JP3579037B2 - 塗布具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば油性インキ,修正液若しくは化粧料等の塗布液を使用する、マーカーペン,修正ペン若しくはメーキャップ用具等を含む塗布具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、所謂マーカーペン等の塗布具としては、例えば軸筒内に形成されたインキタンク内のインキをペン先まで誘導する誘導芯と、円板形にした複数の櫛歯体を誘導芯軸方向に間隙をおいて形成した一時インキ貯溜部材とを有するものが知られている。
【0003】
上記各櫛歯体には、インキタンク内のインキを、当該一時インキ貯溜部材に誘導貯溜するための2つのセンタースリットが誘導芯を中心とした両側に形成されており、それらのセンタースリットを介して、インキタンクの空間部の内圧上昇時に、そのインキタンクから流出するインキを一時インキ貯溜部材に一時的に貯留するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、インキタンク内のインキ残量がある程度以下になると、上記従来の塗布具を水平姿勢にしたとき、一時インキ貯溜部材に形成した2つのセンタースリットのうち、一方のものだけがインキに浸されることがある。
【0005】
この状態では、インキに浸されていない他方のセンタースリットを介して、インキタンクと一時インキ貯溜部材との間での空気の循環が生じ、その結果、インクタンク内の圧力変化に拘わらず、当該インキタンク内のインキが一時インキ貯溜部材に流入して、上記一時インキ貯溜部材本来の機能を発揮できないことになるという欠点がある。
【0006】
上記空気の循環は、2つのセンタースリットを形成した上記のものに限らず、単一のセンタースリットを形成したものであっても、当該センタースリット全体がインキに浸されない状態になったときにも生じる。
【0007】
そこで本発明は、液貯留タンク内の塗布液残量に拘わらず、塗布具自体をほぼ水平姿勢にしたときにも、一時塗布液貯溜部材への塗布液の流入を防止し、かつ、塗布液の供給を円滑に行なうことができる塗布具の提供を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は次の構成を有する。
請求項1に記載した発明は、液貯留タンク内の塗布液を塗布部まで誘導する誘導芯と、気液交換溝を形成した複数の櫛歯体を誘導芯軸方向に間隙をおいて配置した一時塗布液貯溜部材とを有する塗布具において、上記液貯留タンクに臨む上記一時塗布液貯溜部材の後端に、気液交換溝を形成した厚板体を配置しておき、その厚板体の液貯留タンクに臨む後端面に、その液貯留タンク内の塗布液を毛細管現象によって保留させられる間隙を保持して塗布液保留用板を対向させて配置したことを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、一時塗布液貯溜部材の厚板体と塗布液保留用板との間に塗布液を保留させられるので、その厚板体の気液交換溝を塗布液により浸して閉塞させられ、気液交換溝を介しての空気の循環を阻止できる。従って、一時塗布液貯溜部材に塗布液が流入することがなく、さらに、一時塗布液貯溜部材への塗布液の誘導を円滑に行なうことができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載した塗布液保留用板を、誘導芯を保持するためのホルダーと一体的に形成することにより、成形を容易に行なえるとともにコストの低減を図ることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載したホルダーに、塗布液保留用板と一時塗布液貯溜部材の厚板体との間に保留されている塗布液を、誘導芯に補給するための塗布液補給部を形成することにより、液貯留タンク内の塗布液が誘導芯に接触していないときにも、誘導芯への塗布液の補給を継続して行なえる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は本発明塗布具の一実施形態に係る筆記具全体の縦断面図、図2は、図1に包囲線Iで示す部分の拡大断面図、図3は、図2にII−II線で示す部分の断面図である。
【0013】
本発明塗布具の一実施形態に係る筆記具Aは、ユーザーが筆記時に軸筒1外周面を握り、塗布部の一例である筆記部2の誘導芯を兼ねるペン芯3の前端をシート面等の対象面(図示しない)上で滑らせて、そのペン芯3から対象面に生インキ等の塗布液iを供給・塗布して筆記するものであり、次のような構成になっている。
【0014】
軸筒1は、前端に開口部1aを形成し、かつ、後端を閉鎖した略円筒体であり、その開口部1aの至近位置の内壁面1bには、詳細を後述する筆記部2を位置決め固定するための嵌合溝部1cが、また、これよりも後側には一時塗布液貯溜部材4を位置決め固定するための嵌合溝部1dがそれぞれ全周にわたり形成されている。
【0015】
筆記部2は、ホルダー5,上記ペン芯3及び上記一時塗布液貯溜部材4からなるものであり、これを軸筒1の開口部1aに嵌合固定することにより、その筆記部2よりも後端側の軸筒1の内部空間に、塗布液iを収容する液貯留タンク6を区画形成するようになっている。
なお、塗布液iとしては、上記生インキの他、修正液や化粧料であっても適用することができる。
【0016】
ホルダー5は、前端及び後端を開口した円筒形のペン芯嵌挿部5aの前端寄りに、上記軸筒1の嵌合溝部1cに密着嵌合する外径にした円形の嵌合板5bを、また、後端に、同じく円形でかつ軸筒1の内壁面1bとの間に所要の間隙を有する外径にした塗布液保留用板5cを形成したものである。
【0017】
ペン芯嵌挿部5aの側壁であって、後述する一時塗布液貯溜部材4の厚板体4a′と塗布液保留用板5cとの間に形成される間隙αに臨む位置には、その間隙αに保留される塗布液iをペン芯3に補給するための塗布液補給部である塗布液補給口5dが形成されている。
なお、5eは嵌合板5bの後側にやや離間して形成した円形の区画板、5fは、一時塗布液貯溜部材4の後述する櫛歯体4a…,厚板体4a′の気液交換溝であるセンタースリット4b,4b、…に連通してスムーズな空気置換機能を行なわせるための通気孔である。
【0018】
ペン芯3は、ホルダー5のペン芯嵌挿部5aの全長よりもやや長い円柱形に形成されており、前端部にペン先3aが先細にして、また、後端部に円柱形の小径部3bが形成されている。このようなペン芯3は例えば繊維束芯,樹脂成形芯又は多孔質成形芯等で形成することができる。
【0019】
ペン芯嵌挿部5aの後端内壁面には、ペン芯3の小径部3bとの境に形成された段差面3cに当接させるための段差部5a′が内方に突出して形成されており、その段差部5a′にペン芯3の段差面3cを当接させることにより、ペン芯3のペン先3aがペン芯嵌挿部5aの前方に突出し、かつ、当該ペン芯3の小径部3bが塗布液保留用板5cの後方に突出した状態で位置決め固定されるようになっている。
【0020】
一時塗布液貯溜部材(コレクター)4は、円板形の複数の櫛歯体4a…,厚板体4a′を、ペン芯軸方向(軸筒1及び当該一時塗布液貯溜部材4の軸方向でもある)に互いに所要の間隙を保持して積重形成してなる所謂断面櫛歯形の成形体であり、上記ホルダー5の塗布液保留用板5cと区画板5eとの間の長さよりもやや短い全長にして形成されている。
【0021】
上記各櫛歯体4a…,厚板体4a′には、ホルダー5のペン芯嵌挿部5aを挟む両側にセンタースリット4b,4bが形成されており、液貯留タンク6内の圧力変化に応じた量の塗布液iを、前記櫛歯体4a…,厚板体4a′間に流入・排出させることにより、塗布液iの一時貯溜機能を発揮できるようにしている。
【0022】
上述したペン芯3及び一時塗布液貯溜部材4を嵌挿したホルダー5を、前記開口部1aから軸筒1内に挿入すると、ホルダー5の嵌合板5bが嵌合溝部1cに嵌合して位置決め固定される。
【0023】
また、一時塗布液貯溜部材4は、これの最も液貯留タンク6側に配置された厚板体4a′が、軸筒1内の嵌合溝部1dに嵌合して位置決め固定される。これにより、その液貯留タンク6内の塗布液iを毛細管現象によって保留させられる間隙αを保持して、上記一時塗布液貯溜部材4の液貯留タンク6に臨む後端面4cに、塗布液保留用板5cが対向して配置された状態になる。
【0024】
換言すると、一時塗布液貯溜部材4の最も液貯留タンク6側に配置された厚板体4a′の後端面4cと、これに対向する塗布液保留用板5cの側面との間に形成された間隙α内に、塗布液iが保留されるようになる。
【0025】
上記の構成からなる本発明塗布具の一実施形態に係る筆記具Aの作用について説明する。
液貯留タンク6内の塗布液残量がある限度を下回った状態で、筆記具Aをほぼ水平姿勢にすると、一時塗布液貯溜部材4の最も液貯留タンク6側に配置した厚板体4a′に形成したセンタースリット4b,4bのうち、一方のものだけが塗布液iに浸されることになるが、本発明の筆記具Aでは、塗布液保留用板5cと厚板体4a′との間隙αに、液貯留タンク6内の塗布液iが毛細管現象によって吸い上げられる。
これにより、塗布液保留用板5cと一時塗布液貯溜部材4の厚板体4a′の両対向側面間に塗布液iが保留された状態になって、その厚板体4a′のセンタースリット4b,4bの双方が塗布液iによって浸された(被覆された)状態になる。
【0026】
従って、従来のように、塗布液iに浸されていないセンタースリット4bを介しての前述した空気の循環を生じさせないので、液貯留タンク6内の塗布液iが一時塗布液貯溜部材4に流入することがない。
【0027】
また、液貯留タンク6内の塗布液iがペン芯3に接触しない場合にも、一時塗布液貯溜部材4と塗布液保留用板5cとの間に保留されている塗布液iが、塗布液保留用板5cの塗布液補給口5dからペン芯3に継続して補給される。
なお、液貯留タンク6内に塗布液iが残存している限り、一時塗布液貯溜部材4の厚板体4a′と塗布液保留用板5cとの間隙αには、毛細管現象による塗布液の供給(吸い上げ)が継続して行なわれることになり、液貯留タンク6内の塗布液iが無くなるまで、筆記時の掠れ等を生じさせない。
【0028】
本発明は前述した実施形態に限るものではなく、次のような変形実施が可能である。
上記においては、塗布液保留用板とホルダーとを一体的に形成した例について説明したが、それらを別体に形成してもよい。
上記においては、2つのセンタースリットを形成した塗布液保留用板を例として説明したが、単一のセンタースリットを形成したものであっても適用できる。
【0029】
また、本実施形態においては、一時塗布液貯溜部材として、複数の櫛歯体を前記ペン芯軸方向に互いに所要の間隙を保持して積重形成してなる断面櫛歯形の成形体からなるものを例として説明したが、複数の枚葉体をペン芯軸方向に互いに所要の間隔で積重してなる所謂枚葉体形のものを採用することもできる。
【0030】
【発明の効果】
請求項1〜3に記載した発明によれば、一時塗布液貯溜部材の厚板体の後端面と塗布液保留用板との間に塗布液を保留させられるので、その液貯留タンク内の塗布液残量に拘わらず、その厚板体の気液交換溝を塗布液により浸して閉塞することができる。従って、塗布液に浸されていない気液交換溝を介しての空気の循環を生じないので、一時塗布液貯溜部材に塗布液が流入することがない。
また、一時塗布液貯溜部材の厚板体の後端面と塗布液保留用板との間に塗布液を吸い上げて保留させておけるので、液貯留タンク内の塗布液残量がわずかであっても、一時塗布液貯溜部材への塗布液の誘導を円滑に行なうことができる。
【0031】
請求項1〜3記載の発明で得られる共通の効果に加え、各請求項記載の発明によれば次の各効果を得ることができる。
請求項2記載の発明によれば、塗布液保留用板を、誘導芯を保持するためのホルダーに一体的に形成しているので、それらを別個に成形する必要がなく、コストの低減を図ることができる。
【0032】
請求項3に記載した発明によれば、ホルダーに、塗布液保留用板と一時塗布液貯溜部材の厚板体の後端面との間に保留されている塗布液を、誘導芯に補給するための塗布液補給部を形成しているので、誘導芯に液貯留タンク内の塗布液が接触しないときにも、その誘導芯に対して塗布液を継続して補給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明塗布具の一実施形態に係る筆記具全体の縦断面図である。
【図2】図1に包囲線Iで示す部分の拡大断面図である。
【図3】図2にII−II線で示す部分の断面図である。
【符号の説明】
2 塗布部の一例に係る筆記部
3 誘導芯を兼ねるペン芯
4 一時塗布液貯溜部材
4b 気液交換溝であるセンタースリット
4c 後瑞面
5 ホルダー
5c 塗布液保留用板
5d 塗布液補給部である塗布液補給口
6 液貯留タンク
i 生インキ等の塗布液
Claims (3)
- 液貯留タンク内の塗布液を塗布部まで誘導する誘導芯と、気液交換溝を形成した複数の櫛歯体を誘導芯軸方向に間隙をおいて配置した一時塗布液貯溜部材とを有する塗布具において、
上記液貯留タンクに臨む上記一時塗布液貯溜部材の後端に、気液交換溝を形成した厚板体を配置しておき、
その厚板体の液貯留タンクに臨む後端面に、その液貯留タンク内の塗布液を毛細管現象によって保留させられる間隙を保持して塗布液保留用板を対向させて配置したことを特徴とする塗布具。 - 塗布液保留用板は、誘導芯を保持するためのホルダーと一体的に形成されている請求項1に記載の塗布具。
- ホルダーには、塗布液保留用板と一時塗布液貯溜部材との間に保留されている塗布液を、誘導芯に補給するための塗布液補給部が形成されている請求項2に記載の塗布具。
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