JP3572905B2 - 現像ローラ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式による複写機、プリンターあるいはファクシミリの受信装置などに組み込まれる現像ローラに関し、特に非磁性現像方式を採用した現像装置に組み込まれる現像ローラに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式を採用する装置では、感光体などの静電潜像担持体の周辺に、静電潜像担持体へ電荷を一様に供給する帯電ローラ、トナーを静電潜像担持体へ供給する現像ローラ、そしてトナー像を記録用紙に転写させる転写ローラなどの各種ローラが配置される。これら各種ローラのうち、現像ローラは最も重要なものであり、種々の特性が求められる。
【0003】
図1は、非磁性1成分トナーによる非磁性現像方式を採用した現像装置とその周辺構造を模式的に示した断面説明図である。現像ローラ1は、SUS製やアルミニウム合金製などの導電性シャフト2の周りに導電性弾性層3を同心円状に積層し、この導電性弾性層上に表面層4を被覆して構成される。また、導電性シャフト2と現像ローラ1の表面との間には電圧が印加されている。トナー容器6に貯蔵されたトナー7,…は、供給ローラ8によって確実に現像ローラ表面に担持され、規制ブレード9によって押圧されて接触・摩擦帯電し、トナー薄層となった後、静電潜像担持体である感光体5の表面に付着されてトナー像となる。
【0004】
したがって、鮮明なトナー像を得るためには、トナーへの帯電の制御が非常に重要となる。この帯電の制御には、現像ローラの表面層の役割が大きい。現状では、トナーをマイナス帯電させるために、前記表面層にナイロン系材料やウレタン系材料などの摩擦帯電列がトナーに対してプラス側の材料を使用することが多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記したナイロン系材料やウレタン系材料のみでは、吸水率が高いため環境の影響を受け易く、特に高湿度環境下ではローラ抵抗値が低下して現像ローラの特性が変わりやすいので、画質の環境依存性が大きいという問題がある。また、これら材料はトナー離型性に優れていないので、長期にわたり使用すると現像ローラ表面にトナーのフィルミングが生ずるという問題もある。
【0006】
これらに対処すべく、帯電列がトナーに対してややプラス側の材料を表面層に使用し、この表面層に荷電制御剤(CCA)などを添加して、上記した画質の環境依存性やトナーのフィルミングを改善しようとする試みもあるが、CCAは染料系の材料であることが多く、トナーなどの周辺部材を汚染することも少なくない。すなわち、CCAが表面にブリーディングして、感光体表面を劣化させたり、トナーの色調の変化を引き起こすのである。この汚染は、特にカラートナーを用いる場合に大きな問題となる。
【0007】
本発明は上記のような問題点に鑑み、トナーの接触・摩擦帯電を安定させ向上させるべく、環境依存性やトナーフィルミング、トナーなどの周辺部材への汚染を防ぐ表面層を備えた現像ローラを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため、表面層に含有させる微粒子のpHに着眼し、鋭意研究した結果、含有させる微粒子のpHの低いものの方がトナーの帯電に有利であり、特に高湿度環境下で有利であることを見出した。すなわち、本発明の現像ローラは、中心軸に導電性シャフトを配し、該導電性シャフトの周りに導電性弾性層、該導電性弾性層上に前記表面層を同心円状に順次積層して構成される現像ローラにおいて、表面層の主要成分として、ポリカーボネートウレタン、アクリル−酢酸ビニル共重合体およびアクリル変性ウレタンのうち少なくとも一つを用い、表面層中にpHが5以下の微粒子が含有されて構成されるものである。ここで、微粒子のpHとは、JIS K 6221規格による測定値、たとえば、微粒子からなる試料1gに対して10ml(ミリリットル)の割合で蒸留水を加えたものを時計皿で覆い、15分間煮沸した後、室温まで冷却し、傾斜法または遠心分離法によりその上澄み液を除去して泥状物を残し、この泥状物中にたとえばガラス電極pH計の電極を入れて測定したpH値をいう。
【0009】
前記微粒子が、表面層中に該表面層の主要成分の100重量部に対して30重量部以下含まれるように調整すると、現像ローラ表面が硬くなりすぎて生ずるトナー割れなどを防止できる。
【0010】
上記した表面層に含有させる微粒子として、特にコロイダルシリカやカーボンブラックの微粒子を含有させることが好ましく、トナーをマイナス帯電させる点では、これら微粒子のpHが3.5以下であることがより好ましい。
【0011】
上記した表面層の主要成分である樹脂として、ポリカーボネートウレタンやアクリル−酢酸ビニル共重合体、アクリル変性ウレタンを用いると、表面層が環境の影響を受け難くなるので好ましい。
【0012】
また、本発明は、前記導電性シャフトの周りに導電性弾性層、該導電性弾性層上に表面層を順次積層して構成されるが、この導電性弾性層としては、(A)分子中に少なくとも1個のアルケニル基を含み、主鎖を構成する繰り返し単位が主にオキシアルキレン単位または飽和炭化水素系単位からなる重合体と、(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含む硬化剤と、(C)ヒドロシリル化触媒と、(D)導電性付与剤と、を主成分とする硬化性組成物の反応物を用いるのが望ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る代表的な種々の実施例を説明する。
本発明に係る現像ローラは、直径1mm〜25mm程度のSUS(ステンレス鋼)製やアルミニウム製などの金属シャフトの外周に、導電性弾性層を同心円上に被覆したもの、または、この導電性弾性層の周りに単または複数の層を同心円状に被覆したものである。前者の場合、表面層は弾性層そのものであり、後者の場合、表面層はこの弾性層上に被覆された層となる。この現像ローラの各層は、ローラ抵抗値が10〜1010Ω、好ましくは10〜10Ωの範囲内にあるように選別されて構成される。なお、このローラ抵抗値は、現像ローラを金属プレートに水平に当てて、前記金属シャフトの両端部の各々に500gの荷重を金属プレート方向に加えたときに、シャフトと金属プレート間に直流電圧100ボルト印加して測定される値である。
【0014】
トナーを担持する現像ローラの表面層には、上述したJIS K 6221規格によるpHが5以下の微粒子が含有されている。この表面層は、導電性弾性層またはこの導電性弾性層上に被覆された最外層である。この微粒子の粒径は、表面層の表面の粗さを適度にする点から、30μm以下であればよく、特に20μm以下であることが好ましい。また、表面層に含有される微粒子量が多くなりすぎると、表面層が硬くなりすぎるため、その表面に担持されるトナーが規制部材などに押圧される際に割れやすくなるので、これを防ぐべく、微粒子の含有量が、表面層の主要成分である樹脂の100重量部に対して30重量部以下、特に20重量部以下となるように調整されることが望ましい。さらに、トナーをマイナスに帯電させる効率の良さでは、pHが3.5以下の微粒子が好ましく、この微粒子の中でも特にコロイダルシリカや表面を酸性処理したカーボンブラックなどが好ましい。これら微粒子のpHは、この微粒子の表面処理の方法などによって調整することができる。
【0015】
トナーの帯電の制御は、主に、表面層の主要成分であるベース樹脂の中に含有される微粒子で行われる。高湿度環境下での安定性を高めるために、ベース樹脂として、シリコーン、炭化水素、フッ素系ゴム、ポリカーボネートウレタン、アクリル−酢酸ビニル共重合体もしくはアクリル変性ウレタンなどを用いるのが望ましい。これらのベース樹脂は、10℃10%RH(相対湿度)〜35℃85%RHの環境下で、安定した構造を保つので、ローラ抵抗の環境による変動が生じにくいからである。また、これらベース樹脂はトナーフィルミング防止にも効果的であり、これらの中でも特にポリカーボネートウレタンを用いるのが効果的である。また、体積抵抗率を高くしすぎない点からは、ポリカーボネートウレタン、アクリル−酢酸ビニル共重合体、もしくはアクリル変性ウレタンを用いるのが好ましい。これら化合物を用いることで、微粒子を含んだ表面層の摩擦帯電列がトナーに対してプラス側になり、電子が電荷担体となってトナーをマイナス帯電させる際に有利となる。また、その表面層近辺の水分がトナーの帯電機構に関与する際にも有利に働くとも考えられる。
【0016】
上記したポリカーボネートウレタンについて以下に説明する。ポリカーボネートウレタンはポリカーボネートポリオールとポリイソシアネートとの反応によって得られる化合物である。ポリカーボネートポリオールは、多価アルコールとホスゲン、クロル蟻酸エステル、ジアルキルカーボネートもしくはジアリルカーボネートとの縮合によって得られる材料である。多価アルコールとしては、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオールもしくは1,5−ペンタンジオールなどを用いるのが望ましく、ポリカーボネートポリオールの数平均分子量(Mn)は、約300〜15,000の範囲内にあることが望ましい。ポリカーボネートポリオールは、単独で使用されるのが好ましいが、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールもしくはポリエステル−ポリエーテルポリオールと併用することもできる。
【0017】
ポリカーボネートポリオールと反応するポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジオフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添MDI、水添TDIもしくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)などが使用される。これらの中でも、入手のし易さやコスト、現像ローラに要求される種々の特性などのバランスを考慮すると、水添MDIもしくはIPDIを用いるのが好ましい。また、鎖伸長剤としてグリコールやジアミンなどを使用することもできる。
【0018】
上記したアクリル−酢酸ビニル共重合体について以下に説明する。アクリル−酢酸ビニル共重合体は、アクリル酸エステルモノマーとメタアクリル酸エステルモノマーとの一方または双方、および酢酸ビニルを主原料とする共重合体であれば良い。非粘着性の点からは、アクリル酸エステルモノマーまたはメタアクリル酸エステルモノマーが重合成分中に50重量%以上、より好ましくは80重量%以上含有されているものを用いるのが好ましい。酢酸ビニルは、重合成分中3%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上含まれていることが、トナーのマイナス帯電を向上する点で望ましい。アクリル酸エステルモノマー成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルもしくはアクリル酸2−エチルヘキシルなどを用いることができるが、本発明ではこの限りではない。また、メタアクリル酸エステルモノマー成分としては、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチルもしくはメタアクリル酸ブチルなどを用いることができるが、本発明ではこの限りではない。
【0019】
上記したアクリル変性ウレタンについて以下に説明する。アクリル変性ウレタンには、ウレタン樹脂とアクリル樹脂とを化学的に反応させたものを用いることができるが、容易に反応が進むという点からは、水酸基を有したアクリル樹脂の水酸基とウレタン樹脂の水酸基とをジイソシアネートでウレタン化して結合させる方法によるものを用いるのが望ましい。
【0020】
さて、本発明に係る現像ローラは、上記した導電性シャフトの周りに導電性弾性層、この導電性弾性層の周りに前記表面層を順次積層して構成されることもできる。このような構成の場合に、導電性弾性層は、
(A)分子中に少なくとも1個のアルケニル基を含み、主鎖を構成する繰り返し単位が主にオキシアルキレン単位または飽和炭化水素系単位からなる重合体と、
(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含む硬化剤と、
(C)ヒドロシリル化触媒と、
(D)導電性付与剤と、
を主成分とする硬化性組成物の反応物から構成されることが望ましい。
【0021】
この硬化性組成物における(A)成分の重合体は(B)成分とヒドロシリル化反応して硬化する成分であり、分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するため、ヒドロシリル化反応が起こって高分子状になり硬化する。(A)成分に含まれるアルケニル基の数は、(B)成分とヒドロシリル化反応するという点から少なくとも1個必要であるが、ゴム弾性の点からは、直鎖状分子の場合は、分子の両末端に2個のアルケニル基が存在し、分岐のある分子の場合には、分子末端に2個以上のアルケニル基が存在することが望ましい。(A)成分の主鎖を構成する主な繰り返し単位はオキシアルキレン単位または飽和炭化水素単位である。
【0022】
主鎖を構成する主な繰り返し単位がオキシアルキレン単位からなる重合体の場合、少量の導電性付与剤を添加するだけで体積抵抗率が10〜10Ωcmとなるため好ましい。また、硬化物の低硬度化の観点からも、前記繰り返し単位がオキシアルキレン単位であるオキシアルキレン系重合体、さらには、前記繰り返し単位がオキシプロピレン単位であるオキシプロピレン系重合体が好ましい。
【0023】
ここで、前記オキシアルキレン系重合体とは、主鎖を構成する単位のうち30%以上、好ましくは50%以上がオキシアルキレン単位からなる重合体をいい、オキシアルキレン単位以外に含有される単位としては、重合体製造時の出発物質として使用される、活性水素を2個以上有する化合物、例えば、エチレングリコール、ビスフェノール系化合物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどからの単位が挙げられる。なお、オキシプロピレン系重合体の場合には、エチレンオキシド、ブチレンオキシドなどからなる単位との共重合体(グラフト共重合体も含む)であっても良い。
【0024】
上記のような(A)成分のオキシアルキレン系重合体の分子量としては、反応性および低硬度化のバランスをよくする観点から、数平均分子量(Mn)で500〜50,000、さらには1,000〜40,000であることが好ましい。特に、数平均分子量5,000以上のもの、さらには5,000〜40,000であるものが好ましい。数平均分子量が500未満の場合、この硬化性組成物を硬化させた場合に充分な機械的特性(ゴム硬度、伸び率)などが得られにくくなる。一方、数平均分子量があまりに大きくなりすぎると、分子中に含まれるアルケニル基1個あたりの分子量が大きくなったり、立体障害で反応性が落ちたりするため、硬化が不充分になることが多く、また、粘度が高くなりすぎて加工性が悪くなる傾向にある。
【0025】
前記オキシアルキレン系重合体が有するアルケニル基に特に制限はないが、下記一般式(1)、
【0026】
C=C(R)− (1)
(式中、Rは水素原子またはメチル基)
【0027】
で示されるアルケニル基が、硬化性に優れる点で特に好ましい。
【0028】
また、この硬化性組成物の特徴の一つは、低硬度化に設定しやすいことであり、この特徴を発揮させるにはアルケニル基の数は分子末端に2個以上が好ましく、(A)成分の分子量に比してアルケニル基の数が多くなりすぎると剛直になり、良好なゴム弾性が得られにくくなる。
【0029】
また、(A)成分が、主鎖を構成する主な繰り返し単位が飽和炭化水素単位である重合体の場合は、低吸水率であり、電気抵抗の環境変動が小さく好ましい。この重合体の場合も、前記オキシアルキレン系重合体の場合と同様に、(B)成分とヒドロシリル化反応して硬化する成分であり、分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するため、ヒドロシリル化反応が起こって高分子状になり硬化するものであり、(A)成分に含まれるアルケニル基の数は、(B)成分とヒドロシリル化反応するという点から少なくとも1個必要であるが、ゴム弾性の点からは、直鎖状分子の場合は、分子の両末端に2個存在することが好ましく、分岐を有する分子の場合には、分子末端に2個以上存在することが好ましい。
【0030】
前記主鎖を構成する主な繰り返し単位が飽和炭化水素単位である重合体の代表的な例としては、イソブチレン系重合体、水添イソプレン系重合体、水添ブタジエン系重合体が挙げられる。これら重合体は、共重合体などの他成分の繰り返し単位を含むものであっても構わないが、少なくとも飽和炭化水素単位を50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上含有することが、飽和炭化水素系の、吸水率が低いという特徴を損なわないようにするうえで重要である。
【0031】
この主鎖を構成する主な繰り返し単位が飽和炭化水素単位である(A)成分の重合体の分子量としては、取り扱い易さなどの点から、数平均分子量(Mn)で500〜50,000程度、さらには1,000〜15,000程度であって、常温において液状物で流動性を有するものが加工性の点で好ましい。
【0032】
この飽和炭化水素系重合体に導入されるアルケニル基については、前記オキシアルキレン系重合体の場合と同様である。
【0033】
したがって、(A)成分としての、分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する主な繰り返し単位が飽和炭化水素系である重合体の好ましい具体例としては、両末端にアルケニル基を2個有する直鎖状の数平均分子量(Mn)が2,000〜15,000でMw(重量平均分子量)/Mnが1.1〜1.2のポリイソブチレン系、水添ポリブタジエン系、水添ポリイソプレン系重合体などが挙げられる。
【0034】
また、硬化性組成物中の(B)成分は、分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物であるかぎり特に制限はないが、分子中に含まれるヒドロシリル基の数が多すぎると硬化後も多量のヒドロシリル基が硬化物中に残存しやすくなり、ボイドやクラックの原因になるため、分子中に含まれるヒドロシリル基の数は50個以下がよい。さらには2〜30個、より好ましくは2〜20個であることが、硬化物のゴム弾性のコントロールや貯蔵安定性の点から好ましく、さらに、硬化時の発泡を容易に防ぐ点では、20個以下、ヒドロシリル基が失活しても硬化不良が発生しにくい点では3個が好ましく、最も好ましい範囲は3〜20個である。
【0035】
なお、本発明で、前記ヒドロシリル基を1個有するとは、Siに結合するHを1個有することをいい、SiHの場合にはヒドロシリル基を2個有することになるが、Siに結合するHは異なるSiに結合する方が硬化性が良く、ゴム弾性の点からも好ましい。
【0036】
(B)成分の分子量は、後述する導電性付与剤((D)成分)を添加する場合の分散性やローラー加工性などの点から数平均分子量(Mn)で30,000以下であるのが好ましく、さらには20,000以下、特には15,000以下が好ましい。(A)成分との反応性や相溶性まで考慮すると300〜10,000が好ましい。
【0037】
この(B)成分に関しては、(A)成分の凝集力が(B)成分の凝集力に比べて大きいために、相溶性の点でフェニル基含有変性が重要であり、(A)成分との相溶性、入手のしやすさの点でスチレン変性体などが好ましく、貯蔵安定性の点からα−メチルスチレン変性体が好ましい。
【0038】
(C)成分であるヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化触媒として使用しうるものである限り特に制限はない。白金単体、アルミナなどの単体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸(アルコールなどの錯体も含む)、白金の各種錯体、ロジウム、ルテニウム、鉄、アルミニウム、チタンなどの金属の塩化物などが挙げられる。これらの中でも、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフイン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体が望ましい。これらの触媒は単独で使用しても良く、また2種以上併用してもよい。
【0039】
以上のような硬化性組成物中の(A)成分および(B)成分の使用割合は、(A)成分中のアルケニル基1モル当たり(B)成分中のヒドロシリル基が0.2〜5.0モル、さらには0.4〜2.5モルがゴム弾性の点から好ましい。
【0040】
また、(C)成分の使用量としては、(A)成分中のアルケニル基1モルに対して10−1〜10−8モル、さらには10−1〜10−6モル、特には10−3〜10−6モルの範囲で用いるのが好ましい。(C)成分の使用量が10−8モルに満たないと反応が進行しない。その一方で、ヒドロシリル化触媒は、一般に高価で、また腐食性を有し、しかも水素ガスが大量に発生して硬化物が発泡してしまう性質を有しているので、10−1モルを超えて用いない方が好ましい。
【0041】
さらに、上記のような硬化性組成物に、(D)成分として導電性付与剤を添加して導電性組成物とすれば、現像ローラとして好適である。この(D)成分の導電性付与剤としては、カーボンブラックや、金属微粉末、さらには第4級アンモニウム塩基、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基などを有する有機化合物もしくは重合体、エーテルエステルアミド、もしくはエーテルイミド重合体、エチレンオキサイド−エピハロヒドリン共重合体、メトキシポリエチレングリコールアクリレートなどで代表される導電性ユニットを有する化合物、または高分子化合物などの帯電防止剤などの、導電性を付与できる化合物などが挙げられる。これらの導電性付与剤は、単独で使用しても、また、2種以上を併用してもかまわない。
【0042】
(D)成分である導電性付与剤の添加量は、(A)〜(C)成分の合計量に対して30重量%以下とすることが、ゴム硬度を上げない点から好ましい。一方、均一な抵抗を得る点からは10重量%以上が好ましく、必要なゴム硬度と、硬化物の体積抵抗率が10〜1010Ωcmになるように、その物性バランスから添加量を決めればよい。
【0043】
さらに、上記硬化性組成物には、上記(A)〜(D)成分の他、貯蔵安定性改良剤、例えば、脂肪族不飽和結合を有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、チッソ含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物などを加えてもよい。その具体例としては、例えば、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、ジメチルアセチレンカルボキシレート、2−ペンテンニトリル、2,3−ジクロロプロペン、キノリンなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの中では、ポットライフおよび速硬化性の両立という点から、チアゾール、ジメチルマレートが特に好ましい。なお、前記貯蔵安定性改良剤は、単独で用いても良く、また、2種以上併用しても良い。
【0044】
また、上記硬化性組成物には、加工性やコストを改善するための充填剤、保存安定剤、可塑剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料などを添加しても良い。
【0045】
本発明に係る現像ローラは、上記のような硬化性組成物、その他、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、EP系ゴムなどの弾性材料を、例えば、中心にSUS製などの金属シャフトなどからなる導電性支持体を設置した金型に注型、射出、押出成形などをし、適当な温度、時間で加熱硬化させることによって、支持体にまわりに弾性層を形成する。この場合、半硬化後、後硬化させてもよい。また、2層以上の構造の場合、導電性ゴム層の上から、表面層を構成する樹脂をスプレー塗布、ディップ塗布などにより所定の厚みに塗布し、所定の温度で乾燥、硬化させることにより、本発明の現像ローラが得られる。
【0046】
【実施例】
さて、以下に、本発明に係る現像ローラの具体的な実施例1〜10と比較例1〜4の構成を詳細に説明した後に、これら現像ローラと比較例との比較を行う。
【0047】
実施例1〜10および比較例1〜4は2種類の構成に分けられる。第1の構成は、直径10mmのSUS製シャフトの周りに弾性層を同心円状に設けたものであり、実施例1と比較例4がこの構成に該当する。第2の構成は、直径10mmのSUS製シャフトの周りに弾性層を同心円状に設け、この弾性層の外周に表面層を被覆したものであり、実施例2〜10と比較例1〜3がこの構成に該当する。
【0048】
前記弾性層には、以下に示す弾性層1〜5のうち何れかを選別して用いる。
【0049】
(弾性層1)
(A−1)数平均分子量(Mn)8,000、分子量分布2の末端アリル化ポリオキシプロピレン系重合体:100重量部に対して、
(B−1)ポリシロキサン系硬化剤(SiH価0.36モル/100g):6.6重量部、
(C)塩化白金酸の10%イソプロピルアルコール溶液:0.06重量部、
(D−1)カーボンブラック3030B(三菱化学製):7重量部、
を混合し、減圧(10mmHg以下、120分)脱泡し、得られた組成物を前記シャフトの周りに被覆し、金型内120℃の環境下で30分間静置して硬化させ、厚さ7.5mmの導電性弾性層1を作製した。JIS K 6301 A法に記載された方法に準じて測定した弾性層のみのJIS A 硬度は15°であった。
【0050】
(弾性層2)
(A−2)数平均分子量(Mn)10,000の末端にビニル基を2個有するポリイソブチレン重合体:100重量部、
(B−2)ポリシロキサン系硬化剤(SiH価0.97モル/100g):2.7重量部、
(C)塩化白金酸の10%イソプロピルアルコール溶液:0.06重量部、
(D−2)カーボンブラック3030B(三菱化学製):10重量部、
(その他)可塑剤PS−32(出光興産製):75重量部、
からなる組成物を、前記シャフトの周りに被覆し、金型内120℃の環境下で30分間静置して硬化させ、厚さ7.5mmの導電性弾性層2を作製した。JISK 6301 A法に記載された方法に準じて測定した弾性層のみのJIS A 硬度は15°であった。
【0051】
(弾性層3)
(1)C−4190(日本ポリウレタン製)であって、主鎖がポリエーテルでNCO含量4.5%、75℃環境下での粘度が700cP(センチポアズ)のもの:100重量部、
(2)4,4’メチレン−ビス−2クロロアニリン:12.9重量部、
(3)ケッチェンブラックEC:0.8重量部、
からなる組成物を前記シャフトの周りに被覆し、金型内80℃の環境下で5時間静置して硬化させ、厚さ7.5mmの導電性弾性層3を作製した。JIS K 6301 A法に記載された方法に準じて測定した弾性層のみのJIS A 硬度は78°であった。
【0052】
(弾性層4)
(A−1)数平均分子量(Mn)8,000、分子量分布2の末端アリル化ポリオキシプロピレン系重合体:100重量部に対して、
(B−1)ポリシロキサン系硬化剤(SiH価0.36モル/100g):6.6重量部、
(C)塩化白金酸の10%イソプロピルアルコール溶液:0.06重量部、
(P−1)pHが5.0のカーボンブラック微粒子:20重量部、
を混合し、減圧(10mmHg以下、120分)脱泡し、得られた組成物を前記シャフトの周りに被覆し、金型内120℃の環境下で30分間静置して硬化させ、厚さ7.5mmの導電性弾性層4を作製した。JIS K 6301 A法に記載された方法に準じて測定した弾性層のみのJIS A 硬度は18°であった。
【0053】
(弾性層5)
(A−1)数平均分子量(Mn)8,000、分子量分布2の末端アリル化ポリオキシプロピレン系重合体:100重量部に対して、
(B−1)ポリシロキサン系硬化剤(SiH価0.36モル/100g):6.6重量部、
(C)塩化白金酸の10%イソプロピルアルコール溶液:0.06重量部、
(P−2)pHが6.5のカーボンブラック微粒子:20重量部、
を混合し、減圧(10mmHg以下、120分)脱泡し、得られた組成物を前記シャフトの周りに被覆し、金型内120℃の環境下で30分間静置して硬化させ、厚さ7.5mmの導電性弾性層5を作製した。JIS K 6301 A法に記載された方法に準じて測定した弾性層のみのJIS A 硬度は20°であった。
【0054】
実施例1と比較例4の現像ローラは、それぞれ弾性層4と弾性層5を前記シャフトの周りに設けて構成される。これら弾性層には、所定のpHをもつカーボンブラック微粒子が均一に添加されており、導電性付与機能および帯電性付与機能をもたせている。一方、実施例2〜10および比較例1〜3の現像ローラは、弾性層1〜3のうち何れかの弾性層を前記シャフトの周りに設けた後、この弾性層の外周に、所定のpHをもつ微粒子を均一に分散されたベース樹脂をディップ塗布して構成される。これら微粒子のpHは、微粒子に表面処理などの加工を行うことで調整することができる。表1に、実施例1〜10および比較例1〜4の構成をまとめて示す。また、表1には、後述する印字テストの20℃65%RH環境下での評価結果も示している。
【0055】
【表1】
Figure 0003572905
【0056】
表1に記載のベース樹脂には、ポリカーボネートウレタン:E−980(日本ミラクトラン製)、アクリル−酢酸ビニル共重合体:L−DBF(鐘淵化学工業製)、アクリル変性ウレタン:タケラックUV−1070(武田薬品化学工業製)、フッ素系:セフラルソフトG−180Y(セントラル硝子製)を用いた。
【0057】
このような実施例1〜10と比較例1〜4に対して黒ベタでの印字テストを行い、この評価結果を表1と以下に示す表2とに表示した。なお、表2に示す実施例2、実施例7および比較例1の構成は、表1の構成と同一である。
【0058】
【表2】
Figure 0003572905
【0059】
テストの評価基準としては、マクベス濃度を採用し、この測定結果をA〜Eの5段階で評価した。なお、帯電性の尺度として100枚目のマクベス濃度と、トナー割れの尺度として1000枚目のマクベス濃度とで評価を分けている。この評価基準は、A:マクベス濃度が1.4 以上、B:マクベス濃度が1.35以上1.4 未満、C:マクベス濃度が1.30以上1.35未満、D:マクベス濃度が1.30未満で白ヌケなし、E:マクベス濃度が1.30未満で白ヌケあり、である。
【0060】
表1によれば、表面層に含有される微粒子のpHが5以下である現像ローラでは、すべてにおいて評価がB〜C以上の良好な結果が得られている。特に、弾性層の周りに表面層を被覆した現像ローラであって、この表面層のベース樹脂がポリカーボネートウレタン、アクリル変性ウレタンまたはアクリル−酢酸ビニル共重合体であるものは、すべて評価がB以上の結果を得ており、このような表面層をもつ現像ローラが、トナーの帯電性およびトナー割れに対して、極めて効果的であることが分かる。
【0061】
また、表2は、高湿度環境下での効果を確かめるために、35℃85%RH環境下でのトナー印字テストの評価結果を示したものである。これによれば、実施例2と実施例7は、表1の結果と比べると、やや評価が落ちているが、それでもこの評価は、表1の比較例1〜4および表2の比較例1の結果と比べて、トナー帯電性およびトナー割れに対して優れたものであることが明確に分かる。
【0062】
【発明の効果】
上述の如く、本発明の現像ローラによれば、表面層中にpHが5以下の微粒子を含んでいるので、従来よりもトナーの帯電性が向上し、鮮明なトナー像を得ることできて、画像濃度を向上させることができる。この現像ローラにより、特に高湿度環境下でのトナーの帯電量増加に効果的となる。また、表面層の主要成分100重量部に対して前記微粒子が30重量部含まれるように調整することで、現像ローラ表面の硬度が高くなりすぎて生ずるトナー割れを防止することができる。
【0063】
さらに、表面層の主要成分に、ポリカーボネートウレタン、アクリル−酢酸ビニル共重合体およびアクリル変性ウレタンのうち少なくとも一つを用いるようにすることで、柔軟な弾性を保ちつつトナーフィルミングの生じにくい、ローラ抵抗の環境変動が少なく耐久性の高い現像ローラを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の現像ローラとその周辺構造とを示す説明図。
【符号の説明】
1 現像ローラ
2 導電性シャフト
3 導電性弾性層
4 表面層
5 感光体
6 トナー容器
7 トナー
8 供給ローラ
9 規制ブレード

Claims (5)

  1. 中心軸に導電性シャフトを配し、該導電性シャフトの周りに導電性弾性層、該導電性弾性層上に前記表面層を同心円状に順次積層して構成される現像ローラにおいて、表面層の主要成分として、ポリカーボネートウレタン、アクリル−酢酸ビニル共重合体およびアクリル変性ウレタンのうち少なくとも一つを用い、表面層中にpHが5以下の微粒子が含有されていることを特徴とする現像ローラ。
  2. 前記微粒子が、表面層中に該表面層の主要成分の100重量部に対して30重量部以下含まれる請求項1記載の現像ローラ。
  3. 前記微粒子として、コロイダルシリカとカーボンブラックとの少なくとも一方を用いる請求項1または請求項2記載の現像ローラ。
  4. pHが3.5以下の微粒子を用いる請求項3記載の現像ローラ。
  5. 前記導電性弾性層が、(A)分子中に少なくとも1個のアルケニル基を含み、主鎖を構成する繰り返し単位が主にオキシアルキレン単位または飽和炭化水素系単位からなる重合体と、(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含む硬化剤と、(C)ヒドロシリル化触媒と、(D)導電性付与剤と、を主成分とする硬化性組成物の反応物から構成される請求項1〜4のいずれかに記載の現像ローラ。
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