JP3583538B2 - 低透湿性脂肪族ポリエステル組成物およびフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な低透湿性組成物およびそのフィルムに関する。更に詳しくは、透湿性の制御幅が広く、保存時の安定性に優れ、かつ、土中での分解性の制御が可能な低透湿性組成物およびそのフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高分子化合物を用いた組成物およびそのフィルムは、自然界において極めて安定であり、その安定性のために使用されていたが、近年、逆にその安定性のために、廃棄後環境問題を起こしている。
これを解決するために、生分解性ポリマーを用いた組成物およびフィルムが提案されている。
しかしながら、これらの分解性組成物に関する発明は、土中埋設等の条件によっては崩壊性を示さないものであったり、崩壊性を示すものの水分の透過性が高すぎるために食品包装材料等低透湿性が必要な分野には適用できない等の問題がある。さらに、土中で使用するような用途では分解性の制御が充分でなく、使用中に分解し、性能が維持できない等の問題点もあった。
【0003】
例えば、特開平3−199245号公報、特開平4−182112号公報、特開平5−179110号公報に記載の微生物分解性熱可塑性樹脂と微生物非分解性熱可塑性樹脂あるいは微生物分解性の極めて遅い樹脂との混合樹脂を基材樹脂とする組成物は分解時に微生物非分解性熱可塑性樹脂あるいは微生物分解性の極めて遅い樹脂が長期に渡って残存する問題点があった。
特に透湿性まで考慮すると、生分解性樹脂組成物あるいはフィルムは、生分解性樹脂量を多くしなければ充分な分解性能を発揮できないにも関わらず、生分解性樹脂量を多くすると水の透過性が高くなるという問題点があった。
また、上記の従来の組成物はいずれも生分解性と製品保存時の安定性を両立できるものではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、透湿性の制御幅が広く、保存時の安定性に優れ、かつ、土中での分解性の制御が可能な低透湿性組成物およびそのフィルムを提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意検討の結果、脂肪族ポリエステルとポリオレフィンワックスからなる組成物およびそのフィルムによって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(12)である。
【0006】
(1)脂肪族ポリエステル5重量%以上80重量%以下及びポリオレフィンワックス20重量%以上95重量%以下含有する組成物。
(2)脂肪族ポリエステルが一般式(I)で表される脂肪族ポリエステルである上記(1)の組成物。
【0007】
【化2】
【0008】
(nは、数平均分子量Mnが1,000以上1,000,000以下となるのに必要な重合度を表す。R1は炭素数2以上20以下の脂肪族炭化水素基、R2は0を含む炭素数24以下の脂肪族炭化水素基である。R1、R2はそれぞれ2種以上を含んでも良い)。
(3)脂肪族ポリエステルのnが、該ポリエステルの数平均分子量Mnが15,000より大で1,000,000以下となるのに必要な重合度である上記(2)の組成物。
【0009】
(4)脂肪族ポリエステルがポリヒドロキシカルボン酸である上記(1)の組成物。
(5)脂肪族ポリエステルがポリ乳酸である上記(1)の組成物。
(6)脂肪族ポリエステルがポリカプロラクトンである上記(1)の組成物。
(7)ポリオレフィンワックスがポリエチレンワックスである上記(1)の組成物。
【0010】
(8)ポリオレフィンワックスが密度0.860g/cm3以上0.940g/cm3以下の低密度ポリエチレンワックスである上記(1)の組成物。
(9)ポリオレフィンワックスの数平均分子量が570以上10,000以下である上記(1)の組成物。
(10)透湿性調整剤として0.01以上75重量%以下の脂肪族ポリマー及び/又は界面活性剤を更に含む上記(1)の組成物。
(11)0.01以上75重量%以下の不溶性充填材を更に含む上記(1)の組成物。
(12)上記(1)の組成物を用いたフィルム。
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の組成物及びフィルムに用いられる脂肪族ポリエステルは多価アルコールと多価カルボン酸とが重縮合した構造のもの、ヒドロキシカルボン酸が重縮合した構造のものがある。透湿性および分解性の抑制がしやすい構造の脂肪族ポリエステルを容易に合成できることから多価アルコールと多価カルボン酸とが重縮合した構造の脂肪族ポリエステルが好ましい。
多価アルコールと多価カルボン酸とが重縮合した構造の脂肪族ポリエステルの好適な例は一般式(I)で表される。
【0012】
【化3】
【0013】
本発明の一般式(I)のnは、強度面からは大きいほど良いが、組成物を製造するときあるいは成型時の粘度が高くなるので、一般式(I)で表される脂肪族ポリエステルは、数平均分子量Mnが1,000以上1,000,000以下となるのに必要な重合度が良く、15,000以上1,000,000以下となるのがより好ましく、25,000より大きく1、000、000以下となるのがさらに好ましい。
【0014】
また、脂肪族ポリエステル中に低分子成分が多いと成形後の強度が低下するので分子量500以下の成分含量は10重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下である。重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnとしては1以上20以下が好ましい。
R1は炭素数2以上20以下の脂肪族炭化水素基、R2は0を含む炭素数24以下の脂肪族炭化水素基である。これらは不飽和結合を含んでも良いし、脂環式構造を含んでも良し、また、それぞれ2種以上を含んでも良い。
【0015】
本発明の一般式(I)の脂肪族ポリエステルは、脂肪族炭化水素ジオール(以下、単にジオールと云う。)と脂肪族炭化水素ジカルボン酸類(以下、単にジカルボン酸類と云う。)から重縮合によって製造される。
ジカルボン酸類としては、ジカルボン酸そのもの、ジカルボン酸エステル、ジカルボン酸無水物から選ばれる。
【0016】
本発明に用いる脂肪族ポリエステルの製造に用いる、ジオールとジカルボン酸(またはそのエステルまたは酸無水物)は、ジオールが、水酸基を除いた残りが炭素数2以上20以下の脂肪族炭化水素基であり、ジカルボン酸(またはそのエステルまたは酸無水物)が、カルボニル基(またはそのエステルまたは酸無水物)を除いた残りが0を含む炭素数24以下の脂肪族炭化水素基である。(これらは不飽和結合を含んでも良いし、脂環式構造を含んでも良い。また、それぞれ2種以上を用いても良い。)。
【0017】
前記ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−ブテン−1,2−ジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキセン−2,5−ジオール、1,5−ヘキサジエン−3,4−ジオール、2,6−オクタジエン−4,3−ジオール等が挙げられ、前記ジカルボン酸(またはそのエステルまたは酸無水物)としては、例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン2酸、ドデカン2酸、トリデカン2酸、テトラデカン2酸、ペンタデカン2酸、ヘキサデカン2酸、オクタデカン2酸、エイコサン2酸、ヘネイコサン2酸、ドコサン2酸、テトラコサン2酸、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、ドデカン2酸ジメチル、テトラデカン2酸ジエチル、エイコサン2酸ジメチル、無水コハク酸、無水グルタール酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、また、置換コハク酸(またはそのエステルまたは酸無水物)であるオクタコサニルコハク酸無水物、ドコサエイコセニルコハク酸無水物等が挙げられる。
【0018】
上記のジオールおよび、ジカルボン酸(またはそのエステルまたは酸無水物)は、結晶性、融点、成形加工性をコントロールするのにそれぞれ2種以上を用いて反応させることも可能である。また、これら原料のジオールとジカルボン酸(またはそのエステルまたは酸無水物)は不純物として3官能以上の官能基が含まれていても良い。また、積極的に3官能以上の多価アルコール、多価カルボン酸を添加しても良い。多価アルコール、多価カルボン酸の量は生成ポリマーが実質的に溶媒可溶であるのが好ましい。
実質的に溶媒可溶であるとは、生成ポリマー5重量部に対し、溶媒95重量部加えた溶液をG2グラスフィルターを用い、差圧1Kg/cm2で濾過した濾液中のポリマーが仕込みの80重量%以上回収される事をいう。
【0019】
本発明の上記一般式(I)で表される脂肪族ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンテトラデカンジオエート、ポリテトラメチレンサクシネート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリテトラメチレンドデカンジオエート、ポリテトラメチレンエイコサンジオエート、ポリヘキサメチレングルタメート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリデカメチレンサクシネート、ポリデカメチレンドデカンジオエート、ポリドデカメチレンサクシネート、ポリドデカメチレンエイコサンジオエート、ポリドデカメチレンテトラデカンジオエート、ポリヘキサデカメチレンサクシネート、ポリヘキサデカメチレンエイコサンジオエートが挙げられる。
【0020】
これらの中で、原料の合成が容易で、入手も容易であることから多価アルコール、多価カルボン酸の炭素数の少ないモノマーを用いた脂肪酸ポリエステルが好ましい。この具体例としては、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリテトラメチレンサクシネート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリヘキサメチレングルタメート、ポリヘキサメチレンアジペートが挙げられる。
【0021】
本発明において、原料のジオールとジカルボン酸(またはそのエステルまたは酸無水物)で、どちらか一方が過剰となる仕込みモル比、好ましくは0.5以上2.0以下、より好ましくは0.8以上1.2以下、さらに好ましくは0.9以上1.1以下の範囲にすることで、高分子量でかつ過剰に使用した成分の官能基を末端に有する脂肪族ポリエステルを製造することが出来る(仕込み比によっては両者を含む構造もできる)。
【0022】
本発明に用いる脂肪族ポリエステルを製造する方法としては、薄膜状にすることにより仕込量に対して蒸発表面積を大きくすることが重要であり、反応系の体積をV(cm3)、その表面積をA(cm2)とするとき、A/Vは少なくとも1以上で製造することが必要である。好ましくは4以上、さらに好ましくは6以上である。A/Vは大きいほど高分子量の脂肪族ポリエステルの製造には好ましいが、経済性の観点からは500以下、好ましくは50以下で製造する。製造中にA/Vが変化する場合は、最も分子量が高くなるとき、すなわち通常は重合終了時のA/Vが1以上になっていればよい。
また、製造時の圧力は低いほど脂肪族ポリエステルの分子量は高くなるが、装置が大型化する必要があるなどの問題があるため、製造時の圧力は0.1mmHgより大きいことが好ましく、特に70000以上の高分子量の脂肪族ポリエステルを製造する場合の圧力は0.1mmHgより大きく1mmHg以下がより好ましい。圧力が製造中に変動する場合は最終到達圧力が上記範囲内に有ればよい。
【0023】
製造温度は120℃以上350℃以下、好ましくは140℃以上300℃以下、さらに好ましくは140℃以上250℃以下で行う。
反応装置は上記条件を実現できるものであれば制限されない。例えば、表面更新型二軸ニーダー、表面更新型薄膜リアクター、特開平7ー292097号公報に開示されているような自由落下ゾーンを重合促進域とする循環型装置、回転式チューブオーブンなどが製造に好適である。回転式チューブオーブンは、1)筒状の面ヒーターに沿って試料を薄膜状で回転させるようになっていて蒸発表面積を増大させることが出来、2)加熱面と凝縮面との距離が十分に接近していて通常のフラスコ反応では留出しにくい成分の留出も容易に行われるため、試料の加熱面の表面積を大きくとることが出来、加熱面から飛び出す成分は凝縮することなく凝縮面に到達できる。その結果、エステル化では効率よく脱アルコール(脱水)反応を進めることが出来、その後の脱グリコール反応もしくは脱ジエステル(または脱ジカルボン酸)反応においても効率よく反応を進めることが出来る。
【0024】
上記装置にジオールとジカルボン酸(またはそのエステルまたは酸無水物)を仕込み、不活性ガス(N2)流中でエステル化を行う。エステル化の温度は原料のジオール及びジカルボン酸(またはそのエステルまたは酸無水物)のうち低沸点物の沸点より低い温度にて行うのが好ましい。反応を続けてアルコールの留出(または脱水)が止まる様子を確認する。脱グリコール反応または脱ジエステル(または脱カルボン酸)反応では少量の触媒を必要とするため、一旦室温に戻し、触媒を添加する。しかし、このときの触媒は、原料のジオール、ジカルボン酸(またはそのエステルまたは酸無水物)の仕込み時に既に添加しておくことも可能である。用いることが出来る触媒としては、チタン、亜鉛、ゲルマニウム、鉄、スズ等の金属化合物(水和物等も含む。)であり、例えば、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛等の市販品を用いることができる。触媒の添加量としては、仕込みの全モノマー量に対して、0.0001mol%以上10mol%以下、好ましくは、0.0005mol%以上1mol%以下程度で良い。触媒を添加した後、エステル化されたプレポリマーの突沸が起きないように徐々に昇温し、また系内を減圧していき、所定の圧力、温度にする。
本発明の組成物及びフィルムにおいては、上記一般式(I)で表される脂肪族ポリエステルを連結剤で結合させたものも用いることができる。
【0025】
連結剤としては脂肪族ポリエステルの末端と反応できる官能基を分子中に2個以上有する化合物で、当該官能基としてはイソシアネート、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル、水酸基等が用いられる。当該官能基数は2個が最も好ましい。
連結剤を用いた脂肪族ポリエステルの好適な例としてはポリテトラメチレンサクシネートやポリテトラメチレンアジペートをヘキサメチレンジイソシアネートで連結した樹脂が挙げられる。
【0026】
本発明の組成物あるいはそのフィルムに用いられるヒドロキシカルボン酸が重縮合した構造の脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸、ポリグルタミン酸、ポリカプロラクトン等がその具体例として挙げられる。これらの中で、合成が容易であることからポリカプロラクトンが好ましい。
本発明の組成物あるいはそのフィルムに用いる脂肪族ポリエステル中のエステル基含有量は低溶出性を示すためには低い方が好ましく、数平均分子量1000当たりのポリエステル基含有量が16以下が好ましく、12以下がより好ましく、8以下が最も好ましい。
【0027】
本発明の組成物及びフィルムの成分であるポリオレフィンワックスは、ポリオレフィンたとえば実質的にエチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィンの単独あるいは2種以上の共重合体のワックスを用いることができる。分子中に不飽和結合が残る場合は、水添しても良い。また、直鎖構造でも分岐を含んでも良い。
当該ワックスはポリエチレンワックスが好ましい。ポリエチレンワックスとしてはエチレンを50重量%以上含有するワックスが好ましい。
【0028】
成形を容易にするためには当該ワックスの密度は低い方がよく、0.860g/cm3以上0.940g/cm3以下が好ましい。合成の容易であることから、0.900g/cm3以上が好ましい。
当該ワックスの数平均分子量は成形が容易であることから高い方がよく、570以上好ましくは1000以上であるが、廃棄後の分解性が良いことから数平均分子量1万以下、重量平均分子量7万以下が良く、数平均分子量6000以下、重量平均分子量5万以下がより好ましい。
本発明の脂肪族ポリエステルの数平均分子量Mn、重量平均分子量Mwはゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の値である。
次に組成物の製造法を述べる。
【0029】
組成物には上記脂肪族ポリエステルおよびポリオレフィンワックスが含まれる。該脂肪族ポリエステル及び/又はポリオレフィンワックスは各々2種以上を混合して用いてもよい。組成物中の脂肪族ポリエステルの含有量は、5〜80重量%、好ましくは20〜70重量%である。5重量%より低いと成形性が悪く、80重量%より多いと透水性が速すぎるため好ましくない。組成物中のポリオレフィンワックスの含有量は、20〜95重量%、好ましくは30〜80重量%である。20重量%より少ないと透湿性が高すぎ、95重量%より多いと成膜性が悪く好ましくない。
【0030】
機械的性質、透湿性、分解性などの組成物の性質を調節するために、組成物には脂肪族ポリエステルやポリオレフィンワックスと共に他の成分を併用することができる。
組成物には適宜に相容化剤を用いてもよい。相溶化剤としては、例えば、無水マレイン酸変成ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリエチレンなどの不飽和脂肪族カルボン酸変成ポリオレフィン、本発明で用いる上記ポリオレフィンワックスの脂肪族カルボン酸変成物や、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)などのスチレン系熱可塑性エラストマー、EPR(エチレン−プロピレン)などのゴムなどをが挙げられる。組成物中の相容化剤の量は添加効果を得るためには0.01以上が好ましいが、透湿性抑制と分解性の両立が困難となるため通常75重量%以下であり、50重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましい。
【0031】
併用成分として、タルク、炭酸カルシウム、珪藻土、金属酸化物などの不溶性充填材を用いることができる。組成物中の不溶性充填材の量は添加効果を得るためには0.01重量%以上が好ましいが、透湿性抑制と分解性の両立が困難となるため、75重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましい。
さらに、透湿性調節剤としてのエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体などの脂肪族ポリマーや界面活性剤なども用いることができる。組成物中の透湿性調節剤の量は添加効果を得るためには0.01重量%以上が好ましいが、透湿性抑制と分解性の両立が困難となるため、75重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましい。
【0032】
また、光分解性添加剤も用いることができる。光分解性添加剤としては、遷移金属錯体、酸化促進剤、光増感剤が挙げられる。また、遷移金属錯体としては、錯生成剤が酸素を介して金属に結合しており、かつ金属が遷移金属であるものが挙げられる。例えば、鉄アセチルアセトナート、鉄アセトニルアセトネートなどである。そして、組成物中の錯体の濃度は0.0001〜0.5重量%であり、さらに好ましくは0.005〜0.2重量%である。
上記組成物の成分はプレブレンドすることによって成型物により均一性が得られ、好ましい。プレブレンドは樹脂組成物を製造する方法を用いることができる。プレブレンドに用いる装置は特に制限されないが、混練機や押出し機を用いることができる。プレブレンドの温度範囲は用いる樹脂の内、熔融温度の最も低いもののより20℃低い温度から熔融温度の最も高いのものより20℃高い温度範囲が好ましいが、適正な温度は個々の脂肪族ポリエステルや併用される成分、特に高分子成分に従って決定される。
【0033】
次に本発明のフィルムの製造方法を述べる。フィルムの製造方法は特に限定されず、熱可塑性樹脂のフィルムの製造に利用できる全ての方法を適用することができる。例えば溶媒キャスト法、熔融押出し法、熔融プレス法などが挙げられる。大規模生産には熔融押出し法が優れているが、小規模、特殊用途向け、品質評価のいずれかの目的のためには溶媒キャスト法、熔融プレス法も有用である。フィルムの厚さは限定されないが、好ましくは0.01〜1mm、さらに好ましくは0.02〜0.4mmである。0.01mmより薄いと皮膜にピンホールのような欠陥が生じ易く、透湿性の制御が困難となる。また、1mmを越えると、透湿性が必要以上に低くなったり、製造プロセスへの過大な負担、例えば組成物原料の多大な使用やエネルギー多消費を招くことになる。
溶媒キャスト法等に用いられる溶媒としては、個々の脂肪族ポリエステルや被覆材の組成によって異なるが、クロロホルム、塩化メチレン、o−ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、o−クロロフェノール、N−メチルピロリドンなどを代表例としてその他多数のものが使用可能である。乾燥温度は溶解性、蒸発速度、溶媒の沸点を考慮して決定されるが、通常0〜120℃、好ましくは10〜100℃である。
【0034】
熔融法では、組成物成分の溶融物または溶融分散物を、溶剤法の組成物溶液や分散液の代わりに使用する。その場合、粘度の調整と熱分解防止の観点から溶融温度は80〜250℃、好ましくは130〜230℃であるが、適正な温度は個々の脂肪族ポリエステルや併用される成分、特に高分子成分に従って決定される。熔融押し出しでは、Tダイ法やインフレーション法が利用される。また、一旦製造した無延伸フィルムから常法に従って一軸または二軸延伸フィルムを製造することができる。
成形を容易にするために、本発明に用いるポリオレフィンワックスの熔融粘度は140℃で0.5以上450ポイズ以下が良く、0.5以上300ポイズ以下がより好ましく、0.5以上100ポイズ以下が最も好ましい。
【0035】
フィルムの透湿量は(II)式で示される。
【0036】
Qw=Pw・S・t/d (II)
(式中、Qwは透湿量、Pwは透湿係数、Sは透過面積、tは透過時間、dはフィルム厚みを示す。)
また、1日当たり単位面積当たりの透湿量、即ち透湿度は(III)式で示される。
qw=Qw/(S・t) (III)
(式中、qwは透湿度を示す。)
従って、透湿係数は、(IV)式の通り透湿度と厚みの積で与えられる。
【0037】
pw=qw・d (IV)
この透湿係数は、測定条件を決めれば各フィルム素材の透湿性を示す固有値である。透湿度は、例えばJIS−Z0208規定の防湿包装材料の透湿度試験法(カップ法)に準じて25℃、湿度90%で測定される。本発明のフィルムの透湿係数は、0.03から0.000001mg/cm・dayの範囲、好ましくは0.01mg/cm・day以下、特に好ましくは0.005mg/cm・day以下の低い値である。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例及び比較例を用いて本発明を説明する。
分子量の測定には、GPCを用いた。これらの詳細は以下のとおりである。
以下に本発明の実施例を説明する。
【0039】
実施例1
ポリエチレンアジペート(アルドリッチ社製、数平均分子量7000、重量平均分子量1万)25g、数平均分子量4300、重量平均分子量38000、密度0.910g/cm3のポリエチレンワックス(140℃での熔融粘度4300CPS)を25g、無水マレイン酸変性ポリエチレンワックス(相容化剤Aと呼ぶ。密度0.950g/cm3、数平均分子量3000、140℃での熔融粘度3500CPS、酸価30mg KOH/g)5gを150℃のラボプラストミル(東洋精機社製)に仕込み、混練して組成物を得た。
該組成物をプレス温度120℃、プレス圧力100Kgf/cm2で熱プレスしてフィルムを製造した。該フィルムの透湿速度、透湿係数を25℃で測定した。結果を表1に示した。また、当該フィルムは保存時の安定性に優れ、かつ、土中での分解性を示した。
【0040】
実施例2
相容化剤Aを用いない他は実施例1と同様にして組成物を得た。さらに、該組成物を実施例1と同様にしてフィルムを製造した。また、該フィルムを実施例1と同様にして透湿速度、透湿係数を測定し、結果を表1に示した。また、当該フィルムは保存時の安定性に優れ、かつ、土中での分解性を示した。
【0041】
実施例3
ポリエチレンアジペートの代わりにポリエチレンサクシネートを多価イソシアネートで連結した樹脂(昭和高分子製ビオノーレ1010)25gを用いた他は実施例1と同様にして組成物を得た。さらに、該組成物をプレス温度を180℃にした他は実施例1と同様にしてフィルムを製造した。また、該フィルムを実施例1と同様にして透湿速度、透湿係数を測定し、結果を表1に示した。また、当該フィルムは保存時の安定性に優れ、かつ、土中での分解性を示した。
【0042】
実施例4
相容化剤Aの代わりに無水マレイン酸変性ポリエチレンワックス(相容化剤Bと呼ぶ。密度0.950g/cm3、数平均分子量4000、酸価52mg KOH/g)5gを用いた他は実施例3と同様にして組成物を得た。さらに、該組成物を実施例3と同様にしてフィルムを製造した。また、該フィルムを実施例1と同様にして透湿速度、透湿係数を測定し、結果を表1に示した。また、当該フィルムは保存時の安定性に優れ、かつ、土中での分解性を示した。
【0043】
比較例1
ポリエチレンアジペート(アルドリッチ社製、数平均分子量7000、重量平均分子量1万)を単独で用いた他は実施例1と同様にして実施例1と同様にしてフィルムを製造した。しかし、該フィルムは脆く、透湿速度、透湿係数を測定できなかった。
比較例2
昭和高分子製ビオノーレ1010を単独で用いた他は実施例3と同様にしてフィルムを製造した。また、該フィルムを実施例1と同様にして透湿速度、透湿係数を測定し、結果を表1に示した。
【0044】
比較例3
ポリカプロラクトンを単独で用いた他は実施例3と同様にしてフィルムを製造した。また、該フィルムを実施例1と同様にして透湿速度、透湿係数を測定し、結果を表1に示した。
比較例4
ポリ乳酸を単独で用いた他は実施例3と同様にしてフィルムを製造した。また、該フィルムを実施例1と同様にして透湿速度、透湿係数を測定し、結果を表1に示した。
【0045】
【表1】
【0046】
【発明の効果】
上記のとおり、本発明の組成物およびそのフィルムは、透湿性の制御幅が広く、保存時の安定性に優れ、かつ、土中での分解性の制御が可能である。
Claims (12)
- 脂肪族ポリエステル5重量%以上80重量%以下及びポリオレフィンワックス20重量%以上95重量%以下含有する組成物。
- 脂肪族ポリエステルのnが、該ポリエステルの数平均分子量Mnが15,000より大で1,000,000以下となるのに必要な重合度である請求項2の組成物。
- 脂肪族ポリエステルがポリヒドロキシカルボン酸である請求項1の組成物。
- 脂肪族ポリエステルがポリ乳酸である請求項1の組成物。
- 脂肪族ポリエステルがポリカプロラクトンである請求項1の組成物。
- ポリオレフィンワックスがポリエチレンワックスである請求項1の組成物。
- ポリオレフィンワックスが密度0.860g/cm3以上0.940g/cm3以下の低密度ポリエチレンワックスである請求項1の組成物。
- ポリオレフィンワックスの数平均分子量が570以上10,000以下である請求項1の組成物。
- 透湿性調整剤として0.01以上75重量%以下の脂肪族ポリマー及び/又は界面活性剤を更に含む請求項1の組成物。
- 0.01以上75重量%以下の不溶性充填材を更に含む請求項1の組成物。
- 請求項1の組成物を用いたフィルム。
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