JP3572562B2 - ワンタッチ継手およびそれを用いたコンクリートユニット - Google Patents

ワンタッチ継手およびそれを用いたコンクリートユニット Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
例えば、トンネル等の土木構造物やビル等の建築物等を構築するに際し、セグメントやカーテンウォール等の各種コンクリートユニットどうしを接合するのに好適なワンタッチ継手およびそれを用いたコンクリートユニットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
物体どうしを接合するための技術としては、接着,溶着,溶接,ボルト・ナット等の締結部材を用いるものや、各種のワンタッチ継手等、多種多様のものがあり、これらの技術のうち、接合する物体の材質,必要とされる接合強度,コスト等に応じて、最適のものが選択されて採用されている。
【0003】
ところで、土木建築分野においては、例えばトンネルやビル等の土木構造物や建築物を構築するに際して、施工の工業化を図るために、セグメントやカーテンウォール等の各種コンクリートユニットが多用されている。
【0004】
ここで、トンネル覆工用のセグメントを例にとって考えてみると、従来、トンネルの長さ方向または周方向において互いに隣接するセグメントどうしは、ボルト・ナットで接合する継手構造が用いられていた。しかし、ボルト・ナットの締付け作業は人力で行わなければならないため、能率が悪く時間がかかるものとなっていた。
【0005】
そこで近年では、さらなる施工の工業化・効率化を図るために、従来のボルト・ナットに替えて、ワンタッチでセグメントどうしを接合することのできるワンタッチ継手が開発されている。
【0006】
このようなワンタッチ継手としては、例えば実公昭62−4632号の技術がある。
これは、図17に示すように、一方のセグメントS1の端部にピン1が設けられ、他方のセグメントS2の端部にピン穴2が設けられた構成となっている。ピン穴2には、その入り口近傍に、外周縁部3aと、その内側に形成された中央部3bとからなるバネ鋼板3が設けられている。バネ鋼板3の中央部3bには、放射状の切目が形成されており、これによって周方向に複数の爪5が形成された構成となっている。これらの爪5は、ピン穴2の奥側に向けて傾斜して形成されており、さらにこれらの爪5の先端部で囲まれた空間の径は、ピン1の外径よりも所定寸法小径とされている。
【0007】
そして、このようなワンタッチ継手では、ピン穴2にピン1を挿入することによって、セグメントS1,S2を接合するようになっている。ピン穴2にピン1を挿入すると、各爪5はピン穴2の奥側に傾斜しているので、ピン1の挿入を容易に行うことができるようになっている。また、図18に示すように、爪5はピン1の挿入によってピン穴2の奥側に向けて押し込まれて変形するので、ピン1の挿入が完了した状態においては、ピン1がピン穴2から抜ける方向に移動しようとすると、各爪5の先端部がピン1の外周面にくい付き、ピン1が抜けるのを阻止するようになっている。このようにして、上記ワンタッチ継手では、ピン1をピン穴2に挿入するのみで、一方のセグメントS1と他方のセグメントS2をワンタッチで接合できる構造となっている。
【0008】
また、他のワンタッチ継手として、例えば、特開平8−284921号に示すような技術もある。
これは、図19に示すように、一方のセグメントS1’にピン11が設けられ、他方のセグメントS2’にピン穴12が設けられた構成となっている。
ピン穴12は、ハウジング13がセグメントS2’に埋設され、その内部に、複数の係止板14,14,…が、ハウジング13の軸線方向に沿って積層された状態で配設されている。これらの係止板14は、環状で中心部には穴が形成され、かつその中心にいくに従い、ハウジング13の奥側に向けて傾斜するよう形成されている。また、各係止板14には、前記バネ鋼板3と同様、放射状の切目が形成されてこれによって周方向に複数の爪15が形成されている。そして、ハウジング13の奥には、蓋体16が取り付けられており、この蓋体16によって、係止板14,14,…がその外周縁部において固定されている。
【0009】
このようなワンタッチ継手では、ピン穴12にピン11を挿入することによって、セグメントS1’,S2’を接合するようになっている。ピン穴12にピン11を挿入すると、係止板14の爪15は、その先端部がピン穴12の奥側に向けて傾斜しているので、ピン11の挿入を容易に行うことができ、またピン11の挿入が完了した状態においては、各爪15の先端部がピン11の外周面にくい付くようにして引き抜き抵抗力を発揮し、ピン11が抜けるのを阻止するようになっている。このようにして、上記ワンタッチ継手においても、ピン11をピン穴12に挿入するのみで、一方のセグメントS1’と他方のセグメントS2’をワンタッチで接合できる構造となっている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来のワンタッチ継手およびそれを用いたコンクリートユニットには、以下のような問題が存在する。
まず、図18に示したようなワンタッチ継手では、セグメントS1,S2を接合するため、ピン1をピン穴2に挿入していったときに、バネ鋼板3の爪5は、その基部5a、すなわち外周縁部3aと中央部3bとの境目の部分を支点として撓む。ところが、爪5は、この支点からの長さが、ピン1の直径に対して長いために撓み量が大きく、ピン1の挿入後にピン1を引き抜く方向の力が作用した場合、このときにも爪5は撓みを生じてしまい、引き抜き抵抗力を即座に発揮することができない。すると、セグメントS1,S2の接合後に、これらの間にギャップ(隙間)が生じてしまうという問題がある。さらに、ピン1に対する引き抜き抵抗力を、バネ鋼板3一枚のみで有効に発揮するには、このバネ鋼板3に高い強度が要求されるために、バネ鋼板3を製造するための加工が面倒なものとなるとともに、コストが上昇するという問題もある。加えて、バネ鋼板3の強度が高まれば、ピン1の挿入時の抵抗も大きくなるため、挿入時に用いるジャッキ等に強力なものが必要となる等、これによってもコストの上昇を招く。
【0011】
また、図19に示したようなワンタッチ継手では、ピン11を挿入していくと、ハウジング13内の全ての係止板14がピン穴12の奥側に向けて一体に変形するため、ピン11の引き抜き力に対しても引き抜き抵抗力を即座に発揮することができる。しかも、係止板14が複数枚備えられているので、一枚一枚の係止板14には、前記バネ鋼板3(図18参照)に比較すれば要求される強度が低く、その製造を容易に行うことができる。しかし、ピン11の挿入時には、全ての係止板14が、その外周縁部の蓋体16と当接している部分を支点として、ピン穴12の奥側に向けて「一斉」に変形するため、ピン11の挿入に必要な力が大きくなる。したがって、このようなワンタッチ継手においても、挿入時に用いるジャッキ等に強力なものが必要となる等して、コストの上昇を招いている。
【0012】
さらに、図17、図19に示したいずれのワンタッチ継手においても、爪5,15が傾斜するよう形成されているため、バネ鋼板3,係止板14が立体的な形状となり、これによっても製造時の加工コストの上昇を招くという問題もある。
【0013】
加えて、ピン1,11の挿入時に、ピン1,11がピン穴2,12の中心軸線に対して斜めに前進してきた場合、図17に示したピン穴2では、その進行方向を規制したり、修正することができず、そのまま斜めに挿入されてしまうために、セグメントS1,S2を密着させることができなくなってしまう。また、図19に示したピン穴12では、斜めに前進してきたピン11を係止板14,14,…によって形成されている空間内に受け入れることすらできない。このため、セグメントS1’の押出方向を高い精度で制御しなければならず、これによっても施工の手間がかかってしまう。
【0014】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、例えばセグメントやカーテンウォールのようなコンクリートユニット等、物体どうしを、ワンタッチで、しかも容易かつ確実に接合することができ、さらにコストを抑えることのできるワンタッチ継手およびそれを用いたコンクリートユニットを提供することを課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、ピンと、このピンが挿入されるピン穴とからなるワンタッチ継手であって、前記ピン穴は、前記ピンに嵌合する嵌合部がハウジング内に設けられた構成とされて、前記嵌合部は、薄い平型リング状でその内径が前記ピンの外径よりも定められた寸法小径とされた嵌合部材と、薄い平型リング状でその内径が前記嵌合部材の内径よりも定められた寸法大径とされたスペーサとが、前記ピンが挿入される方向に沿って互いに前後するよう複数組設けられていることを特徴としている。
【0016】
請求項2に係る発明は、請求項1記載のワンタッチ継手において、前記ハウジングの内径が、前記嵌合部材およびスペーサの外径よりも定められた寸法大径とされて、前記嵌合部材およびスペーサが、前記ハウジング内で前記ピンの挿入方向に直交する方向に移動可能とされていることを特徴としている。
【0017】
請求項3に係る発明は、請求項1または2記載のワンタッチ継手において、前記ピンが前記ピン穴内に挿入されたときに、前記ピンの略全長にわたって前記嵌合部材が嵌合するよう前記嵌合部が配設されていることを特徴としている。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のワンタッチ継手において、前記ハウジングには、前記ピン穴の奥側に押さえ部材が設けられ、該押さえ部材によって、前記嵌合部材と前記スペーサとが前記ピン穴の奥側に向けて移動するのを阻止する構成となっていることを特徴としている。
【0019】
請求項5に係る発明は、コンクリートユニットの一方の端部にピンが設けられ、他方の端部にピン穴が設けられ、前記ピン穴は、前記ピンに嵌合する嵌合部がハウジング内に設けられた構成とされて、前記嵌合部は、薄い平型リング状でその内径が前記ピンの外径よりも定められた寸法小径とされた嵌合金具と、薄い平型リング状でその内径が前記嵌合金具の内径よりも定められた寸法大径とされたスペーサとが、前記ピンが挿入される方向に沿って互いに前後するよう複数組設けられていることを特徴としている。
【0020】
請求項6に係る発明は、請求項5記載のコンクリートユニットにおいて、前記ハウジングの内径が、前記嵌合金具およびスペーサの外径よりも定められた寸法大径とされて、前記嵌合金具およびスペーサが、前記ハウジング内で前記ピンの挿入方向に直交する方向に移動可能とされていることを特徴としている。
【0021】
請求項7に係る発明は、請求項5または6記載のコンクリートユニットにおいて、前記コンクリートユニットが、トンネル覆工用のセグメントであることを特徴としている。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るワンタッチ継手の実施の形態の一例を、図1ないし図16を参照して説明する。
【0023】
図1および図2に示すように、各セグメントAには、シールド工法で構築していくトンネルTの延長方向において、一方の端面(例えば掘進方向前方側の端面)に、ピン21が複数(例えば2本)設けられ、他方の端面(例えば掘進方向後方側の端面)にピン穴22がピン21と同数設けられた概略構成となっている。
【0024】
図2に示すように、ピン21は、例えばボルト用の鋼材からなり、断面視円形で、その基端部21aが、例えばアンカー筋24と一体にセグメントAに埋設されたハウジング25にねじ込まれている。また、ピン21の先端部21bは、その角部が面取りされている。
【0025】
一方、図2および図3に示すように、ピン穴22は、アンカー筋27と一体にセグメントAに埋設されたハウジング28と、このハウジング28内に設けられた嵌合部29とから概略構成されている。
【0026】
ハウジング28は、略円筒状で、セグメントAの端面に露出した先端部28aには内周側に張り出すフランジ28bが形成されている。このフランジ28bは、セグメントAの端面に露出している側の内周縁部が面取りまたはR加工されている。
【0027】
また、ハウジング28の基部28c側には蓋体(押さえ部材)30が取り付けられており、この蓋体30によって、ハウジング28が塞がれている。
【0028】
嵌合部29は、複数枚の嵌合金具(嵌合部材)31とスペーサ32とが、ハウジング28の軸線方向、すなわちピン21の挿入方向に沿って、交互に配設されている。
【0029】
これらの嵌合金具31とスペーサ32とは、ハウジング28のフランジ部28cと蓋体30とによって、ハウジング28内でその軸線方向に移動しないよう挟持されている。さらに、これら嵌合金具31とスペーサ32は、その外径が、ハウジング28の内径よりも所定寸法、例えば4mm程度、小さな寸法とされており、これによってこれらはハウジング28内でその軸線と直交する方向に移動可能となっている。
【0030】
図4に示すように、嵌合金具31は、例えば厚さ1.2mm程度のSK材等からなる板材を打ち抜いて形成したもので、湾曲等のない薄い平型とされている。この嵌合金具31の中央部には孔33が形成されている。孔33は、ピン21の外径を例えば30mmとした場合、その内径が例えば29.0〜29.5mm程度とされている。さらに、嵌合金具31には、孔33から放射状に延びる複数の切り込み34が形成されて、これによって孔33の外周側には複数の爪35が形成された構成となっている。
【0031】
図5に示すように、スペーサ32は、例えば厚さ1.2mm程度の厚さのSS400材等からなる板材を打ち抜いて形成したもので、その中央部には、例えば内径33.5mm程度の孔36が形成されている。
【0032】
これにより、図3に示したように、前記嵌合金具31の各爪35は、スペーサ32に対し、内方に向けて2〜2.25mm程度突出するようになっている。
【0033】
図6および図7に示すように、このようなピン21とピン穴22とをそれぞれ備えたセグメントA,Aどうしを接合するには、一方のセグメントA側のピン穴22に、他方のセグメントA側のピン21を挿入させる。
【0034】
すると、図6に示したように、ピン21の挿入に伴って、嵌合金具31,31,…の爪35が、ピン穴22の入り口のものから順次「一枚ずつ」奥側に向けて変形していく。このときの爪35の変形は、スペーサ32の内周縁部32aを支点とすることとなる。
【0035】
また、図8に示すように、ピン21が、ピン穴22の軸線に対して斜めに挿入された場合には、ピン21に押されて嵌合金具31とスペーサ32とがハウジング28内で軸線と直交する方向に移動することによって、これを許容できるようになっている。そして、嵌合金具31がハウジング28の内壁に当接すると、この位置よりも奥側の嵌合金具31は同様にそれ以上移動できないため、これによって、ピン21の挿入方向が自然と矯正されていくこととなる。
【0036】
そして、上記のようにしてピン21をピン穴22に挿入していき、図7に示したように、双方のセグメントA,Aの端面どうしが当接すると、この時点でピン21の挿入が完了する。この状態では、嵌合部29の全ての嵌合金具31がピン21のほぼ全長にわたって嵌合した状態となる。
【0037】
このようにピン21がピン穴22に挿入されることによって互いに接合されたセグメントA,Aは、引張力に対しては、全ての嵌合金具31の爪35が、ピン31にくい込むようにしてこれを締め付けることによって、引き抜き抵抗力を発揮する。このときに、各爪35は、スペーサ32の内周縁部32aを支点として変形するので、この支点から爪35の先端部までの寸法(撓み量)が小さく、引き抜き力が作用したときには、直ちに引き抜き抵抗力を発揮するようになっている。
【0038】
上記継手構造を有したセグメントAを組み付けるに際しては、図9に示すように、例えば、シールド掘削機38の推進ジャッキ39を用いる。
すなわち、図示しない組み付け装置等で所定の位置に保持したセグメントA1を、推進ジャッキ39の伸長により、先に組付けの完了したセグメントA2に向けて押し出す。そして先に組み付けたセグメントA2のピン穴22に、推進ジャッキ39で押し出したセグメントA2のピン21を挿入することによって、セグメントA1,A2を接合する。
【0039】
上述したセグメントAの継手構造では、互いに接合されるセグメントA,Aの、一方のセグメントAの端面にピン21が突設され、他方のセグメントAの端面にピン穴22が形成され、ピン穴22の嵌合部29には多数の嵌合金具31が備えられて、この嵌合金具31とピン21とが嵌合する構成となっている。これにより、セグメントAを組み付けるに際しては、組み付けるべきセグメントAのピン21を、先に組み付けの完了したセグメントAのピン穴22に単に挿入するのみで、ピン21とピン穴22とが嵌合して、セグメントA,Aどうしを密に接合することができる。このようにして、従来のようにボルト・ナットを用いることなく、セグメントA,Aどうしをワンタッチで容易かつ確実に、さらに均一に接合することができるので、工期の短縮化およびセグメント継手部の品質向上を図ることができる。
【0040】
また、このような継手構造では、ピン21の挿入時には、ピン穴22の嵌合金具31が順次一枚ずつ変形していくので、小さな押し込み力で挿入することができる。そして、ピン21を挿入した後においては、全ての嵌合金具31によって引き抜き抵抗力を発揮するので、大きな引き抜き抵抗力を発揮することができる。例えば、ピン21,嵌合金具31,スペーサ32に前記したような材質、寸法のものを用いた場合、ピン21の挿入に必要な押し込み力は4t程度で済み、これに対してピン21を挿入した後の引き抜き抵抗力は9〜10tも発揮することができる。
【0041】
しかも、各嵌合金具31において、爪35は、スペーサ32の内周縁部32aを支点として変形するようになっており、しかも嵌合金具31とスペーサ32の内径の差が例えば4〜4.5mmに設定されることによって、前記支点から爪35の先端部までが2〜2.25mm程度に設定されているので、爪35の撓み量が、図18に示したような従来の爪5よりも大幅に小さくなっている。これにより、ピン21を引き抜く方向の力が作用した場合に、直ちに引き抜き抵抗力を発揮することができ、したがって、接合したセグメントA,A間に間隙が生じるのを防止することができる。
【0042】
そして、これらの嵌合金具31とスペーサ32は、ハウジング28と蓋体30との間で挟み込む構成となっている。これによってピン21の挿入時には、これら嵌合金具31とスペーサ32が奥に押し込まれるのを防止することができる。さらに加えれば、蓋体30は、一番奥のスペーサ32のほぼ全面に当接するようになっているので、上記効果はより一層顕著なものとなる。
しかも、製造時には、ハウジング28内に嵌合金具31とスペーサ32を所定枚数入れ、蓋体30をねじ込むのみでよいので、この点においても製造を容易かつ低コストで行うことができる。
【0043】
さらに、ピン穴22の嵌合金具31が、ピン21のほぼ全長にわたるよう設けられた構成となっている。これにより、ピン21の挿入時にはこれらの嵌合金具31がガイドとなり、挿入作業を容易に行うことができる。
【0044】
加えて、ハウジング28の内周面と、嵌合金具31およびスペーサ32の外周面との間には隙間が形成された構成となっている。これによって、ピン21が斜めに挿入された場合にもこれに対応することができるだけでなく、その挿入方向を矯正することができる。これによって、セグメントA,Aの接合作業時に、芯合わせの精度、および押出方向の精度が低くてもこれに対応することができ、作業の容易化を図ることができる。
【0045】
また、嵌合金具31が爪35を含めて平型とされており、従来のバネ鋼板3(図18参照)や係止板14(図19参照)のような立体形状ではないため、大量生産することができ、低コスト化を図ることができる。
【0046】
これ以外にも、上記実施の形態では、シールド掘削機38の推進ジャッキ39でセグメントAを押すことによって、これを先に組み付けの完了したセグメントAに接合するようにしたので、セグメントAの組み付け作業の自動化を図り、作業人員を低減させることもできる。
【0047】
なお、上記実施の形態において、ピン21やピン穴22を構成する部材の材質,外径寸法,数等については、本願発明の主旨を逸脱しない範囲内であれば、適宜最適なものを採用すればよいのであって、上記に挙げたものに何ら拘束されるものではない。例えば、嵌合金具31については、その枚数を増減することによって、引き抜き抵抗力を容易に変化させることができるので、必要とされる引き抜き抵抗力に対応させて、その枚数を増減させればよい。また、これら嵌合金具31をピン21の全長にわたって設けなくとも、例えば一部のみに設けるようにしてもよい。
【0048】
ピン穴22の構造についても、例えば、図10に示すように、嵌合金具31’を二枚一対とし、これら二枚一対の嵌合金具31’とスペーサ32とを交互に配置するようにしてもよい。このようにすれば、ピン21(図7参照)に嵌合する嵌合金具31’の数が増えるので、引き抜き抵抗力をその分だけ増加させることができる。
また、例えば、図11に示すように、嵌合金具31”とスペーサ32”とを一体化した嵌合部材40を作り、この嵌合部材40を用いる構成としても上記と同様の効果が得られ、さらには部品点数の削減を図ることができる。さらに、図12に示すように、嵌合部材40(図11参照)の半分程度の厚さの嵌合部材40’を作り、これら嵌合部材40’を交互に背中合わせにして配置する構成としてもよい。このような構成とすれば、図10に示した構成と同様に、引き抜き抵抗力の増強を図ることができる。
【0049】
また、ピン21の取付構造においても、ハウジング25にアンカー筋24を取り付ける構成としたが、アンカー筋24に代えて、例えば図13に示すように、ハウジング25’に外周に張り出すフランジ41を設けたり、図14に示すように、ハウジング25に鉄板などの板材42を取り付けたりしてもよい。このような構成は、図示はしないが、ピン穴22側のハウジング28(図2参照)においても、同様に適用できる。
さらに、ピン21にハウジング25を設けなくとも、例えば、図15に示すように、ピン21に、外周面に凹凸のある鋼棒(いわゆるD鋼棒等)43を直接溶接するようにしてもよいし、また図16に示すように、ピン21よりも大径の鋼棒44の中心部に孔45をあけ、この孔45にピン21を取り付ける構成としてもよい。
【0050】
また、上記実施の形態において、セグメントA自体についても上記のものに限定するものではなく、その外形形状や材質を何ら問うものではない。
加えて、上記実施の形態では、先に組み付けの完了したセグメントAのピン穴22に、組み付けるべきセグメントAのピン21を挿入する形態としたが、これに限定するものではなく、組付けの完了したセグメントAのピン21を、組み付けるセグメントAのピン穴22に挿入する形態としてもよい。
【0051】
さらに、上記実施の形態においては、本発明に係るワンタッチ継手を、シールド工法で構築するトンネルのセグメントに適用する構成としたが、そのトンネルは、電力用,水道用、鉄道、道路等いかなる用途のものであってもよい。
もちろん、セグメント以外であっても、例えばカーテンウォールのような各種コンクリートユニットからなる建材等に同様に適用することが可能である。
さらには、コンクリートユニット以外であっても、各種物品どうしをワンタッチで接合するためであれば、いかなるものにも適用することが可能である。例えば、必要とされる引き抜き抵抗力が小さければ、ピン21、嵌合金具31等の部材を、金属製ではなく、樹脂製等としてもよい。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係るワンタッチ継手によれば、第一の部材にはピンが設けられ、第二の部材にピン穴が形成され、ピン穴は、ハウジング内に、薄い平型のリング状でピンの外径よりも所定寸法小径の内径を有した嵌合部材と、嵌合部材の内径よりも所定寸法大径の内径を有したスペーサとが、ピンの挿入方向に沿って互いに前後するよう複数組設けられた構成となっている。
これにより、ピンをピン穴に挿入すればピンとピン穴とが密に嵌合して、これらをワンタッチで接合することができる。
そして、ピンの挿入時には、ピン穴の嵌合部材が順次一枚ずつ変形していくので、小さな押し込み力で挿入することができる。そして、ピンを挿入した後においては、全ての嵌合部材によって引き抜き抵抗力を発揮するので、大きな引き抜き抵抗力を発揮することができる。しかも、各嵌合部材は、スペーサの内周縁部を支点として変形するようになっているので、嵌合部材の撓み量を小さくすることができ、これにより、ピンを引き抜く方向の力が作用した場合に、直ちに引き抜き抵抗力を発揮することができる。したがって、このワンタッチ継手を用いて接合したものどうしの間に、間隙が生じるのを防止することができる。
また、嵌合部材が薄い平型となっているので、これにより、大量生産も容易に可能であり、低コスト化を図ることができる。
【0053】
請求項2に係るワンタッチ継手によれば、ハウジングの内径が、嵌合部材およびスペーサの外径よりも定められた寸法大径とされて、嵌合部材およびスペーサがハウジング内でピンの挿入方向と直交する方向に移動可能とされた構成となっている。これによって、ピンが斜めに挿入された場合にもこれに対応することができるだけでなく、その挿入方向を矯正することもできる。したがって、ピン穴に対するピンの芯合わせの精度、および押出方向の精度が低くてもこれに対応することができ、作業の容易化を図ることができる。
【0054】
請求項3に係るワンタッチ継手によれば、ピンの略全長にわたって嵌合部材が嵌合する構成となっている。これにより、引き抜き抵抗力を最大限に発揮することができ、しかも、ピンの挿入時にはこれらの嵌合部材がガイドとなり、挿入作業を容易に行うことができる。
【0055】
請求項4に係るワンタッチ継手によれば、ハウジングにはピン穴の奥側に押さえ部材が設けられ、この押さえ部材によって、嵌合部材とスペーサとがピン穴の奥側に移動するのを阻止する構成となっている。これにより、ピンの挿入時には、これら嵌合部材とスペーサが奥に押し込まれるのを防止することができる。継手の製造時には、ハウジング内に嵌合部材とスペーサを所定枚数入れた後に押さえ部材を取り付けるのみでよいので、この点においても製造を容易かつ低コストで行うことができる。
【0056】
さらに、請求項5ないし7に係るコンクリートユニットによれば、例えばセグメントやカーテンウォール等のコンクリートユニットに、上記ワンタッチ継手を適用する構成となっている。これにより、従来のようにボルト・ナット等を用いることなく、セグメント等のコンクリートユニットどうしを人手を介さずにワンタッチで接合することができるので、接合作業を容易かつ確実に行うことができ、さらにその接合強度を均一にすることができる。その結果、工期の短縮化および継手部の品質向上を図ることができる。加えて、組み付けるコンクリートユニットを、先に組み付けの完了したコンクリートユニットに向けて押すだけでよい。例えばセグメントの場合、シールド掘削機の推進ジャッキを用いることもでき、これによってセグメントの組み付け作業の省力化を図ることが可能である。このようにして、土木建築分野では、ワンタッチ継手を採用することによって、セグメントやカーテンウォール等のコンクリートユニットの組立等を容易かつ確実に行うことが可能となり、低コスト化・工業化に結びつけて、顕著な効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るワンタッチ継手を適用したトンネルの施工方法を示す斜視図である。
【図2】前記ワンタッチ継手を適用したセグメントの一例を示す図であって、ピンとピン穴の軸線に沿った方向に切断した状態を示す断面図である。
【図3】前記ピン穴を示す断面図である。
【図4】同ピン穴に備えられた嵌合金具の外観を示す図である。
【図5】同ピン穴に備えられたスペーサの外観を示す図である。
【図6】図2で示したセグメントどうしを接合するため、ピン穴にピンを挿入している途中の状態を示す断面図である。
【図7】同、ピンをピン穴に挿入が完了して、セグメントどうしを接合した状態を示す断面図である。
【図8】同、ピンが斜めに挿入された状態を示す断面図である。
【図9】前記セグメントを接合する方法の一例として、シールド掘削機の推進ジャッキを用いる方法を示す側断面図である。
【図10】前記ピン穴の構造の他の一例を示す断面図である。
【図11】同ピン穴の構造のさらに他の一例を示す断面図である。
【図12】同ピン穴の構造のさらに他の一例を示す断面図である。
【図13】前記ピンの取付構造の他の一例を示す断面図である。
【図14】同ピンの取付構造のさらに他の一例を示す断面図である。
【図15】同ピンの取付構造のさらに他の一例を示す断面図である。
【図16】同ピンの取付構造のさらに他の一例を示す断面図である。
【図17】従来のワンタッチ継手の一例を示す断面図である。
【図18】前記ワンタッチ継手の要部を示す断面図である。
【図19】従来のワンタッチ継手の他の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
21 ピン
22 ピン穴
28 ハウジング
29 嵌合部
30 蓋体(押さえ部材)
31 嵌合金具(嵌合部材)
32 スペーサ

Claims (7)

  1. ピンと、このピンが挿入されるピン穴とからなるワンタッチ継手であって、
    前記ピン穴は、前記ピンに嵌合する嵌合部がハウジング内に設けられた構成とされて、
    前記嵌合部は、薄い平型リング状でその内径が前記ピンの外径よりも定められた寸法小径とされた嵌合部材と、薄い平型リング状でその内径が前記嵌合部材の内径よりも定められた寸法大径とされたスペーサとが、前記ピンが挿入される方向に沿って互いに前後するよう複数組設けられていることを特徴とするワンタッチ継手。
  2. 請求項1記載のワンタッチ継手において、前記ハウジングの内径が、前記嵌合部材およびスペーサの外径よりも定められた寸法大径とされて、前記嵌合部材およびスペーサが、前記ハウジング内で前記ピンの挿入方向に直交する方向に移動可能とされていることを特徴とするワンタッチ継手。
  3. 請求項1または2記載のワンタッチ継手において、前記ピンが前記ピン穴内に挿入されたときに、前記ピンの略全長にわたって前記嵌合部材が嵌合するよう前記嵌合部が配設されていることを特徴とするワンタッチ継手。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載のワンタッチ継手において、前記ハウジングには、前記ピン穴の奥側に押さえ部材が設けられ、該押さえ部材によって、前記嵌合部材と前記スペーサとが前記ピン穴の奥側に向けて移動するのを阻止する構成となっていることを特徴とするワンタッチ継手。
  5. コンクリートユニットの一方の端部にピンが設けられ、他方の端部にピン穴が設けられ、
    前記ピン穴は、前記ピンに嵌合する嵌合部がハウジング内に設けられた構成とされて、
    前記嵌合部は、薄い平型リング状でその内径が前記ピンの外径よりも定められた寸法小径とされた嵌合金具と、薄い平型リング状でその内径が前記嵌合金具の内径よりも定められた寸法大径とされたスペーサとが、前記ピンが挿入される方向に沿って互いに前後するよう複数組設けられていることを特徴とするコンクリートユニット。
  6. 請求項5記載のコンクリートユニットにおいて、前記ハウジングの内径が、前記嵌合金具およびスペーサの外径よりも定められた寸法大径とされて、前記嵌合金具およびスペーサが、前記ハウジング内で前記ピンの挿入方向に直交する方向に移動可能とされていることを特徴とするコンクリートユニット。
  7. 請求項5または6記載のコンクリートユニットにおいて、前記コンクリートユニットが、トンネル覆工用のセグメントであることを特徴とするコンクリートユニット。
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