JP3564510B2 - ブライドルロールの張力制御方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブライドルロールにおけるストリップの張力制御に適用して好適な、ブライドルロールの張力制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
連続的に搬送されるストリップ(材料)に対してブライドルロールにより適切な張力を付与するためには、両者間にスリップが発生しないように該ブライドルロールを制御することが重要である。
【0003】
このように、ブライドルロールとストリップとの間でスリップが発生しないようにするためには、スリップが発生する限界となる両者間の摩擦係数を正確に把握する必要がある。
【0004】
従来、ロールと材料との間の摩擦係数を推定する方法としては、特開平8−145876号に提案されているような、ロール前後のストリップにそれぞれかかっている張力の比(張力比)に基づいて推定する方法が知られている。
【0005】
なお、上記のように摩擦係数を把握するためには、上記スリップの発生を検出する必要があるが、ブライドルロールにおけるスリップの検出方法としては、特開昭61−249620号に開示されているような、ブライドルロールが有するそれぞれのロール径と回転数の積の差からスリップを検出する方法が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平8−145876号に提案されている従来の方法では、ブライドルロールのように複数のロールがセットとなっているような場合は、各ロール間の張力が不明であるため、ブライドルロール前後(入側と出側)のストリップにそれぞれかかっている張力比からだけでは、各ロール毎の摩擦係数を正確に推定できないという問題があった。
【0007】
又、ブライドルロール前後の張力を設定する際も、摩擦係数として予め仮定した値を用いて計算しているため、その摩擦係数に基づいて張力比を決定したとしても、実際の摩擦係数(実摩擦係数)との間に差があるために、ロールとストリップとの間でスリップが発生し易いという問題があった。
【0008】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、摩擦係数を正確に推定できるようにすることにより、ブライドルロールとストリップとの間で生じるスリップを確実に防止することができるブライドルロールの張力制御方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数のロールを有するブライドルロールにおけるストリップの張力を制御するブライドルロールの張力制御方法において、前記ブライドルロールの入側と出側それぞれのストリップ張力値に基づいて、該ブライドルロール全体と前記ストリップとの間でスリップが発生する限界となる限界摩擦係数を演算し、該限界摩擦係数から前記ブライドルロールを構成する各ロールに対するロードバランス比を決定し、該ロードバランス比に基づいて前記各ロールに対する負荷を制御するロードバランス制御を行うと共に、操業中に測定した前記各ロールの周速度からスリップの発生が検出された場合、前記ブライドルロールの入側と出側それぞれのストリップ張力値に基づいて、スリップ発生時の摩擦係数を推定し、該推定値を用いて、ブライドルロールの入側と出側それぞれに設定する張力値を決定し、修正することことにより、前記課題を解決したものである。
【0010】
即ち、本発明においては、後に詳述するような、ブライドルロールが有する各ロールの摩擦余裕をバランスさせるロードバランス制御を行うことにより、その際にブライドルロール前後でそれぞれ実測される張力の比からロールと材料の摩擦係数を正確に推定することができるようになった。
【0011】
又、本発明において、スリップ発生時に推定した前記摩擦係数を順次学習し、摩擦係数学習値を用いて前記設定する張力値を決定する場合には、上記のように推定した摩擦係数と実摩擦係数との差異を小さくすることができることから、その学習値に基づいてブライドルロール前後の張力設定値をそれぞれ決定することにより、ブライドルロールにおけるスリップを確実に防止することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る一実施形態に適用されるブライドルロールと、その周辺装置を含むストリップ搬送ラインの概略を示し、図2は、上記ブライドルロールを制御する制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【0014】
本実施形態に適用されるブライドルロールAは、第1、第2、第3の3つのロール10、12、14を有しており、矢印方向に搬送される鋼板等のストリップSに適切な張力を付与するために用いられる。
【0015】
これら第1、第2、第3の各ロール10、12、14は、それぞれモータM1 、M2 、M3 により回転駆動されると共に、回転する各ロールの周速度がモータM1 、M2 、M3 にそれぞれ付設されているパルスジェネレータPLG1 、PLG2 、PLG3 から出力される信号に基づいて、それぞれ測定されるようになっている。
【0016】
又、上記ブライドルロールAの下流側には速度測定ロール16が配設され、該ロールに付設されているパルスジェネレータPLG4 からの信号に基づいて、ロール周速度としてストリップSの搬送速度が測定され、更に、ブライドルロールAの前後に入側張力計18、出側張力計20がそれぞれ配設され、これらによりロールAの前後における張力T1 、T2 が、それぞれ実測されるようになっている。
【0017】
又、前記図2の制御システムは、ライン全体の制御を行うライン制御装置22と、張力設定値演算装置24と、モータドライブ制御装置26とを備えている。
【0018】
上記ライン制御装置22には、上記各ロール10、12、14、16の周速度が、パルスジェネレータPLG1 〜PLG4 からそれぞれパルス信号として入力され、ここでPLG4 からの信号と上記PLG1 〜PLG3 の各信号とから求まる、ストリップSの搬送速度と各ロール10、12、14の周速度の差により、これらロールとストリップSとの間で生じるスリップがそれぞれ検出されるようになっている。
【0019】
又、このライン制御装置22には、入側張力計18、出側張力計20から、ブライドルロールAの前後でそれぞれ実測された入側張力T1 、出側張力T2 がそれぞれ入力され、上記のようにしてスリップが検出されたタイミングで、その時の入側、出側の各張力値T1 、T2 に基づいて、後述する方法により摩擦係数が推定される。
【0020】
上記のようにスリップの発生が検出される毎にライン制御装置22で推定演算された摩擦係数は、前記張力設定値演算装置24に入力され、ここでその学習が行われると共に、この学習値を用いてブライドルロールAの前後に設定する張力設定値を決定し、該張力設定値を前記ライン制御装置22に出力する。このライン制御装置22は、入力されるた上記張力設定値をモータドライブ制御装置26に出力し、該設定値を基に各モータM1 、M2 、M3 のトルクを制御する。
【0021】
ここで、本実施形態の前提となっている、ブライドルロールが有する各ロールと材料間の摩擦余裕をバランスさせることができるロードバランス制御方法を、図3、図4を参照しながら詳述する。
【0022】
なお、ここで摩擦余裕とは、ブライドルロール前後(入側、出側)の張力比から決定される、ブライドルロール全体と材料がスリップしないようにするために最低限必要な摩擦係数(以下、限界摩擦係数という)と、ロールと材料間の最大静止摩擦係数との差を表わす。
【0023】
前記ロードバランス制御方法は、本出願人が、特願平8−288151号で既に提案している技術であり、複数のロールからなるブライドルロールの各ロールに対する負荷を制御する際に、前記ブライドルロールの入側と出側それぞれのストリップ張力値に基づいて、該ブライドルロール全体と前記ストリップとの間でスリップが発生する限界となる限界摩擦係数を演算し、該限界摩擦係数から前記ブライドルロールを構成する各ロールに対するロードバランス比を決定し、該ロードバランス比に基づいて前記各ロールに対する負荷を制御するようにしたものである。
【0024】
図3は、上記ロードバランス制御方法を説明するための、前記図1に示したブライドルロールを構成する3つのロールの関係を拡大して示したものであり、図4は、上記ブライドルロールの駆動制御に適用される、前記図2に示したモータドライブ制御装置26に相当するロードバランス制御装置の概略構成を示したブロック図である。
【0025】
上記ブライドルロールAは、符号Sで示すストリップを、矢印方向に連続的に搬送するもので、入側から順に第1、第2、第3の3つのロール10、12、14を有している。
【0026】
又、上記制御装置は、図4では配置が逆になっているが、上記ブライドルロールAが有する第1、第2、第3の各ロール10、12、14をそれぞれ独立に駆動するための第1、第2、第3の各モータM1 、M2 、M3 が、第1、第2、第3の各自動電流調節器(ACR:Automatic Current Regulator)30、31、34により界磁電流が調節され、それぞれの回転駆動力が制御されるようになっている。
【0027】
又、上記図4の制御装置は、後述する原理に基づいて、各ロール10、12、14に対するロードバランス比を演算する負荷分担演算器22を備えている。又、この制御装置は、第2ロール12を基準として、第1、第3ロール10、14の負荷を制御するようになっており、図示しないASR(自動速度制御器)から第1〜第3ロールに対するトータルの電流指令IREF が決定されると、その電流を第1〜第3ロールにどんな比で流すかを上記負荷分担演算器36で演算し、その比になるように第1、第3ロールの界磁電流を制御するようになっている。そのため、上記演算器36では、図示したように第1モータM1 に分担させる負荷に相当するM1 主回路界磁電流指令:I1 REF と、第3モータM3 に分担させる負荷に相当するM3 主回路界磁電流指令:I3 REF をそれぞれ演算する。
【0028】
そして、上記負荷分担演算器36で演算されたI1 REF は減算器38に入力され、ここで第1モータ用のM1 主回路フィードバック電流:I1 FBとの偏差が算出され、それが比例積分(PI)制御器40に入力され、該偏差に応じた第1モータ制御用の補正電流が算出される。その後、上記偏差に応じた補正電流が、加算器42で第1モータ用のM1 界磁電流指令:If1REF に加算され、その加算値が前記第1自動電流調節器30に出力されて、第1モータM1 が駆動制御されるようになっている。
【0029】
一方、上記負荷分担演算器36で演算されたI3 REF は、減算器44に入力され、ここで第3モータ用のM3 主回路フィードバック電流:I3 FBとの偏差が算出されると、それが比例積分(PI)制御器46へ入力され、該偏差に応じた第3モータ制御用の補正電流が算出される。その後、上記偏差に応じた補正電流が、加算器48で第3モータ用のM3 界磁電流指令:If3REF に加算され、その加算値が前記第3自動電流調節器34に出力されて、第3モータM3 が駆動制御されるようになっている。
【0030】
前記ロードバランス制御においては、前記負荷分担演算器36において、前記ブライドルロールAの入側と出側それぞれにおけるストリップ張力値に基づいて、該ブライドルロール全体と前記ストリップとの間でスリップが発生する限界となる限界摩擦係数を演算し、該限界摩擦係数から前記ブライドルロールを構成する各ロールに対するロードバランス比を決定し、該ロードバランス比に基づいて各モータを制御するための演算を行う。
【0031】
まず、制御演算の原理を説明する。前記図3に示した第1〜第3の3本のロール10、12、14からなるブライドルロールAによりストリップSを搬送している場合、該ブライドルロールAの入側及び出側の張力がそれぞれT1 及びT2 で、両者の摩擦係数がμ、巻付角がθであったとする。
【0032】
例えば、日本機械学会出版の機械工学便覧(改6)の3頁−39頁に説明されているように、オイラーの公式より、次の(1)式の関係が成立つならばスリップは発生しない。
【0033】
exp{μ(θ1 +θ2 +θ3 )}>T2 /T1 …(1)
この(1)式は、1本のロールについて、exp(μθ)>T2 /T1 (T2 >T1 とする)の関係が成立つ時にはスリップは発生しないとする、上記オイラーの公式を、図3に示した3つのロールに適用することにより導出できる。
【0034】
即ち、第1〜第3の各ロールについてオイラーの公式から、以下の(2)〜(4)式が得られる。但し、図3に併記したように、T12は第1ロール〜第2ロール間の張力を、T23は第2ロール〜第3ロール間の張力を表わす。又、θ1 、θ2 、θ3 は、第1、第2、第3の各ロール10、12、14におけるストリップSの巻付角である。
【0035】
exp(μθ1 )>T12/T1 …(2)
exp(μθ2 )>T23/T12 …(3)
exp(μθ3 )>T2 /T23 …(4)
これら(2)〜(4)式では、左辺、右辺とも正の数であるため、これら各式の積について次の(5)式の関係が成立つ。即ち、この(5)式より、前記(1)式が求まる。
【0036】
exp(μθ1 )・exp(μθ2 )・exp(μθ3 )
>(T12/T1 )・(T23/T12)・(T2 /T23) …(5)
又、ここでは、次の(6)式の関係が成立つμをμ′として限界摩擦係数と定義する。
【0037】
exp{μ′(θ1 +θ2 +θ3 )}=T2 /T1 …(6)
この式で、上記限界摩擦係数μ′は前記ストリップSとブライドルロールAの全体、即ち、第1、第2、第3ロール10、12、14との間でスリップが発生する限界となる摩擦係数である。
【0038】
この場合、第1〜第3ロールについて以下の(7)〜(9)式の関係がそれぞれ成立つようにロール間の負荷分担を決定する。
【0039】
第1ロール
exp(μ′θ1 )=T12/T1 …(7)
第2ロール
exp(μ′θ2 )=T23/T12 …(8)
第3ロール
exp(μ′θ3 )=T2 /T23 …(9)
【0040】
又、ここでロールとストリップとの最大静止摩擦係数をμ″とすると、各ロールについて以下の(10)〜(12)式の関係が成立する場合がスリップ限界である。
【0041】
第1ロール
exp(μ″θ1 )=T12/T1 …(10)
第2ロール
exp(μ″θ2 )=T23/T12 …(11)
第3ロール
exp(μ″θ3 )=T2 /T23 …(12)
【0042】
従って、第1〜第3の各ロールにおける摩擦余裕は、いずれも(μ″−μ′)となり、各ロールの摩擦余裕をバランスさせることが可能となる。
【0043】
一方、前述した(6)式で与えられる前記限界摩擦係数μ′の値から、第1、第2、第3の各ロールに分担させるべきトルクτ1 、τ2 、τ3 の比を、次の(13)式で算出できる。
【0044】
【0045】
上記第1、第2、第3の各ロール10、12、14におけるストリップSの巻付角θ1 、θ2 、θ3 は固定値であるから、前記張力計18、20により実測される入側、出側の張力値から求まる前後張力比T2 /T1 が分れば、これを前記(6)式に代入することにより上記限界摩擦係数μ′を決定することが可能となり、その結果上記(13)式により第1、第2、第3の各ロール10、12、14に対するロードバランス比τ1 :τ2 :τ3 も決定することができる。
【0046】
ここに、上記(13)式の導出方法について説明する。前述した如く、第1〜第3の各ロールのトルクを設定するのだから前記(7)〜(9)式からそれぞれ次の(14)〜(16)式を求める。
【0047】
T12=T1 exp(μ′θ1 ) …(14)
T23=T12exp(μ′θ2 ) …(15)
T2 =T23exp(μ′θ3 ) …(16)
【0048】
ここで、各ロールを駆動するモータの発生すべきトルクは、次の(17)〜(19)式で与えられるため、前記(13)式が得られる。
【0049】
【0050】
従って、前記負荷分担演算器36では、上記(13)式で求められる第1、第2、第3の各ロール10、12、14に対するロードバランス比を用いて、この比に応じた負荷をこれらロール10、12、14に分担させるように、該演算器36から各モータM1 、M2 、M3 へ出力する制御信号に反映させる。
【0051】
即ち、第1〜第3の各ロールに対するトータルの電流は、前述した如く、速度制御の点から電流指令IREF と決定される。そして、ロール間のロードをバランスさせるために、IREF を第1〜第3の各ロールを駆動する各モータに、前記(13)式の比から、以下の(19)〜(21)式で設定する。
【0052】
【0053】
上述したロードバランス制御によれば、前記負荷分担演算器36において前記ロードバランス比を算出し、該比を反映させた指令に基づき各ロールを駆動するモータM1、M2 、M3 の界磁電流を制御するようにしたので、ブライドルロールAが有する各ロール10、12、14における摩擦余裕をバランスさせることが可能となり、適切なロードバランスの制御が可能となる。
【0054】
本実施形態は、以上詳述したロードバランス制御を行うと共に、以下のような張力制御を行う。
【0055】
即ち、前述した如く、前記ライン制御装置22により、操業中に前記図1に示したブライドルロールAが有する第1、第2、第3の各ロール10、12、14の周速度を、パルスジェネレータPLG1 、PLG2 、PLG3 からのパルス信号に基づいて測定すると共に、測定された各ロールの周速度と、同様にパルスジェネレータPLG4 からの信号に基づいて測定されたストリップSの搬送速度の差により、該ストリップSと上記各ロール10、12、14との間でスリップが発生したことを検出する。
【0056】
上記3つのロール10、12、14の中の1つでも、スリップの発生が検出された場合、前記ライン制御装置22では、その検出タイミングで実測された入側張力T1 、出側張力T2 を入力し、前記(6)式と同形の次式(23)により、その時点での摩擦係数μを推定する。
【0057】
exp{μ(θ1 +θ2 +θ3 )}=T2 /T1 …(23)
【0058】
この(23)式と(6)式の関係について説明すると、この両式は同義ではあるが、(6)式は、前記(7)式〜(8)式に基づいて制御するバランス制御を行う場合に成立している式であるのに対し、(23)式は、この式(6)が成立しているとして制御している場合にスリップが発生することは、実際の摩擦係数μが、(6)式で求まる限界摩擦係数μ´より小さくなったと推定できるため、この実際のμをその時点のT2 、T1 から推定する式である。
【0059】
上記摩擦係数μの推定演算は、スリップの発生が検出される毎に実行され、各推定値は上記張力設定値演算装置24に入力され、順次新しい推定値に更新する学習が行われる。
【0060】
上記演算装置24で学習が行われる毎に、摩擦係数の学習値μL を、前記(1)式のμに代入することにより、この式の関係を満足されるブライドルロールAの入側、出側の各張力設定値T1 、T2 を決定し、それを前記ライン制御装置22に出力することにより、該装置22が前記モータドライブ制御装置26に対して、上記各張力設定値になるように、各モータM1 、M2 、M3 のトルクを制御するように指示する。
【0061】
上述したように、本実施形態においては、ブライドルロールAが有する各ロールの摩擦余裕をバランスさせるロードバランス制御を行うことにより、スリップを検出した場合のブライドルロールAの入側、出側の張力比から該ブライドルロールAと材料の正確な摩擦係数を推定することが可能となった。
【0062】
即ち、前記図3のブライドルロールAでは、入側、出側の各張力T1 、T2 のみが観測可能であり、前記バランス制御を実施していない場合、このT1 、T2 のみを観測してもロールと板の摩擦係数を推定することはできない。なぜならば、第1、第2、第3の各ロール10、12、14の負荷分担について前記バランス制御が行われていない場合には、ロール間張力T12、T23も観測されないと、各ロールとストリップSとの摩擦係数が推定できないからである。(これは、各ロールの摩擦余裕が一定でない(バランスしていない)ため、ある特定のロールのみスリップし、その他のロールはスリップしないからである。)
【0063】
ところが、本実施形態のようにバランス制御を適用することにより、各ロールの摩擦余裕は一定(バランス)しているため、スリップが発生する場合は、第1、第2、第3の3本のロールに同時にスリップを発生する。従って、入側、出側の両張力T1 、T2 のみ観測すれば、ロールと板の摩擦係数を正確に推定することができる。
【0064】
更に、本実施形態においては、推定した摩擦係数を学習し、その学習値を用いてブライドルロールの前後張力を設定することにより、ブライドルロールにおけるスリップを防止することが可能となった。
【0065】
図5に、本実施形態による具体的な制御結果を示す。この図5(A)より、制御開始当初は摩擦係数の学習値が変動しているが、学習が進むに連れて真の摩擦係数値に近付き、安定することが分かる。又、同図(B)より、この学習が進むに従って、スリップの発生回数も減少していき、スリップを防止できるようになっていることが分かる。
【0066】
以上詳述した如く、本実施形態によれば、前記ブライドルロールのロードバランス制御を行うことにより、ロールと材料の間の摩擦係数を正確に推定できるようになった。又、推定した摩擦係数を学習し、その学習値を用いてブライドルロールの前後の張力を設定することにより、ブライドルロールのスリップを防止することができるようになった。
【0067】
以上、本発明について具体的に説明したが、本発明は、前記実施形態に示したものに限られるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0068】
例えば、ブライドルロールが3つのロールからなる場合を示したが、これに限定されない。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、摩擦係数を正確に推定できるようになることにより、ブライドルロールとストリップとの間で生じるスリップを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態に適用されるストリップ搬送ラインの要部概略を示す説明図
【図2】ブライドルロールの制御システムの概略構成を示すブロック図
【図3】ブライドルロールと張力との関係を示す説明図
【図4】ロードバランス制御装置の概略構成を示すブロック図
【図5】発明の効果を示す線図
【符号の説明】
A…ブライドルロール
S…ストリップ
10…第1ロール
12…第2ロール
14…第3ロール
16…速度測定ロール
18…入側張力計
20…出側張力計
22…ライン制御装置
24…張力設定演算装置
26…モータドライブ制御装置
30…第1自動電流調節器
32…第2自動電流調節器
34…第3自動電流調節器
36…負荷分担演算器
38、44…減算器
40、46…比例積分制御器
42、48…加算器
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブライドルロールにおけるストリップの張力制御に適用して好適な、ブライドルロールの張力制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
連続的に搬送されるストリップ(材料)に対してブライドルロールにより適切な張力を付与するためには、両者間にスリップが発生しないように該ブライドルロールを制御することが重要である。
【0003】
このように、ブライドルロールとストリップとの間でスリップが発生しないようにするためには、スリップが発生する限界となる両者間の摩擦係数を正確に把握する必要がある。
【0004】
従来、ロールと材料との間の摩擦係数を推定する方法としては、特開平8−145876号に提案されているような、ロール前後のストリップにそれぞれかかっている張力の比(張力比)に基づいて推定する方法が知られている。
【0005】
なお、上記のように摩擦係数を把握するためには、上記スリップの発生を検出する必要があるが、ブライドルロールにおけるスリップの検出方法としては、特開昭61−249620号に開示されているような、ブライドルロールが有するそれぞれのロール径と回転数の積の差からスリップを検出する方法が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平8−145876号に提案されている従来の方法では、ブライドルロールのように複数のロールがセットとなっているような場合は、各ロール間の張力が不明であるため、ブライドルロール前後(入側と出側)のストリップにそれぞれかかっている張力比からだけでは、各ロール毎の摩擦係数を正確に推定できないという問題があった。
【0007】
又、ブライドルロール前後の張力を設定する際も、摩擦係数として予め仮定した値を用いて計算しているため、その摩擦係数に基づいて張力比を決定したとしても、実際の摩擦係数(実摩擦係数)との間に差があるために、ロールとストリップとの間でスリップが発生し易いという問題があった。
【0008】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、摩擦係数を正確に推定できるようにすることにより、ブライドルロールとストリップとの間で生じるスリップを確実に防止することができるブライドルロールの張力制御方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数のロールを有するブライドルロールにおけるストリップの張力を制御するブライドルロールの張力制御方法において、前記ブライドルロールの入側と出側それぞれのストリップ張力値に基づいて、該ブライドルロール全体と前記ストリップとの間でスリップが発生する限界となる限界摩擦係数を演算し、該限界摩擦係数から前記ブライドルロールを構成する各ロールに対するロードバランス比を決定し、該ロードバランス比に基づいて前記各ロールに対する負荷を制御するロードバランス制御を行うと共に、操業中に測定した前記各ロールの周速度からスリップの発生が検出された場合、前記ブライドルロールの入側と出側それぞれのストリップ張力値に基づいて、スリップ発生時の摩擦係数を推定し、該推定値を用いて、ブライドルロールの入側と出側それぞれに設定する張力値を決定し、修正することことにより、前記課題を解決したものである。
【0010】
即ち、本発明においては、後に詳述するような、ブライドルロールが有する各ロールの摩擦余裕をバランスさせるロードバランス制御を行うことにより、その際にブライドルロール前後でそれぞれ実測される張力の比からロールと材料の摩擦係数を正確に推定することができるようになった。
【0011】
又、本発明において、スリップ発生時に推定した前記摩擦係数を順次学習し、摩擦係数学習値を用いて前記設定する張力値を決定する場合には、上記のように推定した摩擦係数と実摩擦係数との差異を小さくすることができることから、その学習値に基づいてブライドルロール前後の張力設定値をそれぞれ決定することにより、ブライドルロールにおけるスリップを確実に防止することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る一実施形態に適用されるブライドルロールと、その周辺装置を含むストリップ搬送ラインの概略を示し、図2は、上記ブライドルロールを制御する制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【0014】
本実施形態に適用されるブライドルロールAは、第1、第2、第3の3つのロール10、12、14を有しており、矢印方向に搬送される鋼板等のストリップSに適切な張力を付与するために用いられる。
【0015】
これら第1、第2、第3の各ロール10、12、14は、それぞれモータM1 、M2 、M3 により回転駆動されると共に、回転する各ロールの周速度がモータM1 、M2 、M3 にそれぞれ付設されているパルスジェネレータPLG1 、PLG2 、PLG3 から出力される信号に基づいて、それぞれ測定されるようになっている。
【0016】
又、上記ブライドルロールAの下流側には速度測定ロール16が配設され、該ロールに付設されているパルスジェネレータPLG4 からの信号に基づいて、ロール周速度としてストリップSの搬送速度が測定され、更に、ブライドルロールAの前後に入側張力計18、出側張力計20がそれぞれ配設され、これらによりロールAの前後における張力T1 、T2 が、それぞれ実測されるようになっている。
【0017】
又、前記図2の制御システムは、ライン全体の制御を行うライン制御装置22と、張力設定値演算装置24と、モータドライブ制御装置26とを備えている。
【0018】
上記ライン制御装置22には、上記各ロール10、12、14、16の周速度が、パルスジェネレータPLG1 〜PLG4 からそれぞれパルス信号として入力され、ここでPLG4 からの信号と上記PLG1 〜PLG3 の各信号とから求まる、ストリップSの搬送速度と各ロール10、12、14の周速度の差により、これらロールとストリップSとの間で生じるスリップがそれぞれ検出されるようになっている。
【0019】
又、このライン制御装置22には、入側張力計18、出側張力計20から、ブライドルロールAの前後でそれぞれ実測された入側張力T1 、出側張力T2 がそれぞれ入力され、上記のようにしてスリップが検出されたタイミングで、その時の入側、出側の各張力値T1 、T2 に基づいて、後述する方法により摩擦係数が推定される。
【0020】
上記のようにスリップの発生が検出される毎にライン制御装置22で推定演算された摩擦係数は、前記張力設定値演算装置24に入力され、ここでその学習が行われると共に、この学習値を用いてブライドルロールAの前後に設定する張力設定値を決定し、該張力設定値を前記ライン制御装置22に出力する。このライン制御装置22は、入力されるた上記張力設定値をモータドライブ制御装置26に出力し、該設定値を基に各モータM1 、M2 、M3 のトルクを制御する。
【0021】
ここで、本実施形態の前提となっている、ブライドルロールが有する各ロールと材料間の摩擦余裕をバランスさせることができるロードバランス制御方法を、図3、図4を参照しながら詳述する。
【0022】
なお、ここで摩擦余裕とは、ブライドルロール前後(入側、出側)の張力比から決定される、ブライドルロール全体と材料がスリップしないようにするために最低限必要な摩擦係数(以下、限界摩擦係数という)と、ロールと材料間の最大静止摩擦係数との差を表わす。
【0023】
前記ロードバランス制御方法は、本出願人が、特願平8−288151号で既に提案している技術であり、複数のロールからなるブライドルロールの各ロールに対する負荷を制御する際に、前記ブライドルロールの入側と出側それぞれのストリップ張力値に基づいて、該ブライドルロール全体と前記ストリップとの間でスリップが発生する限界となる限界摩擦係数を演算し、該限界摩擦係数から前記ブライドルロールを構成する各ロールに対するロードバランス比を決定し、該ロードバランス比に基づいて前記各ロールに対する負荷を制御するようにしたものである。
【0024】
図3は、上記ロードバランス制御方法を説明するための、前記図1に示したブライドルロールを構成する3つのロールの関係を拡大して示したものであり、図4は、上記ブライドルロールの駆動制御に適用される、前記図2に示したモータドライブ制御装置26に相当するロードバランス制御装置の概略構成を示したブロック図である。
【0025】
上記ブライドルロールAは、符号Sで示すストリップを、矢印方向に連続的に搬送するもので、入側から順に第1、第2、第3の3つのロール10、12、14を有している。
【0026】
又、上記制御装置は、図4では配置が逆になっているが、上記ブライドルロールAが有する第1、第2、第3の各ロール10、12、14をそれぞれ独立に駆動するための第1、第2、第3の各モータM1 、M2 、M3 が、第1、第2、第3の各自動電流調節器(ACR:Automatic Current Regulator)30、31、34により界磁電流が調節され、それぞれの回転駆動力が制御されるようになっている。
【0027】
又、上記図4の制御装置は、後述する原理に基づいて、各ロール10、12、14に対するロードバランス比を演算する負荷分担演算器22を備えている。又、この制御装置は、第2ロール12を基準として、第1、第3ロール10、14の負荷を制御するようになっており、図示しないASR(自動速度制御器)から第1〜第3ロールに対するトータルの電流指令IREF が決定されると、その電流を第1〜第3ロールにどんな比で流すかを上記負荷分担演算器36で演算し、その比になるように第1、第3ロールの界磁電流を制御するようになっている。そのため、上記演算器36では、図示したように第1モータM1 に分担させる負荷に相当するM1 主回路界磁電流指令:I1 REF と、第3モータM3 に分担させる負荷に相当するM3 主回路界磁電流指令:I3 REF をそれぞれ演算する。
【0028】
そして、上記負荷分担演算器36で演算されたI1 REF は減算器38に入力され、ここで第1モータ用のM1 主回路フィードバック電流:I1 FBとの偏差が算出され、それが比例積分(PI)制御器40に入力され、該偏差に応じた第1モータ制御用の補正電流が算出される。その後、上記偏差に応じた補正電流が、加算器42で第1モータ用のM1 界磁電流指令:If1REF に加算され、その加算値が前記第1自動電流調節器30に出力されて、第1モータM1 が駆動制御されるようになっている。
【0029】
一方、上記負荷分担演算器36で演算されたI3 REF は、減算器44に入力され、ここで第3モータ用のM3 主回路フィードバック電流:I3 FBとの偏差が算出されると、それが比例積分(PI)制御器46へ入力され、該偏差に応じた第3モータ制御用の補正電流が算出される。その後、上記偏差に応じた補正電流が、加算器48で第3モータ用のM3 界磁電流指令:If3REF に加算され、その加算値が前記第3自動電流調節器34に出力されて、第3モータM3 が駆動制御されるようになっている。
【0030】
前記ロードバランス制御においては、前記負荷分担演算器36において、前記ブライドルロールAの入側と出側それぞれにおけるストリップ張力値に基づいて、該ブライドルロール全体と前記ストリップとの間でスリップが発生する限界となる限界摩擦係数を演算し、該限界摩擦係数から前記ブライドルロールを構成する各ロールに対するロードバランス比を決定し、該ロードバランス比に基づいて各モータを制御するための演算を行う。
【0031】
まず、制御演算の原理を説明する。前記図3に示した第1〜第3の3本のロール10、12、14からなるブライドルロールAによりストリップSを搬送している場合、該ブライドルロールAの入側及び出側の張力がそれぞれT1 及びT2 で、両者の摩擦係数がμ、巻付角がθであったとする。
【0032】
例えば、日本機械学会出版の機械工学便覧(改6)の3頁−39頁に説明されているように、オイラーの公式より、次の(1)式の関係が成立つならばスリップは発生しない。
【0033】
exp{μ(θ1 +θ2 +θ3 )}>T2 /T1 …(1)
この(1)式は、1本のロールについて、exp(μθ)>T2 /T1 (T2 >T1 とする)の関係が成立つ時にはスリップは発生しないとする、上記オイラーの公式を、図3に示した3つのロールに適用することにより導出できる。
【0034】
即ち、第1〜第3の各ロールについてオイラーの公式から、以下の(2)〜(4)式が得られる。但し、図3に併記したように、T12は第1ロール〜第2ロール間の張力を、T23は第2ロール〜第3ロール間の張力を表わす。又、θ1 、θ2 、θ3 は、第1、第2、第3の各ロール10、12、14におけるストリップSの巻付角である。
【0035】
exp(μθ1 )>T12/T1 …(2)
exp(μθ2 )>T23/T12 …(3)
exp(μθ3 )>T2 /T23 …(4)
これら(2)〜(4)式では、左辺、右辺とも正の数であるため、これら各式の積について次の(5)式の関係が成立つ。即ち、この(5)式より、前記(1)式が求まる。
【0036】
exp(μθ1 )・exp(μθ2 )・exp(μθ3 )
>(T12/T1 )・(T23/T12)・(T2 /T23) …(5)
又、ここでは、次の(6)式の関係が成立つμをμ′として限界摩擦係数と定義する。
【0037】
exp{μ′(θ1 +θ2 +θ3 )}=T2 /T1 …(6)
この式で、上記限界摩擦係数μ′は前記ストリップSとブライドルロールAの全体、即ち、第1、第2、第3ロール10、12、14との間でスリップが発生する限界となる摩擦係数である。
【0038】
この場合、第1〜第3ロールについて以下の(7)〜(9)式の関係がそれぞれ成立つようにロール間の負荷分担を決定する。
【0039】
第1ロール
exp(μ′θ1 )=T12/T1 …(7)
第2ロール
exp(μ′θ2 )=T23/T12 …(8)
第3ロール
exp(μ′θ3 )=T2 /T23 …(9)
【0040】
又、ここでロールとストリップとの最大静止摩擦係数をμ″とすると、各ロールについて以下の(10)〜(12)式の関係が成立する場合がスリップ限界である。
【0041】
第1ロール
exp(μ″θ1 )=T12/T1 …(10)
第2ロール
exp(μ″θ2 )=T23/T12 …(11)
第3ロール
exp(μ″θ3 )=T2 /T23 …(12)
【0042】
従って、第1〜第3の各ロールにおける摩擦余裕は、いずれも(μ″−μ′)となり、各ロールの摩擦余裕をバランスさせることが可能となる。
【0043】
一方、前述した(6)式で与えられる前記限界摩擦係数μ′の値から、第1、第2、第3の各ロールに分担させるべきトルクτ1 、τ2 、τ3 の比を、次の(13)式で算出できる。
【0044】
【0045】
上記第1、第2、第3の各ロール10、12、14におけるストリップSの巻付角θ1 、θ2 、θ3 は固定値であるから、前記張力計18、20により実測される入側、出側の張力値から求まる前後張力比T2 /T1 が分れば、これを前記(6)式に代入することにより上記限界摩擦係数μ′を決定することが可能となり、その結果上記(13)式により第1、第2、第3の各ロール10、12、14に対するロードバランス比τ1 :τ2 :τ3 も決定することができる。
【0046】
ここに、上記(13)式の導出方法について説明する。前述した如く、第1〜第3の各ロールのトルクを設定するのだから前記(7)〜(9)式からそれぞれ次の(14)〜(16)式を求める。
【0047】
T12=T1 exp(μ′θ1 ) …(14)
T23=T12exp(μ′θ2 ) …(15)
T2 =T23exp(μ′θ3 ) …(16)
【0048】
ここで、各ロールを駆動するモータの発生すべきトルクは、次の(17)〜(19)式で与えられるため、前記(13)式が得られる。
【0049】
【0050】
従って、前記負荷分担演算器36では、上記(13)式で求められる第1、第2、第3の各ロール10、12、14に対するロードバランス比を用いて、この比に応じた負荷をこれらロール10、12、14に分担させるように、該演算器36から各モータM1 、M2 、M3 へ出力する制御信号に反映させる。
【0051】
即ち、第1〜第3の各ロールに対するトータルの電流は、前述した如く、速度制御の点から電流指令IREF と決定される。そして、ロール間のロードをバランスさせるために、IREF を第1〜第3の各ロールを駆動する各モータに、前記(13)式の比から、以下の(19)〜(21)式で設定する。
【0052】
【0053】
上述したロードバランス制御によれば、前記負荷分担演算器36において前記ロードバランス比を算出し、該比を反映させた指令に基づき各ロールを駆動するモータM1、M2 、M3 の界磁電流を制御するようにしたので、ブライドルロールAが有する各ロール10、12、14における摩擦余裕をバランスさせることが可能となり、適切なロードバランスの制御が可能となる。
【0054】
本実施形態は、以上詳述したロードバランス制御を行うと共に、以下のような張力制御を行う。
【0055】
即ち、前述した如く、前記ライン制御装置22により、操業中に前記図1に示したブライドルロールAが有する第1、第2、第3の各ロール10、12、14の周速度を、パルスジェネレータPLG1 、PLG2 、PLG3 からのパルス信号に基づいて測定すると共に、測定された各ロールの周速度と、同様にパルスジェネレータPLG4 からの信号に基づいて測定されたストリップSの搬送速度の差により、該ストリップSと上記各ロール10、12、14との間でスリップが発生したことを検出する。
【0056】
上記3つのロール10、12、14の中の1つでも、スリップの発生が検出された場合、前記ライン制御装置22では、その検出タイミングで実測された入側張力T1 、出側張力T2 を入力し、前記(6)式と同形の次式(23)により、その時点での摩擦係数μを推定する。
【0057】
exp{μ(θ1 +θ2 +θ3 )}=T2 /T1 …(23)
【0058】
この(23)式と(6)式の関係について説明すると、この両式は同義ではあるが、(6)式は、前記(7)式〜(8)式に基づいて制御するバランス制御を行う場合に成立している式であるのに対し、(23)式は、この式(6)が成立しているとして制御している場合にスリップが発生することは、実際の摩擦係数μが、(6)式で求まる限界摩擦係数μ´より小さくなったと推定できるため、この実際のμをその時点のT2 、T1 から推定する式である。
【0059】
上記摩擦係数μの推定演算は、スリップの発生が検出される毎に実行され、各推定値は上記張力設定値演算装置24に入力され、順次新しい推定値に更新する学習が行われる。
【0060】
上記演算装置24で学習が行われる毎に、摩擦係数の学習値μL を、前記(1)式のμに代入することにより、この式の関係を満足されるブライドルロールAの入側、出側の各張力設定値T1 、T2 を決定し、それを前記ライン制御装置22に出力することにより、該装置22が前記モータドライブ制御装置26に対して、上記各張力設定値になるように、各モータM1 、M2 、M3 のトルクを制御するように指示する。
【0061】
上述したように、本実施形態においては、ブライドルロールAが有する各ロールの摩擦余裕をバランスさせるロードバランス制御を行うことにより、スリップを検出した場合のブライドルロールAの入側、出側の張力比から該ブライドルロールAと材料の正確な摩擦係数を推定することが可能となった。
【0062】
即ち、前記図3のブライドルロールAでは、入側、出側の各張力T1 、T2 のみが観測可能であり、前記バランス制御を実施していない場合、このT1 、T2 のみを観測してもロールと板の摩擦係数を推定することはできない。なぜならば、第1、第2、第3の各ロール10、12、14の負荷分担について前記バランス制御が行われていない場合には、ロール間張力T12、T23も観測されないと、各ロールとストリップSとの摩擦係数が推定できないからである。(これは、各ロールの摩擦余裕が一定でない(バランスしていない)ため、ある特定のロールのみスリップし、その他のロールはスリップしないからである。)
【0063】
ところが、本実施形態のようにバランス制御を適用することにより、各ロールの摩擦余裕は一定(バランス)しているため、スリップが発生する場合は、第1、第2、第3の3本のロールに同時にスリップを発生する。従って、入側、出側の両張力T1 、T2 のみ観測すれば、ロールと板の摩擦係数を正確に推定することができる。
【0064】
更に、本実施形態においては、推定した摩擦係数を学習し、その学習値を用いてブライドルロールの前後張力を設定することにより、ブライドルロールにおけるスリップを防止することが可能となった。
【0065】
図5に、本実施形態による具体的な制御結果を示す。この図5(A)より、制御開始当初は摩擦係数の学習値が変動しているが、学習が進むに連れて真の摩擦係数値に近付き、安定することが分かる。又、同図(B)より、この学習が進むに従って、スリップの発生回数も減少していき、スリップを防止できるようになっていることが分かる。
【0066】
以上詳述した如く、本実施形態によれば、前記ブライドルロールのロードバランス制御を行うことにより、ロールと材料の間の摩擦係数を正確に推定できるようになった。又、推定した摩擦係数を学習し、その学習値を用いてブライドルロールの前後の張力を設定することにより、ブライドルロールのスリップを防止することができるようになった。
【0067】
以上、本発明について具体的に説明したが、本発明は、前記実施形態に示したものに限られるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0068】
例えば、ブライドルロールが3つのロールからなる場合を示したが、これに限定されない。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、摩擦係数を正確に推定できるようになることにより、ブライドルロールとストリップとの間で生じるスリップを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態に適用されるストリップ搬送ラインの要部概略を示す説明図
【図2】ブライドルロールの制御システムの概略構成を示すブロック図
【図3】ブライドルロールと張力との関係を示す説明図
【図4】ロードバランス制御装置の概略構成を示すブロック図
【図5】発明の効果を示す線図
【符号の説明】
A…ブライドルロール
S…ストリップ
10…第1ロール
12…第2ロール
14…第3ロール
16…速度測定ロール
18…入側張力計
20…出側張力計
22…ライン制御装置
24…張力設定演算装置
26…モータドライブ制御装置
30…第1自動電流調節器
32…第2自動電流調節器
34…第3自動電流調節器
36…負荷分担演算器
38、44…減算器
40、46…比例積分制御器
42、48…加算器
Claims (2)
- 複数のロールを有するブライドルロールにおけるストリップの張力を制御するブライドルロールの張力制御方法において、
前記ブライドルロールの入側と出側それぞれのストリップ張力値に基づいて、該ブライドルロール全体と前記ストリップとの間でスリップが発生する限界となる限界摩擦係数を演算し、
該限界摩擦係数から前記ブライドルロールを構成する各ロールに対するロードバランス比を決定し、該ロードバランス比に基づいて前記各ロールに対する負荷を制御するロードバランス制御を行うと共に、
操業中に測定した前記各ロールの周速度からスリップの発生が検出された場合、前記ブライドルロールの入側と出側それぞれのストリップ張力値に基づいて、スリップ発生時の摩擦係数を推定し、
該推定値を用いて、ブライドルロールの入側と出側それぞれに設定する張力値を決定し、修正することを特徴とするブライドルロールの張力制御方法。 - 請求項1において、
スリップ発生時に推定した前記摩擦係数を順次学習し、摩擦係数学習値を用いて前記設定する張力値を決定することを特徴とするブライドルロールの張力制御方法。
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