JP6787207B2 - SiC焼結体 - Google Patents
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Description
さらに、この構成のSiC焼結体は、Yの含有量が0.80質量%以上4.82質量%以下の範囲とされているので、導電性、熱伝導性および耐プラズマ性の各特性がバランスよく向上する。
この場合、密度比が95%以上と高く、SiC焼結体が緻密となるので、導電性、熱伝導性および耐プラズマ性の各特性がよりバランスよく向上する。
この場合、YとOとの含有量比が質量比で4.0以上と高いので、導電性と熱伝導性がさらに向上する。
この場合、Yの含有量が1.0質量%以上と多いので、導電性、熱伝導性および耐プラズマ性の各特性がさらにバランスよく向上する。
本実施形態であるSiC焼結体は、例えば、半導体の製造工程で用いられるプラズマエッチング装置の電極および内部部材、メカニカルシール装置用のリング(回転リング、シートリング)として利用できる。
図1に示すSEM写真から、本実施形態のSiC焼結体では、黒く見える結晶の粒界に3次元の網目状に白色物質が存在していることわかる。EPMAを用いて元素分布を測定すると、黒く見える結晶にはSiとCが検出され、白色物質にはYとOが検出される。すなわち、本実施形態のSiC焼結体では、SiC結晶の粒界にY酸化物が3次元の網目状に存在している。
酸素欠損を有するY酸化物は、Y2O3と比較して金属Yに近い物性を示し、導電性と熱伝導性が高くなる。このため、本実施形態のSiC焼結体は、導電性と熱伝導性が向上すると考えられる。
本実施形態のSiC焼結体において、Y/Oが3.8未満の場合は、Y酸化物の酸素欠損が少なくなりすぎて、SiC焼結体の導電性と熱伝導性が低下するおそれがある。一方、Y/Oが4.6を超える場合は、Y酸化物の酸素欠損が多くなりすぎて、Y酸化物の強度が低下し、SiC焼結体の耐プラズマ性が低下するおそれがある。
このような理由から、本実施形態のSiC焼結体においては、YとOの含有量比Y/Oを質量比で3.8以上4.6以下の範囲に設定している。なお、SiC焼結体の導電性と熱伝導性をより向上させるためには、Y/Oを4.0以上とすることが好ましい。また、SiC焼結体の耐プラズマ性が低下するのをより抑えるためには、Y/Oを4.5以下とすることが好ましい。
Y2O3−x ・・・(I)
式(I)中、xは、0.08以上0.58以下の範囲、好ましくは0.22以上0.53以下の範囲である。
本実施形態のSiC焼結体において、Yの含有量が0.80質量%未満の場合は、SiC結晶の粒界に3次元の網目状に存在するY酸化物の量が少なくなりすぎて、SiC焼結体の導電性と熱伝導性が低下するおそれがある。一方、Yの含有量が4.82質量%を超える場合は、Y2O3(27W/(m・K))、金属Y(17.2W/(m・K))ともにSiCの熱伝導率よりも低いため、SiC焼結体の熱伝導性が低下するおそれがある。
このような理由から、本実施形態のSiC焼結体においては、Yの含有量を0.80質量%以上4.82質量%以下の範囲と設定している。なお、SiC焼結体の導電性と熱伝導性をより向上させるためには、Yの含有量を1.0質量%以上とすることが好ましい。
本実施形態のSiC焼結体において、密度比が95%未満となる場合は、SiC結晶とY酸化物との間に形成される空隙が多くなりすぎて、導電性、熱伝導性および耐プラズマ性の各特性が低下するおそれがある。
このため、本実施形態のSiC焼結体においては、密度比を95%以上に設定している。SiC焼結体の導電性、熱伝導性および耐プラズマ性の各特性をよりバランスよく向上させるためには、密度比を97%以上とすることが好ましい。
本実施形態のSiC焼結体は、例えば、原料粉末を混合して原料粉末混合物を得る混合工程と、原料粉末混合物を焼成して焼結体を得る焼結工程と、得られた焼結体を機械加工する機械加工工程とを備える方法によって製造することができる。以下に、各工程について説明する。
混合工程では、まず、原料粉末としてSiC粉末とY酸化物粉末とを用意する。
SiC粉末としては、α−SiC粉末を用いてもよいし、β−SiC粉末を用いてもよい。SiC粉末は、D50(メジアン径)が0.2μm以上0.4μm以下であることが好ましい。また、SiC粉末は、純度が99.9質量%以上99.999質量%以下の範囲にあることが好ましい。
焼結工程において、焼結体を作製する方法としては、ホットプレス法を用いることができる。具体的には、上記の混合工程で得られた原料粉末混合物を、所定形状のモールド内に充填し、ホットプレス装置を用いて加圧焼成して焼結体を作製する。原料粉末混合物をホットプレス法を用いて焼結させることにより、SiC粒同士の間隙に軟化したY酸化物粉末が含浸する。これによりSiC粒子の周囲にY酸化物粉末からなる三次元網目構造が形成される。
焼成温度は、1900℃以上2100℃以下の範囲にあることが好ましい。焼成時の圧力は、20MPa以上40MPaの範囲にあることが好ましい。
機械加工工程では、上記の焼結工程で得られた焼結体に対して切削加工又は研削加工を施すことにより、所定形状のSiC焼結体に加工する。
原料粉末として、SiC粉末(純度:99.9質量%、平均粒子径:0.4μm)とY2O3粉末(純度:99.9質量%、平均粒子径:3.5μm)とを用意した。
本発明例1〜5で作製したプラズマエッチング装置用部材について、EPMAを用いて元素分布を測定した。その結果、プラズマエッチング装置用部材はいずれも、YとOとがSiC結晶の粒界に存在していることが確認された。
組成分析は、焼結体を所定の形状に切削加工する際に発生した粉末を回収し、回収した粉末中のYとOの含有量を測定することにより行った。Yの含有量は高周波アルゴンプラズマ発光分光分析装置を用いて測定した。Oの含有量は、不活性ガス融解赤外吸収法により測定した。その結果を下記の表2に示す。
作製したプラズマエッチング装置用部材の密度(g/cm3)を、アルキメデス法により測定した。密度比は、測定した密度を理論密度で割ることで算出した。なお、理論密度ρは、原料粉末混合物中のSiC粉末とY2O3粉末の配合比率と、SiCとY2O3の理論密度に基づいて下記の式より算出した値とした。なお、下記の式中、C1はSiC粉末の配合比率(質量%)、ρ1はSiCの理論密度(3.21g/cm3)、C2はY2O3粉末の配合比率(質量%)、ρ2はY2O3の理論密度(5.01g/cm3)である。
作製したプラズマエッチング装置用部材の研削面(円)の中心の1点と、その中心で互いに直交する2本の直線のそれぞれ両端部分の4点の合計5点で、抵抗値を四探針法により測定し、その平均値をプラズマエッチング装置用部材の抵抗率とした。
四探針法により測定した5点の抵抗値における最大値と最小値の差を抵抗率の面内ばらつきの値として評価した。
作製したプラズマエッチング装置用部材を所定の形状に加工して得た試験片を、レーザーフラッシュ法により熱定数測定装置を用いて室温での熱伝導率を測定した。
作製した半導体製造装置用部材の表面の一部にマスキングを施した。このマスキングを施した半導体製造装置用部材を、RIEプラズマエッチング装置に取付けた。次いで、RIEプラズマエッチング装置内を真空とした後、SF6ガスを50sccmで導入し、300Wで、1時間プラズマを半導体製造装置用部材に照射した。プラズマ照射後マスキングを除去し、マスキング部分とマスキングしていなかった部分の段差をプラズマによる消耗量として測定した。測定した消耗量を、同条件で測定したSi単体の消耗量を1とした消耗比率(=半導体製造装置用部材の消耗量/Si単体の消耗量)として、表2に示す。なお、消耗比率は、0.1未満であることが好ましい。
Y/Oが4.6を超える比較例2は、耐プラズマ性が低くなった。これは、Y酸化物の酸素欠損が多くなりすぎて、Y酸化物の強度が低下したためであると考えられる。
Y含有量が4.82質量%を超える比較例4は、熱伝導率が低くなった。これは、Y酸化物はSiCと比較して熱伝導率が低いため、Y酸化物の含有量が多くなりすぎて熱伝導率が低下したと考えられる。
Claims (4)
- YとOとを含み、残部がSiC及び不可避不純物からなるSiC焼結体であって、
前記Yと前記Oとの含有量比が質量比で3.8以上4.6以下の範囲にあり、前記Yの含有量が0.80質量%以上4.82質量%以下の範囲にあることを特徴とするSiC焼結体。 - 密度比が95%以上であることを特徴とする請求項1に記載のSiC焼結体。
- 前記Yと前記Oとの含有量比が質量比で4.0以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のSiC焼結体。
- 前記Yの含有量が1.0質量%以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のSiC焼結体。
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