JP3918019B2 - SiC−MoSi2 複合材ヒータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温域において軟化せず、優れた耐酸化性を有し、長期間に亘って安定使用することができ、正の抵抗温度係数を有するSiC−MoSi2 複合材ヒータに関する。
【0002】
【従来の技術】
SiCは、半導体的性質を示す電導性物質であり、優れた耐熱性および化学的安定性を備えているので、従来から通電発熱型のヒータとして有用されている。しかしながら、SiCヒータはSiCの半導体的性質からも明らかなように抵抗の温度変化が、ある温度を堺にして減少から上昇へと急変する。
【0003】
すなわち、SiCヒータの発熱温度と抵抗の関係は、図1に示すように室温から約800℃までは温度の上昇とともに抵抗は減少するが、約800℃を越える温度域では温度の上昇とともに抵抗が増大する。このように、SiCヒータは室温から約800℃までの温度域では負の抵抗温度係数(負特性)を示し、約800℃を越える温度域では逆に正の抵抗温度係数(正特性)を示す。この負特性から正特性に変換する温度はSiC焼結体の製造条件や添加物によって変わるが、負特性の温度域では発熱時に電流が急増して熱(温度)暴走を招く危険があり、また定電圧負荷による温度制御が極めて困難となる欠点がある。そのためSiCヒータは通常、正特性を示す800℃以上の高温域で使用されている。
【0004】
そこで、SiCヒータの負特性を減少させる、すなわち抵抗温度係数の負の値を小さくする目的で従来から種々の提案がなされている。例えば特公昭51−45339号公報にはSiC焼結体を珪石、炭素、窒化珪素を含む混合粉末で包み二次焼成する方法が、特公昭61−56187号公報にはSiC粉末にホウ素と炭素などを添加し真空中で一次焼成したのち1〜200気圧の窒素雰囲気中で二次焼結する方法が開示されている。また、特開昭58−209084号公報には炭化珪素に炭化ジルコニウムや硼化ジルコニウムを添加して焼結した抵抗温度係数が正の直線型ヒータ材が、特開昭59−111289号公報には炭化珪素ウイスカとモリブデン粉末および炭素粉末を混合し焼結した所望の固有抵抗をもつ発熱体が提案されている。
【0005】
また、MoSi2 も高温での耐酸化性に優れており、融点も高いので従来からヒータとして用いられている。しかしながら、MoSi2 は1400℃以上の温度で軟化し、スポーリング強度や機械的強度も充分でないという難点があるために、他の材料と複合化、特に濡れ性の良好なSiCと複合化したMoSi2 −SiC系発熱体が開発されている。MoSi2 とSiCを複合化したヒータの抵抗温度係数は、MoSi2 とSiCの合成された抵抗変化を示し、例えば抵抗の温度変化は図2に例示(窯業工学ハンドブック、1789頁、窯業協会編、技報堂出版株式会社)したように複雑に変化する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、SiC−MoSi2 系複合材ヒータの抵抗温度変化を温度の上昇とともに増大する、すなわち正特性のヒータについて鋭意研究を進めた結果、原料SiCの粒径と配合比を調整して作製した多孔質SiC焼結体を母材として、この母材の気孔中にMoSi2 の融液を溶浸してMoSi2 を充填したヒータは複雑な抵抗温度変化を示さずに正の抵抗温度係数を示すことを見出した。
【0007】
本発明は上記の知見に基づいて開発されたものであり、その目的は、正の抵抗温度係数を有する、特に600℃〜1600℃の温度域において正の抵抗温度係数を備えたSiC−MoSi2 系の複合材ヒータを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための請求項1に係るSiC−MoSi2複合材ヒータは、粒径10μm未満のSiC微粒30〜40重量%と、粒径10μm以上43μm未満のSiC粗粒60〜70重量%との粒度配合された原料粉末を焼成して得られた気孔率20〜60%の多孔質SiC焼結体を母材とし、該母材の気孔にMoSi2が溶浸された複合組織からなり、600℃から1600℃の高温域において正の抵抗温度係数を有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係るSiC−MoSi 2 複合材ヒータは、粒径10μm未満のSiC微粒50〜70重量%と、粒径43μm以上1180μm未満のSiC粗粒30〜50重量%との粒度配合された原料粉末を焼成して得られた気孔率20〜60%の多孔質SiC焼結体を母材とし、該母材の気孔にMoSi 2 が溶浸された複合組織からなり、600℃から1600℃の高温域において正の抵抗温度係数を有することを特徴とし、請求項3に係るSiC−MoSi 2 複合材ヒータは、粒径10μm未満のSiC微粒60〜80重量%と、粒径1180μm以上のSiC粗粒20〜40重量%との粒度配合された原料粉末を焼成して得られた気孔率20〜60%の多孔質SiC焼結体を母材とし、該母材の気孔にMoSi 2 が溶浸された複合組織からなり、600℃から1600℃の高温域において正の抵抗温度係数を有することを特徴とし、請求項4に係るSiC−MoSi 2 複合材ヒータは、粒径10μm未満のSiC微粒からなる原料粉末を焼成して得られた気孔率20〜60%の多孔質SiC焼結体を母材とし、該母材の気孔にMoSi 2 が溶浸された複合組織からなり、600℃から1600℃の高温域において正の抵抗温度係数を有することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のSiC−MoSi2 複合材ヒータの母材となる多孔質SiC焼結体は特定の粒径範囲に調整したSiC粉体を特定の割合で粒度配合した原料を用いて製造されたものが使用される。すなわち、SiCの原料粉体のうち粒径10μm 未満の粉体をSiC微粒とし、粒径が10μm 以上の粉体をSiC粗粒として、SiC微粒と所定粒径範囲のSiC粗粒とを特定の割合で粒度配合した原料粉体が用いられる。
【0011】
本発明のSiC−MoSi2 複合材ヒータは母材となる多孔質SiC焼結体を作製する原料粉体として、
▲1▼粒径10μm 未満のSiC微粒を30重量%以上、と、粒径10μm 以上で43μm 未満のSiC粗粒を70重量%以下、との割合で粒度配合したもの、
又は、
▲2▼粒径10μm 未満のSiC微粒を50重量%以上、と、粒径43μm 以上で1180μm 未満のSiC粗粒を50重量%以下、との割合で粒度配合したもの、
又は、
▲3▼粒径10μm 未満のSiC微粒を60重量%以上、と、粒径1180μm 以上のSiC粗粒を40重量%以下、との割合で粒度配合したもの、
又は、
▲4▼粒径10μm 未満のSiC微粒のみ
をそれぞれ用いることが必要である。
【0012】
このような割合で粒度配合されたSiC原料粉体は均一に混合後、メチルセルロースやポリビニルアルコールなどのバインダーおよび水を加えて混練し、押出し成形法や鋳込み成形法などにより成形し、成形体を非酸化性雰囲気中で1900℃〜2200℃の温度に加熱して焼成することにより母材となる多孔質SiC焼結体が得られる。多孔質SiC焼結体の気孔率は概ね20%〜60%であることが好ましい。すなわち、気孔率が20%未満であるとMoSi2 が充分に溶浸されないので高温での耐酸化性が低下し、また60%を越えるとMoSi2 を溶浸してもそれほど強度向上が認められないためである。
【0013】
多孔質SiC焼結体の気孔にMoSi2 を溶浸させる操作は、黒鉛坩堝などの容器にMoSi2 を入れ非酸化性雰囲気下で1950℃〜2200℃の温度に加熱してMoSi2 を溶融し、この融液に多孔質SiC焼結体を接触させる方法で行うことができる。MoSi2 とSiCは濡れ性が良好なので、MoSi2 の融液は毛細管現象によりSiCの気孔中に円滑に溶浸する。
【0014】
このように本発明のSiC−MoSi2 複合材ヒータは多孔質SiC焼結体の気孔内部にMoSi2 が均等に溶浸しており、SiCの材質特性により優れた耐酸化性および耐熱性を有し、また、溶浸したMoSi2 との相互作用によりSiCの電気的性質が抑えられるため600℃から1600℃の高温域において抵抗温度係数が正の発熱特性を具備させることができる。600℃以下の低温域ではMoSi2 の特性が優先するので正特性を示し、1600℃以下の温度領域における抵抗の温度変化が温度の上昇とともに増大する正特性のSiC−MoSi2 複合材ヒータとすることが可能となる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。
【0016】
実施例1〜10、比較例1〜3
SiC微粒には最大粒径10μm 、平均粒径2μm のSiC粉末〔太平洋ランダム(株)製、GMF-6S〕を用い、SiC粗粒としては各種粒径のSiC粉末を使用してSiC微粒に異なる量比で配合し、原料粉体を調製した。この原料粉体100重量部に4重量部のメチルセルロース粉末を加えて充分に混合した後、水を加えて品川式万能撹拌機で混練後、三本ロールミルで捏合し、捏合物を押出し成形法により直径6mm、長さ230mmの棒状成形体に成形した。この成形体を120℃で乾燥後、窒素ガス雰囲気中で2100℃の温度に加熱焼成して多孔質SiC焼結体を作製し、母材とした。
【0017】
MoSi2 粉末を黒鉛坩堝に入れ、窒素ガス雰囲気下に2100℃の温度に加熱してMoSi2 を融解した。このMoSi2 融液に上記の母材を接触させて、多孔質SiC焼結体の気孔中にMoSi2 融液を溶浸し、SiCとMoSi2 との複合組織からなるSiC−MoSi2 複合材ヒータを製造した。適用した各条件を対比して表1に示した。なお、多孔質SiC焼結体およびMoSi2 を溶浸後の気孔率をアルキメデス法で測定し、その結果も表1に併載した。
【0018】
【表1】
【0019】
これらのSiC−MoSi2 複合材ヒータに通電発熱させて、抵抗の温度変化を測定した。測定はSiC−MoSi2 複合材ヒータを電気炉にセットしてヒータ周囲を断熱材で覆い、ヒータ両端部にアルミニウムの網線を巻いて通電した。温度は放射温度計により、抵抗は印加電圧と電流値を測定して算出した。このようにして得られた抵抗の温度変化を、温度に対する抵抗の増加率(%)として、図3〜図6に示した。
【0020】
表1および図3〜図6の結果から、粒径10μm 未満のSiC粉体をSiC微粒とし、粒径が10μm 以上のSiC粉体をSiC粗粒として、SiC微粒と所定粒径範囲のSiC粗粒とを特定の割合で粒度配合した原料粉体、あるいはSiC微粒のみの原料粉体を焼成して得られた多孔質SiC焼結体を母材とし、該母材の気孔にMoSi2 を溶浸した複合組織からなる実施例のSiC−MoSi2 複合材ヒータは600℃以上の温度域において、いずれも温度の上昇とともに抵抗が増大する、すなわち正の抵抗温度係数を示すことが判明する。これに対して比較例のSiC−MoSi2 複合材ヒータでは、例えば比較例1は1100℃、比較例2は1200℃、比較例3は1400℃近辺の温度で抵抗の温度係数が正から負に変化していることが判る。
【0021】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明のSiC−MoSi2 複合材ヒータによれば、SiC微粒と所定粒径範囲のSiC粗粒とを特定割合で粒度配合した原料粉体を焼成した多孔質SiC焼結体を母材とし、該母材の気孔内部にMoSi2 が均等に溶浸されており、SiCと溶浸したMoSi2 との相互作用によりSiCの電気的性質が抑えられるため、600℃から1600℃の高温域において抵抗温度係数が正の発熱特性を付与させることができる。したがって、温度制御が容易であり、耐酸化性や耐熱性に優れたヒータとして極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】SiCヒータの温度と抵抗の関係を示したグラフである。
【図2】従来のMoSi2 とSiCを複合化したヒータの温度と抵抗の関係を示したグラフである。
【図3】本発明のSiC−MoSi2 複合材ヒータについて、温度に対する抵抗の増加率(%)の関係を、実施例と比較例とを対比して示したグラフである。
【図4】本発明のSiC−MoSi2 複合材ヒータについて、温度に対する抵抗の増加率(%)の関係を、別の実施例と比較例とを対比して示したグラフである。
【図5】本発明のSiC−MoSi2 複合材ヒータについて、温度に対する抵抗の増加率(%)の関係を、更に他の実施例と比較例とを対比して示したグラフである。
【図6】本発明のSiC−MoSi2 複合材ヒータの他の実施例について、温度に対する抵抗の増加率(%)の関係を示したグラフである。
Claims (4)
- 粒径10μm未満のSiC微粒30〜40重量%と、粒径10μm以上43μm未満のSiC粗粒60〜70重量%との割合で粒度配合された原料粉末を焼成して得られた気孔率20〜60%の多孔質SiC焼結体を母材とし、該母材の気孔にMoSi2が溶浸された複合組織からなり、600℃から1600℃の高温域において正の抵抗温度係数を有することを特徴とするSiC−MoSi2複合材ヒータ。
- 粒径10μm未満のSiC微粒50〜70重量%と、粒径43μm以上1180μm未満のSiC粗粒30〜50重量%との割合で粒度配合された原料粉末を焼成して得られた気孔率20〜60%の多孔質SiC焼結体を母材とし、該母材の気孔にMoSi 2 が溶浸された複合組織からなり、600℃から1600℃の高温域において正の抵抗温度係数を有することを特徴とするSiC−MoSi2複合材ヒータ。
- 粒径10μm未満のSiC微粒60〜80重量%と、粒径1180μm以上のSiC粗粒20〜40重量%との割合で粒度配合された原料粉末を焼成して得られた気孔率20〜60%の多孔質SiC焼結体を母材とし、該母材の気孔にMoSi 2 が溶浸された複合組織からなり、600℃から1600℃の高温域において正の抵抗温度係数を有することを特徴とするSiC−MoSi2複合材ヒータ。
- 粒径10μm未満のSiC微粒からなる原料粉末を焼成して得られた気孔率20〜60%の多孔質SiC焼結体を母材とし、該母材の気孔にMoSi 2 が溶浸された複合組織からなり、600℃から1600℃の高温域において正の抵抗温度係数を有することを特徴とするSiC−MoSi2複合材ヒータ。
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JPH10208854A JPH10208854A (ja) | 1998-08-07 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US10862325B2 (en) | 2017-12-07 | 2020-12-08 | Samsung Electronics Co., Ltd. | Method and apparatus for charging battery |
-
1997
- 1997-01-28 JP JP02849997A patent/JP3918019B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US10862325B2 (en) | 2017-12-07 | 2020-12-08 | Samsung Electronics Co., Ltd. | Method and apparatus for charging battery |
US11444475B2 (en) | 2017-12-07 | 2022-09-13 | Samsung Electronics Co., Ltd. | Method and apparatus for charging battery |
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