JP3584088B2 - 光学機器 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ビデオカメラ、銀塩カメラ、電子スチルカメラ等の光学機器に関し、特にフォーカスや変倍の際に光軸上移動する移動レンズ群を有する光学系(撮影光学系)、例えば単一焦点距離のレンズやズームレンズ等の撮影光学系において、環境変化があったときのピントズレを補正するようにした光学機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カメラ等の光学機器においては、撮影光学系の小型化、及び固体撮像素子のイメ−ジサイズの小径化が急速に進んでいる。又、撮影光学系を構成する光学材料としてプラスチック材料が多く用いられている。なぜならば、プラスチック材料を用いると、レンズが金型により容易に成形でき、又、その形状の任意性も大きく、又ガラス材料に対してコストメリットが大きいからである。この為、プラスチック材料より成るレンズがファインダ系や、赤外線アクティブオートフォーカスユニット等にも使用されている。
【0003】
しかしながら、プラスチック材料は、無機ガラス材料に比べて環境変化に対する物理的性質の変化が大きい。例えば、線膨張係数が大きく、プラスチック材料のPMMAでは代表値で67.9×10−6/℃なのに対して、無機ガラスのLaK 14(OHARA製)では、57×10−7/℃と1桁小さい。又、温度変化に対する屈折率の変化についてもPMMAでは、代表値で1.0〜1.2×10−4/℃なのに対して、上記LaK 14では、D線で3.9〜4.4×10−6/℃と2桁小さい。このようにプラスチック材料は、無機ガラス材料に比べて、温度変化に対して光学的諸定数(屈折率や形状等)の変化が大きいので、プラスチック材料より成るレンズ(プラスチックレンズ)は、温度変化に対して、焦点距離が、無機ガラス材料より成るレンズに比べて大きく変化する。
【0004】
又プラスチック材料は無機ガラス材料に比べて吸水率が大きい。この為プラスチックレンズの光学的諸定数は、温度変化と同様に湿度変化に対しても、無機ガラス材料より成るレンズに比べて大きく変化する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
プラスチックレンズを用いると、環境変化、特に温度変化や湿度変化があると、無機ガラス材料より成るレンズを用いた場合に比べて、焦点距離等の光学的性質が大きく変化してくるという問題点が生じてくる。特に最近の光学機器は、撮影光学系の小型化や、固体撮像素子の小型化、そして各要素の高密度化を図って小型化されている。この為光学機器に用いている光学系の結像面の予定結像面に対する温度変化や湿度変化等によるズレの影響が大きくなるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、温度変化や湿度変化などの環境変化による結像位置の誤差を小さくできる光学機器を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、変倍のための第1レンズ群と、該第1レンズ群よりも像側に変倍による結像位置の変化を補正するための第2レンズ群を含む可動レンズを有するズームレンズと、前記可動レンズを前記ズームレンズの光軸方向に移動させるステッピングモータを含むレンズ駆動手段と、前記ズームレンズに関連する温度を検出する温度検出手段と、互いに異なる多数個の温度領域毎に前記レンズ駆動手段の制御に用いる制御データを記憶している記憶手段と、前記多数個の温度領域の中から前記温度検出手段が検出した温度が含まれる温度領域を検出し、該検出した温度領域に対応する前記制御データを用いて前記レンズ駆動手段の制御を行なう制御手段と、前記可動レンズのスタート位置を検出するためのレンズ位置検出器とを有し、前記制御データは、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の各位置データで定められる多数個の位置領域の各々に対応した前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の各々の速度データと、前記多数個の位置領域の各々に対応した前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の各々のスタート位置データを含んでおり、前記制御手段は、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の各位置を検出しており、前記ステッピングモーターに対する駆動パルスを計数するカウンターを備え、前記レンズ位置検出器を用いて前記可動レンズの初期位置を検出したときに前記カウンターをリセットし、前記第1レンズ群の検出位置と前記第2レンズ群の検出位置と前記第2レンズ群の各位置データの差分を用いて、前記多数個の位置領域の内のある位置領域を特定し、特定した位置領域に対応する前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の各々の速度データと初期位置データを用いて前記レンズ駆動手段を制御することを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は請求項1の発明において、前記制御データは、前記可動レンズの位置を含むことを特徴としている。
請求項3の発明は請求項1又は2の発明において、前記制御データは、前記可動レンズの移動速度を含むことを特徴としている。
請求項4の発明は請求項1,2又は3の発明において、前記制御データは、前記可動レンズのスタート位置を含むことを特徴としている。
請求項5の発明は請求項1の発明において、前記制御データは、前記第2レンズ群のカム軌跡に関連する前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の各々の多数個の位置データを含むことを特徴としている。
請求項6の発明は請求項1の発明において、前記ズームレンズに関連する湿度を検出する湿度検出手段と、多数個の互いに異なる湿度領域毎に前記レンズ駆動手段の制御に用いる第2制御データを記憶している第2記憶手段とを有し、前記制御手段は、前記多数個の湿度領域の中から前記湿度検出手段が検出した湿度が含まれる湿度領域を検出し、該検出した湿度領域に対応する前記第2制御データを用いて前記レンズ駆動手段の制御を行なうことを特徴としている。
【0009】
【実施例】
図1は本発明の実施例1の要部ブロック図である。図中1は光学系であり、4つのレンズ群より成る、所謂4群構成のリアフォ−カスズ−ムレンズ(以下「RFZレンズ」と称する)より成っている。
【0010】
RFZレンズ1は固定レンズ群である第1のレンズ群(以下「前玉」と称する)101、移動レンズ群であり且つ変倍機能を有する第2のレンズ群(以下「バリエータ」と称する)102、固定レンズ群である第3のレンズ群(以下「アフォーカル」と称する)103、そして移動レンズ群であり且つフォ−カス機能と第2レンズ群による変倍に伴う像面変動を補正するコンペンセータとしての機能(これも一種のフォーカス機能と言える。)を有する第4のレンズ群(以下「RR」と称する)104より成っている。
【0011】
実際には、本実施例においては、前玉101は3枚、バリエータ102は3枚、アフォーカル103は1枚、RR104は2枚の、4群9枚のレンズ構成より成っている。
【0012】
本実施例においては、各レンズ群101〜104の少なくとも1つのレンズ群にプラスチック材より成るプラスチックレンズを使用している。該プラスチックレンズの材料としては、アクリル系材料、ポリオレフィン系材料、ポリカーボネート等が適用可能である。
【0013】
本発明では、プラスチックレンズをレンズ群中のどこに用いるかは特に限定されるものではなく、又、プラスチックレンズを各レンズ群中に全く使用しない場合もある。なぜならば、ガラスレンズであっても環境変化により焦点距離が変化するからである。
【0014】
102aは、バリエータ102を保持するための部材(以下「V移動環」と称する)、104aはRR104を保持するための部材(以下「RR移動環」と称する)であり、各移動環はPC(ポリカーボネート)を使用して、金型による成形、又は切削加工により製作する。
【0015】
2は上記レンズ群を保持するための部材(以下「鏡筒」と称する)であり、PC(ポリカーボネート)を使用して金型による成形、又は切削加工により製作する。
【0016】
尚本発明においては、鏡筒や移動環について、特に上記材料及び製作方法を限定するものではなく、上記以外でも例えば、アルミニウムをダイカストにより成形したり、ダイカスト成形した後に2次加工によって製作したり、又はアルミニウムのブロックから直接切削加工したりしても良い。
【0017】
鏡筒2はいくつかの部材に分けて形成しても良く、本発明においては特に限定するものでない。例えば、RFZレンズ1の光軸105に対して、筒状もしくは箱形の鏡筒2を光軸105に対して平行に分けた2部材から形成しても良く、又、光軸105に対して垂直に分けた2部材から形成しても良く、又各々の場合において2部材だけでなく数部材から形成しても良い。
【0018】
又本実施例においては、前玉101及びアフォーカル103は、保持部材101a,103aに各々固定した後、鏡筒2に固定する構成としているが、鏡筒2に直接固定しても良く、特に限定するものではない。
【0019】
3はCCD等の光電変換素子18に入射する光束の光量を調節するための絞り部材であり、絞り部材3はiGメータ(又はSTEPモーター等)の駆動手段7により、絞り部材3内の絞り羽根3aを光軸105に略垂直方向に駆動することによって絞り部材3の開口部3bの面積を変える。9は絞りエンコーダであり、iGメータの回転角度を検出している。光量調節は、絞り制御回路20と駆動回路16によって、光電変換素子18に入射する光量が一定になるように絞り部材3の絞り羽根を駆動手段7とエンコーダ9とによって駆動することで開口部3bの面積を制御して行っている。22は絞りエンコーダ9からの信号を検出する検出回路である。
【0020】
本実施例では機械式の絞り部材3と駆動手段7及びエンコーダ9より絞りユニットとを構成しているが、これに限定するものではなく電気化学作用により光に対する吸収作用を制御するエレクトロクロミー機能等を有する物性絞りであっても良い。
【0021】
4は光電変換素子18の前に置かれたフィルタユニットであり、ユニット4は水晶等の光学的ローパスフィルタ4a、赤外線遮断フィルタ4b等を有している。
【0022】
本実施例において、各フィルター4a,4bは、光電変換素子18の直前に一体的に配置されているが、各々別体で配置しても良く、又、RFZレンズ1の各フィルタの機能を発揮できる任意の位置に配置しても良い。
【0023】
5,6は各々移動レンズ群102,104を駆動するためのステッピングモーターや電磁力により駆動力を発生するボイスコイルモーター等の駆動手段(レンズ駆動手段)で、ここではステッピングモーターを用いてある。5a,6aは表面に所定のピッチでネジが切られているリードスクリューネジである。102b,104bは、各々ラックであり、各々V移動環102a,RR移動環104aと同一部材として形成するか、又は別部材としてV移動環102a及びRR移動環104aへ接着等で一体に形成する。該ラック102b,104bは、リードスクリューネジ5a,5bとかみ合っており、ステップモーター5,6が正逆転することによって、V移動環102a,RR移動環104aが光軸105に平行に移動し、バリエータ102とRR104とが光軸に沿って移動する。
【0024】
8a,10aは各々フォトインタラプタである。8b,10bは、各々遮光板であり、それぞれV移動環102a,RR移動環104aと同一部材として形成するか、又は別部材としてV移動環102a,RR移動環104aに接着等で一体に形成している。該遮光板8b,10bが、V移動環102a,RR移動環104aの移動によってフォトインタラプタ8a,10aの位置に来ることで、フォトインタラプタ8a,10aからの信号が変化し、この信号変化を検出することでバリエータ102及びRR104の基準位置を決定している。尚、フォトインタラプタ8a(10a)と遮光板8b(10b)はレンズの初期位置を検出する検出手段の一要素を構成している。21,23は、フォトインタラプタ8a,10aからの各信号を検出する検出回路である。
【0025】
本実施例においてはレンズ初期位置検出手段としてフォトインタラプタ8a,10aと遮光板8b,10bの組み合わせを採用しているが、例えばホール素子とマグネットの組み合わせや、PSD(position sensitive detector) とiRED(赤外発光ダイオード)の組み合わせ等を用いても良い。
【0026】
15,17はレンズ駆動手段としてのステッピングモーター5,6を駆動するための駆動回路である。12は検出手段としてのサーミスターや感熱抵抗等の温度検出手段であり、検出回路24によって温度に対応した出力信号をマイコン等の制御回路13へ出力している。以下温度検出手段はサーミスター12として説明するが、感熱抵抗を用いても良い。
【0027】
本実施例においては、サーミスター12は前玉101近傍に配置してある。これは、本実施例では前玉101が、計算上、温度変化に対する焦点距離の変化量が他のレンズ群に比べて大きいためである。温度センサー(サーミスター、感熱抵抗)を置く位置は、全系の焦点距離の変化量に対して、そのレンズ群の焦点距離の変化が支配的であるレンズ群の近傍におくと良い。
【0028】
19は光電変換素子18からの出力信号を処理して画像信号として出力するカメラプロセス回路である。14はバリエータ102及びRR104の駆動情報が格納されるROM等の記憶手段である。11はズームスイッチであり、広角側(以下「WIDE」と称する)へズーミングしたいときにはズームスイッチ11aを押し、望遠側(以下「TELE」と称する)へズーミングしたいときにはズームスイッチ11bを押すことによってズーミング動作を行っている。ズームスイッチ11が操作されると、制御回路13からの駆動信号によってバリエータ102とRR104とを駆動してズーミングを行っている。25は電源である。
【0029】
次に図1の実施例1の動作について説明する。
【0030】
RFZレンズ1は、フォーカス状態を維持しつつ変倍を行なうために被写体距離毎に、バリエータ102の光軸上のレンズ停止位置(ズーム位置)に対するRR104の光軸上の停止位置が決まっている。
【0031】
図2に被写体距離ごとにRFZレンズ1のバリエータ102とRR104の光軸上の停止位置をプロットしたもの(以下「カム軌跡」と称する)を示す。
【0032】
図2において、例えば被写体距離が無限遠(2m)のとき、バリエータ102がWIDEからTELEへ光軸上、移動するとRRレンズ104は曲線Y∞(Y2)の如く、光軸上物体側へ凸状の軌跡を有しつつ移動する。
【0033】
このように本実施例では、WIDEからTELE、又はTELEからWIDEへズーミングする時には、被写体距離に応じて上記カム軌跡をトレースするように、バリエータ102とRR104を駆動制御して、これによりピントズレのない良好な画像を得ている。
【0034】
本実施例においては少なくとも1つのレンズ群にプラスチックレンズを使用している。この為、プラスチックレンズの周囲に温度変化や湿度変化などの環境変化が生じると前述したようにプラスチックレンズの形状や屈折率が変化し、焦点距離も変化してくる。尚以下の説明では環境変化として温度変化を中心に述べる。
【0035】
この為RFZレンズ1のトータルの焦点距離も変化してくる。その結果、基準温度Tref (本実施例では20℃に設定してある)の時の結像面に対して温度変化した時の結像面はズレてくる。即ちピントズレが発生してくる。従ってズーミングする場合、温度変化が生じた時は、温度変化によって発生した結像面のズレを補正するように、移動レンズ群をトレースする上記カム形状を補正する必要がある。
【0036】
図3に、基準温度Tref =20℃、温度(Tref +30)℃の時と、温度(Tref −30)℃の時の、被写体距離が無限の場合のカム軌跡を示す。
【0037】
本実施例においては、基準温度Tref よりも高温になるとRRレンズ104の物体側への繰り出し量が大きくなり、逆に基準温度よりも低温になるとRRレンズ104の繰り出し量が小さくなる。
【0038】
本実施例においては温度変化に対するピントずれが最も大きいのは、TELE端である。
【0039】
本実施例では、図7に示す様にバリエータ102とRR104の各々の光軸上の移動範囲を領域分割して多数個の位置領域I〜VII ・・・・を形成している。バリエータ102とRR104の各領域分割データとして多数個の基準位置データ(図7の各位置領域)が予めROM14に格納してある。そして該位置領域ごとに、ズーミングするときのバリエータ102とRR104の駆動データとしてのバリエータ102とRR104の代表速度が予めROM14に格納してある。従ってバリエータ102とRR104の各々の位置を検出して該検出した各位置より位置領域を決定し、該領域の代表速度をROM14より読み出してバリエータ102とRR104を駆動して、これによりピントズレのないズーミングを行っている。
【0040】
本実施例においては、上記の領域分割データや代表速度が相異なる温度(領域)毎に個別に設定されており、作動温度領域を所定の温度幅ΔG で多数の部分温度領域に分割し、その部分温度領域ごとにバリエータ102とRR104の温度基準位置データ(図7のバリエータ102とRR104の各位置座標)と、各位置領域ごとの温度領域代表速度データが、ROM14にあらかじめ格納されている。従って温度変化が生じたときには変化後の部分温度領域における温度基準位置データを用いてバリエータ102とRR104の温度基準位置データを更新し、現在のバリエータ102とRR104の位置データと、バリエータ102とRR104の対応する各温度基準位置データとの差分値から前記位置領域を決定して、該位置領域のバリエータ102とRR104の温度代表速度データをROM14から読み出してバリエータ102とRR104を駆動制御している。
【0041】
本実施例では作動温度−10℃〜+70℃を温度幅1℃以上の幅で分割している。ROM14に格納される前記温度基準位置データと前記温度代表速度データは、前述したように基準温度Tref に対して温度変化が生じたときのプラスチックレンズの焦点距離の変化、RFZレンズ1の各レンズ群を保持しているメカ部材の温度変化による伸び縮みによるレンズ間隔の変化によるピントずれの影響を考慮して補正されたデータである。又これらのデータは、サーミスター12が検出した温度に対するプラスチックレンズと保持部材の実際の温度との差ををあらかじめ考慮に入れて補正して算出している。これはレンズの位置によって、例えばCCD18のそばに置かれたレンズやメカ部材は、前玉101に比べてCCDの発熱による温度上昇が大きい場合があること等を考慮しているということである。
【0042】
以下、本実施例の動作について図4,図5,図6に示すフローチャートによって説明する。
【0043】
初めに電源25が投入される。次に制御回路13は、フォトインタラプタ8a,10aからの信号を各検出回路21,23を通して読み込み、各々読み込んだ信号に応じた方向、即ち本実施例においては検出回路21,23からの信号が、highのときはlowとなる方向へ、lowのときはhighとなる方向へバリエータ102とRR104とを各々駆動し、各フォトインタラプタ8a,10aからの信号が変化するまでバリエータ102とRR104を駆動し光軸に沿って移動させる。
【0044】
各フォトインタラプタ8a,10aの信号が変化した位置を、バリエータ102,RR104のそれぞれの初期リセット位置とする。即ち、上記信号の変化した位置でバリエータ102とRR104を停止させて、制御回路13内のバリエータ102、RR104の各カウンタをクリアする。該カウンタは、バリエータ102,RR104の駆動パルスをカウントするものであり、これによってバリエータ102及びRR104の初期リセット位置からの移動距離即ち現在位置を検出している。
【0045】
前玉101の周囲に配置したサーミスター12からの出力信号を検出回路24を通して制御回路13に入力することで、サーミスター12が置かれている場所の温度T が検出される。以下、電源が投入されてからK回目の検出温度をTS(K)とする。該検出温度TS(1)の温度領域を決定する。該温度TS(1)に応じたバリエータ102とRR104の温度基準位置データと温度リセット位置データをROM14から読み出し、制御回路13内に格納している。
【0046】
該温度リセット位置データは、基準温度Tref での初期リセット位置とその他の温度T での初期リセット位置が温度変化によるメカ部材の伸縮や、フォトインタラプタ8a,10aの温度特性によってズレるためにその位置を補正するためのものである。従って、検出温度Ts(K)が基準温度Tref の入っている温度領域以外の領域に属するものであれば、該温度リセット位置データに従って、上記カウンタをカウントし、初期リセット位置を補正する。該初期リセット位置は本実施例においては、前記領域分割した分割領域外に設定しているが、分割領域に設定しても構わない。該温度基準位置データには初期リセット位置データ(本実施例ではバリエータ102とRR104の各カウンタの値が0の場所であり、どの温度でも共通である)からの差分値を格納している。
【0047】
ズームスイッチ11が押されているかチェックする。ズームスイッチ11aが押されている時はWIDE方向へズーミング行われ、ズームスイッチ11bが押されている時は、TELE方向へズーミングが行われる。押されていない場合については、ズーミング動作しない。
【0048】
以下、TELE方向にズーミングされる場合についてのみ説明するが、WIDE方向でも全く同様のルーチンである。
【0049】
カウンタよりバリエータ102の位置PV を読み出す。カウンタよりRR104の位置PRR を読み出す。前玉101の周囲に配置されたサーミスター12からの出力信号を検出回路24を通して制御回路13に入力することでサーミスター12が置かれている場所の温度T を検出する。該検出温度T の温度領域を決定する。
【0050】
該温度領域に応じたバリエータ102及びRR104の温度基準位置データPVTref ,PRRTrefがROM14から読み出され、制御回路13内に格納される。バリエータ102の温度位置データ
PVT(k)=PV(k) −PVTref
及び
PRRT(k)=PRR(k) −PRRTref
を求め、位置領域を決定する。
【0051】
次に、該位置領域のバリエータ102及びRR104の温度代表速度VVT(k) ,VRRT(K)をROM14より読み出して制御回路13に格納する。温度変化が大きい時は、現在の温度の計測回数をK回としたときに、
ΔT<|TS(K)−TS(K−1)
なる関係の時には、現在記憶しているバリエータ102及びRR104の温度代表速度データを補正する。そうでない場合は、現在記憶しているバリエータ102とRR104の温度代表速度データによってバリエータ102とRR104を駆動する。
【0052】
本実施例ではΔT≦ΔG /2に設定している。補正の仕方は以下の通りである。現在記憶しているバリエータ102、RR104の温度代表速度VVT(K) ,VRRT(K)とすると、バリエータ102とRR104の補正温度代表速度を
VT(K),V RRT(K) とする。
【0053】
VT(K)=VVT(K)
RRT(K) =VRRT(K)+C ×(PVT(K)−PVT(K−1)
ただし、C は任意の定数とする。
【0054】
RRT(K) >VRRmax
の時は以下とする。ただし、VRRmax は駆動手段6の最高速度である。
【0055】
VT(K)=(VRRmax /V RRT(K) )×VVT(K)
RRT(K) =VRRmax
上記補正温度代表速度データによって、バリエータ102、RR104を駆動する。
【0056】
以上ズーミング中の補正動作についてについて説明したが、次にAF(自動焦点検出)中の補正動作について説明する。
【0057】
本実施例のRFZレンズ1における合焦動作は、例えば特願平6−82374号や、特願平6−102236号等で提案している方式を利用している。即ちRR104を光軸105と平行方向に振動させ、このときCCD18から出力される映像信号の高周波成分が最大となるようにRR104を駆動制御することにより行っている。この方式は、いわゆる山登りAFと呼ばれるものであるが、山の裾野ではRR104の駆動スピードを早くし、頂上付近ではゆっくりとすることで山の頂上にRR104が停止するようにしている。
【0058】
しかしながら、AF動作中に基準温度領域から温度変化が生じて山の頂上、即ちRR104の到達目標位置が離れてしまう場合や、到達目標位置が近くなる場合には、その時に採用しているRR104の駆動手段6のスピードでは、前者の場合は、時間がかかる、又後者の場合には到達目標位置を行き過ぎてしまう恐れがある。
【0059】
従って本実施例においては、サーミスター12の出力から検出される温度T によって、RR104の基準温度領域の場合の駆動スピードVRRAFに重み付けをして、駆動制御している。到達位置が離れる場合は1より大きい任意の定数CafをVRRAFにかけ、到達位置が近くなる場合には、1より小さい任意の定数Caff をかけている。
【0060】
以上説明したように、本実施例の構成とすることで、使用中の環境温度(一定)が基準温度からずれている場合は勿論のこと、ズーミング中及びAF動作中に温度変化があった場合でも、ピントズレのない良好な画像を得ることができる。
【0061】
本実施例においては、温度検出手段としてのサーミスター12を1個使用しているが、複数個使用してもよく、これによれば、より良好なる効果が得られる。
【0062】
又本実施例では初期リセット位置の温度変化による補正を行っているが、この補正は補正量が像ずれの影響を無視できる場合には行わなくても良い。
【0063】
図8は本発明の実施例2の要部ブロック図である。図中、図1で示した要素と同一要素には同符番を付している。
【0064】
本実施例は環境変化として湿度が変化した場合を示している。図8において26は静電容量式又はサーミスターを使用した湿度検出センサーである。27は湿度検出センサー26からの出力によって湿度を検出する検出回路であり検出した湿度情報に相当する出力信号を制御回路13へ出力する。
【0065】
本実施例は環境変化として湿度が変化したときのプラスチックレンズの形状変化やその材質の屈折率変化により焦点距離が変化したときのピントズレを実施例1で温度変化があったときと同様にして補正する。即ち、温度と湿度の違いはあるものの基本構成は同じである。
【0066】
次に本実施例の動作について説明する。本実施例においては、各レンズ群にプラスチックレンズを使用している。この為、プラスチックレンズに湿度変化が生じるとプラスチックレンズの形状が変化してきて各レンズ群の焦点距離が変化してRFZレンズ1の全系の焦点距離も変化してくる。その結果、基準湿度Href (本実施例では50%に設定してある)の結像面に対して結像面がズレてくる。即ちピントズレが発生してくる。従って、ズーミングする場合に湿度変化が生じた時は、湿度変化によって発生した結像面のズレを補正する様に、トレースするカム形状も補正する必要がある。
【0067】
本実施例においては、作動湿度領域を所定の湿度幅ΔG に領域分割している。その湿度幅ΔG ごとにバリエータ102とRR104の湿度基準位置データと各位置領域ごとの湿度領域代表速度データを、ROM14にあらかじめ格納している。湿度変化が生じたときには、バリエータ102とRR104の湿度基準位置データを更新し、現在のバリエータ102とRR104の位置データと、バリエータ102とRR104の該湿度基準位置データとの差分値から前記位置領域を決定して該位置領域のバリエータ102とRR104の湿度代表速度データをROM14から読み出してバリエータ102とRR104を駆動制御している。
【0068】
ROM14に格納される前記湿度基準位置データと前記湿度代表速度データは前述したように、基準湿度Href に対して湿度変化が生じたときのプラスチックレンズの焦点距離の変化の影響を考慮して補正されたデータである。又、これらのデータは、湿度検出センサーが検出した湿度に対するプラスチックレンズの実際の湿度との差ををあらかじめ考慮に入れて補正して算出している。これはレンズの位置によって、例えばCCDのそばに置かれたレンズ付近の湿度は、例えば前玉101に比べて小さい場合があること等を考慮しているためである。
【0069】
以上ズーミング中の補正動作についてについて説明したが、次にAF中の補正動作について説明する。
【0070】
本実施例でのRFZレンズ1における合焦動作は実施例1と同様である。即ちRR104を光軸105と平行方向に振動させ、このときCCD18から出力される映像信号の高周波成分が最大となるようにRR104を駆動制御することにより行っている。いわゆる山登りAFと呼ばれるものであるが、山の裾野ではRR104の駆動スピードを早くし、頂上付近ではゆっくりとすることで山の頂上にRR104が停止するようにしている。
【0071】
しかしながらAF動作中に湿度変化が生じて山の頂上、即ちRR104の到達目標位置が離れてしまう場合、逆に到達目標位置が近くなる場合には、その時に採用しているRR104の駆動手段6のスピードでは、前者の場合は時間がかかる、又後者の場合には到達目標位置を行き過ぎてしまう恐れがある。
【0072】
従って本実施例においては、湿度検出センサー26の出力から検出される湿度H によって、RR104の基準駆動スピードVHRRAF に重み付けをして駆動制御するものとする。到達位置が離れる場合は1より大きい任意の定数CHaf をVHRRAF にかけ、到達位置が近くなる場合には1より小さい任意の定数CHaffをかける。
【0073】
以上説明したように、本実施例の構成とすることで、使用中の環境湿度(一定)が基準湿度からずれている場合は勿論のことズーミング中及びAF動作中に湿度変化があった場合でも、ピントズレの無い良好な画像を得ることができる。
【0074】
本実施例においては湿度検出センサー26を1個使用しているが、複数個使用しても良く、これによればより良好なる効果が得られる。
【0075】
尚以上の各実施例においては温度検出手段と湿度検出手段を各々設けた場合について説明したが、双方の検出手段を光学機器内に設けて、温度変化及び湿度変化によるピントズレについて各実施例で示した方法を用いて同様に補正するようにしても良い。
【0076】
【発明の効果】
本発明によれば以上のように、フォーカスや変倍の為に光軸上移動する移動レンズ群を有する光学系(撮影レンズ)を用いたとき環境変化があったとき、例えば温度変化や湿度変化があっても環境変化に応じて該移動レンズ群の移動軌跡をその都度適切に設定することにより結像面のズレを補正し、高い光学性能を維持することのできるビデオカメラや銀塩カメラそして電子スチルカメラ等に好適な光学機器を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の要部概略図
【図2】図1の移動レンズ群のカム軌跡の説明図
【図3】温度変化に対するカム軌跡の変化を示す説明図
【図4】本発明の実施例1の動作を示すフローチャート
【図5】本発明の実施例1の動作を示すフローチャート
【図6】本発明の実施例1の動作を示すフローチャート
【図7】本発明における移動レンズ群の領域分割を示す説明図
【図8】本発明の実施例2の要部概略図
【符号の説明】
1 光学系
102,104 移動レンズ群
2 鏡筒
5,6 レンズ駆動手段
12 温度検出手段
26 湿度検出手段
13 制御手段
14 記憶手段
15〜17 駆動回路
21〜24 検出回路

Claims (6)

  1. 変倍のための第1レンズ群と、該第1レンズ群よりも像側に変倍による結像位置の変化を補正するための第2レンズ群を含む可動レンズを有するズームレンズと、前記可動レンズを前記ズームレンズの光軸方向に移動させるステッピングモータを含むレンズ駆動手段と、前記ズームレンズに関連する温度を検出する温度検出手段と、互いに異なる多数個の温度領域毎に前記レンズ駆動手段の制御に用いる制御データを記憶している記憶手段と、前記多数個の温度領域の中から前記温度検出手段が検出した温度が含まれる温度領域を検出し、該検出した温度領域に対応する前記制御データを用いて前記レンズ駆動手段の制御を行なう制御手段と、前記可動レンズのスタート位置を検出するためのレンズ位置検出器とを有し、前記制御データは、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の各位置データで定められる多数個の位置領域の各々に対応した前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の各々の速度データと、前記多数個の位置領域の各々に対応した前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の各々のスタート位置データを含んでおり、前記制御手段は、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の各位置を検出しており、前記ステッピングモーターに対する駆動パルスを計数するカウンターを備え、前記レンズ位置検出器を用いて前記可動レンズの初期位置を検出したときに前記カウンターをリセットし、前記第1レンズ群の検出位置と前記第2レンズ群の検出位置と前記第2レンズ群の各位置データの差分を用いて、前記多数個の位置領域の内のある位置領域を特定し、特定した位置領域に対応する前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の各々の速度データと初期位置データを用いて前記レンズ駆動手段を制御することを特徴とする光学機器。
  2. 前記制御データは、前記可動レンズの位置を含むことを特徴とする請求項1の光学機器。
  3. 前記制御データは、前記可動レンズの移動速度を含むことを特徴とする請求項1又は2の光学機器。
  4. 前記制御データは、前記可動レンズのスタート位置を含むことを特徴とする請求項1,2又は3の光学機器。
  5. 前記制御データは、前記第2レンズ群のカム軌跡に関連する前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の各々の多数個の位置データを含むことを特徴とする請求項の光学機器。
  6. 前記ズームレンズに関連する湿度を検出する湿度検出手段と、多数個の互いに異なる湿度領域毎に前記レンズ駆動手段の制御に用いる第2制御データを記憶している第2記憶手段とを有し、前記制御手段は、前記多数個の湿度領域の中から前記湿度検出手段が検出した湿度が含まれる湿度領域を検出し、該検出した湿度領域に対応する前記第2制御データを用いて前記レンズ駆動手段の制御を行なうことを特徴とする請求項1の光学機器。
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