気を吹込んで125℃で5時間加熱した。冷却後減圧下濃縮し、NaOHで濃縮液をpH5.0に調整した。この液を水で平衡化したダイヤイオンSA−10A(三菱化学社製)を用いた陰イオン交換カラム(20リットル)にチャージし、水で溶出してくる非吸着画分24リットルを得た。
この画分を減圧下、2.8リットルまで濃縮し、終濃度2MになるようにNaClを加え、2M NaCl水溶液で平衡化した合成吸着剤SP−207(三菱化学社製)カラム(15リットル)に2回に分けてチャージした。2M NaCl水溶液でカラムを洗浄し、0.1M NaCl水溶液で溶出される画分合計78リットルを得た。
この画分を減圧下11リットルまで濃縮し、濃縮液に対して上記と同様のSP−207カラムクロマトグラフィーを行い24リットルの溶出液を得た。但し、すべての試料を1回のクロマトグラフィーにかけ、溶出は水で行った。
溶出液を減圧下100mlまで濃縮し、AC−110−10透析膜(旭化成社製)を用いた電気透析により脱塩し、シクロペンテノンの6%溶液100mlを得た。このシクロペンテノン溶液を減圧下濃縮し、赤褐色の濃縮残渣を調製した。またこのシクロペンテノン溶液を凍結乾燥し、赤褐色の凍結乾燥物を調製した。
【0052】
(2)参考例1−(1)で得られたシクロペンテノンの凍結乾燥物120gに酢酸エチルエステル1. 5リットルを加え、60℃に加熱し、抽出した。得られた酢酸エチルエステル抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。濃縮残渣を酢酸エチルエステル0. 5リットルに加熱溶解し、5℃に1晩放置し結晶化させた。結晶を吸引ろ過し、減圧乾燥することにより、淡黄色のシクロペンテノンのα型結晶50.9gを得た。
【0053】
参考例2
(1)甘藷デンプンかす(固形分27%)を乾燥物換算で3%、5%、7%となるよう精製水に懸濁し、N−硫酸溶液にてpH2に調整した。次いで120℃で4時間の湿式加圧下での加熱処理を行い、加熱処理物を得た。加熱処理物を冷却した後、ろ紙ろ過によりろ液を調製し、ろ液中のシクロペンテノン生成量を、実施例4−(1)記載の方法で測定した。
その結果を表10に示す。下記表10に示すように各甘藷デンプンかす濃度での加熱処理によりシクロペンテノンが生成した。
【0054】
【表10】
Figure 0003585209
【0055】
(2)甘藷デンプンかす(固形分27%)を乾燥物換算で5%なるよう精製水に懸濁し、N−硫酸溶液、N−NaOH溶液にてpH1、2、3、4に調整した。次いで120℃で4時間の湿式加圧下での加熱処理を行い、加熱処理物を得た。加熱処理物を冷却した後、ろ紙ろ過によりろ液を調製し、ろ液中のシクロペンテノン生成量を実施例4−(1)記載の方法で測定した。
その結果を表11に示す。表11に示すように、初発pH1の加熱処理物中に最も多くシクロペンテノンが生成していた。
【0056】
【表11】
Figure 0003585209
【0057】
(3)甘藷デンプンかす(固形分27%)を乾燥物換算で5%となるよう精製水に懸濁し、N−硫酸溶液にてpH2に調整した。次いで120℃で1、2、4、6、8時間の湿式加圧下での加熱処理を行い、加熱処理物を得た。加熱処理物を冷却した後、ろ紙ろ過によりろ液を調製し、ろ液中のシクロペンテノン生成量を実施例4−(1)記載の方法で測定した。
その結果を表12に示す。表12に示すようにシクロペンテノン生成量は加熱時間に依存していた。
【0058】
【表12】
Figure 0003585209
【0059】
(4)甘藷デンプンかす(固形分27%)を乾燥物換算で5%となるよう精製水に懸濁し(懸濁液のpHは4)、デンプンかす湿重量の0.1、1%となるようペクチナーゼ〔スクラーゼ:三共(株)社製〕を添加し、40℃、4時間のペクチナーゼ処理を行った後、N−硫酸溶液にてpH2に調整後、120℃で4時間の湿式加圧下での加熱処理を行い、加熱処理物を得た。加熱処理物を冷却した後、ろ紙ろ過によりろ液を調製し、ろ液中のシクロペンテノン生成量を実施例4−(1)記載の方法で測定した。
その結果を表13に示す。表13に示すようにシクロペンテノン生成量はペクチナーゼ添加量に依存していた。
【0060】
【表13】
Figure 0003585209
【0061】
(5)甘藷デンプンかす(固形分27%)を固形物換算で750gを水道水に懸濁し、N−硫酸溶液にてpHを2に調整し、15リットルの懸濁液を調製した。この懸濁液を120℃、4時間の湿式加圧下での加熱処理を行い、加熱処理物約14リットルを得た。加熱処理物を冷却した後、ろ過を行いろ液約11リットルを得た。ろ液中のシクロペンテノン生成量を実施例4−(1)記載の方法で測定した。ろ液中のシクロペンテノン量は134mg/リットルであった。
ろ液中のシクロペンテノンを参考例1に記載の方法で精製、結晶化し、シクロペンテノンのα型結晶を得た。
【0062】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は野菜類及び/又はキノコ類、あるいはその前処理物を、乾燥熱風での焙炒工程を包含する工程で製造することにより、褐変及び褐変臭の少なく、且つ焙炒香味の多い新規野菜類及び/又はキノコ類、及びその製造方法を提供することができる。
本発明の新規野菜類及び/又はキノコ類すなわち焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類はこれまでにない風味を有し、そのまま食することもでき、調理・加工用の素材とすることもできる。更にこれらの焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類を湿式加熱処理することにより、加熱処理物中にアポトーシス誘発作用、制がん作用等の生理機能を有するシクロペンテノンが生成し、この加熱処理物は制がん用、アポトーシス誘発用の機能性飲食品の素材として有用であり、本発明により、この加熱処理物及び該加熱処理物を含有、添加及び/又は希釈してなる制がん用、アポトーシス誘発用の機能性食品又は機能性飲料が提供される。

Claims (6)

  1. 野菜類及び/又はキノコ類、あるいはその前処理物を、200〜300℃の乾燥熱風で焙炒する工程を含有する処理で得られる焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類。
  2. 前処理物が野菜類及び/又はキノコ類の脱水処理物である請求項1記載の焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類。
  3. 野菜類及び/又はキノコ類、あるいはその前処理物を、200〜300℃の乾燥熱風で焙炒処理する工程を含有することを特徴とする焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類の製造方法。
  4. 前処理物が野菜類及び/又はキノコ類の脱水処理物である請求項3記載の焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類の製造方法。
  5. 請求項1又は2記載の焙炒野菜類及び/又は焙炒キノコ類を湿式加圧下の加熱で処理することにより得られる加熱処理物。
  6. 請求項5記載の加熱処理物を含有、添加及び/又は希釈してなる食品又は飲料。
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