JP3571395B2 - 酸素吸収剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、酸素吸収剤およびそれを用いる食品の保存方法に関する。さらに詳しくは錆の発生が抑制され、かつ低温保存において充分な酸素吸収能を有する水分依存型の酸素吸収剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、酸素吸収剤は食品保存技術の一つとして利用されている。酸素吸収剤の素材としては、安全性、速度、コスト等の面からは鉄粉を使用したものが主流である。酸素吸収剤の反応様式としては、水分を剤自体に含有する自力反応型と水分を共存する食品からの水蒸気として得ることにより反応する水分依存型に分類される。
また、流通機構の発達にともなって、低温下で流通・販売される食品が増加している。これらの食品に対して酸素吸収剤が使用され始めているが、この場合、使用される酸素吸収剤には低温下で充分な酸素吸収能を発現することが要求される。特に畜肉加工食品であるハム等では、予めスライスしたものをトレーなどに封入した状態で流通・販売される商品がみられるようになった。この場合、商品は小売店において蛍光灯のもとに曝される状態で陳列されるため、商品パック内に酸素が存在する場合、ハム等の表面の色が退色し、商品価値がなくなるという問題がある。そこでこのような商品についても酸素吸収剤の使用が検討されつつある。
【0003】
しかしながら、低温下で流通・販売される食品に対応できるような酸素吸収剤は見あたらず、必要以上に大きなサイズの酸素吸収剤を用いることが試みられているが、未だ充分ではない。特に取扱の容易な水分依存型の酸素吸収剤においてこの傾向が強い。また、水分依存型の酸素吸収剤の場合、錆の発生が大きな問題点としてあげられる。流通・販売段階で錆が発生すると酸素吸収剤の包材に浸み出し商品としての美観を損ねたり、錆が食品を汚染して商品価値そのものがなくなるなどの問題があるため、その解決が望まれている。
【0004】
特開平5−177130号公報や特開平5−237373号公報には、酸素吸収能を高める試みがなされているが、これらはいわゆる自力反応型の酸素吸収剤に関するものであり、特定の比表面積を有することを特徴とするが、錆の発生については検討が不十分であり、むしろ錆の発生が助長されると予測される処方を含んでいる。錆の発生の防止としては、シリコン樹脂やフッ素樹脂の使用(特開昭57−135041号公報)、シリコンオイルの使用(特開昭60−139334号公報)や粘着性素材の使用(特開平4−290545号公報)などが検討されているが、未だ充分とは言えない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は低温流通・販売される食品の劣化防止をも可能にする、低温下においても充分な酸素吸収能を発現し、かつ錆の発生が防止された酸素吸収剤を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、i)活性化鉄粉およびii)アルミニウムの水酸化物からなり、この水酸化物の含有量が鉄粉100重量部に対して10〜40重量部であり、実質的に水分を含まないことを特徴とする酸素吸収剤、およびこの酸素吸収剤とともに封入することを特徴とする食品の保存方法に関する。
【0007】
本発明の酸素吸収剤は酸素吸収剤の反応様式から分類すれば、水分依存型に属するので、実質的に水分を有さない。従って、本発明の酸素吸収剤の水分含量は2%以下、好ましくは1%以下である。
本発明において、活性化鉄粉とは、自身が酸化されて酸素を吸収する粉体状の金属鉄である。
【0008】
本発明に使用される鉄粉としては、例えばガス還元された還元鉄粉、海綿状の噴霧鉄粉、高密度電流で生成する電解鉄粉などの鉄粉、鋳鉄、鋼、鉄合金等の鉄製品を粉砕したものが挙げられる。また、この鉄粉は、不純物を含むものあるいは部分的に酸化されたものであってもよい。
【0009】
この鉄粉において、比表面積は0.05m2/g以上、好ましくは0.1m2/g以上であり、平均粒径は50〜300μm、好ましくは75〜150μmであることが望ましい。比表面積が0.05m2/g以下の場合は、錆の発生は少ないが低温における酸素吸収能が劣る。平均粒径が300μm以上の場合は、酸素吸収速度が低下し、平均粒径が50μm以下の場合は、他成分との混合が不均一となり、また粉塵等により作業性が著しく低下する。
【0010】
活性化鉄粉の調製は、公知の方法のいずれかにおいても可能であるが、例えば以下の方法が有効である。
(1)塩類(ハロゲン化物、硫酸塩、炭酸塩、水酸化物等)の水溶液を鉄粉に接触させた後、水分を除去する方法。
(2)上記塩類と鉄粉を単純にあるいは機械的に混合する方法。
(3)上記塩類の代わりに、鉱酸(塩酸、硫酸等)または有機酸(クエン酸、シュウ酸等)の水溶液を鉄粉に接触させた後、水分を除去する方法。
【0011】
これらの方法のうち、特に好ましい方法は、塩類としてハロゲン化物を用い、鉄粉と直接混合するか、水溶液として添加混合後水分を除去する方法である。この時のハロゲン化物の使用量は、特に限定されないが、通常鉄粉100重量部に対して0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。ハロゲン化物としては、特にハロゲン化金属が好ましく、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等のハロゲン化アルカリ金属類、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム等のハロゲン化アルカリ土類金属類、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化亜鉛等の塩化金属が挙げられる。
【0012】
本発明においてアルミニウムの水酸化物は、鉄粉が酸化して生成する酸化鉄(錆)の微粒子が包材を透過して、包材表面に析出することを防止する。その理由は明らかでないが、アルミニウムの水酸化物の表面に錆の微粒子が付着するか、あるいはアルミニウムの水酸化物の表面を介して錆の微粒子が粗大化されるものと考えられる。使用されるアルミニウムの水酸化物としては、ヒドラージ系の水酸化物アルミニウム、ベーマイト系の水酸化物アルミニウム、ギブサイト系の水酸化物アルミニウム、あるいはそれらの水和物が挙げられるが、鉄粉と均一に混合しやすく、最も経済的なヒドラージ系の水酸化物アルミニウムが好ましい。アルミニウムの水酸化物の使用量は鉄粉100重量部に対して10〜40重量部であり、10重量部より少ない場合は錆の析出防止効果が不十分であり、40重量部より多い場合は低温下における酸素吸収能が不十分である。
【0013】
本発明の酸素吸収剤は、通常、食品と混和しないように紙、不織布、マイクロポーラスフィルム、プラスチックフィルム等の通気性包材で包装し、食品と隔離した状態で用いられる。好ましい使用形態としては、前述した通気性包材で袋を作り、その中に本発明の酸素吸収成分を充填した状態で使用する方法があげられる。包材として非通気性材料を用い、使用時これを穿孔などにより通気性にしてもよい。
【0014】
本発明を実施するに際しては、本発明の酸素吸収剤と食品とは、当然、外気と遮断された状態で共存在させるのが好ましく、特にガスバリア性に優れた包材で密封された状態で存在させるのが望ましい。このような包材としてはガラスビン、金属缶、アルミラミネート、アルミ蒸着フイルム、ポリ塩化ビニリデンコートフイルム、ポリエステルフイルム、またはこれらのラミネートフイルム、シートなどがあげられる。
【0015】
本発明に適用される食品としては、本発明の酸素吸収剤が水分依存性に属するので、酸素吸収能を発現するために食品からの水分の移行が必要である。従って、一定量以上の水分を有する食品が必要であり、水分活性として0.75程度以上の食品が好ましい。具体的な食品としては、例えば、ハム、ソーセージ、ベーコンなどの畜肉加工食品、サキイカ、ちくわ、かまぼこなどの水産加工食品あるいは水産練製品、つくだに、とろろこぶ、おぼろこぶ等の海藻加工食品、うどん、そば、ラーメン、スパゲッティなどの麺類、饅頭、どら焼き、ケーキ、シュークリームなどの和・洋菓子、米飯、赤飯、モチ、ピザ、味噌などの穀類加工食品等があげられる。
【0016】
本発明の酸素吸収剤は、低温保存される食品の劣化に対しても優れた保存効果を発現する。ここで低温保存とは、通常、15℃以下での保存を意味し、好ましくは−5〜15℃である。本発明の酸素吸収剤は、例えば4℃の保存において24時間程度で系内の残存酸素濃度を0.1%以下とすることが可能となる。
【0017】
なお、本発明の実施に際しては、本発明の酸素吸収剤と食品をガスバリア性に優れた包材で密封された状態で存在させる場合にガスバリア性の包材で形成された系内に窒素ガスや炭酸ガスを充填することも可能である。
【0018】
以下、本発明を実施例、試験例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
・実施例1
COガス還元方式で製造された比表面積2.5m2/g、平均粒径120μmの鉄粉100重量部に、1.2重量部のNaClを含む食塩水を添加混合し、水分を2%以下まで乾燥させた。次に20重量部のヒドラージ系Al(OH)3(中心粒径50μm)を混合して酸素吸収組成物を得た。この酸素吸収組成物の1.5gをポリエチレンテレフタレートとポリエチレンのラミネートフィルム(A)とポリプロピレン製微多孔膜(NFシート、徳山曹達(株)製)とポリエチレン及びポリプロピレンからなる不織布(サンモア、日本バイリーン(株)製)をラミネートし、フッ素系撥水撥油剤で処理したシート(B)(ガーレー式透気度約80秒/100ml)の間に4方シールすることによって包装し、酸素吸収剤を得た。
【0020】
・実施例2〜4
実施例1のAl(OH)3の混合量を10、30および40重量部とした他は実施例1と同様にして酸素吸収剤を得た。
【0021】
・実施例5
COガス還元で製造された比表面積2.5m2/g、平均粒径120μ、嵩密度2.2g/mlの鉄粉100重量部に市販の微粒塩(NaCl)(中心粒子径180μ)とヒドラージ系水酸化アルミニウム(中心粒子径50μ)を1:3の重量比で混合粉砕したもの4重量部、及び前記水酸化アルミニウム22重量部をV字ブレンダーで混合し酸素吸収組成物をえた。
【0022】
・比較例1
実施例1のAl(OH)3を使用しない他は実施例1と同様にして酸素吸収剤を得た。
【0023】
・比較例2〜4
実施例1のAl(OH)3の混合量をそれぞれ7、50、および200重量部とした他は実施例1と同様にして酸素吸収剤を得た。
【0024】
・比較例5〜8
実施例1のAl(OH)3の代わりにBaSO4(中心粒径70μm)、CaCO3(中心粒径5μm)、シリカゲル(中心粒径30μm)、天然ゼオライトの焼成粉砕品(中心粒径75μm)を用いた他は実施例1と同様にして酸素吸収剤を得た。
【0025】
・試験例1
スライスしたボンレスハムに酸素吸収剤を乗せ、ハムで酸素吸収剤を挟むようハムを2つ折りにしてナイロン/ポリエチレン製の袋に入れ、袋の端は開封のまま筒状に巻いて輪ゴムで止めた。このものを10℃の冷蔵庫に保存し、経日的に観察して、錆が発生するまでの日数を調べた。この試験を実施例1〜4及び比較例1,2,5〜8の酸素吸収剤を用いて行った結果を表1に示した。
【表1】
【0026】
・試験例2
プラスチックトレーに2枚の冷蔵したロースハム(スライス品)を乗せ、その上に実施例1、3、および4で製造した各酸素吸収剤(内容量1.5g)を置き、空気250mlとともにKナイロン製の袋に密封した。この包装品を4℃の冷蔵庫で保存し、経時的に包装内の残存酸素濃度を測定して、残存酸素濃度が<0.1%以下となるまでの所要時間を測定した。また、対照として、比較例1、3、および4の脱酸素吸収剤及び市販の酸素吸収剤を用いて同様に試験を行った。結果を表2に示した。
【表2】
【0027】
・試験例3
試験例2と同様にして、実施例1及び3で製造した酸素吸収剤を用いたロースハム包装品を製造し、4℃で16時間保存した後に、蛍光灯下10℃で6時間保存した。この保存したハム(2枚)の色を各々色差計(Z−II型、日本電色工業(株))で測定し、測定されたa値(赤色度)、b値(黄色度)の比(b/a値)を求めた。また、比較のために、酸素吸収剤を使用しないもの、及び市販酸素吸収剤を使用して同様に包装したものも同時にテストを行った。結果を表3に示した。尚、このb/a値は一般的に畜肉製品の発色の程度を表わす指数として用いられているもので数字が小さい方が発色が良好となる。
【表3】
【0028】
【発明の効果】
本発明の酸素吸収剤を用いると低温保存条件下でも優れた酸素吸収能を示す。従って従来の酸素吸収剤では低温保存下で変色を生じていたハム等の畜肉加工品を変色なく保存することができる。
Claims (4)
- i)活性化鉄粉およびii)アルミニウムの水酸化物からなり、この水酸化物の含有量が鉄粉100重量部に対して10〜40重量部であり、実質的に水分を含まないことを特徴とする酸素吸収剤。
- 請求項1記載の酸素吸収剤を食品とともに封入することを特徴とする食品の保存方法。
- 食品が低温保存される食品である請求項2記載の方法。
- 食品が畜肉加工食品である請求項2記載の方法。
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- 1995-01-24 JP JP00891095A patent/JP3571395B2/ja not_active Expired - Lifetime
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