JP3567788B2 - 衛生陶器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は長期に渡って汚れを容易に除去できる機能を維持する、大便器・小便器・手洗い器・洗面器などの衛生陶器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、大便器・小便器・手洗い器・洗面器などの衛生陶器では、一般的には陶器素地表面に釉薬層を一層施していた。また、釉薬原料としては、天然原料であるけい砂(石英)、長石等を主原料とし、その他、乳濁剤としてのジルコンおよび顔料を添加していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記のような従来の方法では、釉薬層表面に、石英粒子が完全にガラス化されずに残存し凹部を形成する。また、ジルコン粒子および顔料粒子が表面に露出して凸部を形成する。そのため、表面粗さ(Ra)が触針式表面粗さ測定装置(JIS−B0651)により、0.07μm以上であり、陶器表面に汚れが付着しやすく、また落ち難くなっていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこでこの問題を解決するために、本出願人は、衛生陶器素地上に第一の釉薬層と第二の釉薬層を設け、第二の釉薬層には予め溶融された非晶質釉薬を用いることおよび微粒化により焼成後の残留石英量を極力低減させる方法(特願平10−164177号)、及び第二の釉薬層にはジルコンと顔料の添加を行わない方法等(特願平10−371599号)を提案した。
【0005】
本出願人は、上記提案をさらに検討した結果、下記の現象を発見するに至った。
(1)製造上のバラツキに拘らず、第二の釉薬層表面の表面粗さを0.07μm未満にしやすい条件が存在する。
(2)製造上のバラツキに拘らず、釉はげや亀甲模様等の外観不良が発生しにくい条件が存在する。
(3)製造上のバラツキに拘らず、色調制御のしやすい条件が存在する。
【0006】
本発明においては、陶器素地表面に、着色性の第一の釉薬層が形成されており、さらにその上に透明性の第二の釉薬層が形成されている衛生陶器であって、前記第一の釉薬層の厚みは、0.2mm以上0.7mm未満であり、且つ前記第二の釉薬層の厚みは0.15mm以上0.4mm未満であることを特徴とする衛生陶器を提供する。第二の釉薬層の厚みを0.15mm以上とすることで、製造上のバラツキに拘らず、第二の釉薬層表面の表面粗さを0.07μm未満にしやすくなる。これは、第二の釉薬層の表面が、第一の釉薬層中に含まれる石英粒子、ジルコン粒子、顔料粒子の影響を受けにくくなるためと考えられる。
【0007】
本発明においては、第二の釉薬層の厚みは0.4mm未満であるようにする。第二の釉薬層の厚みを0.4mm未満とすることで、製造上のバラツキに拘らず、亀甲模様が発生しにくくなる。
【0008】
本発明においては、第一の釉薬層の厚みは0.7mm未満であるようにする。第一の釉薬層の厚みを0.7mm未満にすることで、製造上のバラツキに拘らず、釉はげが発生しにくくなる。
【0009】
本発明においては、第一の釉薬層の厚みは0.2mm以上であるようにする。第一の釉薬層の厚みを0.2mm以上にすることで、製造上のバラツキに拘らず、第一の釉薬本来の色調に対して色調変化が生じにくくなる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、例えば、大便器、小便器、洗面器、手洗器等の衛生陶器に利用できる。また大便器においては、ボール面、トラップ部、リム裏等、小便器においては、ボール面、トラップ部、サナ等、洗面器、手洗器においては、ボール面等の汚れの付着しやすい一部分への適用も有効である。
【0011】
本発明において、釉薬原料とは、珪砂、長石、石灰石等の天然鉱物粒子の混合物と定義する。
また顔料とは、例えば、コバルト化合物、鉄化合物等であり、乳濁剤とは、例えば、ジルコン、酸化錫等である。
非晶質釉薬とは、上記のような天然鉱物粒子等の混合物からなる釉薬原料を高温で溶融し、ガラス化させた釉薬をいい、例えば、フリット釉薬が好適に利用可能である。
【0012】
本発明においては、まず着色性釉薬を用意する。これには、上記釉薬原料と顔料及び/又は乳濁剤をボールミル等で混合し、必要に応じて粉砕することによってもよいし、顔料及び/又は乳濁剤が添加されている市販品の着色性釉薬を購入してもよい。
【0013】
次に顔料および乳濁剤を含まない透明性釉薬を用意するため、上記釉薬原料と非晶質釉薬とを、両者の合計和に対する非晶質釉薬の割合が望ましくは50〜99重量%、より望ましくは60〜90%になるように混合し、透明性釉薬原料を準備する。これをボールミル等で混合し、必要に応じて粉砕し、目的物を得る。
【0014】
次いで、予め着色性釉薬により被覆された衛生陶器成形体の表面に、透明性釉薬を少なくとも一部分施釉することにより、表面平滑機能層を形成する。ここで着色性釉薬被覆層の少なくとも一部分とは、例えば、大便器におけるボール面、トラップ部、リム裏等の汚れやすい一部分への適用、および大便器等の全体への適用の双方をさす。また適用方法は、スプレーコート、フローコート、印刷等の周知の方法が利用できる。
【0015】
その後、800〜1300℃の温度で焼成することにより、成形素地が焼結するとともに、2つの釉薬層が固着し、優れた表面平滑性を有する衛生陶器となる。
【0016】
【実施例】
【表1】
【0017】
表1の組成からなる釉薬原料2Kgと水1Kg及び球石4Kgを、容積6リットルの陶器性ポットに入れ、レーザー回折式粒度分布計を用いた粉砕後の着色性釉薬スラリーの粒度測定結果が、10μm以下が65%、50%平均粒径(D50)が6.5μm程度になるように、ボールミルにより粉砕を行った。
【0018】
これとは別に、表1の組成からなる原料から、乳濁剤であるジルコン(ZrSiO4)と顔料を除いたものと、非晶質釉薬とを、両者の合計和に対する非晶質釉薬の割合が50〜99重量%になるように調整した釉薬原料2Kgと水1Kg及び球石4Kgを、容積6リットルの陶器性ポットに入れ、レーザー回折式粒度分布計を用いた粉砕後の透明性釉薬スラリーの粒度測定結果が、10μm以下が67%、50%平均粒径(D50)が6.0μmになるように、ボールミルにより粉砕を行った。
【0019】
次に、珪砂、長石、粘土等を原料として調製した衛生陶器素地泥漿を用いて、70×150mm板状試験片および大便器を作製し、上記の如くして得られた着色性釉薬スラリーを、板状試験片にスプレーコーティング法により塗布し、更にその上に透明性釉薬スラリーをスプレーコーティング法により塗布を行った。この時、板状試験片については、着色性釉薬の厚みを0.1,0.3,0.5及び0.7mm、透明性釉薬の厚みを0.1,0.2,0.3及び0.4mmとなるように調製を行った。その後、1100〜1200℃で焼成することにより試料を得た。
【0020】
得られた板状試験片について、釉薬表面粗さ(Ra)の測定、釉薬呈色および製造上の外観欠点の確認を行った。
表面粗さは触針式表面粗さ測定器(JIS−B0651)を用い、中心線表面粗さ(Ra)を測定した。
釉薬呈色および製造上の外観欠点は、目視により確認を行った。
【0021】
各々の結果は表2に示したように、着色性釉薬厚みが0.1mmになると、陶器素地の色が透過するため、明度が低下し、色調も異なる傾向にある。また逆に厚みが0.7mmと比較的大きくなると、着色性釉薬と透明性釉薬のマッチングが悪くなるため、釉はげ等の製造上の欠点が発生し始める。
【0022】
一方、透明性釉薬厚みが0.1mmになると、その厚み不足により、着色性釉薬中に含まれる石英、ジルコンおよび顔料の粒子に起因する凹凸を、完全にコートし、影響を無くすることが困難となり、表面粗さ(Ra)が0.07μm以上となる。また逆に厚みが0.4mmと比較的大きくなると、釉薬表面に亀甲状の模様発生等の製造欠点が発生し始める。
更に大便器についても同様の確認を行い、試験片と同傾向であることの確認を行った。
【0023】
【表2】
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、製造上のバラツキに拘らず、第二の釉薬層表面の表面粗さを0.07μm未満にしやすくなる。その結果、再現性良く、長期に渡って汚れを容易に除去できる機能を維持する、大便器・小便器・手洗い器・洗面器などの衛生陶器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す図である。
【符号の説明】
1…衛生陶器素地
2…第一の釉薬層(着色性釉薬層)
3…第二の釉薬層(透明性釉薬層)
Claims (2)
- 陶磁器表面に、着色性の第一の釉薬層が形成されており、さらのその上に透明性の第二の釉薬層が形成されている衛生陶器であって、前記第一の釉薬層の厚みは、0.2mm以上0.7mm未満であり、且つ前記第二の釉薬層の厚みは0.15mm以上0.4mm未満であることを特徴とする衛生陶器。
- 前記第二の釉薬層表面の表面粗さは、触針式表面粗さ測定装置(JIS−B0651)により0.07μm未満であることを特徴とする請求項1に記載の衛生陶器。
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