JP3583557B2 - 添加剤含有熱可塑性樹脂成形体の製造方法 - Google Patents

添加剤含有熱可塑性樹脂成形体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種の添加剤が揮散、滲出しないように含有されている熱可塑性樹脂成形体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂で成形される外装用建材などの成形体は、耐候性や耐汚染性等を向上させるために紫外線吸収剤や防汚剤等の添加剤を含有させて使用されている。
【0003】
しかし、これまでの添加剤含有熱可塑性樹脂成形体は、添加剤を物理的に混合して分散させたものであるため、添加剤が経時的に揮散、消失し、耐候性や耐汚染性等を長期間維持することが困難であった。
【0004】
そこで、本発明者らはエステル交換反応に着目し、ポリエステル系樹脂を熱溶融成形する前に、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、エステル結合のいずれかを有する添加剤をポリエステル系樹脂に配合して、加熱溶融状態のポリエステル系樹脂のポリマー分子と添加剤をエステル交換反応させることを要旨とする添加剤含有樹脂成形体の製造方法(特願平5−128456号)や、更にこの方法の適用範囲を広げて、ポリマー分子の側鎖にエステル結合又はカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂を加熱溶融成形する前に、同様の添加剤を配合してエステル交換反応させることを要旨とする添加剤含有樹脂成形体の製造方法(特願平8−131201号)を提案した。
【0005】
これらの方法で製造される樹脂成形体は、添加剤がポリマー分子とエステル結合して固定化されるため、経時的に揮散、滲出することがなく、長期にわたって添加剤の効能を維持することができるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の製造方法はエステル交換反応の効率があまり高くなく、適当なエステル交換触媒を添加しても、反応時間を長時間にしないと反応率を高くできず、この点で改良の余地があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、エステル交換反応率を短時間で大幅に向上させることができる添加剤含有熱可塑性樹脂成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明の添加剤含有熱可塑性樹脂成形体の製造方法は、ポリマー分子がエステル結合又はカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂を加熱溶融して所定の形状に成形する前に、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、エステル結合のいずれかを有する添加剤を熱可塑性樹脂に配合し、二酸化炭素雰囲気中で加熱溶融状態の熱可塑性樹脂のポリマー分子と添加剤とをエステル交換反応させることを特徴とするものである。そして、望ましくは加圧した二酸化炭素雰囲気中、更に望ましくは超臨界状態の二酸化炭素雰囲気中で、上記のエステル交換反応を行わせるものである。ここで、超臨界状態の二酸化炭素とは、31.1℃以上で73気圧以上の状態にある二酸化炭素のことをいう。
【0009】
本発明の製造方法のように二酸化炭素雰囲気中で熱可塑性樹脂のポリマー分子と添加剤とをエステル交換反応させると、適当なエステル交換触媒を添加しなくても、後述の実験データに示されるようにエステル交換反応率が60%以上と顕著に向上し、添加剤の6割以上がポリマー分子にエステル結合して固定化された熱可塑性樹脂成形体を得ることができる。
【0010】
上記のように二酸化炭素雰囲気中でエステル交換反応させると反応率が顕著に向上するのは、二酸化炭素の可塑化効果、溶媒効果、及び触媒効果によるものと推測される。
【0011】
二酸化炭素の可塑化効果とは、二酸化炭素が熱可塑性樹脂の可塑剤的な作用をなし、樹脂の溶融粘度を減少させるために、ポリマー分子のエステル結合部分又はカルボキシル基と添加剤の官能基との接触する機会が増大してエステル交換反応が促進されると考えられるものである。
【0012】
また、二酸化炭素の溶媒効果とは、ポリマー分子のエステル結合部分又はカルボキシル基の−COO−と二酸化炭素が同一の元素構成であるため、二酸化炭素がエステル結合部分又はカルボキシル基の周囲に集まって溶媒的な作用をし、エステル結合部分又はカルボキシル基が反応しやすい状態になってエステル交換反応が促進されると考えられるものである。
【0013】
また、二酸化炭素の触媒効果とは、二酸化炭素が炭酸となり、酸触媒として働いてエステル交換反応が促進されると考えられるものである。
【0014】
本発明の製造方法は、常圧の二酸化炭素雰囲気中でエステル交換反応させても上記のように反応率が顕著に向上するものであるが、加圧された二酸化炭素雰囲気中で反応させると、二酸化炭素が熱可塑性樹脂のポリマー分子間に浸透しやすくなって、二酸化炭素による可塑化効果、溶媒効果、触媒効果が更に助長されるため、エステル交換反応率が一層向上するようになる。特に、超臨界状態の二酸化炭素雰囲気中でエステル交換反応させると、二酸化炭素が樹脂内部へ極めてすみやかに浸透するため、可塑化効果や溶媒効果や触媒効果が顕著に発揮され、エステル交換反応率がより一層顕著に向上するようになる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0016】
図1は本発明製造方法の一実施形態を示す概略説明図であって、添加剤を含有した熱可塑性樹脂の板状成形体を連続押出成形する場合を例示したものである。
【0017】
図1において、1は溶融押出成形機、1aは成形機の後部に設けた樹脂投入用ホッパー、1bは成形機の中間部に設けた添加剤投入用ホッパー、1cは成形機に内装したスクリュー、1dは成形機の先端に設けた成形用の金型、1eは成形機の中間部に設けた二酸化炭素吹込み口、2は上下一対の冷却ロール、3は搬送ベルト、4は切断機である。成形機1としては、2本のスクリュー1cによって均一な混練を行える二軸押出成形機が好適に使用される。
【0018】
この実施形態では、予備加熱で乾燥させた原料の熱可塑性樹脂5を成形機後部のホッパー1aから成形機1の内部へ投入し、熱可塑性樹脂5を溶融温度以上、熱分解温度以下に加熱して溶融させながらスクリュー1cで混練する。そして、添加剤6を成形機中間部のホッパー1bから投入し、二酸化炭素吹込み口1eより二酸化炭素を吹込みながら、加熱溶融状態の熱可塑性樹脂5と添加剤6をスクリュー1cで均一に混練して、二酸化炭素雰囲気中でエステル交換反応させた後、先端の金型1dから板状に押出成形し、この板状成形体50を上下一対の冷却ロール2,2で冷却しながら引き取って搬送用ベルト3で切断機4へ搬送し、所定の長さに切断する。
【0019】
原料の熱可塑性樹脂5は、ポリマー分子の主鎖又は側鎖にエステル結合又はカルボキシル基を有し、添加剤6とエステル交換反応し得るものであれば全て使用可能である。その代表的なものを例示すると、ポリマー分子の主鎖にエステル結合又はカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカプロラクトン、ポリラクチド等のポリエステル系樹脂が挙げられる。また、ポリマー分子の側鎖にエステル結合又はカルボキシル基を有する熱可塑性としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、これらのアルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル等)、マレイン化したポリエチレン、マレイン化したポリスチレン、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。
【0020】
一方、添加剤6は、分子末端又は分子中にアミノ基、水酸基、カルボキシル基、エステル結合のいずれかを有し、上記の熱可塑性樹脂とエステル交換反応し得るものであれば全て使用可能であり、目的とする熱可塑性樹脂成形体に要求される効能を付与できるものを種々選択して使用すればよい。そして、添加剤6の配合量についても、その効能が充分発揮されるように適宜決定すればよい。
【0021】
添加剤6の代表的なものを例示すると、熱可塑性樹脂成形体に耐汚染性が要求される場合には、下記の[化6]の構造式(1)で示される分子両末端にアミノ基を有するポリジメチルシロキサン、下記の[化7]の構造式(2)で示される分子中にアミノ基を有するポリジメチルシロキサン、下記の[化8]の構造式(3)で示される分子片末端にカルボキシル基を有するポリジメチルシロキサン、下記の[化9]の構造式(4)で示される分子両末端に水酸基を有するポリジメチルシロキサン、下記の[化10]構造式(5)で示される分子両端にエステル基を有するポリジメチルシロキサン等のシリコン系化合物の防汚剤や、分子両端に水酸基を有しているフッ素化ビスフェノールA[2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン]等のフッ素系化合物の防汚剤が挙げられる。
【化6】
Figure 0003583557
【化7】
Figure 0003583557
【化8】
Figure 0003583557
【化9】
Figure 0003583557
【化10】
Figure 0003583557
【0022】
これらのシリコン系又はフッ素系の防汚剤は、熱可塑性樹脂100重量部に対し0.1〜5重量部の割合で配合してポリマー分子にエステル結合させると、樹脂成形体に良好な溌水性を付与して優れた耐汚染性を長期間保持させることができる。尚、場合によっては、官能基をもたない下記の[化11]の構造式(6)で示されるポリジメチルシロキサンや、フルオロカーボン等を上記の防汚剤と併用してもよい。
【化11】
Figure 0003583557
【0023】
また、熱可塑性樹脂成形体に耐候性が要求される場合には、添加剤6として、分子末端にカルボキシル基を有する2−(2′−ヒドロキシ−5′−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノン−4−オキシ酢酸、或は、分子末端に2つ以上の水酸基を有する2−ヒドロキシ−4−(2′−ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノン、2,2′,4,4′,6,6′−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、2−(2′,4′−ジヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−(2′−ヒドロキシエトキシ)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−5−(2′−ヒドロキシエチル)ベンゾトリアゾール、或は、分子末端にアミノ基を有する2−(2′−ヒドロキシ−3′−アミノ−5′−t−ブチル)ベンゾトリアゾール、或は、分子中にエステル基を有する2−ヒドロキシ−4−(2′−メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシベンゾフェノン−4−オキシ酢酸メチル、2−(2′−アクリロイルオキシ−5′−メチル)ベンゾトリアゾールなどの、2−ヒドロキシベンゾトリアゾール誘導体又は2−ヒドロキシフェニルベンゾフェノン誘導体の紫外線吸収剤が好適に使用される。
【0024】
これらの紫外線吸収剤は、熱可塑性樹脂100重量部に対し0.01〜5重量部の割合で配合してポリマー分子にエステル結合させると、紫外線による成形体の劣化を抑制して優れた耐候性を長期間保持させることができる。
【0025】
その他、熱可塑性樹脂成形体に要求される効能に応じて、テトラブロモビスフェノール等の難燃剤、チオジフェノール等の耐放射線剤、N,N−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等の抗酸化剤、トリブチル錫ラウレート等の抗菌剤、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト等の帯電防止剤、ジオクチルフタレートやドデカノール等の可塑剤など、各種の添加剤が使用可能である。
【0026】
上記の添加剤6のうち、分子両端に官能基を有する二官能の添加剤を選択使用し、且つ、熱可塑性樹脂5としてポリマー分子の側鎖にエステル結合又はカルボキシル基を有するものを選択使用してエステル交換反応させると、熱可塑性樹脂のポリマー分子が、その側鎖にエステル結合した二官能の添加剤によって三次元架橋された構造となるため、得られる熱可塑性樹脂成形体50の物性、殊に耐熱性が顕著に向上する。
【0027】
熱可塑性樹脂5と添加剤6のエステル交換反応は、空気雰囲気中や窒素雰囲気中でも生じるが、この実施形態のように二酸化炭素を吹込んで二酸化炭素雰囲気中でエステル交換反応させると、既述したように二酸化炭素の可塑化効果や溶媒効果や触媒効果によってエステル交換反応が著しく促進され、適当なエステル交換触媒を添加しなくても、常圧(1気圧)で反応率が60%以上と顕著に向上する。
【0028】
その場合、二酸化炭素の圧力を上げ、この加圧された二酸化炭素雰囲気中でエステル交換反応させると、二酸化炭素が熱可塑性樹脂のポリマー分子間に浸透しやすくなり、二酸化炭素による可塑化効果や溶媒効果や触媒効果が更に助長されるため、反応率が一層向上するようになる。特に、超臨界状態の二酸化炭素雰囲気中でエステル交換反応させると、二酸化炭素が熱可塑性樹脂中に極めてすみやかに浸透するため、エステル交換反応率が一層顕著に向上するようになる。
また、適当なエステル交換触媒を添加すると、エステル交換反応が促進され、反応率が更に向上するので好ましい。エステル交換触媒としては、ルイス酸(例えば塩化鉄、酢酸コバルト)、三級アミン類(例えばトリメチルアミン)等が好適に使用される。これらの触媒は、熱可塑性樹脂100重量部に対し0.001〜0.5重量部の割合で配合するのが適当であり、これより多量に配合すると、樹脂成形体50が着色するといった不都合を生じる。
【0029】
エステル交換の反応速度は、熱可塑性樹脂の種類や添加剤の種類によって多少異なるが、通常1〜15分程度で反応がほぼ終了する。従って、この実施形態のように成形機1の内部でエステル交換反応を行わせて押出成形する場合は、添加剤6を成形機1に投入して熱可塑性樹脂5と1〜15分程度混練したのち金型1dから押出されるように、添加剤投入用ホッパー1bの位置やスクリュー設計、その他の押出条件を設定して、エステル交換反応を充分に行わせることが重要である。
【0030】
以上のような本発明の製造方法によって得られる熱可塑性樹脂成形体50は、エステル交換反応率が高いため、含有されている添加剤の大部分がポリマー分子にエステル結合して固定化されており、このように固定化された添加剤は経時的に揮散、滲出することがないので、長期間に亘って添加剤の効能を維持することができる。しかも、この方法で透明な熱可塑性樹脂成形体を製造すると、添加剤がエステル結合により分子レベルで細かく分散して、物理的に分散させた場合のように添加剤の粒子が二次凝集しないため、添加剤の分散粒子と熱可塑性樹脂の光屈折率が異なっていても、透過光の屈折、散乱により成形体の透明性が低下することは殆どなく、透明な樹脂単独の成形体とあまり変わらない良好な透明性を保持できる。
【0031】
図1に例示した実施形態では、熱可塑性樹脂5と添加剤6をホッパー1a,1bから別々に成形機1に投入しているが、例えばホッパー1aから両者を一緒に投入してもよいし、ホッパー1bから両者を混合したものを適量ずつ投入してもよく、このように投入方法は適宜選択することができる。また、この実施形態では、添加剤をエステル結合させた溶融熱可塑性樹脂を金型1dから単層で押出して板状の成形体50を製造しているが、金型1d等を変更してシート、フィルム、異形品など種々の形状の成形体を製造できることは勿論であり、更に、共押出成形機等を用いて、添加剤をエステル結合させた溶融熱可塑性樹脂を上層とし、該上層より添加剤が少ないか又は全く含まない溶融熱可塑性樹脂を上下二層もしくは三層に共押出成形して、添加剤を含む熱可塑性樹脂層を表面に積層した二層ないし三層構造の板状成形体を製造することも勿論可能である。また、射出成形の場合でも、溶融熱可塑性樹脂を射出成形機の金型内部へ射出する前に添加剤を混合してエステル交換反応させれば、同様に添加剤がポリマー分子に固定化されて揮散しない成形品を得ることができる。
【0032】
【実施例】
次に、本発明の更に具体的な実施例と比較例を説明する。
【0033】
[実施例1]
熱可塑性樹脂として、側鎖にエステル結合を有するポリメチルメタクリレート(PMMA)を100重量部、添加剤として、シリコン系防汚剤である分子両端にアミノ基を備えたポリジメチルシロキサン(PDMS)を2.0重量部の割合で混合し、この混合物を二軸押出成形機に投入した。そして、二軸押出成形機に3気圧の二酸化炭素を吹き込みながら、上記混合物を230℃で20分間溶融混練してエステル交換反応させた後、成形機の金型から板状に押出成形して成形体を得た。
【0034】
この成形体を切削して溶剤(ジクロロメタン)に溶解し、その溶液をキャスティングすることにより、厚さ50μmの試験用フィルムを作製した。
【0035】
この試験用フィルムについて、PDMSのエステル交換反応の反応率を以下の方法で求めたところ、下記の[表1]に示すように、エステル交換反応したPDMSの量は1.25重量部であり、反応率は62.6%であった。
【0036】
(エステル交換反応の反応率の試験方法)
試験用フィルムをジクロロメタンに溶解し、ジエチルエーテルで沈殿させて未反応のPDMSを除去したのち、濾過し、乾燥して試料を得た。そして、該試料の重クロロホルム溶液の HNMRスペクトルを測定し、Si−CH のプロトンの強度からエステル交換反応したPDMSの量を計算し、次式[数1]から反応率を求めた。
【数1】
Figure 0003583557
【0037】
[実施例2]
熱可塑性樹脂として、側鎖にエステル結合を有するポリメチルメタクリレート(PMMA)を100重量部、添加剤として、シリコン系防汚剤である分子両端にアミノ基を備えたポリジメチルシロキサン(PDMS)を2.0重量部の割合で混合し、この混合物を二軸押出成形機に投入した。そして、二軸押出成形機に80気圧の二酸化炭素を吹き込んだ以外は実施例1と同様にして、実施例2の試験用フィルムを得た。
【0038】
この試験用フィルムについて、実施例1と同様にしてエステル交換反応率を求めたところ、下記の[表1]に示すように、85.0%と高率であった。
【0039】
[比較例1〜3]
二酸化炭素に代えて窒素ガスを二軸押出成形機に吹き込んだ以外は実施例1と同様にして、比較例1の試験用フィルム(厚さ50μm)を作製した。また、二酸化炭素に代えて3気圧の空気を二軸押出成形機を吹き込んだ以外は実施例1と同様にして、比較例2の試験用フィルム(厚さ50μm)を作製した。更に、二軸押出成形機に何の気体も吹き込まないようにした以外は実施例1と同様にして、比較例3の試験用フィルム(厚さ50μm)を作製した。
【0040】
そして、これら比較例1〜3の試験用フィルムについて、実施例1と同様にしてエステル交換反応率を求めたところ、下記の[表1]に示す通りであった。
【表1】
Figure 0003583557
【0041】
この表1を見ると、二酸化炭素に代えて窒素ガスや空気を吹き込んでエステル交換反応させた比較例1,2の試験用フィルム、及び、何の気体も吹き込まないでエステル交換反応させた比較例3の試験用フィルムは、いずれもPDMSのエステル交換反応率が20%以下と低率である。これはエステル交換触媒を使用していないためである。
【0042】
これに対し、二酸化炭素を吹き込んでエステル交換反応させた実施例1の試験用フィルムは、エステル交換触媒を使用していないにも拘らず、PDMSのエステル交換反応率が62.6%と高率であり、二酸化炭素の可塑化効果や溶媒効果や触媒効果によってエステル交換反応が著しく促進されたことが判る。
【0043】
そして、二酸化炭素を80気圧で吹き込んでエステル交換反応させた実施例2の試験用フィルムは、さらにエステル交換反応率が85.0%と向上しており、超臨界状態(80気圧、230℃)の二酸化炭素によりエステル交換反応率が非常に高くなることが判る。
【0044】
[実施例3,4]
熱可塑性樹脂としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を100重量部、添加剤として分子両端にアミノ基を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)を2.0重量部、エステル交換触媒として塩化鉄(FeCl )を0.00331重量部の割合で混合した以外は実施例1と同様にして、実施例3の試験用フィルム(厚さ50μm)を作製した。
【0045】
そして、塩化鉄の配合量を0.05重量部に変更した以外は上記と同様にして実施例4の試験用フィルム(厚さ50μm)を作製した。
【0046】
これら実施例3,4の試験用フィルムについて、実施例1と同様にPDMSのエステル交換反応率を求めたところ、下記の[表2]に示すように、実施例3の試験用フィルムは92.6%、実施例4の試験用フィルムは98.6%と極めて高率であった。
【0047】
[比較例4,5]
熱可塑性樹脂としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を100重量部、添加剤として分子両端にアミノ基を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)を2.0重量部、エステル交換触媒として塩化鉄(FeCl )を0.00331重量部の割合で混合し、二酸化炭素に代えて3気圧の窒素ガスを吹き込んだ以外は実施例1と同様にして、比較例4の試験用フィルム(厚さ50μm)を作製した。
【0048】
そして、塩化鉄の配合量を0.05重量部に変更した以外は上記と同様にして比較例5の試験用フィルム(厚さ50μm)を作製した。
【0049】
これら比較例4,5の試験用フィルムについて、実施例1と同様にPDMSのエステル交換反応率を求めた結果を下記の[表2]に示す。
【0050】
[比較例6,7]
熱可塑性樹脂としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を100重量部、添加剤として分子両端にアミノ基を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)を2.0重量部、エステル交換触媒として塩化鉄(FeCl )を0.00331重量部の割合で混合し、二酸化炭素に代えて3気圧の空気を吹き込んだ以外は実施例1と同様にして、比較例6の試験用フィルム(厚さ50μm)を作製した。
【0051】
そして、塩化鉄の配合量を0.05重量部に変更した以外は上記と同様にして比較例7の試験用フィルム(厚さ50μm)を作製した。
【0052】
これら比較例6,7の試験用フィルムについて、実施例1と同様にPDMSのエステル交換反応率を求めた結果を下記の[表2]に示す。
【0053】
[比較例8,9]
熱可塑性樹脂としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を100重量部、添加剤として分子両端にアミノ基を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)を2.0重量部、エステル交換触媒として塩化鉄(FeCl )を0.00331重量部の割合で混合し、二軸押出成形機に何の気体も吹き込まないようにした以外は実施例1と同様にして、比較例8の試験用フィルム(厚さ50μm)を作製した。
【0054】
そして、塩化鉄の配合量を0.05重量部に変更した以外は上記と同様にして比較例9の試験用フィルム(厚さ50μm)を作製した。
【0055】
これら比較例8,9の試験用フィルムについて、実施例1と同様にPDMSのエステル交換反応率を求めた結果を下記の[表2]に示す。
【表2】
Figure 0003583557
【0056】
この表2と前記の表1を対比すれば、触媒(塩化鉄)の添加によって、いずれの試験用フィルムもPDMSのエステル交換反応が大幅に促進され、触媒添加量の多い実施例4、比較例5,7,9の試験用フィルムの方が、触媒添加量の少ない実施例3、比較例4,6,8の試験用フィルムよりも、反応率が高くなっている。
【0057】
しかし、触媒添加量が0.05重量部と多いものでも、窒素ガスや空気を吹き込んでエステル交換反応させた比較例5,7の試験用フィルムや、何の気体も吹き込まないでエステル交換反応させた比較例9の試験用フィルムは、いずれも反応率が70%前後であるのに対し、二酸化炭素を吹き込んでエステル交換反応させた実施例4の試験用フィルムは、反応率が98.6%と驚異的に向上しており、この事実から二酸化炭素がエステル交換反応の促進に如何に有効であるかを知ることができる。
【0058】
[実施例5]
熱可塑性樹脂としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を100重量部、添加剤として分子両端にアミノ基を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)を2.0重量部、エステル交換触媒として塩化鉄(FeCl )を0.00331重量部の割合で混合した以外は実施例1と同様にして、厚さ70μmの試験用フィルムを作製した。この試験用フィルムは、実施例3の試験用フィルムと厚さが異なるだけのものであり、PDMSのエステル交換反応率は、実施例3の試験用フィルムと同じ92.6%である。
【0059】
この試験用フィルムについて、550nmの光の透過率を測定したところ、下記の[表3]に示すように87%であった。更に、この試験用フィルムを室温で事務用インクのブルーブラックインクに浸漬し、2週間浸漬後の550nmの光透過率を測定したところ、下記の[表3]に示すように光透過率は82%であった。
【0060】
[比較例10〜12]
熱可塑性樹脂としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を100重量部、添加剤として分子両端にアミノ基を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)を2.0重量部、エステル交換触媒として塩化鉄(FeCl )を0.00331重量部の割合で混合し、二軸押出成形機に何の気体も吹き込まないようにした以外は実施例1と同様にして、比較例10の試験用フィルム(厚さ70μm)を作製した。この試験用フィルムは比較例8の試験用フィルムと厚さが異なるだけのものであり、PDMSのエステル交換反応率は、比較例8の試験用フィルムと同じ55.0%である。
【0061】
また、PMMAを100重量部、PDMSを2.0重量部の割合で混合し、この混合物をジクロロメタンに溶解して、これをキャスティングすることにより、PDMSを物理的に分散させた比較例11の試験用フィルム(厚さ70μm)を作製した。
【0062】
更に、PMMAをジクロロメタンに溶解し、これをキャスティングすることによって、PDMSを含まない比較例12の試験用フィルム(厚さ70μm)を作製した。
【0063】
これら比較例10〜12の試験用フィルムについて、実施例5と同様にして、ブルーブラックインクに浸漬する前、及び、2週間浸漬した後の550nmの光透過率を測定した。その結果を下記の[表3]に示す。
【表3】
Figure 0003583557
【0064】
この表3を見ると、比較例12のPMMA単独の試験用フィルムは、ブルーブラックインク浸漬前の光透過率が90%と高く、透明性に優れているが、PDMSを全く含まないため、ブルーブラックインク浸漬後の光透過率が50%と大幅に低下し、耐汚染性に劣ることが判る。
【0065】
また、PDMSを物理的に分散させた比較例11の試験用フィルムは、PDMSの分散性が悪く、二次凝集しやすいため、ブルーブラックインク浸漬前の光透過率が30%と低く、しかも、PDMSが固定化されていないため、ブルーブラックインク浸漬後の光透過率が更に10%も低下して20%になっており、透明性にも耐汚染性にも劣るものであることが判る。
【0066】
一方、エステル交換反応によってPDMSをポリマー分子にエステル結合させた実施例5の試験用フィルムや比較例10の試験用フィルムは、エステル結合したPDMSが分子レベルで分散しているため、PDMSを物理的に分散させた比較例11の試験用フィルムに比べると、光透過率が大幅に向上している。しかし何の気体も吹き込まないでエステル交換反応させた比較例10の試験用フィルムは、反応率が55%と低く、PDMSの約半分近くが未反応のままフィルム中に分散しているため、ブルーブラックインク浸漬前の光透過率が75%とあまり高くなく、ブルーブラックインク浸漬後の光透過率は68%まで低下しており、透明性も耐汚染性も不満足なものである。
【0067】
これに対し、本発明の製造方法によって二酸化炭素を吹き込みながらエステル交換反応させた実施例5の試験用フィルムは、反応率が92.6%と極めて高く、PDMSの9割以上が分子レベルで細かく分散して固定化されているため、ブルーブラックインク浸漬前の光透過率は87%と高く、PMMA単独の比較例12の試験用フィルムの光透過率とあまり変わらない値であり、また、ブルーブラックインク浸漬後の光透過率も82%と高い数値を維持しており、透明性も耐汚染性も良好であることが判る。
【0068】
[実施例6]
フィルムの厚さを70μmから20μmに変更した以外は実施例5と同様にして、試験用フィルムを作製した。
【0069】
この試験用フィルムについて表面の接触角を測定したところ、下記の[表4]に示すように84°であった。次に、この試験用フィルムをジメチルエーテルに浸漬し、室温で15時間放置した後、再び表面の接触角を測定したところ、下記の[表4]に示すように84°であり、変化はなかった。
【0070】
[比較例13〜15]
フィルムの厚さを70μmから20μmに変更した以外は比較例10〜12と同様にして、PDMSのエステル交換反応率が55%の比較例13の試験用フィルムと、PDMSを物理的に分散させた比較例14の試験用フィルムと、PDMSを含まないPMMA単独の比較例15の試験用フィルムを作製した。
【0071】
これら比較例13〜15の試験用フィルムについて、実施例6と同様にジメチルエーテル浸漬前及び浸漬後の表面の接触角を測定した。その結果を下記の[表4]に示す。
【表4】
Figure 0003583557
【0072】
この表4を見ると、比較例15のPMMA単独の試験用フィルムは、PDMSを全く含まないため、ジメチルエーテル浸漬前及び浸漬後の接触角が70°と71°であり、溌水性があまり良くないことが判る。
【0073】
これに対し、PDMSを含有する実施例6、比較例13,14の試験用フィルムは、ジメチルエーテル浸漬前のPDMS含有量が同一であるため、浸漬前の接触角はいずれも84°又は85°であり、良好な溌水性を示す。しかし、ジメチルエーテルに浸漬すると、PDMSを物理的に分散させた比較例14の試験用フィルムは、表層部のPDMSがジメチルエーテルに溶出されるため、浸漬後の接触角がPMMA単独の比較例15の試験用フィルムと同じ71°となり、溌水性が大幅に低下する。そして、エステル交換反応率が55%と低い比較例13の試験用フィルムも、表層部に含まれるPDMSのうち約半分近くの未反応のものがジメチルエーテルに溶出されるため、浸漬後の接触角が76%まで低下し、溌水性が不充分となる。
【0074】
これに対し、二酸化炭素を吹き込んで92.6%の高率でエステル交換反応させた実施例6の試験用フィルムは、ジメチルエーテルに浸漬しても、溶出される未反応のPDMSが極く少量であり、実質的にPDMSの含有量が減少しないため、浸漬後の接触角は浸漬前の接触角と同じ84°であり、良好な溌水性を維持していることが判る。
【0075】
[実施例7〜9]
熱可塑性樹脂として、主鎖にエステル結合を有するポリカーボネート(PC)を100重量部、添加剤として、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である2−ヒドロキシ−5−(2′−ヒドロキシエチル)ベンゾトリアゾール(HHEBT)を1.0重量部の割合で混合し、この混合物を二軸押出成形機に投入した。そして、二軸押出成形機に3気圧の二酸化炭素を吹き込みながら、上記混合物を255℃で10分間溶融混練してエステル交換反応させた後、成形機の金型から板状に押出成形して成形体を得た。
【0076】
この成形体を切削して溶剤(ジクロロメタン)に溶解し、この溶液をキャスティングすることによって、実施例7の試験用フィルム(厚さ50μm)を作製した。
【0077】
熱可塑性樹脂として上記のPCを100重量部、添加剤として上記のHHEBTを1.0重量部、エステル交換触媒として酢酸コバルトを0.01重量部の割合で混合した以外は上記と同様にして、実施例8の試験用フィルム(厚さ50μm)を作製した。更に、酢酸コバルトの添加量を0.0498重量部に変更し、エステル交換反応の反応時間を5分に変更して、実施例9の試験用フィルム(厚さ50μm)を作製した。
【0078】
これら実施例7〜9の試験用フィルムについて、HHEBTのエステル交換反応率を次の方法で求めた。その結果は下記の[表5]に示す通りであった。
【0079】
(エステル交換反応の反応率の試験方法)
試験用フィルムをジクロロメタンに溶解し、メタノールで沈殿させて未反応のHHEBTを除去したのち、濾過し、乾燥して試料を得た。そして、該試料の重クロロホルム溶液の HNMRスペクトルを測定し、2位の炭素に結合している水酸基のプロトンのシグナルの強度から、エステル交換反応したHHEBTの料を計算し、次式[数2]から反応率を求めた。
【数2】
Figure 0003583557
【0080】
[比較例16〜18]
二軸押出成形機に何の気体も吹き込まないでエステル交換反応させた以外は上記の実施例7〜9と同様にして、比較例16〜18の試験用フィルム(厚さ50μm)を作製した。
【0081】
これら比較例16〜18の試験用フィルムについて、実施例7〜9と同様にしてHHEBTのエステル交換反応率を求めた結果を下記の[表5]に示す。
【表5】
Figure 0003583557
【0082】
この表5を見ると、何の気体も吹き込まないでエステル交換反応させた比較例16の触媒無添加の試験用フィルムは、HHEBTの反応率がわずか7.6%であるのに対し、二酸化炭素を吹き込んでエステル交換反応させた実施例7の触媒無添加の試験用フィルムは、HHEBTの反応率が71.6%であり、二酸化炭素の可塑化効果、溶媒効果、触媒効果によってエステル交換反応が顕著に促進されることが判る。
【0083】
そして、触媒として酢酸コバルトを0.01重量部添加すると、何の気体も吹き込まないでエステル交換反応させた比較例17の試験用フィルムは、HHEBTの反応率が50%まで上昇するだけであるのに対し、二酸化炭素を吹き込んでエステル交換反応させた実施例8の試験用フィルムは、HHEBTの反応率が98.6%と驚異的に向上する。更に、酢酸コバルトの添加量を0.498重量部まで増加すると、二酸化炭素を吹き込んでエステル交換反応させた実施例9の試験用フィルムは、反応時間を5分に短縮してもHHEBTの反応率が83.2%と高率であり、何の気体も吹き込まないでエステル交換反応させた比較例18の試験用フィルムに比べると、反応率が約21%も上昇する。これらの結果を見ても、二酸化炭素はエステル交換反応に極めて有効であることが判る。
【0084】
[実施例10]
熱可塑性樹脂として前記のPCを100重量部、添加剤として前記のHHEBTを1.0重量部、エステル交換触媒として前記の酢酸コバルトを0.01重量部の割合で混合し、実施例7と同様にして厚さ100μmの試験用フィルムを作製した。この試験用フィルムは実施例8の試験用フィルムと厚さが異なるだけのものであり、HHEBTのエステル交換反応率は、実施例8の試験用フィルムと同じ98.6%である。
【0085】
この試験用フィルムについて、キセノンウエザオメーターを用いて1ケ月の促進耐候性試験を行い、黄変度(ΔYI)をΣ90カラーメジャーリングシステム(日本電色株式会社製)で測定したところ、下記の[表6]に示すように1.4であった。
【0086】
[比較例19〜21]
熱可塑性樹脂として前記のPCを100重量部、添加剤として前記のHHEBTを1.0重量部、エステル交換触媒として前記の酢酸コバルトを0.01重量部の割合で混合し、何の気体も吹き込まないでエステル交換反応させた以外は実施例7と同様にして、比較例19の試験用フィルム(厚さ100μm)を作製した。この試験用フィルムは、比較例17の試験用フィルムと厚さが異なるだけのものであり、HHEBTのエステル交換反応率は、比較例17の試験用フィルムと同じ50.0%である。
【0087】
また、PCを100重量部、HHEBTを1.0重量部の割合で混合し、この混合物をジクロロメタンに溶解して、これをキャスティングすることにより、HHEBTを物理的に分散させた比較例20の試験用フィルム(厚さ100μm)を作製した。
【0088】
更に、PCをジクロロメタンに溶解し、これをキャスティングすることによって、HHEBTを含まないPC単独の比較例21の試験用フィルム(厚さ100μm)を作製した。
【0089】
これら比較例19〜21の試験用フィルムについて、実施例10と同様に1ケ月の促進耐候性試験を行い、黄変度(ΔYI)を測定した結果を下記の[表6]に示す。
【表6】
Figure 0003583557
【0090】
この表6を見ると、PC単独の比較例21の試験用フィルムは、黄変度(ΔYI)が6.0と大きく、耐候性に劣っており、また、HHEBTを物理的に分散させた比較例20の試験用フィルムも、1ケ月の間にHHEBTがかなり揮散するため、黄変度(ΔYI)が4.0と比較的大きく、耐候性が不充分であることが判る。
【0091】
一方、HHEBTをエステル交換反応で固定化した実施例10及び比較例19の試験用フィルムは、黄変度(ΔYI)の減少が見られるけれども、比較例19の試験用フィルムはHHEBTの半分が未反応であるため、黄変度(ΔYI)の減少が小さく、良好な耐候性を有するとは言い難いものである。これに対し、二酸化炭素を吹き込んで98.6%の高反応率でエステル交換反応させた実施例10の試験用フィルムは、HHEBTの揮散が皆無に等しいので、黄変度(ΔYI)が1.4と顕著に減少し、優れた耐候性を備えていることが判る。
【0092】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の添加剤含有熱可塑性樹脂成形体の製造方法は、加熱溶融成形前に、エステル交換反応に極めて有効な二酸化炭素の雰囲気中で、加熱溶融状態の熱可塑性樹脂のポリマー分子と添加剤とをエステル交換反応させるため、エステル交換反応の反応率を顕著に向上させることが可能となり、それによって含有添加剤の大部分が熱可塑性樹脂のポリマー分子とエステル結合して揮散不能に固定化された、添加剤の効能持続期間が極めて長い成形体を容易に製造することができるといった顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の添加剤含有熱可塑性樹脂成形体の製造方法の一実施形態を示す概略説明図である。
【符号の説明】
1 押出成形機
1e 二酸化炭素吹込み口
5 熱可塑性樹脂
6 添加剤
50 添加剤含有熱可塑性樹脂成形体

Claims (1)

  1. ポリマー分子がエステル結合又はカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂を加熱溶融して所定の形状に成形する前に、アミノ酸、水酸基、カルボキシル基、エステル結合のいずれかを有する添加剤を熱可塑性樹脂に配合し、超臨界状態の二酸化炭素雰囲気中で加熱溶融状態の熱可塑性樹脂のポリマー分子と添加剤とをエステル交換反応させる添加剤含有熱可塑性樹脂成形体の製造方法であって、
    上記の熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカプロラクトン、ポリラクチド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸のアルキルエステル、ポリメタクリル酸のアルキルエステル、マレイン化したポリエチレン、マレイン化したポリスチレン、ポリ酢酸ビニルのいずれか単独又は二種以上の混合樹脂であり、
    上記の添加剤が、下記の構造式(1)で示される分子両末端にアミノ基を有するポリジメチルシロキサン、下記の構造式(2)で示される分子中にアミノ基を有するポリジメチルシロキサン、下記の構造式(3)で示される分子片末端にカルボキシル基を有するポリジメチルシロキサン、下記の構造式(4)で示される分子両末端に水酸基を有するポリジメチルシロキサン、下記の構造式(5)で示される分子両端にエステル基を有するポリジメチルシロキサン、分子両端に水酸基を有しているフッ素化ビスフェノールA[2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン]のいずれか単独又は二種以上を混合した防汚剤であるか、
    Figure 0003583557
    Figure 0003583557
    Figure 0003583557
    Figure 0003583557
    Figure 0003583557
    或いは、分子末端にカルボキシル基を有する2−(2′−ヒドロキシ−5′−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノン−4−オキシ酢酸、分子末端に2つ以上の水酸基を有する2−ヒドロキシ−4−(2′−ヒドロシキエトキシ)ベンゾフェノン、2,2′,4,4′,6,6′−ヘキサヒドロシキベンゾフェノン、2−(2′−4′−ジヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−(2′−ヒドロシキエトキシ)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−5−(2′−ヒドロキシエチル)ベンゾトリアゾール、分子末端にアミノ基を有する2−(2′−ヒドロキシ−3′−アミノ−5′−t−ブチル)ベンゾトリアゾール、分子中にエステル基を有する2−ヒドロキシ−4−(2′−メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシベンゾフェノン−4−オキシ酢酸メチル、2−(2′−アクリロイルオキシ−5′−メチル)ベンゾトリアゾールのいずれか単独又は二種以上を混合した紫外線吸収剤であるか、
    或いは、難燃剤のテトラブロモビスフェノールであるか、
    或いは、耐放射線剤のチオジフェノールであるか、
    或いは、抗酸化剤のN,N−ジフェニル−p−フェニレンジアミンであるか、
    或いは、抗菌剤のトリブチル錫ラウレートであるか、
    或いは、帯電防止剤のテトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイトであるか、
    或いは、可塑剤のジオクタフタレート又はドデカノールである、
    ことを特徴とする添加剤含有熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
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