JP5281666B2 - 導電性セラミックス焼結体 - Google Patents

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Description

本発明は、通電により発熱させる導電性セラミックス焼結体に関するものである。
セラミックスは一般的に電気絶縁性が高いが、導電性が付与されたセラミックス焼結体は、通電により自己発熱させる発熱体として使用することが可能である。例えば、導電性セラミックス焼結体でガスを流通可能な構造体を形成し、この構造体に通電して自己発熱させた状態で、揮発性有機化合物(VOC)を含む排ガスを流通させれば、ヒータやバーナ等によって外部加熱する必要なく、VOCを分解処理することができる。また、導電性セラミックス焼結体の構造体をディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)の基体とすれば、フィルタ基体に通電して自己発熱させることにより、ヒータやバーナ等によって外部加熱する必要なく、フィルタに捕集され堆積した粒子状物質を燃焼・除去してフィルタを再生することができる。ヒータやバーナ等でセラミックスの構造体を外部加熱する場合は、大きな温度勾配によって構造体に亀裂・割れが発生するおそれや、局所的な加熱によって構造体が溶損するおそれがあるところ、構造体を自己発熱させる場合は、そのようなおそれが大幅に低減される利点がある。
電気絶縁性のセラミックスに導電性を付与する方法としては、微量の不純物を添加することにより半導体とする方法が公知である。また、本出願人は、電気抵抗が高く絶縁体に近い炭化珪素に導電性を付与する方法として、骨材としての炭化珪素粉末に、炭化珪素を反応生成させる珪素源としての窒化珪素粉末と、炭素源としての炭素質物質の混合粉末を加えて成形し焼成する方法を提案している(例えば、特許文献1,2参照)。この製造方法によれば、珪素源としての窒化珪素の分解によって生じる窒素が炭化珪素にドープされるため、導電性を付与する不純物を添加剤として加える必要なく、n型半導体の炭化珪素質セラミックス焼結体を得ることができる。
しかしながら、特許文献1,2の技術で製造される導電性セラミックス焼結体は、比抵抗値の範囲が0.1〜10Ω・cmであり、より広い範囲で比抵抗値を調整できることが要請されていた。これは、例えばDPFであれば、取付け対象の車体の大きさや構造によって、またVOC処理装置であれば設置スペースや処理すべき排ガスの量などによって、発熱体(自己発熱させる構造体)に対して求められるサイズが極めて多種類となるためである。要請される発熱体のサイズが種々となれば、所定温度まで所定時間内に昇温させるために必要な比抵抗値も、種々となる。
また、特許文献1,2の技術で製造される導電性セラミックス焼結体は、温度の上昇に伴って電気抵抗が減少する特性を有し、比抵抗値の温度依存性が高い。そのため、低温における比抵抗値が高過ぎれば、通電しても発熱しにくい一方で、低温における比抵抗値を低下させれば高温下で比抵抗値が小さくなり過ぎ、電流値が過大となって制御が困難となるという問題があった。
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、比抵抗値を広い範囲内で調整することができると共に、比抵抗値の温度依存性を調整することが可能な導電性セラミックス焼結体の提供を、課題とするものである。
上記の課題を解決するため、本発明にかかる導電性セラミックス焼結体は、「ドーパントを含む半導体セラミックスの第一相と、非導電性セラミックスの第二相とを具備し、
前記第二相が前記第一相に取り囲まれて散在している海島構造を有する」ものである。
第一相は、ドーパントの添加により半導体となったセラミックスの相である。本発明者らは、導電性の第一相と非導電性の第二相を備える焼結体の構造を、第一相中に第二相が散在している海島構造とすることにより、通電により自己発熱する発熱体として、高温下で使用される導電性セラミックス焼結体として適した比抵抗値に調整しやすく、且つ、比抵抗値の温度依存性を調整できることを見出した。
ここで、「海島構造」とは、連続的に存在する第一相の“海”の中に、第二相が“島”状に散在する構造を指している。
また、「導電性」は比抵抗値が1000Ω・cm未満の場合を指し、「非導電性」は比抵抗値が1000Ω・cm以上の場合を指すものとする。なお、第二相を構成する「非導電性セラミックス」は、電気伝導性を有しないセラミックスであれば種類は特に限定されず、炭化珪素、アルミナ、ムライト、コージェライトを例示することができる。
本発明にかかる導電性セラミックス焼結体は、上記構成において、「前記ドーパントとしてアクセプターを含む」ものとすることができる。
アクセプターの添加により多数キャリアとなる正孔は、電子に比べて移動しにくい。従って、ドーパントとしてアクセプターを含むことにより、第一相の電気抵抗を調整しやすく、ひいては、導電性セラミックス焼結体全体の比抵抗値を調整しやすい。
本発明にかかる導電性セラミックス焼結体は、上記構成において、「前記ドーパントはアクセプター及びドナーである」ものとすることができる。
アクセプターとドナーとが添加されることにより、両者の一部が相殺された結果として、第一相を、微小な視野でp型半導体の部分とn型半導体の部分が混在している相とすることができる。検討の結果、アクセプターとドナーとの量的関係、及び、海島構造における第一相と第二相との割合により、導電性セラミックス焼結体の比抵抗値及び比抵抗値の温度依存性を、非常に有効に調整できることが明らかとなった。
本発明にかかる導電性セラミックス焼結体は、上記構成において、「前記第一相は、前記第一相全体におけるドーパントの平均濃度よりドーパントの濃度が高く、前記第二相を被覆しているドーパント高濃度相と、前記平均濃度よりドーパントの濃度が低いドーパント低濃度相とからなる」ものとすることができる。
後述の製造方法により、第二相の周囲に第二相を被覆するように存在するドーパントの濃度の高い相(ドーパント高濃度相)と、その他の領域を占めるドーパントの濃度の低い相(ドーパント低濃度相)とから、導電性の第一相が構成されている焼結体を得ることができる。そして、本発明者らは、このような構成の焼結体では、ドーパント高濃度相の割合を変化させることにより、比抵抗値の温度依存性を調整することができることを見出した。具体的には、ドーパント高濃度相におけるドーパントの濃度が同程度であれば、ドーパント高濃度相の厚さを薄くすることにより、比抵抗値の温度依存性を小さくすることができる。
本発明にかかる導電性セラミックス焼結体は、上記構成において、「前記第一相は、ドーパントを含む炭化珪素質セラミックスである」ものである
上記構成の第一相は、ドーパントを含むことにより半導体となった炭化珪素質セラミックスの相である。後述の製造方法により、導電性である炭化珪素質セラミックスの第一相中に、非導電性セラミックスの第二相が散在している海島構造であり、全体として導電性を有するセラミックス焼結体を得ることができる。そして、このような構成の焼結体では、第一相におけるドーパントの濃度を変化させて第一相の導電性を変化させることにより、また、非導電性の第二相に対する第一相の割合を変化させることにより、焼結体の比抵抗値、及び、比抵抗値の温度依存性を調整することができる。例えば、第二相に対する第一相の割合を減少させることにより、比抵抗値の温度依存性を小さくすることができる。
本発明にかかる導電性セラミックス焼結体は、第一相がドーパントを含む炭化珪素質セラミックスである上記構成において、「前記第二相は、ドーパントを含まない炭化珪素である」ものとすることができる。
本構成では、第一相と第二相とが共に炭化珪素からなる。これにより、第一相と第二相とで熱伝導率や熱膨張率が同程度となる。炭化珪素は熱伝導率が高いことに加えて熱膨張率が小さいことから、耐熱衝撃性に優れている。そのため、本構成の導電性セラミックス焼結体は、高温下で使用されるフィルタの基体として適したものとなる。また、VOC等を含む排ガスを流通させ、加熱により分解する触媒担体としても適したものとなる。更に、炭化珪素は熱膨張率が小さいことから、高温下で使用される構造体であってもキャニングが可能である。そのため、本構成の導電性セラミックス焼結体は、キャニングされていることより得られる耐振動作用によって、耐久性の高い発熱体として使用することが可能である。
本発明にかかる導電性セラミックス焼結体は、上記構成において、「前記第二相は、粒子径が10μm〜50μmの炭化珪素の粗大粒子である」ものとすることができる。
炭化珪素の粗大粒子の形状は球形に限定されるものではなく、「粒子径」は回折散乱径(直径)として求めることができる。
このような第二相は、焼結体の原料に粒子径が10μm〜50μmの炭化珪素の粗大粒子を含有させることにより、得ることができる。かかる粗大粒子は、高温での焼成後もほぼそのまま残存し、ドーパントも粗大粒子の内部にはドープされないため、非導電性の相となる。
本発明にかかる導電性セラミックス焼結体は、第一相がドーパントを含む炭化珪素質セラミックスであり、第二相が粒子径が10μm〜50μmの炭化珪素の粗大粒子で構成される上記構成において、「前記第一相及び前記第二相の和における炭化珪素のモル数に対する前記第二相の炭化珪素のモル数の割合は、58%〜82%である」ものとすることができる。
第二相の存在は、比抵抗値及びその温度依存性の調整のために重要であるが、上記の粗大粒子に由来する第二相の割合が増加すると機械的強度が低下する。後述するように、検討の結果、第一相及び第二相の和における炭化珪素のモル数に対する、第二相における炭化珪素のモル数の割合が58%〜82%の範囲であれば、実用的な機械的強度を有すると共に、比抵抗値及びその温度依存性が調整された導電性セラミックス焼結体となる。
本発明にかかる導電性セラミックス焼結体は、第一相がドーパントを含む炭化珪素質セラミックスである上記構成において、「前記ドーパントとして前記第一相における炭化珪素のモル数に対して1%〜7%のアルミニウムを含む」ものとすることができる。
検討の結果、第一相が炭化珪素質セラミックスであって、アクセプターであるアルミニウムをドーパントとして含む場合、アルミニウムの濃度及び第一相の割合によって、比抵抗値及びその温度依存性を調整することができるが、アルミニウムの濃度が機械的強度に影響を及ぼすことが分かった。第一相におけるアルミニウムのモル数は、第一相における炭化珪素のモル数に対して1%〜7%の範囲であれば、実用的な機械的強度を有すると共に、比抵抗値及びその温度依存性が調整された導電性セラミックス焼結体とすることができる。
以上のように、本発明の効果として、比抵抗値を広い範囲内で調整することができると共に、比抵抗値の温度依存性を調整することが可能な導電性セラミックス焼結体を、提供することができる。
試料9の元素分析結果を、反射電子像及び相構造の模式図と共に示した図である。 図1における相構造の模式図に符号を付した図である。 試料15の元素分析結果を、反射電子像と共に示した図である。 アルミニウム原料を添加しておらず、生成SiCの割合が相違する試料について、比抵抗値の温度変化を対比したグラフである。 生成SiCの割合が同一であり、第一相におけるアルミニウムの平均濃度が相違する試料(微粒SiCが多い試料)について、比抵抗値の温度変化を対比したグラフである。 生成SiCの割合が同一であり、第一相におけるアルミニウムの平均濃度が相違する試料(微粒SiCが少ない試料)について、比抵抗値の温度変化を対比したグラフである。 生成SiCに対するアルミニウムの割合が同一であり、生成SiCの割合が相違する試料について、比抵抗値の温度変化を対比したグラフである。 生成SiCの割合が同一であり、第二相の割合が相違する試料について、比抵抗値の温度変化を対比したグラフである。 比抵抗値の温度依存性(比抵抗値の傾き)を、第二相に対する生成SiCの割合に対してプロットした図である。 各試料の三点曲げ強度を(a)焼結体における第二相の割合に対してプロットした図であり、(b)第一相におけるアルミニウムの平均濃度に対してプロットした図である。 焼結体のX線回折ピークである。
以下、本発明の一実施形態である導電性セラミックス焼結体、及び、その製造方法について説明する。
本実施形態の導電性セラミックス焼結体は、ドーパントを含む半導体セラミックスの第一相と、非導電性セラミックスの第二相とを具備し、第二相が第一相に取り囲まれて散在している海島構造を有するものである。また、第一相は、ドーパントとして、アクセプター及びドナーを含んでいる。更に、本実施形態では、第一相はドーパントを含む炭化珪素質セラミックスであると共に、第二相は、ドーパントを含まない炭化珪素である。
加えて、本実施形態の導電性セラミックス焼結体では、第一相は、第一相全体におけるドーパントの平均濃度よりドーパントの濃度が高く、第二相を被覆しているドーパント高濃度相と、第一相全体におけるドーパントの平均濃度よりドーパントの濃度が低いドーパント低濃度相とからなるものである。また、本実施形態の導電性セラミックス焼結体では、アクセプターとしてアルミニウムを、ドナーとして窒素を含んでいる。
かかる構成の焼結体は、以下の導電性セラミックス焼結体の製造方法(以下、単に「製造方法」と称する)により製造することができる。すなわち、本実施形態の製造方法は、炭化珪素を生成する珪素源及び炭素源からなり、炭素に対する珪素のモル比が0.5〜1.5である炭化珪素生成原料、非導電性セラミックス粉末、及び、アルミニウム原料を含む混合原料を成形する成形工程と、成形工程で得られた成形体を、窒素が存在する非酸化性ガス雰囲気下で1800℃〜2200℃の温度で焼成する焼成工程とを具備している。ここで、本実施形態では、非導電性セラミックス粉末として、平均粒子径が10μm〜50μmの炭化珪素の粗大粒子と、平均粒子径が粗大粒子の1/5〜1/40である炭化珪素の微細粒子の混合粉末を使用する。
また、炭化珪素を生成する珪素源としては、珪素(単体)や窒化珪素を使用可能であるが、ここでは珪素を使用する場合を例示する。一方、炭化珪素を生成する炭素源としては、黒鉛、石炭、コークス、木炭などの炭素質物質を使用可能であるが、ここでは粒子径10μm〜20μmの黒鉛を使用する場合を例示する。
より詳細に説明すると、成形工程では、珪素と炭素質物質とからなる炭化珪素生成原料、炭化珪素の粗大粒子、炭化珪素の微細粒子、及び、アルミニウム原料を含む混合原料に、バインダーや界面活性剤等の添加剤を添加し、水と混合・混錬して混錬物とし、これを押出成形することにより成形体を得る。なお、アルミニウム原料としては、アルミニウム(単体)やアルミナを使用可能である。また、成形方法は特に限定されず、例えば、押出成形、乾式加圧成形、鋳込成形とすることができる。
炭化珪素生成原料においては、炭素に対する珪素のモル比(Si/C)が1のときに、化学量論的に過不足なく炭化珪素が生成する。Si/Cが0.5より小さい場合は、残存する炭素分が多過ぎ、粗大気孔の原因となると共に生成した炭化珪素の粒子成長が阻害される。一方、Si/Cが1.5より大きい場合は、炭化珪素の反応生成量が不十分となる。なお、Si/Cは0.8〜1.2であれば、珪素及び炭素の過剰分または不足分が少なく、より望ましい。加えて、炭素が過剰な場合は、焼結体を酸化雰囲気で加熱することにより過剰分の炭素を燃焼・除去することが可能であるが、珪素が過剰である場合は焼結体から除去することが困難であるため、珪素が過剰であるよりは炭素が過剰である方が望ましい。
成形工程の後に、成形体を乾燥する乾燥工程を行ってもよい。このような乾燥工程は、調温調湿槽内での送風乾燥、外部加熱乾燥、マイクロ波照射による内部加熱乾燥等により行うことができる。
焼成工程では、窒素が存在する非酸化性ガス雰囲気において、1800〜2200℃の所定の焼成温度で一定時間保持する。ここで、焼成温度を1800℃〜2200℃としたのは、1800℃より低い場合は、焼結が不十分となり焼結体の強度が低下するおそれがあり、2350℃を超える場合は炭化珪素が昇華するおそれがあるためである。なお、焼成温度は2000℃〜2200℃であれば、過度に加熱することなく比較的短時間で十分に焼結させることができるため、より望ましい。また、窒素が存在する非酸化性ガス雰囲気は、窒素ガス100%雰囲気、或いは、アルゴンやヘリウム等の不活性ガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気とすることができる。焼成時間は、成形体のサイズにもよるが、例えば、10分〜3時間とすることができる。
この焼成工程において、珪素と炭素質物質とが反応して炭化珪素が生成する。このとき、非導電性セラミックス粉末は、粒子径が10μm〜50μmというかなり大きな粗大粒子を含むため、この粗大粒子はほぼそのままの状態で残存し、生成した炭化珪素の相によって取り囲まれる。そして、炭化珪素が反応生成する際に、アルミニウム原料から供給されたアルミニウム、及び、焼成雰囲気中の窒素が、炭化珪素にドープされる。ここで、新たに生成した炭化珪素にはアルミニウム及び窒素がドープされ易い。従って、反応生成した炭化珪素(以下、「生成炭化珪素」と称することがある)からなり、粗大粒子を被覆している相が、「第一相全体におけるドーパントの平均濃度よりドーパントの濃度が高いドーパント高濃度相」である。
これと同時に、炭化珪素の微細粒子間で焼結が進み、生成炭化珪素の相で被覆された粗大粒子間を埋めるように結合する。その際、焼結した微細粒子間の粒界相にも、アルミニウム及び窒素がドープされる。ここで、炭化珪素の微細粒子の焼結により生成した相全体(微細粒子に由来する相及び粒界相を含む)が、「第一相全体におけるドーパントの平均濃度よりドーパントの濃度が低いドーパント低濃度相」である。
なお、焼成工程においては、珪素源と炭素源とのモル比によっては、全ての炭素質物質が炭化珪素の生成反応に使用されずに残留する場合がある。その場合は、過剰分の炭素質物質を燃焼除去する目的で、焼成工程の後に脱炭工程を設けることができる。この脱炭工程は、酸化雰囲気下において650℃〜900℃の温度で1時間〜3時間加熱することにより行うことができる。
次に、本実施形態の実施例を含む、複数の試料を用いて検討した結果を説明する。各試料は、表1に示す組成(質量%)の混合原料から作製した。ここで、炭化珪素の粗大粒子(表中、「粗粒」と表示)としては、平均粒子径11.5μmの粉末(信濃電気精錬製CP−1000)を使用し、炭化珪素の微細粒子(表中、「微粒」と表示)としては、平均粒子径1.0μmの粉末(信濃電気精錬製SER−A10)を使用し、珪素源としては珪素粉末(キンセイマテック製#600)を使用し、炭素源としては黒鉛粉末(オリエンタル産業製AT−No.10−6T)を使用し、アルミニウム原料としてはアルミナ(昭和電工製AL−160SG−3)を使用した。
各組成において、炭化珪素生成原料における炭素に対する珪素のモル比(Si/C)は、何れも約0.9であり、珪素源に対して炭素源が少し過剰となる設定としている。
上記組成の混合原料を、バインダー、界面活性剤、及び、水と混合・混練し、混練物を得た。バインダーとしては、メトローズ(信越化学製65SH−4000)を使用し、界面活性剤としては、オレイン酸(花王製ルナックO−A)、及び、ポリオキシアルキレン系化合物(日油製ユニルーブ(登録商標)50MB−26)を使用した。得られた混練物を押出成形し、外径6mm、厚さ1mm、長さ150mmの円管状の成形体を成形した(成形工程)。
得られた成形体を、80℃の温度で約4時間加熱し、乾燥させた(乾燥工程)。乾燥した成形体を、窒素雰囲気下で、2000℃の温度で4時間焼成した(焼成工程)。その後、空気雰囲気下で、950℃の温度で2時間加熱し、残存していると考えられる黒鉛を燃焼・除去した(脱炭工程)。
上記工程を経て得られた各試料(焼結体)について、第一相、第二相、第一相におけるドーパント高濃度相及びドーパント低濃度相(以下、それぞれ「D高濃度相」及び「D低濃度相」と称することがある)の割合、アルミニウム濃度などの目安となる数値を、各試料を作製した原料の組成から算出した値を、表2に示す。表中、「全SiC」とは、炭化珪素の粗大粒子(以下、「粗粒SiC」と称することがある)のモル数、炭化珪素の微細粒子(以下、「微粒SiC」と称することがある)のモル数、及び、生成炭化珪素(以下、「生成SiC」と称することがある)のモル数を合計した値である。
ここで、「粗粒SiC/全SiC(mol%)」(全SiCに対する粗粒SiCの割合)は、焼結体における非導電相(第二相)の割合の目安となる値である。「生成SiC/全SiC(mol%)」(全SiCに対する生成SiCの割合)は、焼結体におけるD高濃度相の割合の目安となる値である。「生成SiC/粗粒SiC(mol%)」(粗粒SiCに対する生成SiCの割合)は、非導電相(第二相)に対するD高濃度相の割合の目安となる値である。「Al/(微粒SiC+生成SiC)(mol%)」(微粒SiCと生成SiCの和に対するAlの割合)は、導電相(第一相)中のアルミニウムの平均濃度である。また、「Al/生成SiC(mol%)」(生成SiCに対するアルミニウムの割合)は、D高濃度相に対するアルミニウムの割合の目安となる値である。
各試料(焼結体)について、下記の方法で、X線回折による結晶相の同定、元素分析、及び、比抵抗値の測定を行った。
<X線回折>
粉末X線回折装置(リガク製、RINT2000)を使用し、電圧40kV、電流100mA、スキャン速度2θについて1.2度/minの条件で測定した。
<元素分析>
焼結体から角柱状の試験片を切り出し、樹脂に埋設した状態で表面を研磨した。研磨された試料面について、電子プローブマイクロアナライザ(日本電子製、JXA8530F)を用いて、元素分析(面分析)を行った。
<比抵抗値>
試料の長軸方向の両端それぞれにおいて、側周面に沿って10mm幅に銀ペーストを焼き付け、一対の電極とした。一対の電極間の距離は80mmとした。この一対の電極間に電圧を印加し、テスターで電気抵抗を測定して比抵抗値を算出した。比抵抗値の測定は、試料を室温から約500℃まで昇温しながら行った。
X線回折の結果、何れの試料についても、炭化珪素の回折ピークのみが観察され、珪素、黒鉛、アルミナの回折ピークは確認されなかった。一例として、試料15の回折ピークを図11に示す。以上より、珪素は炭化珪素の生成のために消費されて残存していないと共に、炭化珪素の生成のために消費されなかった黒鉛の過剰分は、製造工程(脱炭工程)で除去されたことが確認できた。また、アルミニウム原料として使用したアルミナが焼結体中に残存していないことから、アルミニウムとして炭化珪素にドープされたと考えられた。
次に、元素分析(面分析)の結果について説明する。元素分析で得られたマッピング像より、アルミニウム原料を添加した試料では、アルミニウム及び窒素を含む炭化珪素の相(第一相)の中に、アルミニウム及び窒素を含まない炭化珪素の相(第二相)が、島状に散在する海島構造となっていることが観察された。
代表的な例として、試料9の元素分析結果を図1に示す。ここで、図1(a),(b),(d),(e)はそれぞれアルミニウム、窒素、珪素、炭素を分析対象としたマッピング像である。また、同視野の反射電子像を図1(f)に併せて示す。なお、マッピング像では、分析対象の元素が多く存在する部分ほど、輝度が高く白っぽく見え、反射電子像では、重い元素は明るく軽い元素は暗く観察される。
珪素及び炭素のマッピング像、及び、反射電子像から、焼結体全体が炭化珪素質セラミックスであると考えられるが、アルミニウム及び窒素のマッピング像から、ドープされたアルミニウム及び窒素が偏在している様子が明らかである。図1(a)を模式的に図示した図1(c)、及び、図1(c)に符号を付した図2を用いて説明すると、アルミニウム及び窒素を含まない島状の第二相20は、尖った角を有する形状や、大きさ(粒子径が数μm〜十数μm)から、粗粒SiCがそのまま残存して形成された相であると考えられた。また、この粗粒SiCに由来すると考えられる第二相20は、小さいもので径が約3μmの粒子であることから、3μm以上の粒子径の粗大粒子を原料に含めることにより、アルミニウム及び窒素がドープされない炭化珪素の相を備える焼結体を、製造することができると考えられた。ここで、アルミニウム及び窒素がドープされていない炭化珪素の相である第二相20は、非導電性の相である。
一方、アルミニウム及び窒素を含む第一相10は、第二相の周囲のアルミニウム及び窒素の濃度の高い相11(D高濃度相11)と、その他の領域を占めるアルミニウム及び窒素の濃度の低い相12(D低濃度相12)とからなることが観察された。ここで、D高濃度相11は、三次元的には第二相20を被覆していると考えられ、珪素源及び炭素源から炭化珪素が生成する際に、粗粒SiCを核としてその周囲に生成したものと考えられた。また、D低濃度相12は、D高濃度相11で被覆された粗粒SiC(第二相20)間を埋めるように存在しており、微粒SiCの焼結により形成された相であると考えられた。D低濃度相12ではD高濃度相11よりアルミニウム及び窒素の濃度が低いことは、マッピング像より明らかであるが、これは、D低濃度相12においては、微粒SiCの内部ではなく、主に微粒SiCの焼結により形成される粒界相に、アルミニウム及び窒素がドープされるためと考えられる。なお、図2において、黒く表していると共に符合9を付した領域は、図1(f)の反射電子像において黒く観察される領域であり、試料(セラミックス焼結体)が存在せず、樹脂がタングステンで被覆されている領域である。
他の例として、試料15の元素分析結果を図3に示す。ここで、図3(a),(b),(d),(e)はそれぞれアルミニウム、窒素、珪素、炭素を分析対象としたマッピング像であり、図(f)は同視野の反射電子像である。
図3を図1と比較すると、D高濃度相におけるアルミニウムの強度(輝度)は同程度であるが、D高濃度相の領域(面積)は、試料9より試料15の方が小さい様子が観察される。このことは、両試料において、生成SiCに対するアルミニウムの割合(Al/生成SiC)は同程度(11.8mol%)であるが、全SiCにおける生成SiCの割合(生成SiC/全SiC)は、試料9より試料15の方が小さい(試料9は10.6mol%、試料15は5.3mol%)ことに対応している。また、D低濃度相の領域(面積)も、試料9より試料15の方が小さい様子が観察された。このことは、微粒SiC/(粗粒SiC+微粒SiC)、すなわち、非導電性セラミック粉末として添加した炭化珪素粉末(粗大粒子と微細粒子)における微細粒子の割合が、試料9より試料15の方が小さい(試料9は35mol%、試料15は18mol%)ことに対応している。
次に、比抵抗値に関する検討結果を説明する。最初に、試料1,試料3,試料19について、温度上昇に伴う比抵抗値の変化を対比したグラフを図4に示す。これらは何れもアルミニウム原料を添加していない試料であり、微粒SiC/(粗粒SiC+微粒SiC)は35mol%で共通している。これらの試料のうち試料19は、炭化珪素生成原料を含まない混合原料から作製した試料、すなわち、生成SiC相を形成しない試料であり、試料3及び試料1では、全SiCに対する生成SiCの割合(生成SiC/全SiC)は、それぞれ5.3mol%、10.6mol%である。なお、グラフにおいて括弧内に記した数値は、生成SiC/全SiCの値である。
グラフから明らかなように、試料19、試料3,試料1の順に比抵抗値が小さくなっている。これは、窒素がドープされやすい生成SiC相の増加に伴って、全SiCにおける窒素が増加し、多数キャリアとしての電子が増加したためと考えられる。
図5及び図6は、導電相(第一相)におけるアルミニウムの平均濃度(Al/(微粒SiC+生成SiC))が異なる試料について、比抵抗値の温度変化を対比したグラフである。まず、図5の試料は、微粒SiC/(粗粒SiC+微粒SiC)が35mol%で共通する試料であるが、図5(a)の試料と図5(b)の試料とでは、D高濃度相の量が異なっている。すなわち、図5(a)の試料(試料9,試料5,試料1)は生成SiC/全SiCが10.6mol%であるの対し、図5(b)の試料(試料14,試料7,試料3)は生成SiC/全SiCが5.3mol%と小さくなっている。なお、グラフにおいて括弧内に記した数値は、Al/(微粒SiC+生成SiC)の値である。
図5(a)及び図5(b)の何れのグラフにおいても、第一相中のアルミニウムの平均濃度が高くなるのに伴って、比抵抗値が大きくなっている。このことから、ドナーである窒素に加えて、アクセプターであるアルミニウムをドープすることにより、比抵抗値を大きな値に調整できると言うことができる。これは、炭化珪素に窒素がドープされた場合のキャリアは電子であり、アルミニウムがドープされた場合のキャリアはホールであるが、ホールは電子より移動しにくいためと考えられる。
また、図5(a)と図5(b)とを比較すると、図5(a)ではアルミニウムの濃度が高くなるのに伴い、比抵抗値の温度依存性が高く(グラフの傾きが大きく)なっている。これに対して、図5(b)では、アルミニウム濃度の増加に伴うグラフの傾きの変化が小さい。このことから、D高濃度相の量を少なくすることにより(D高濃度相の厚さを薄くすることにより)、アルミニウム濃度の増加に伴って比抵抗値の温度依存性が高くなる現象が、抑制されていると考えられた。
上記の事項は、図6からも同様に読み取ることができる。図6は、図5と同様に導電相(第一相)におけるアルミニウムの平均濃度が相違する試料について、比抵抗値の温度変化を対比したグラフであるが、図6の試料は、微粒SiC/(粗粒SiC+微粒SiC)が18mol%であり、微粒SiCが図5の試料より少ない試料である。図6(a)の試料と図6(b)の試料とでは、D高濃度相の量が異なっており、図6(a)の試料(試料10,試料6,試料2)は生成SiC/全SiCが10.6mol%であるの対し、図6(b)の試料(試料15,試料8,試料4)は生成SiC/全SiCが5.3mol%と小さくなっている。なお、グラフにおいて括弧内に記した数値は、Al/(微粒SiC+生成SiC)の値である。
図6(a)及び図6(b)の何れのグラフにおいても、上記と同様に、第一相中のアルミニウムの平均濃度が高くなるのに伴い、比抵抗値が大きくなっている。また、図6(a)と図6(b)とを比較すると、上記と同様に、D高濃度相の量が少ない図6(b)では、D高濃度相の量が多い図6(a)に比べて、アルミニウム濃度の増加に伴って比抵抗値の温度依存性が高くなる現象が、抑制されている。
図7は、生成SiCに対するアルミニウムの割合(Al/生成SiC)は11.8mol%と同程度であるが、D高濃度相の量(生成SiC/全SiC)が相違する試料について、比抵抗値の温度変化を対比したグラフである。このうち、図7(a)の試料9及び試料14は、微粒SiC/(粗粒SiC+微粒SiC)が35mol%で共通しており、図7(b)の試料10及び試料15は、同割合が18mol%で共通している。すなわち、図7(a)及び図7(b)はそれぞれ、D低濃度相の量及びD高濃度相におけるアルミニウムの濃度が同程度である試料間で、比抵抗値の温度変化を対比しているグラフである。なお、グラフにおいて括弧内に記した数値は、生成SiC/全SiCの値である。
図7(a)及び図7(b)の何れのグラフからも、D高濃度相の量を少なくすることにより(D高濃度相の厚さを薄くすることにより)、比抵抗値が低下すると共に、比抵抗値の温度依存性が小さくなる(グラフの傾きが小さくなる)ことが分かる。
図8は、生成SiCに対するアルミニウムの割合(Al/生成SiC)は11.8mol%と同程度であるが、焼結体に対する非導電相(第二相)の割合(粗粒SiC/全SiC)が相違する試料について、比抵抗値の温度変化を対比したグラフである。このうち、図8(a)の試料9及び試料10は焼結体全体に対するD高濃度相の割合(生成SiC+全SiC)が10.6mol%で共通しており、図(b)の試料14及び試料15は同割合が5.3mol%で共通している。すなわち、図8(a)及び図8(b)はそれぞれ、D高濃度相の量及びD高濃度相におけるアルミニウムの濃度が同程度の試料間で、比抵抗値の温度変化を対比しているグラフである。なお、グラフにおいて括弧内に記した数値は、粗粒SiC/全SiCの値である。
図8(a)及び図8(b)の何れのグラフからも、非導電相の割合が大きくなるのに伴い、比抵抗値が大きくなると共に、比抵抗値の温度依存性が小さくなることが分かる。そして、図8(a)と図8(b)とを比較すると、D高濃度相の量が少ない(D高濃度相の厚さが薄い)方が、上記の傾向がより顕著であると言うことができる。
図7及び図8を用いて上述したように、D高濃度相の量が比抵抗値の温度依存性に影響を及ぼすと考えられた。そこで、更に、比抵抗値の温度依存性に及ぼすD高濃度相の影響を検討した。表3に、試料9〜試料18について、25℃における比抵抗値、500℃における比抵抗値、及び、比抵抗値の傾き(25℃における比抵抗値を500℃における比抵抗値で除した値)を示す。比抵抗値の傾きが小さいほど、比抵抗値の温度依存性が小さいと言うことができる。なお、試料9〜試料18は、生成SiCに対するアルミニウムの割合が約11.8mol%と等しい試料である。
表3に示した比抵抗値の傾きを、粗粒SiCに対する生成SiCの割合(生成SiC/粗粒SiC)、に対してプロットしたグラフを図9に示す。ここで、生成SiC/粗粒SiCは、非導電性の第二相に対するD高濃度相の割合の目安となる値である。
図9から、比抵抗値の傾き(温度依存性)は生成SiC/粗粒SiCと相関があり、第二相に対するD高濃度相の割合が少ないほど、比抵抗値の温度依存性が小さくなることが分かる。第一相は、D低濃度相とD高濃度相とを含む導電性の相であるが、電気は流れやすい部分があれば優先的にその部分を流れる。そして、その現象は温度が高いほど顕著になると考えられる。そのため、焼結体において最も電気伝導に寄与すると考えられるD高濃度相と、電気が流れない第二相との割合が、比抵抗値の温度依存性に影響を及ぼしているものと考えられた。
以上のように、本実施形態の製造方法によれば、導電性の第一相の中に非導電性の第二相が散在する海島構造を有すると共に、第二相を被覆するD高濃度相と、他の領域を占めるD低濃度相とから第一相が形成されている構造の炭化珪素質導電性セラミックス焼結体を、製造することができる。そして、焼結体をかかる特殊な構造とし、各相の割合、及び、各相におけるドーパントの濃度を変化させることにより、焼結体の比抵抗値、及び、比抵抗値の温度依存性を調整することができる。
次に、各試料について三点曲げ強度を測定した結果を、表4に示す。三点曲げ強度は下記の方法で測定した。
<三点曲げ強度>
JIS R1601に準拠し、支点間距離40mm、クロスヘッドスピード0.5mm/minの条件で、室温における三点曲げ強度を測定した。
各試料の三点曲げ強度を、焼結体における第二相の割合(粗粒SiC/全SiC)に対してプロットしたグラフ、及び、第一相におけるアルミニウムの平均濃度(Al/(微粒SiC+生成SiC))に対してプロットしたグラフを、それぞれ図10(a)及び図10(b)に示す。
図10(a)より、粗大粒子の割合が増加するのに伴い、焼結体の強度が低下する傾向があることが分かる。従って、通電により発熱させる焼結体として実用的な強度を備えるためには、比抵抗値の大きさ及び比抵抗値の温度依存性を調整するにあたり、粗大粒子の割合をある程度までにとどめる必要があると考えられる。例えば、VOC分解装置の発熱体やDPFの基体として、一般的に要請される強度である三点曲げ強度30Maを確保するためには、粗粒SiC/全SiCは82mol%を超えない範囲とするのが望ましいことを、図10(a)から読み取ることができる。従って、試料5、試料9における粗粒SiC/全SiCの値を考え合わせ、粗粒SiC/全SiCを58mol%〜82mol%とすれば、比抵抗値及びその温度依存性が調整されていると共に、実用的な強度を備えた発熱体の用途として好適である。
また、図10(b)より、導電相(第一相)におけるアルミニウムの濃度の上昇に伴い、焼結体の強度が低下する傾向があることが分かる。従って、通電により発熱させる焼結体として実用的な強度を備えるためには、比抵抗値の大きさ及び比抵抗値の温度依存性を調整するにあたり、ドープさせるアルミニウムの量をある程度までにとどめる必要があると考えられる。例えば、上記と同様に三点曲げ強度30Maを確保するためには、Al/(微粒SiC+生成SiC)は7mol%を超えない範囲とするのが望ましいことを、図10(b)から読み取ることができる。従って、試料7におけるAl/(微粒SiC+生成SiC)の値を考え合わせれば、Al/(微粒SiC+生成SiC)を1mol%〜7mol%とすれば、比抵抗値及びその温度依存性が調整されていると共に、実用的な強度を備えた発熱体の用途として好適である。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
例えば、上記では、炭化珪素を反応生成させる珪素源として珪素(単体)を使用する場合を例示したが、これに限定されず、窒化珪素を珪素源として使用することができる。この場合、焼成工程では、炭化珪素が反応生成する際に窒化珪素の分解によって窒素が供給されるため、必ずしも焼成ガス雰囲気中に窒素ガスを導入しなくても、窒素が存在する非酸化性ガス雰囲気とすることができる。従って、焼結炉に導入する雰囲気ガスは、窒素ガスを含まない非酸化性ガス雰囲気、例えば、アルゴン等の不活性ガス雰囲気とすることができる。
また、上記では、円管状の焼結体を用いて比抵抗値を検討した場合を例示したが、焼結体の形状はこれに限定されない。例えば、焼結体を通電により発熱させて流通するガスを加熱する場合、単一の方向に延びて列設された隔壁により区画された複数のセルを備えるハニカム構造の焼結体とすれば、セル内を流通するガスを効率良く加熱することができ、好適である。
10 第一相
11 ドーパント高濃度相(第一相)
12 ドーパント低濃度相(第一相)
20 第二相
特許第3691536号公報 特許第3642836号公報

Claims (8)

  1. ドーパントを含む半導体セラミックスの第一相と、
    非導電性セラミックスの第二相とを具備し、
    前記第二相が前記第一相に取り囲まれて散在している海島構造を有し、
    前記第一相は炭化珪素質セラミックスであり、
    前記ドーパントとしてアルミニウムを含み、アルミニウムは前記第一相に含まれるが前記第二相には含まれない
    ことを特徴とする導電性セラミックス焼結体。
  2. 前記ドーパントとしてアクセプターを含む
    ことを特徴とする請求項1に記載の導電性セラミックス焼結体。
  3. 前記ドーパントはアクセプター及びドナーである
    ことを特徴とする請求項1に記載の導電性セラミックス焼結体。
  4. 前記第一相は、
    前記第一相全体におけるドーパントの平均濃度よりドーパントの濃度が高く、前記第二相を被覆しているドーパント高濃度相と、
    前記平均濃度よりドーパントの濃度が低いドーパント低濃度相とからなる
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の導電性セラミックス焼結体。
  5. 前記第二相は、ドーパントを含まない炭化珪素である
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の導電性セラミックス焼結体。
  6. 前記第二相は、粒子径が10μm〜50μmの炭化珪素の粗大粒子である
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の導電性セラミックス焼結体。
  7. 前記第一相及び前記第二相の和における炭化珪素のモル数に対する前記第二相の炭化珪素のモル数の割合は、58%〜82%である
    ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の導電性セラミックス焼結体。
  8. 前記ドーパントとして前記第一相における炭化珪素のモル数に対して1%〜7%のアルミニウムを含む
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか一つに記載の導電性セラミックス焼結体。
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