JP3563369B2 - 破砕方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は破砕方法に関し、より特定的には、効率よくかつ簡便に岩石などを破壊することが可能な破砕方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
岩石などを破壊するための従来の破砕方法としては、たとえば特開平4−222794号公報に開示されているものがある。図6は、従来の破砕装置を示す模式図である。また、図7は、図6に示した破砕装置の基本的な構成を示す模式図であり、図8は、図7に示した電極の先端部を示す部分拡大模式図である。図6〜8を参照して、上記特開平4−222794号公報に開示された破砕方法を実施するための破砕装置の構造および動作について説明する。
【0003】
図6〜8を参照して、まず、従来の破砕装置の構造を簡単に説明する。パルスパワー源106は、コンデンサ108、スイッチ107などを含む回路からなっている。このパルスパワー源106には電源109が接続されている。パルスパワー源106の回路、この回路を含む筐体および破砕装置を搭載する車体は接地されている。
【0004】
岩石などを破壊するための破壊電極としての同軸電極101は、パルスパワー源106と同軸ケーブル105によって接続されている。同軸電極101の先端には、中心電極112と、この中心電極112の外周側に絶縁体113を介して位置する外周電極115とが配置されている。中心電極112と外周電極115との一方は接地され、他方にはパルスパワー源106のスイッチ107が閉じられたときにコンデンサ108に蓄えられた電荷が導かれる。
【0005】
次に従来の破砕方法を説明する。破壊対象となる岩石などに、ドリルなどを用いてあらかじめ下孔110を形成する。この下孔110の中に水111などの電解液を注入する。この下孔110に同軸電極101を挿入する。
【0006】
そして、電源109で電荷を発生させ、この電荷をコンデンサ108に蓄積する。ただし、コンデンサ108の片側の極は接地されている。
【0007】
コンデンサ108に十分に電荷が蓄積された後にスイッチ107を閉じることによって、同軸ケーブル105を介して同軸電極101に電荷が供給される。そして、同軸電極101の先端において、中心電極112と外周電極115との間に電位差が生じることにより放電が起こる。このとき、同軸電極101の先端付近の電解液が放電エネルギーによってプラズマ化することにより、圧力波が発生する。この圧力波により、同軸電極101の周囲の岩石などを破壊する。
【0008】
上記特開平4−222794号公報では、岩石などの破砕の際には、1マイクロ秒あたり少なくとも100MWの割合で、少なくとも3GWのピーク値のパワーが破砕すべき物質の閉じ込めた領域の電解液の中に浸漬された同軸電極101の2電極間(中心電極112と外周電極115との間)を横切って得られるまで、電気エネルギーを同軸電極101に供給するとしている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の破砕方法においては、以下のような問題があった。すなわち、従来の破砕方法では、下孔110の内部に水111などの電解液を配置する必要があるが、この下孔110は必ずしも下方向にのみ形成されるものではない。たとえば、図6に示すように破砕対象物102の側壁において水平方向に形成されたり、あるいは天井において上方向に下孔110が形成される場合もある。このような場合、下孔110の内部にあらかじめ水111を配置しておく事は困難である。また、水110などの液体に代えて、電解質のゼリー状物質を用いることも考えられる。しかし、下孔110の直径が小さい場合など、このような媒体としてのゼリー状物質を下孔110の底部にまで確実に充填することは難しい。
【0010】
このように、従来は、下孔110の位置や大きさなどにより、下孔110に媒体を確実に供給することができない場合があった。従来の破砕方法では、下孔110の内部に電解液などの媒体を配置することを前提としているため、上記のように下孔110に充分な媒体を供給できないことにより、破砕を行なうことが困難な場合があった。
【0011】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、下孔の位置などにかかわらず確実に破砕を実施することが可能な破砕方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
発明者は、破砕方法について様々な条件を検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、従来は下孔に電解液などを満たすことが必須であると考えられていたが、発明者が検討・実験した結果、下孔中に電解液を配置しない状態、すなわち下孔中に電極を配置して大気中で放電を発生させても、岩石などの破砕対象物を破砕することが可能であることがわかった。ここで、放電に伴って発生するプラズマには大電流がながれている。そして、電極に供給される電流などの条件によって、大きな応力(膨張力)が発生する。実験の結果、このプラズマの応力により圧縮強度が200MPa程度までの岩石を破砕することができた。さらに、プラズマの応力を直接利用するので、従来のように電解液などの媒体を必要としない。発明者のこのような知見に基づいて、この発明による破砕方法は、破砕対象物に下孔を形成する工程と、下孔の内部に複数の電極を互いに間隙を隔てて配置する工程と、複数の電極に電流を供給することにより、下孔の内部に配置された複数の電極間において、空気中で放電を発生させる工程とを備える。
【0013】
このようにすれば、下孔中に電解液などを配置する必要が無いので、破砕工程を簡略化できる。
【0014】
また、下孔がたとえば上向きや横向きに形成された、電解液などを下孔中に保持することが難しいような状況において、下孔中に電極を挿入して放電を発生させることにより岩石などの破砕対象物を破砕することができる。すなわち、下孔の配置にかかわらず、確実に破砕を行うことが可能になる。
【0015】
この発明による破砕方法では、放電により発生するプラズマと下孔の内壁とが接触することができるように、下孔の内壁と複数の電極との相対的な位置が決定されていることが好ましい。
【0016】
この場合、放電により発生するアークプラズマ(以下、プラズマと呼ぶ)には電極から離れようとする力がはたらく。そして、プラズマに大電流が流れるように電極に供給する電流量を充分大きくすれば、プラズマが電極から離れようとする力を大きくできる。そして、プラズマが下孔の内壁と接触するように電極が配置されていれば、この力を下孔の内壁へと容易に伝えることができる。この結果、プラズマからの力により破砕対象物を下孔の内部から確実に破砕することができる。
【0017】
この発明による破砕方法では、複数の電極が、ある方向に延在する一方線状導電体と、一方線状導電体の延びる方向と同じ方向に延在し、一方線状導電体と誘電体を介して対向する他方線状導電体とを含んでいてもよい。他方線状導電体は、第1の導電体と、第1の導電体と間隙を隔てて配置された第2の導電体とを含んでいてもよい。
【0018】
この場合、電極に電流が供給され、一方線状導電体と他方線状導電体との間に当該電流が流れる場合、一方線状導電体において電極の端部に位置する部分と、この端部側に配置された第1および第2の導電体のいずれかとの間にいおて第1の放電が発生する。そして、第1の導電体と第2の導電体との間に位置する間隙において、第2の放電が発生する。つまり、図6〜8に示したような従来の電極においては端部の1箇所においてのみ放電が起きていたのに対して、本発明による電極では少なくとも2箇所において放電が起きる。このように放電が起きる個所の数を増加させることにより、電流値を一定にした場合において、従来より放電抵抗を増加させることができる。この放電により消費されるエネルギー(破砕に利用されるエネルギー)は(電極に供給される電流値の2乗)×(放電抵抗)に比例するので、破砕に利用されるエネルギーを従来より確実に大きくできる。したがって、破砕装置の能力(破砕能力)を増大させる事ができる。
【0019】
また、上記第1および第2の導電体は、他方線状導電体を複数個所において切断・分割することにより、容易に作成できる。このため、たとえば同軸電極の外周電極を分割するような場合より、簡単な加工で本発明による電極を実現できる。したがって、破砕に用いる電極の製造工程を単純化できることから、破砕を行なう為のコストが上昇することを防止できる。
【0020】
この発明による破砕方法では、他方線状導電体が第2の導電体とは一方線状導電体の延びる方向において間隙を隔てて配置された1つ以上の他の導電体を含んでいてもよい。
【0021】
この場合、第2の導電体と他の導電体との間で第3の放電を発生させることができる。また、他の導電体が、間隙を隔てて形成された複数の導電体を含んでいれば、さらに第4、第5の放電を発生させることができる。この結果、放電抵抗をより高めることができるので、破砕に利用されるエネルギーをより大きくすることができる。
【0022】
この発明による破砕方法では、電極での放電に起因して発生するプラズマの半径をr(単位:m)、プラズマの中心と一方線状導電体の中心との間の距離をd(単位:m)、電極に供給される電流の値をI(単位:A)、空気の透磁率をμ(単位:H/m)とした場合、μ×I2/(4π×d×r)という式で算出される評価値が、破砕対象物の圧縮強さ(単位:Pa)の値より大きくなるように、電極に供給される電流の値を決定してもよい。
【0023】
この場合、評価値で示される数値はプラズマにより下孔の内壁に加えられる圧力を示す。そして、この圧力が破砕対象物の圧縮強さより大きければ、確実に岩石などの破砕対象物を破砕できる。
【0024】
この発明による破砕方法では、電極での放電に起因して発生するプラズマの半径をr(単位:m)、プラズマの中心と一方線状導電体の中心との間の距離をd(単位:m)、電極に供給される電流の値をI(単位:A)、空気の透磁率をμ(単位:H/m)とした場合、μ×I2/(4π×d×r)という式で算出される評価値が、破砕対象物の引張強さ(単位:Pa)の値より大きくなるように、電極に供給される電流の値を決定してもよい。
【0025】
この場合、評価値で示される数値は上述のようにプラズマにより下孔の内壁に加えられる圧力を示している。この圧力が破砕対象物の引張強さより大きければ、下孔を起点にして破砕対象物を複数の部分に分割するように破壊することができる。
【0026】
この発明による破砕方法では、一方線状導電体の半径をR(単位:m)とした場合、R+d+rという式で算出される他の評価値の値より小さくなるように、下孔の直径が決定されていてもよい。
【0027】
この場合、放電により発生するプラズマを下孔の内壁に確実に接触させる事ができる。したがって、プラズマからの圧力を破砕対象物に確実に伝えることができるので、破砕対象物をこの圧力により容易に破砕することができる。
【0028】
この発明による破砕方法では、評価値を算出する際、プラズマの半径rの値として、第1の導電体の半径の値を用いてもよい。
【0029】
ここで、プラズマの半径の大きさと第1の導電体の半径の値とは比較的近似していることから、実際にプラズマを発生させてその半径を測定することなく、ある程度の精度で電極に供給されるべき電流の値を決定することができる。したがって、本発明による破砕方法を実施するための条件を簡便に決定できる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0031】
図1は、本発明による破砕方法の実施の形態を説明するための模式図であり、本発明による破砕装置を示している。図2は、図1に示した破砕装置における電極の先端部を示す模式図である。図3は、図2に示した電極の先端部を示す断面模式図である。図1〜3を参照して、本発明による破砕方法の実施の形態およびこの破砕方法で用いる破砕装置を説明する。
【0032】
図1〜3を参照して、本発明による破砕方法を実施するための破砕装置は、破砕装置用電極である電極1とパルスパワー源6と電源9とを備える。パルスパワー源6はコンデンサ8、スイッチ7などを含む回路からなる。パルスパワー源6には電源9が接続されている。パルスパワー源6の回路は接地されている。パルスパワー源6に接続された電極1を構成する一方ケーブル3、他方ケーブル4、ケーブル部分5a〜5cは、導電体14を絶縁体13で被覆した単芯絶縁電線を用いて構成される。絶縁体13としては、プラスチック、ゴム、ビニール、絶縁性の樹脂などの誘電体を用いることができる。また、導電体14としては、銅、銀、アルミニウム、鉄などの電気導電性を有する金属を用いることができる。
【0033】
電極1は、ある方向に延在する一方ケーブル3と、この一方線状導電体としての一方ケーブル3が延びる方向と同じ方向に延在する他方ケーブル4およびケーブル部分5a〜5cと、この一方ケーブル3と他方ケーブル4およびケーブル部分5a〜5cとを固定するための固定部材12a〜12hとを備える。固定部材12a〜12hを構成する材料としては、電極1において放電を発生させることにより破砕対象物2を破砕する工程の前後において、一方ケーブル3と他方ケーブル4およびケーブル部分5a〜5cとを固定部材12a〜12hにより保持することが可能なように、充分大きな強度を有する材料が選択されている。
【0034】
なお、他方ケーブル4およびケーブル部分5b、5cが他方線状導電体に対応する。ケーブル部分5aは、一方ケーブル3の先端部がほぼ180゜曲げられ、一方ケーブル3に沿うように配置されることにより形成されている。図1〜3からもわかるように、ケーブル部分5a〜5cは、それぞれ互いにギャップ17a、17bを介して対向するように配置されている。ケーブル部分5cが第1の導電体に対応し、ケーブル部分5bが第2の導電体に対応する。また、他の導電体としての他方ケーブル4は、ギャップ17cを介してケーブル部分5cと対向するように配置されている。
【0035】
電極1は、図1に示すように岩石などの破砕対象物2に形成された下孔10の内部に挿入される。下孔10の内部には電解液などは配置されていない。
【0036】
次に、図1〜3に示した破砕装置を用いた破砕方法を説明する。まず、破壊対象となる岩石などの破砕対象物2に、ドリルなどを用いてあらかじめ下孔10を形成する。この下孔10に図1〜3に示した電極1を配置する。
【0037】
そして、電源9で電荷を発生させ、この電荷をコンデンサ8に蓄積する。ただし、コンデンサ8の片側の極は接地されている。コンデンサ8に十分に電荷が蓄積された後にスイッチ7を閉じることにより、コンデンサ8に蓄えられた電荷が電極1に導入される。すると、ケーブル部分5aとケーブル部分5bとの間に位置するギャップ17aにおいて第1の放電が発生し、アークプラズマ18aが形成される。このアークプラズマ18aは電磁力により一方ケーブル3から離れるように移動すると同時に成長し、アークプラズマ18dとなる。なお、一方ケーブル3よりアークプラズマ18aの方が軽く容易に移動できるため、一方ケーブル3が移動するより先にアークプラズマ18aが移動することになる。
【0038】
また、ケーブル部分5bとケーブル部分5cとの間に位置するギャップ17bにおいても第2の放電が発生し、アークプラズマ18bが形成される。このアークプラズマ18bは、アークプラズマ18aと同様に移動すると同時に成長し、アークプラズマ18eとなる。また、同様にケーブル部分5cと他方ケーブル4との間に位置するギャップ17cにおいても放電が発生し、アークプラズマ18cが形成される。このアークプラズマ18cは、アークプラズマ18aと同様に移動すると同時に成長し、アークプラズマ18fとなる。このアークプラズマ18d〜18fが下孔10の内壁に直接作用することにより、破砕対象物2を破砕する。
【0039】
具体的には、たとえばケーブル部分5a〜5cおよび他方ケーブル4を構成する導電体14の直径を5mmとし、アークプラズマ18dの中心と一方ケーブル3の中心との距離dを20mm、アークプラズマ18d〜18fに流れる電流の値Iを300kAとすると、アンペールの法則より発生する磁場の磁束密度Bは近似的に
B=μH=μ×(電流)/(2×π×d)=3T(テスラ)
と表される。なお、μは空気の透磁率を示す。また、アークプラズマ18a〜18fは自己ピンチ効果により発生当初より時間が経つとその断面積は小さくなると考えられるが、ここでは発生当初のサイズから変化していないと仮定している。
【0040】
そして、ファラデーの法則よりアークプラズマ18d〜18fに発生する1mあたりの力は、(磁場)×(電流)×(長さ)という式から求められ、計算結果は0.9MN(メガニュートン)となる。アークプラズマ18d〜18fの半径rは導電体14の半径と等しいと仮定しているので、電極部のアークプラズマ18d〜18fにおける局所的な圧力は180MPaとなる。
【0041】
上記の計算をまとめると、圧力P=力/面積=μI2L/(2π×d)/(L×2r)=μI2/(4π×d×r)という式により、圧力が表される。
【0042】
上記のような条件でアークプラズマ18d〜18fが発生する場合、破砕対象物2の圧縮強さが180MPa以下であれば、このアークプラズマ18d〜18fの圧力により破砕対象物2を充分破壊することができる。なお、参考までに、圧縮強さ(圧縮強度)が50MPa以上の岩は硬岩と呼ばれる。また、圧縮強さが200MPaを越えるような岩は極めてまれである。このため、上述のアークプラズマ18d〜18fの発生条件(破砕条件)により、ほとんどの岩を圧縮破壊することができる。また、上述のようにアークプラズマ18d〜18fを直接下孔10の内壁に作用させるので、従来のように下孔10の内部に電解液などの媒体を配置する必要が無い。
【0043】
また、図1〜3に示すように電極1において複数のギャップ17a〜17cを形成することにより、複数のアークプラズマ18d〜18fを形成することができる。このため、破砕に利用されるエネルギーを従来より大きくできるので、効率よく破砕を行なうことができる。
【0044】
また、下孔10の直径Dは、アークプラズマ18d〜18fの半径rと距離dと一方ケーブル3の半径とを加えた値以下とすることが好ましい。ここでは下孔10の直径Dを30mm程度とした。
【0045】
この場合、アークプラズマ18d〜18fを下孔10の内壁に確実に接触させることができる。したがって、アークプラズマ18d〜18fからの力を破砕対象物2に伝えることができるので、破砕対象物2の破砕を確実に実施できる。
【0046】
また、上述のように下孔の直径Dを充分小さくしておけば、アークプラズマ18d〜18fと一方ケーブル3との間に働く電磁力により、一方ケーブル3が下孔10の内壁と衝突することにより、破砕対象物2に対して衝撃力を加えることができる。この結果、破砕対象物をより確実に破砕できる。
【0047】
なお、破砕対象物2としての岩の引張強さ(引張破壊強度)は、圧縮強さの約10分の1である。そのため、破砕対象物2に引張応力をかけるようにアークプラズマ18d〜18fを作用させる事ができれば、アークプラズマでの圧力がこの引張強さ程度(上記計算結果の10分の1程度)であっても、破砕対象物2を破壊できる。たとえば、転石などは周囲からの拘束が無いため、引張強さ程度の圧力(圧縮強さより小さな圧力)でも破壊できる。もちろん、平盤の掘り下げなどの場合は、破砕する領域には周囲からの拘束力が働くため、引張強さ程度の圧力で破砕することは難しい。以上より、運用上でのアークプラズマ18d〜18fに求められる圧力は破砕対象物2の引張強さと圧縮強さとの間の値となる。
【0048】
また、図1〜3においては複数のギャップを有する二本の絶縁被覆導電線を用いて電極を形成しているが、単純に二本の絶縁被覆導電線を下孔10の内部に配置して電極としてもよい。この場合、二本の絶縁被覆導電線の先端部において、絶縁被覆導電線の導電体が露出した部分の間にギャップが1つ形成されることになる。この状態で電極に電流を供給し、ギャップにおいて放電を発生させることによっても、図1〜3に示した破砕装置による破砕方法と同様の効果を得ることができる。ただし、この場合は放電に伴って発生するアークプラズマは1つだけであるため、図1〜3に示した破砕装置を用いた破砕方法より破砕力は小さくなる。また、アークプラズマを発生させるために絶縁被服導電線には十分な大きさの電流を供給する必要があるが、このような大電流を供給されることにより絶縁被覆導電線自体がジュール熱などにより破壊される場合がある。このような場合であっても、図1〜3に示したように複数のギャップ17a〜17cを設けた電極を用いれば、供給電流量を同じにしても破砕力をより大きくできる。同時に、アークプラズマ18d〜18fは下孔10の内壁側へと迅速に移動し、下孔10の内壁に圧力を加えることができるので、絶縁被覆導電線自体がジュール熱などにより破壊されることなく破砕対象物を破砕することが可能である。
【0049】
また、電極として中心導電体と、この中心導電体の周囲に配置された絶縁体と、絶縁体を囲むように配置された外周導電体とを備える同軸線を用いて電極を形成してもよい。この場合、外周導電体を部分的に除去することにより、第1および第2の外周導電体部分を形成してもよい。この第1および第2の外周導電体部分は、間隙を介して配置されている事が好ましい。このようにすれば、図1〜3に示した電極を用いた場合と同様に、電極の先端部と上記間隙との複数箇所で放電を発生させることができる。この結果、図1〜3に示した破砕装置を用いた破砕方法と同様の効果を得ることができる。
【0050】
また、図1〜3に示したように下孔10の直径Dを充分小さくするのではなく、電極1に対して相対的に大きな直径Dを有する下孔10を形成し、その下孔10の一方の内壁に沿って電極1を配置してもよい。このとき、一方ケーブル3から見て最も近くに位置する下孔10の内壁側に他方ケーブル4およびケーブル部分5a〜5cを配置する。そして、内壁から一方ケーブル3までの距離は図2に示した距離dとアークプラズマ18d〜18fの半径rとを合計した値以下とすることが好ましい。このようにすれば、アークプラズマ18d〜18fを下孔10の内壁に確実に作用させることができる。なお、このように片方の内壁に電極を寄せるためには、他の介在物を下孔10中に配置するなどの手法を用いればよい。
【0051】
【実施例】
本願発明の効果を確認するため、200MPa級の岩石を産出する採石場において、流紋岩の転石を用いて破砕実験を行なった。図4および5を参照して、破砕実験について説明する。なお、図4は、破砕実験を説明するための模式図である。また、図5は、図4の線分V−Vにおける電極の断面模式図である。
【0052】
図4に示すように、実験では、まず破砕対象物2としての上記転石に下孔10を形成した。下孔10の内径Dは32mmであり、深さは500mmである。そして、導電体14の部分の直径D1が5mmである単芯被覆導電線を用いて、図4に示したような電極を形成した。すなわち、下孔10に単芯被覆導電線を二本挿入する。一方の単芯被覆導電線では、6箇所を切断・除去することにより、ギャップ17a〜17fを形成した。ギャップ17a〜17fの幅Wは5mmであり、ギャップ17a〜17fの間の間隔Lは130mmとした。このようなギャップを形成することにより、電極は単芯被覆導電線からなる一方ケーブル3と、他方ケーブル4とケーブル部分とから構成されることになる。ここで用いる単芯被覆導電線は導電体14の外周を絶縁体13が覆った構造となっている。
【0053】
そして、上述のように電極を下孔10に挿入した後、下孔10中に電解液などを配置することなく電極1に所定の電流を供給することにより、大気中で放電を発生させて転石の破砕実験を行なった。実験では、電極1に全回路インダクタンスが2μHの導電線を介して静電容量が2mFのコンデンサを接続した。コンデンサへの充電電圧は19kVとした。そして、スイッチを閉じてコンデンサから電極へと電流を供給することにより、電極で放電を発生させて破砕実験を行なった。このとき電極へと流れた電流の値は150kAであった。この結果、破砕対象物2である転石を破砕することができた。
【0054】
また、破砕対象物としてほぼ立方体の流紋岩を用いて、他の破砕実験も行なった。ここで用いた流紋岩の体積は約0.8m3であった。この流紋岩の転石の中央部に直径Dが26mm、深さが400mmの下孔を形成した。そして、上述の単芯被覆導電線を用いて、図4に示した電極と同様の電極を形成した。ただし、ここでは電極に形成されたギャップの数は4つである。また、用いた単芯被覆導電線の長さは約600mmである。ギャップの間隔Lは50mmとした。この電極に長さが16mの同軸ケーブルを介してパルスパワー源を接続した。パルスパワー源でのコンデンサの充電電圧は13kVとした。パルスパワー源のスイッチを閉じることにより、このコンデンサから電極に投入されるエネルギーは169kJであった。この場合も、破砕対象物は粉々に飛散した。
【0055】
なお、破砕対象物として流紋岩を用いているが、より柔らかい材料を破砕する場合は、電極に供給される電流値を150kA未満のより小さな値としてもよい。
【0056】
また、上記の実験では、下孔10の内部には電解液などを配置しない状態で破砕を行なっているが、下孔10の内部に電解液などの媒体を配置した状態であっても、図4および5に示した破砕実験と同様の効果を得ることができる。また、下孔10の内部を空気(気体)とゲル状の電解質との混合物を配置した状態で破砕実験を行なっても、図4および5に示した破砕実験と同様の効果を得ることができた。
【0057】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0058】
【発明の効果】
このように、本発明によれば、下孔に電解液などの媒体を配置する必要が無いので、下孔の位置などにかかわらず確実に破砕対象物の破砕を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による破砕方法の実施の形態を説明するための模式図である。
【図2】図1に示した破砕装置における電極の先端部を示す模式図である。
【図3】図2に示した電極の先端部を示す断面模式図である。
【図4】破砕実験を説明するための模式図である。
【図5】図4の線分V−Vにおける電極の断面模式図である。
【図6】従来の破砕装置を示す模式図である。
【図7】図6に示した破砕装置の基本的な構成を示す模式図である。
【図8】図7に示した電極の先端部を示す部分拡大模式図である。
【符号の説明】
1 電極、2 破砕対象物、3 一方ケーブル、4 他方ケーブル、5a〜5c ケーブル部分、6 パルスパワー源、7 スイッチ、8 コンデンサ、9 電源、10,10a〜10d 下孔、12a〜12h 固定部材、13 絶縁体、14 導電体、17a〜17f ギャップ、18a〜18f アークプラズマ。
Claims (8)
- 破砕対象物に下孔を形成する工程と、
前記下孔の内部に複数の電極を互いに間隙を隔てて配置する工程と、
前記複数の電極に電流を供給することにより、前記下孔の内部に配置された前記複数の電極間において、空気中で放電を発生させる工程とを備える、破砕方法。 - 前記放電により発生するプラズマと前記下孔の内壁とが接触することができるように、前記下孔の内壁と前記複数の電極との相対的な位置が決定されている、請求項1に記載の破砕方法。
- 前記複数の電極は、
ある方向に延在する一方線状導電体と、
前記一方線状導電体の延びる方向と同じ方向に延在し、前記一方線状導電体と誘電体を介して対向する他方線状導電体とを含み、
前記他方線状導電体は、第1の導電体と、前記第1の導電体と間隙を隔てて配置された第2の導電体とを含む、請求項1または2に記載の破砕方法。 - 前記他方線状導電体は、前記第2の導電体とは前記一方線状導電体の延びる方向において間隙を隔てて配置された1つ以上の他の導電体を含む、請求項3に記載の破砕方法。
- 前記電極での放電に起因して発生するプラズマの半径をr(単位:m)、プラズマの中心と前記一方線状導電体中心との間の距離をd(単位:m)、前記電極に供給される電流の値をI(単位:A)、空気の透磁率をμ(単位:H/m)とした場合、μ×I2/(4π×d×r)という式で算出される評価値が、破砕対象物の圧縮強さ(単位:Pa)の値より大きくなるように、前記電極に供給される電流の値を決定することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の破砕方法。
- 前記電極での放電に起因して発生するプラズマの半径をr(単位:m)、プラズマの中心と前記一方線状導電体中心との間の距離をd(単位:m)、前記電極に供給される電流の値をI(単位:A)、空気の透磁率をμ(単位:H/m)とした場合、μ×I2/(4π×d×r)という式で算出される評価値が、破砕対象物の引張強さ(単位:Pa)の値より大きくなるように、前記電極に供給される電流の値を決定することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の破砕方法。
- 一方線状導電体の半径をR(単位:m)とした場合、R+d+rという式で算出される他の評価値の値より小さくなるように、前記下孔の直径が決定されている、請求項5または6に記載の破砕方法。
- 前記評価値を算出する際、前記プラズマの半径rの値として、前記第1の導電体の半径の値を用いる、請求項5〜7のいずれか1項に記載の破砕方法。
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