JP3577681B2 - メソポーラスメタロシリケートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、触媒成分や吸着剤として有用な各種金属元素を含むメソポーラスメタロシリケートと、活性シリカ原料を用いたメソポーラスメタロシリケートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、メソポーラスメタロシリケートの製造技術として、メソポーラスシリカを合成する過程でシリカ源と共に金属化合物を共用する方法が知られている。基本となるメソポーラスシリカの合成技術は、本質的にシリカ源とカチオン系界面活性剤であるアルキルトリメチルアンモニウム(以下「ATMA」と記す)の反応複合体を焼成処理する工程からなるが、シリカ源の種類に応じた次の3方法がある。第1の方法は層状珪酸塩を出発シリカ源とするもので、具体的には例えばT.Yanagisawaらの報文〔Bull.Chem.Soc.Jpn.,Vol.63,988 〜992(1990) 〕に記載されているように層状珪酸塩の一つであるカネマイト(NaHSi2O5 ・3H2O) とATMAの複合体を合成し、これを焼成して有機物を除去する方法である。また、第2の方法はアモルファスシリカ粉末やアルカリシリケート水溶液をシリカ源とするもので、J.S.Beckらの報文〔J.Am.Chem.Soc.,Vol.114,10834〜10843(1992) 〕に各種シリカ源からの合成例として、例えば沈降性シリカとテトラメチルアンモニウムシリケート水溶液の混合物をATMAと150℃で反応させて複合体とする方法、あるいは珪酸ソーダを硫酸で中和して得られるシリカゲルをATMAと100℃で6日間反応させて複合体とする方法などが示されている。第3の方法として、特表平5−503499号公報にはシリカゾルやテトラブチルアンモニウムシリケートからメソポーラスシリカを得る方法が開示されており、市販のシリカゾルを水酸化ナトリウムの存在下でATMAと95℃で7〜20日間反応させるか、150℃で2日間反応させる例が示されている。
【0003】
上記のメソポーラスシリカの合成技術を利用してメソポーラスメタロシリケートを製造するには、第1の方法においてカネマイトとATMAの複合体をAlCl3 水溶液のような金属塩水溶液と混合したのち乾燥焼成する方法がS.Inagaki らの報文〔“New silica−alumina with namo−scale pores prepared from Kanemite ”Proceedings of 9th Int.Zeolite Conf.(Montreal,1992)eds.R.von Ballmoos et al.,Butterworth, p305〜311(1993) 〕に提案されている。また、メソポーラスシリカを作製した後に、TiCl4 ガスを吸着させ酸化してTiO2 とする方法(特開平6−320013号公報)や金属塩溶液に浸漬して乾燥し再度焼成する方法(特開平6−63400 号公報)がある。第2の方法と第3の方法では、シリカ原料、金属化合物、ATMAおよびアルカリ剤を一度に混合し、その後の加熱により複合体結晶を晶出させる方法が採られている(特表平5−503499号公報)。
【0004】
しかしながら、第1の方法は出発原料となるカネマイトを調製する必要があるうえ、反応系に多量のNaが存在するため、複合体の焼成時にNa成分がシリカ構造を破壊して多孔体の表面積を低下させる欠点がある。また、Naは触媒等の用途においては触媒毒となって触媒活性を減退させる原因となるため、良品質のものを得ることができない。第2の方法ではシリカ成分と金属成分は一旦溶解して新たな多孔質結晶を形成する関係で高温と長時間の処理と強アルカリの条件を必要とする。同様に第3の方法においても反応に長時間の高温処理を必要とし、反応系にNa成分が多量に存在することになる。なお、第2、第3の方法で得られる多孔体に金属成分が均一に分布しているか否かについては、記載されていない。
【0005】
また、第3の方法として特表平5−503499号公報にはシリカゾルやテトラブチルアンモニウムシリケートを使用することが記載されているが、反応には長時間の高温処理を要し、Naを多量に使用するか、あるいは水酸化テトラブチルアンモニウムのようなアルカリ剤を必要とする。このようなエネルギー消費の大きな方法の適用は工業的に不利となるうえ、水酸化テトラブチルアンモニウムは焼失性で便利なアルカリ剤ではあるものの、高価格で含有排水の処理が必要となることから、この使用も工業的に有利ではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、市販のシリカゾルや沈降性シリカをシリカ源としてメソポーラスメタロシリケートを合成する従来技術では、多大の熱エネルギーと多量のアルカリ剤の使用が必須の要件とされている。この理由は、例えば市販のシリカゾルは1次粒子径が10nm以上の緻密なシリカ重合体であって、比表面積300m2/g以下、SiO2 重合度10,000以上であるのに対して、メソポーラスシリカは比表面積が800〜1500m2/gと大きく、これから推定してメソポア骨格の壁の厚さ方向には2〜4個のSiO2 が存在することになるから、市販シリカゾルのシリカ粒子からメソポア構造を形成するには高温高アルカリ下の条件を与えてシリカ粒子を一旦解体し分子を再配列させることが必要になるためである。
【0007】
沈降性シリカのようなシリカゾル粒子が連続したアグリゲート粒子をシリカ源とする場合にはアグリゲート構造を切断し、さらに断片状ゾル粒子からメソポア構造の骨格配列に再構築しなければならない関係で、シリカゾルよりも一層大きなエネルギーが必要となる。この再構築過程では、ゾル粒子の部分的溶解によって粒子から外れたシリカ分子がメソポーラス骨格を形成するが、溶解過程では極めて限定された量のアルカリ成分を存在させねばならない。この際、過剰のアルカリ量はシリカを溶解状態で安定化させてしまい、骨格形成に寄与しなくなるから、限定されたアルカリ度で反応を完結させることが要件となる。このため、長時間の処理と高温状態が必要となり、工業的にはオートクレーブのような高温高圧装置を用いねばならなくなる。
【0008】
金属原料についてもシリカ源と全く同様で、水不溶性の金属酸化物や水酸化物の粉末原料では多大の熱エネルギーと多量のアルカリ剤の使用が避けられない。水溶性塩を使用してもシリカ原料やATMAと混合した際に金属水酸化物沈澱を生成するので、第2の方法のようにシリカ原料、金属化合物、ATMAおよびアルカリ剤を一度に混合し、その後の加熱により複合体結晶を晶出させるには多大の熱エネルギーが必要となる。また、硝酸塩、塩化物を使用すると、金属成分が固相となって析出する際にHClやHNO3 のような酸が生成し、反応系をアルカリに保つためのアルカリ剤の補給がさらに必要となる。
【0009】
メソポーラスメタロシリケートの組織は、金属成分がシリカに均一に分散した構造形態が理想的となる。ところが、金属水酸化物沈澱やシリカのゲルが混在するようなミクロ的に不均質な原料混合系から前記の理想的なメタロシリケート組織を生成させることは困難であり、特にSi/M(但し、Mは金属元素)の元素比の小さい高金属含有量のメソポーラスメタロシリケートを得ることが難しくなる。
【0010】
本発明者らは、かかる従来技術の実情に鑑み、多量のアルカリ剤を用いずに効率よくメソポーラスメタロシリケートを得るための工業的手段について多角的に研究を進めた結果、珪酸ソーダとカチオン交換樹脂を接触させて得られる活性シリカをシリカ源とし、水溶性金属塩とATMAを均質に混合して前駆体を合成すると、少ないアルカリ添加量と低エネルギーの下で理想的性状のメソポーラスメタロシリケートを効率よく製造できる事実を解明した。また、この方法で得られるメソポーラスメタロシリケートは従来品に比べて優れた物性を保有することも判明した。
【0011】
本発明は上記の知見に基づいて開発されたもので、その目的とする課題は、メソポアサイズの均一な細孔分布を有するメソポア組織を備え、Na含有量が少なく比表面積の大きなメソポーラスメタロシリケートと該メソポーラスメタロシリケートを工業的に得るための製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明によるメソポーラスメタロシリケートの製造方法は、珪酸ソーダ水溶液をカチオン交換樹脂と接触させて活性シリカを調製する第1工程と、第1工程で得られた活性シリカとカチオン系界面活性剤をアルカリ性領域で混合反応させる過程で水溶性金属塩(但し、アルミニウム塩は除く)を添加してシリカ・金属塩・カチオン系界面活性剤の複合体を生成させる第2工程と、前記複合体を焼成処理する第3工程を順次に施すことを主要な構成的特徴とするものである。
【0014】
なお、本発明で特定したメソポーラスメタロシリケートの平均細孔径、細孔径分布および窒素吸着比表面積の値は公知の窒素吸着等温線から求めたものであり、平均細孔径は全細孔容積と窒素吸着比表面積から円筒モデルにより算出し、窒素吸着比表面積はBET多点法を相対圧P/P0 =0.05〜0.20の範囲で算出し、細孔径分布は Dollimore−Heal 法〔J.Appl.Chem.,14.108 〜(1964)〕を用いて算出したものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に係るメソポーラスメタロシリケートの性状的特徴は、第1に平均細孔径が10〜100A、好ましくは20〜100Aの範囲にあり、かつ細孔径分布の幅が狭いことである。既に多くの文献に記載されているようにゼオライト類は約10A以下の細孔径であり、アルミノシリケート(ゲル)は約10Aから100A以上にまたがる幅広い細孔径分布を示す。上述したように細孔径分布は窒素吸着等温線から算出されるが、本発明のメソポーラスメタロシリケートは細孔径分布(D)と累積細孔容積(V)との関係において、最大ピーク径±10Aの範囲にある細孔容積(V1 )と200A以下の細孔容積(V2 )との比Vs =V1 /V2 が30%、好ましくは50%以上を占めており、通常のメタロシリケート(ゲル)と比べて分布幅が明らかに狭い。
【0017】
本発明に係るメソポーラスメタロシリケートの第2の性状的特徴は、BET法による窒素吸着比表面積が400m2/g以上、好ましくは600m2/g以上の点にある。触媒担体では担体構造内に多量の触媒金属を分散よく担持しなくてはならなず、反応気体との接触面積を増すためにも大きな比表面積を必要とする。吸着活性の点でも金属成分は広い面積に分散よく存在することが好ましい。これらのことから触媒担体や吸着剤などの工業的用途に要求される比表面積は400m2/g以上であり、本発明のメソポーラスメタロシリケートはこの水準を満足するものである。
【0018】
本発明に係るメソポーラスメタロシリケートの第3の性状的特徴は 各種金属成分を多量に導入できることである。金属成分は、主として原料系前駆体である複合体の焼成によりシリカ骨格へ導入されたものであるから、用途により種々のメタロシリケートを設計することができる。その成分組成比は、上記物理特性を損なわない限り特に限定されるものではないが、多くの場合Si/M(Mは金属元素)の元素比で50以下、好ましくは3〜30の範囲にある。この理由は、該元素比が50を越えるとメソポア組織がメソポーラスシリカと実質的に変らなくなり、他方、3以下になるとメソポアの特徴的構造が維持できなくなる傾向を与えるからである。
【0019】
本発明で対象とするメタロシリケートとは、金属元素成分を含有するシリケートという意味であってシリカに対する金属元素成分の存在状態は限定的なものではない。最も典型的には例えば一般式Si−O−M−O−Si(Mが2価金属の場合)のような金属元素とシリカとが化学的な結合構造をとる狭義のシリケートが主体的な化学組成となるが、金属元素の種類、導入方法やその量および焼成条件等により金属成分のシリカに対する存在形態は様々であり、金属酸化物または金属あるいはこれらの混合物を含む場合がある。例えば原料系前駆体となる複合体に銀成分を導入すると、微細な金属銀粒子として存在する特異なメタロシリケートを構成する。
【0020】
このような本発明に係るメタロシリケートは、均一なメソポアサイズの特異な多孔質組織に金属成分を導入したシリカ物質であるため、各種化学反応に供する触媒、触媒担体、吸着剤、脱臭剤、機能性フィラーとして、またその前駆体は抗菌剤としての用途に有用である。
【0021】
上記の性状特性を有するメソポーラスメタロシリケートは、珪酸ソーダ水溶液をカチオン交換樹脂と接触させて活性シリカを調製する第1工程と、第1工程で得られた活性シリカとカチオン系界面活性剤をアルカリ性領域で混合反応させる過程で水溶性金属塩を添加してシリカ・金属成分・カチオン系界面活性剤の複合体を生成させる第2工程と、前記複合体を焼成処理する第3工程を順次に施すプロセスにより効率よく製造することができる。
【0022】
シリカ源として選択使用する活性シリカは、珪酸ソーダをH型カチオン交換体と接触させる第1工程で調製される。珪酸ソーダとしては、通常、SiO2 /Na2 Oのモル比が2〜4のものが使用できるが、3号珪酸ソーダは比較的Naが少ないうえ、安価であるため工業用として好適である。また、カチオン交換樹脂としては、例えばスルホン化ポリスチレンジビニルベンゼン系の強酸性カチオン交換樹脂(市販品;ローム&ハース社製“アンバーライトIR−120B”)やカルボキシル化ポリアクリル酸系の弱酸性カチオン交換樹脂(市販品;ローム&ハース社製“アンバーライトIRC−76”)等が好ましく用いられる。
【0023】
この第1工程で得られる活性シリカは、珪酸ソーダ中のNaが実質的に除去されたモノ珪酸やその縮合体の珪酸オリゴマー(大半が重合度11以下)からなり、組織的に多くのシラノール基(SiOH)を含有している。市販のシリカゾルは、このような活性シリカをアルカリ剤と共に加熱して珪酸を重合度10, 000以上に縮合させて連続したシロキサン結合(Si−O−Si) をもつコロイド粒子として安定化させたものであって、本発明で選択する活性シリカとは組成が異なるためシリカ源として使用することはできない。活性シリカは、一般に重合度11以下の珪酸が大半を占めるとされているが、通常の簡易な測定法でこのような分子量を測定することはできない。しかし、粒子性状の面から活性シリカの物性を表現すると、粒子径が3nm以下で、Sears法によるNaOHの吸着量測定での比表面積が2000m2/g以上の値となる。シリカ中のNa含有量は0.01重量%以下で、真の溶液に近く、pHは2〜5の酸性を呈している。なお、この活性シリカには珪酸ソーダから不純物として微量のアルミニウムが混入し残存する場合がある。
【0024】
第1工程で調製された活性シリカは、ついでカチオン系界面活性剤とアルカリ性領域で混合反応させて複合体を形成させるための第2工程に移されるが、この段階で水溶性金属塩を添加してシリカ・金属・カチオン系界面活性剤の複合体を生成させ、分離、洗浄および乾燥処理して回収する。
【0025】
第2工程で添加する水溶性金属塩の金属種としては、周期律表のIIa 、IVa 、VIII、Ib、IIIb(但し、Alは除く)およびIVb に属する群から選ばれた金属元素が使用されるが、代表的な金属元素はMg、Ti、Zr、Fe、Co、B、Ga、Ge、Ag等である。このほか、Cr、Nb、Zn、Sb、Y、La、Ce、Mnなどを使用することもできる。金属塩の形態としては塩化物、硫酸塩、硝酸塩などの水溶性塩が好適に用いられるが、アルカリ剤の使用を避けるために上記金属アルコキシドを用いることもできる。
【0026】
この第2工程で水溶性金属塩を添加する好ましい具体的手段は下記の3つの方法であり、これらの方法を用いることでシリカ骨格への金属の均一な組み込みが可能となる。
▲1▼水溶性金属塩を、カチオン系界面活性剤と反応させる前に予め活性シリカに溶解する方法。
▲2▼水溶性金属塩を、活性シリカと反応させる前に予めカチオン系界面活性剤に溶解する方法。
▲3▼カチオン系界面活性剤に活性シリカを添加する段階で、活性シリカと同時に水溶性金属塩を添加する方法。
このうち、▲1▼および▲2▼の方法を採る場合には、水溶性金属塩は粉末として添加しても、水溶液の状態で添加してもよいが、▲3▼の方法を選択する場合には水溶液の状態で添加する。
【0027】
カチオン系界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩またはアルキルアミン塩等が挙げられる。第4級アンモニウム塩は、一般式〔Rn (CH3)4−n N〕+ 〔X〕− (但し、式中Rは長鎖アルキル基、nは1〜2、XはCl、BrまたはOH基を表す)で示されるアルキルトリメチルアンモニウム塩やジアルキルジメチルアンモニウム塩であり、アルキルアミン塩は一般式〔RNH3 〕+ 〔X〕− (但し、式中Rは長鎖アルキル基、XはCl、BrまたはOH基を表す)で表されるものである。多くの場合、前記一般式における長鎖アルキル基Rの炭素数は8〜24が好ましく、それらの混合物でもよいが、炭素数が25以上では不溶性で取り扱い難い。アルキル基の数nは1または2でもよく、それらの混合物でもよい。しかし、アンモニウム塩の方がアミン塩より塩基度が高いため反応性に優れており、また細孔径分布の均一性を高めるにはn=1のアンモニウム塩を用いることが好ましい。したがって、本発明の目的には一般式〔R(CH3)3 N〕+ 〔X〕− (但し、式中Rは炭素数8〜24のアルキル基、XはCl、BrまたはOH基を表す)で示されるアルキルトリメチルアンモニウム(ATMA)塩が好適に用いられる。以下の製造工程ではカチオン系界面活性剤を代表してATMAとして説明する。
【0028】
通常、ATMAはハライドの形で市販されているが、反応系のアルカリ剤の使用量を少なくするために、ハライド形態をOH型アニオン交換樹脂とアニオン交換させてATMA/OHに転化する。特表平5−503499号公報に記載されている合成法において用いているATMA/OHは、ATMA/Clを29%濃度でイオン交換樹脂に接触させてCl/OH交換を行っている関係でOHの量はClの約30%の量でしかない。このため、ATMAのアルカリ度が低く、他のアルカリ剤を大量に補給しなければならない原因の一つになっている。本発明では、ATMA/ClまたはBrを10重量%以下の比較的低濃度でアニオン交換し、ClをOHの約5%以下、特に、濃度が3〜10重量%の水溶液においてアニオン交換させるとCl− の量が実質的に少ない1000ppm 以下のATMA/OHとして使用することができ、好ましい物性のメタロシリケートを提供することができる。この理由は、Cl− を可及的に低減したATMA/OHを用いることは、結局、Na+ の使用量を低減することになり、Naの少ない好ましいものが得られるためである。なお、上記のOH交換に用いられるアニオン交換樹脂としては、第4級アンモニウム化ポリスチレンジビニルベンゼン系の強塩基性アニオン交換樹脂(市販品;ローム&ハース社製、“アンバーライトIRA−410”)が好ましく用いられる。
【0029】
アニオン交換されたATMA/OHは、5%水溶液でpH13を示す強アルカリ領域にある。しかし、金属成分をシリカに多く導入させる場合、本反応をアルカリ領域で行わせる必要上、金属塩の加水分解からもたらされる酸性成分を中和させるためにATMA/OHのアルカリ量で不足することから別途アルカリ剤が必要となる。このpH調節用のアルカリ剤としては、苛性ソーダ、珪酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、アルキルアンモニウム水酸化物、第4級アンモニウムシリケート、アミン、アンモニア水等が挙げられるが、特に珪酸ソーダや苛性ソーダの使用が好ましい。但し、金属塩の量が少ない場合や金属アルコキシドを使用した場合には格別にこのようなアルカリ剤は不要であり、逆にpHが12以上になり酸による中和が必要になることがある。このpH調節用の酸性剤としては、塩酸等の鉱酸や酢酸等の有機酸、金属塩化物、金属硫酸塩等の酸を発生する塩類等が使用できる。
【0030】
上述したとおり、該第2工程における金属塩の添加は、▲1▼の方法を採る場合には、カチオン系界面活性剤と反応させる前の活性シリカに予め溶解することにより行われるが、▲2▼の方法による場合には前記のATMA/OHに水溶性金属塩を添加する方法で行われる。▲3▼の方法は、ATMA/OHを撹拌しながら活性シリカを徐々に添加する過程で、活性シリカと同時に金属塩水溶液を注入することにより行われる。多くの場合、金属塩水溶液は10重量%以下の濃度が実用的であるが、特に限定的でない。
【0031】
上記▲1▼から▲3▼の方法で金属塩を添加することにより活性シリカ、金属成分およびATMA/OHの均質な混合物を調製し、アルカリ領域で混合反応させてメソポーラスシリケートの前駆体であるシリカ・金属・カチオン界面活性剤の複合体を生成する。複合体を生成するための好適なアルカリ性領域は、pH8〜12の範囲である。このpH範囲において、水系のシリカ分子は円滑に切断・重合されて均質な構造に再構築される。pHが12以上ではシリカの溶解度が大きくなるため好ましくない。
【0032】
第2工程の反応は、活性シリカが極めて高い反応性を有するため常温でも容易に進行することが本発明の特徴の1つであるが、必要に応じて100℃までの加温下で操作しても差し支えない。また、オートクレーブのような装置を用いて100℃以上の熱圧下で水熱反応させる複雑な操作を必要としないことが本発明の大きな利点と言える。反応時間は温度との関係で相違するが、熱成時間を含め概ね0.5〜3時間の範囲で充分である。例えば75℃の温度では約2時間以内で均一な複合体が形成される。特に有効な加熱方法は、予めATMA/OH水溶液を約75℃に加熱しておき、この温度およびpHを一定に保ちながら活性シリカまたは/および金属塩水溶液を添加することが好ましい方法である。
【0033】
この第2工程で、活性シリカは界面活性剤成分と順次に静電的に結合してミセル表面にシリカ皮膜を形成し、接近したシリカ相互間にもシラノール脱水に伴う重合やSi−OH・HO−Mの脱水による縮合を生じながら一部はメタロシリケートを生成し、一部はシリカと金属酸化物の均一混合物となって界面活性剤によるミセル体の表面で相互複合体を生成し、さらにミセル同志の集合による連続した結合組織の前駆体が形成される。このようにして得られた反応スラリーは、濾過水洗して余剰のイオン種を除去した後、100〜120℃の温度で乾燥し、固体粉末状のシリカ・金属成分・カチオン系界面活性剤よりなる複合体として回収する。
【0034】
第3工程は、第2工程で調製された複合体粉末から界面活性剤成分を除去するために焼成処理してメソポーラスメタロシリケートを得る最終工程である。焼成温度は界面活性剤成分が焼失する温度以上であればよく、概ね500℃以上の温度である。高い温度での焼成はシリケート構造を安定化させ機械的強度を向上させるためには有効であるが、1200℃を越える温度域になると異種の結晶相の生成など起こり最早構造の安定化に寄与しなくなる。焼成時間は処理温度との関係で適宜に設定されるが、概ね10分から1時間程度である。したがって、焼成温度600〜1000℃、焼成時間1時間以内が好適な焼成条件となる。
【0035】
本発明によるメソポーラスメタロシリケートは、Si/Mの元素比が50以下という高い金属含有量を持ち、平均細孔径が10〜100Aのメソポア組織であって、BET法による窒素吸着比表面積が400m2/g以上の高比表面積を有し、かつ窒素吸着等温線から算出される細孔径分布(D)と累積細孔容積(V)との関係において、最大ピーク径±10Aの範囲にある細孔容積比(V1 )と200A以下の細孔容積(V2)との比Vs =V1 /V2 が30%以上、好ましくは50%以上の物性を備えている。この範囲の物性は、特に吸着剤や触媒成分として好適である。
【0036】
一方、本発明の製造方法に従えば、第1工程から第3工程を順次施すことにより高温高圧の条件を適用する必要はなく、アルカリ剤の使用も極限まで減少させることができることから、従来技術のように溶解して安定化した未反応シリカを残留させることなしに、Na量を実質的に微量まで低減させることができる。また金属源の添加方法を、第2工程で水溶性金属塩として予め活性シリカに添加するか、予めカチオン系界面活性剤に添加するか、もしくは活性シリカと同時にカチオン系界面活性剤に添加するいずれかの方法を採ることにより、シリカ骨格に円滑に金属成分を組み込むことができ、特にカチオン系界面活性剤として反応性の良好な特定の第4級アルキルメチルアンモニウムのハライドまたは水酸化物を用いることによりポアサイズの均一なメソポーラスメタロシリケートを効率よく合成することが可能となる。
【0037】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
実施例1
3号珪酸ソーダ(SiO2=29.1% 、Na2O=9.45%、Al2O3=200ppm)12kgを純水66kgで希釈し、予めH+ 型にしておいたカチオン交換樹脂(ローム&ハース社製、“アンバーライトIR−120B”)を充填したカラム中を通過させて活性シリカ81kgを得た。この活性シリカは、SiO2 が4.24%、Na2 Oが2ppm 、Al2 O3 が12ppm 、pHは3.1であった。この活性シリカ3540gを撹拌下にZrOCl2 水溶液(濃度25重量%) 430gを投入し、pH1.2のジリコルニウム入り活性シリカを調製した。
【0039】
一方、オクタデシルトリメチルアンモニウムCl塩5.6kgとヘキサデシルトリメチルアンモニウムCl塩1.4kgを純水100kgに溶解した水溶液(以下「混合ATMA水溶液」という)を調製し、予めOH− 型にしておいたアニオン交換樹脂(ローム&ハース社製、“アンバーライトIRA−410”)を充填したカラム中を通過させて、pH13の混合ATMA/OH水溶液140kgを回収した。この混合ATMA/OH水溶液の固形分濃度は5.0重量%で、Cl含有量は300ppm であった。
【0040】
ついで、混合ATMA水溶液4263gを撹拌しながら、ジルコニウム入り活性シリカを20分間で添加した。添加混合の途中から液は白濁してスラリー状になった。このスラリーのpHが10になるようにNaOH水溶液(濃度5重量%)を逐次添加し、総量580g を使用した。次いで、スラリーを75℃に加熱して3時間撹拌を継続し、反応を終了して複合体を得た。放冷後、濾過・水洗して固形分を回収し、これを110℃で乾燥してシリカ・ジルコニア・カチオン系界面活性剤からなる白色粉末の複合体を得た。
【0041】
引き続き、乾燥粉末を650℃の温度で30分焼成処理して、有機物成分を焼失除去した。得られた焼成物の成分組成は、SiO2 =67重量%、ZrO2 =31重量%、Na2 O=1.5重量%で、Si/Zrの元素比が4.5のメソポーラスZrシリケートであることが確認された。図1は得られたメソポーラスZrシリケートの窒素吸着法による細孔径分布D(A)と微分細孔容積ΔV/ΔD(ml・g −1・A−1)の関係図であるが、最大ピーク径は27.4Aに位置し、細孔径分布のピークが極めてシャープなメソポア構造を有することが認められた。また、図2の細孔径分布D(A)と累積細孔容積ΔV(ml・g −1)の関係図から、最大ピーク径±10Aの範囲の細孔容積V1 (ml・g −1)と200A以下の細孔容積V2 (ml・g −1)との比VS は37%であることが確認された。BET法による窒素吸着比表面積は683m2/gであり、細孔容積は0.64ml/gであったので、平均細孔径は37Aと算出された。
【0042】
実施例2
実施例1と同一の条件により活性シリカおよび混合ATMA/OH水溶液を調製した。活性シリカ35.40kgの液を撹拌しながら、Ti(SO4 )2 水溶液(濃度30重量%) 970g を添加した。ついで、混合ATMA水溶液42.63kgを撹拌しておき、チタニウム入り活性シリカを20分間で添加した。混合途中から液は白濁してスラリー状になった。このスラリーのpHは2.3であったので、5kgのNaOH水溶液(濃度5重量%)を添加してpHを10に調整したのち、95℃に加熱して3時間撹拌を継続し反応を終了した。放冷後、濾過・水洗、リパルプし、スプレードライヤーで乾燥してシリカ・チタニア・カチオン系界面活性剤よりなる複合体を得た。
【0043】
引き続き、複合体乾燥粉末を650℃の温度で1時間焼成処理して有機物成分を焼失除去した。得られた焼成物の成分組成は、SiO2 =94重量%、TiO2 =5.7重量%、Na2 O=0.17重量%で、Si/Tiの元素比が22のメソポーラスTiシリケートであることが確認された。図3は得られたメソポーラスTiシリケートの窒素吸着法による細孔径分布D(A)と微分細孔容積ΔV/ΔD(ml・g−1・A−1)の関係図であるが、最大ピーク径は34.2Aに位置し、細孔径分布の極めて狭いメソポア構造を有していることが認められた。また、図4の細孔径分布D(A)と累積細孔容積ΔV(ml・g−1)の関係図から、最大ピーク径±10Aの範囲の細孔容積V1 (ml・g−1)と200A以下の細孔容積V2 (ml・g−1)との比Vs は79%であった。BET法による窒素吸着比表面積は1013m2/gであり、細孔容積は1.54ml/gであったので、平均細孔径は61Aと算出された。
【0044】
実施例3
実施例1と同一条件により活性シリカおよび混合ATMA/OH水溶液を調製した。混合ATMA/OH水溶液445g を40℃に加温し撹拌しておき、37g の塩化ガリウム(GaCl3) を投入して溶解した。該ガリウム入りの混合ATMA/OH水溶液を撹拌しておき、活性シリカ500g を20分間で添加した。添加混合の途中から液は白濁してスラリー状になった。このスラリーのpHは3.1であったが、76g の1N−NaOHを添加してpHを10に調整した。ついで、95℃に加熱して3時間撹拌を続け反応を終了した。放冷後、濾過、水洗し、110℃で乾燥してシリカ・ガリウム・カチオン系界面活性剤からなる複合体を得た。
【0045】
引き続き、複合体の乾燥粉末を650℃の温度で30分焼成処理して有機物成分を焼失除去した。得られた焼成物の成分組成は、SiO2 =91重量%、Ga2 O3 =8.9重量%、Na2 O=0.1重量%、SiO2 /Gaの元素比が16のメソポーラスGaシリケートであることが確認された。図5は得られたメソポーラスGaシリケートの窒素吸着法による細孔径分布D(A)と微分細孔容積ΔV/ΔD(ml・g−1・A−1)の関係図であるが、最大ピーク径は35.2Aに位置し、細孔径分布の極めて狭いメソポア構造を有していることが認められた。また、図6の細孔径分布D(A)と累積細孔容積ΔV(ml・g−1)の関係図から、最大ピーク径±10Aの範囲の細孔容積V1 (ml・g−1)と200A以下の細孔容積V2 (ml・g−1)との比Vs は50%であった。BET法による窒素吸着比表面積は925m2/gであった。細孔容積は1.83ml/gであったので、平均細孔径は79Aと算出された。
【0046】
実施例4
実施例1と同じ条件で得た活性シリカ3540gを撹拌しながらFeSO4 ・7H2 Oを35g 投入して溶解し、鉄入り活性シリカを調製した。一方、不飽和部分を含む長鎖アルキル基(アルキル基の炭素数14〜18、平均炭素数17)をもつジアルキルジメチルアンモニウム(以下「DADMA」という)のCl塩610gをイソプロピルアルコール200g、エタノール250gおよび純水6800gの混合溶媒に60℃の温度で溶解し、以後は実施例1と同一のアニオン交換操作によりpH13のDADMA/OH混合溶媒溶液12000gを回収した。このDADMA/OH溶液は、固形分濃度が5.0重量%で、Cl含有量は350ppm であった。ついで、このDADMA/OH溶液の5860gを80℃に加熱撹拌しながら、鉄入り活性シリカを20分間で添加した。混合途中より液は不透明となりスラリー状になった。このスラリーのpHは7.4であったので、290gの1N−NaOHを添加してpHを10に調整した。ついで、95℃に加熱して3時間撹拌を続け反応を終了した。放冷後、濾過・水洗して固形物を回収し、これを110℃で乾燥してシリカ・鉄・カチオン系界面活性剤からなる複合体を得た。
【0047】
引き続き、乾燥粉末を650℃の温度で30分焼成処理して、有機物成分を焼失除去した。得られた焼成物の成分組成は、SiO2 =93重量%、Fe2 O3 =6.8重量%、Na2 O=0.13重量%で、Si/Feの元素比が18のメソポーラスFeシリケートであることが確認された。図7は得られたメソポーラスFeシリケートの窒素吸着法による細孔径分布D(A)と微分細孔容積ΔV/ΔD(ml・g−1・A−1)の関係図であるが、最大ピーク径は40Aに位置し、細孔径分布の極めて狭いメソポア構造を有することが認められた。また、図8の細孔径分布D(A)と累積細孔容積ΔV(ml・g−1)の関係図から最大ピーク径±10Aの範囲の細孔容積V1 − (ml・g−1)と200A以下の細孔容積V2 (ml・g−1)との比Vs は45%であった。BET法による窒素吸着比表面積は958m2/gであった。細孔容積は1.5ml/gであったので、平均細孔径は63Aと算出された。
【0048】
実施例5
実施例1と同一の条件により活性シリカおよび混合ATMA/OH水溶液を調製した。該活性シリカ2360g を撹拌しながら、117gの硝酸コバルトCo(NO3 )2 ・6H2 Oを添加溶解し、pH2.8のコバルト入り活性シリカを調製した。次に混合ATMA/OH水溶液2750g を撹拌しながら、コバルト入り活性シリカを20分間で添加した。混合途中より液は不透明となりスラリー状になった。このスラリーのpHは9であったので、60gのNaOH水溶液(濃度5重量%)を添加してpHを10に調整したのち、80℃に加熱して3時間撹拌を継続し反応を終了した。放冷後、濾過、水洗、リパルプし、スプレードライヤーで乾燥してシリカ・コバルト・カチオン系界面活性剤よりなる複合体を得た。
【0049】
引き続き、複合体の乾燥粉末を650℃の温度で1時間焼成処理して、有機物成分を焼失除去した。得られた焼成物の成分組成は、SiO2 =75重量%、Co3 O4 =24重量%、Na2 O=0.13重量%で、Si/Coの元素比が4.2のメソポーラスCoシリケートであることが確認された。図9は得られたメソポーラスCoシリケートの窒素吸着法による細孔径分布D(A)と微分細孔容積ΔV/ΔD(ml・g−1・A−1)の関係図であるが、最大ピーク径は38.4Aに位置し、細孔径分布の極めて狭いメソポア構造を有することが認められた。また、図10の細孔径分布D(A)と累積細孔容積ΔV(ml・g−1)の関係図から、最大ピーク径±10Aの範囲の細孔容積V1 (ml・g−1)と200A以下の細孔容積V2 (ml・g−1)との比Vs は73%であることが確認された。BET法による窒素吸着比表面積は748m2/gであり、細孔容積は1.64ml/gであったので、平均細孔径は88Aと算出された。
【0050】
実施例6
実施例1と同一の条件により活性シリカおよび混合ATMA/OH水溶液を調製した。一方、4.25g の硝酸銀を純水21g に溶解して硝酸銀水溶液を調製した。385g の混合ATMA/OH水溶液を撹拌しながら、354グラムの活性シリカと25.25g の硝酸銀水溶液を同時に20分間かけて添加した。混合途中から液は不透明となりスラリー状になった。このスラリーのpHは8.5であたので、18gの1N−NaOHを添加してpHを10に調整したのち、95℃に加熱して3時間撹拌を続け反応を終了した。放冷後、濾過、水洗、120℃で乾燥し、シリカ・銀・カチオン系界面活性剤よりなる複合体を得た。
【0051】
引き続き、複合体の乾燥粉末を650℃の温度で1時間焼成処理して、有機物成分を焼失除去した。得られた焼成物の成分組成は、SiO2 =86重量%、Ag=13.7重量%、Na2 O=0.12重量%で、Si/Agの元素比が23のメソポーラスAgシリケートであることが確認された。図11は得られたメソポーラスAgシリケートの窒素吸着法による細孔径分布D(A)と微分細孔容積ΔV/ΔD(ml・g−1・A−1)の関係図であるが、最大ピーク径は37Aに位置し、細孔径分布の極めて狭いメソポア構造を有することが認められた。また、図12の細孔径分布D(A)と累積細孔容積ΔV(ml・g−1)の関係図から、最大ピーク径±10Aの範囲の細孔容積V1 (ml・g−1)と200A以下の細孔容積V2 (ml・g−1)との比Vs は77%であった。BET法による窒素吸着比表面積は764m2/gであった。細孔容積は1.16ml/gであったので、平均細孔径は61Aと算出された。また、焼成物の粉末法X線回折パターンは金属Agの存在を示した。
【0052】
比較例1
日本触媒学会(Catalysis Society of Japan)のシリカ・アルミナ参照触媒(reference catalyst)であるJRC−SAL−2〔多孔質シリカ・アルミナ(ゲル)、Si/Al元素比19〕を試料とし、実施例と同様に物性評価した。図13は窒素吸着法による細孔径分布D(A)と微分細孔容積ΔV/ΔD(ml・g−1・A−1)の関係図で、最大ピーク径は39Aに位置しているが、細孔径分布は著しくブロードであった。図14の細孔径分布D(A)と累積細孔容積ΔV(ml・g−1)の関係図から、最大ピーク径±10Aの範囲の細孔容積V1 (ml・g−1)と200A以下の細孔容積V2 (ml・g−1)との比VS は25%であり、本発明の実施例に比べて不均一な細孔分布を示すことが認められた。BET法による窒素吸着比表面積は685m2/gであった。細孔容積は0.92ml/gであったので、平均細孔径は54Aと算出された。
【0053】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば平均細孔径が10〜100Aの範囲で極めてシャープな細孔径分布のメソポア組織を備え、BET法による窒素吸着比表面積が400m2/g以上の高い比表面積を保有するメソポーラスメタロシリケートが提供される。したがって、組織に導入される金属種に応じた各種の触媒、触媒担体、吸着剤、脱臭剤、機能性フィラー等として有用性が期待される。また、本発明に係る製造方法に従えば、高温高圧の条件を適用する必要なく、Na成分が残留の少ない状態で細孔径分布の均一なメソポーラスメタロシリケートを効率よく合成することが可能となるから、工業的な製造技術として極めて実用性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1により得られたメソポーラスZrシリケートの細孔径分布(D)と微分細孔容積(ΔV/ΔD)との関係を示したグラフである。
【図2】実施例1により得られたメソポーラスZrシリケートの細孔径分布(D)と累積細孔容積(V)との関係を示したグラフである。
【図3】実施例2により得られたメソポーラスTiシリケートの細孔径分布(D)と微分細孔容積(ΔV/ΔD)との関係を示したグラフである。
【図4】実施例2により得られたメソポーラスTiシリケートの細孔径分布(D)と累積細孔容積(V)との関係を示したグラフである。
【図5】実施例3により得られたメソポーラスGaシリケートの細孔径分布(D)と微分細孔容積(ΔV/ΔD)との関係を示したグラフである。
【図6】実施例3により得られたメソポーラスGaシリケートの細孔径分布(D)と累積細孔容積(V)との関係を示したグラフである。
【図7】実施例4により得られたメソポーラスFeシリケートの細孔径分布(D)と微分細孔容積(ΔV/ΔD)との関係を示したグラフである。
【図8】実施例4により得られたメソポーラスFeシリケートの細孔径分布(D)と累積細孔容積(V)との関係を示したグラフである。
【図9】実施例5により得られたメソポーラスCoシリケートの細孔径分布(D)と微分細孔容積(ΔV/ΔD)との関係を示したグラフである。
【図10】実施例4により得られたメソポーラスCoシリケートの細孔径分布(D)と累積細孔容積(V)との関係を示したグラフである。
【図11】実施例6により得られたメソポーラスAgシリケートの細孔径分布(D)と微分細孔容積(ΔV/ΔD)との関係を示したグラフである。
【図12】実施例6により得られたメソポーラスAgシリケートの細孔径分布(D)と累積細孔容積(V)との関係を示したグラフである。
【図13】比較例1のシリカ・アルミナ参照触媒の細孔径分布(D)と微分細孔容積(ΔV/ΔD)との関係を示したグラフである。
【図14】比較例1のシリカ・アルミナ参照触媒の細孔径分布(D)と累積細孔容積(V)との関係を示したグラフである。
Claims (4)
- 珪酸ソーダ水溶液をカチオン交換樹脂と接触させて活性シリカを調製する第1工程と、第1工程で得られた活性シリカとカチオン系界面活性剤をアルカリ性領域で混合反応させる過程で水溶性金属塩(但し、アルミニウム塩は除く)を添加してシリカ・金属塩・カチオン系界面活性剤の複合体を生成させる第2工程と、前記複合体を焼成処理する第3工程を順次に施すことを特徴とするメソポーラスメタロシリケートの製造方法。
- 第2工程において、水溶性金属塩を予め活性シリカに添加するか、水溶性金属塩を予めカチオン系界面活性剤溶液に添加するか、もしくは水溶性金属塩を活性シリカと同時にカチオン系界面活性剤溶液に添加する請求項1記載のメソポーラスメタロシリケートの製造方法。
- 第2工程で使用するカチオン系界面活性剤が、一般式〔Rn (CH3)4−nN〕+〔X〕−(但し、式中Rは炭素数8〜24のアルキル基、nは1〜2、XはCl、BrまたはOH基を表す)で示される第4級アルキルメチルアンモニウムのハライドまたは水酸化物である請求項1または2記載のメソポーラスメタロシリケートの製造方法。
- 一般式〔Rn (CH3)4−nN〕+〔X〕− で示されるカチオン系界面活性剤が、濃度3〜10重量%の水溶液であってClまたはBrが1000ppm以下の第4級アルキルメチルアンモニウムハイドロオキサイトである請求項3記載のメソポーラスメタロシリケートの製造方法。
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