JP3578734B2 - 有効障害要因を有する交通網における交通状態の判定方法 - Google Patents

有効障害要因を有する交通網における交通状態の判定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、請求項1の前文に従って、有効障害要因を有する交通網における交通状態の判定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の交通状態判定方法は、先行する優先権を有する出願人により、独国特許出願第199 44 075.1号に記載されており、その内容は参照として全体的に本書に組み入れられている。
【0003】
道路交通網などの交通状態の監視と予測の方法は様々な形態が知られており、車両内の様々なテレマティック用途についても特に関心が向けられている。これらの方法の目的は、交通測定点で記録された交通データから、少なくとも各測定点とその周辺の交通状態の定性的情報を獲得することである。こうしたケースで利用される可能性のある測定点は、静止的に設置された測定点と移動測定点の両方であり、そのうち後者は特に、交通車列に沿って移動する「浮動車」(floating cars)と呼ばれる測定車両の形を取っている。
【0004】
交通状態の定性的な説明をするため、様々な個々に識別可能な状態相、具体的には、「制限なしに流れている交通状態」(freely flowing traffic)、「同期して流れている交通状態」(synchronized traffic)、および「渋滞」の各相に分類することが知られており、「同期して流れている交通状態」相は、車両が非常に低い速度でのみ走行でき、短時間の渋滞状態が自然発生的に形成され、上流側へ移行・成長して、長い渋滞状態がそれから発達する場合のある「数珠つなぎ領域」(pinch regions)と呼ばれる領域を含む場合がある。これらの渋滞状態は、次に、「移動している広範囲の渋滞」(moving widespread congestion)の領域を形成する。状態相のこの対象分野については、同じ会社による先行する優先権を有する独国特許出願第199 44 075.1号、およびそこに引用された資料を参照されたい。
【0005】
「有効障害要因」という用語は、ここでは、交通量が適正の場合、特定期間に渡って局在化状態で持続する境界または端が下流側の「制限なしに流れている交通状態」と上流側の「同期して流れている交通状態」との間で形成される、交通網内の各地点を指す。こうした有効障害要因の形成は、ほとんど専ら、利用可能な車線数が減少する障害要因、道路に入る車線数、湾曲部、正の傾斜、負の傾斜、1つの車道から複数の車道または出口への分岐など、道路交通の対応する地形条件によって決定されることが多い。しかし、有効障害要因は、また、道路工事車両など、制限なしに流れている交通状態の中で平均車両速度より低速で移動する障害要因などの一時的交通混乱、あるいは道路事故によって引き起こされる場合がある。
【0006】
先行する優先権を有する独国特許出願第199 44 075.1号の中で詳細に説明されているように、有効障害要因の上流側の交通状態は、上記の個々に識別可能な動的状態相またはそれらから形成される各領域の典型的な連続で構成される種々の高密度交通パターンに分類できる。このため、最初に、同期して流れている交通状態の領域は、一般に、有効障害要因の上流側に形成され、その前方に広範な移動渋滞領域が形成されることがある数珠つなぎ領域が前記同期して流れている交通状態の上流側に隣接する場合がある。有効障害要因の上流側のこうした各高密交通パターンには、各パターン内で車両速度の時間/位置プロファイルなどの交通パラメータの対応プロファイルがあり、これらは状態相の判定時に考慮される。最初の有効障害要因のパターンが2番目の有効障害要因の地点に達する場合、複数の有効障害要因を含む「広範囲高密度交通パターン」と呼ばれるものが形成される。このような「広範囲高密度交通パターン」は、典型的な異なる交通状態相の連続および関連する交通パラメータプロファイルを有する。
【0007】
有効障害要因が、入口、出口、正の傾斜を有する路線部分、湾曲部、車道の分岐点、および車道の合流点などの交通路線網自体の特性によって決定される限り、このような地形的な路線の特徴物の局所的位置は、デジタル路線網地図と呼ばれるものの形をした他の路線網データなどと一緒に、車両側であるいは交通管制センター内に簡単に保存できる。
【0008】
経験的にまたはその他の意味で必要とされる保存済み交通データは、交通網の今後の交通状態の予測に使用することができる。これを行うための公知の方法は、「負荷曲線予測」と呼ばれるものである。この方法では、現在測定された交通データが保存済み負荷曲線交通データと比較され、最も良く適合する負荷曲線がそこから判定され、それが今後の交通状態を予測する上での基準として利用される。例としては、独国公開公報第197 53 034 A1号を参照されたい。また、なかんずくFCD(浮動車両データ)交通データを利用できる更なる交通状態予測方法は、独国公開公報第197 25 556 A1、同第197 37440 A1号、同第197 54 483 A1号、および欧州第0 902 405 A2号、並びに独国特許第195 26 148 C2号に記載されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、現在の交通状態を比較的確実に判定でき、また特に有効障害要因の上流側の領域でも判定でき、これに基づいて信頼性のある交通予測も必要に応じて可能な、冒頭で言及した種類の判定方法を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、請求項1の特徴を有する方法を提供することによりこの問題を解決する。この方法は、特に、現在獲得された(その時に獲得される)FCD交通データが有効障害要因での高密度交通パターンを検出するために使用されるという事実によって特徴付けられる。これを行うため、FCD交通データは、各交通データ記録FCD車両の少なくとも位置と速度に関する情報を含み、できれば時間依存および位置依存の速度プロファイルに関する情報も含み、またこのFCD交通データは、特定の時間間隔を空けたFCD車両、または時間間隔をあけたこの路線部分を走行する複数のFCD車両、あるいはその両方によってそれぞれの路線部分について獲得される。
【0011】
FCD車両によって記録されたFCD交通データに基づいて、有効障害要因が存在するかどうか、つまり境界または端が一定期間に渡って下流側の「制限なしに流れている交通状態」と上流側の「同期して流れている交通状態」との間で局在化された状態に留まっているいるかどうかが各路線部分について決定される。これは、たとえば、有効障害要因の上流側の各路線部分にあるFCD車両から報告された車両速度が、制限なしに流れている交通状態の状態を代表する平均速度値以下に下がるという事実から検出できる。
【0012】
このようにして有効障害要因が検出されると、現在記録されたFCD交通データの評価を継続して行うことにより有効障害要因の上流側にそれに適合する高密度交通パターンが割り当てられるかどうかが判定される。そしてこれが、各有効障害要因における現在存在する高密度交通パターンとみなされる。このようにして、この領域における現在の交通状態が判定され、これは負荷曲線予測またはその他の予測技術を利用した交通予測などに利用できる。
【0013】
請求項2に従って開発された方法では、現在記録されているFCD交通データに基づいて、「移動している広範囲の渋滞」の領域が、その高密度交通パターンの上流側の端から離脱したかどうかが検出され、これはこの領域の下流側での報告車両速度が数珠つなぎ領域にあるときのように挙動せず、例えば制限なしに流れている交通状態の領域にあるときのように挙動している場合に該当する。
【0014】
請求項3と4に従って開発された方法は、報告車両速度がデジタル路線図に保存された情報などの形で存在する路線地形が実際に変化する地点の後で上昇するか、あるいはその手前で上昇するかという事実によって、有効障害要因が入口的であるかまたは出口的であるかを個別的に検出することを可能にする。請求項5に従って開発された方法は、道路事故など、地形を原因としない一時的障害要因の検出を可能にする。
【0015】
請求項6に従って開発された方法では、各ケースで2つ以上の有効障害要因が含まれる広範囲高密度交通パターンの検出が可能である。
【0016】
請求項7に従って開発された方法では、特に、1つの高密度交通パターンの中の「移動している広範囲の渋滞」の領域と「数珠つなぎ領域」との間の境界の検出を可能にする。同様に、請求項8に従って開発された方法では、1つの高密度交通パターンの中の「数珠つなぎ領域」と「同期して流れている交通状態」の領域との間の境界の検出が可能である。また請求項9は、「制限なしに流れている交通状態」の領域と「数珠つなぎ領域」との間の境界を検出するための好適な方法を開示している。
【0017】
請求項10に従って開発された方法では、FCD交通データから導かれた関連走行時間に基づいて、「制限なしに流れている交通状態」、「同期して流れている交通状態」、および「数珠つなぎ領域」を含む、それぞれの検出された交通状態相に対して記録されたFCD交通データから、現行の交通密度を判定することが可能である。請求項11に従って開発された方法では、同様のやり方で、検出された各渋滞領域について交通密度が判定できる。
【0018】
本発明の更なる目的及び、特徴は、以下に説明する発明の実施の形態から明らかになる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の交通状態判定方法の手順を示した概略図である。最初のステップ1において、有効障害要因の形成につながる地形的な路線特徴のある地点に関するデータが、対象とする交通網について前もって記録され、できればデジタル路線網図の形をした更なるデータと共に対応するデータベースに保存される。これは、車載メモリの中で、または交通管制センターのコンピュータの中で、あるいはその両方で更新される。更に、車両側または管制センター側で、特に、有効障害要因とその上流側にある所定の瞬間における高密度交通パターンの存在が現行FCD交通データから結論されるよう、現行FCD交通データを対応FCD車両から受信し評価するための適切なコンポーネントが具備される。これについては、後で詳細に説明される。更に、FCD交通データの評価は、従来の方法の1つに従って実行できる。この評価は特に自動走行時間予測の生成に使用できる。
【0020】
この交通状態判定方法が実行されている間、対応するステップ2では、FCD交通データが、交通網の各部分で走行するFCD車両、つまりその交通に沿って移動するFCD車両から受け取られる。このFCD交通データは、ここで、特に、各FCD車両の瞬間速度と瞬間位置に関するデータと、そしてアプリケーションによっては、更なる従来のFCDデータ内容を含んでいる。この記録されたFCD交通データは、上記の如く、各車両または定置された交通管制センターに配置できる評価地点に送信される。評価地点において、適切に記録されたFCD交通データは次に、現行の交通状態を、特に有効障害要因の存在および有効障害要因における高密度交通パターンの存在について決定するために評価され、この評価は、ここで主な関心事であるステップ3を構成する。これは、後で更に詳細に説明する。更に、交通状態は、必要に応じて、慣習的な手順の1つに従って交通網の他の地点で判定できる。判定された現行の交通状態、および特に有効障害要因において検出された現在存在する高密度交通パターンは、次に交通予測の基礎を形成することができる(手順4を参照)。
【0021】
記録されたFCD交通データの評価は、各路線部分上で特定の時間間隔を置いて互いに前後して走行している1台以上のFCD車両によって関連路線部分上での連続的な位置について連続的に記録された車両速度、または前記の記録された車両速度から獲得される、各測定位置における平均車両速度が、交通混乱イベントの代表的な事前定義可能な閾値以下に下がるかどうかを決定することから開始する。これから、渋滞または「移動している広範囲の渋滞」の領域または「同期して流れている交通状態」の領域または「数珠つなぎ領域」などの制限なしで流れていない車列の状態がそこに存在するかどうかが検出される。上述の如く、この交通混乱の検出は、1台のFCD車両のデータを参照するだけで既に可能である。但し、同一路線部分上を互いに前後して走行中の複数のFCD車両のデータが存在する場合は、特に交通ダイナミックなどの検出の精度と信頼性を向上させることが可能であり、また平均走行時間の変化や交通の流れの挙動も検出できる。
【0022】
このようにして、制限なしに流れていない車列の状態が各路線部分の一定の領域で検出された場合、この領域のFCD交通データを更に分析することにより、この状態が有効障害要因に基づいているかどうかを判定する。これが示すのは、検出された制限なしに流れていない車列の状態の下流側の端が依然として局地的に固定されているかどうかであり、これは、そこに有効障害要因が存在することを指示している。さらに、現行のFCD交通データ、特に対応する交通パラメータプロファイル、なかんずく速度プロファイルから、適合する関連高密度交通パターンが車両側または管制センター側、あるいはその両方の側で判定される。そして、このような方法で判定された高密度交通パターンが、現在存在するパターンとみなされ、更なるアプリケーションに使用される。これらのアプリケーションは、要件によって、サブ領域または交通網全体の交通位置の再構築、またはサブ領域または交通網全体の交通予測、または交通予測を実行するための対応負荷曲線データベースからの最も適切な負荷曲線の選択、あるいは交通網に対する改善された負荷曲線予測の生成、あるいはそれらすべてを含む。
【0023】
FCD交通データに基づいて有効障害要因における高密度交通パターンを検出するためのこの手順の有利な詳細な手段および改良点は、図2〜6と連動して下記により詳細に説明される。
【0024】
ひとつの手段は、「移動している広範囲の渋滞」の領域が、このような領域が一般的に生じて発達する高密度交通パターンの上流側の端から離脱したかどうか、あるいはそれがまだそのパターンと関わりを持っているかどうかを判定するために、1台以上の検出用FCD車両のFCD速度データを評価することである。前者のケースでは、上流方向へ広がる「移動している広範囲の渋滞」の領域の下流側の端 ST,GS 、図2の概略状況図にもあるように、地点XS,Fにおける有効障害要因に関連する高密度交通パターンの上流側の端から除かれる。後者のケースでは、「移動している広範囲の渋滞」の領域の下流側端 ST,GS 、図4の状況図のように、隣接する下流側の「数珠つなぎ領域」との境界を示している。
【0025】
1つの高密度交通パターンの「移動している広範囲の渋滞」の領域と「数珠つなぎ領域」との間の境界 ST,GS 位置は、この境界 ST,GS ら開始して、「数珠つなぎ領域」に達した結果として、一般的には約1〜2分間の、前の上流側の速度値と比較すればほとんど静止に近くなるような比較的激しく短時間の速度低下が、車両速度が一般的に数珠つなぎ領域で20km/h〜40km/hの範囲で入れ替わる大体3〜7分間の中間車両移動と交互になるという事実などから、FCD速度データに基づいて検出できる。その一方で、「移動している広範囲の渋滞」の領域を抜けたことが検出された後で、そのような典型的な速度プロファイルが測定されず制限なしに流れている交通状態に一般的なプロファイルなどが検出された場合は、「移動している広範囲の渋滞」の領域が図2のケースのように離脱したと結論される。
【0026】
即ち、「移動している広範囲の渋滞」の領域が、検出された高密度交通パターンの上流部分を形成しているか、あるいは当該パターンから上流へ移動したかの判定が、FCD速度データに基づいて行われ、「移動している広範囲の渋滞」の領域を抜けたことが検出された後に、FCD速度データが「数珠つなぎ領域」の典型的な速度プロファイルを示している場合は、「移動している広範囲の渋滞」の領域が高密度交通パターンの上流部分を形成していると判定し、「数珠つなぎ領域」以外の速度プロファイルを示している場合は、「移動している広範囲の渋滞」の領域が当該パターンから上流へ移動したと判断する。
【0027】
さらに、本方法では、局在化した有効障害要因が、図3を参照して下記に説明されるような入口的または出口的な有効障害要因であるかどうかを判定するため、FCD交通データに基づいて判断を下すことが可能である。
【0028】
図3は、その上部に有効障害要因の周辺部の概略図を示し、下部にそれに関連した、車両の流れ、車両密度、および車両速度の代表的な位置依存プロファイルの線図を示している。そこから明らかなように、その有効障害要因の実際の領域では、車両速度は、上流側の「同期して流れている交通状態」の領域の低い値から、「制限なしに流れている交通状態」の領域の高い平均速度値へ連続的に上昇する一方で、車両密度は逆にそれに応じて連続的に小さくなる。図上部の垂直なバーは、有効障害要因が実際に位置する点を示している。
【0029】
図解をみると、有効障害要因が入口に根ざしているケースでは、平均車両速度が実際の入口点の後方で大きく上昇するのみであることが明らかである。図3ではこのケースが想定されている。それと対照的に、有効障害要因が出口的な有効障害要因、つまり自動車道の出口または支線に根ざしているケースでは、平均車両速度は実際の出口地点の手前においても大きく上昇しはじめる。この事実を利用することにより、有効障害要因の前後の領域で測定されたFCD速度は、その関連した平均車両速度プロファイルが、当該有効障害要因の領域上で、実際の入口または出口点の手前で既に大幅な速度の上昇を指示しているのか、あるいはその後でのみ速度の大幅な上昇を指示しているかを決定するために評価される。後者のケースでは、入口または入口的な有効障害要因の存在が結論づけられ、前者のケースでは、出口または出口的な有効障害要因の存在が結論づけられる。速度の上昇は、その高密度交通パターンの中では制限なしに流れている交通状態の所定の一般的な値よりも低かった1台以上のFCD車両の速度が再び上昇し、「同期して流れている交通状態」から「制限なしに流れている交通状態」への相の移行に一般的な所定の閾値を超え、この速度上昇箇所が出口点の手前または入口点の後方の所定の最大距離以内に配置していれば適当であると評価される。時間間隔を置いて互いに相前後してこの有効障害要因を通過する複数のFCD車両の速度データがこれに使用される場合は、このデータは、所定の公差の範囲内で、その有効障害要因の局在化地点を表す同一地点に関連付けられる。速度上昇の経時的変化は各FCD車両用の所定の公差内で同一でなければならない。
【0030】
さらに、本方法は、事前に保存されているなど既に記録されている路線の地形の特徴を原因とするのでなく、たとえば自動車道上での道路事故などによって一時的に引き起こされる有効障害要因の検出を可能にする。このような有効障害要因の存在は、測定されたFCD速度データが高密度交通パターンを指示し、車両がこの高密度交通領域を離れた後、FCD速度は再び、「制限なしに流れている交通状態」に一般的な所定の閾値よりも低い平均速度値に上昇し、「同期して流れている交通状態」から「制限なしに流れている交通状態」への相の移行に一般的でありかつこの場合においては各入口と各出口に存在する有効障害要因の上記区別のための対応閾値よりも大きくなるよう選択された所定の閾値を超過する場合に結論づけられる。この場合、この速度上昇地点が、路線地形が変化していると検出され知られている地点の周辺外にある場合には、記録されていない有効な障害要因として想定される。
【0031】
本方法はまた、検出された高密度交通パターンが個別パターンであるかまたは広範囲パターンであるかについて判断することを可能にする。このための基準は、「同期して流れている交通状態」領域または「数珠つなぎ領域」が関連する有効障害要因の局在化地点を越えて拡大しているかどうかが検出されるかどうかである。これは、平均車両速度の大幅な上昇が「同期して流れている交通状態」の領域の下流側の端を形成する有効障害要因の下流側で発生しないという事実、そしてこれは、下流側の有効障害要因の高密度交通パターンに達したかあるいはこの下流側の有効障害要因を超えて延びたことを示しているという理由から、測定されたFCD速度に基づいて検出できる。また、評価されたFCD速度プロファイルから、いくつの有効障害要因がそのような広範囲なパターンによってカバーされているかを検出することも可能である。これを行うには、「同期して流れている交通状態」の領域または「数珠つなぎ領域」、あるいは「移動している広範囲の渋滞」の領域、「数珠つなぎ領域」、および「同期して流れている交通状態」の領域の所望の途切れのない連続がいくつの有効障害要因の上に延びているかが、FCD速度データに基づいて検出される。
【0032】
さらに、記録されたFCDE速度データに基づいて、「数珠つなぎ領域」と、高密度交通パターンの下流側で数珠つなぎ領域と隣接する「同期して流れている交通状態」の領域との境界線または端FGS,Sの位置を判定することが可能である。このような境界線FGS,Sは、図4に示すように、「同期して流れている交通状態」の領域BS、上流側で隣接する「数珠つなぎ領域」BGS、および上流側に隣接する「移動している広範囲の渋滞」の領域 ST 有する完全な高密度交通パターンと、図5に示す移動している広範囲の渋滞の領域が存在しない縮小した高密度交通パターンの両方について存在する。端FGS,Sの位置は、上記に説明される「数珠つなぎ領域」の一般的速度プロファイルが「同期して流れている交通状態」に一般的な速度プロファイルと合流しはじめる地点であると判定され、その地点以降は、「同期して流れている交通状態」の領域の平均車両速度が、数珠つなぎ現象なしで発生し得る「同期して流れている交通状態」の代表的最小速度と、「制限なしに流れている交通状態」の代表的最小速度との間に存在する。
【0033】
同様に、測定されたFCD速度データに基づいて、「同期して流れている交通状態」の領域Bと、「制限なしに流れている交通状態」の領域Bとの間の境界または端部FF,Sの箇所を判定することが可能であり、この「制限なしに流れている交通状態」の領域Bは、図6に示すように、縮小した高密度交通パターンに対して上流側で隣接し、この縮小した高密度交通パターンは、「制限なしに流れている交通状態」の領域がまた下流側に隣接する有効障害要因の上流側の「同期して流れている交通状態」の領域によってのみ構成される。そして、「同期して流れている交通状態」の領域Bの下流側の端FS,Fがこの有効障害要因の地点XS,Fに常に対応している。FCD速度データに基づいて得られる平均車両速度が、「制限なしに流れている交通状態」の代表的な値にそれまで対応していたのが、「制限なしに流れている交通状態」の代表的最小値以下に低下し、その後「同期して流れている交通状態」の代表的な速度範囲、つまり「同期して流れている交通状態」の代表的最低速度と「制限なしに流れている交通状態」の代表的最低速度との間に留まり始める箇所は、「制限なしに流れている交通状態」と下流側の「同期して流れている交通状態」との間の端FF,Sの箇所として判定される。
【0034】
さらに、本方法では、様々な路線端jの交通密度q(j)も交通網の各道路について個別に判定できる。これを行うにはまず、記録されたFCD交通データに基づいて、各時刻に路線端jに沿って走行する複数のFCD車両の走行時間ttr (j)が、単に対応する地点と時間のデータに基づいて判定され、このデータから判定されるそれらの距離ΔLと一緒に、路線端jに関する交通密度を決定するのに用いられる。これは、「制限なしに流れている交通状態」、「同期して流れている交通状態」、「数珠つなぎ領域」、および「渋滞」の様々な交通状態相について、次のような適切な方法で実行される。
【0035】
「制限なしに流れている交通状態」の領域では、交通密度q(j)は、走行時間ttr (j)と上記のように決定される距離ΔLを比較することによって決定される。このとき、これらのパラメータの関数として事前定義され、また、これらのパラメータによって、交通網の自動車道をはじめ路線端j上の「制限なしに流れている交通状態」内の代表的交通密度を出す関数Qfree (j)が参照される。つまり、現行交通密度q(j)は以下のように得られる。
(j)=Qfree (j)(ttr (j),ΔL) (1)
「同期して流れている交通状態」の領域の場合、交通密度の一般的な所定の関数Qsynch (j)(T,L)も走行時間Tと対応走行時間が各FCD車両によって測定される間の関連距離Lとの関数として使用され、、現在測定された走行時間ttr (j)とFCD車両間の現行間隔ΔLに基づいて、以下の関係によって「同期して流れている交通状態」内の現行交通密度q(j)を判定する。
(j)=Qsynch (j)(ttr (j),ΔL) (2)
同様のやり方で、各路線端jの交通密度q(j)は、「数珠つなぎ領域」内で以下の関係によって決定される。
(j)=Qgest (j)(ttr (j),ΔL) (3)
gest (j)(T,L)は、交通密度の、走行時間と「数珠つなぎ領域」でのFCD車両による各走行時間の測定の間隔への一般的な依存性を特定する事前定義された関数を表す。
【0036】
上記の式(2)において、走行時間は、図4または5のタイプの高密度交通パターンが存在する場合には、「数珠つなぎ領域」と「同期して流れている交通状態」との境界FGS,Sと、「同期して流れている交通状態」と「制限なしに流れている交通状態」との間の境界FS,Fとの間の1台以上のFCD車両の運転時間に対応し、図6に基づいた高密度交通パターンの場合では、「制限なしに流れている交通状態」と「同期して流れている交通状態」との間の境界FF,Sと、「同期して流れている交通状態」と「制限なしに流れている交通状態」との間の境界FS,Fとの間の運転時間に対応する。上記の式(3)では、走行時間は、図4の高密度交通パターンの場合には、境界FST,GSとFGS,S間の1台以上のFCD車両の運転時間に対応し、図5に基づいた高密度交通パターンの場合では、限界FF,GSとFGS,Sとの間の運転時間に対応する。更に、使用する距離ΔLは、この場合には、「同期して流れている交通状態」Bまたは「数珠つなぎ領域」BGSの長さである。
【0037】
更なる交通密度情報は、時間間隔Δt(j )で交通網の各路線端jに沿って走行する各FCD車両の各走行時間の間の差Δttr (j)から導くことができる。平均FCD走行時間の差Δttr (j)は、特に以下の関係に基づいて、渋滞の中へ走行する車両の交通密度qin (j)を決定するために使用できる。
in (j)=(1+Δttr (j)/Δt(j))qout (j) (4)
ここにおいて、qout (j)は渋滞を離れる車両の特徴的な所定の交通密度を表わし、Δttr (j)=ttr,2 (j)−ttr,1 (j)が後で渋滞の中へ入った2番目のFCD車両の待ち時間とそれ以前に渋滞の中へ入った1番目のFCD車両の待ち時間との差を出す。
【0038】
車線数が路線端jに沿って一定でない場合、車線数を考慮に入れた交通密度の断面値を取得するために、上記の式(1)〜(4)は、式の右側に、追加車線要因n/mが提供される。但し、nは問題の路線部分の開始点の車線数を指定し、mは路線部分の終端部の車線数を指定する。また、車線数は、評価されるFCD交通データの検討対象とする時間中は変化しないことが想定されている。
【0039】
本発明の保護範囲は、上記の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】各有効障害要因で検出された高密度交通パターンに基づいて各交通状態を判定するための方法のフローチャートである。
【図2】有効障害要因と関連する高密度交通パターンを有する路線部分と、離脱した「移動している広範囲の渋滞」の領域の概略図である。
【図3】当該方法に基づいた、有効障害要因の局在化を説明した概略図である。
【図4】図2に対応した概略図であるが、「移動している広範囲の渋滞」領域がまだ離脱していない場合を示している。
【図5】図4に対応した図であるが、「移動している広範囲の渋滞」の領域のない、縮小した高密度交通パターンに関する。
【図6】図5に対応する概略図であるが、「数珠つなぎ領域」のない、更に縮小した高密度交通パターンに関する。
【符号の説明】
制限なしに流れている交通状態の領域
同期して流れている交通状態の領域
GS 数珠つなぎ領域
ST 移動している広範囲の渋滞の領域
S,F 有効障害要因の終端
ST,GS 「移動している広範囲の渋滞」の領域と「数珠つなぎ領域」との間の境界
GS,S 「数珠つなぎ領域」と「同期して流れている交通状態」の領域との間の境界
F,S 「制限なしに流れている交通状態」の領域と「同期して流れている交通状態」の領域との間の境界
路線端jに関する交通密度
j 路線端
tr (j) 走行時間
ΔL 間隔
Δttr (j) 走行時間の差
Δt(j) 運転時刻の差

Claims (11)

  1. 有効障害要因を1つまたはそれ以上有する交通網、特に道路交通網における交通状態の判定方法であって、
    前記交通状態を、記録された交通データを考慮しながら、少なくとも「制限なしに流れている交通状態」と「同期して流れている交通状態」と「移動している広範囲の渋滞」の各状態相から成る複数の状態相に分類し、
    下流側に位置する前記「制限なしに流れている交通状態」(B F )と上流側に位置する前記「同期して流れている交通状態」(B S )との間の端(F S,F )が有効障害要因の地点に判定される時に、
    前記交通網の前記有効障害要因の上流側の交通状態を、
    予め定められた複数の高密度交通パターンのうちの一つであり、上流方向に連なる1つまたはそれ以上の異なる状態相を有する異なる領域(BS,BGS,BSTから成る、前記有効障害要因に特有の、高密度交通パターンとして分類する交通状態の判定方法において、
    車両の位置と速度に関する情報から成るFCD交通データ、前記交通網で移動する1つまたはそれ以上の車両によって時間間隔をおいて記録され
    各路線部分に関して記録された前記FCD交通データから、前記有効障害要因の有無が判定され、前記有効障害要因が存在する場合は、現在の前記FCD交通データと適合するような前記高密度交通パターンを、当該有効障害要因における現存の前記高密度交通パターンと判定する
    ことを特徴とする交通状態の判定方法。
  2. 前記記録されたFCD交通データを参照することにより、「移動している広範囲の渋滞」の領域が、検出された前記高密度交通パターンの上流部分を形成しているか、あるいは当該パターンから上流へ移動したかが判定される
    ことを特徴とする請求項1に記載の交通状態の判定方法。
  3. 前記FCD交通データを参照することにより、前記高密度交通パターン下流の前記車両速度が、「制限なしに流れている交通状態」を表す速度値より低い速度値から再び上昇し、「同期して流れている交通状態」の状態相から「制限なしに流れている交通状態」の状態相への相遷移を表す閾値を超えているかどうかが判定され、上昇して前記閾値を超えていると判定された場合には、前記速度上昇個所が路線の地形が変化する局地化された地点の下流に位置するかどうかが判定され、下流に位置すると判定されれば入口的な前記有効障害要因が存在すると結論づけられる
    ことを特徴とする請求項1あるいは2に記載の交通状態の判定方法。
  4. 前記FCD交通データを参照することにより、前記高密度交通パターン下流の前記車両速度が、「制限なしに流れている交通状態」を表す速度値より低い速度値から再び上昇し、「同期して流れている交通状態」の状態相から「制限なしに流れている交通状態」の状態相への相遷移を表す閾値を超えているかどうかが判定され、上昇して前記閾値を超えていると判定された場合には、前記速度上昇個所が、路線の地形が変化する局地化された地点の手前に位置するかどうかが判定され、手前に位置すると判定されれば出口的な有効障害要因が存在すると結論づけられる
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の交通状態の判定方法。
  5. 前記FCD交通データを参照することにより、前記高密度交通パターンが検出されており、当該高密度交通パターンを通過後は、前記車両の平均速度が再び上昇して所定の閾値を超えており、かつ前記速度上昇個所が対応する記録された路線地形の特徴の周辺領域の外にある場合は、路線地形に起因しない前記有効障害要因が存在すると結論づけられる
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の交通状態の判定方法。
  6. FCD速度プロファイルが、「同期して流れている交通状態」領域または「数珠つなぎ領域」が前記有効障害要因の個所を越えて下流へ延びていることを示す場合、広範囲高密度交通パターンが存在すると結論づけられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の交通状態の判定方法。
  7. 前記高密度交通パターンにおける「移動している広範囲の渋滞」領域と「数珠つなぎ領域」との間の境界(FSTGS)の個所を、
    前記FCD速度プロファイルが、当該個所で、前記「移動している広範囲の渋滞」の領域を抜けたことを示し、
    前記FCD速度プロファイルが、当該個所を始点として、強く短い減速期間と低速領域が比較的長く続く期間とが交互する速度プロファイルと合致するという事実により判定する
    ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の交通状態の判定方法。
  8. 前記高密度交通パターンにおける「数珠つなぎ領域」と「同期して流れている交通状態」領域との間の境界(FGSS)の個所を、
    前記FCD速度プロファイルが、当該個所で、前記「数珠つなぎ領域」と前記「同期して流れている交通状態」が合流することを示し、
    前記FCD速度プロファイルが、当該個所を始点として、前記車両の平均速度が「同期して流れている交通状態」に関する所定の最低速度と「制限なしに流れる交通状態」に関する所定の最低速度との間にある速度プロファイルと合致するという事実により判定する
    ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の交通状態の判定方法。
  9. 前記高密度交通パターンにおける「制限なしに流れている交通状態」領域と「同期して流れている交通状態」領域との境界(FFS)の個所を、
    前記FCD速度プロファイルが、前記速度が「制限なしに流れる交通状態」に関する所定の最低速度より下がって、その後「同期して流れている交通状態」に関する所定の最低速度より上ある速度プロファイルと、当該個所を始点として合致するという事実により判定する
    ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の交通状態の判定方法。
  10. 前記交通網の各路線端(j)に関する交通(qj)が、前記各路線端(j)上を走行している前記FCD車両に関する前記FCD交通データから求められる前記各路線端の走行時間(ttr (j))と前記FCD車両間の距離(ΔL)の関数として決定され、「制限なしに流れている交通状態」領域と「同期して流れている交通状態」領域と「数珠つなぎ領域」に対して異なるように定義された関数を参照することにより判定される
    ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の交通状態の判定方法。
  11. 渋滞領域内へ走行する車両の交通(qin (j))が、同一の前記路線端(j)沿いに連なって走行するFCD車両の前記走行時間の差(Δttr (j))および前記FCD車両の時間間隔(Δt(j))から判定される
    ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の交通状態の判定方法。
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