JP3574858B2 - 作業機の無線操縦装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンからの動力を走行系に伝える変速装置を、作業機の走行を停止させる停止状態から作業機を設定速度で走行させる走行状態まで変速操作自在に構成すると共に、この変速装置をアクチュエータを介して変速操作する受信機と、この受信機に対して機体外から制御信号を送る送信機とを備えて成る作業機の無線操縦装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来例のように構成された無線操縦装置を備えた作業機として芝刈機、草刈り機が存在し、この種の作業機では機体の側に受信機を備え、機体から離れた位置の作業者が送信機を介して走行速度を調節できるよう構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、無線操縦装置を用いた作業機の作業開始時の操作を考えるに、従来からの無線操縦装置では操縦装置を起動させた際に送信機の変速操作具が機体を走行させる位置に誤って設定されている場合には、無線操縦装置を起動させたタイミングで機体が走行することもあり改善の余地がある。この種の不都合は送信機の変速操作具が中立位置にあっても送信機の側の調節不良等によっても発生することもある。
【0004】
本発明の目的は、作業開始時に作業車の意思に反して作業機を走行させることのない無線操縦装置を合理的に構成する点にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の特徴(請求項1)は冒頭に記したように、エンジンからの動力を走行系に伝える変速装置を、作業機の走行を停止させる停止状態から作業機を設定速度で走行させる走行状態まで変速操作自在に構成すると共に、この変速装置をアクチュエータを介して変速操作する受信機と、この受信機に対して機体外から制御信号を送る送信機とを備えて成る作業機の無線操縦装置において、前記受信機による変速装置の変速を可能にする起動手段を備え、この起動手段による起動操作時に前記送信機から前記変速装置を変速して作業機を走行させる変速制御信号を送る状態にあることを判別した場合には、変速操作を阻止して変速装置を停止位置に保持する規制手段を備えるとともに、前記変速装置を前進操作位置、後進操作位置、又は中立位置に設定する前記変速制御信号の変速設定内容に基づいて、夫々異なる報知作動をする報知手段を設け、前記受信機が前記送信機からの信号を正常に受信できない場合に点灯するライトを設けてある点にあり、その作用は次の通りである。
【0006】
本発明の第2の特徴(請求項2)は請求項1において、前記エンジンを始動させる始動手段を作業機に備え、前記起動手段を前記送信機に備え、始動手段によってエンジンが始動された後に、起動手段が起動された場合に前記規制手段による判別を行うよう制御順序を設定してある点にあり、その作用は次の通りである。
【0007】
本発明の第3の特徴(請求項3)は請求項1又は2において、前記規制手段が作業機の側に備えられている点にあり、その作用は次の通りである。
【0008】
【0009】
〔作用〕
上記第1の特徴によると、起動手段の起動操作時に、例えば、送信機の変速操作具が誤って作業機を走行させる変速位置にある場合でも、送信機の調節不良によって送信機から作業機を走行させる側に変速装置を変速する変速制御信号を送る状態にある場合でも、送信機が変速装置を変速して作業機を走行させる変速制御信号を送る状態にある状況にあれば規制手段が変速装置を停止位置に保持することとなり作業機を走行させることはない。
【0010】
上記第2の特徴によると、作業時には作業機のエンジンを始動した後に起動手段を起動操作することで判別手段が判別を行うことになり、起動手段の起動操作の後に作業機の走行を行えない場合には送信機の誤操作等が原因であることを作業者が判断し得るものとなる。つまり、例えば、エンジンの始動前に判別を行って作業機を走行させる制御信号を検出した際には全ての制御を不能にするものを想定すると、送信機の側に不都合がある場合にもエンジンの始動も行えないものとなり、エンジンが始動できない原因を作業者が判断するまでに時間を要するものとなるものであるが、本発明では無線操縦装置の不都合を即座に判断し得るものとなる。
【0011】
上記第3の特徴によると、送信機の側のどのような原因であっても起動操作時に作業機を走行させるよう変速装置を変速操作する制御信号が受信機に送られた場合には作業機の側で変速操作を阻止して作業機を走行させることはない。
【0012】
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、エンジンEを備えた走行機体1の左右にクローラ走行装置C,Cを備えると共に、この走行機体1の前部に左右一対のリフトシリンダ2,2で昇降操作されるリフトアーム3を備え、このリフトアーム3で吊下げ支持されるリンク機構4を介してフレルモーアMを連結して無線操縦式の作業機の一例としての草刈り機が構成されている。
【0014】
該草刈り機の後部位置にはラジエータ5を配置し、中央位置の上面には受信アンテナ6、及び、第1,第2,第3旋回ランプL1,L2,L3夫々を備えている。又、前記クローラ走行装置C,Cは、複数の接地転輪7と緊張輪8と駆動スプロケット9とにゴム製のクローラベルト10を巻回して成り、フレルモーアMは、ゲージ輪11を備えたケース12に対して多数の刈刃(図示せず)を有した横向き姿勢の駆動軸13と、この駆動軸13を駆動回転する油圧式の作業モータ14とを備えて構成されている。
【0015】
図3に示すように、該草刈り機の走行用の油圧系が構成され、この油圧系では、前記エンジンEで駆動される一対の可変容量型の油圧ポンプ16,16からの作動油を左右の駆動スプロケット9,9を駆動する油圧モータ17,17に供給する油路、及び、チャージポンプ18からの油を油圧モータ17,17の系に補給する油路を形成して静油圧式の変速装置に構成してあり、又、チャージポンプ18からの圧油で油圧ポンプ16,16の斜板角度を制御するアクチュエータとしての変速シリンダ19,19を備え、この変速シリンダ19,19を制御する電磁式の走行弁20,20を備えている。尚、油圧モータ17は斜板角の調節で一方の方向に作動油を送って油圧モータ17の正転速度を無段階に調節し得る状態と、逆方向に作動油を送って油圧モータ17の逆転速度を無段階に調節し得る状態と、作動油の送り出しの停止で油圧モータ17を停止させる状態とに設定自在に構成されている。
【0016】
図4に示すように、作業用等の油圧系が構成され、この油圧系では、前記エンジンEで駆動される可変容量型の油圧ポンプ21からの作動油を前記作業モータ14に供給する油路、及び、チャージポンプ22からの油を油圧モータ14の系に補給する油路を構成してあり、チャージポンプ22からの圧油で油圧ポンプ21の斜板角度を制御する作業シリンダ23を備え、この作業シリンダ23を制御する電磁式の作業弁24を備えている。尚、この油圧系では作業シリンダ23の制御で作業モータ14の正転、逆転及び停止を自在に行えるよう構成されている。又、エンジンEで駆動される第1ポンプ26からの作動油を電磁操作型の昇降弁27を介して前記リフトシリンダ2,2に供給する油路と、エンジンEで駆動される第2ポンプ28からの作動油を電磁操作型の切換弁29を介しラジエータ5に冷却風を送る冷却ファンのファンモータ30に作動油を供給する油路を備えている。
【0017】
図5に示すように、草刈り機の受信機としてマイクロプロセッサを備えた制御装置32が構成され、この制御装置32に対してエンジンEで駆動されるオルタネータ33、及び、前記リフトアーム3の揺動用を計測するポテンショメータ型のリフトアームセンサ34からの入力系が形成されると共に、この制御装置32からは前記左右の走行弁20,20、前記作業弁24、前記昇降弁27、前記切換え弁29夫々のソレノイドに対する出力系、及び、エンジンEを強制的に停止させるエンジン停止装置35、報知手段としてのホーン36、前記第1,第2,第3旋回ライトL1,L2,L3夫々に対する出力系が形成されている。
【0018】
図6に示すように、送信機41が構成され、この送信機41では本体ケースの上面に送信アンテナ42を備え、前面の中央位置に対してメインスイッチ43を備えると共に、前面左側位置に中立姿勢Nにバネ付勢された変速スティック44を備え、前面右側に中立姿勢「直進」にバネ付勢された操向スティック45を備えている。この変速スティック44は中立姿勢Nを基準にした上下方向の前進域Fと後進域Rとに無段階に操作自在に構成され、操向スティック45は中立姿勢「直進」を基準に左右方向に形成された左旋回域「左」と右旋回域「右」とに操作自在、かつ、この中立姿勢「直進」を基準に上方の旋回モード変更域とに操作自在に構成されている。又、変速スティック44の近傍位置には変速スティック44が中立姿勢Nにある状態で走行機体1の走行を完全に停止させる状態に設定する微調節ノブ46を備え、操向スティック45の近傍位置には操向スティック45が中立姿勢「直進」にある状態で走行機体1を直進させる微調節ノブ47を備えている。
【0019】
この送信機41の前面下部位置には作業モータ14を正転させる正転スイッチ48と作業モータ14を停止させる停止スイッチ49と作業モータ14を逆転させる逆転スイッチ50とを備えると共に、押し操作で下降位置のモーアMを設定高さまで上昇させる制御と、上昇位置のモーアMを下降させる制御を行わせる自動スイッチ51とを備えている。又、送信機41の前面上部右側には中立位置にバネ付勢されると共に、上方への操作でモーアMを上昇させ、下方への操作でモーアMを下降させる昇降レバー52を備え、送信機前面上部左側には稼働状態のエンジンEを強制的に停止させる停止スイッチ53を備え、送信機上面右側には走行機体1に備えたホーン36を作動させるクラクションスイッチ54を備えている。
【0020】
又、作業時において制御装置32の制御作動は以下のように行われる。つまり、送信機41の変速スティック44を中立姿勢Nから前進域Fに操作した場合には、左右の走行弁20,20の制御で油圧ポンプ16,16の前進駆動側への作動油の吐出量を増大して走行機体1の前進速度を増大させ、逆に、変速スティック44を中立姿勢Nから後進域Rに操作した場合には、左右の走行弁20,20の制御で油圧ポンプ16,16の後進駆動側への作動油の吐出量を増大して走行機体1の後進速度を増大させるものとなり、又、操向スティック45を中立姿勢「直進」を基準に左旋回域「左」に操作した場合には左側の走行弁20の制御で油圧ポンプ16の駆動速度を低減して最終的には停止させ、逆に、操向スティック45を中立姿勢「直進」を基準に右旋回域「右」に操作した場合には右側の走行弁20の制御で油圧ポンプ16の駆動速度を低減して最終的には停止させるものとなっている。更に、操向スティック45を中立姿勢「直進」を基準に上方側に操作した状態で左右の旋回域「右」「左」に操作した場合には夫々の側の走行用の油圧ポンプ16の駆動速度を低減し、この操作域の中間で駆動を停止させ、最終的には旋回内側の油圧モータ16を逆転させて、所謂、スピンターンを可能にするものとなっている。
【0021】
又、正転スイッチ48を押し操作した場合には作業モータ14を正転させ、逆転スイッチ50を押し操作した場合には作業モータ14を逆転させ、停止スイッチ49を押し操作した場合には作業モータ14を停止させるものとなっており、モーアMが作業高さにあることをリフトアームセンサ34で検出している際に自動スイッチ51を押し操作した場合にはリフトアームセンサ34で上限を検出する高さまでリフトシリンダ2,2を駆動し、逆に、モーアMが上昇状態にあることをリフトアームセンサ34で検出している際に自動スイッチ51を押し操作した場合にはリフトアームセンサ34で作業高さを検出する高さまでリフトシリンダ2,2を駆動するものとなっており、昇降レバー52を上方へ操作した場合には操作した時間だけリフトシリンダ2,2を上昇方向に駆動し、昇降レバー52を下方に操作した場合には操作した時間だけリフトシリンダ2,2を下降方向に駆動するものとなっており、停止スイッチ53を押し操作した場合には前記エンジン停止装置35を制御してエンジンEを停止させるものとなっており、クラクションスイッチ54を押し操作した場合には走行機体1に備えたホーン36を作動させるものとなっている。
【0022】
尚、第1旋回ライトL1は送信機41からの信号が正常に受信できない場合に点灯作動し、第2旋回ライトL2は機体の傾斜角度が35度を越える場合に点灯作動し、第3旋回ライトL3は作業モータ14を駆動して通常の草刈り作業が行われている場合に点灯作動するよう制御動作が設定されている。
【0023】
この草刈り機では、電波による制御信号を受ける受信機としての制御装置32と、電波による制御信号を送る送信機41とで無線操縦装置が構成されたものであり、無線操縦による作業の開始時において変速スティック44が誤操作されていても走行機体1を走行させないよう前記制御装置32に対してソフトウエアで成る規制手段Sを備えており、その制御動作は図7のフローチャートに示すように設定されている。つまり、作業時には走行機体1のエンジンEをセルモータ等の始動手段を介して始動させた後において前記メインスイッチ43をON操作し、この後、起動手段としての前記クラクションスイッチ54を押し操作することで無線操縦が可能になるものであり、規制手段Sとしての規制ルーチンではエンジンEが稼働状態にあることをオルタネータ33からの信号で判別した状態で、クラクションスイッチ54が押し操作された場合には、送信機41からの変速制御信号を判別して、この変速制御信号が走行機体1の走行を停止させるものである場合には報知手段としてのホーン36を1回作動させて通常の無線制御モードに移行するものとなっており(#101〜#104ステップ)、このクラクションスイッチ54を押し操作した際に変速制御信号が受信され、この信号が走行機体1を前進させるものである場合にはホーン36を2回作動させ、変速制御信号が走行機体1を後進させるものである場合にはホーン36を3回作動させた後、無線制御モードへの移行を阻止するようになっており、この移行が阻止された状態で再度起動スイッチ54が押し操作された際に変速制御信号が走行機体1の走行を停止させるものである場合にのみホーン36を1回作動させて通常の制御モードへの移行を許すものとなっている(#105,#106ステップ)。
【0024】
このように構成したことから、作業開始時には走行機体1のエンジンEを始動させた後に送信機41のメインスイッチ43をON操作し、クラクションスイッチ54を押し操作することにより送信機41の変速スティック44が誤操作されている場合にはホーン36が2回、若しくは、3回作動することによって作業者は誤操作のあることを正確に認識し得るものとなっており、この誤操作に作業者が気付いた場合には誤操作の無い状態でクラクションスイッチ54を再度押し操作することで通常の作業への移行を可能にするものとなっており、又、送信機41の故障、調整不良等の原因で走行機体1を走行させる信号が送信される場合でもホーン36が2回、若しくは、3回作動することによって作業者は送信機41の側に異常があることを認識できるものとなっている。特に、エンジンEの始動の後の起動操作時に規制手段Sが変速制御信号を判断するので、例えば、エンジンEの停止時に変速制御信号を判断するものと比較して作業を開始できない場合の原因を送信機41の側に求めることが可能となり作業者が対処しやすものとなっている。
【0025】
〔別実施の形態〕
本発明は上記実施の形態以外に、例えば、送信機からの制御を可能にする専用の起動スイッチを備えることが可能であり、規制手段を送信機の側に備えることが可能であり、報知手段を送信機の側に備えることも可能である。
【0026】
【発明の効果】
従って、作業開始時に作業車の意思に反して作業機を走行させることのない無線操縦装置が合理的に構成されたのである(請求項1)。又、作業開始時に作業機の走行を阻止する状態に陥った場合にも原因を容易に判別できるものとなり(請求項2)、送信機の側の誤操作であっても送信機側の故障等であっても、作業機を走行させる制御信号が送信機から送られた場合には必ず走行を阻止するものとなり(請求項3)、走行が阻止されたことを作業者が報知手段を介して確実に認識し得るものとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】草刈り機の全体側面図
【図2】草刈り機の全体平面図
【図3】走行用の油圧回路図
【図4】作業用の油圧回路図
【図5】制御装置のブロック回路図
【図6】送信機の斜視図
【図7】制御動作を示すフローチャート
【符号の説明】
19 アクチュエータ
32 受信機
36 報知手段
41 送信機
54 起動手段
E エンジン
S 規制手段
Claims (3)
- エンジンからの動力を走行系に伝える変速装置を、作業機の走行を停止させる停止状態から作業機を設定速度で走行させる走行状態まで変速操作自在に構成すると共に、この変速装置をアクチュエータを介して変速操作する受信機と、この受信機に対して機体外から制御信号を送る送信機とを備えて成る作業機の無線操縦装置であって、
前記受信機による変速装置の変速を可能にする起動手段を備え、この起動手段による起動操作時に前記送信機から前記変速装置を変速して作業機を走行させる変速制御信号を送る状態にあることを判別した場合には、変速操作を阻止して変速装置を停止位置に保持する規制手段を備えるとともに、前記変速装置を前進操作位置、後進操作位置、又は中立位置に設定する前記変速制御信号の変速設定内容に基づいて、夫々、異なる報知作動をする報知手段を設け、前記受信機が前記送信機からの信号を正常に受信できない場合に点灯するライトを設けてある作業機の無線操縦装置。 - 前記エンジンを始動させる始動手段を作業機に備え、前記起動手段を前記送信機に備え、始動手段によってエンジンが始動された後に、起動手段が起動された場合に前記規制手段による判別を行うよう制御順序を設定してある請求項1記載の作業機の無線操縦装置。
- 前記規制手段が作業機の側に備えられている請求項1又は2記載の作業機の無線操縦装置。
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