JP7213607B2 - 導電性炭化珪素質焼結体の製造方法及び導電性炭化珪素質焼結体 - Google Patents

導電性炭化珪素質焼結体の製造方法及び導電性炭化珪素質焼結体 Download PDF

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本発明は、導電性炭化珪素質焼結体の製造方法、及び、該製造方法により製造される導電性炭化珪素質焼結体に関するものである。
炭化珪素は、熱伝導率が高いことに加えて熱膨張率が小さいことから耐熱衝撃性に優れるため、高温下で使用される構造体、例えば、フィルタ、触媒担体、熱交換体の基体として適している。また、高純度の炭化珪素は電気抵抗が高く絶縁体に近いが、導電性が付与された炭化珪素質セラミックスは、通電による発熱によって高温とする自己発熱型の構造体として使用することが可能である。本出願人は過去に、炭化珪素を珪素源及び炭素源から反応生成させる際に窒素をドープすることにより、導電性が付与された炭化珪素質セラミックス焼結体を製造する方法を提案している(例えば、特許文献1参照)。
導電性を利用するセラミックス焼結体については、常に、より導電性を高めること、すなわち、比抵抗値を低下させることに対する要請があり、これは導電性が付与された炭化珪素質セラミックス焼結体でも同様である。
一方、炭化珪素は、酸素が存在する雰囲気で高温に加熱されると、酸化してしまうという問題がある。炭化珪素の酸化により生成した二酸化珪素の皮膜で炭化珪素の表面が被覆されると、それ以上の酸化がある程度は抑制されると言われているが、それでは酸化の抑制としては不十分であるのが実情である。そして、酸化によって焼結体の表面に形成される二酸化珪素の相は電気抵抗が大きいため、酸化の進行に伴って、導電性炭化珪素質セラミックス焼結体の比抵抗値が著しく増大してしまう。
この問題の解決のために、本出願人は既に、ドーパントとして窒素を含む炭化珪素の相である導電性相を含む炭化珪素質セラミックス焼結体において、少なくとも導電性相の外側に、導電性相における窒素の平均濃度より窒素の濃度が低い炭化珪素の相である高抵抗相を形成することを提案している(特許文献2参照)。高抵抗相は、窒素の濃度が低いことにより自由電子の数が少なく、導電性相より電気抵抗が大きいため、焼結体全体の電気伝導性に対する寄与度が小さい相である。
このような高抵抗相が少なくとも導電性相の外側に形成されている焼結体では、酸素が存在する雰囲気で使用されたときに、酸化されるのは高抵抗相である。元々焼結体全体の電気伝導性に対する寄与度が小さい高抵抗相が酸化された場合は、焼結体全体の電気伝導性に対する寄与度が大きい相である導電性相が酸化された場合に比べ、焼結体全体の電気伝導性に及ぼす影響は小さい。加えて、焼結体において導電性相の外側に高抵抗相が存在することにより、電気伝導性への寄与度の大きい導電性相まで、酸化反応が及びにくい。従って、高抵抗相の存在によって、酸素の存在する雰囲気にて高温で継続して使用された際の酸化に伴う比抵抗値の変化を抑制することができる。
また、本出願人の検討により、導電性相を含む焼結体を、実質的に窒素ガスを含まない非酸化性雰囲気で加熱することにより、いったんはドープされた窒素を焼結体から排出させることによって高抵抗相を形成することができ、この工程を2100℃~2300℃という高温で行うことにより、効率よく窒素を排出できることが見出された。
ところが、高抵抗相を形成する際、焼結体の内部の導電性相からも窒素の一部が排出されてしまうことは不可避である。特に、高抵抗相を効率よく形成するために、この工程を高温で行うと、焼結体の内部の導電性相から排出される窒素も増大してしまう。そのため、導電性相の外側に高抵抗相を有している炭化珪素質セラミックス焼結体は、高抵抗相を有していない焼結体に比べて、酸化に伴う“比抵抗値の変化”は抑制されているものの、“比抵抗値自体の大きさ”は高抵抗相が形成されていない焼結体に比べて大きくなってしまうという問題があった。そのため、高抵抗相の存在によって比抵抗値の変化が抑制されていると共に、より高い導電性を示す炭化珪素質セラミックス焼結体が要請されていた。
更に、導電性炭化珪素質セラミックス焼結体は、温度の上昇に伴って電気抵抗が大きく低下するNTC特性を有し、比抵抗値の温度依存性が高い。そのため、高温下で比抵抗値が小さくなり過ぎ、電流値が過大となって制御が困難となったり、過電流による過熱により焼結体が損傷したりするおそれがあった。
この問題に対して、本出願人は、炭化珪素質セラミックス焼結体におけるβ型炭化珪素の割合によって、比抵抗値の温度依存性が変化することを見出し、上記のように高抵抗相を備える焼結体について、β型炭化珪素の割合を高めることによって、比抵抗値の温度依存性を低減させることを提案している(特許文献3参照)。
ところが、効率よく窒素を排出させるために、上述のように高抵抗相を形成する工程を高温で行うと、β型炭化珪素の一部が高温で安定なα型炭化珪素に転移する。つまり、特許文献3の技術では、比抵抗値の温度依存性を低減させるためにはβ型炭化珪素の割合が高いことが望ましいところ、酸化に伴う比抵抗値の変化を抑制するために高抵抗相を形成しようとすると、α型炭化珪素への転移によりβ型炭化珪素の割合が減少するという事情があった。換言すれば、比抵抗値の温度依存性を低減させるために焼結体におけるβ型炭化珪素の割合を高めようとしても、酸化に伴う比抵抗値の変化を抑制する作用をも得るためには、β型炭化珪素の割合がある程度に制限されるものであった。
特許第3691536号公報 特許第5723429号公報 特許第6291446号公報
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、ドーパントとして窒素を含む導電性炭化珪素質焼結体であって、より高い導電性を示す、すなわち、より比抵抗値が小さい導電性炭化珪素質焼結体の製造方法の提供を、第一の課題とする。また、酸化に伴う比抵抗値の変化が抑制されていると共に、比抵抗値自体もより小さい導電性炭化珪素質焼結体の製造方法の提供を、第二の課題とする。更に、酸化に伴う比抵抗値の変化が抑制されていると共に、β型炭化珪素の割合によって比抵抗値の温度依存性がより低減されている導電性炭化珪素質焼結体の製造方法の提供を、第三の課題とする。加えて、これらの製造方法により製造される導電性炭化珪素質焼結体の提供を、課題とする。
上記の課題を解決するため、本発明にかかる導電性炭化珪素質焼結体の製造方法(単に、「製造方法」と称することがある)は、
「骨材粒子を含む原料から成形した成形体を焼成し、ドーパントとして窒素を含む炭化珪素の相である導電性相を有する焼結体を得る成形体焼成工程を具備する導電性炭化珪素質焼結体の製造方法であって、
前記骨材粒子は、珪素源と炭素源とを窒素ガスを含む非酸化性雰囲気で焼成することにより、ドーパントとして窒素を含む炭化珪素を反応生成させる反応焼成工程を経て得るものであり、
前記反応焼成工程の温度を高めることにより前記骨材粒子の窒素濃度を増大させることによって、比抵抗値を異ならせた前記焼結体を製造する」ものである。
検討の結果、珪素源と炭素源とを窒素ガスを含む非酸化性雰囲気で焼成する反応焼成工程の温度を高めることにより、反応生成する炭化珪素における窒素濃度を増大させることできることが判明した。そこで、本発明では、反応焼成工程を経て得た炭化珪素を、骨材粒子として成形体の原料に含有させる。これにより、窒素濃度の高い炭化珪素の骨材粒子を含む原料から得られる焼結体において、ドーパントとして窒素を含む炭化珪素の相である導電性相の窒素濃度を高めることができるため、より導電性の高い導電性炭化珪素質焼結体を製造することができる。
ここでは、「導電性炭化珪素質焼結体」の語は、「導電性炭化珪素質セラミックス焼結体」と同意で使用している。また、「導電性」とは、比抵抗値が1000Ωcm未満の場合を指している。
本発明にかかる製造方法は、上記構成に加え、
「前記成形体焼成工程の後に、実質的に窒素ガスを含まない非酸化性雰囲気で前記焼結体を加熱し、ドープされた窒素の一部を排出させることにより、少なくとも前記導電性相の外側に、前記導電性相における窒素の平均濃度より窒素の濃度が低い炭化珪素の相である高抵抗相を形成する高抵抗相形成工程を、更に具備する」ものである。
ここで、「導電性相」は窒素がドープされた炭化珪素である骨材粒子を含有するため、「導電性相における窒素の平均濃度」は、骨材粒子と、骨材粒子の周囲を取り囲んでいる導電性の炭化珪素の相との全体で平均した窒素の濃度を指している。また、「導電性相」は、導電性の骨材粒子に加えて、窒素の濃度の異なる複数の導電性相からなるものであってもよい。その場合、「導電性相における窒素の平均濃度」は、複数の導電性相と導電性の骨材粒子とを、総合して平均した窒素の濃度を指すものである。更に、「高抵抗相」は、焼結体において導電性相の少なくとも外側に形成されているものであれば、それ以外の部分に導電性相より窒素の平均濃度が低い高抵抗の相を有していても構わない。例えば、焼結体の内部に非導電性の粗大粒子を含む場合、その相は焼結体において導電性相の外側ではない部分に存在する高抵抗の相である。
本構成の製造方法では、骨材粒子の窒素濃度を高めることにより、高抵抗相形成工程に供する前の焼結体の導電性相における窒素の濃度が高められるため、窒素の一部を排出させる高抵抗相形成工程を経た焼結体の導電性相に、より多くの窒素を残留させることができる。従って、高抵抗相の存在によって酸化に伴う比抵抗値の変化が抑制されていると共に、比抵抗自体がより小さい導電性炭化珪素質焼結体を製造することができる。
本発明にかかる製造方法は、高抵抗相形成工程を具備する上記構成において、
「前記骨材粒子を得る前記反応焼成工程の温度を、前記高抵抗相形成工程の温度以上とする」ものとすることができる。
骨材粒子を得る反応焼成工程の温度を高抵抗相形成工程の温度以上とした場合、高抵抗相形成工程の温度下では、骨材粒子において物質移動が殆ど生じないと考えられる。そのため、詳細は後述するように、高抵抗相形成工程の温度以上の温度下で骨材粒子にドープされた窒素は、高抵抗相形成工程で骨材粒子から殆ど排出されない。従って、高抵抗相形成工程を経た焼結体の導電性相に、更に多くの窒素を残留させることができる。従って、高抵抗相の存在によって酸化に伴う比抵抗値の変化が抑制されていると共に、比抵抗自体が更に小さい導電性炭化珪素質焼結体を、製造することができる。
本発明にかかる製造方法は、高抵抗相形成工程を具備する上記構成において、
「前記骨材粒子は、β型炭化珪素であり、
前記骨材粒子の窒素濃度を増大させ、前記高抵抗相形成工程を経た前記焼結体の炭化珪素におけるβ型炭化珪素の割合を増大させることによって、比抵抗値の温度依存性を異ならせた前記焼結体を製造する」ものとすることができる。
この度の新たな検討により、核となる炭化珪素を使用することなく珪素源及び炭素源のみから反応生成させた炭化珪素は、殆ど全てがβ型であること、骨材粒子を得るための反応焼成工程の温度を高めることによって、β型炭化珪素である骨材粒子(β型骨材)における窒素濃度を増大させるほど、α型に転移しにくいことが判明した。なお、過去の検討(特許文献3)の結果、珪素源及び炭素源に、非導電性のα型炭化珪素を骨材粒子として加えた原料から成形体を成形し、これを焼成する工程を高温で行うと、炭化珪素の相におけるα型炭化珪素の割合が増大することを報告している。これは、骨材粒子を核として反応生成した初期の炭化珪素はβ型であるが、高い温度下ではネック成長し焼結が進行する際の物質移動に伴い、核であるα型炭化珪素の結晶相の影響を受けることにより、α型に転移し易くなるものと考えられた。
上記のように特許文献3では、高抵抗相を備える導電性炭化珪素質焼結体におけるβ型炭化珪素の割合を高めることによって、比抵抗値の温度依存性を低減させることができることを報告しているが、その後の検討により(この検討結果に係る特許出願は、出願公開前であるため公知文献に該当しない)、焼結体に含まれるβ型炭化珪素が導電性の骨材粒子に由来するものであっても、その割合によって比抵抗値の温度依存性を変化させることができること、成形体の原料に含有させる骨材粒子におけるβ型骨材の割合を大きくするほど、比抵抗値の温度依存性を低下させることができること、骨材粒子であるβ型炭化珪素はα型に転移しにくく、効率よく窒素を排出するために高抵抗相形成工程を高温で行っても、その後の焼結体におけるβ型炭化珪素の割合を高めることができることを見出している。
従って、これらの知見に、この度の新たな検討結果を加えて採用した本構成の製造方法によれば、高抵抗相の存在によって酸化に伴う比抵抗値の変化が抑制されていると共に、比抵抗値がより小さく、且つ、β型炭化珪素の割合を高めることによって比抵抗値の温度依存性がより低減されている導電性炭化珪素質焼結体を、製造することができる。
次に、本発明にかかる導電性炭化珪素質焼結体は、
「骨材粒子を核として、その周囲にドーパントとして窒素を含む炭化珪素の相が形成されている導電性炭化珪素質焼結体であって、
前記骨材粒子は、ドーパントとして窒素を含む炭化珪素であり、前記骨材粒子における窒素の濃度は0.25質量%~1.00質量%である」ものである。
これは、上記の製造方法のうち、高抵抗相形成工程を要件としない製造方法により製造される導電性炭化珪素質焼結体の構成である。詳細は後述するように、骨材粒子を得るための反応焼成工程の温度を2000℃~2250℃の範囲で異ならせることにより、骨材粒子における窒素の濃度を0.25質量%~1.00質量%の範囲で異ならせることができ、ひいては反応焼成工程を経て得られた焼結体の比抵抗値を異ならせることができる。
本発明にかかる導電性炭化珪素質焼結体は、上記構成に加え、
「ドーパントとして窒素を含む炭化珪素である前記骨材粒子、及び、前記骨材粒子の周囲に形成された、ドーパントとして窒素を含む炭化珪素の相、を含む導電性相の少なくとも外側に、前記導電性相における窒素の平均濃度より窒素の濃度が低い炭化珪素の相である高抵抗相を有しており、
前記骨材粒子における窒素の濃度は、0.83質量%~1.00質量%である」ものとすることができる。
これは、上記の製造方法のうち、成形体焼成工程の後に高抵抗相形成工程を行うと共に、骨材粒子を得る反応焼成工程の温度を高抵抗相形成工程の温度以上とする製造方法により、製造される導電性炭化珪素質焼結体の構成である。上述したように、骨材粒子を得る反応焼成工程の温度を高抵抗相形成工程の温度以上とした場合、高抵抗相形成工程の温度下では、骨材粒子において物質移動が殆ど生じないため、骨材粒子にドープされている窒素は高抵抗相形成工程で殆ど排出されることがない。これにより、本構成の導電性炭化珪素質焼結体を得ることができる。
また、骨材粒子における窒素の濃度が0.83質量%~1.00質量%である本構成の導電性炭化珪素質焼結体は、後述するように、高抵抗相の存在によって酸化に伴う比抵抗値の変化が抑制されており、比抵抗値がより小さいことに加えて、炭化珪素全体におけるβ型炭化珪素の割合が高く、比抵抗値の温度依存性が小さい利点を有している。
以上のように、本発明によれば、ドーパントとして窒素を含む導電性炭化珪素質焼結体の製造方法であって、より比抵抗値が小さい、すなわち、より高い導電性を示す導電性炭化珪素質焼結体の製造方法を提供するという、第一の課題を解決することができる。また、酸化に伴う比抵抗値の変化が抑制されていると共に、比抵抗値自体もより小さい導電性炭化珪素質焼結体の製造方法を提供するという、第二の課題を解決することができる。更に、酸化に伴う比抵抗値の変化が抑制されていると共に、β型炭化珪素の割合によって比抵抗値の温度依存性がより低減されている導電性炭化珪素質焼結体の製造方法を提供するという、第三の課題を解決することができる。加えて、これらの製造方法により製造される電性炭化珪素質焼結体を、提供することができる。
骨材粒子を得るための反応焼成工程(第一の反応焼成工程)の温度と、反応焼成物における窒素濃度との関係を示すグラフである。 骨材粒子における窒素濃度と、高抵抗相形成工程を経た焼結体の比抵抗値との関係を示すグラフである。 骨材粒子における窒素濃度と、高抵抗相形成工程を経た焼結体の炭化珪素全体におけるβ型炭化珪素の割合との関係を示すグラフである。
以下、本発明の具体的な実施形態である導電性炭化珪素質焼結体の製造方法、及び、その製造方法により製造される導電性炭化珪素質焼結体について説明する。実施形態の製造方法は、骨材粒子製造工程と、成形工程と、成形体焼成工程とを具備している。
骨材粒子製造工程は、第一の反応焼成工程と粉砕工程とからなる。第一の反応焼成工程は、珪素源と炭素源とを窒素ガスを含む非酸化性雰囲気で焼成することにより、ドーパントとして窒素を含む炭化珪素を反応生成させる工程である。この工程の温度を高めることにより、β型炭化珪素である骨材粒子における窒素濃度を増大させることができる。
ここで、「珪素源」としては、窒化珪素や珪素(単体)を使用可能である。一方、「炭素源」としては、黒鉛、石炭、コークス、木炭、カーボンブラックなどの炭素質物質を使用可能である。化学量論的には珪素及び炭素のモル比(Si/C)が1のときに過不足なく炭化珪素が生成するが、Si/Cが0.8~1.2であれば、珪素及び炭素の過剰分または不足分が少なく、望ましい。珪素源として窒化珪素を使用する場合は、炭化珪素の反応生成に伴い窒化珪素の分解により発生した窒素も、反応生成する炭化珪素にドープされる。
粉砕工程では、第一の反応焼成工程により得た反応焼成物を粉砕し、平均粒子径が5μm~50μmの粗大な骨材粒子とする。ここでの平均粒子径は、レーザ回折・散乱法による体積基準の累積分布における50%径である。
成形工程では、骨材粒子製造工程で得た骨材粒子を含む成形原料から、所定形状の成形体を成形する。成形体焼成工程では、成形工程で得た成形体を焼成し、ドーパントとして窒素を含む炭化珪素の相である導電性相を有する焼結体を得る。
ここで、成形工程及び成形体焼成工程は、β型骨材及び炭化珪素粉末を含む成形原料から成形体を得る成形工程と、窒素ガスを含む非酸化性雰囲気で成形体を焼成する成形体焼成工程とすることができる。この場合、加圧下で成形体焼成工程を行えば、雰囲気中の窒素を効率良く焼結体中にドープすることができる。また、成形原料中の炭化珪素粉末に微細粒子を含めれば、微細粒子が焼結する際に、雰囲気中の窒素を効率良くドープすることができる。成形原料は骨材粒子(β型骨材)を含有するため、炭化珪素粉末の焼結の進行に伴い、窒素がドープされた炭化珪素の相が骨材粒子を取り囲むように焼結する。なお、窒素ガスを含む非酸化性雰囲気は、窒素ガス100%雰囲気、アルゴンやヘリウム等の希ガスと窒素ガスとの混合雰囲気とすることができる。
或いは、成形工程及び成形体焼成工程は、β型骨材に加えて珪素源及び炭素源を含む成形原料から成形体を得る成形工程と、窒素ガスを含む非酸化性雰囲気で成形体を焼成することにより炭化珪素を反応生成させる第二の反応焼成工程とすることができる。この場合の成形体焼成工程は第二の反応焼成工程であり、成形原料に含まれるβ型骨材は、第二の反応焼成工程で反応生成する炭化珪素の核となる。第二の反応焼成工程で反応させる「珪素源」と「炭素源」、及びそれらの割合は、骨材粒子製造工程における第一の反応焼成工程に関して上述したものと同様である。
珪素源として窒化珪素を使用する場合は、窒化珪素の分解により発生した窒素も、反応生成する炭化珪素にドープされる。そのため、窒化珪素の分解により発生する窒素のみをドーパントとし、第二の反応焼成工程における雰囲気は窒素ガスを含まない非酸化性雰囲気とすることができる。窒素ガスを含まない非酸化性雰囲気は、アルゴンやヘリウム等の希ガス雰囲気、真空雰囲気とすることができる。
上記工程を備える製造方法では、第一の反応焼成工程の温度を高めることにより、β型炭化珪素である骨材粒子における窒素濃度を増大させることができ、ひいては、成形体焼成工程を経て得られる焼結体における窒素濃度を増大させ、比抵抗値の小さい焼結体を製造することができる。
なお、上記の成形原料には、β型骨材に加えて他の材料からなる骨材粒子を含有させることができる。他の材料からなる骨材粒子としては、α型炭化珪素の粗大粒子や、炭化珪素以外のセラミックスからなる粗大粒子を使用することができ、このような骨材粒子は、導電性であっても非導電性であってもよい。上記のように本実施形態の製造方法は、β型骨材の窒素濃度を増大させることにより比抵抗値の小さい焼結体を製造できるものであるが、他の骨材粒子を成形原料に加えることにより、焼結体の比抵抗値を調整することができる。
実施形態の製造方法は、骨材粒子製造工程と、成形工程と、成形体焼成工程に加え更に高抵抗相形成工程を具備している。骨材粒子製造工程から成形体焼成工程までは上述した工程と同一である。高抵抗相形成工程は、成形体焼成工程を経て得た焼結体、すなわち、ドーパントとして窒素を含む炭化珪素の相である導電性相を含む焼結体を、実質的に窒素ガスを含まない非酸化性雰囲気で加熱する工程である。
このような工程により、ドープされていた窒素の一部が焼結体から排出され、少なくとも導電性相の外側に、導電性相における窒素の平均濃度より窒素濃度が低い炭化珪素の相である高抵抗相が形成される。ここで、「実質的に窒素ガスを含まない非酸化性雰囲気」は、アルゴンやヘリウム等の希ガス雰囲気とすることができる。この場合、雰囲気中の窒素ガスの濃度は理想的にはゼロであるが、窒素ガスの濃度は5000ppm未満であれば許容され、より好ましくは500ppm未満である。或いは、「実質的に窒素ガスを含まない非酸化性雰囲気」は、真空雰囲気とすることもできる。高抵抗相形成工程は、2100℃~2300℃という高温で行うことにより、効率よく窒素を排出することができる。
本実施形態では、焼結体の炭化珪素全体におけるβ型炭化珪素の割合は、主に成形原料に含有させるβ型骨材の割合、及び、β型骨材の窒素濃度によって変化させる。成形体焼成工程が第二の反応焼成工程である場合、反応生成したばかりのβ型炭化珪素は高抵抗相形成工程においてα型炭化珪素に転移しやすいのに対し、第一の反応焼成工程で焼成済みの炭化珪素の粉砕物であるβ型骨材は、成形体焼成工程においても高抵抗相形成工程においてα型炭化珪素に転移しにくい。そのため、成形原料に含有させたβ型骨材の多くが最終的な焼結体にβ型のまま残留し易く、α型への転移を過度に懸念することなく、高抵抗相形成工程を高温で行い窒素を効率よく排出させることができる。
加えて、β型骨材における窒素濃度が高いほど、高抵抗相形成工程においてα型炭化珪素への転移が起こりにくい。従って、第一の反応焼成工程の温度を高めることによってβ型骨材における窒素濃度が高めておくことによっても、炭化珪素のβ型からα型への転移を過度に懸念することなく、高抵抗相形成工程を高温で行い窒素を効率よく排出させることができる。
ここで、骨材粒子を得るための第一の反応焼成工程の温度は、高抵抗相形成工程の温度以上とすることが望ましい。これにより、高抵抗相形成工程では骨材粒子において物質移動が殆ど生じないものとなるため、骨材粒子にドープされていた窒素が高抵抗相形成工程で排出される程度や、骨材粒子のβ型炭化珪素が高抵抗相形成工程でα型に転移する程度を低減することができる。
珪素源として窒化珪素を、炭素源としてグラファイトを使用し、珪素及び炭素のモル比(Si/C)を1とした骨材原料を、窒素ガス100%雰囲気で6時間焼成し、炭化珪素を反応生成させた(第一の反応焼成工程)。この工程の温度を2000℃~2250℃の範囲で異ならせた試料S1~S5の反応焼成物(炭化珪素)について、窒素濃度を測定した。窒素濃度は、JIS R1616の「不活性ガス融解-熱伝導度法」に則って測定した。なお、試料S1~S5は、第一の反応焼成工程の温度のみが相違し、その他の条件は同一である。試料S1~S5の反応焼成物における窒素濃度を表1に示すと共に、第一の反応焼成工程の温度に対して窒素濃度をプロットしたグラフを図1に示す。
Figure 0007213607000001
表1及び図1に示すように、第一の反応焼成工程の温度を2000℃~2250℃の範囲で異ならせた場合、反応焼成物における窒素の濃度は0.25質量%~1.00質量%であった。そして、第一の反応焼成工程の温度を高めるほど、反応生成する炭化珪素における窒素濃度が増大した。従って、第一の反応焼成工程の温度をより高温とし、反応生成した炭化珪素を骨材粒子として成形原料に含有させることにより、成形原料を成形し焼成して得られる焼結体における窒素濃度を増大させることができ、比抵抗値がより小さい導電性炭化珪素質焼結体、すなわち、導電性のより高い導電性炭化珪素質焼結体を製造することができる。
第一の反応焼成工程により得られた炭化珪素について、X線回折パターンを測定し、α型炭化珪素とβ型炭化珪素の比を求めた。α型炭化珪素とβ型炭化珪素の比は、X線回折パターンにおけるα型炭化珪素のピークとβ型炭化珪素のピークとから、リートベルト法により求めた。X線回折パターンにおける炭化珪素のピークのうち、結晶構造3Cのピークをβ型炭化珪素のピークとし、6H、15R、4Hなど、3C以外の結晶構造の炭化珪素のピークをα型炭化珪素のピークとして解析した。その結果、試料S1~S5の炭化珪素は何れも、100%がβ型であった。
試料S1~S5の炭化珪素を粉砕し、それぞれ平均粒子径7.5μmの骨材粒子とした(粉砕工程)。珪素源として窒化珪素を、炭素源としてグラファイトを使用し、珪素及び炭素のモル比(Si/C)を1とした反応生成原料に、試料S1~S5の骨材粒子をそれぞれ加えることにより、試料E1~E5の成形原料を調製した。試料E1~E5の成形原料それぞれにおける骨材粒子の割合は、何れも成形体焼成工程を経て得られる炭化珪素全体に対して64質量%となるように設定した。試料E1~E5の成形原料それぞれに有機バインダー及び水を添加し、混練した混練物を押出成形して、サイズ36mm×36mm×長さ100mm、セル密度300cpsi、隔壁の厚さ10mil(約0.25mm)のハニカム構造の成形体を作製した(成形工程)。
試料E1~E5の成形体を、窒素ガス100%の非酸化性雰囲気で、2100℃の温度で4時間焼成し、ドーパントとして窒素を含む炭化珪素の相である導電性相を有する焼結体を得た(成形体焼成工程、第二の反応焼成工程)。導電性相は、窒素がドープされているβ型骨材と、この骨材粒子を核として反応生成した炭化珪素に窒素がドープされている相とからなる。
成形体焼成工程(第二の反応焼成工程)を経た試料E1~E5の焼結体を、それぞれ実質的に窒素ガスを含まない非酸化性雰囲気であるアルゴン100%雰囲気で、2200℃の温度で8時間加熱した(高抵抗相形成工程)。
高抵抗相形成工程を経た焼結体について、JIS R1650-2に準拠した四端子法で、比抵抗値(体積抵抗率)を測定した。その結果を表2に示す。また、試料E1の比抵抗値を1としたときの比抵抗値の比を、表2に合わせて示すと共に、β型骨材における窒素濃度に対して比抵抗値の比をプロットしたグラフを図2に示す。
Figure 0007213607000002
高抵抗相形成工程を経た試料E1~E5の焼結体は、骨材粒子であるβ型炭化珪素を反応焼成する際の温度が相違するのみで、他の全ての処理条件は同一である。従って、試料E1~E5の焼結体では、成形体焼成工程(第二の反応焼成工程)において骨材粒子を核として生成した炭化珪素の相の量及び窒素濃度は同一であり、骨材粒子の周囲に生成している炭化珪素の相のうち高抵抗相形成工程において高抵抗相となる量及び窒素濃度も同一であると考えられ、骨材粒子における窒素濃度のみが相違する。表2及び図2から明らかなように、骨材粒子における窒素濃度が高くなるほど、高抵抗相形成工程を経た焼結体の比抵抗値を低下させることができる。つまり、過去の検討(特許文献2)では、高抵抗相を形成することによって、酸化に伴う比抵抗値の変化を抑制できるものの、比抵抗値自体は大きくなっていたのに対し、骨材粒子における窒素濃度を高めることにより、高抵抗相の存在によって酸化に伴う比抵抗値の変化が抑制されていると共に、比抵抗値自体が小さい導電性炭化珪素質焼結体を製造することができる。
更に、高抵抗相形成工程を経た試料E1~E5の焼結体それぞれを粉砕し、粉砕物について測定したX線回折パターンから、上記と同様の方法でα型炭化珪素とβ型炭化珪素の比「α-SiC:β-SiC」を求めた。粉砕の程度の異なる焼結体粉砕物について「α-SiC:β-SiC」を測定すると、粉砕の進行に伴って比率が変化するが、粉砕がある程度に達すると、それ以上に粉砕をしても「α-SiC:β-SiC」が一定となる。このときの「α-SiC:β-SiC」は、高抵抗相形成工程を経た焼結体の炭化珪素全体におけるα型炭化珪素とβ型炭化珪素との比であると、考えることができる。高抵抗相形成工程を経た試料E1~E5の焼結体それぞれについて、炭化珪素全体におけるα型炭化珪素とβ型炭化珪素との比を表2に合わせて示すと共に、β型骨材における窒素濃度に対して炭化珪素全体におけるβ型炭化珪素の割合をプロットしたグラフを図3に示す。
表2及び図3から明らかなように、骨材粒子における窒素濃度が高いほど、高抵抗相形成工程を経た焼結体の炭化珪素全体におけるβ型炭化珪素の割合が増大している。
出願人の過去の検討(特許文献3)では、高抵抗相を有する導電性炭化珪素質焼結体の比抵抗値の温度依存性を、炭化珪素全体におけるβ型炭化珪素の割合を高めることによって低下させることができるものの、酸化に伴う比抵抗値の変化を高抵抗相の存在によって抑制する作用のために焼結体を高抵抗相形成工程に供すると、β型炭化珪素の一部がα型に転移してしまうため、β型炭化珪素の割合を増大させようとしても限界があった。具体的には、高抵抗相形成工程で効率よく窒素を排出させるために高抵抗相を2100℃以上の高温で行う場合、炭化珪素全体におけるβ型炭化珪素の割合は34%~39%の範囲に上限値を有するものであった。これに対し、本実施形態の製造方法では、β型骨材における窒素濃度を高めることにより、炭化珪素全体におけるβ型炭化珪素の割合を65%まで高めることができ、高抵抗相の存在によって酸化に伴う比抵抗値の変化が抑制されていると共に、比抵抗値の温度依存性がより小さい導電性炭化珪素質焼結体を、製造することができる。
これは、過去の検討では、成形体焼成工程で反応生成させる炭化珪素におけるβ型炭化珪素の割合によって、焼結体の炭化珪素全体におけるβ型炭化珪素の割合を調整しており、反応生成したばかりのβ型炭化珪素は高抵抗相形成工程でα化し易いのに対し、本実施例で成形原料に含有させたβ型骨材は、焼成物を粉砕した粗大粒子であり、高抵抗相形成工程でα化しにくいためと考えられた。加えて、本実施例の製造方法では、β型骨材における窒素濃度を高めているため、固溶した窒素の存在によって、β型炭化珪素の3C結晶構造が安定化しており、α型への転移が抑制されているためと考えられた。
特に、骨材粒子を得るための第一の反応焼成工程の温度を、高抵抗相形成工程の温度である2200℃以上とした試料E4,E5の焼結体では、炭化珪素全体におけるβ型炭化珪素の割合は、β型骨材の割合である64%とほぼ等しい。これは、高抵抗相形成工程の温度以上の高温で既に焼成されているβ型骨材では、高抵抗相形成工程において物質移動が生じにくく、β型骨材のほぼ全量が高抵抗相形成工程でα型に転移することなく残留したためと考えられた。
以上のように、本実施例の製造方法によれば、成形原料に含有させる骨材粒子を第一の反応焼成工程で反応焼成させた炭化珪素とし、第一の反応焼成工程の温度を高めることによって骨材粒子の窒素濃度を増大させることにより、成形体焼成工程(第二の反応焼成工程)を経て得られる焼結体の導電性相における窒素のドープ量を増大させ、導電性をより高めることができる。
つまり、成形体焼成工程(第二の反応焼成工程)を経て得られる焼結体は、骨材粒子を核としてその周囲にドーパントとして窒素を含む炭化珪素の相が形成されている導電性炭化珪素質焼結体であって、骨材粒子はドーパントとして窒素を含む炭化珪素であり、骨材粒子における窒素の濃度は0.25質量%~1.00質量%である、という構成である。
また、焼成物を粉砕した粗大粒子である骨材粒子からは、高抵抗相形成工程において窒素が排出されにくいことに加え、第一の反応焼成工程の温度を高めることによって骨材粒子の窒素濃度を増大させることにより、高抵抗相の存在によって酸化に伴う比抵抗値の変化が抑制されていると共に、比抵抗値の小さい導電性炭化珪素質焼結体形成工程を製造することができる。
具体的には、過去の検討(特許文献2等)では、高抵抗相が形成された焼結体の比抵抗値は、Ωcmを単位として3ケタ(数百Ωcm)であった。これに対し、本実施例の製造方法によれば、高抵抗相が形成された焼結体の比抵抗値を2ケタ以下(100Ωcm未満)に抑えることが可能であった(試料E3~E5)。つまり、ドーパントとして窒素を含む炭化珪素である骨材粒子、及び、その骨材粒子の周囲に生成された炭化珪素の相であってドーパントとして窒素を含む炭化珪素の相からなる導電性相と、その導電性相の少なくとも外側に形成された、導電性相における窒素の平均濃度より窒素の濃度が低い炭化珪素の相である高抵抗相とを備える焼結体であって、比抵抗値が5Ωcm以上、100Ωcm未満の導電性炭化珪素質焼結体を、得ることができる。
特に、β型骨材を得る第一の反応焼成工程の温度を、高抵抗相形成工程の温度以上とすることにより、窒素濃度を0.83質量%~1.00質量%と高濃度とした骨材粒子を含む成形原料から得た試料E4,E5の焼結体は、比抵抗値が5Ωcm~24Ωcmと非常に小さな値であった。つまり、導電性相の少なくとも外側に高抵抗相を有する焼結体であって、比抵抗値が5Ωcm~24Ωcmの導電性炭化珪素質焼結体を、得ることができる。また、骨材粒子を得る第一の反応焼成工程を高抵抗相形成工程の温度以上で行うことにより、高抵抗相形成工程では骨材粒子における物質移動が生じにくく窒素が排出されにくい。そのため、導電性相の少なくとも外側に高抵抗相を有する焼結体であって、骨材粒子における窒素の濃度が0.83質量%~1.00質量%である構成の導電性炭化珪素質焼結体を、得ることができる。
更に、成形原料に含有させるβ型骨材によって、焼結体の炭化珪素全体におけるβ型炭化珪素の割合を調整することにより、比抵抗値の温度依存性の異なる導電性炭化珪素質焼結体を製造するに当たり、焼成物を粉砕した粗大粒子であるβ型骨材は反応焼成工程においても高抵抗相形成工程においてもα型に転移しにくく、高抵抗相形成工程を経た焼結体の炭化珪素全体におけるβ型炭化珪素の割合を高めることができる。加えて、第一の反応焼成工程の温度を高めることによって窒素濃度を増大させたβ型骨材はα化しにくいため、高抵抗相形成工程を経た焼結体の炭化珪素全体におけるβ型炭化珪素の割合を、より高めることができる。
特に、β型骨材を得る第一の反応焼成工程の温度を、高抵抗相形成工程の温度以上とすることにより、β型骨材のほぼ全量を、高抵抗相形成工程を経た後の焼結体にβ型のまま残留させることができる。
なお、成形体焼成工程である第二の反応焼成工程の温度を高めることによっても、反応生成する炭化珪素における窒素濃度を増大させることが可能であると考えられる。しかしながら、成形体焼成工程の温度は、焼結体に要請される気孔率、ネック成長や粒子成長の度合い、粒子径分布など、種々の特性に影響する。そのため、成形体焼成工程の温度を、単に窒素のドープ量を高める目的のみで設定することは難しいのが実情である。これに対し、骨材粒子を得るための工程の温度は、焼結体における上記の特性には影響しないため、骨材粒子における窒素濃度を増大させる目的のために、問題なく高温に設定することができる利点がある。
また、成形体焼成工程の温度を高抵抗相形成工程の温度以上とすると、成形体焼成工程で形成された導電性相では高抵抗相形成工程において物質移動が生じにくく、窒素が排出されにくいものとなるおそれがある。そのため、高抵抗相を形成するためには、成形体焼成工程の温度を高抵抗相形成工程の温度より低く設定することが望ましいと考えられる。これに対し、骨材粒子を得るための第一の反応焼成工程の温度を高抵抗相形成工程の温度以上とすることは、高抵抗相形成工程において導電性相の少なくとも外側で窒素を排出させる作用に影響を与えず、骨材粒子にドープされた窒素を排出させにくいものとする利点も有する。そのため、骨材粒子における窒素濃度を高めることを主眼とする本実施形態の製造方法は、成形体焼成工程で形成される導電性相の窒素濃度を高めようとする製造方法に比べて、焼結体における窒素濃度を容易に高めることができ、ひいては高抵抗相を有する焼結体の比抵抗値を容易に低下させることができる。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
例えば、上記の実施例では、成形原料に含有させる骨材粒子の割合を、成形体焼成工程を経て得られる焼結体の炭化珪素全体に対して64質量%に設定した。骨材粒子の割合は、焼結体に要請される機械的強度や、成形体焼成工程の温度及び焼結の進行の程度等を考慮して設定することができ、例えば、成形体焼成工程を経て得られる焼結体の炭化珪素全体に対して60質量%~85質量%とすることができる。

Claims (5)

  1. 骨材粒子を核として、その周囲にドーパントとして窒素を含む炭化珪素の相が形成されている導電性炭化珪素質焼結体であって、
    ドーパントとして窒素を含む炭化珪素である前記骨材粒子、及び、前記骨材粒子の周囲に形成された、ドーパントとして窒素を含む炭化珪素の相、を含む導電性相の少なくとも外側に、前記導電性相における窒素の平均濃度より窒素の濃度が低い炭化珪素の相である高抵抗相を有しており、
    前記骨材粒子における窒素の濃度は0.25質量%~1.00質量%であり、
    化珪素全体におけるβ型炭化珪素の割合が56%~65%である
    ことを特徴とする導電性炭化珪素質焼結体。
  2. 骨材粒子を含む原料から成形した成形体を焼成し、ドーパントとして窒素を含む炭化珪素の相である導電性相を有する焼結体を得る成形体焼成工程と、
    前記成形体焼成工程の後に行われる、実質的に窒素ガスを含まない非酸化性雰囲気で前記焼結体を加熱し、ドープされた窒素の一部を排出させることにより、少なくとも前記導電性相の外側に、前記導電性相における窒素の平均濃度より窒素の濃度が低い炭化珪素の相である高抵抗相を形成する高抵抗相形成工程と、を具備する導電性炭化珪素質焼結体の製造方法であって、
    前記骨材粒子は、珪素源と炭素源とを窒素ガスを含む非酸化性雰囲気で焼成することにより、ドーパントとして窒素を含むβ型炭化珪素を反応生成させる反応焼成工程を経て得るものであり、
    前記反応焼成工程の温度を高めることにより前記骨材粒子の窒素濃度を増大させることによって、比抵抗値を異ならせた前記焼結体を製造すると共に、
    前記骨材粒子を得る前記反応焼成工程の温度を、前記高抵抗相形成工程の温度以上とすることにより、前記反応焼成工程の温度が前記高抵抗相形成工程の温度より低い場合に比べて、前記高抵抗相形成工程を経た後の前記焼結体の炭化珪素全体におけるβ型炭化珪素の割合を大きなものとする
    ことを特徴とする請求項1に記載の導電性炭化珪素質焼結体の製造方法。
  3. 骨材粒子を含む原料から成形した成形体を焼成し、ドーパントとして窒素を含む炭化珪素の相である導電性相を有する焼結体を得る成形体焼成工程と、該成形体焼成工程の後に行われる、実質的に窒素ガスを含まない非酸化性雰囲気で前記焼結体を加熱し、ドープされた窒素の一部を排出させることにより、少なくとも前記導電性相の外側に、前記導電性相における窒素の平均濃度より窒素の濃度が低い炭化珪素の相である高抵抗相を形成する高抵抗相形成工程と、を具備する導電性炭化珪素質焼結体の製造方法であって、
    前記骨材粒子は、珪素源と炭素源とを窒素ガスを含む非酸化性雰囲気で焼成することにより、ドーパントとして窒素を含むβ型炭化珪素を反応生成させる第一の反応焼成工程を経て得るものであると共に、
    前記成形体焼成工程は、前記骨材粒子、珪素源、及び炭素源を含む原料から成形した成形体を非酸化性雰囲気で焼成する第二の反応焼成工程であり、
    前記第一の反応焼成工程の温度を高めることにより前記骨材粒子の窒素濃度を増大させることによって、比抵抗値を異ならせた前記焼結体を製造すると共に、
    前記第二の反応焼成工程の温度を前記高抵抗相形成工程の温度より低く設定する一方で、
    前記骨材粒子を得る前記第一の反応焼成工程の温度を、前記高抵抗相形成工程の温度以上とすることにより、前記高抵抗相形成工程の温度での前記骨材粒子における物質移動を抑制し、前記第一の反応焼成工程でドープされた窒素の前記高抵抗相形成工程における排出を抑制する
    ことを特徴とする請求項1に記載の導電性炭化珪素質焼結体の製造方法。
  4. 骨材粒子を含む原料から成形した成形体を焼成し、ドーパントとして窒素を含む炭化珪素の相である導電性相を有する焼結体を得る成形体焼成工程と、該成形体焼成工程の後に行われる、実質的に窒素ガスを含まない非酸化性雰囲気で前記焼結体を加熱し、ドープされた窒素の一部を排出させることにより、少なくとも前記導電性相の外側に、前記導電性相における窒素の平均濃度より窒素の濃度が低い炭化珪素の相である高抵抗相を形成する高抵抗相形成工程と、を具備する導電性炭化珪素質焼結体の製造方法であって、
    前記骨材粒子は、珪素源と炭素源とを窒素ガスを含む非酸化性雰囲気で焼成することにより、ドーパントとして窒素を含むβ型炭化珪素を反応生成させる反応焼成工程を経て得るものであり、
    前記反応焼成工程の温度を高めることにより前記骨材粒子の窒素濃度を増大させることによって、比抵抗値を異ならせた前記焼結体を製造すると共に、
    前記骨材粒子における窒素の濃度を0.25質量%~1.00質量%とすることにより、
    前記高抵抗相形成工程を経た後の前記焼結体の炭化珪素全体におけるβ型炭化珪素の割合を56%~65%とする
    ことを特徴とする請求項1に記載の導電性炭化珪素質焼結体の製造方法。
  5. 骨材粒子を含む原料から成形した成形体を焼成し、ドーパントとして窒素を含む炭化珪素の相である導電性相を有する焼結体を得る成形体焼成工程と、該成形体焼成工程の後に行われる、実質的に窒素ガスを含まない非酸化性雰囲気で前記焼結体を加熱し、ドープされた窒素の一部を排出させることにより、少なくとも前記導電性相の外側に、前記導電性相における窒素の平均濃度より窒素の濃度が低い炭化珪素の相である高抵抗相を形成する高抵抗相形成工程と、を具備する導電性炭化珪素質焼結体の製造方法であって、
    前記骨材粒子は、珪素源と炭素源とを窒素ガスを含む非酸化性雰囲気で焼成することにより、ドーパントとして窒素を含むβ型炭化珪素を反応生成させる反応焼成工程を経て得るものであり、
    前記反応焼成工程の温度を高めることにより前記骨材粒子の窒素濃度を増大させることによって、比抵抗値を異ならせた前記焼結体を製造すると共に、
    前記骨材粒子の窒素濃度を増大させることによって、前記高抵抗相形成工程を経た後の前記焼結体の炭化珪素全体におけるβ型炭化珪素の割合を増大させる
    ことを特徴とする請求項1に記載の導電性炭化珪素質焼結体の製造方法
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