JP3563658B2 - ウレタン系接着剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はウレタン系接着剤、および模型用素材(特に硬質ポリウレタンフォーム)を接合または補修する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ウレタン系接着剤としては、強度の増大、粘度・作業性の調節、耐熱性の向上、膨張収縮によるひずみの緩和などの目的で無機充填材を配合したものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のウレタン系接着剤は、たとえば硬質ポリウレタンフォームの接着に用いた場合、硬化後被接着物である硬質ポリウレタンフォームより大幅に硬くなるため、切断、穴開け、切削、ペーパー掛け等の加工を行うと、接着部位で段差が生じる等の問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記問題点を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、活性水素含有化合物(A)および有機ポリイソシアネート(B)からなるウレタン系接着剤において、接着剤の全質量に基づいて0.5〜40%の中空微小球からなる充填材(C)と、1〜40%の脱水剤を含有する、樹脂用ウレタン系接着剤;並びにその接着剤を用いて、樹脂製模型用素材の接合または補修を行う方法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明において、活性水素含有化合物(A)における活性水素含有基としては、ヒドロキシル基、メルカプト基およびアミノ基から選ばれる1種以上の活性水素含有基が挙げられる。(A)の好適な例としては、上記の活性水素含有基(好ましくはヒドロキシル基)を2〜8個またはそれ以上(好ましくは3〜8個)有する化合物が挙げられ、特に好適なものとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよび低分子ポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールが挙げられる。
【0006】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、硬質ポリウレタンフォームに通常使用されるもの、例えば、多価アルコール類、多価フェノール類、アミン類等にアルキレンオキサイド(AO)を付加したポリエーテルポリオールが挙げられる。
上記多価アルコール類としては、例えば、2価アルコール類[エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール等]、3〜8価またはそれ以上のアルコール類[グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、α−メチルグルコシド、ソルビトール、キシリット、マンニット、グルコース、フラクトース、ショ糖等]が挙げられる。
多価フェノール類としては、例えば、ハイドロキノン、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF等)、フェノール化合物のホルマリン低縮合物(ノボラック樹脂、レゾールの中間体)等が挙げられる。
【0007】
アミン類としては、例えば、アンモニア;アルカノールアミン類[モノ−、ジ−もしくはトリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミン等];炭素数1〜20のアルキルアミン類[メチルアミン、エチルアミン、n−ブチルアミン、オクチルアミン等];炭素数2〜6のアルキレンジアミン類[エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等];ポリアルキレン(炭素数2〜6)ポリアミン類[ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等];炭素数6〜20の芳香族アミン類[アニリン、フェニレンジアミン、ジアミノトルエン、キシリレンジアミン、メチレンジアニリン、ジフェニルエーテルジアミン等];炭素数4〜15の脂環式アミン類[イソホロンジアミン、シクロへキシレンジアミン類];炭素数4〜15の複素環式アミン類[ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン等]が挙げられる。
【0008】
多価アルコール、多価フェノール類またはアミン類に付加させるAOとしては、C2 〜C20のものであれば特に限定されるものではないが、エチレンオキサイド(以下、EOと略記)、プロピレンオキサイド(以下、POと略記)、1,2−、1,4−もしくは2,3−ブチレンオキサイド、C2 〜C20のα−オレフィンオキサイド、スチレンオキサイドなど、およびこれらの2種以上の併用(ランダムおよび/またはブロック)が挙げられる。
これらのうち好ましいものは、POおよび/またはEOを主成分とするものであり、20質量%以下の他のAOを含んでいてもよい。
【0009】
ポリエステルポリオールとしては、硬質ポリウレタンフォームに通常使用される公知のもの、例えば、前記の多価アルコール類または多価フェノール類とポリカルボン酸類から誘導されるポリエステルポリオール、ラクトン開環重合によるラクトンポリエステルポリオールが挙げられる。
上記ポリカルボン酸類としては、例えば、炭素数4〜18の脂肪族ポリカルボン酸[コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸等]、炭素数8〜18の芳香族ポリカルボン酸[フタル酸もしくはその異性体、トリメリット酸等]、これらのポリカルボン酸のエステル形成性誘導体[酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステルなど]が挙げられる。ラクトンポリエステルポリオールに用いられるラクトンとしては、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンが挙げられる。好ましくはε−カプロラクトンである。ラクトンポリエステルポリオールの具体例としては、ポリε−カプロラクトンポリオールが挙げられる。
【0010】
低分子ポリオール(分子量400以下)としては、例えば、前記の多価アルコール類が挙げられる。好ましいのは、20℃で液状の多価アルコール類である。
【0011】
上記ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよび低分子ポリオールからなる群から選ばれる1種以上のポリオール(全体)のヒドロキシル価は、硬化物の物性が、被接着物である樹脂製模型用素材に近づく点で、好ましくは200〜700であり、さらに好ましくは、250〜600である。
【0012】
本発明で使用される有機ポリイソシアネート(B)としては、例えば、硬質ポリウレタンフォームに通常使用されているものが使用できる。このようなイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらの変性物(例えば、カルボジイミド変性、アロファネート変性、ウレタン変性、ウレア変性、ビューレット変性、イソシアヌレート変性、オキサゾリドン変性など)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0013】
芳香族ポリイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く;以下のポリイソシアネートも同様)6〜16の芳香族ジイソシアネート、炭素数6〜20の芳香族トリイソシアネートおよびこれらのイソシアネートの粗製物などが挙げられる。具体例としては、1,3−および1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(粗製MDI)、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数6〜10の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
脂環式ポリイソシアネートとしては、炭素数6〜16の脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香脂肪族イソシアネートとしては、炭素数8〜12の芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
変性ポリイソシアネートの具体例としては、ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、ショ糖変性TDI、ひまし油変性MDIなどが挙げられる。
これらのうちで好ましいものは、TDI、MDI、粗製TDI、粗製MDI、ショ糖変性TDI、ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDIから選ばれる1種以上の有機ポリイソシアネートである。
【0014】
本発明で使用される充填材(C)としては、例えば、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂からなる中空微小球、無機物からなる中空微小球、およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0015】
上記の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどの樹脂が挙げられる。上記の熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂などの樹脂が挙げられる。上記の無機物としては、例えば、ガラス、アルミナ、シラス、カーボンなどの無機物が挙げられる。硬化した接着剤の切削加工性等を向上させる点で、好ましいものとしては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が挙げられる。
さらにこれらの中空微小球は、表面に無機フィラー(例えば後述の無機充填剤として例示するもの)が吸着したものであってもよい。硬化した接着剤の切削加工性等を向上させる点で、好ましいのは、無機フィラーが吸着していない樹脂製中空微小球である。
【0016】
中空微小球の平均直径は、接着剤の混合し易さや塗布し易さ等の取扱性を向上させる点で、好ましくは10〜200μmであり、さらに好ましくは15〜150μmである。真比重は、好ましくは0.005〜0.5であり、さらに好ましくは0.01〜0.3である。
このような中空微小球の具体例としては、マツモトマイクロスフェアF−80EDおよびMFLシリーズ(松本油脂製薬社製)、フェノリックマイクロバルーンBJO−0930(ユニオンカーバイド社製)、グラスバブルズK−15、K−37(スリーエム社製)などがある。
【0017】
本発明で使用される脱水剤(D)は、接着剤に対する水分や湿分の混入および/または被接着物の接着剤適用部位にあらかじめ吸着している水分と有機ポリイソシアネート(B)との反応により起こる発泡現象を防止し、接着剤と被接着物との間に適切な接着強度を発現させるために用いられる。
このような脱水剤としては、例えば、ウレタン化反応に用いられる公知の脱水効果を持つ化合物が挙げられ、好ましくは、中性またはアルカリ性で粒径が0.1〜50μmの粉状脱水剤が挙げられる。このような脱水剤としては、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、粉状ゼオライト(モレキュラーシーブ)等が挙げられ、水と接触して潮解しない、また高温で高い吸着性能を示す点で、さらに好ましくは粉状ゼオライトである。ゼオライトの孔径は、好ましくは10オングストローム以下、水を選択的に吸着する点で、さらに好ましくは4オングストローム以下、特に3オングストローム以下である。
【0018】
本発明の接着剤中の各成分の量は、以下のとおりである。
活性水素含有化合物(A)および有機ポリイソシアネート(B)の含有量は、イソシアネート指数[NCO/活性水素原子含有基の当量比×100]に従って決められる。すなわちイソシアネート指数は、通常80〜140、好ましくは85〜120、特に好ましくは95〜115である。イソシアネート指数が80に満たない場合または140を越える場合は、接着剤と被接着物との間の接着強度が低下することがある。
【0019】
充填材(C)は、接着剤を低密度化し硬化物の切削加工性等を向上させる効果があることから、その量は被接着物の切削加工性等に応じて選択されるべきものである。例えば、低密度で切削加工しやすい被接着物に適応するためには、充填材(C)の量を増やせばよい。充填材(C)の量は、通常接着剤の全質量に基づいて0.5〜40%であるが、充填材(C)を構成する中空微小球の真比重により好ましい量が決められ、形成される硬化物の密度が0.2〜0.8g/cm3となるような量が好ましい。例えば真比重0.02の中空微小球を用いた場合は、1〜5%が好ましく、真比重0.2の中空微小球を用いた場合は、10〜40%が好ましい。
【0020】
脱水剤(D)は、充填剤(C)中の湿分など接着剤中の湿分および被接着物表面に吸着している湿分による硬化時の発泡を防止するために添加するものであり、その量は接着剤中の湿分含量並びに被接着物の保管場所および接着作業場の湿度に応じて増減すべきものである。脱水剤(D)の量は、接着剤全質量に対して、通常1〜40%、好ましくは10〜30%、さらに好ましくは12〜25%である。(D)の量が下限未満では、接着剤中の湿分および被接着物表面の吸着している湿分により硬化時に発泡現象が起き、接着強度が低下する。また上限を超えると接着剤の取扱性および切削加工性が悪くなる。
【0021】
本発明の接着剤は、必要により活性水素を有しない(ポリ)オキシアルキレン化合物からなる粉塵飛散低減剤(E)を含有させてもよい。この粉塵飛散低減剤(E)を含有させると、樹脂製模型用素材の切削加工時に接合または補修部位で発生する粉塵を空中に飛散しにくくする作用効果がある。さらに含有している粉塵飛散低減剤(E)が液状かつ低粘度である場合、希釈効果を合わせ持つため本来の作用効果を得る目的だけでなく、接着剤の粘度・作業性を調整することが可能となる。
【0022】
この粉塵飛散低減剤(E)としては、例えば、ポリアルキレングリコールの両末端水酸基を脂肪酸または高級アルコールで封鎖したエステル化物およびエーテル化物が挙げられる。ここで、ポリアルキレングリコールとしては、EOまたはPOのホモポリマー、およびEOとPOからなるブロックまたはランダムコポリマーが挙げられる。好ましくは、EOのホモポリマーおよびEOとPOからなるブロックコポリマーである。ポリアルキレングリコールの分子量は、ポリエチレングリコール(以下PEGと略記)の場合は通常200〜1000、好ましくは200〜600、ポリプロピレングリコール(以下PPGと略記)の場合は、通常200〜4000、好ましくは200〜1000、EOとPOからなるコポリマー(以下PEPGと略記)の場合、通常400〜5000、好ましくは1000〜3000である。
上記脂肪酸としては、炭素数8〜18の飽和または不飽和の脂肪酸が挙げられる。ここで飽和脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などが、不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸などが挙げられる。好ましくは、ラウリン酸、オレイン酸である。
【0023】
上記高級アルコールとしては、炭素数8〜18の飽和または不飽和のアルコールが挙げられる。ここで飽和アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどが、不飽和アルコールとしては、オレイルアルコールなどが挙げられる。好ましくは、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールである。
【0024】
粉塵飛散低減剤(E)は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。粉塵飛散低減剤(E)は固体状であってもよいが、粉塵飛散抑制効果を高めるためには、20℃で液状またはペースト状であることが望ましい。2種以上の粉塵飛散低減剤(E)を組み合わせて用い、このうち少なくとも1種を液状またはペースト状のものにしてもよい。
上記粉塵飛散低減剤(E)のうち好ましいのは、PEG(分子量200〜600)のジラウリン酸エステルおよびジオレイン酸エステルである。
【0025】
粉塵飛散低減剤(E)の量は、接着剤の全質量に基づき、通常30%以下、好ましくは5〜25%である。30%を超えると硬化後の接着強度が不足する場合がある。
【0026】
本発明の接着剤は、必要によりキシレン系オリゴマー、ポリエステルオリゴマーおよびポリアミドオリゴマーからなる群から選ばれる1種以上のオリゴマー(K)を含有させてもよい。このオリゴマー(K)は、接着剤の粘着性を損なうことなく硬化後の接着剤硬度を低下させ、切削加工性を向上させる効果がある。
オリゴマー(K)の重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフによる)は、500〜10000が好ましく、常温で固体であっても液体であってもよいが、混合性および切削加工性の向上効果に優れることから、液体のものがより好ましい。液体の場合、25℃における粘度は通常0.01〜10Pa.sであり、中空微小球からなる充填剤(C)の添加量を増やすことができ、切削加工性の向上がより容易になることから、好ましくは0.02〜1Pa.s、さらに好ましくは0.02〜0.1Pa.sである。
【0027】
ここで、キシレン系オリゴマーとしては、キシレンとホルムアルデヒドもしくはアセトアルデヒドの付加縮合によって得られるキシレン樹脂、メシチレンとホルムアルデヒドもしくはアセトアルデヒドの付加縮合によって得られるメシチレン樹脂が挙げられる。
ポリエステルオリゴマーとしては、不飽和多塩基酸(無水マレイン酸など)と飽和多塩基酸(フタル酸類など)と多価アルコール(プロピレングリコール、エチレングリコールなど)のエステル化重縮合物からなる不飽和ポリエステル樹脂;油、または脂肪酸と多塩基酸(無水フタル酸、イソフタル酸など)と多価アルコール(グリセリン、ペンタエリスリトールなど)のエステル化重縮合物からなるアルキド樹脂;脂肪族二塩基酸(アジピン酸など)とグリコール(プロピレングリコール、1,3−ブタンジオールなど)を脱水縮合し、一価の高級脂肪酸(炭素数8〜30)もしくは高級アルコール(炭素数8〜30)で末端を停止したポリエステル樹脂などが挙げられる。
ポリアミドオリゴマーとしては、不飽和脂肪酸の二量体であるダイマー酸と種々のポリアミンの重付加反応物で重量平均分子量が3000〜10000の固形ポリアミド、重量平均分子量が700〜5000の液状ポリアミドなどが挙げられる。
このようなオリゴマーの具体例としては、キシレン系オリゴマー:三菱ガス化学製「NIKANOL−Y、L、Hシリーズ」、ポリエステルオリゴマー:大日本インキ化学工業製「ポリライト、ベッコゾール、ポリサイザ」、ポリアミドオリゴマー:大日本インキ化学工業製「エピクロン、ラッカマイド」などが挙げられる。
これらのオリゴマーのうち好ましいものは、25℃における粘度が0.02〜0.1Pa.sのキシレン系オリゴマー(具体例としては三菱ガス化学製「NIKANOL−Yシリーズ」)である。
【0028】
オリゴマー(K)の量は、接着剤の全質量に基づき、通常40%以下、好ましくは5〜30%である。40%を越えると硬化後の接着強度が不足する場合がある。
【0029】
本発明の接着剤では、必要により、ウレタン化触媒等のその他の助剤(F)が使用される。
ウレタン化触媒としては、ポリウレタン反応に通常使用される触媒が挙げられる。このようなものとしては、例えば、トリエチレンジアミン、N−エチルモルホリン、ジエチルエタノールアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などのアミン系触媒、オクチル酸第1錫、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸鉛などの金属触媒がある。これらのうち好ましいものは、トリエチレンジアミンなどのアミン系触媒である。
【0030】
ウレタン化触媒の量は、本発明の接着剤全質量に対して、通常0.2%を超えない量、好ましくは0.001〜0.2%、特に0.01〜0.1%である。0.001%未満では硬化が遅くなり、接合または補修部位で発泡現象が起こるため接着強度が低下する場合がある。0.2%を超えると硬化が早すぎて取扱作業が困難になることがある。
【0031】
その他の助剤(F)として、必要により更に、本発明の接着剤の効果を損なわない範囲で、有機滑剤(ステアリン酸カルシウム、エチレンジアミンステアリルアミド、オレイン酸モノエタノールアミドなど)、可塑剤(ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペートなど)、チクソ性付与剤(微粒子状シリカ〔粒径100nm以下〕、水添ヒマシ油、有機ベントナイトなど)、(C)以外の無機充填材(炭酸カルシウム、タルク、水酸化アルミニウム、雲母、ミルドファイバーなど)、有機充填剤(熱硬化性樹脂の粉砕物など)、紫外線吸収剤、老化防止剤、抗酸化剤、着色剤(染料、顔料)、難燃剤、防黴剤、抗菌剤などを含有させることができる。
本発明の接着剤の全質量に対する上記の助剤(F)の好ましい使用量は、有機滑剤は10%以下(特に0.5〜5%)、可塑剤は10%以下、チクソ性付与剤は5%以下(特に0.1〜3%)、(C)以外の無機充填材は10%以下、有機充填剤は10%以下、それ以外のものはそれぞれ5%以下である。
【0032】
本発明の接着剤は、通常、活性水素含有化合物(A)からなる成分(以下、H成分と略す)と有機ポリイソシアネート(B)からなる成分(以下、NCO成分と略す)の2つの成分で構成される2液硬化型接着剤の形態で製造される。充填材(C)、脱水剤(D)、および必要により用いられる粉塵飛散低減剤(E)とその他の助剤(F)は通常H成分に含有させるが、NCO成分に含有させてもよい。特に充填材量が多いときは、充填材(C)の一部をNCO成分に含有させることが好ましい。この場合、NCO成分に含有させる充填材(C)量に応じて、脱水剤(D)をNCO成分に添加することにより、NCO成分の経時変化(粘度増加)を防止することが可能である。
【0033】
各成分の製造は、各種原料をプロペラ型、櫂型などの攪拌羽根の付いた混合槽、プラネタリーミキサー、ホーバルトミキサーなどを用いて混合する。着色剤や触媒のような少量使用するものは、あらかじめH成分に添加しておいてもよいが、接着作業を行う際に、H成分およびNCO成分と合わせて同時に混合してもよい。
【0034】
本発明の接着剤は、イソシアネート指数が80〜140になる割合でH成分とNCO成分を混合したものを用いて、各種の樹脂の接合などに用いることができるが、樹脂製模型用素材の接合または補修を行う方法に用いるのに好適である。本発明の方法の実施形態の一例として、樹脂製模型用素材を接合する場合と、補修する場合について、それぞれ下記の工程手順が挙げられる。
【0035】
接合に用いる場合。
(1)H成分とNCO成分をイソシアネート指数が80〜140になる割合でそれぞれ計量する。
(2)H成分およびNCO成分を均一に混合し、混合液を樹脂製模型用素材の接合部位に塗布し張り合わせる。
(3)接合部位がずれないようにクランプまたは重りで樹脂製模型用素材を固定する。
(4)硬化後クランプまたは重りをはずし、接合品を得る。
【0036】
ここで、混合方法としては、高いせん断力をもつミキサーを用いてあらかじめ容器内で混合する方法と、素材の接合しようとする部位上で混合する方法が挙げられる。前者は硬化速度の比較的遅い接着剤および接合部位の面積が比較的狭い素材の接合に好適な方法であり、後者は硬化速度の比較的速い接着剤および接合部位の面積が比較的広い素材の接合に好適な方法である。また、前者の方法は、接着剤を混合した後、粘度が上昇し(好ましくは500,000mPa・s以上)適度に流動性が低下してから用いることで、例えば垂直に立った部位での接合に適用する事が可能になる。
【0037】
補修に用いる場合。
(1)H成分とNCO成分をイソシアネート指数が80〜140になる割合でそれぞれ計量する。
(2)H成分およびNCO成分を均一に混合し、混合液を樹脂製模型用素材の補修部位に塗布または盛り付ける。
(3)接着剤が硬化した後、補修部位を所定の形状に切削加工することによって補修品を得る。
【0038】
ここで、補修用の接着剤としては、例えば垂直に立った部位に適用することもあり、接合に用いる接着剤より流動性が低くチクソ性が高い方が好ましい。あらかじめ充填材(C)もしくはチクソ性付与剤で流動性およびチクソ性を調整した接着剤を用いてもよく、接合に用いる接着剤を混合した後、粘度が上昇し(好ましくは500,000mPa・s以上)適度に流動性が低下したものを用いても良い。また、素材の補修しようとする部位上で混合する方法をとることもできる。
【0039】
本接着剤を用いて接合および/または補修する樹脂製模型用素材としては、硬質ポリウレタンフォーム、エポキシ樹脂からなるシンタクチックフォーム、発泡スチロールなどが挙げられる。
上記硬質ポリウレタンフォームとしては、前記のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよび低分子ポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールと、前記の有機ポリイソシアネート(B)とを、発泡剤(水、水素原子含有ハロゲン化炭化水素、低沸点炭化水素、液化炭酸ガスなど)の存在下に発泡させてなるポリウレタンフォーム、発泡剤の不存在下にメカニカルフロス法により得られるるポリウレタンフォーム、および発泡剤の不存在下に前記充填材(C)を用いて得られるシンタクチックフォームが挙げられる。
これらのうち、切削加工性、作成する模型の強度、素材の緻密さ等の点で好ましいのは、密度が0.2〜0.8g/cm3の硬質ポリウレタンフォームである。。切削加工やペーパー掛け等の加工を行っても接合部位および/または補修部位が目立たない模型を作成できる点で好適な接着剤としては、硬化物の密度、硬度等の物性が樹脂製模型用素材のそれに近いことが好ましく、例えば、前記の硬質ポリウレタンフォームに適用する接着剤から形成される硬化物の密度としては、0.2〜0.8g/cm3であるのが好ましい。
【0040】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において「部」および「%」はそれぞれ質量基準である。
【0041】
[使用原料および材料]
【0042】
[試験方法]
硬度 :接着剤を厚さ5mmに固めたものを作成し、ASTM D2240に準じて、高分子計器製「D型硬度計」を用いて測定した。
曲げ強さ:接着面が垂直になように90mm×10mm×5mmの試験片を作成し、JIS K7203に準じて、島津製作所製「インストロン型万能試験機」を用いて接着部位における曲げ強さを測定した。
切削性 :カッター(OLFA A型)を用いて接着面に対して平行に刃が当たるように被接着物を手で削り、接着剤(接着面)を削る際に刃に加わる抵抗感の大小に基づき次に示す基準で評価した。抵抗感がほとんどない場合を○、ややある場合を△、明らかにある場合を×とした。
【0043】
実施例1〜3
表1に記載の質量部で、各原料を液体攪拌・脱泡装置(松尾産業製MS−SNB2000型)に投入し、公転700〜800rpmで1分間、公転700〜800rpm、自転420〜480rpm、自転波動設定最低で5分間、公転700〜800rpm、自転210〜240rpmで30秒間攪拌して、本発明の接着剤に用いるH成分を得た。NCO成分は、(B−1)を単独で使用した。次に、H成分およびNCO成分を合計で100g容器に取り、素早く均一に攪拌混合した後、これを100mm×50mm×50mmのアルミ型に40mmの厚さで注入し、80℃で2時間加熱キュアした。これを8時間放置冷却し、脱型して接着剤の硬化物を得た。
また、さらにH成分およびNCO成分を合計で10g容器に取り、素早く均一に攪拌混合した後、これを50mm×50mm×50mmに切断した(G−1)の接合面にそれぞれ塗布し、張り合わせることによって接合物を得た。接着剤の硬化物および接合物の評価結果を表1に示す。
【0044】
比較例1
表1に記載の質量部で、実施例1〜3と同様にして硬化物および接合物を得た。評価結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【発明の効果】
本発明の接着剤は、充填材として中空微小球を使用しているため硬化後の密度並びに硬度が低く、物性が樹脂製模型用素材に近いことから、接合や補修を行った樹脂製模型用素材について、切断、穴開け、切削、ペーパー掛け等の加工を行っても接着部位で段差が生じにくい等の効果を有する。
上記効果を奏することから、本発明の接着剤は、デザインモデル、マスターモデル、倣いモデルなどの模型素材;真空成形型などの型材;彫刻、版木などの趣味用素材等の接合や補修に有用である。
Claims (12)
- 活性水素含有化合物(A)からなる成分と有機ポリイソシアネート(B)からなる成分で構成される2液硬化型ウレタン系接着剤であって、接着剤の全質量に基づいて0.5〜40%の中空微小球からなる充填材(C)と、1〜40%の脱水剤(D)を含有する、樹脂用ウレタン系接着剤。
- (A)が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよび低分子ポリオールからなる群から選ばれる1種以上のポリオールからなり、ヒドロキシル価が200〜700である請求項1記載の接着剤。
- (D)が、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウムまたは粉状ゼオライトである請求項1または2記載の接着剤。
- さらに活性水素を有しない(ポリ)オキシアルキレン化合物からなる粉塵飛散低減剤(E)を含有する請求項1〜3のいずれか記載の接着剤。
- さらにキシレン系オリゴマー、ポリエステルオリゴマーおよびポリアミドオリゴマーからなる群から選ばれる1種以上のオリゴマー(K)を含有する請求項1〜4のいずれか記載の接着剤。
- (A)と(C)と(D)からなる成分と(B)からなる成分との組合せからなる2液硬化型である請求項1〜5のいずれか記載の接着剤。
- 0.2〜0.8g/cm3 の密度の硬化物を形成する請求項1〜6のいずれか記載の接着剤。
- 硬質ポリウレタンフォーム、エポキシ樹脂からなるシンタクチックフォームおよび発泡スチロールからなる群から選ばれる模型用素材の接合および/または補修用である請求項1〜7のいずれか記載の接着剤。
- 請求項1〜8のいずれか記載の接着剤を用いて、樹脂製模型用素材の接合または補修を行う方法。
- 接合もしくは補修部位上で(A)からなる成分と(B)からなる成分を混合する請求項9記載の方法。
- (A)からなる成分と(B)からなる成分を混合した後、混合液の液粘度が500,000mPa・s以上になってから接合もしくは補修部位に適用する請求項9記載の方法。
- 該模型用素材が硬質ポリウレタンフォームである請求項9〜11のいずれか記載の方法。
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