JP3571983B2 - シート給送装置及びこれを備えた画像形成装置並びに画像読取装置 - Google Patents

シート給送装置及びこれを備えた画像形成装置並びに画像読取装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シートを給送するシート給送装置及びこれを備えた画像形成装置並びに画像読取装置に関し、特にリタード分離方式を用いてシートを1枚ずつ分離給送するようにした分離給送手段を備えたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の画像形成装置又は画像読取装置は、シートである転写紙を画像形成部に、或はシートである原稿を画像読取部に搬送するシート給送装置を備えている。図6は、このような従来のシート給送装置の構成を示す図であり、同図において、1は不図示の画像形成部に転写紙2を供給するシート給送装置である。
【0003】
そして、このシート給送装置1は、シート収納装置3に設けられた不図示の積載台上に積載収納された転写紙2のうちの最上位の転写紙2aを1枚ずつ送り出すピックアップローラ5と、このピックアップローラ5により給送された転写紙2aを画像形成部へ搬送するフィードローラ6と、このフィードローラ6に圧接すると共にフィードローラ6の回転方向と同方向、或は逆方向に回転するリタードローラ7と、フィードローラ6の下流側に設けられた搬送ローラ対9とを具備している。
【0004】
なお、ピックアップローラ5とフィードローラ6及びリタードローラ7との間には第1ガイド10が、またフィードローラ6及びリタードローラ7と搬送ローラ対9との間には第2ガイド11が、さらに搬送ローラ対9の下流側には第3ガイド12がそれぞれ配置され、これら各ガイド10〜12により転写紙2が案内搬送されるようになっている。
【0005】
ここで、分離回転体であるリタードローラ7は給送回転体であるフィードローラ6と共に、シート給送手段であるピックアップローラ5から送り出された転写紙2を1枚ずつ分離して給送する分離給送手段を構成するものであり、シート収納装置3から複数枚の転写紙2が給送された場合には、同図に示すようにフィードローラ6の回転方向と逆方向に回転することにより、最上位の転写紙2aを他の転写紙2から分離するようになっている。
【0006】
一方 図7はフィードローラ6及びリタードローラ7を駆動する駆動伝達装置の構成を示す図であり、同図において、13は駆動伝達装置である。ここで、この駆動伝達装置13は、フィードローラ6が取り付けられたフィードローラ軸15と、リタードローラ7が取り付けられたリタードローラ軸16と、このリタードローラ軸16に連結された駆動軸であるリタードローラ駆動軸17とを備えている。なお、リタードローラ軸16及びリタードローラ駆動軸17はフィードローラ軸15に対して略平行に設けられると共に不図示の揺動自在な支持部材に支持されてフィードローラ軸15に対して平行に接離可能となっている。
【0007】
また、20はリタードローラ軸16とリタードローラ駆動軸17との間に設けられたトルクリミッタ、22はフィードローラ軸15の端部に設けられると共に、不図示の画像形成装置本体のメイン駆動手段から駆動入力ベルト21を介して伝達される駆動力をフィードローラ軸15に伝達する電磁クラッチである。
【0008】
また、23はフィードローラ軸15とリタードローラ駆動軸17との間に巻き掛けられると共にフィードローラ軸15に伝達された回転駆動力をリタードローラ駆動軸17に伝達するリタード駆動ベルトである。なお、19はリタードローラ軸16とリタードローラ駆動軸17との間に設けられると共に、リタードローラ駆動軸17の駆動をリタードローラ軸16に伝達するためのカップリングである。
【0009】
次に、このように構成された駆動伝達装置13によるフィードローラ6及びリタードローラ7の駆動について説明する。
【0010】
メイン駆動手段から回転駆動力が与えられると、この回転駆動力は駆動入力ベルト21を介し、給紙タイミングに応じてON−OFF制御される電磁クラッチ22の不図示のアーマチュア部に設けられたプーリ25に入力される。ここで、フィードローラ軸15は電磁クラッチ22の不図示のロータ部と一体に回転するようになっており、またフィードローラ軸15とリタードローラ駆動軸17及びリタードローラ軸16とはリタード駆動ベルト23によって連結されている。
【0011】
これにより、フィードローラ軸15が回転すると、これに伴いリタードローラ駆動軸17はフィードローラ軸15と同方向に回転し、さらにこのようにフィードローラ軸15及びリタードローラ駆動軸17が回転すると、フィードローラ6とリタードローラ7とは、給紙タイミングON時に同期して回転駆動される。
【0012】
ところで、転写紙2が図6の矢印bに示す方向に給送される際、転写紙2が1枚ずつ給送される場合には、リタードローラ7に作用するフィードローラ6及び転写紙2の間の摩擦力の方がトルクリミッタ20の戻し力よりも大きいため、リタードローラ7及びリタードローラ軸16はトルクリミッタ20を空転させながらリタードローラ駆動軸17の駆動回転方向と逆方向に連れ回りするようになっている。
【0013】
また、複数枚の転写紙2が給送されると、リタードローラ7と転写紙2との間の摩擦力に対し、複数枚の転写紙2間の摩擦力が小さいことからトルクリミッタ20は空転せず、これによりリタードローラ7及びリタードローラ軸16はリタードローラ駆動軸17の回転駆動方向と同方向に回転するようになっている。
【0014】
そして、このような方向にリタードローラ7が回転することにより、複数枚送られた転写紙2のうちの最もフィードローラ6側の、即ち最上位の転写紙2aが、それ以外の転写紙2から分離されるようになり、複数枚の転写紙2が画像形成部に搬送されるのを防止することができるようになっている。なお、以下、シート収納装置3からリタードローラ7まで複数枚の転写紙2が送られる現象を「束搬送」、リタードローラ7で分離しきれずに複数枚の転写紙2が送られる現象を「重送」と言う。
【0015】
次に、このようなシート給送装置1による転写紙2の給紙、分離条件を満足する理論式について説明する。
【0016】
ここで、フィードローラ6と転写紙2との摩擦係数をμBP、リタードローラ7と転写紙2との摩擦係数をμCP、転写紙間の摩擦係数をμPPとし、またリタードローラ7の加圧力(圧接力)をN、トルクリミッタ20の空転トルクをT、リタードローラ7の実効半径をr、トルクリミッタ20の戻し力をT/rとすると、フィードローラ6の給紙条件、転写紙2の分離条件及びリタードローラ7の連れ回り条件はそれぞれ下記のように表される。
【0017】
給紙条件 :μBPN>T/r・・(1)
分離条件 :μPPN<T/r・・(2)
連れ回り条件:μCPN>T/r・・(3)
【0018】
また、T/r・Nをμとすると、上記給紙条件、分離条件及び連れ回り条件はそれぞれ下記のように表される。
【0019】
給紙条件 :μBP>μ・・・・(4)
分離条件 :μPP<μ・・・・(5)
連れ回り条件:μCP>μ・・・・(6)
【0020】
ところで、図8は上記(4)、(5)、(6)式の関係をリタードローラ7の加圧力Nとトルクリミッタ20の空転トルクTをパラメータとしてグラフ化したものであり、同図において、斜線部が給送領域である。
【0021】
ここで、斜線部領域を拡大するためには各ローラ6,7と転写紙間の摩擦係数を大きくすることが必要であり、またこの図からリタードローラ7の加圧力Nとトルクリミッタ20の空転トルクTを共に大きくする方向(図中右上の方向)の条件下に給紙条件を設定した方が給送領域は広くなることが理解できる。
【0022】
しかしながら、通常使用される転写紙2の中には同一種類のものにおいても紙間の摩擦係数がばらついていたり、またユーザによっては異なる種類の転写紙をばらばらにシート収納装置3の積載台上に積載する場合が多くある。
【0023】
そして、このような場合、例えば図9に示すように異なる種類の転写紙束の最下位の転写紙2bと、その直下の転写紙2cとの間の摩擦係数がその周辺の転写紙2間の摩擦係数に比べて著しく小さい場合は、束搬送が発生し、束搬送された転写紙2はフィードローラ6とリタードローラ7のニップ部Nまで搬送された後、分離されながら画像形成部へ搬送される。なお、同図においては、3枚の転写紙2が束搬送されている。
【0024】
ところが、このように転写紙2が束搬送された場合、既述した(1)及び(4)に示す給紙条件の設定を変化させても束搬送された転写紙2を分離することができずに重送が発生してしまうことがある。
【0025】
次に、この現象について図10に示す束搬送時(図は3枚束搬送)の模式図を用いて説明する。
【0026】
ここで、転写紙2間の摩擦係数μPPが全て等しい場合、もしくは転写紙No.1と転写紙No.2と間の摩擦係数μBP1が、転写紙No.2と転写紙No.3と間の摩擦係数μBP2に対してμBP1<μBP2であれば束搬送された転写紙はリタードローラ7により転写紙No.3、転写紙No.2の順番で分離されて重送は発生しない。
【0027】
ところが、μBP1>μBP2という状態が生じた場合は転写紙No.3がリタードローラ7によって分離され、フィードローラ7及びフィードローラ6,7のニップ部Nを抜けるまでの間に転写紙No.2は、転写紙No.1に引きずられて、所定の距離だけ画像形成部側に送り込まれてしまう。そして、転写紙No.3が分離されきってしまう前に転写紙No.2が搬送ローラ対9に突入してしまうと結果として重送となる。
【0028】
このように、束搬送された最上位と最下部以外の中間にある転写紙(同図においては転写紙No.2)の挙動はリタードローラ7の加圧力、トルクリミッタ20の空転トルク及び各ローラと転写紙間摩擦係数等の給紙条件を決定するべきパラメータをどのように変化させても束搬送された転写紙2間の摩擦係数で決定されてしまう。
【0029】
なお、同図に示した束搬送模式図は3枚搬送であるが、近年のように転写紙の種類が多種化している状況下においては5〜10枚程度の束搬送はめずらしいことではなく、束搬送枚数が増えるということは分離の状況をさらに厳しくしていることは言うまでもない。
【0030】
ここで、従来は給紙条件における分離性能を少しでも向上させるべく、例えばトルクリミッタ20の空転トルクを大きくしてかつ、リタードローラ7の加圧力を小さくするようにしている。
【0031】
ところが、このような給紙条件は、転写紙2によるリタードローラ7の摩耗が生じ易い給紙条件であるため、リタードローラ7の耐久性が著しく低下してしまう。さらには既述した束搬送は装置、パーツの耐久性を要求される高速機になるほどその発生が顕著であり、リタードローラ7の耐久性が下がってしまうような給紙条件の設定は、製品の方向性に反する対策となってしまう。
【0032】
そこで、従来は、フィードローラ6をEPDM等のゴム材で形成する一方、リタードローラ7を図11に示すような構造としている。即ち、芯材150の表面にスポンジ母材151を設け、さらにこのスポンジ母材151の表面にシリコンコート層153をウレタン接着層152で接着した構造としている。
【0033】
なお、リタードローラ7の最外層にシリコンの素材を用いているのは高い摩擦係数μの持続性が良いからであり、中間層にウレタン接着層152を設けたのはスポンジ表面のムシレ、削れ等を防いでリタードローラ7の耐久性を向上させるためである。
【0034】
そして、このようにリタードローラ7としてシリコンコート層153を有するスポンジローラを用いた場合、リタードローラ7の硬度がフィードローラ6の硬度よりも小さいため、2つのローラ6,7が圧接したとき、同図に示すようにニップ形状はリタードローラ7側に凹んだ形状となる。
【0035】
このため、このニップ部Nにピックアップローラ5により転写紙が複数束状で送り込まれると、このニップ部Nの凹形状によって転写紙の先端はかわら状にずれるようになり、これにより送り込まれた全ての転写紙の先端部がリタードローラ7に直接接触可能となる。この結果、厚さや摩擦係数の異なる種々の転写紙であってもリタードローラ7により確実に分離給送することができ、転写紙の給送安定性の向上を図ることができるようになる。
【0036】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このようなリタードローラを備えた従来のシート給送装置において、既述したように分離性能を高めるため、トルクリミッタ20の空転トルクを大きくし、かつリタードローラ7の加圧力を小さくした場合、リタードローラ7の耐久性が著しく低下してしまうこととなる。
【0037】
次に、耐久中のフィードローラ6及びリタードローラ7におけるμ(摩擦係数)の変化状況に基づいて、いわゆるローラの耐久寿命といわれる搬送不能状態を説明する。
【0038】
フィードローラ6及びリタードローラ7の耐久が進むに従い、既述したμBP(フィードローラ6と転写紙2間の摩擦係数) と、μCP(リタードローラ7と転写紙2間の摩擦係数) は、図12に示すような経緯をたどって変化する。ここで、既述したようにリタードローラ7をスポンジで構成し、最外層にシリコンコート層153を有するリタードローラ7を用いた場合、初期のμBP及びμCPは共に2以上で高く安定しており、耐久中のμ低下状況もほぼ同じようにμBP≒μCPで推移する。
【0039】
そして、このフィードローラ6及びリタードローラ7の耐久が更に進むと、やがて前記(3)式が崩れる(即ち(1)式も崩れる)ようになり、図中、μ(=T/r・N)で示される直線を下回ってしまうようになる。なお、この直線は、リタードローラ7と転写紙2間の摩擦係数μCPが、この直線を上回ると、搬送される転写紙2にリタードローラが連れ回り、下回ると転写紙2との間に滑りが生じてリタードローラ7がスリップする、リタードローラ連れ回り境界を示す線である。
【0040】
ここで、このようにμBP及びμCPがμ(=T/r・N)で示される直線を下回ると、これによりリタードローラ7が搬送される転写紙2と連れ回らなくなったり、フィードローラ6が転写紙2を搬送できなくなったりして搬送不能状態となり寿命を迎えていた。
【0041】
なお、この他、例えば炭酸カルシウムを内部に多く含有するような特定紙を搬送する場合には、搬送中に発生する紙紛の影響でμBP及びμCPが共に少ない通紙枚数で激しく低下し、μを下回ってしまうようになり、短期間で寿命を迎えるようになることもあった。
【0042】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、分離給送手段の耐久性の向上を図ることのできるシート給送装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【0043】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シート収納手段に収納されているシートを1枚ずつ分離して給送するシート給送装置において、前記シートを給送する方向に回転する給送回転体と、前記給送回転体に圧接すると共に前記シートを前記シート収納手段に戻す方向に回転する分離回転体とを具備し、シートを1枚ずつ分離して給送する分離給送手段と、前記分離回転体と該分離回転体を駆動する駆動軸との間に設けられ、前記分離回転体に前記駆動軸からの駆動を伝達すると共に、該分離回転体に逆転方向の所定回転トルクが伝わると空転するトルクリミッタと、
を備え、
前記分離回転体の摩擦係数を、前記給送回転体と前記分離回転体との摩擦係数μBC、前記給送回転体とシートとの摩擦係数μBP、前記分離回転体とシートとの摩擦係数μCP、シート同士の摩擦係数μPP、前記分離回転体の圧接力N、前記トルクリミッタの空転トルクT及び前記分離回転体の実効半径rが、
μBCN>T/r
μBP>μCP
T/r>μCPN>μPP
の関係が成り立つように設定し、かつ、前記摩擦係数を、初期状態ではT/r<μCPNであり、前記分離回転体の耐久が進むにつれて前記T/r>μCPN>μPPNに変化するように設定したことことを特徴とするものである。
【0045】
また本発明は、前記給送回転体をゴムローラとし、前記分離回転体を前記給送回転体よりも柔らかいスポンジローラとしたことを特徴とするものである。
【0046】
また本発明は、前記スポンジローラは、内側に配されたスポンジ母材と、該スポンジ母材の外周側に設けられ、該スポンジ母材と同系材料のコーティング層とを有していることを特徴とするものである。
【0047】
また本発明は、前記スポンジ母材及び前記コーティング層を同質のウレタン材質としたことを特徴とするものである。
【0048】
また本発明は、前記給送回転体をゴムローラとし、前記分離回転体を弾性を有すると共に前記ゴムローラとの圧接部が凹形状となるベルト状部材としたことを特徴とするものである。
【0049】
また本発明は、前記シート収納手段からシートを送り出すためのシート給送手段を有し、該シート給送手段により送り出されたシートを前記分離給送手段により一枚ずつ分離することを特徴とするものである。
【0050】
また本発明は、画像形成部と、前記画像形成部にシートを給送するシート給送装置とを備えた画像形成装置において、前記シート給送装置は上記のいずれかに記載のものであることを特徴とするものである。
【0051】
また本発明は、画像読取部と、前記画像読取部にシートを給送するシート給送装置とを備えた画像読取装置において、前記シート給送装置は上記のいずれかに記載のものであることを特徴とするものである。
【0052】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0053】
図1は本発明の第1の実施の形態に係るシート給送装置を備えた画像形成装置の構成を示す図である。同図において、200は装置本体であり、この装置本体200には、原稿載置台206、光源207、レンズ系208、給紙部209、画像形成部202等が備えられている。
【0054】
ここで、給紙部209は、転写紙Sを収納すると共に、装置本体200に着脱自在なカセット210,211及びペディスタル212に配置されたペーパーデッキ213と、このカセット210,211及びペーパーデッキ213に収納された転写紙Sを画像形成部202に給紙するシート給送装置1を備えている。
【0055】
また、画像形成部202は、円筒状の感光ドラム214、トナーを内蔵した現像器215、転写用帯電器216、分離帯電器217、クリーナ218、一次帯電器219等を備えており、さらに画像形成部202の下流側には、搬送装置220、定着装置204、排出ローラ205等が配設されている。
【0056】
次に、この画像形成装置の作動について説明する。
【0057】
装置本体200に設けられている不図示の制御装置から給紙信号が出力されると、シート給送装置1が作動し、カセット210,211又はペーパーデッキ213から転写紙Sが画像形成部202に向けて搬送される。
【0058】
またこれと並行して、光源207から原稿載置台206に載置されている原稿Dに向けて光が照射され、原稿Dに当てられて反射した光は、レンズ系208を介し、予め一次帯電器219により表面が帯電されている感光ドラム214に照射される。これにより、感光ドラム214の表面に静電潜像が形成され、次いで現像器215によりトナー像が形成される。
【0059】
そして、給紙部209から給送された転写紙2がレジストローラ201により斜行補正され、さらにタイミングを合わせて画像形成部202へ送られると、画像形成部202では、転写用帯電器216により感光ドラム214のトナー像が転写される。
【0060】
この後、トナー像が転写された転写紙2は分離帯電器217によって転写用帯電器216と逆極性に帯電されて感光ドラム214から分離され、さらにこの後搬送装置220により定着装置204に搬送され、定着装置204により未定着転写画像が永久定着される。そして、画像が定着された転写紙2は排出ローラ205により装置本体200から排出される。このようにして、給紙部209から給送された転写紙2は画像が形成されて排出される。
【0061】
ところで、図2はシート給送装置1の分離給送手段の構成を示す図であり、同図において、7Aはフィードローラ6と圧接するリタードローラである。ここで、このリタードローラ7Aはアスカー硬度(C)7°程度のポリウレタンフォームにより成る母材であるスポンジ部51と、外周面を構成すると共に母材と同材質のウレタン液を均一にスプレーコーティングされたコーティング部52とにより構成されている。なお、このようなスポンジローラであるリタードローラ7Aが、このようなコーティング部52を設けているのは、スポンジ表面のムシレ、削れ等を防いでリタードローラ7Aの耐久性を向上させるためである。
【0062】
そして、このリタードローラ7AとEPDM系のゴムからなるフィードローラ6とのニップ部Nは、フィードローラ6とリタードローラ7Aとが圧接することにより、同図に示すようにフィードローラ6がリタードローラ7Aにくい込んだ凹形状を形成している。ここで、このようにフィードローラ6とリタードローラ7Aとのニップ部Nを凹形状とすることにより、送り込まれた転写紙をカワラ状にずらすことができ、これにより束搬送された転写紙が分離動作中に確実にニップ部Nでグリップされ続けるようになり、安定した分離が可能となる。
【0063】
一方、図3は本実施の形態に係るフィードローラ6と、ウレタンコートされたリタードローラ7Aにおける耐久中のμ(摩擦係数)の変化の経緯を示したものであり、同図に示すように本実施の形態に係るリタードローラ7Aの転写紙に対する初期の摩擦係数μCPは、既述した図12に示す従来のシリコンコートされたリタードローラ7に比べ、フィードローラ6と転写紙の摩擦係数μBPよりも大幅に小さくなっており、耐久が進んでもこの関係を維持して推移するようになっている。
【0064】
次に、本実施の形態のシート給送装置1における転写紙の給紙、分離条件を満足する理論式について説明する。
【0065】
ここで、フィードローラ6とリタードローラ7Aの摩擦係数をμBC、フィードローラ6と転写紙間の摩擦係数をμBP、リタードローラ7Aと転写紙間の摩擦係数をμCP、転写紙間の摩擦係数をμPP、リタードローラ7Aの加圧力をN、トルクリミッタ20の空転トルクをT、リタードローラ7Aの実効半径をr、トルクリミッタ20の戻し力をT/rとすると、本実施の形態においては、給紙条件、搬送条件及びリタードローラ7Aのスリップ及び分離条件が下記のようになるようにリタードローラ7Aの摩擦係数を設定している。
【0066】
Figure 0003571983
となる。
【0067】
次に、これらの式(10)〜(12)を用いて図3を詳しく説明する。
【0068】
ここで、図中矢印dで示される領域は前記従来例と同じ給紙、分離条件にて搬送されている状態である。そして、耐久が進みリタードローラ7Aと転写紙間の摩擦係数μCPが低下してリタードローラ連れ回り境界を下回ると、リタードローラ7Aはスリップするようになる。
【0069】
しかし、このようにリタードローラ7Aがスリップするようになっても、既述したようにリタードローラ7Aの摩擦係数を上記式(7)〜(9)、或は(10) 〜(12)となるように設定しているので転写紙の搬送が継続されるようになっている。
【0070】
即ち、(7)に示すようにμBCN>T/rとすることにより、リタードローラ7Aとフィードローラ6との摩擦力がトルクリミッタ20の戻し力に打ち勝つようにすることができ、これによりトルクリミッタ20を空転させ、リタードローラ7Aをフィードローラ6と共に搬送方向に回転させることができるようになっている。
【0071】
また、(8)に示すようにμBP>μCPとすることにより、例えリタードローラ7Aが搬送される転写紙との間で滑ってしまっても、フィードローラ6により転写紙を搬送することができるようになっている。
【0072】
また、(9) に示すようにT/r>μCPN>μPPNとすることにより、リタードローラ7Aが搬送中の転写紙に対してスリップすると共に、転写紙を分離することができるようになっている。
【0073】
なお、本実施の形態では、初期状態ではT/r<μCPNとなるようにしており、耐久が進むにつれてT/r>μCPN>μPPNに変化するようにしている。これにより、初期状態ではリタードローラ7Aは転写紙搬送中は転写紙搬送方向に回転するが、耐久が進むにつれてトルクリミッタ戻し力より転写紙に対してスリップするようになる。
【0074】
ところで、本実施の形態に係るウレタンコートのリタードローラ7Aの場合、ローラ7Aが耐久寿命を迎えるのは次に示す2通りのパターンがあることが確認されている。
【0075】
パターン1は、式(10)を満足できなくなった場合、即ちフィードローラ6とリタードローラ7Aの摩擦係数μBCが小さくなり、転写紙がフィードローラ6及びリタードローラ7A間に突入するよりも前からローラ同士の連れ回りがなくなってしまい、そもそも転写紙が突入できない場合である。
【0076】
また、パターン2は、式(11)を満足できなくなった場合、即ちフィードローラ6と転写紙間の摩擦係数μBPが、リタードローラ7Aと転写紙間の摩擦係数μCPよりも小さくなり、これにより転写紙はフィードローラ6及びリタードローラ7A間には突入できるがフィードローラ6がリタードローラ7Aに邪魔されて搬送できない場合である。
【0077】
なお、パターン1の場合には、突入する転写紙先端が戻し方向に回転するリタードローラ7Aにより折れてしまう状態(いわゆるコバ折れJAM)が多発し、パターン2の場合にはフィードローラ6及びリタードローラ7A間に転写紙が挟持されたままJAMに至る(給紙遅延JAM等)ようになる。
【0078】
ところが、既述したようにリタードローラ7Aの摩擦係数を上記式(7)〜(9)、或は(10) 〜(12)となるように設定することにより、従来例で耐久寿命とされていたμCPが給紙条件によって決定されるμを下回ってしまうような状況に陥り、たとえリタードローラ7Aが搬送される転写紙との間で滑ってしまっても、搬送条件は成り立ち耐久寿命となることはない。
【0079】
また、このようにリタードローラ7Aが搬送される転写紙との間で滑っている条件下ではフィードローラ6に対して転写紙が与えるダメージも小さくなるので、フィードローラ6を摩擦係数が高いままの状態で持続することができるという効果もある。
【0080】
以下、このような条件下で複数枚の転写紙を分離する状態を図4にしたがって説明する。なお、同図は束搬送されてきた転写紙をフィードローラ6及びリタードローラ7A間で分離している時の様子を模式的に表した図である。
【0081】
ここで、前述したように、本実施の形態においては、転写紙のフィードローラ6から受ける搬送力μBPNがリタードローラ7Aから受ける搬送力μCPNよりも大きいため、リタードローラ7Aが搬送される転写紙に対して滑って逆転するような条件下に移行した場合でも、転写紙を十分に搬送することができ、フィードローラ6へのダメージも少なくなり耐久性が大幅に向上する。
【0082】
また、本実施の形態においては、既述した式(12)に示される通りμCPが搬送される転写紙同士の摩擦係数μPPを上回っているので、複数枚の転写紙が束で突入するようなケースでも問題なく分離できる。なお、この分離のメカニズムは、既述した図10に示した従来の分離メカニズムにおいて分離に働く力が従来例ではT/rであるのに対し、本実施の形態ではμCPNであるという点を除けば全く同じといえるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0083】
そして、このように構成することにより、炭酸カルシウムを内部に多く含有するような特定紙を搬送するとき、搬送中に発生する紙紛の影響によってμBP及びμCPが共に少ない通紙枚数で激しく低下した場合でも、短寿命の一因になることはない。
【0084】
なお、本実施の形態の実施例として、特定の炭酸カルシウムを多く含有する転写紙に対する初期μをフィードローラ6で2.0強、リタードローラ7Aで1.0程度とすることで、初期1万〜2万枚でリタードローラ7Aのスリップ現象に移行し、その後、上記式(10)〜(12)を維持しながら転写紙を搬送することで、従来のシリコンコートリタードローラと同じ給紙条件(T、Nが同一)でシリコンコートリタードローラと同等の分離安定性を確保しながら、2倍以上の耐久寿命実現した。
【0085】
このように、リタードローラ7Aの摩擦係数を上記式(7)〜(9)、或は(10) 〜(12)となるように設定することにより、従来のシリコンコートリタードローラでは給紙・分離条件を満足できないような状態、即ちリタードローラ7Aが搬送される転写紙に対して滑って逆転するような条件下に移行した場合でも、十分に転写紙を搬送できる。
【0086】
また、フィードローラ6へのダメージも少なくなり、耐久性が大幅に向上する。さらに、本実施の形態のリタードローラ7Aは、コストの高いシリコン材を使用しないことから、従来のシリコンコートリタードローラに比べてコストが安いという効果も得られる。
【0087】
ところで、これまでの説明においては、フィードローラ6と共に分離給送手段を構成するものとしてスポンジリタードローラ7Aを用いた場合について述べてきたが本発明はこれに限らず、分離回転体としてローラの代わりに弾性を有するベルト状部材を用いるようにしても良い。
【0088】
図5はこのような本発明の第2の実施の形態に係るシート給送装置の構成を示すものであり、同図において、53は弾性を有するベルト状部材である弾性リタードベルトである。また、53a、53bは弾性リタードベルト53が巻装されている駆動及び従動ローラであり、駆動ローラ53はリタードローラ軸16に取り付けられている。
【0089】
ここで、この弾性リタードベルト53は、ゴムローラであるフィードローラ6に圧接しており、これによりフィードローラ6との圧接部が凹形状を形成している。そして、このようにフィードローラ6との圧接部が凹形状とすることにより、送り込まれた転写紙をカワラ状にずらすことができ、これにより束搬送された転写紙が分離動作中に確実にグリップされ続けるようになり、安定した分離が可能となる。
【0090】
なお、このように弾性リタードベルト53を用いた場合、既述した第1の実施の形態がスポンジリタードローラ7Aの硬度、外形形状により決定される所定のニップ領域を設定していたのに対して、ベルトの硬度、テンション、フィードローラ6に対するベルトの相対位置等の条件を変えることで、所定のニップ領域が設定できる構成である。
【0091】
また、本実施の形態の場合、弾性リタードベルト53はフィードローラ6に対して外周面積が大きくとりやすい構成なので、転写紙と弾性リタードベルト53の接触頻度が減少し、これにより弾性リタードベルト53(分離回転体)の耐久性向上がさらに期待できる。なお、この他の構成及びベルトの表面性(摩擦係数)などは第1の実施の形態と何ら変わらないので、詳細な説明は省略する。
【0092】
ところで、これまでの説明においては、画像形成装置に設けられたシート給送装置について述べてきたが、本発明はこれに限らず、画像読取装置に設けられると共に、シートを画像読取部に給送するようにしたシート給送装置に適用するようにしても発明の本質は同じであることは言うまでもない。
【0093】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のように、給送回転体と分離回転体との摩擦係数μBC、給送回転体とシートとの摩擦係数μBP、分離回転体とシートとの摩擦係数μCP、シート同士の摩擦係数μPP、分離回転体の圧接力N、トルクリミッタの空転トルクT及び分離回転体の実効半径rが、
μBCN>T/r
μBP>μCP
T/r>μCPN>μPP
の関係が成り立つように分離回転体の摩擦係数を設定することにより、分離回転体が搬送されるシートに対して滑って逆転するような条件下に移行した場合でも、十分に転写紙を搬送できる。これにより、分離給送手段の耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るシート給送装置を備えた画像形成装置の構成を示す図。
【図2】上記シート給送装置の分離給送手段の構成を説明する図。
【図3】上記フィードローラ及びリタードローラの摩擦係数の変化の経緯を示す図。
【図4】上記シート給送装置の束搬送状態を説明する図。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るシート給送装置のフィードローラ及び弾性リタードベルトの構造を説明する図。
【図6】従来のシート給送装置の構成を示す図。
【図7】上記シート給送装置のフィードローラ及びリタードローラを駆動する駆動伝達装置の構成を示す要部斜視図。
【図8】上記リタードローラにおける加圧力とトルクリミッタの空転トルクの関係を示す図。
【図9】上記シート給送装置における束搬送の状態を示す図。
【図10】上記シート給送装置における束搬送状態を説明するための模式図。
【図11】上記フィードローラ及びリタードローラの構造を説明する図。
【図12】上記フィードローラ及びリタードローラ摩擦係数の経緯を示す図。
【符号の説明】
1 シート給送装置
2 転写紙
5 ピックアップローラ(シート給送手段)
6 フィードローラ(給送回転体)
7,7A リタードローラ(分離回転体)
16 リタードローラ軸
17 リタードローラ駆動軸
20 トルクリミッタ
51 スポンジ部
52 コーティング部
53 弾性リタードベルト
200 装置本体
202 画像形成部

Claims (8)

  1. シート収納手段に収納されているシートを1枚ずつ分離して給送するシート給送装置において、
    前記シートを給送する方向に回転する給送回転体と、前記給送回転体に圧接すると共に前記シートを前記シート収納手段に戻す方向に回転する分離回転体とを具備し、シートを1枚ずつ分離して給送する分離給送手段と、
    前記分離回転体と該分離回転体を駆動する駆動軸との間に設けられ、前記分離回転体に前記駆動軸からの駆動を伝達すると共に、該分離回転体に逆転方向の所定回転トルクが伝わると空転するトルクリミッタと、
    を備え、
    前記分離回転体の摩擦係数を、
    前記給送回転体と前記分離回転体との摩擦係数μBC、前記給送回転体とシートとの摩擦係数μBP、前記分離回転体とシートとの摩擦係数μCP、シート同士の摩擦係数μPP、前記分離回転体の圧接力N、前記トルクリミッタの空転トルクT及び前記分離回転体の実効半径rが、
    μBCN>T/r
    μBP>μCP
    T/r>μCPN>μPP
    の関係が成り立つように設定し、
    かつ、前記摩擦係数を、初期状態ではT/r<μ CP Nであり、前記分離回転体の耐久が進むにつれて前記T/r>μ CP N>μ PP Nに変化するように設定したことを特徴とするシート給送装置。
  2. 前記給送回転体をゴムローラとし、前記分離回転体を前記給送回転体よりも柔らかいスポンジローラとしたことを特徴とする請求項1記載のシート給送装置。
  3. 前記スポンジローラは、内側に配されたスポンジ母材と、該スポンジ母材の外周側に設けられ、該スポンジ母材と同系材料のコーティング層とを有していることを特徴とする請求項2記載のシート給送装置。
  4. 前記スポンジ母材及び前記コーティング層を同質のウレタン材質としたことを特徴とする請求項3記載のシート給送装置。
  5. 前記給送回転体をゴムローラとし、前記分離回転体を弾性を有すると共に前記ゴムローラとの圧接部が凹形状となるベルト状部材としたことを特徴とする請求項1記載のシート給送装置。
  6. 前記シート収納手段からシートを送り出すためのシート給送手段を有し、該シート給送手段により送り出されたシートを前記分離給送手段により一枚ずつ分離することを特徴とする請求項1記載のシート給送装置。
  7. 画像形成部と、前記画像形成部にシートを給送するシート給送装置とを備えた画像形成装置において、
    前記シート給送装置は前記請求項1乃至のいずれか1項に記載のものであることを特徴とする画像形成装置。
  8. 画像読取部と、前記画像読取部にシートを給送するシート給送装置とを備えた画像読取装置において、
    前記シート給送装置は前記請求項1乃至のいずれか1項に記載のものであることを特徴とする画像読取装置。
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