JP3568337B2 - 水素吸蔵合金電極及び金属水素化物蓄電池 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、電気化学的に水素を吸蔵、放出する水素吸蔵合金を備えた水素吸蔵合金電極の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
水素吸蔵合金を負極に用いた金属水素化物蓄電池は、従来からよく使用されているニッケル−カドミウム蓄電池あるいは鉛蓄電池より軽量、且つ高容量で、高エネルギー密度となる可能性があるという点で注目されている。
【0003】
この水素吸蔵合金電極は、希土類−ニッケル系合金、マグネシウム−ニッケル系合金、チタン−ニッケル系合金等の水素吸蔵合金を主とする活物質が集電体の機能を有する活物質保持体に保持されて構成されている。
【0004】
このような水素吸蔵合金電極の製造方法としては、水素吸蔵合金をポリテトラフルオロエチレン等の結着剤と適量の水とを混練してペーストを作製し、このペーストをパンチングメタルやエキスパンドメタル等の活物質保持体の両面に塗着、乾燥して作製する方法が一般的に用いられている。そして、この水素吸蔵合金電極と焼結式ニッケル正極とをセパレータを介して巻回して電極群を作製し、この電極群を電池外装缶に収納し、アルカリ電解液を注液して封口することによって金属水素化物蓄電池を作製することができる。
【0005】
ところで、このような金属水素化物蓄電池においては充放電サイクルを繰り返し行うと、水素吸蔵合金が水素の吸蔵・放出を繰り返し、結晶格子の変化による応力割れを起こして微細化する。このような微細化が過度に起こると、合金粉末間、あるいは合金粉末と活物質保持体との間の接触が悪くなり、電極の導電性が低下して放電容量が減少するという傾向があった。
【0006】
そこで、特開平7−94176号公報では、水素吸蔵合金電極中に酸化鉄Fe2O3及びFeOOHのいずれか一種以上の粉末を添加することにより、充放電の繰り返しにより生じる合金粉末のクラックに前記酸化鉄粉末が入り込み、合金粉末の微細化を抑制して、水素吸蔵電極の寿命を向上させることが提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記のような酸化鉄Fe2O3及びFeOOHを水素吸蔵合金電極中に添加してもサイクル寿命の向上効果は十分に得られないという問題があった。本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、水素吸蔵合金電極を備えた金属水素化物蓄電池のサイクル特性を向上させようとすることを本発明の課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の水素吸蔵合金電極は、セレンの酸化物または水酸化物からなる添加剤を少なくとも1種以上添加したことを特徴とする。
【0009】
【作用】
金属水素化物蓄電池においては、通常、負極である水素吸蔵合金電極の電極容量を正極の電極容量よりも大きくして構成することによって密閉化を実現している。そして、負極は、前記正極容量よりも大きな容量部分を用いて放電リザーブと充電リザーブを確保している。この放電リザーブは、正極が完全放電した際に負極に残存する充電部分(未放電部分)を指し、放電時における負極容量規制になることを防止している。
【0010】
一方、充電リザーブは、正極が完全充電された際に負極に残存する未充電部分を指す。このように充電リザーブを確保することによって、充電時には、正極が負極よりも先に満充電となって酸素ガスを発生するようになり、このような過充電時に正極から発生した酸素ガスは、充電時に負極に吸蔵された水素と反応して消費されるため電池内部のガス圧の上昇を抑制することが可能となり、電池の密閉化を実現している。
【0011】
上記放電リザーブは、負極を予め充電した後電池に組み込むなどして確保することができるが、正極に水酸化コバルト(Co(OH)2)などの2価以下のコ バルト化合物を添加しておくことにより確保することもできる。この2価以下のコバルト化合物は、充電されるが放電し難いという性質を持っており、電池を充電すると、正極の前記コバルト化合物が充電される電気量と、活物質である水酸化ニッケルが充電される電気量の合計分だけ負極が充電されるが、放電時には、水酸化ニッケルが放電される電気量分しか負極が放電されないため、前記コバルト化合物が放電されない電気量に相当する充電部分が負極に確保され、これが放電リザーブとなる。
【0012】
ところが、充放電サイクルを繰り返していくと、過充電時に正極から発生した酸素ガスが、負極に含まれる結着剤等の有機物やセパレータの酸化に使用され、負極に吸蔵された水素で酸素ガスを消費しない分だけ、負極の充電が進行して充電リザーブが減少し、放電リザーブが増加していく。更に、負極に水素吸蔵合金電極を用いた場合には、充放電を繰り返していくと、負極の水素吸蔵合金が酸化されて、水素の吸蔵量が低下し、この結果、充電リザーブが減少していく。
【0013】
そして、このように充電リザーブが減少していくと、ついには、負極が満充電されるようになり、負極から水素ガスが発生するという問題が生じる。この水素ガスは電池内に蓄積され、電池内圧を高めるため、ついには電池のガス排出弁が作動してガスとともに電解液等の電池構成要素が電池外に漏洩する事態を招来し、電池の充放電サイクル寿命の低下につながってしまう。
【0014】
このように、金属水素化物蓄電池内では、各材料が酸化するためにその酸化量に対応した電気量分だけ水素吸蔵合金が水素を吸蔵し、放電リザーブが増加する。この蓄積された水素量は利用できない水素量のため、放電リザーブが増加していくと、負極の実質容量が低下し、サイクル寿命が短くなる傾向があった。
【0015】
そこで、水素吸蔵合金電極に、セレンの酸化物または水酸化物からなる添加剤を少なくとも1種以上添加すると、電池内で合金中に吸蔵された水素でこれらの添加元素が還元されるために放電リザーブを低減する。
【0016】
また、これらの添加剤は、酸化鉄Fe2O3等に比べて還元時の価数変化及び電気化学容量が大きく、一部陰イオン状態まで還元するために、放電リザーブの削減効果に優れ、有効である。
【0017】
【実施例】
(実施例1)
[水素吸蔵合金の作製]
Mm(ミッシュメタル;La,Ce,Nd,Pr等の希土類元素の混合物):Ni:Co:Al:Mnの各金属元素を1:3.4:0.8:0.2:0.6の元素比となるように市販の金属元素を秤量し、高周波溶解炉で溶融し、鋳型に流し込むことにより、組成式MmNi3.4Co0.8Al0.2Mn0.6で表される水素吸蔵合金鋳塊を作製した。これを1000℃で10時間熱処理を行った。この合金鋳塊1kgに水を1リットル加え、ボールミルで平均粒径が50μmになるように粉砕した。
【0018】
[電極の作製]
前記のように作製した水素吸蔵合金とこの合金に対して1重量%の酸化セレン(SeO2)と、結着剤として5重量%のポリテトラフルオロエチレン粉末と、 適量の水とを加えて混練し、ペーストを作製した。このペーストをパンチングメタルからなる集電体の両面に塗着後プレスして電極を作製し、この電極を本発明水素吸蔵合金電極a1と称する。
【0019】
[ニッケル−水素電池の作製]
前記のように作製した水素吸蔵合金電極a1と焼結式ニッケル極とをセパレータを介して巻回し、電極群を作製した。この電極群を外装缶に挿入し、さらに30重量%の水酸化カリウム水溶液を前記外装缶に注液した後、外装缶を密閉することにより円筒型ニッケル−水素電池を作製した。尚、このようにして作製した電池の理論容量は1000mAhである。
【0020】
(実施例2)
前記水素吸蔵合金電極の作製において、添加剤として酸化セレン(SeO2) の代わりに水酸化セレン(Se(OH)4)を用いた以外は、前記実施例1と同 様にして本発明電極a2及びニッケル−水素電池を作製した。
【0024】
(比較例1)
前記水素吸蔵合金電極の作製において、添加剤として酸化セレン(SeO2) の代わりに酸化鉄Fe2O3を用いた以外は、前記実施例1と同様にして比較電極x1及びニッケル水素電池を作製した。
【0025】
(比較例2)
前記水素吸蔵合金電極の作製において、添加剤として酸化セレン(SeO2) の代わりにFeOOHを用いた以外は、前記実施例1と同様にして比較電極x2及びニッケル水素電池を作製した。
【0026】
[電池特性試験]
前記の様にして作製したニッケル水素電池を以下の条件で室温3サイクル充放電を行い、電池の活性化を行った。
【0027】
充電:100mA×16時間 休止:1時間
放電:200mA 放電終止電圧=1.0V 休止:1時間
▲1▼ 充放電サイクル特性
前記の様にして活性化を行った電池を以下の条件でサイクルを行い、電池容量が500mAに達した時点を寿命として評価し、その結果を下記表1に示す。
【0028】
充電:1500mA×48分 休止:1時間
放電:1500mA 放電終止電圧=1.0V 休止:1時間
▲2▼ 高率放電特性
前記の様にして活性化を行った電池を以下の条件で充放電を行い、高率放電特性について評価を行った。尚、200mAでの放電時の容量を100%として評価を行い、その結果を下記表1に併せて示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1から、明らかなように本発明電極a1〜a2を備えた金属水素化物蓄電池は、比較電極x1及びx2を備えた金属水素化物蓄電池よりもサイクル寿命が向上していることがわかる。これは、酸化鉄Fe2O3、FeOOHよりもセレンの酸化物または水酸化物からなる添加剤の方が還元時の電気化学容量が大きく、一部陰イオン状態まで還元されるために、放電リザーブの低減効果が大きいものと考えられる。された水素でこれらの添加元素が還元されるために放電リザーブを低減する。
【0031】
(実施例3)
前記実施例1で作製した水素吸蔵合金にpH値が各々、0.5、1、2、3、4の塩酸を投入して酸処理を行い、pHをモニターし、pHが7に達した時点で反応を終了した。その後、この酸処理した水素吸蔵合金を純水で十分洗浄を行った。このように酸処理した水素吸蔵合金を使用した以外は、前記実施例1と同様にして水素吸蔵合金電極及びニッケル水素蓄電池を作製した。
【0032】
尚、各pH値0.5、1、2、3、4で酸処理した水素吸蔵合金を使用した水素吸蔵合金電極を各々、a6、a7、a8、a9、a10と称する。
【0033】
そして、前記[電池特性試験]と同様の方法で、充放電サイクル特性及び高率放電特性の評価を行い、その結果を下記表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
表2から明らかなように、水素吸蔵合金に酸処理を行うことにより、高率放電特性が向上していることがわかる。特に酸性溶液のpH値が0.5以上3.0以下の範囲に設定することにより、高率放電特性の向上効果が顕著に現れることがわかる。これは水素吸蔵合金を酸処理することにより、合金の表面に形成された希土類元素等の酸化物が除去されると共に、合金の表面にNiリッチ層が形成され、このNiリッチ層が合金の水素の吸蔵・放出反応及びガス吸収反応の触媒となり、反応性が向上したものと考えられる。
【0036】
尚、前記実施例においては、添加剤の添加量を合金重量に対して1重量%に設定したが、0.1重量%以上5重量%以下であることが好ましい。
【0037】
これは、0.1重量%未満であると添加効果が小さく、5重量%を越えると電極中に占める水素吸蔵合金量が減少し、電池の容量が減少してしまうためである。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、水素吸蔵合金電極中にセレンの酸化物または水酸化物からなる添加剤を少なくとも1種以上添加することにより、サイクル寿命特性の優れた金属水素化物蓄電池が得られる。
Claims (3)
- 電気化学的に水素を吸蔵、放出する水素吸蔵合金を備えた水素吸蔵合金電極であって、前記水素吸蔵合金電極にセレンの酸化物または水酸化物からなる添加剤を少なくとも1種以上添加したことを特徴とする水素吸蔵合金電極。
- 前記水素吸蔵合金はpH0.5以上3.0以下の酸性溶液で処理されていることを特徴とする請求項1記載の水素吸蔵合金電極。
- 請求項1ないし2記載の水素吸蔵合金電極を負極として使用したことを特徴とする金属水素化物蓄電池。
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- 1996-12-12 JP JP33244196A patent/JP3568337B2/ja not_active Expired - Fee Related
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