JP3580189B2 - 演奏情報処理装置及びその記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、一連の演奏情報列を好適に処理する演奏情報処理装置及びそのための記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、記憶されている演奏情報に基づいて楽譜表示をする装置がある。このような演奏情報において、所定の音楽記号に対応した演奏表現は、トリル、ターン、グリッサンド等のように、細かい音符がたくさん集まったものであることが多いので、記憶されている演奏情報に基づいて楽譜をそのまま表示すると、短い区間に多くの音符が密集してしまい、たいへん見づらくなってしまう。また、その多くの音符が所定の音楽記号に対応した演奏表現であることが、楽譜表示上でわかりづらい。
【0003】
また、所定の音楽記号に対応した演奏表現の音符列を、その曲の別の場所や、別の曲中で使いたいことがあるが、その場合、音符列を、曲中から探し出してコピーし、別の場所や別の曲中に貼り付けるといった作業が必要であり、操作が面倒であるとともに、管理がしづらいものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、このような事情に鑑み、記憶されている演奏情報中の一連の演奏情報列を一まとめにして、コピー作業や管理等の扱いを容易にした演奏情報処理装置及びそのための記録媒体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明の主たる特徴に従うと、演奏情報を記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶されている演奏情報中から一連の演奏情報列を選択する情報選択手段と、選択された一連の演奏情報列を、パックデータとして別途記憶すると共に、記憶手段に記憶されている演奏情報中から削除し、代わりにパックデータを示すパックイベントを演奏情報中に挿入する処理手段とを具備する演奏情報処理装置(請求項1)が提供され、また、記憶手段に記憶されている演奏情報中から一連の演奏情報列を選択するステップと、選択された一連の演奏情報列を、パックデータとして別途記憶すると共に、記憶手段に記憶されている演奏情報中から削除し、代わりにパックデータを示すパックイベントを演奏情報中に挿入するステップとから成るプログラムを記録している演奏情報処理のための記録媒体(請求項8)が提供される。
【0006】
この発明においては、さらに、パックデータに対して、所定の記号又は文字を割り当てる割当て手段と、記憶されている演奏情報に基づいて楽譜を表示する表示手段であって、パックデータに対して割り当てられた記号または文字を用いて、パックデータが存在する旨を表示するものとを具備し(請求項2)、この割当て手段は、選択された一連の演奏情報列が予め定めた音楽記号に対応する演奏情報の並びと一致した場合に、自動的に該音楽記号をパックデータに割り当てる(請求項3)。この発明は、さらに、パックされた一連の演奏情報列を音高方向及び/又は時間方向に伸縮させる伸縮手段(請求項4)、或いは、記憶手段に記憶されている演奏情報に対して、所定の音楽記号に対応した音楽表現を付与する表現付与手段を具備し、表示手段は、パックデータの記号と所定の音楽記号とを楽譜表示上で異なる態様で表示する(請求項5)。
【0007】
この発明の他の特徴に従うと、演奏情報を記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶されている演奏情報中から一連の演奏情報列を選択する情報選択手段と、選択された一連の演奏情報列を、パックデータとして別途記憶すると共に、記憶手段に記憶されている演奏情報中から削除し、代わりにパックデータを示すパックイベントを演奏情報中に挿入する処理手段と、記憶手段に記憶されている演奏情報に対して、所定の音楽記号に対応した音楽表現を付与する表現付与手段であって、パックデータに対しては、所定の音楽記号に対応した音楽表現を付与しないようにするものとを具備する演奏情報処理装置が提供され(請求項6)、この処理手段は、パックデータに対しては、所定の音楽記号のうちの特定のものに対応した音楽表現のみを付与可能とする(請求項7)。また、この特徴に従い、記憶手段に記憶されている演奏情報中から一連の演奏情報列を選択するステップと、選択された一連の演奏情報列を、パックデータとして別途記憶すると共に、記憶手段に記憶されている演奏情報中から削除し、代わりにパックデータを示すパックイベントを演奏情報中に挿入するステップと、記憶手段に記憶されている演奏情報に対して、所定の音楽記号に対応した音楽表現を付与ステップであって、パックデータに対しては、所定の音楽記号に対応した音楽表現を付与しないものとするステップから成るプログラムを記録している演奏情報処理のための記録媒体が提供される(請求項9)。
【0008】
〔発明の作用〕
この発明の主たる特徴によると、演奏情報中から一連の演奏情報列を選択し、これを1つのパックデータとして別途記憶し、演奏情報中からはこの演奏情報列を削除すると共に、演奏情報中にはパックデータを示すパックイベントを挿入するようにしている。この発明では、このように、所定の音楽記号に対応した演奏表現を1つのパックデータとしてもとの演奏情報とは別途記憶するので、一連の演奏情報列を一まとめにし、コピー作業や管理等の取扱を容易にすることができる。(請求項1,8)
【0009】
この発明においては、また、パックデータに所定の記号や文字を割り当て、楽譜表示上においては、この記号や文字で、パックされた演奏情報列を表示するようにしている。このように、演奏情報列に所定の記号または文字を割り当てることにより、楽譜表示をしたときも、とても見やすく、所定の音楽記号に対応した演奏表現であることがわかりやすくなる。(請求項2)
【0010】
ここで、一連の演奏情報列が予め定めた音楽記号に対応する演奏情報の並びと一致した場合は、自動的にこの音楽記号をパックされた一連の演奏情報列に割り当てるようにしている。このように、自動的に所定の音楽記号を割り当てることにより、ユーザが音楽記号についての知識をあまり持たなくても、演奏情報列に対して所定の音楽記号を適切に割り当てることができる。(請求項3)
【0011】
この発明においては、さらに、パックされた一連の演奏情報列が上下(音高)乃至左右(時間)方向に伸縮することができるようになっているので、もとの演奏情報列とは若干異なる演奏情報列を簡単に作成することができる。(請求項4)
【0012】
この発明においては、パックとは別に、演奏情報に所定の音楽記号に対応した音楽表現を付与可能とし、この所定の音楽記号と、上述のパックデータに割り当てた音楽記号とを、異なる表示態様にて表示するようにしている。このように、所定の音楽記号に対応した音楽表現を付与可能とした場合であっても、パックデータに対応する記号と所定の音楽記号とを異なる態様で表示するようにしたので、楽譜表示上でも容易に両者を識別することができる。(請求項5)
【0013】
この発明の他の特徴によると、演奏情報中から選択した一連の演奏情報列をパックデータとして別途記憶し、演奏情報中からはこの演奏情報列を削除し、演奏情報中にはパックデータを示すパックイベントを挿入すると共に、パックとは別に、演奏情報に所定の音楽記号に対応した音楽表現を付与可能とし、パックデータに対しては、(特定の音楽記号を除いて)所定の音楽記号に対応した音楽表現を付与しないようにしている。このように、演奏情報に対して所定の音楽記号に対応した音楽表現を付与する場合であっても、パックデータには音楽表現を付与しないようにすることによって、パックデータを不用意に変更してしまうことを防止することができる。(請求項6,9)
【0014】
ここで、音楽表現上、パックデータを変更してもあまり問題のない特定の音楽記号(例えば、クレッシェンドやデクレッシェンド等の音量を制御する音楽表現に対応した音楽記号)については、パックデータに対しても付与可能としたので、パックデータに対して、さらに異なる音楽表現を付与することもできる。(請求項7)
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、この発明の好適な実施例を詳述する。なお、以下の実施例は単なる一例であって、この発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0016】
〔ハードウエア構成〕
図1には、この発明の一実施例による演奏情報処理システムのハードウエア構成のブロック図が示されている。この例では、システムは、中央処理装置(CPU)1、読出専用メモリ(ROM)2、ランダムアクセスメモリ(RAM)3、第1及び第2の検出回路4,5、表示回路6、音源回路7、効果回路8、外部記憶装置9等を備え、これらの装置1〜9は、バス10を介して互いに接続されている。
【0017】
システム全体を制御するCPU1は、テンポクロックや割込みクロックの発生等に利用されるタイマ11を備え、所定のプログラムに従って種々の制御を行い、特に、この発明による演奏情報処理処理を中枢的に遂行する。ROM2には、この演奏情報処理システムを制御するための所定の制御プログラムが記憶されており、これらの制御プログラムには、基本的な演奏情報処理と共に、演奏情報処理に関する各種処理プログラムや、各種データ/テーブルを含ませることができる。RAM3は、これらの処理に際して必要なデータやパラメータを記憶し、また、処理中の各種データを一時記憶するためのワーク領域として用いられる。
【0018】
第1の検出回路4にはキーボードタイプの操作装置12が接続され、第2の検出回路5にはマウスタイプの操作装置13が接続され、表示回路6にはディスプレイ14が接続され、ディスプレイ14に表示される各種画面を視認しつつ操作装置12,13を操作することができる。また、DSP等で構成される効果回路8に接続されるサウンドシステム15は、音源回路7及び効果回路8と共に楽音出力部を構成し、この演奏情報処理システムで作成された演奏情報を含む各種演奏情報に基づき楽音を放音させる。
【0019】
外部記憶装置9は、ハードディスクドライブ(HDD)、コンパクトディスク・リード・オンリィ・メモリ(CD−ROM)ドライブ、フロッピィディスクドライブ(FDD)、光磁気(MO)ディスクドライブ、ディジタル多目的ディスク(DVD)ドライブ等の記憶装置から成り、各種制御プログラムや各種データを記憶することができる。従って、演奏情報処理に必要な処理プログラムや各種データは、ROM2を利用するだけでなく、外部記憶装置9からRAM3内に読み込むことができ、必要に応じて、処理結果を外部記憶装置9に記録しておくこともできる。
【0020】
この例では、バス10にMIDIインターフェイス(I/F)16が接続され、システムは他のMIDI機器17と通信することができる。ここで、専用のMIDI I/Fに限らず、RS−232C、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)、IEEE1394(アイトリプルイー1394)等の汎用のインターフェースを用いてMIDI I/Fを構成してもよい。この場合、MIDIメッセージ以外のデータをも同時に送受信するようにしてもよい。さらに、バス10には通信インターフェイス18も接続され、通信ネットワーク19を介してサーバコンピュータ20から処理プログラムや各種データを外部記憶装置9にストアすることもできる。
【0021】
この発明による演奏情報処理システムは、典型的には、図示のように、パーソナルコンピュータ(PC)に演奏情報処理のアプリケーションプログラムを組み込んだ「PC+PC上で動作するソフトウエア」の形態で実施することができるが、電子楽器の形態で実施することもでき、また、カラオケ装置や、ゲーム装置、自動演奏ピアノに適用してもよい。電子楽器の形態を取った場合、その形態は鍵盤楽器に限らず、弦楽器タイプ、管楽器タイプ、打楽器タイプ等の形態でもよい。また、音源回路7については、ハードウエアで構成する必要はなく、ソフトウエア音源で構成することもでき、さらに、音源機能を含む楽音出力部(7,8,15)の機能を、MIDIや各種ネットワーク等の通信手段を用いて接続された他のMIDI機器17に委ねることもできる。
【0022】
〔パック処理・記号付与処理の概要〕
図2及び図3は、この発明の一実施例によるパック処理及び記号付与処理の概念を表わす図である。この発明の演奏情報処理システムでは、操作装置12,13の所定の操作により、外部記憶装置9に記憶されている所定の演奏データが元演奏データODとしてディスプレイ14上に読み出され楽譜で表示される。ここでは、この元演奏データODは、パック処理及び記号付与処理の概念の説明のため、簡略化して、例えば、図2(1)及び図3(1)のように、○印で表わされる音符の列が時間t軸に沿うものとして示されている。
【0023】
この発明の演奏情報処理システムでは、一連の演奏情報列を一まとめにするパック処理を行うことができる。このパック処理においては、操作装置12,13(例えば、マウス13)の操作によって、元演奏データOD中から、例えば、図2(1)に示すように、3つの音符Nl,Nm,Nnを選択して音符列Nl−Nm−Nnをパックすると、選択された音符列Nl−Nm−Nnが、予め定められた所定の記号に対応する“並び”(音高及びタイミング)の場合、対応する記号が自動的に指定される。ここで、対応する記号がなければ、ユーザが操作装置12,13を操作して所定の文字又は記号を指定する。
【0024】
記号(又は文字)の指定がなされると、元演奏データODは、図2(2)に示すように、選択された3つの音符Nl,Nm,Nnは消去され、代わりにパックイベントPIが挿入されて、パック後演奏データADに変換される。そして、図2(3)に示すように、別途、パックデータPDが作成される。パックイベントPIは、パックデータPDを指し示すポインタであり、パックデータPDは、指定された音楽上の文字や音楽記号を示す表記データEDp(主として表示用)と、その文字や記号に対応付けられた音符データNDp(主として演奏用)とから成る。
【0025】
この発明の演奏情報処理システムでは、元演奏データODに対して、パックとは別に、所定の音楽記号に対応した音楽表現を付与可能とするために、記号付与処理を行うことができる。この記号付与処理においては、操作装置12,13(例えば、マウス13)の操作によって、図3(1)に示すように、元演奏データOD中のある音符(又は音符列)Nqを選択し、付与する記号を指定すると、元演奏データODは、図3(2)に示すように、この音符Nqが消去され、代わりに記号イベントSIが挿入されて、記号付与後演奏データBDに変換される。そして、図3(3)に示すように、別途、記号データSDが作成される。記号イベントSIは、記号データSDを指し示すポインタであり、記号データSDは、指定された音楽記号を示す表記データEDs(主として表示用)と、その記号の音楽表現が付与された音符データNDs(主として演奏用)とから成り、また、音符データNDsは、図3(3)では3つの音符Nr,Ns,Ntから成っている。
【0026】
〔パック・記号付与における記号と音符(音楽表現)の関係〕
パック及び記号付与における記号と音符又は音楽表現との関係の一例を挙げると、次のようなものがある:
・「トリル」…ある音符の音とその上部の隣接音とを交互に細かく演奏する。
・「ターン」(回音)…上下の隣接音を経て元の音符の音へと戻るように演奏する。
・「プラルトリラー」(上方回音)…上方の隣接音を経てすばやく元の音符の音へと戻るように演奏する。
・「モルデント」(上方回音)…下方の隣接音を経てすばやく元の音符の音へと戻るように演奏する。
・「グリッサンド」(グリス、スライド)…高さの異なる2音間を、ポルタメント又はこれに近い連続音で結ぶように演奏する。等々。
【0027】
具体的な適用方法を説明すると、例えば、パック処理時に選択された音符が「ある音符とその上部の隣接音とを交互に細かく演奏する」音符であれば、「トリル」記号を指定する。逆に、記号付与処理に選択されたある音符に対して「トリル」付与が指定されれば、「ある音符とその上部の隣接音とを交互に細かく演奏する」音符を作成するのである。
【0028】
次に、図4及び図5は、この発明の一実施例によるパック処理及び記号付与処理時における要部の楽譜表示例を表わす図である。この発明の演奏情報処理システムでは、パック処理及び記号付与処理が行われて、各図の表示例に示されるようなデータ変換が実行される。また、記号付与処理により所定の音楽記号(EDs)は、図5(2)に示されるように、パックデータPDに割り当てた図4(2)の音楽記号(EDp)とは異なる表示態様にて表示される。
【0029】
パック処理時においては、マウス13等を操作し、ディスプレイ14上に表示される元演奏データOD中から、例えば、図4(1)に示すような32分音符の“A”音符Nl、16分音符の“B”音符Nm及び付点8分音符の“A”音符Nnが並んだ音符列Nl−Nm−Nnを選択し、パックコマンドを与える。すると、これら3つの音符Nl,Nm,Nnは、パックされて「トリル」に該当すると自動的に判定され、パックデータPDとして、「トリル」記号を表わす表記データEDpが付与された1つの音符データNDpに変換される。これに応じて、ディスプレイ14の画面には、図4(2)に示すように、「トリル」記号が付いた1つのパック音符画像PNが表示される。また、パックデータPDを再生すると、これら3つの音符Nl,Nm,Nnがそのまま再生される。
【0030】
記号付与処理時においては、マウス13等を操作し、ディスプレイ14上に表示される元演奏データOD中から、例えば、図5(1)に示すように、1つの8分音符の“A”音符Nqを選択し、音楽記号「トリル」を付与する。すると、この音符Nqは、記号データSDとして、「トリル」記号を示す表記データEDsが付与された1つの音符データNDsに変換される。これに応じて、ディスプレイ14の画面には、図5(2)に示すように、「トリル」記号が付与された1つの記号付与音符画像SNが表示される。また、記号データSDを再生すると、例えば、32分音符の“A”音符Nr、16分音符の“B”音符Ns、付点8分音符の“A”音符Ntが並んだ音符列となる。
【0031】
なお、パック処理による演奏データ〔例えば、図4(1)のもの〕と記号付与処理による演奏データ〔例えば、図5(2)によるもの〕は、上述のように全く同じ演奏内容でなくてもよい。例えば、図5(2)によるものでは、32分音符の“A”、32分音符の“B”、付点8分音符の“A”が並んだ音符列に再生されるようになってもよい。また、図4(1)の場合は、「トリル」に対応した音符の並びであったので自動的にトリル記号を付与するようにしているが、ユーザが任意の音楽記号や音楽上の文字を付与するようにしてもよい。
【0032】
また、パック処理により複数の音符を選択しパックした結果「トリル」等の音楽記号を付加し変換されたパック音符画像PNと、記号付与処理により1つの音符に「トリル」記号を付与した記号付与音符画像SNでは、色、形状、模様など、表示態様が異なる。図4(2)及び図5(2)の表示例においては、パック処理と記号付与処理とで表示色を異ならせている。すなわち、図4(2)のパック音符画像PNは、例えば、青色とされ〔図4(2)の斜線は青色であることを示す〕、パック処理を行ったものであることを表わし、図5(2)の記号付与音符画像SNは、パック音符画像PNとは異なる色、例えば、黒又は緑色とされ〔図5(2)の網線は黒色又は緑色であることを示す〕、記号付与処理を行ったものであることを表わしている。このような両画像PN,SNの表示処理については、音符表示部のみ、音楽記号表示部のみ、或いは、音符表示部及び音楽記号表示部の双方について、表示態様を異ならせる。
【0033】
〔パック処理フロー〕
図6は、この発明の一実施例によるパック処理のフローチャートを示す。操作装置12,13の所定の操作により、外部記憶装置9等に記憶されている所定の演奏データ(既にパック処理や記号付与処理が行われた演奏データAD,BDを含む。)が元演奏データODとしてディスプレイ14上に読み出され、例えば、図4(1)の五線譜のような楽譜で表示されると、まず、ステップP1にて1つ又は複数の音符〔例えば、図2(1),図4(1)の音符Nl,Nm,Nn〕を選択する。この選択には、例えば、楽譜表示上においてマウス13を用いる。ここで、「パック」コマンドを与えると、ステップP2において、ステップP1で選択した音符が、所定の音楽記号(「トリル」、「ターン」、「プラルトリラー」、「モルデント」、「グリッサンド」等)の“並び”に合致するか否かが判断され、合致した場合は、ステップP3に進んでこの音楽記号を自動的に指定する。一方、合致しない場合は、ステップP4に進み、パックに付与すべき音楽記号又は音楽上の文字をユーザが任意に指定する。
【0034】
音楽記号/文字を指定した後はステップP5に進み、ステップP1で選択した音符(Nl,Nm,Nn)をパックデータPDとして、別途、外部記憶装置9等に保存する。このとき、ステップP3,P4で指定された音楽記号又は音楽上の文字EDpと共に記憶する。次のステップP6では、図2(2)に示すように、元演奏データOD中から、選択した音符(Nl,Nm,Nn)を削除し、代わりにパックデータPDを示すパックイベントPIを挿入し、パック後演奏データADとする。パックイベントPIは、複数のパックデータPDがあった場合に何れのパックデータであるかを識別する識別子、例えば、各パックデータPDに付与された番号等も含んでいる。
【0035】
次のステップP7では、選択された音符(Nl,Nm,Nn)をディスプレイ14の五線表示上からも消去し、代わりに、パックデータPDに付与された音楽記号又は音楽上の文字EDpを、図4(2)のパック音符画像PNのように、第1の表示態様にて〔例えば、図4(2)の斜線で示すように、青色で〕表示した上、リターンする。
【0036】
〔記号付与処理フロー〕
図7は、この発明の一実施例による記号付与処理のフローチャートを示す。操作装置12,13の所定の操作により、外部記憶装置9等に記憶されている所定の演奏データ(既にパック処理や記号付与処理が行われた演奏データAD,BDを含む。)が元演奏データODとしてディスプレイ14上に読み出され、図5(1)のように五線譜表示されると、まず、ステップS1において、元演奏データODから、1つ又は複数の音符〔例えば、図3(1),図5(1)の音符Nq〕を、例えば、楽譜表示上においてマウス13を用いて選択する。次に、ステップS2にて、選択された音符に付与する音楽記号EDsを指定する。例えば、ディスプレイ14には、記号リストが表示されており、或いは、記号アイコンが並んで表示されており、その中から何れかをマウス13を用いて音楽記号EDsとして選択する。
【0037】
次のステップS3においては、選択した音符(Nq)の中に、パックイベントPIや、既に所定の音楽記号が付与された記号イベントSIが含まれているか否かを判断し、含まれていた場合は、ステップS4に進み、ステップS2で指定された音楽記号が音量系(クレッシェンド、デクレッシェンド等)以外のものであるか否かを判断する。ここで、音量系以外であれば、ステップS5に進んで、パックイベントPIや記号イベントSIは処理対象から除外した上、ステップS6に進み、残りの音符に対してのみ、指定された音楽記号に対応する音楽表現を付与する。ここで、指定した記号が音量系以外の場合に処理対象から除外したのは、音量系の記号ならば既に付与されている音楽記号やパックイベントと重複しても矛盾は生じないことが多いが、それ以外の記号の場合は矛盾する可能性が高いからである。
【0038】
一方、パックイベントPIや所定音楽記号のものが含まれていない場合、或いは、含まれていたとしても選択した音楽記号が音量系のものであれば、ステップS3,S4からステップS6に進み、パックイベントPIに対応するパックデータPDや、既に音楽記号が付与された音符も選択対象とし、演奏表現を付与する。ステップS6においては、演奏表現が付与された音符は、記号データSDとして、別途、外部記憶装置9等に保存される。
【0039】
次のステップS7では、図3(2)に示すように、元演奏データOD中から、選択した音符(Nq)を削除し、代わりに、記号データSDを示す記号イベントSIを挿入して記号付与後演奏データBDとする。記号イベントSIは、複数の記号データSDがあった場合に何れの記号データであるかを識別する識別子、例えば、各記号データSDに付与された番号等も含んでいる。
【0040】
次に、ステップS8では、選択された音符(Nq)をディスプレイ14の五線表示上からも消去し、代わりに、指定された音楽記号EDsを、図5(2)の記号付与音符画像PNのように、第2の表示態様にて〔例えば、図5(2)の網線で示すように、黒色又は緑色で〕表示した上、リターンする。
【0041】
〔パックデータの伸縮処理フロー〕
図8は、この発明の一実施例によるパックデータの伸縮処理のフローチャートを示す。パック処理後演奏データADがディスプレイ14上に図9(1)の五線譜のような楽譜で表示されると、まず、ステップR1にて、伸縮させるパックイベントPIをマウス13等にて選択する。次のステップR2では、選択したパックイベントPIに対応するパック音符画像PNに対して、マウス13等で伸縮操作を行う。例えば、図9(1)のパック音符画像PNの音楽記号部である「トリル」記号を、マウス13で右方向にドラッグする等により、左右に延ばす操作をする。
【0042】
ステップR3では、この伸縮操作に応じてパックイベントPIの表示を伸縮変化させ、ステップR4にて、選択されたパックイベントPIに対応するパックデータPDの時間情報を伸縮する。図9(1)を例にすると、マウス13の右方向ドラッグ等による左右方向に延ばす操作を行った場合、パック音符画像PNの音符部は、図9(1)の4分音符表示から図9(2)の2分音符表示へと変化し、「トリル」演奏の長さが長くなることが表示される。これに伴い、パックデータPDの時間情報の中身も4分音符分の長さから2分音符分の長さに延ばされ、これを再生すると、例えば、繰返し部分の繰返し回数を増やす。
【0043】
尚、ステップR2での伸縮操作に当っては、上下方向に伸縮させてもよい。上下方向に伸縮させた場合は、演奏内容は、ステップR4にて音高情報が変更され、ピッチ変化幅が狭くなったり、広くなったりする。この場合、表示については、「トリル」記号の波線の上下幅を変更すればよい。「トリル」以外の記号についても、上下左右に伸縮させてよいことはもちろんである。
【0044】
このような伸縮処理を行うと、あるパックイベントを別の場所にコピーし伸縮させることで.簡単に、元のパックデータとは若干異なるパックデータを別の場所で再現することができる。なお、パックイベントを伸縮させた場合に、該パックイベントに対応したパックデータをコピーし、コピーしたパックデータの内容を伸縮に応じて変更するようにして、元のパックデータを保持するとよい。
【0045】
〔種々の実施態様〕
以上、この発明による演奏情報処理の1実施態様を説明したが、以下に例示するように、種々の態様で実施することができる。例えば、パックする音符列は、音符以外のデータを含んでいてもよい。或いは、音符以外のデータのみで構成されていてもよい。例えば、ボリュームデータ、ピッチバンドデータなど。これにより、チョーキングや、ビブラート、トレモロなどのボリュームやピッチが変化するような音楽表現を独自に作成することができる。
【0046】
1つのパックデータに対して、音楽記号と音楽上の文字との双方を付与してもよい。そして、楽譜表示上ではどちらを用いて表示するかを選択できるようにしてもよいし、双方を表示するようにしてもよい。
【0047】
複数のパックデータに対して、同じ音楽記号と音楽上の文字を付与してもよい。その場合、各パックデータを識別できるように、番号やアルファベットを付与したり(例えば、「トリルA」「トリルB」など)、演奏情報の特徴を説明した注釈をつけたりすることが好ましい。
【0048】
パックした演奏データ列を、後から編集できるようにしてもよい。また、パックデータを、所定音楽記号として登録し、既存の音楽記号と同様に扱えるよようにしてもよい。。
【0049】
演奏データのフォーマットについては、演奏イベントの発生時刻を1つ前のイベントからの時間で表した「イベント+相対時間」、演奏イベントの発生時刻を曲や小節内における絶対時間で表わした「イベント+絶対時間」、音符の音高と特長あるいは休符と休符長で演奏データを表わした「音高(休符)+符長」、演奏の最小分解能毎にメモリの領域を確保し、演奏イベントの発生する時刻に対応するメモリ領域に演奏イベントを記憶した「ベタ方式」等、どのような形式でもよい。
【0050】
自動演奏データの処理方法は、設定されたテンポに応じて処理周期を変更する方法、処理周期は一定で、自動演奏データ中のタイミングデータの値を設定されたテンポに応じて変更する方法、処理周期は一定で、1回の処理において自動演奏データ中のタイミングデータの計数の仕方をテンポに応じて変更する方法等、どのようなものであってもよい。
【0051】
メモリ上において、時系列の演奏データが連続する領域に記憶されていてもよいし、飛び飛びの領域に散在して記憶されているデータを、連続するデータとして別途管理するようにしてもよい。すなわち、時系列的に連続するデータとして管理することができればよく、メモリ上で連続して記憶されているか否かは問題ではない。
【0052】
〔発明の効果〕
以上説明したように、この発明によれば、演奏情報中から一連の演奏情報列を選択し、これを1つのパックデータとして別途記憶し、演奏情報中からはこの演奏情報列を削除すると共に、演奏情報中にはパックデータを示すパックイベントを挿入するようにしているので、一連の演奏情報列を一まとめにし、コピー作業や管理等の取扱を容易にすることができる。また、パックデータに所定の記号や文字を割り当て、楽譜表示上においては、この記号や文字で、パックされた演奏情報列を表示するようにしているので、楽譜表示をしたときも、とても見やすく、所定の音楽記号に対応した演奏表現であることがわかりやすくなる。
【0053】
ここで、この発明では、一連の演奏情報列が予め定めた音楽記号に対応する演奏情報の並びと一致した場合は、自動的にこの音楽記号をパックされた一連の演奏情報列に割り当てるようにしているので、ユーザが音楽記号についての知識をあまり持たなくても、演奏情報列に対して所定の音楽記号を適切に割り当てることができる。また、パックされた一連の演奏情報列は上下(音高)乃至左右(時間)方向に伸縮することができるようになっているので、もとの演奏情報列とは若干異なる演奏情報列を簡単に作成することができる。さらに、パックとは別に、演奏情報に所定の音楽記号に対応した音楽表現を付与可能とし、この所定の音楽記号と、上述のパックデータに割り当てた音楽記号とを、異なる表示態様にて表示するようにしているので、楽譜表示上でも容易に両者を識別することができる。
【0054】
この発明の他の特徴によれば、演奏情報中から選択した一連の演奏情報列をパックデータとして別途記憶し、演奏情報中からはこの演奏情報列を削除し、演奏情報中にはパックデータを示すパックイベントを挿入すると共に、パックとは別に、演奏情報に所定の音楽記号に対応した音楽表現を付与可能とし、パックデータに対しては、特定の音楽記号を除いて所定の音楽記号に対応した音楽表現を付与しないようにしているので、パックデータを不用意に変更してしまうことを防止することができる。ここで、音楽表現上、パックデータを変更してもあまり問題のない特定の音楽記号(例えば、クレッシェンドやデクレッシェンド等の音量を制御する音楽表現に対応した音楽記号)については、パックデータに対しても付与可能としたので、パックデータに対して、さらに異なる音楽表現を付与することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の一実施例による演奏情報処理装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、この発明の一実施例によるパック処理の概念を表わす図である。
【図3】図3は、この発明の一実施例による記号付与処理の概念を表わす図である。
【図4】図4は、この発明の一実施例によるパック処理時における要部の楽譜表示例を表わす図である。
【図5】図5は、この発明の一実施例による記号付与処理時における要部の楽譜表示例を表わす図である。
【図6】図6は、この発明の一実施例によるパック処理のフローチャートである。
【図7】図7は、この発明の一実施例による記号付与処理のフローチャートである。
【図8】図8は、この発明の一実施例によるパックデータ伸縮処理のフローチャートである。
【図9】図9は、この発明の一実施例によるパックデータ伸縮処理時における要部の楽譜表示例を表わす図である。
【符号の説明】
Nl,Nm,Nn;Nq 選択された音符、
PI パックイベント、
SI 記号イベント、
EDp,EDs 表記データ、
NDp,NDs 音符データ。
Claims (9)
- 演奏情報を記憶する記憶手段と、
記憶手段に記憶されている演奏情報中から一連の演奏情報列を選択する情報選択手段と、
選択された一連の演奏情報列を、パックデータとして別途記憶すると共に、記憶手段に記憶されている演奏情報中から削除し、代わりにパックデータを示すパックイベントを演奏情報中に挿入する処理手段と
を具備することを特徴とする演奏情報処理装置。 - さらに、
パックデータに対して、所定の記号又は文字を割り当てる割当て手段と、
記憶されている演奏情報に基づいて楽譜を表示する表示手段であって、パックデータに対して割り当てられた記号または文字を用いて、パックデータが存在する旨を表示するものと
を具備することを特徴とする請求項1に記載の演奏情報処理装置。 - 前記割当て手段は、選択された一連の演奏情報列が予め定めた音楽記号に対応する演奏情報の並びと一致した場合に、自動的に該音楽記号をパックデータに割り当てることを特徴とする請求項2に記載の演奏情報処理装置。
- さらに、
パックされた一連の演奏情報列を音高方向及び/又は時間方向に伸縮させる伸縮手段
を具備することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の演奏情報処理装置。 - さらに、
記憶手段に記憶されている演奏情報に対して、所定の音楽記号に対応した音楽表現を付与する表現付与手段
を具備し、前記表示手段は、パックデータの記号と所定の音楽記号とを楽譜表示上で異なる態様で表示することを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の演奏情報処理装置。 - 演奏情報を記憶する記憶手段と、
記憶手段に記憶されている演奏情報中から一連の演奏情報列を選択する情報選択手段と、
選択された一連の演奏情報列を、パックデータとして別途記憶すると共に、記憶手段に記憶されている演奏情報中から削除し、代わりにパックデータを示すパックイベントを演奏情報中に挿入する処理手段と、
記憶手段に記憶されている演奏情報に対して、所定の音楽記号に対応した音楽表現を付与する表現付与手段であって、パックデータに対しては、所定の音楽記号に対応した音楽表現を付与しないようにするものと
を具備することを特徴とする演奏情報処理装置。 - 前記処理手段は、パックデータに対しては、所定の音楽記号のうちの特定のものに対応した音楽表現のみを付与可能とすることを特徴とする請求項6に記載の演奏情報処理装置。
- 記憶手段に記憶されている演奏情報中から一連の演奏情報列を選択するステップと、
選択された一連の演奏情報列を、パックデータとして別途記憶すると共に、記憶手段に記憶されている演奏情報中から削除し、代わりにパックデータを示すパックイベントを演奏情報中に挿入するステップと
から成るプログラムを記録していることを特徴とする演奏情報処理のための記録媒体。 - 記憶手段に記憶されている演奏情報中から一連の演奏情報列を選択するステップと、
選択された一連の演奏情報列を、パックデータとして別途記憶すると共に、記憶手段に記憶されている演奏情報中から削除し、代わりにパックデータを示すパックイベントを演奏情報中に挿入するステップと、
記憶手段に記憶されている演奏情報に対して、所定の音楽記号に対応した音楽表現を付与するステップであって、パックデータに対しては、所定の音楽記号に対応した音楽表現を付与しないものとするステップと
から成るプログラムを記録していることを特徴とする演奏情報処理のための記録媒体。
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