JP3567866B2 - 車両の操舵支援装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の操舵支援装置に係り、詳しくは、運転者のステアリング操作の支援を行なう車両の操舵支援装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、運転者が操作するステアリングハンドルに対して、車両が車線内の目標ラインに沿って走行するように操舵力を与えて運転者の操舵支援を行なうようにした車両の操舵支援装置が提案されている(特開平11−105728)。この車両の操舵支援装置では、運転者のステアリング操作により車両が導かれる走行ラインを車線内で予め設定された複数の目標ラインから選択された1つの目標ラインに近づけるための操舵トルクを発生させている。この操舵トルクにより運転者のステアリングハンドルの操作が助勢されて、運転者の操舵支援がなされる。
【0003】
このような車両の操舵支援装置によれば、車両走行のラインどりについて運転者の意思が比較的反映されると共に、車線からの車両の逸脱を防止するような運転者に対する操舵支援が可能となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、運転者がステアリング操作を積極的に行なって車両を上述したような予め設定された目標走行ラインと異なる走行ラインにて走行させようとすると、操舵支援装置により発生される操舵トルクにより、運転者によってはその操舵支援を煩わしく感じる場合がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、運転者が煩わしさをできるだけ感じることのない状態で、適正に操舵支援が行なえるような車両の操舵支援装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、請求項1に記載されるように、運転者の行なうステアリング操作を支援する車両の操舵支援装置において、車両を車線内に保持するように操舵制御を行うことによりステアリング操作を支援する第一の操舵支援制御手段と、ステアリング操作部の操作量に基づいて車両の旋回挙動を安定させるような操舵制御を行うことによりステアリング操作を支援する第二の操舵支援制御手段と、運転者が積極的なステアリング操作を行なう意思があるか否かを判定する操作意思判定手段と、運転者が積極的なステアリング操作を行なう意思がないことを上記操作意思判定手段が判定したときに、上記第一の操舵支援制御手段を有効にする一方、運転者が積極的なステアリング操作を行なう意思があることを上記操作意思判定手段が判定したときに、上記第二の操舵支援制御手段を有効にする制御切換え手段とを有し、上記操作意思判定手段が運転者が操作すべきステアリング操作部の操作状態に基づいて運転者が積極的なステアリング操作を行なう意思があるか否かを判定し、上記第二の操舵支援制御手段がステアリング操作部の操作量に基づいて車両の旋回挙動を安定させるように定められる制御目標値を設定し、操舵量を上記制御目標値に近づけるように制御する、ように構成される。
【0007】
このような車両の操舵支援装置では、運転者が積極的なステアリング操作を行なう意思がないと判定された場合に、第一の操舵支援制御手段が有効にされ、車両が車線内に保持されるように操舵制御がなされる。この場合、運転者は積極的にステアリング操作を行なう意思がないので、大きな量のステアリング操作を行なわず、ステアリング操作に干渉するような操舵制御がなされたとしても、運転者のステアリング操作に対する妨げ感は少ない。
【0008】
一方、運転者が積極的なステアリング操作を行なう意思があると判定された場合、第二の操舵制御手段が有効にされ、運転者が操作するステアリング操作部の操作量に基づいて車両の旋回挙動を安定させるよう操舵制御がなされる。この場合、ステアリング操作部の操作量に基づいて車両の旋回挙動を安定されるようになされる操舵制御によってステアリング操作に対する支援がなされる。このようにステアリング操作部の操作量に基づいて操舵制御がなされるので、運転者のステアリング操作に対する操舵制御に起因した妨げ感を低減させることが可能になる共に、車両の安定性を維持することも可能となる。
【0009】
上記ステアリング操作部の操作量は、ステアリング操作部が運転者によって操作された量を表すものであり、例えば、ステアリング角にて表すことができる。
【0010】
上記操作意思判定手段は、運転者が操作すべきステアリング操作部の操作状態に基づいて運転者が積極的なステアリング操作を行なう意思があると判定する。運転者が積極的なステアリング操作を行なう意思があると見なし得る状態及び運転者が積極的なステアリング操作を行なう意思がないと見なし得る状態を判定できるものであれば、特に限定されず、例えば、運転者から発生される音声、運転者が操作する例えばステアリング操作部に設けられたスイッチに基づいて判定することも可能である。
【0011】
このステアリング操作部の操作状態は、例えば、ステアリング操作部の操作量の大きさや変化量、ステアリング操作部に作用するトルクの大きさや操作量等にて表すことができる。
【0012】
上記第二の操舵支援制御手段は、具体的には、ステアリング操作部の操作量に基づいて車両の旋回挙動を安定させるように定められる制御目標値を設定し、操舵量を上記制御目標値に近づけるように制御する。
【0013】
車両のヨーレートは車両の旋回挙動の安定性を表す指標となりうる。従って、例えば、上記第二の操舵支援制御手段は、ステアリングの操作量に基づいて車両の旋回挙動を安定させるようなヨーレートを維持した状態で操舵量を制御するようにできる。
【0014】
上記操舵量は操舵輪の向きと量を表すもので、例えば、操舵角(舵角)で表すことができる。
【0015】
上記第二の操舵支援制御手段での操舵制御においてステアリング操作部の操作量の急激な変化に対して車両の安定性が損なわれることを防止するという観点から、本発明は、請求項2に記載されるように、上記車両の操舵支援装置において、上記第二の操舵支援制御手段は、操舵量を上記目標制御値に近づけるに際し、舵角と上記制御目標値との差が所定値より大きい状況では制御目標値に対する追従性を上記差が所定値以下となる状況より鈍らせるように構成することができる。
【0016】
特に、運転者が積極的なステアリング操作を行なう意思がない状態からその意思がある状態に変化して、車両を車線内に保持するように操舵制御を行なう第一の操舵制御手段が有効な状態からステアリング操作部の操作量に基づいて車両の旋回挙動を安定させるような操舵制御を行う第二の操舵支援制御手段が有効となる状態に切換えられる際は、制御目標値が大きく変化しうる。このように第一の操舵支援制御手段が有効な状態から第二の操舵支援制御手段が有効な状態に切換えられる際に制御目標値の変化が大きくなっても、実際の操舵量(舵角)の追従性が鈍くなることにより、車両(挙動)の状態が急激に変化することを防止することができる。
【0017】
上記ステアリング操作部の操作量に対する操舵量の追従性とは、制御量が本来得られるべき制御量に達するまでの当該制御量の変化の状態を表すものであり、その追従性が鈍いとは、当該制御量の変化が遅い状態をいう。
【0018】
上記のようにステアリング操作部の操作量に対する操舵量の追従性を鈍らせるための具体的手段を提供するという観点から、本発明は、請求項3に記載されるように、上記車両の操舵支援装置において、上記第二の操舵支援制御手段は、上記舵角と上記制御目標値との差が所定値より大きい状況において現時点の舵角と上記制御目標値との間の値となる暫定目標値を設定する暫定目標値設定手段を有し、制御量を上記目標制御値に近づけるに際し、該暫定目標値設定手段は、制御量がその暫定目標値に達する毎に暫定目標値を更新するように構成することができる。
【0019】
このような車両の操舵支援装置では、制御量が暫定目標値に達する毎に新たな暫定目標値が設定され、更にその暫定目標値に制御量がに近づくようにして段階的に当該舵角がステアリング操作部の操作量に基づいて定められた制御目標値に近づくようになるので、制御量の追従性を鈍らせることができる。
【0020】
制御量の追従性の変化に起因した運転者のステアリング操作に対する違和感を緩和するという観点から、本発明は、請求項4に記載されるように、上記各車両の操舵支援装置において、第二の操舵支援制御手段は、制御量の追従性に応じてステアリング操作部の操作特性を制御する操作特性制御手段を有するように構成することができる。
【0021】
このような車両の操舵支援装置では、上述したように、第一の操舵支援制御手段が有効な状態から第二の操舵支援制御手段が有効な状態に切換わった場合など、制御目標値と操舵量の差に応じて制御量の追従性が変化しても、その追従性に応じてステアリング操舵部の操作特性が制御されるので、運転者のステアリング操作に対する違和感を緩和することができる。
【0022】
上記ステアリング操作部の操作特性は、ステアリング操作部を操作する運転者の操作感に影響を与えるステアリング操作部の操作に係る特性であれば特に限定されない。
【0023】
具体的には、請求項5に記載されるように、上記車両の操舵支援装置において、上記操作特性制御手段は、ステアリング操作部の操作に対する操舵輪の転舵の応答性を制御する操作応答特性制御手段を有するように構成することができる。この場合、ステアリング操作部の操作特性は、ステアリング操作部の操作に対する操舵輪の転舵の応答性となる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
本発明の実施の一形態に係る車両の操舵支援装置は、例えば、図1に示すように構成される。
【0026】
図1において、運転者が操作するステアリングハンドル20(ステアリング操作部)の回転軸には、ステアリングハンドル20の回転を操舵機構に伝達する可変ステアリングギヤ比機構(VGRS:Variable Gear Ratio Steering)30が設けられている。この可変ステアリングギヤ比機構30は、ステアリングギヤの切換えを行なうアクチュエータVGRSACTを有しており、このアクチュエータVGRSACTがステアリングギヤの切換えを行なってギヤ比を制御することにより、ステアリングハンドル20の回転の操舵機構への伝達率が制御される。即ち、ステアリングハンドル20の回転に対する操舵輪の転舵の応答性が制御される。可変ステアリングギヤ比機構30でのギヤ比が1となる場合、ステアリングハンドル20の回転がそのまま操舵機構に伝達される。そして、可変ステアリングギヤ比機構30でのギヤ比(θ/δに依存、θ:操舵角、δ:ステアリング角)が小さくなるに従ってステアリングハンドル20の回転の操舵機構への伝達率が低下する。
【0027】
上記操舵機構は、電動パワーステアリング(EMPS)モータ40を有しており、このEMPSモータ40の動作により操舵輪に転舵力が付加されるようになっている。なお、この例では、後述するように、EMPSモータ40は、操舵輪に転舵力を補助的に付加するパワーステアリングのアクチュエータと共に、操舵輪を積極的に転舵させるための操舵アクチュエータとして利用される。
【0028】
上記可変ステアリングギヤ比機構30の上流側におけるステアリングハンドル20の回転軸には、ステアリングハンドル20の回転角を検出するためのステアリング角センサ21と、その回転軸に作用するトルクを検出するためのトルクセンサ22が設けられている。
【0029】
制御ユニット(ECU)10には、ヨーレートセンサ12、車輪速センサ13、操舵角センサ14からの各検出信号が供給されると共に、車両前方の車線を撮影するカメラユニット11からの映像信号が供給される。制御ユニット10は、上記カメラユニット11からの映像信号、ヨーレートセンサ12からのヨーレート検出信号、車輪速センサ13からの車輪速パルス、操舵角センサ14からの操舵角検出信号、ステアリング角センサ21からのステアリングハンドル20の回転角(ステアリング角)検出信号及びトルクセンサ22からのトルク検出信号に基づいて、可変ステアリングギヤ比機構30のアクチュエータVGRSACT及びEMPSモータ40を制御することにより操舵支援制御を行う。
【0030】
上記制御ユニット10は、例えば、図2に示す手順に従って操舵支援制御を行う。
【0031】
図2において、制御ユニット10は、車室内の所定の位置に設けられたシステムスイッチのオン操作がなされたか否かを監視している(S1)。このシステムスイッチがオフ状態であれば(S1でNO)、特に操舵支援制御は行なわれない。即ち、ステアリングハンドル20の回転がそのまま操舵機構に伝達されるように可変ステアリングギヤ比機構30のギア比が1に設定される。その結果、ステアリングハンドル20の回転により転舵される操舵輪に対してEMPSモータ40による転舵力が付加され、通常のパワーステアリング動作が行なわれる。
【0032】
一方、システムスイッチがオン状態であると(S1でYES)、制御ユニット10は、運転者が積極的にステアリング操作を行なう意思があるか否かを判定する(S2)。この判定は、例えば、ステアリング角21からのステアリング角検出信号に基づいて、ステアリング角が所定値以上となる条件及びステアリング角の変化率が所定値以上となる条件の少なくともいずれかが成立するか否かの判定によってなされる。即ち、ステアリング角が所定値以上、またはステアリング角の変化率が所定値以上となる場合に運転者が積極的にステアリング操作を行なう意思があるとが判定される。また、トルセンサ22からのトルク検出信号に基づいて、ステアリングハンドル20に作用するトルクが所定値以上となる条件及び当該トルクの変化率が所定値以上となる条件の少なくともいずれかが満足されるか否かを判定することによっても、上記判定を行なうことが可能である。
【0033】
運転者が積極的なステアリング操作を行なう意思がないと判定されると(S2でNO)、車両を車線内の目標ライン上に保持するように操舵制御を行うレーンキープモードでの操舵支援制御がなされる(S3)。一方、運転者が積極的なステアリング操作を行なう意思があると判定されると(S2でYES)、ステアリングハンドル20のステアリング角δに基づいて車両の旋回挙動を安定させるようなヨーレートが得られるような操舵制御を行うVSC(Vehicle Stability Control)モードでの操舵支援制御がなされる(S4)。
【0034】
例えば、車両が図3(a)に示すような形状の道路を走行する場合、運転者が操作するステアリングハンドル20のステアリング角δ及びステアリングハンドル20に作用するトルクは、それぞれ図3(b)、図6(c)のように変化する。このような状況において、そのステアリング角δ及びトルクが小さくかつその変動の小さい直進路部分▲1▼では、運転者がステアリングハンドル20を積極的に操作する意思がないとみなされて、レーンキープモードでの操舵制御が行なわれる。このような直進路部分▲1▼からカーブ路部分▲2▼に車両が進入すると、上記ステアリング角δ及びトルクが大きい状態及びその変動が大きい状態の少なくともいずれかの状態になる。このため、運転者がステアリングハンドル20を積極的に操作する意思があるとみなされて、VSCモードでの操舵制御が行なわれる。更に、車両がこのカーブ路部分▲2▼から直進路部分▲3▼に侵入すると、再び、上記ステアリング角δ及びトルクが小さくかつその変動も小さくなる。その結果、再び、運転者がステアリングハンドル20を積極的に操作する意思がないとみなされて、その制御が、VCSモードからレーンキープモードに切換えられる。
【0035】
上記のように操舵制御がレーンキープモード、VCSモードのいずれかに切換えられた行なわれる際に、各モードでの操舵制御に基づいた操舵角θは、図3(d)に示すように変動する。即ち、レーンキープモードでは、車両を車線内の目標ライン上に保持するように操舵制御が行なわれる結果、操舵角θの変動は比較的小さい。また、VSCモードでは、ステアリング角δに基づいて車両の旋回挙動を安定させるようなヨーレートが得られるように操舵制御が行なわれる結果、路面の状態等によって操舵角θは大きく変動し得る。
【0036】
上記レーンキープモードでの操舵支援制御は、例えば、図4に示すような手順に従って行なわれる。
【0037】
図4において、制御ユニット10は、カメラユニット11からの映像信号に基づいて車両前方の画像を生成し(S31)、その車両前方の画像から当該車両の走行する車線の境界を表す白線が認識できるか否かを判定する(S32)。この白線が認識できる場合(S32でYES)、制御ユニット10は、上記のように認識した車線の境界を表す2つ白線との相対的な位置関係に基づいて車両が当該車線内の目標ラインに沿って走行するように、目標操舵角θLを演算すると共に、その目標ラインと車両の走行位置との偏差に基づいて付加トルクTを設定する(S34)。その設定される付加トルクTは、例えば、図5に示すように、ボール・イン・トラック(ball in track)の形式で表すことができる。この形式では、V字のラインが操舵トルク(付加トルク)の特性を表し、V字の頂点が目標ラインに相当する。V字の勾配が急になればなるほど、ボールに見たてた車両を目標ライン(V字の頂点)に近づけるための付加トルクが大きくなる。
【0038】
このように目標操舵角θLと付加トルクTが設定されると、制御ユニット10は、可変ステアリングギヤ比機構30の状態(ギヤ比=1)を維持させつつ、EMPSモータ40に設定された上記付加トルクTに対応した電流を供給して操舵角センサ14にて検出される操舵角θが上記設定された目標操舵角θLに達するまで当該EMPSモータ40の駆動制御を行う(S34、S35)。車両が直進路を走行する場合のように、運転者がステアリングハンドル20の操作を殆ど行なわない状況では、上述したレーンキープモードでの操舵支援制御(S31からS35)が繰返し実行され、車両が車線内の目標ラインに沿って走行するように、運転者のステアリングハンドル20の操作に対する支援が行なわれる(図5参照)。この場合、運転者は、ステアリングハンドル20を積極的に操作しようとしていないため、上記のように車両を目標ラインに沿って走行させるように操舵支援を行なっても、運転者は特に違和感や煩わしさを感ずることはない。
【0039】
なお、取りこまれた前方画像から車線の境界を表す白線が認識できない場合には(S32でNO)、後述するようなVSCモードでの操舵支援制御に移行する。
【0040】
上述したレーンキープモードでの操舵支援制御がなされている過程で、車両が例えば、カーブ路を走行する際に運転者が上記付加トルクTに抗してステアリングハンドル20の操作を行ない、上述したように運転者が積極的なステアリング操作を行なう意思があると判定されると(図2におけるS2でYES)、VSCモードでの操舵支援制御(図2におけるS4)が開始される。このVSCモードでの操舵支援制御は、例えば図6に示すような手順に従って行なわれる。
【0041】
図6において、車輪速センサ13からの車輪速パルスに基づいて車速vが検出されると共に、ステアリング角センサ21及びヨーレートセンサ12からの各検出信号に基づいてステアリング角δ及びヨーレートγが検出される(S41)。この検出された車速vとステアリング角δに基づいて車両の旋回挙動が安定するような目標ヨーレートγTが所定のアルゴリズムに従って演算される(S42)。そして、上記のように検出されたヨーレートγがこの目標ヨーレートγTとなるような目標操舵角θVが演算される(S43)。
【0042】
上記のようにして目標操舵角θVが演算されると、その目標操舵角θVと操舵角センサ14にて検出される操舵角θの差(θV−θ)が所定の閾値ΔθTHより大きいか否かが判定される(S44)。この操舵角差(θV−θ)が上記所定の閾値ΔθTHより大きい状態である場合(S44でYES)、即ち、比較的大きな目標操舵角θVが得られた直後の状態では、暫定目標操舵角θV1が、
θV1=θ+(θV−θ)/2
に従って演算される(S45)。これにより、検出される現時点の操舵角θと目標操舵角θVとの間の中央値が暫定目標操舵角θV1として設定される。次いで、検出されたステアリング角δに基づいて付加トルクTが設定されると共に、そのステアリング角δと操舵角θとの関係に基づいて可変ステアリングギヤ比機構30のステアリングギヤ比が設定される(S46)。
【0043】
このようにして、暫定目標操舵角θV1、付加トルクT及びステアリングギヤ比が設定されると、ステアリングハンドル20に上記のように設定された付加トルクが作用するように供給電流が制御されつつ、操舵角センサ14にて検出される操舵角θが上記暫定目標操舵角θV1になるようにEMPSモータ40の駆動制御がなされる。そして、更に、上記のように設定されたステアリングギヤ比となるように可変ステアリングギヤ比機構30の駆動制御がなされる(S47、S48)。
【0044】
そして、検出される操舵角θが目標操舵角θVに達したか否かが判定される(S49)。その操舵角θが目標操舵角θVに達していない状態では(S49でNO)、上述した処理(S41〜S49)が繰返し実行される。
【0045】
このような制御の過程では、運転者が急にステアリングハンドル20の操作を行なった後に、操舵角θと目標操舵角θVの中央値となる暫定目標操舵角θV1が設定され、操舵角θがその暫定目標操舵角θV1に達する毎にに新たな暫定目標操舵角θV1が設定される。その結果、操舵角θが目標操舵角θVに段階的に近づいて行く。このような処理を行なうことから、運転者が急にステアリングハンドル20を操作しても、実際の操舵角θはそのステアリングハンドル20の操作に対して遅れぎみに目標操舵角θVに段階的に近づいて行く。
【0046】
上記のようにして検出される操舵角θが目標操舵角θVに徐々に近づいて行く過程で、目標操舵角θVと検出される操舵角θとの差(θV−θ)が上記閾値ΔθTH以下になると(S44でNO)、目標操舵角θV自身が暫定目標操舵角θV1として設定され(S50)、上記と同様の処理(S46〜S48)が行なわれる。その結果、操舵角θが目標操舵角θVに達する。
【0047】
このように操舵角θが目標操舵角θVに達すると(S49でYES)、システムスイッチのオン状態の確認(図2におけるS1)及び運転者のステアリング操作の意思の確認(図2におけるS2)が行なわれ、運転者のステアリング操作の意思があると判定された場合には(S2でYES)、上記VSCモードでの操舵支援制御が行なわれる。
【0048】
従って、車両がカーブ路を走行する場合のように、運転者がステアリングハンドル20の操作を積極的に行なう状況では、上述したVSCモードでの操舵支援制御(S411からS50)が繰返し実行され、車速vとステアリング角δに基づいて車両の旋回挙動が安定するようなヨーレートδTが得られるように操舵制御が行なわれる。
【0049】
上記のようなVSCモードでの操舵支援制御によれば、実際の操舵角θと目標操舵角θVとの差が大きい状況では、操舵輪が遅れ気味に転舵される(操舵角θが段階的に目標操作角θVに近づく)。そのため、制御による舵角θの急激な変化により車両の安定性が損なわれることが防止され、特に、ステアリング角δの変動が大きくなるレーンキープモードからVSCモードへの切替え時(図3参照)における車両の挙動変化をスムーズにすることができる。
【0050】
また、運転者がステアリングハンドル20の操作を比較的緩やかに行なった場合(ステアリング角δの変動が小さい)には、ステアリング角δに依存して決定される目標操舵角θVと実際の操舵角θとの差(θV−θ)は比較的小さい状況になる(略θV−θ≦ΔθTHとなる状況)。そのため、暫定目標操舵角θV1は、当初から目標操舵角θVに設定され、あるいは、当初は目標操舵角θVと実際の操作角θとの中間値にに設定されても、直ちに目標操舵角θVに設定されるようになる。これにより、車両の旋回挙動を安定させるためのヨーレートγTが得られるようなVSCモード本来の操舵特性にて車両の操舵支援を行なうことができるようになる。
【0051】
更に、VSCモードでは、可変ステアリングギヤ比機構30のステアリングギヤ比がそのステアリング角δと実際の操舵角θとの関係に基づいて設定されるため、運転者のステアリングハンドル20の操作と操舵角θの制御が干渉することを防止することができる。また、付加トルクTについても、ステアリング角δに応じて設定されるので、運転者に対してスムーズな操作感を与えることが可能となる。
【0052】
上記例において、図2に示すS3(レーンキープモード)での処理(具体的には図4に示す手順での処理)が第一の操舵支援制御手段に対応し、図2に示すS4(VSCモード)での処理(具体的には、図6に示す手順での処理)が第二の操舵支援制御手段に対応する。また、図2に示すS2での処理が操作意思判定手段に対応する。
【0053】
図6に示すS46、S48での処理が操作特性制御手段、更に、操作応答特性制御手段に対応する。
【0054】
【発明の効果】
以上、説明したように、請求項1乃至5記載の本願発明によれば、運転者が積極的にステアリング操作を行なう意思がないとみなせる場合には、車両が車線内に保持されるように操舵制御がなされる。この場合、ステアリング操作に干渉するような操舵制御がなされたとしても、もともと積極的な操作の意思のない運転者のステアリング操作に対する妨げ感は少ない。また、運転者が積極的なステアリング操作を行なう意思がある場合には、運転者が操作するステアリング操作部の操作量に基づいて車両の旋回挙動を安定させるよう操作制御がなされる。この場合、運転者のステアリング操作部の操作量に基づいて操舵制御がなされるので、運転者の操舵支援がなされると共に、運転者のステアリング操作に対する操舵制御に起因した妨げ感を低減させることが可能となる。
【0055】
その結果、運転者が煩わしさをできるだけ感じることのない状態で、適正に操舵支援が行なえるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係る車両の操舵支援装置の構成例を示す図である。
【図2】図1に示す操作支援装置の制御ユニットが実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】車両が走行する道路形状と、ステアリング角、運転者がステアリングハンドルに与えるトルク、及び制御される操舵角との関係を示す図である。
【図4】レーンキープモードでの操舵支援制御における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】レーンキープモードでの操舵支援制御の特性を、ボール・イン・トラックの形式で表した図である。
【図6】VSCモードでの操舵支援制御における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 制御ユニット
11 カメラユニット
12 ヨーレートセンサ
13 車輪速センサ
14 操舵角センサ
20 ステアリングハンドル
21 ステアリング角センサ
22 トルクセンサ
30 可変ステアリングギヤ比機構(VGRS)
40 電動パワーステアリングモータ(EMPSモータ)
Claims (5)
- 運転者の行なうステアリング操作を支援する車両の操舵支援装置において、
車両を車線内に保持するように操舵制御を行うことによりステアリング操作を支援する第一の操舵支援制御手段と、
ステアリング操作部の操作量に基づいて車両の旋回挙動を安定させるような操舵制御を行うことによりステアリング操作を支援する第二の操舵支援制御手段と、
運転者が積極的なステアリング操作を行なう意思があるか否かを判定する操作意思判定手段と、
運転者が積極的なステアリング操作を行なう意思がないことを上記操作意思判定手段が判定したときに、上記第一の操舵支援制御手段を有効にする一方、運転者が積極的なステアリング操作を行なう意思があることを上記操作意思判定手段が判定したときに、上記第二の操舵支援制御手段を有効にする制御切換え手段とを有し、
上記操作意思判定手段は、運転者が操作すべきステアリング操作部の操作状態に基づいて運転者が積極的なステアリング操作を行なう意思があるか否かを判定し、
上記第二の操舵支援制御手段は、ステアリング操作部の操作量に基づいて車両の旋回挙動を安定させるように定められる制御目標値を設定し、操舵量を上記制御目標値に近づけるように制御する、ことを特徴とする車両の操舵支援装置。 - 請求項1記載の車両の操舵支援装置において、
上記第二の操舵支援制御手段は、操舵量を上記目標制御値に近づけるに際し、舵角と上記制御目標値との差が所定値より大きい状況では制御目標値に対する追従性を上記差が所定値以下となる状況より鈍らせる、ことを特徴とする車両の操舵支援装置。 - 請求項2記載の車両の操舵支援装置において、
上記第二の操舵支援制御手段は、上記舵角と上記制御目標値との差が所定値より大きい状況において現時点の舵角と上記制御目標値との間の値となる暫定目標値を設定する暫定目標値設定手段を有し、
制御量を上記目標制御値に近づけるに際し、該暫定目標値設定手段は、制御量がその暫定目標値に達する毎に暫定目標値を更新する、ことを特徴とする車両の操舵支援装置。 - 請求項2又は3記載の車両の操舵支援装置において、
第二の操舵支援制御手段は、制御量の追従性に応じてステアリング操作部の操作特性を制御する操作特性制御手段を有する、ことを特徴とする車両の操舵支援装置。 - 請求項4記載の車両の操舵支援装置において、
上記操作特性制御手段は、ステアリング操作部の操作に対する操舵輪の転舵の応答性を制御する操作応答特性制御手段を有する、ことを特徴とする車両の操舵支援装置。
Priority Applications (1)
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