JP3567899B2 - 化粧シート及びその製造方法 - Google Patents
化粧シート及びその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3567899B2 JP3567899B2 JP2001068184A JP2001068184A JP3567899B2 JP 3567899 B2 JP3567899 B2 JP 3567899B2 JP 2001068184 A JP2001068184 A JP 2001068184A JP 2001068184 A JP2001068184 A JP 2001068184A JP 3567899 B2 JP3567899 B2 JP 3567899B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- sheet
- resin
- thermoplastic resin
- resin layer
- decorative sheet
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Description
【産業上の利用分野】
本発明は、印刷及びエンボスの施された化粧シートの製造方法に関し、木質系のボード類、無機質系のボード類、金属系のボード類などの表面に接着剤を用いて貼り合わせて化粧板などとして用いるための化粧シート及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、前記の用途に用いられている化粧シートとしては、塩化ビニル樹脂シートが最も一般的であった。
【0003】
しかし、塩化ビニル樹脂は、焼却時の塩化水素ガスの発生や、酸性雨、ダイオキシン発生の要因となるとも言われており、近年、環境問題の観点から、塩化ビニル樹脂シートを使用しない化粧シートが要求されつつある。
【0004】
しかしながら塩化ビニル樹脂以外の樹脂シートでは、塩化ビニル樹脂シートの持つ適度な柔軟性、耐磨耗性、耐薬品性、耐候性、そして価格的な経済性などの観点から見てバランスのとれた性質を満足するものは現在のところはない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、製造法から見た従来の塩化ビニル樹脂化粧シートへのエンボス付与は、エンボス版を用いて熱圧により機械的に行うために、付与されたエンボスの形状や深さなどは、使用されたエンボス版に対して70%程度の再現性しか得られず、そのエンボスも100℃程度の雰囲気に長時間放置すると消失してしまう欠点があった。
【0006】
そこで、塩化ビニル樹脂に替わる樹脂として、塩化ビニル樹脂を除外したオレフィン系樹脂など、その他の熱可塑性樹脂の使用が考えられているが、化粧シート用の基材シートと、エンボスを施した透明樹脂シートとを積層接着する(貼り合わせる)際に、熱圧による方式や接着剤を介したドライラミネート方式などであるために、貼り合わせ強度の不足による剥離、即ち耐久性の点で難があり、また貼り合わせ面にエアーが残ってしまうために意匠性を著しく損ねるといった問題があった。
【0007】
さらに、溶融した熱可塑性樹脂を、基材シートに直接押出す方式も考えられるが、単に熱可塑性樹脂を押出すだけでは満足する貼り合わせ強度が得られず、耐久性に問題があった。
【0008】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、塩化ビニル樹脂以外の樹脂材料を用いて、塩化ビニル樹脂シートを上回る特性をもった化粧シート及びその製造方法を提供することであり、特に化粧シートの後加工性に適した適度な柔軟性と優れたエンボス再現性、そして積層接着(密着)強度のある優れた耐久性と意匠性を得ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の発明は、任意の印刷模様2を施したオレフィン系樹脂による基材シート1と、基材シート1表面に溶融共押出によりこの順に積層した接着性樹脂層3及びランダム重合タイプのポリプロピレン100重量%に対して水素添加されたスチレン−ブタジエンゴムからなる軟質成分を5〜30重量%混合添加した樹脂による熱可塑性樹脂層4と、熱可塑性樹脂層4表面に施したエンボス模様5とにより形成されていることを特徴とする化粧シートである。
【0010】
次に、本発明の第2の発明は、任意の印刷模様を施したオレフィン系樹脂による基材シート1の表面に、押出機を用いて溶融した樹脂を積層し、同時にエンボスの施された冷却ロールで冷却固化し、エンボス加工を行う化粧シートの製造方法において、接着性樹脂層3が基材シート1側にくるように、基材シート1上に、溶融した接着性樹脂層とランダム重合タイプのポリプロピレン100重量%に対して水素添加されたスチレン−ブタジエンゴムからなる軟質成分を5〜30重量%混合添加した樹脂による熱可塑性樹脂層4とを共押出により積層することを特徴とする化粧シートの製造方法である。
【0029】
【実施例】
本発明の化粧シートを図1に示す一実施例に従って以下に詳細に説明する。
【0030】
基材シート1は、ポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテン、ポリブテン、エチレンコポリマーなどポリオレフィン系の合成樹脂を主体とする樹脂が使用され、該基材シート1として隠蔽性を付与したシートを用いる場合は、これらの樹脂に無機顔料、有機顔料など隠蔽性着色剤を添加するか、若しくは、印刷方式、コーティング方式により隠蔽性の着色インキ、塗料などを用いて着色したシートを用いるものである。
【0031】
基材シート1の表面に任意の印刷模様2が施され、前記印刷模様2は、溶剤タイプのグラビア印刷インキを用いてグラビア印刷方式により前記基材シート1表面に施したものである。
【0032】
該基材シート1表面には、前記印刷模様2上より、接着性樹脂層3と、熱可塑性樹脂層4とが、溶融樹脂を共押出しすることによりこの順に積層され、該熱可塑性樹脂層4表面には、エンボス模様5が施されている。なお前記接着性樹脂層3と熱可塑性樹脂層4は、透明乃至不透明、好ましくは透明乃至半透明である。
【0033】
また、前記基材シート1表面には、前記印刷模様2を施した後の基材シート1面に(又は前記印刷模様2を施す前の基材シート1面に)、コロナ処理を施すことにより、基材シート1と、前記接着性樹脂層3との接着力を強化してある。
【0034】
前記接着性樹脂層3は、基材シート1及び熱可塑性樹脂層4に対して接着性の良好なアクリレート系樹脂、又はアルキルアクリレート系樹脂、又はこれらの共重合体樹脂による熱可塑性樹脂の中から選択されるオレフィン系樹脂に対して接着性の良好な樹脂により形成され、例えば、ポリメタアクリレート(アクリル樹脂)などのアクリレート系樹脂、又はアルキルアクリレート系樹脂、酢酸ビニル−アクリレート共重合体樹脂などのアクリレート系共重合体樹脂、エチレン−アルキルアクリレート共重合体樹脂、エチレン−アルキルアクリレート共重合体樹脂のマレイン酸変性物などアルキルアクリレート系共重合体樹脂のうちのいずれかが使用できる。
【0035】
また、前記接着性樹脂層3には、オレフィン系樹脂による基材シート1に対して、またオレフィン系樹脂による熱可塑性樹脂層4に対して、それぞれ接着強度を強化させるためのシランカップリング剤が適量添加されていてもよい。
【0036】
前記熱可塑性樹脂層4は、ポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテン、ポリブテン、エチレンコポリマーなどポリオレフィン系の合成樹脂により形成されている。
【0037】
前記接着性樹脂層3と熱可塑性樹脂層4とは、共押出方式により溶融状態で、前記基材シート1面にシート状に押出してラミネートしたものである。
【0038】
前記熱可塑性樹脂層4表面には、下層の印刷模様2に同調(印刷模様2の柄、模様などデザイン、あるいは色調などに対応)する又は同調しないエンボス模様5が形成されている。
【0039】
以上が第1の発明の化粧シートであるが、上記第1の発明の化粧シートには、図1に示すように、一実施例として、前記熱可塑性樹脂層4表面に形成されたエンボス模様5内にワイピング処理によりワイピングインキ6が充填されている化粧シートであってもよい。なお、ワイピングインキ6は、通常印刷に使用される印刷インキ、又はワイピング専用の印刷インキが使用されている。
【0040】
また、上記第1の発明の化粧シートには、前記エンボス模様5上より熱可塑性樹脂層4表面に、化粧シート表面の保護層として、透明乃至半透明なトップコート層7が積層されていてもよい。
【0041】
前記トップコート層7は、表面保護層としての化粧シート表面物性、表面艶出し調整のために、ウレタン系樹脂により形成されている。
【0042】
また、上記第1の発明の化粧シートにおいては、他の実施例として、図4に示すように、印刷模様2が形成され、且つコロナ処理が施されている前記基材シート1面に、シランカップリング剤によるアンカーコート層1aが形成され、該アンカーコート層1a上には、前記接着性樹脂層3と、オレフィン系樹脂による熱可塑性樹脂層4がこの順に積層形成されているものである。
【0043】
前記アンカーコート層1aに使用するシランカップリング剤は、ビニル基、エポキシ基、アミノ基などの結合基を備え、オレフィン系樹脂による基材シート1とアクリレート系樹脂などによる接着性樹脂層3との間の接着強度を強化するものである。
【0044】
次に、本発明の第2の発明の化粧シートの製造方法を、図2に示す製造装置の概要側面図に従って、一実施例を以下に詳細に説明する。
【0045】
印刷方式により任意の印刷模様2を施した隠蔽性の基材シート1(又は半透明乃至透明な基材シート1)を、一方より供給フィードしながら、共押出機10を用いてそれぞれ熱溶融した接着性樹脂3aと熱可塑性樹脂4aとを、シート状に押出し供給フィードする。
【0046】
また、上記第2の発明の化粧シートの製造方法の一実施例として、図3に示すように、印刷方式により任意の印刷模様2を施した隠蔽性の基材シート1を、一方より供給フィードしながら、該基材シート1面に、コロナ放電処理装置16によりコロナ処理を施しながら、温度120〜200℃、好ましくは130〜180℃の範囲にて共押出機10を用いてそれぞれ熱溶融した接着性樹脂3aと熱可塑性樹脂4aとを、シート状に押出し供給フィードする。なお、前記コロナ処理は、基材シート2上に印刷模様2を施す前に行ってもよい。
【0047】
また、上記第2の発明の化粧シートの製造方法の一実施例として、図3に示すように、印刷方式により任意の印刷模様2を施した隠蔽性の基材シート1を、一方より供給フィードしながら、該基材シート1面に赤外線照射装置17により遠赤外線(若しくは中赤外線、近赤外線)を照射して、例えば40〜100℃程度に加熱処理を施しながら、共押出機10を用いてそれぞれ熱溶融した接着性樹脂3aと熱可塑性樹脂4aとを、シート状に押出し供給フィードする。
【0048】
また、前記基材シート1面に、上記コロナ処理と加熱処理とを同時に施しながら、該基材シート1と、前記熱溶融した接着性樹脂3aと熱可塑性樹脂4aとを供給フィードするようにしてもよい。
【0049】
それぞれ前記基材シート1と前記接着性樹脂3aと熱可塑性樹脂4aとを、周面に適宜パターンのエンボス版11a(エンボス金型)の形成された回転する冷却状態のエンボスロール11と、回転する加圧ロール12との間に重ね合わせ導入して、基材シート1と各々接着性樹脂層3と熱可塑性樹脂層4とをこの順に積層する。
【0050】
同時に、基材シート1と各々接着性樹脂層3と熱可塑性樹脂層4とを、5kgf/cm〜20kgf/cm(線圧)にて加圧密着させて互いを接着させ、同時に、エンボスロール11のエンボス版11aにより前記熱可塑性樹脂層4面にエンボス模様5を形成する。
【0051】
同時に、前記エンボスロール11による冷却により、各々接着性樹脂層3と熱可塑性樹脂層4とを冷却して、化粧シート20が製造される。
【0052】
なお、図2に示すように、エンボスロール11周面には、前記加圧ロール12の他にエンボスロール11の回転下流側に、保持ロール14(剥離ロール)が配置され、また前記加圧ロール12には、該ロール12の圧逃げを防止するためのバックアップロール13が配置される。
【0053】
前記保持ロール14は、基材シート1と各々接着性樹脂層3と熱可塑性樹脂層4とを、前記ロール12、14間におけるエンボスロール11側に押し付けるように保持させ、また熱可塑性樹脂層4面を、前記ロール12、14間におけるエンボス版11a面に密着保持させている。
【0054】
また、上記第2の発明の化粧シートの製造方法の一実施例としては、化粧シート20の熱可塑性樹脂層4面に、図2には図示しないが、ワイピング用インキ(着色インキ又は無着色インキ)を載せて、適宜ワイピングパッド、スキージなどを用いてワイピング処理を施し、熱可塑性樹脂層4面のエンボス模様5以外の部分に付着するワイピング用インキを拭い取り、エンボス模様5内にワイピングインキ6(着色インキ又は無着色インキ)を充填するものである。(図1参照)
【0055】
また、上記第2の発明の化粧シートの製造方法の一実施例としては、前記エンボスロール11と加圧ロール12との間に、基材シート1と各々接着性樹脂層3と熱可塑性樹脂層4とを導入して積層接着を行い、且つ同時にエンボス加工を施して製造された化粧シート20の熱可塑性樹脂層4面に、前記ワイピング処理を施した後、又は施さずに、図2には図示しないが、該熱可塑性樹脂層4面に透明な合成樹脂を用いてコーティングして、トップコーティング処理を施してトップコート層7(図1参照)を施すものである。
【0056】
本発明の上記第2の発明の化粧シートの製造方法は、冷却されたエンボスロール11と、加圧ロール12との間に、任意の印刷模様2(任意の絵柄)を印刷した基材シート1、及び溶融した接着性樹脂3aと透明な熱可塑性樹脂4aとを共押出して導入し、積層接着、冷却固化、エンボス加工とを同時に行う。
【0057】
積層接着して一体化したシートは、エンボスロール11の外周に沿って移動して、保持ロール14より剥離されて、エンボス模様5の施された化粧シートとなる。
【0058】
その後、化粧シートの表面にコロナ処理を施し、エンボス模様5内にワイピングインキ6を埋め込み、しかる後に、最表面にトップコート層7を設けることにより化粧シート20を得る。
【0059】
エンボスロール11、加圧ロール12、保持ロール14は、いずれも内部に冷却機構を備え、溶融した樹脂の温度を下げて固化させる。通常は、エンボスロール11を金属製、加圧ロール12、保持ロール14は表面をゴム製とする。
【0060】
また、加圧ロール12については、内部に冷却機構を備えた金属製のバックアップロール13を周接配置し、加圧、冷却を補助するものが適当である。
【0061】
上記本発明の化粧シート及びその製造方法においては、基材シート1と、溶融した樹脂との接着強度が重要である。
【0062】
本発明者らは、基材シート1に、前もってアンカーコートとして接着剤を塗工し、その後、溶融した熱可塑性樹脂を単層で押出し、なお且つ溶融した該熱可塑性樹脂を基材シート1に積層接着する直前に、オゾン処理装置により該熱可塑性樹脂の接着面にオゾンガスを吹き付け、接着表面を酸化、活性化処理することによって接着強度を得る方法(特願平6−231355)を、先に提供している。
【0063】
本発明においては、さらに、十分な接着強度を得るため、接着性樹脂3aと熱可塑性樹脂4aとを共押出して、なお且つ接着性樹脂3aにオゾンガスを吹き付ける技術を見出した。
【0064】
図2、又は図3に示すように、溶融した前記接着性樹脂3aと熱可塑性樹脂4aとを共押出機10により押出して、基材シート1に積層する直前に、前記接着性樹脂3aに対して、オゾン処理装置15によりオゾン処理を施すものである。
【0065】
このように前記接着性樹脂3aに対して所定量のオゾンを吹き付けながら、前記基材シート1に、溶融した接着性樹脂3aとともに熱可塑性樹脂4aを共押出方式にて直接押出すことにより、基材シートと接着性樹脂との間の化粧シートとして必要とする良好な接着強度が得られる。
【0066】
しかしながら、接着性樹脂3a面に吹き付ける必要オゾン量を確保するためには2、基材シート1と接着性樹脂3a及び熱可塑性樹脂4aとによるシート送行速度(ライン速度)を、約50m/分以下の低速度に設定しないと確保できない。
【0067】
製造能率の点から、さらに高速度による製造が必要であり、そこで、図3に示すように、溶融した前記接着性樹脂3aと熱可塑性樹脂4aとを共押出機10により押出して、基材シート1に積層する前に、基材シート1に対して、コロナ放電処理装置16によりコロナ処理を施し、同時に赤外線照射装置17により、遠赤外線(若しくは中赤外線、近赤外線)を照射して、例えば40〜100℃程度に加熱処理を施しながら、共押出機10を用いてそれぞれ熱溶融した接着性樹脂3aと熱可塑性樹脂4aとをシート状に押出し供給フィードすることにより、約100m/分、あるいはそれ以上のシート送行速度(ライン速度)によって製造した場合でも化粧シートとして必要とする良好な接着強度が得られる。
【0068】
本発明において使用される熱可塑性樹脂層4としては、ランダム重合タイプのポリプロピレンに、軟質成分として、水素添加されたスチレン−ブタジエンゴムを、ポリプロピレン成分100重量%に対して5〜30重量%程度混合添加した樹脂により形成されていることが適当である。
【0069】
前記熱可塑性樹脂層4に用いるポリプロピレンのランダムポリマーは、、ホモポリマー及びブロックポリマーと比較して、耐衝撃性、低温加工性、透明性に優れた特性を有しており、本発明の化粧シートとして、塩化ビニル樹脂シートの特徴である低温加工性を重視することから、ランダム重合タイプのポリプロピレンを特に選択したものである。
【0070】
前記熱可塑性樹脂層4としてのポリプロピレンに添加される軟質成分の量は、ポリプロピレン100重量%に対して5重量%以下では低温加工性に対する効果が無く、30重量%以上では得られた化粧シートの弾性が大き過ぎる。
【0071】
前記軟質成分をポリプロピレンなどポリオレフィン樹脂に添加する際は、単純にポリオレフィン樹脂に混合するだけであることが望ましい。これは、添加する工程が簡略化されて都合がよいだけでなく、例えばポリプロピレンと軟質成分の両者を架橋反応させると透明性を損なったり、ポリプロピレン中に架橋したドメイン構造を採る軟質成分の界面が受ける衝撃などにより白化現象を起こしたりする不都合を除去できるからである。
【0072】
本発明における基材シート1としては、熱可塑性樹脂層4の軟質成分を除いたポリプロピレンなどポリオレフィン樹脂のみを用いることにより、印刷インキの接着性が良くなる。
【0073】
さらに、基材シート1としては、半透明乃至不透明であってもよいが、化粧シートとする際に隠蔽性を得るため、無機顔料などにより任意な色に着色されているものを使用することが望ましい。
【0074】
さらに、基材シート1を、例えば溶融押出方式でシート状に押し出して形成する際、あるいは接着性樹脂層3、熱可塑性樹脂層4を溶融押出方式でシート状に押し出して積層接着する際のそれぞれシートの熱酸化を防止するため、及び製造後の化粧シート20の熱酸化を防止するため、基材シート1、接着性樹脂層3、熱可塑性樹脂層4のいずれか若しくは全てに酸化防止剤を添加することが望ましい。
【0075】
また、製造後の化粧シート20の紫外線による劣化を防止するために、上記それぞれ基材シート1、接着性樹脂層3、熱可塑性樹脂層4のいずれか若しくは全てに光安定剤を適宜量添加することが望ましい。
【0076】
これら酸化防止剤や、光安定剤などの添加剤の種類や添加量は、特に限定されないが、オレフィン系樹脂に一般に使用されているものを添加すればよい。
【0077】
その効果から、酸化防止剤にはフェノール系を、光安定剤にはヒンダードアミン系を組み合わせるのが最適である。但し、ヒンダードアミン系の光安定剤は、フェノール系の一部の添加剤と光により反応してキノイド結合を作り、所謂ピンキング現象を発生するので注意が必要である。
【0078】
また、基材シート1面に形成される任意の印刷模様2に用いられるインキとしては、基材シート1との密着性、接着性が良いものであれば、特に限定されず、インキ自体の凝集力、汎用性から、ウレタン系のインキが最適である。
【0079】
また、オレフィン系樹脂を用いた基材シート1への密着という点からは、塩素化オレフィン系のインキも使用可能であり、塩素を嫌うという点からは、なるべく抑えて使用することが望ましい。
【0080】
熱可塑性樹脂層4と共押出する接着性樹脂層3は、ポリオレフィン系樹脂の接着用に市販されている樹脂であれば特に限定されるものではなく、基材シート1に対して十分な接着強度を発現するものであれば良い。
【0081】
また、共押出しする接着性樹脂層3と熱可塑性樹脂層4の膜厚比率は、接着性樹脂層:熱可塑性樹脂層=1:9〜4:6の範囲であればよく、好ましくは1:9〜2:8の範囲が良い。
【0082】
第2の発明の化粧シートの製造方法において使用する図2に示すオゾン処理装置15は、一般的なものであれば良く、特別に制約されるものではない。
【0083】
オゾン処理量としては、低濃度高流量型、高濃度低流量型があり、一概には言えないが、あまり流量が多いと流圧による溶融樹脂の膜揺れ、温度低下などの悪影響が考えられるため、オゾン濃度20〜50g/Nm3/hが良い。
【0084】
また、上記第2の発明の化粧シートの製造方法の他の実施例を、図5に従って説明する。
【0085】
図5、任意の印刷模様2が施されたオレフィン系樹脂による隠蔽性の基材シート1の印刷模様2面にコロナ処理装置16によりコロナ処理を施す。
【0086】
その後、該基材シート1を加熱処理装置17(遠赤外線(若しくは中赤外線、近赤外線))にて40〜100℃の範囲で加熱処理した後、該基材シート1表面(印刷模様2側)に、アンカーコート塗布装置18(ロールコーター、グラビアコーター)を用いて、アンカーコート剤としてシランカップリング剤を厚さ0.1〜10μmの範囲で塗布して、乾燥装置19(加熱乾燥、ブロ−乾燥)にて適宜乾燥させ、アンカーコート層1aを形成する。
【0087】
なお、前記コロナ処理、加熱処理については、前記印刷模様2の施された基材シート1上に前記シランカップリング剤によるアンカーコート層1aを形成した後にコロナ処理、加熱処理を施すようにしてもよい。
【0088】
続いて、該基材シート1のアンカーコート層1a側に、温度120〜200℃好ましくは130〜180℃の範囲にて、共押出機10を用いて溶融した接着性樹脂3aとオレフィン系樹脂による熱可塑性樹脂4aとをシート状に押出しながら、オゾン処理装置15により前記接着性樹脂3aに対してオゾンを吹き付けてオゾン処理を施しながら、前記基材シート1と前記接着性樹脂3aと熱可塑性樹脂4aとを、周面に適宜パターンのエンボス版11a(エンボス金型)の形成された回転する冷却状態の前記エンボスロール11と、回転する加圧ロール12との間に重ね合わせ導入して、基材シート1と各々接着性樹脂層3と熱可塑性樹脂層4とをこの順に積層する。
【0089】
同時に、基材シート1と各々接着性樹脂層3と熱可塑性樹脂層4とを、5kgf/cm〜20kgf/cm(線圧)にて加圧密着させて互いを接着させ、同時に、エンボスロール11のエンボス版11aにより前記熱可塑性樹脂層4面にエンボス模様5を形成する。
【0090】
同時に、前記エンボスロール11による冷却により、各々接着性樹脂層3と熱可塑性樹脂層4とを冷却して、化粧シート20が製造される。
【0091】
また、製造された上記化粧シート20の熱可塑性樹脂層4面には、図4に示すように、ワイピング用インキ(着色インキ又は無着色インキ)を載せて、適宜ワイピングパッド、スキージなどを用いてワイピング処理を施し、熱可塑性樹脂層4面のエンボス模様5以外の部分に付着するワイピング用インキを拭い取り、エンボス模様5内に、ワイピングインキ6(着色インキ又は無着色インキ)を充填する。その後、該熱可塑性樹脂層4面に透明な合成樹脂を用いてトップコーティング処理を施してトップコート層7を施すものである。
【0092】
以下に本発明の具体的実施例を示す。但し、下記の実施例1〜実施例4は参考例であり、実施例5が本発明の具体的実施例である。
【0093】
<実施例1>
隠蔽性の基材シートとして、ランダム重合ポリプロピレンに、無機顔料6重量%、フェノール系酸化防止剤0.2重量%、ヒンダードアミン系光安定剤0.3重量%、必要に応じてブロッキング防止剤0.2重量%を、それぞれ添加した樹脂を180℃にてTダイより溶融状態で押出してシートとしたものを用いた。上記基材シート上に、コロナ処理を施した後、グラビア印刷方式により絵柄用インキ(ラミスター;東洋インキ製造(株)製)を使用して、印刷模様として木目模様を施した。これとは別に、接着性樹脂として、エチレン−エチルアクリレート共重合体による接着性樹脂と、熱可塑性樹脂として、ランダム重合ポリプロピレンに、低密度ポリエチレン15重量%、フェノール系酸化防止剤0.2重量%、ヒンダードアミン系光安定剤0.3重量%、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.5重量%、必要に応じてブロッキング防止剤0.2重量%を、それぞれ添加した樹脂とを、それぞれ膜厚比2:8、温度130〜180℃にて共押出機のTダイより溶融状態でシート状に共押出し、押し出された前記接着性樹脂面に対しては、ライン速度60m/分にて、オゾン処理装置によりオゾンガス(オゾン濃度35g/Nm3、エアー流量2Nm3/h、吹き付け幅300mm)を吹き付けながら、前記木目模様と同調する導管エンボス模様のエンボス型が施された冷却機構付きエンボスロールと、冷却機構付き加圧ロールとの間に前記基材シートとともに導入加圧(線圧5〜10kgf/cm)して、基材シートと、接着性樹脂と熱可塑性樹脂とを互いに接着(ラミネート)するとともに、エンボスロールと接する熱可塑性樹脂面にエンボス模様を施すことにより、木目模様に同調する導管模様のエンボス模様を熱可塑性樹脂面に備えた本発明の化粧シートを得た。
【0094】
<実施例2>
上記実施例1と同様にして木目模様に同調する導管模様のエンボス模様を熱可塑性樹脂面に備えた化粧シートを得た後、上記化粧シートの熱可塑性樹脂面にワイピング用インキを載せて、ワイピングパッドにより該熱可塑性樹脂面をワイピングして、エンボス模様内に前記ワイピング用インキを埋め込み、さらに、該熱可塑性樹脂面にウレタン系樹脂を用いてコーティングを施すことにより、木目模様と、エンボス模様内が着色されたことによって得られる導管模様とを備え、且つトップコートを備えた化粧シートを得た。
【0095】
<実施例3>
隠蔽性の基材シートとして、ランダム重合ポリプロピレンに、無機顔料6重量%、フェノール系酸化防止剤0.2重量%、ヒンダードアミン系光安定剤0.3重量%、必要に応じてブロッキング防止剤0.2重量%を、それぞれ添加した樹脂を、温度180℃にてTダイより溶融状態で押出してシートにしたものを用いた。上記基材シート上に、コロナ処理を施した後、グラビア印刷方式により絵柄用インキ(ラミスター;東洋インキ製造(株)製)を使用して、印刷模様として木目模様を施した。次に、基材シート面及び施された印刷模様面にコロナ処理を施した後、遠赤外線ヒーターにより基材シートを60℃に加熱した。これとは別に、接着性樹脂として、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂と、熱可塑性樹脂として、ランダム重合ポリプロピレンに、低密度ポリエチレン15重量%、フェノール系酸化防止剤0.2重量%、ヒンダードアミン系光安定剤0.3重量%、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤0.5重量%、必要に応じてブロッキング防止剤0.2重量%を、それぞれ添加した樹脂とを、それぞれ膜厚比2:8、温度130〜180℃にて、共押出機のTダイより溶融状態にてシート状に共押出し、押し出された前記接着性樹脂面に対しては、ライン速度80m/分にてオゾン処理装置によりオゾンガス(オゾン濃度35g/Nm3、エアー流量2Nm3/h、吹き付け幅300mm)を吹き付けながら、前記木目模様と同調する導管エンボス模様のエンボス型が施された冷却機構付きエンボスロールと、冷却機構付き加圧ロールとの間に、前記基材シートとともに導入加圧(線圧5〜10kgf/cm)して、基材シートと、接着性樹脂と、熱可塑性樹脂とを互いに接着(ラミネート)するとともに、エンボスロールと接する熱可塑性樹脂面にエンボス模様を施すことにより、木目模様に同調する導管模様のエンボス模様を熱可塑性樹脂面に備えた本発明の化粧シートを得た。
【0096】
<実施例4>
接着性樹脂として、マレイン酸変性されたエチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂を用いた以外は、上記実施例3と同様にして化粧シートを得た。
【0097】
<実施例5>
隠蔽性の基材シートとして、ランダム重合ポリプロピレンに、無機顔料6重量%、フェノール系酸化防止剤0.2重量%、ヒンダードアミン系光安定剤0.3重量%、必要に応じてブロッキング防止剤0.2重量%を、それぞれ添加した樹脂を180℃にてTダイより溶融状態で押出してシートとしたものを用いた。上記基材シート上に、グラビア印刷方式により絵柄用インキ(ラミスター;東洋インキ製造(株)製)を使用して、印刷模様として木目模様を施した。続いて、前記印刷模様上より該基材シートに、適切な濃度に溶剤希釈したシランカップリング剤を塗布した後、基材シート面にコロナ放電によりコロナ処理を施し、乾燥装置若しくは加熱処理装置の遠赤外線ヒーターにて基材シートを加熱処理した。これとは別に、接着性樹脂として、マレイン酸変性したエチレン−エチルアクリレート共重合体による接着性樹脂と、熱可塑性樹脂として、ランダム重合ポリプロピレンに、水素添加されたスチレン−ブタジエンゴム10重量%、フェノール系酸化防止剤0.2重量%、ヒンダードアミン系光安定剤0.3重量%、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.5重量%、シランカップリング剤1重量%、必要に応じてブロッキング防止剤0.2重量%を、それぞれ添加した樹脂とを、それぞれ膜厚比2:8、温度130〜180℃にて、共押出機のTダイより溶融状態でシート状に共押出し、押し出された前記接着性樹脂面に対して、ライン速度30m/分にて、オゾン処理装置により、オゾンガス(オゾン濃度35g/Nm3、エアー流量2Nm3/h、吹き付け幅300mm)を吹き付けながら、前記木目模様と同調する導管エンボス模様のエンボス型が施された冷却機構付きエンボスロールと、冷却機構付き加圧ロールとの間に前記基材シートとともに導入加圧(線圧5〜10kgf/cm)して、基材シートと、接着性樹脂と熱可塑性樹脂とを互いに接着(ラミネート)するとともに、エンボスロールと接する熱可塑性樹脂面にエンボス模様を施すことにより、木目模様に同調する導管模様のエンボス模様を熱可塑性樹脂面に備えた本発明の化粧シートを得た。
【0098】
本発明の化粧シートに対する比較例を以下に示す。
【0099】
<比較例1>
ランダム重合ポリプロピレンを主原料とした熱可塑性樹脂を、単層にて溶融押出した以外は、実施例1と同様の方法で、木目模様に同調する導管模様のエンボス模様を熱可塑性樹脂面に備えた化粧シートを得た。
【0100】
<比較例2>
隠蔽性の基材シートとして、着色された塩化ビニル樹脂シート上に、グラビア印刷方式によりインキ(VCGT−K;東洋インキ製造(株)製)を用いて木目模様の印刷模様を施した。続いて、上記基材シートと、熱可塑性樹脂として溶融していない状態の透明な塩化ビニル樹脂シートとを、130〜150℃にて加熱しながらエンボスロールと圧ロール(線圧5〜10kgf/cm)との間にライン速度60m/分で導入して、熱圧によるダブリングエンボス方式により積層接着(ラミネート)すると同時に前記木目模様に同調する導管模様のエンボス模様を施して、木目模様に同調する導管模様のエンボス模様を熱可塑性樹脂面に備えた化粧シートを得た。
【0101】
<比較例3>
隠蔽性の基材シートとして、上記実施例1にて用いた基材シート上に、グラビア印刷方式によりインキ(VCGT−K;東洋インキ製造(株)製)を用いて木目模様の印刷模様を施し、続いて、上記基材シート上にウレタン系接着剤を塗布乾燥させた。その後、該接着剤を塗布した上記基材シートと、上記実施例1にて用いた熱可塑性樹脂として透明な樹脂シートとを、130〜150℃にて加熱しながらエンボスロールと加圧ロール(線圧5〜10kgf/cm)との間に、ライン速度60m/分で導入して、ドライラミネートしながらエンボスして、熱圧と前記接着剤とにより積層接着(ラミネート)すると同時に前記木目模様に同調する導管模様のエンボス模様を施して、木目模様に同調する導管模様のエンボス模様を熱可塑性樹脂面に備えた化粧シートを得た。
【0102】
<比較例4>
シランカップリング剤によるアンカーコート層を形成しない以外は、上記実施例5と同様にして化粧シートを得た。
【0103】
<比較例5>
シランカップリング剤を接着性樹脂に添加しない以外は、上記実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0104】
<比較試験1>
上記実施例1〜実施例4により得られた本発明の各々化粧シートと、比較例1〜比較例3により得られた各々化粧シートについて、180°T型剥離方式にて基材シートと接着性樹脂層及び熱可塑性樹脂層との間の常温(温度20℃前後)雰囲気中での層間の剥離強度を測定した。(表1参照)
【0105】
また、表面粗さ計を用いて、施されたエンボス模様のエンボス深さとエンボス版(エンボス型版)深さとをそれぞれ測定し、エンボス再現性をその両者の深さの比率として求めた。(表1参照)
【0106】
さらに、得られた化粧シートのエンボス模様のエンボス深さと、得られた化粧シートを100℃の雰囲気中に5時間放置した後のエンボス模様のエンボス深さとを表面粗さ計により測定して、熱によるエンボス変形率を測定した。(表1参照)
【0107】
また、化粧シートのラミネート(積層接着)面におけるエアー残り(気泡状の陰影)を目視及び検鏡にて観察した。(表1参照)
【0108】
<比較結果1>
【0109】
【表1】
【0110】
表1から明らかなように、実施例1〜実施例4による本発明の化粧シートは、ポリオレフィン系樹脂による基材シート上に、接着性樹脂とポリオレフィン系樹脂による熱可塑性樹脂とを溶融共押出して、加圧エンボス方式にて積層接着及びエンボスしたので、脱塩化ビニル化粧シートであることは勿論のこと、施されたエンボス模様がエンボス版に対して忠実に再現された。
【0111】
また高温の雰囲気中における化粧シートのエンボス深さに変化が生じず、さらに溶融した状態で積層接着させたので、剥離強度も3.5〜5kgf/インチ以上の良好な接着強度が得られ、ラミネートした後のエアーの混入も見られなかった。
【0112】
また実施例3ではライン速度(化粧シート製造速度)80m/分の高速で3.5kgf/インチの剥離強度が得られ、特にマレイン酸変性のエチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂を接着性樹脂として用いた実施例4ではライン速度80m/分の高速で5kgf/インチ以上の良好な剥離強度が得られた。
【0113】
これに対して、比較例1による化粧シートは、ポリオレフィン系樹脂による基材シート上に、接着性樹脂を用いずにポリオレフィン系樹脂による熱可塑性樹脂を単層で溶融押出して加圧エンボス方式にて積層接着及びエンボスしたもので、エアーの混入は見られなかったが、剥離強度は0.9kgf/インチで、溶融共押出しによる接着性樹脂を用いた上記実施例1〜実施例4に比較して十分な剥離強度が得られなかった。
【0114】
また、比較例2による化粧シートは、塩化ビニル樹脂シートによる基材シート上に、溶融していない状態の塩化ビニル樹脂シートによる熱可塑性樹脂シートを熱圧によりダブリングエンボス方式にて積層接着及びエンボスしたもので、接着強度は得られたが、熱圧によるダブリングエンボス方式であるため、エンボス再現性とエンボス保持率が十分に得られなかった。
【0115】
また、比較例3による化粧シートは、予め接着剤を塗布乾燥させた非塩化ビニル樹脂シートによる基材シートと、非塩化ビニル樹脂の熱可塑性樹脂による溶融していない状態の熱可塑性樹脂シートとを、エンボスロールと圧ロールとの間に導入して、熱圧によりドライラミネートしながらエンボスして積層接着及びエンボス模様を施したもので、剥離強度は3.6kgf/インチと良好な接着強度が得られるものの、ドライラミネート方式による積層接着であるため、積層間にエアーが混入して、化粧シートとしての意匠性を損なう結果となった。
【0116】
<比較試験2>
上記実施例5により得られた本発明の化粧シートと、比較例4〜比較例5により得られた化粧シートについて、180°T型剥離方式にて、基材シートと接着性樹脂層及び熱可塑性樹脂層との間の常温(温度20℃前後)又は60℃雰囲気中での層間の剥離強度を測定した。(表2参照)
【0117】
また、上記実施例5により得られた本発明の各々化粧シートと、比較例4〜比較例5により得られた化粧シートとに、それぞれ500gfの荷重を掛けて、5分間における剥がれ距離(耐熱クリープ)を測定した。(表2参照)
【0118】
<比較結果2>
【0119】
【表2】
【0120】
表2から明らかなように、シランカップリング剤を用いた実施例5による本発明の化粧シートは、シランカップリング剤を用いない比較例4〜比較例5の化粧シートよりも、常温において高い剥離強度を保持し、しかも60℃雰囲気中においても剥離強度は低下せず、化粧シートとしての所定の剥離強度を保持した。
【0121】
また、ポリオレフィン系樹脂による基材シート上に、接着性樹脂とポリオレフィン系樹脂による熱可塑性樹脂とを溶融共押出して、加圧エンボス方式にて積層接着及びエンボスしたので、脱塩化ビニル化粧シートであることは勿論のこと、施されたエンボス模様がエンボス版に対して忠実に再現され、塩化ビニル樹脂による化粧シートと同等以上の物性を保持し、環境問題に対しても十分に対応できる。
【0122】
なお、シランカップリング剤は、一般的に耐候性が良好であり、例えば、アンカーコート層として使用した場合は、従来のウレタン系のアンカーコート層を使用した場合と比較して耐候性の面で有利であることが期待される。
【0123】
【作用】
以上に示したように、本発明のごとく基材シート1及び溶融押出を行う樹脂にオレフィン系樹脂を使用することにより、塩化ビニルシート以上の印刷適性、耐熱性、耐候性、柔軟性などを付与することができる。
【0124】
特にエンボス模様5が施される熱可塑性樹脂層4に、ポリオレフィン系樹脂としてポリプロピレンを使用し、軟質成分を適宜に選択添加することにより、低温時の後加工適性に優れた化粧シートが得られる。
【0125】
さらに、溶融押出された樹脂を直ちに冷却機構を有するエンボスロール11に抱かせることにより後加工時の熱によるエンボス戻りの心配がなく、また例えばホログラムに用いられるようなエンボス版による微細なエンボス模様5の付与も可能となる。
【0126】
さらに、基材シート1に、接着性樹脂層3と熱可塑性樹脂層4とを共押出しして、なお且つオゾン処理を施して積層接着することにより、貼り合わせ強度の不足による剥離、即ち化粧シートの耐久性や、貼り合わせ面にエアーが残ってしまい意匠性を著しく損ねることがなく、工程、設備の軽減という利点もある。
【0127】
さらに、基材シート1に、コロナ処理又は及び加熱処理を施し、接着性樹脂としてアクリレート系樹脂、又はアルキルアクリレート系樹脂、特にエチレン−アルキルアクリレート樹脂などアルキルアクリレート系共重合体樹脂、あるいはマレイン酸変性樹脂を使用することにより、化粧シート20の積層接着におけるライン速度(化粧シート製造送行速度)を、80m/分程度までアップしても所定の接着強度(密着強度)が得られ、また、例えば80m/分以上にアップした場合でも所定の密着強度が得られることが期待できるものである。
【0128】
また、本発明の化粧シート及びその製造方法においては、接着性樹脂層3の樹脂中にシランカップリング剤を添加した際には、基材シート1と接着性樹脂層3及び接着性樹脂層3と熱可塑性樹脂層4との層間の剥離強度が強化し、結果的に60℃の高温雰囲気中においても、化粧シート20の層間の剥離強度は、常温(20℃前後)雰囲気中と同程度の強度を保持する。
【0129】
また、シランカップリング剤を添加したアンカーコート層1aを、基材シート1と接着性樹脂層3との層間に設けた際には、該基材シート1と接着性樹脂層3との層間の剥離強度が強化されて、結果的に60℃の高温雰囲気中においても、化粧シート20の層間の剥離強度は、常温(20℃前後)雰囲気中と同程度の強度を保持する。
【0130】
【発明の効果】
本発明の化粧シート及びその製造方法は、塩化ビニル樹脂を一切使用しないため、環境問題の発生の心配がなく、且つ塩化ビニルと同等、寧ろそれ以上の化粧シートとして良好な物性を持ち、特に樹脂をシート状に溶融押出しながら基材シートと積層接着させ、且つエンボスを行うため、接着力があって良好な剥離強度が得られ、接着剤やアンカーコート剤が不要であり、エンボス模様の再現性、耐熱性に優れた化粧シートが得られる効果がある。
【0131】
さらに、熱可塑性樹脂を溶融押出してシート化するため、一旦シートに成形したものを、再度加熱して貼り合わせる(積層接着する)場合よりも、貼り合わせ面にエアーの混入がなく、意匠性の優れた化粧シートが得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明の化粧シートの一実施例を示す側断面図である。
【図2】第2の発明の化粧シートの製造方法の一実施例を説明する製造装置の概要側面図である。
【図3】第2の発明の化粧シートの製造方法の他の実施例を説明する製造装置の概要側面図である。
【図4】第1の発明の化粧シートの他の実施例であり、シランカップリング剤によるアンカーコート層を備えた化粧シートを示す側断面図である。
【図5】第2の発明の化粧シートの製造方法のその他の実施例を説明する製造装置であり、シランカップリング剤を塗布するアンカーコート塗布装置を備えた製造装置の概要側面図である。
【符号の説明】
1…基材シート
1a…アンカーコート層
2…印刷模様(絵柄インキ)
3…接着性樹脂層
3a…接着性樹脂
4…熱可塑性樹脂層
4a…熱可塑性樹脂
5…エンボス模様
6…ワイピングインキ
7…トップコート層
10…共押出機
11…エンボスロール
11a…エンボス版
12…加圧ロール
13…バックアップロール
14…保持ロール
15…オゾン処理装置
16…コロナ処理装置
17…加熱処理装置
18…アンカーコート塗布装置
19…乾燥装置
20…化粧シート
Claims (2)
- 任意の印刷模様2を施したオレフィン系樹脂による基材シート1と、基材シート1表面に溶融共押出によりこの順に積層した接着性樹脂層3及びランダム重合タイプのポリプロピレン100重量%に対して水素添加されたスチレン−ブタジエンゴムからなる軟質成分を5〜30重量%混合添加した樹脂による熱可塑性樹脂層4と、熱可塑性樹脂層4表面に施したエンボス模様5とにより形成されていることを特徴とする化粧シート。
- 任意の印刷模様を施したオレフィン系樹脂による基材シート1の表面に、押出機を用いて溶融した樹脂を積層し、同時にエンボスの施された冷却ロールで冷却固化し、エンボス加工を行う化粧シートの製造方法において、接着性樹脂層3が基材シート1側にくるように、基材シート1上に、溶融した接着性樹脂層とランダム重合タイプのポリプロピレン100重量%に対して水素添加されたスチレン−ブタジエンゴムからなる軟質成分を5〜30重量%混合添加した樹脂による熱可塑性樹脂層4とを共押出により積層することを特徴とする化粧シートの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001068184A JP3567899B2 (ja) | 2001-03-12 | 2001-03-12 | 化粧シート及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001068184A JP3567899B2 (ja) | 2001-03-12 | 2001-03-12 | 化粧シート及びその製造方法 |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP04005695A Division JP3185590B2 (ja) | 1995-02-28 | 1995-02-28 | 化粧シート及びその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2001239619A JP2001239619A (ja) | 2001-09-04 |
JP3567899B2 true JP3567899B2 (ja) | 2004-09-22 |
Family
ID=18926411
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001068184A Expired - Fee Related JP3567899B2 (ja) | 2001-03-12 | 2001-03-12 | 化粧シート及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3567899B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US10703079B2 (en) | 2016-03-24 | 2020-07-07 | Toppan Printing Co., Ltd. | Decorative sheet and method of producing the same |
Families Citing this family (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5447764B2 (ja) * | 2008-03-28 | 2014-03-19 | 大日本印刷株式会社 | 反り防止木質板並びに化粧板 |
CN101980866B (zh) * | 2008-03-28 | 2014-05-07 | 大日本印刷株式会社 | 防湿片材、防变形木质板及装饰板 |
JP5422946B2 (ja) * | 2008-03-28 | 2014-02-19 | 大日本印刷株式会社 | 防湿シートおよびそれを用いた反り防止木質板並びに化粧板 |
WO2009119594A1 (ja) * | 2008-03-28 | 2009-10-01 | 大日本印刷株式会社 | 防湿シート、反り防止木質板及び化粧板 |
JP6243995B2 (ja) * | 2015-11-17 | 2017-12-06 | イビデン株式会社 | 化粧板 |
JP6465038B2 (ja) * | 2016-01-08 | 2019-02-06 | 信越化学工業株式会社 | 積層体およびその製造方法 |
-
2001
- 2001-03-12 JP JP2001068184A patent/JP3567899B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US10703079B2 (en) | 2016-03-24 | 2020-07-07 | Toppan Printing Co., Ltd. | Decorative sheet and method of producing the same |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2001239619A (ja) | 2001-09-04 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
TWI749206B (zh) | 高頻介電加熱接著片,及使用高頻介電加熱接著片而成的接著方法 | |
CN104968499B (zh) | 图形制品 | |
CN102333652B (zh) | 通过挤出涂布制作多层印刷介质的方法 | |
EP1812234B1 (en) | Non-pvc flooring made of thermo plastic elastomer and method for producing the same | |
CN103717405B (zh) | 图形制品 | |
JP3185590B2 (ja) | 化粧シート及びその製造方法 | |
JP3567899B2 (ja) | 化粧シート及びその製造方法 | |
JP3058023B2 (ja) | 化粧シートおよびその製造方法 | |
JP3705301B2 (ja) | 化粧シートの製造方法 | |
JP3175482B2 (ja) | 化粧シート及びその製造方法 | |
JP2012081684A (ja) | 加熱転写シートおよびその製造方法 | |
JP5245490B2 (ja) | 表面材の製造方法 | |
JP3932610B2 (ja) | エンボス化粧シート | |
JP7342411B2 (ja) | 化粧シート | |
JP3765884B2 (ja) | 化粧シート | |
JPS6096444A (ja) | 溝付き防水シ−トの製法 | |
JP2001205702A (ja) | 化粧シートの製造方法 | |
JP2020059260A (ja) | シーラントフィルムの製造方法 | |
JPH1142756A (ja) | エンボス化粧シート | |
JP3785704B2 (ja) | 紙基材化粧シート | |
JPH0924585A (ja) | エンボス化粧シート及びその製造方法 | |
JP4029434B2 (ja) | 単層エンボス化粧シート及びその製造方法 | |
JP2004255834A (ja) | 樹脂シートの熱成形方法 | |
JP3407423B2 (ja) | 化粧シートの製造方法 | |
JPH08132577A (ja) | 化粧シート及びその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20040517 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20040525 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20040607 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080625 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090625 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100625 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100625 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110625 Year of fee payment: 7 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110625 Year of fee payment: 7 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120625 Year of fee payment: 8 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120625 Year of fee payment: 8 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130625 Year of fee payment: 9 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140625 Year of fee payment: 10 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |