JP3565544B2 - 高温で放射線が強い場所で使用されるセラミック製の熱電変換素子の製造方法 - Google Patents

高温で放射線が強い場所で使用されるセラミック製の熱電変換素子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、200℃以上の廃熱を高効率で電気に変換して再利用できることから、一般産業廃熱や原子力発電所、高温ガス炉等の高温部からの熱を有効に電力に変換利用する際に使用されるセラミック製の熱電変換素子、その製造方法及びその接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の400℃以上の高温熱の熱電気変換素子用合金を原子炉熱変換に用いる場合下記の問題がある。即ち、原子炉を高温熱源とした場合、原子炉からの放射線により、従来材である熱電変換素子合金では、▲1▼放射線損傷による材料特性の劣化や素子用合金のメンテナンスの際の▲2▼放射化による作業員の被曝の問題が考えられる。また、高温雰囲気での熱電変換素子自身の▲3▼高温酸化による材料劣化と、さらには従来材での根本的問題として▲4▼高温での発電効率が低い点が上げられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、SiC(P型)/SiC(N型)、及びSiC(N型)/BC(P型)セラミックス製のP/N型熱電変換素子を開発することにより、上記の従来法に関わる問題点について下記の対策を講じてある。
【0004】
即ち、上記▲1▼の放射線損傷については、SiC等の放射線損傷に強い特性を有する材料を基本材料に用いることによって熱電変換素子の長寿命化を図っている。
【0005】
さらに、上記▲2▼の放射化による作業員の被曝についても、放射化の極めて少ないSiC等のセラミックス製の熱電変換素子を用いている。また、高温雰囲気での熱電変換素子自身の上記▲3▼の高温酸化性については、高温での耐酸化性の優れたSiC等のセラミックス製の熱電変換素子を用いている。
【0006】
上記▲4▼の発電効率については、本発明のSiC等のセラミック製の熱電変換素子材料では、高温になるに従って材料の電気抵抗が合金とは逆に減少(改善)していく特性を有するとともに、放射線照射によっても同じく電気抵抗が減少していることになる。従って、原子炉を熱源とした場合、原子炉から発生する高温熱とともに放射線照射により電気変換効率が向上することになる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
従来、SiC等のセラミック製材料は、耐熱構造材料や機能材料(絶縁材料)としてしか利用されなかったのに対して、本発明は、SiC等のセラミック製材料が熱電変換素子(又は半導体)に代わり得るとの特性を利用して電気材料としての新しい利用分野を提案している。本発明は原子力分野のみならず一般利用に展開することになればSiC等のセラミック製材料の普及、及び環境汚染防止等における効果が期待できる。
【0008】
即ち、本発明は、原子炉等の高温で放射線が強い場所で、高効率で熱−電気変換できる熱電変換素子であり、その電気抵抗が10オームcm以下の抵抗でかつ起電力が数mV以上の耐熱性セラミックス材で製作される熱電変換素子であり、それが多孔質で熱伝導率が低く成績係数Zの高いものである。
【0009】
本発明のP型熱電変換素子は、SiC+ボロンカーバイト(1〜100wt%)をアルゴン又は窒素ガス雰囲気中で焼結することにより製造され、又本発明のN型熱電変換素子は、SiC+C(1〜10wt%)又はSi(1〜10wt%)をアルゴン雰囲気又は窒素ガス雰囲気中で焼結することにより製造される。その熱電変換素子とリード線間はTi系ロウ材を使用してとを接合される。
【0010】
【発明の実施の形態】
なお、表1には、上記SiC系の出発原料を使用した場合の焼結体の密度、焼結条件、P/N型判定結果及ぶ室温における電気抵抗が示されている。出発原料を2273K以下で焼結するとN型、2473K以上ではP型の熱電変換素子(半導体)的性質を示す。しかしながら、室温における電気抵抗値は高い。
【0011】
【表1】
Figure 0003565544
【0012】
図1には、各種混合粉末の焼結温度、電気抵抗及びP/N型特性が示されており、図1からみると、焼結温度が上がるに従ってN型からP型に、且つβからαに変態するが、それにボロンカーバイト(BC)を添加することによりP型の電気抵抗が下がり、また、CやSiを添加した場合には2475Kの高温焼結で低抵抗のN型半導体が製作できることが分かる。これらの結果から、P/N型熱電変換素子を効率的に製作するための方法として下記の手順が考えられる。
【0013】
▲1▼超微粒β−SiC粉末+ボロンカーバイト(1〜10wt%)粉末を成形プレス容器に入れ、次にその上に超微粒β−SiC粉末+Si(1〜10wt%)の混合粉末を入れ、プレスして成型体を製作する。
【0014】
▲2▼その成型体を2473Kで焼結することによってP型とN型が直接接合したP/N熱電素子を作ることができる。
【0015】
図2には、P型熱電変換素子における混合粉末中のボロンカーバイトの添加量、焼結温度及び焼結体の電気抵抗が示されており、図2から、その混合粉末中のボロン量を増やすと焼結体の電気抵抗が低下り、また焼結温度を高温化すると電気抵抗が下がることが示されている。
【0016】
図3には、N型熱電変換素子の高温における電気抵抗の変化と温度との関係が示されており、図3から、高温になるに従ってその電気抵抗が下がる傾向がみられる。
【0017】
図4には、製作したSiC(N型)/B4C(P型)のP/N型熱電変換素子の高温における起電力特性が示されており、図4から、製作したSiC(N型)/BC(P型)のP/N型熱電変換素子では、温度が上がるに従って起電圧が上昇する傾向が認められる。また、600Kで約100mVの高い起電圧を観測した。以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0018】
【実施例】
超微細SiC(β型)粉末(粒径<1ミクロンm)を用いて下記焼結プロセス処理を実施することにより、表1に示すようなSiCのP型及びN型熱電変換素子(半導体)が得られることを明らかにした。
【0019】
(焼結プロセス処理)
▲1▼プリフォーム;超微粒β−SiC粉末を成形プレスで直径φ15×厚み10mmt以上のプリフォーム材を大気中で2000kgfで15分間以上加圧成形した。
【0020】
▲2▼成形;上記▲1▼の処理材をゴム等の不浸透材で覆って、静水圧200MPaに15分以上加えて成形した。
【0021】
▲3▼焼結;この成形体をアルゴン雰囲気(圧力大気圧〜5kg/cm)で(1)N型熱電変換素子(半導体)を作る際は、2000℃〜2100℃で、(2)P型熱電変換素子(半導体)を作る場合は2200℃以上で焼結した。この際の昇温速度は、5〜10℃/分、最高温度保持時間20分〜5時間、降温速度1〜2℃/分であった。
【0022】
表1では、各P及びN型の室温における電気抵抗計測値も示してある。これによると、製作した材料はそれぞれ10kオーム以上の高い電気抵抗を示している。そこで、室温における電気抵抗を下げるために下記添加材を添加することにより作成した。
【0023】
P型熱電変換素子を得る場合: 超微粒β−SiC粉末+ボロンカーバイト(1〜100wt%)をアルゴン若しくは窒素雰囲気中で焼結処理する。その焼結条件は上記▲1▼〜▲3▼に従う。
【0024】
N型熱電変換素子を得る場合: 超微粒子β−SiC粉末を窒素雰囲気中で焼結する。超微粒β−SiC粉末+C(1〜10wt%)をアルゴン若しくは窒素雰囲気中で焼結する。又は超微粒β−SiC粉末+Si(1〜10wt%)をアルゴン若しくは窒素雰囲気中で焼結する。その焼結条件は上記▲1▼〜▲3▼に従う。
【0025】
ただし、超微粒β−SiC粉末+Cをアルゴン雰囲気中で焼結する場合は、SiC粉末:C=1:5〜10の混合粉末を作り、1時間アルゴン雰囲気中でその粉末を2200℃で処理し、SiCをβからαに構造変換させ、その粉末を大気中で500〜800℃で空気酸化させ、粉末中のCを酸化させた粉末を出発材料として用いる。
【0026】
P/N型焼結体のリード線の接合は、焼結体に対して銅製のリード線を接合する必要がある。このため、P/N型焼結体のP及びN型それぞれの側に銅線を下記要領に従ってろう付けする。
【0027】
PないしN側とリード線の間にTi+Cr(1〜30wt%)系ろう材を挿入して、真空中で600〜1000℃の温度で10kgf〜100kgfまでのホットプレスを行い接合を行う。
【0028】
【発明の効果】
本発明のSiC(P型)/SiC(N型)等のセラミックス製熱電変換素子を原子炉(例えば、850℃以上の熱源となる原子炉炉心の周囲、高温ガス炉、軽水炉、宇宙用原子炉等の炉心の周囲)の圧力容器内及び高温配管に配置することにより、放射線損傷を受けることなく高効率の熱電変換発電が長時間可能となる。
【0029】
また、一般熱電としては、酸化雰囲気のボイラー容器の内外、家庭内でのヒーター等の熱源の周りに配置するだけで発電や温度センサー等での利用が可能となる。また、逆に本発明の熱電変換素子に電気を流すことによる熱電冷却素子として冷熱媒の冷却に利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】各種混合粉末の焼結温度、電気抵抗及びP/N型特性が示されている。
【図2】P型熱電変換素子における混合粉末中のボロンカーバイトの添加量、焼結温度及び焼結体の電気抵抗が示されている。
【図3】N型熱変換素子の高温における電気抵抗の変化と温度との関係が示されている。
【図4】製作したSiC(N型)/B4C(P型)のP/N型熱電変換素子の高温における起電力特性が示されている。

Claims (3)

  1. 高温で放射線が強い場所で使用されるセラミック製の熱電変換素子の製造方法において、超微粒β―SiC粉末及び5〜10重量%のC粉末の混合粉末をアルゴン雰囲気中で2200℃で処理してSiCをβ―SiCからα―SiCに構造変換させ、この構造変換された粉末を大気中で500〜800℃で空気酸化して粉末中のCを酸化させて得られた粉末を出発材料とし、この出発材料を成形後アルゴン又は窒素雰囲気中で2000〜2100℃又は2200℃以上で焼結することにより、それぞれ、N型又はP型熱電変換素子を製造する方法。
  2. 高温で放射線が強い場所で使用されるセラミック製の熱電変換素子の製造方法において、超微粒β―SiC粉末及び1〜10重量%のボロンカーバイト粉末の混合粉末上に、超微粒β―SiC粉末及び1〜10重量%のSiの混合粉末を積層して成形し、その成形体をアルゴン又は窒素雰囲気中で2473Kで焼結することによってP型とN型が直接接合したP/N型熱電変換素子を製造する方法。
  3. P又はN側とリード線との間にTi及び1〜30重量%のCrから成るろう材を挿入してホットプレスすることにより熱電変換素子とリード線間を接合する請求項1又は請求項2記載の方法。
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